複数の態度尺度の比較によるエイズに対する
多面的態度の社会心理学的検討*1*2
西 和久*3・高橋 啓介
Asocial psychological examination of the multilateral attitude toward AIDS by the comparative analysis of several attitude scales
NISHI Kazuhisa・TAKAHASHI Keisuke
問 題
エイズに対する差別が社会問題として顕在化した1980年代後半から,国内外を問わず, 予 防的側面 に加えて,エイズという疾病や,エイズ患者,HIV感染者の理解といった 人権 的側面 を考慮に入れた教育・啓発活動が行われてきた1−3}。そうした地道な活動は,徐々 にではあるが確実に成果を上げつつある。
上述の通り現実社会の中で主に問題となっているのは 差別 の問題であるが,心理学の 基本的な考え方に基づくと,差別という行動を引き起こす重要な要因は, 偏見 という「否 定的な態度」にある。したがって,そうした否定的な態度の構造やその心理的特質,否定的 態度を生じさせる原因を明らかにしていくことが,最終的に差別の低減につながるものと考 えられる。同時に,エイズに対する態度を詳細に検討し明らかにしていくことは,今後のよ
りよい教育啓発に資するものともなるだろう。
従来,社会心理学関連の分野においては,エイズと他の疾病との印象の差異4},エイズの 原因であるHIVの感染経路別による患者に対する責任帰属の差異5)といったエイズの特定の 側面に焦点を合わせた研究は行われてきたが,多面性を持つエイズに対する態度の「全体的 構造」について,系統的なアプローチを用いて検討を加えた研究はそれほど多くないという 現状にある。
こうしたエイズに対する態度構造を検討した研究として,態度測定のための評定尺度を作 成し,その因子構造について検討を加えた西6−7)が挙げられる。西の一連の研究では,エイ
1{研究の実施にあたり,平成13年度文部科学省科学研究費特別研究員奨励費(課題番号13001525・0,研究代 表;西和久)の研究助成を受けた。
奉2{研究は,東京北とぴあで行われた第15回日本エイズ学会学術集会・予防啓発2のセッションにおいて口頭
発表された(2001年12月)。
3坙{学術振興会特別研究員。名古屋大学大学院文学研究科心理学研究室。本学部非常勤講師。
ズに対する態度が,エイズ患者を主に行動面で支持し,援助しようとする「支持的・援助的 態度」,逆に行動面で避けようとする「忌避的態度」,そして疾病や患者に対する一般的な偏 見を表す「偏見的態度」の3つの態度要素に分かれることが明らかにされた。加えてこれら
3つの態度要素は,諸外国で同様に評定尺度法を用いて行われた態度研究8−9)で見出された 態度要素とも内容的に対応することが確認された。
ところで,エイズに対する態度を測定する方法としては上述の評定尺度法を用いる以外に,
自由記述法を用いて様々な意見を収集したり(西7),Shrum et al 9)の調査の一部でもこの手 法が行われている),ケース・ビネット法1°−11}という投影的な手法を用いて間接的に態度を測 定する方法がある。このように,評定尺度法以外の測定方法を用いれば,それに対応する形 でエイズという多様な態度の特異的側面にアプローチすることができるものと考えられるが,
複数の態度尺度を併用した調査を行い,それらを比較検討すれば,多面的な構造を持つエイ ズに対する態度の全体像を,より詳細に捉えることが可能となるだろう。しかしながらこれ までエイズの態度研究において,複数の態度尺度間の関連性を検討した研究12)は,ほとんど
行われてこなかった。また定性的・質的な手法を用いて測定される態度と,評定尺度法と
いった定量的な手法を用いて測定される態度の関連性や差異を検討した研究は皆無であった。したがって本研究では,エイズに対する否定的な態度の把握と,その低減につながる一つ の方策として,複数の態度尺度を用いてエイズに対する態度を測定し,それを比較分析する ことで多面的な構造を持つエイズに対する態度の特徴を社会心理学的に明らかにすることを 目的とする。具体的には調査1において,評定尺度法により測定された態度と自由記述法に より質的に測定された態度との関連性について検討を加える。そして調査llにおいて,調査
1と同様の評定尺度法で測定された態度と投影的方法であるケース・ビネット法で測定され
た態度との関連性について検討を加える。最終的に調査1・nの結果を踏まえて,エイズに
対する態度の多面性について考察するとともに,評定尺度法の有効性についても議論を行う。対象及び方法
調査1
調査回答者と調査手続き:愛知県内に所在する私立大学,専門学校計3校の学生134名(男 性57名,女性73名,不明4名;年齢平均19.40歳,SD=1.92歳)を対象に,評定尺度項目と
自由記述質問項目への回答を求める質問紙調査を実施した。実施時期は2001年6月1日から
6月30日であり,講義の時間を利用して質問紙を一括配布し,回答終了後回収を行う集合調 査法の手続きを用いた。自由記述の質問内容:エイズという疾病,およびエイズ患者,HIV感染者に対するイメー ジや意見,態度を尋ねる項目として,「エイズに対してどのようなイメージを持っているか」
「エイズ患者やHIV感染者に対してどのようなイメージを持っているか」「もし自分の身の
回りにいる人(知人,友人,恋人等)がエイズ患者やHIV感染者と分かったら,どのようよ うに感じ,どのようにふるまうと思うか」「もし自分がHIVに感染したら,どのようように 感じ,どのようにふるまうと思うか」の4項目を用意した。自由記述欄には罫線が引いてあ り,前述の4つの質問項目に対する自分の見解を思いつくだけ箇条書きにして一個ずつ書き 出す形式とした。さらに回答終了後,自由記述で書き出された各記述内容が, エイズに対し て肯定的な内容(○) 否定的・差別的な内容(×) 中立的または無関連な内容(△) の いずれかに自己評定するよう求めた(具体的には,罫線の右端にある括弧欄に,○,×,△
のいずれかを記入するよう求めることで,各記述内容の自己評定を行わせた)。これらの一 連の手法は社会心理学の態度研究で用いられる思考リスト法13)を援用したものであったが,
自己評定を行ったことが後続して測定される評定尺度に対する反応に影響することを避ける ため,質問紙調査の最後に自己評定が行われるよう工夫した。
評定尺度の内容:エイズに対する肯定的,否定的態度を測定する評定尺度として,その信 頼性が確認された西7)の尺度項目を用いた(具体的な項目内容については,表2を参照のこ と)。尺度項目は全12項目から構成され,9件法(1:「全くそう思わない」〜9:「非常にそ う思う」)で回答を求めた。
調査皿
調査対象者と調査手続き:愛知県内の私立大学1校の学生136名(男性49名,女性87名;年 齢平均19.33歳,SD=0.64歳)を対象に,調査1と同様の評定尺度法およびケース・ビネッ
ト法を用いた質問紙調査を実施した。実施時期は2001年6月1日から6月30日であり,調査
1と同様の集合調査法の手続きを用いた。ケース・ビネット法の測定内容:ケース・ビネット法とは,患者の仮想事例の記述を読ん だ後,その患者に対するイメージや,患者に対する態度・行動を投影的に測定する方法であ る。本調査ではまず,ケース・ビネット法を用いた宗像1°),荒川11)の研究を参考にして,男 性同性愛患者の事例と感染経路が明確でない男性患者の事例の2つを作成した(表1)。調査 では,これら2つのいずれかの事例を無作為に選ばれた回答者が回答する形をとった。回答 形式は,仮想事例の患者について,22の人格イメージを表現する語句を提示し,それぞれに ついて「そう思う」「そう思わない」の2つからいずれか1つを選択させた(具体的な項目内 容は,表3を参照)。加えて,仮想事例の患者に対する態度・行動を測定するため,7つの質 問項目を提示した上で,それぞれについて「そう思う」「そう思わない」の2件法で回答を求 めた(具体的な項目内容は図3の脚注を参照)。これらの人格イメージ,態度・行動の質問項 目は宗像1°),荒川ll)を参考にしたものであった。
評定尺度の内容:調査1に準拠した。なお,ケース・ビネット法,評定尺度の一連の測定 では,測定順序の影響を除去するため,測定順序を回答者ごとにランダム化し,カウンター・
バランスをとった。
表1 ケース・ビネットの文章(男性同性愛患者の事例)
Aさんは大学を卒業した後,コンピュータ会社に就職した。
しかし就職してしばらくした後,彼の健康状態は徐々に悪化し始めた。疲れやすくなり,
体が衰弱し,良くなったり,悪くなったりを繰り返したのである。
病院で検査を受けたところ,Aさんは医師から「エイズの原因であるHIV(ヒト免疫不 全ウィルス)」に感染していることを知らされた。
彼と長く付き合っていた同性愛の恋人のBさんは最初は同情的であった。しかし,時がた つとともにその恋人でさえ心はAさんから離れていき,彼を励ますこともなくなった。
) エ染経路が明確でない男性患者の事例の場合,アンダー・ラインが引かれた「同性愛の」という部分が削 除された文章を提示した(その他の内容は全く同じであった)。この刺激操作方法は宗像1旬,荒川11)で行わ れた手法に準じたものであった。
) r川11)は,ケース・ビネットの文章内容により人格語句に対する反応が左右される危険性があることを指 摘している。具体的には,荒川で用いられたケース・ビネットの文章では,「(主人公の患者が病気になる 以前)さまざまなスポーツを楽しむ社交的な人間である」と記述されていたため,調査の回答者が患者に 対して肯定的な人格イメージを抱きやすくなったおそれがあることが指摘されている。それを踏まえて本 調査では,前述の記述を削除し,ケース・ビネットの記述内容により患者の人格イメージが左右されない
よう工夫がなされた。
統計的分析方法
データの集計,解析には,SPSS for Windows 10.0.5J Advance Version(SPSS Inc.)を 用いた。調査1・llにおける評定尺度の尺度構成の際は,因子分析(主成分解,バリマック ス回転)を行った。調査llのケース・ビネット法で測定された患者に対する人格イメージ項 目については,2件法で測定されたデータに対して,「そう思う」を1点,「そう思わない」
を0点と変換しスコア化を行った上で,同様の因子分析を実施し,尺度を構成した。
調査1の自 由記述については,回答者が行った自己評定をもとに,分析者1名がチェック を行い,記述内容が 肯定的内容 否定的・差別的内容 中立的内容 の3カテゴリーの いずれであるかを質的に分類し,回答者ごとにそれらのカテゴリーの個数を算出した。さら に,評定尺度の態度と自由記述内容の関連性を検討する際には,強制投入法による重回帰分 析を行った(具体的な投入変数については後述する)。
また,評定尺度の態度と調査nのケース・ビネット法で測定された患者に対する態度・行
動項目との関連性を検討する際には,2件法で測定されたデータに対して,上述のように「そ う思う」を1点,「そう思わない」を0点と変換しスコア化を行った上で,調査1と同様の強 制投入法による重回帰分析を行った。結 果
測定尺度の構成(調査1・E)
調査1・Uで使用した評定尺度については,全12項目に対して因子分析を行い,固有値の
減衰状況および解釈可能性から鑑みて3因子解が妥当であると判断した(表2)。各因子に高 く負荷していた項目内容から,第1因子を「エイズ患者に対する忌避的態度」(4項目),第 ll因子を「エイズ患者に対する支持的・援助的態度」(4項目),第田因子を「エイズ全般に 対する偏見的態度」(4項目)とそれぞれ命名した。以後の分析では,尺度得点としてそれぞれの因子に高く負荷した項目の単純加算平均を用いた。なお,尺度の信頼性を示すCronbach
のα係数の値は,因子1がα=0.81,因子Hがα=0.65,因子皿がα=0.62であった。表2 態度評定尺度の因子分析結果(主成分解,バリマックス回転)
項目内容 因子1 因子n 因子m 共通性
エイズ患者が身近にいれば,その人と距離を保つようになるかもしれない エイズ患者が身近にいれば,その人を心の中では避けてしまうかもしれない エイズは危険な病気だから,エイズ患者とは関わりを持ちたくない 知人がエイズ患者と知らされたら,以前と同様に接していくことは難しいだろう
.840 −.039 −.008
.804 .088 .031
.726 −.090 .190
.707 .055 −.035
.707
.655
.572
.504 私はエイズ患者を支えていく立場でありたいと思う 一.259
周囲から差別されているエイズ患者がいれば,私はその人をかばい守ってあげると思う 一.376 エイズ患者と接する際は,その人を気づかうように好意的に接したいと思う .294 エイズ患者と接する際は,その人が安心していられるように接したいと思う .187
.765 −.132
.724 .065
.655 .072
.600 −.094
.669
.670
.521
.404 性交渉でエイズになった人を気の毒とは思わない
エイズ患者の中には,同性愛者や麻薬使用者も多いので,自業自得な点も多い エイズ患者に対して,あまりいいイメージはない
「エイズ」と聞くと,何となくけがらわしい感じがする
固有値
寄与(%)一.117 −.110 .730
−.058 .104 .727 、434 −.059 .596 .457 −.119 .581
3.122 1.959 1.828 26.014 16.324 15.237.558
.543
.547
.560
*) ェ析に際しては,調査1と調査nのデータをあわせ,計270名のデータで因子分析を行った。
*) 子1「患者に対する忌避的態度」,因子n「患者に対する支持的・援助的態度」,因子皿「エイズ全般に 対する偏見的態度」を表している。
調査nで使用したケース・ビネット法の人格イメージの質問項目については,全22項目を 因子分析した結果,4因子構造を確認した。その後,複数の因子にまたがって負荷していた 2項目を除去し,最終的に20項目で因子分析を行い,再度4因子構造を得た(表3)。その結
果,第1因子を「社会的望ましさ」(9項目),第E因子を「知性」(5項目),第m因子を
「一般的好ましさ」(3項目),第IV因子を「社会的適応性」(3項目)に関する因子とそれぞ れ命名した。以後の分析では,評定尺度と同様,単純加算平均を尺度得点として用いた。
Cronbachのα係数の値は,因子1がαニ0.87,因子fiがαニ0.71,因子皿がα=0.71,因 子IVがα=0.62であった。
表3 人格イメージ項目の因子分析結果(主成分解,バリマックス回転)
因子1 因子ll 因子1皿 因子IV 共通性
人が良い
公平 素直 思いやり
穏やか 心暖かい誠実 正直 親切
.745
而禰 百≡ 旦.618
.585
.552
.107
.211
.047
.188
.083
.254
.421
.086
.168
.067 .142 .090 .154
−.042 .325
−.151
−.057 .299
.055 .097 .075 .272 .211 .058 .101
−.034 .285
.574
.568
.500
.608
.510
.563
.592
.354
.503
頭良い
思慮深い
優れた 教養ある 慎重
.158
.137
.153
.130
.155
.746 .186 .180
.674 −.304 .087
.639 .266 .041
.614 .155 .121
.568 −.148 −.027
64Q∨484731ρ0
7CU己U65
愛想良い
愉快 親しみ
.242 −.053
−.122 .043 .446 .100
.723 .141
.675 .156
.537 −.027
.604
.497
.498
適応性 .252
気転きく .023
融通きく .185
固有値 4.363寄与(%) 21.815
一.112 −.082 .818 .751
.257 .211 元 .633.200 .259 ご示 .472
2.629 1.908 L856
13.146 9.546 9.282司男性同性愛患者の事例に回答したサンプルと,感染経路が特定されない男性患者の事例に回答したサンプ ルをあわせ,計136名のデータで因子分析を行った。
副実際に質問紙では,「(主人公の患者が)×××な人だ」という形式で人格語句を提示した(例:「人が良い 人だ」「公平な人だ」)。
)S22項目に対して因子分析を行ったが,両因子にまたがって負荷していた「好かれる人だ」「魅力的な人だ」
の2項目は除去して因子分析を行い,最終的に表3のような結果が得られた。なお,2項目を除去する前後 で因子構造は同一であり,それぞれの因子に高く負荷してくる項目にも変動は認められなかった。
)
子1「社会的望ましさ」,因子ll「知性」,因子IH「一般的好ましさ」,因子IV「社会的適応性」を表している。
評定尺度の態度と自由記述内容の関連性の検討(調査1)
評定尺度で測定される態度と自由記述内容の関連性を検討するため,評定尺度の態度3因 子(「忌避的態度」「支持的・援助的態度」「偏見的態度」)を説明変数,自由記述内容の「肯 定的記述数」「否定的記述数」を目的変数とした重回帰分析を行った。
まず「肯定的記述数」を目的変数とした重回帰分析を行ったところ(図1),「忌避的態度」
「支持的・援助的態度」の2因子のパスが有意であることが確認された(R2=.118, F
(3,128)=6.82,ρ<.001)。すなわち,忌避的態度が低い人(β=一.330,ρ<.001),あるい は支持的・援助的態度が高い人ほど(β=.186,ρ<.05),自由記述において肯定的な記述内 容の数が多かったことが示された。
また 否定的内容の記述数 を目的変数とした場合は,「忌避的態度」因子のパスが有意で あることが示された(R2=.129,F(3,128)=7.45,ρ<.001)。すなわち,忌避的態度が高い人ほ ど(β=.310,ρ<.001),自由記述において否定的な記述内容の数が多かったことが示された。
評定尺度の態度とケース・ビネットの患者への人格イメージの関連性の検討(調査皿)
次に,評定尺度で測定される態度とケース・ビネット法で測定された患者の人格イメージ
評定天!度の,態度3因子 富由記述の内容
忌避的態度
支持的・援助的態度
偏見的態度
一.330t★★
.186★
.310★★
R2=.11stt★
月定的記述数
R2=.129
否定的記述数
図1 評定尺度一自由記述内容間の重回帰分析結果
亭) 訷 に添付された値は標準偏回帰係数を表す。標準偏回帰係数,決定係数(R2)に添付された記号は有意
確率を示しており,それぞれ *が0.1%水準,**が1%水準, が5%水準で有意,+が10%水準の有意傾向
であることを示している(以下,図2,図3についても同様である)。の関連性を検討するため,評定尺度の態度3因子を説明変数,人格イメージの4因子(「社会 的望ましさ」「知性」「一般的好ましさ」「社会的適応性」)を目的変数とした重回帰分析を行っ た(図2)。
分析の結果,人格イメージの「社会的望ましさ」については「支持的・援助的態度」「偏見 的態度」の2因子からのパスが有意であることが確認された(1〜2=.179,F(3,128)ニ10.26,
p<.001)。すなわち,支持的・援助的態度が高い人ほど(β=.314,p<.001),あるいは偏 見的態度が低い人ほど(β=一.242,p<.001),ケース・ビネットの患者に対する「社会的望
ましさ」を高く評価していたことが示された。
また「知性」「一般的好ましさ」については,「支持的・援助的態度」因子からのパスが有 意であることが示された(知性;R2=.085, F(3,129)=5.07,ρ<.01.,一般的好ましさ;
R2=.047, F(3,129)=3.16,ρ<.05)。すなわち,支持的・援助的態度が高い人ほど,ケー ス・ビネットの患者の「知性」「一般的好ましさ」を高く評価していたことが確認された(標 準偏回帰係数βの数値については図2を参照のこと)。なお「社会的適応性」については,重 回帰分析のモデル適合度自体が有意ではなかったため結果を図中に示さなかったが,「知性」
「好ましさ」についての結果と同様に,支持的・援助的態度が高い人ほど,ケース・ビネッ トの患者の「社会的適応性」を肯定的に評価する方向の結果であった(1〜2=.014,F(3,130)
=1.65, 刀.s. )o
評定尺度の態度3厨子
忌避的態度
支持的・援助的態度
偏見的態度
.314★★★
.22S ★
.230★★
ケース入物の入格イメージ
因子IR2=.179 ★★
社会的望ましさ
一.242★★
R2=.085★★
R2=.047
一般的好ましさ
図2 評定尺度一人格イメージ間の重回帰分析結果
卓)j性同性愛患者の事例,感染経路が特定されていない男性患者の事例の2種類のデータを測定したが,事例 ごとに重回帰分析を行ったところほぼ同様の結果が得られたため,ここでは2つの事例のデータをあわせ て重回帰分析を行った結果を示した。
) ]定尺度の態度3因子を説明変数,人格イメージの因子IV「社会的適応性」を目的変数とした重回帰分析 も行ったが,重回帰分析のモデル適合度が分散分析の結果,有意とならなかったことから,図にはその結果
を示さなかった。
評定尺度の態度とケース・ビネットの患者への態度・行動の関連性の検討(調査皿)
最後に評定尺度で測定された態度とケース・ビネット法で測定された患者に対する態度・
行動の関連性を検討するため,評定尺度の態度3因子を説明変数,ケース・ビネットの患者 の態度・行動を目的変数とした重回帰分析を行ったところ,図3のような結果が得られた。
概観すると,「一緒に働くだろう」「飲み会に誘うだろう」といった行動的側面を伴った内 容には,「忌避的態度」「支持的・援助的態度」からのパスが有意であり(一緒に働く;R2=.
176,F(3,130)=10.46, p<.001.,飲み会に誘う;1〜2=.207, F(3,129)=12.46,ρ<.001),
忌避的態度が低い人ほど,あるいは支持的・援助的態度が高い人ほど,患者との相互作用を 拒まないことが示された(標準偏回帰係数βの数値は図3を参照)。
また「病気になった責任は本人にある(病気の責任帰属)」といった態度的側面を伴った内 容には,「偏見的態度」からのパスが有意であり(R2=,038, F(3,129)ニ2.74,ρ<.05),偏 見的態度が高い人ほど,病気の責任を患者本人に帰属しがちであることが示された(標準偏 回帰係数βの数値は図3を参照)。
評定尺度の態度3屋7子
忌避的態度
支持的・援助的態度
偏見的態度
.185★
ケース人物への,態度・デテ動
1〜2=.028+職を失うだろう
一.341★★★
.200★
.220★
.254★★
R2=.176 一緒に働く
R2=.038
病気の責任帰属
一.350★★★
R2=.207
飲み会に誘う
図3 評定尺度一患者に対する態度・行動項目間の重回帰分析結果
*) Pース人物の態度・行動測定項目として,「Aさんは職を失うだろう」「Aさんと一緒に働きますか?」「病 気の責任はAさん本人にある(病気の責任帰属)」「Aさんを飲み会に誘いますか?」「Aさんは最善の治療 を受けるべきだ」「Aさんは同情される」「Aさんは苦しんでいる」の7項目を使用した。ただし,「Aさん は最善の治療を受けるべきだ」「Aさんは同情される」「Aさんは苦しんでいる」の3項目については,回 答傾向が一様であったこと,重回帰分析のモデル適合度が分散分析の結果,有意とならなかったことから,
図にはその結果を示さなかった。
考 察
本研究では,評定尺度法で測定された態度と,自由記述法で測定された質的な態度および ケース・ビネット法で測定された態度の関連性を検討することで,エイズに対する多面的な 態度の構造について検討を加えた。複数の態度尺度の比較から,多面的な構造をもつエイズ という態度の特徴を明らかにすることができるものと言える。今回の一連の重回帰分析の結 果を概略化したものを図4に示した。
まず調査1で測定された自由記述法の調査では,主に「自分の身近な人がエイズ患者・HIV 感染者であると分かったときに,どのように感じ,どのようにふるまうと思うか」という質 問で,患者・感染者に対する肯定的・否定的な内容にカウントされる記述が表れていた。そ こでは, 患者に対する恐れやとまどい 患者を避けるかもしれない といったネガティブ な記述や,逆に 普通に接する 避けたりしない といったポジティブな記述が認められて いた。それゆえそうした記述内容を,患者への否定的・拒絶的な行動的要素を表す態度であ る「忌避的態度」因子が説明可能であったものと考えられる。
また調査llで測定された,間接的かつ投影的に態度を測定する手法であるケース・ビネッ
エイズに対する
多面的態度を 包括的に捕捉
できる。
患者への
人格イメージ患者への
態度・行動多様な意見を拾
えるが、今回は患者に対する忌 避の側面を捉え
ていた。
具体的な個々の項目内容
に即した態度と行動が反映される。
図4 本研究の結果の概略図
ト法による人格イメージへの反応は,患者・感染者に対する 好き一嫌い といった感情的 な反応を伴ったものであり,主にそうした態度は,患者に対して肯定的・寛容的な態度をもっ ているか否かを反映する「支持的・援助的態度」因子が説明可能であったものと考えられる。
さらにケース人物への態度・行動については,病気の責任帰属といった認知的な要素につい ては「偏見的態度」因子が,行動的な要素は「支持的・援助的態度」「忌避的態度」の各因子 が説明可能であったものと考えられる。
したがって,主に自由記述法は,評定尺度で測定される「患者に対する忌避的態度」の要 素を,ケース・ビネット法で測定される人格イメージは,「患者に対する支持的・援助的態 度」の要素を,そしてケース人物への認知および行動を網羅的に測定した場合,「忌避的態度」
「支持的・援助的態度」「偏見的態度」の3因子の要素を捕捉しうるものであったと考えられ
る。
様々な方法を用いて態度を測定すると,それに対応する形で態度の特異的側面にアプロー チすることが可能となるであろうことは,本論文の冒頭でも述べた通りである。しかし評定 尺度法で測定された態度が,自由記述法,あるいはケース・ビネット法で測定された様々な 態度を包括的に説明していた結果から考えると,西の先行研究6 7)および本研究で確認され た「忌避的態度」「支持的・援助的態度」「偏見的態度」の3因子構造が,エイズに対する態 度構造として基盤的なものであると判断することができるだろう。結論として本研究の結果 から,エイズの多面的な態度要素を直接的に測定する方法として,西の評定尺度7)の有効性 が確認されたものと言えよう。
したがって今後,教育啓発の場面において教育介入プログラムの効果評価を行う際,プロ グラム参加者の態度を適切かつ簡便に測定するための一手法として,西の評定尺度が有用な 測定方法となるのではないかと考えられる。ただし西の一連の研究では,大学生を対象とし た調査を行うことを想定して評定尺度項目を作成していたため,これらの調査で用いられた 項目が,小学生,中学生,高校生といったその他の対象集団においても妥当なものかについ ては検討が加えられていない。今後,本評定尺度を教育・啓発の場面において使用する際に は,測定を行う対象集団に即して質問項目のワーディングを適宜修正し,予備調査等で尺度 の信頼性を確認する必要があるものと言える。また将来的な研究の方向性として,エイズに 対する態度の基盤的構造(「忌避的態度」「支持的・援助的態度」「偏見的態度」)に影響を与
える様々な心理・社会的要因を同定することも,偏見・差別の低減にとって重要な検討課題 となるだろう。
本論文の要約
本研究では,筆者により作成された評定尺度を用いて測定された多面的な態度と,自由記 述法および投影的方法を用いて測定された態度の関連性を2つの集合調査から検討した。
調査1では,大学生,専門学校の男女学生134名を対象に質問紙調査を行い,評定尺度の態 度と自由記述で得られた質的態度の内容の関連性を検討した。調査llでは,男女大学生136 名を対象に質問紙調査を行い,評定尺度の態度とケース・ビネット法で測定された患者の人 格イメージ,患者への態度・行動の関連性を検討した。
重回帰分析の結果をまとめると,自由記述法で得られた質的態度は主に評定尺度法で測定 される「忌避的態度」の要素を,ケース・ビネット法により測定される人格イメージは評定 尺度法で測定される「支持的・援助的態度」の要素を捕捉していたことが示された。またケー ス・ビネット法により測定される態度・行動は,評定尺度法で得られる「忌避的態度」「支持 的・援助的態度」「偏見的態度」の3つの要素をそれぞれ捕捉していたことが確認された。
複数の態度尺度間の比較から,エイズに対する多面的な態度要素を測定する方法として,
西の評定尺度の有効性が確認された。
引用文献
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