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今田正

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(1)

スターリング会計理論

スターリング会計理論

−『科学としての会計へ向けて』を中心に−

今田正

I は じ め に

現代会計理論の解明とその会計実務との関係の研究において最も困難なこ とは伝統的会計の枠組みのなかではみられなかった新しい会計士の装いをも った理論が覇を競っていることである。会計理論の新展開の論理上の特徴と その会計実務上の焦点を特定することはきわめて囚難となっている。

だが,現代会計理論がいかに複雑な装いをもとうと会計理論の役割が論理 上の機能にあるかぎり,それは,伝統的理論が果した役割と同様に,会計上 の性質に異なるところはない。現代の会計が伝統的な会計の枠組みをもって

(1)

しては理解されがたいのは,論理の枠組みの変化のなかにある。では,その 会計の論理転換を要請しているものはなにか。それは会計実務の新たな展開 にある。こんにち,インフレーション会計,石油・ガス会計,合併会計,

リース会計,偶発債務会計といった会計実務恍域の展闘封ま伝統的概念枠に替 る新しい理論による論理化を要請している。

このような会計実務の展開に対して,会計論理もまた被雑化し,重層的し ている。本稿では,現代会計理論の論理化性質を解明するうえで,特徴的な 論理構成の接近法を有する理論として知られるR.スターリングの会計理論

(2)

を『科学としての会計へ向けて』(Toward a Science of Accounting,

1979)を中心としてとり上げ,その理論の論理構造と会計的意味について,

以下,検討する。

71

(2)

(注)

( 1 )  

宮上一男杭「リース会計

J

,宮上一男編『現代の会計』世界書院刊,昭和

5 9

年

2

月,第

7

辛,

253

頁。

( 2 )   S t e r l i n g

, 

R o b e r t   R .

, 

Toward a S c i e n c e   o f   A c c o u n t i n g

, 

H o u s t o n

, 

T e x a s

, 

S c h o l a r s  B o o k  C o .

, 

1 9 7 9 .  

I I   r

配分」の論理から「測定」の論理へ

1 .  

コンペンションから経験科学へ一会計の再定義

R .

スターリングはその会計理論の構築にあたって,会計問題の再構成と 論理を提起し,基礎的論理概念を提示している。

AICPA r

会計用語公報」

(1) 

( A c c o u n t i n g   T e r m j n o l o g y   B u l l e t i n )

は会計を「会計とは財務的性質を 有する取引また事象を有志な形式で貨幣単位で、記録し,整理し,要約する技 術

( a r t )

である」と定義した。これに対してスターリングはいう

O

会計は 科学として定義されるべきであり,科学の基本的目的が採用されるべきであ る

o

財務諸表は経験的事象を記述し,説明しなければならない。さらに,わ れわれはそれら事象の予測を可能とする法則および理論を捜し求めなければ ならない。要するに,

a c c o u n t i n g "

という用語が意味するように,会計の 主たる目的は経験的事象について説明する

( a c c o u n tf o r )

ことでなければな らない,という

O

また,科学の目的は会計の有用性目的と矛盾するものでは ない。科学は知識の追求であり,科学的知識は有用な知識である

O

経験的事 象の予測はそれら事象の有用な管理の基礎を提供するものであり,事実,科 学的な法則や理論は有用性の前提条件であると, このようにいう

O

すなわ ち,科学の目的は会計の有用性目的と矛盾するものではない。科学によって 健供される知識は有用な知識である

D

人は経験的事象についてそれを有効に 利用するために理解しなければならない,と

O

このように,経験的事象につ いて説明し

( e x p l a i n

,

a c c o u n t  f o r )  

,予測する

( p r e d i c t )

という科学の基

(3) 

本目的を採用することができる,というのである。

このように,スターリングは会計を科学として再定義する,という論理枠 を設定し,つぎに,会計の基礎的概念(用語)の転換を計っている。

(3)

スターリング会計理論

7 3   2 .  

経験的検証可能性概念の導入

スターリングはいう

O

会計原則は法則

( l a w )

というよりコンペンション

( c o n v e n t i o n )

として定義されてきたが、この定義は正確な規定ではない。

コンペンションを、原則、

( p r i n c i p l e )

と呼ぶのは誤りであり,コンペンシ ョンは科学にとっても必要なものではあるが,両者は巌密に分区されるべき である

D

現在,われわれは,一般に会計をコンペンションに基づいたものと して定義している。程々の配分手続は、原価コンペンション、とされる

D

例 えば,

LIFO

は一つのコンペンションであり,また

FIFO

もコンペンショ ンである

O

また,用いられる減価償却方法も特定のコンペンションの選択を

( 4 )  

意味している,と。

だが,コンペンションは個人による選択の対象ではなく,集団によって合 意される

O

コンペンションの選択は一つの任芯の選択で、あるが,それは柴田

(5) 

によってなされ,基準化されるのである

O

いずれにせよ,会計問題がコンペ ンションの選択として定義され,しかもコンペンションが恋意的で、あるかぎ り,問題解決の失敗は驚くに当らない,とこのようにいうのである

O

このように,スターリングは会計問題を科学として再定義するとするので あるが,まず彼は科学的用語の導入を計る

O

科学的仮説ーある命題が科学的仮説であると考えられる第ーの要件はそれ が経験的に検証可能なものであること,すなわち,ある測定可能な向性を特

(6) 

定するものでなければならない。この誌みは,一つの会計コンペンションか ら一つの科学的仮説への‑伝換をはかる提案を行うとされる

O

そこで,スターリングは,科学的会計に向けての試みにおいて,二つの 関 係 づ け ら れ た 規 準

( c r i t e r i a )

を採用するという。 (1)経験的検証可能怯

( e m p i r i c a l  t e s t a b i 1 i t y )

と, (2)目的迎合性

( r e l e v a n c e )

命題とである。

(7) 

まず,彼は,特殊,減価償却領域における経験的検証可能性概念について の規定から始める

O

会計一般,特に減価償却は測定の過程としてではなく,配分の過程として 定義されてきた。例えば,

AICPA  r

会計用語公市」は減価償却について,

(8) 

つぎのような公式定誌を与えている口

(4)

それのら共通的な特質は原価または基礎的価額が合理的かつ組織的な方法で会計期 間にわたって配分されることであり,乙の方法は単に一会計期間について,その期間 に発生した耐周年数や資産価値に影響を与える事象と関連づけられる配分額を決定し ようとするものではない。

すなわち,乙の定義においては,減価償却は年度内に現実に生じた何かを 測定するというものではない,とスターリングは批判する

o

これに対して,彼はいう

o

減価償却問題の解決のための前提はその定義の 転換をはかることである口すなわち,慣行的な配分過程を報告するという目 的から,ある種の現実

( r e a l i t y )

を測定するという目的への転換をはかる ことである口とのことを行うことができれば,われわれは,償却額に関する 論議を相対的に簡単な過程である経験的な検証を行うことによって裁断を下 すことができる

D

困難な乙とは限史的原価主義の減価償却を超越することで ある

o

歴史的原価主義の修正理論もまた減価償却を配分過程として定義して いる

o

そのような定義の一つが取替原価主義である,と。

スターリングはいう

o

取替原価理論は会計思考に大きな貢献を行ってきた が,歴史的原価減価償却と取替原価減価償却との唯一の迷いは,前者が過去 の買入価格を配分するのに対し,後者は現在の只入IlI日絡を配分する

O

例え ば,昨年自動車

l

台が

5

,

0 0 0

ドルで購入され,自動車が今年

6

,

0 0 0

ドルの原価 を要すると仮定しよう

O

見積り耐用年数が

3

年,残存価額ゼロとすれば,歴 史的原価減価償却は

1

,

6 6 7

ドノレ(

=5

,

0 0 0

ドノレ

/ 3 )

で取荏原価減価償却は

2

,

0 0 0

ド

J

レ

(=6

,

0 0 0

ドノレ

/ 3 )

である

O

取替原価は, また何らの測定ではない。 した がって, あらゆる経験的発見も, それと一致しないし, 他方, 矛盾もしな

(10) 

い。取替原価もまた配分

‑781

主的配分である,と。

つぎは,減価償却とは資産の割引価値の変化である,というのがもう一つ の定義である

O

スターリングはいう

O

この定義によれば,われわれは資産か ら得られる将来のキャッシュ・フローを予測し,割引価値を計算する必要・があ る

D

乙の定義は,明らかに現在の大きさが将来の大きさに依存するとしてい る

O

しかも,乙の手続は,その数値は何らの経験的対象物を有しないという 結果になる

O

確かにキャッシュ・フローは観察可能であるが,これらのフロー

(5)

スターリング会計理論

75 

の会

I J

引価値は観察できない。例えば,異なるこつの割引価値のどちらが正し いかの論争を解決できるだろうか,いかなる経験的検証も適用できない

D

そ れは一つの配分‑怒芯的配分である

D

乙れら三つの定義は,要するに,法則 ではなく,コンペンションを定義し,測定ではなく配分を定義し,現実では なく空虚な抽象を定義している

o

すなわち,基本的に解決不能な問題を捉示

(11) 

している,と

o

これら三つの定義を排除するスターリングは,減価償却問題の解決には,

測定可能な特質を特定する必要があるとする。彼は市場価格の訊測

I J .

定可能性lにこ

f 、

i

た(

スタ一リングはエクシツト.ヴアリユウ

( e x i t va

剖

lue=

完却時価)を資産 の即日時寺の完却から

i

得♀られ

i

貨

5

幣額であると定義する。それは価格であり,即時 売却価格である

o ! i

J.l見交換は観察可能な現象である

O

つまり,測定は,資産 が売却されたとすれば,受取られるであろう貨幣額である,という

o

したが って,スターリングの定義によれば,減価償却は生産的設備のエクシット・

ヴァリュウの減少である,とされる

o

このように,スターリングは,コンペンションから科学へ,配分から測定 への会計の枠組みの論理の転換にあたって

r

エクシット・ヴァリュウ」な

る基礎概念を捉示し,自己の理論構築の道具立てを行ったのである

o

(註)

( 1 )   AICPA

,

Accounting  Terminology  B u l l e t i n

, 

No.    , 1 Review  and  Resume."  A c c o u n t i n g   R e s e a r c h   and  Terminology  B u l l e t i n s

, 

NewYork: 

AICPA ,  1 9 6   , 1 p .   9 .  

( 2 )   S t e r l i n g

, 

R .   R

,. 

Toward a  S c i e n c e  of A c c o u n t i n g .   p p .   12‑13. 

( 3 )   l b i d .

, 

p p .   13‑15. 

( 4 )   l b i d .

, 

p .   2 0 .   ( 5 )   1  b i d .

, 

p .   2 2 .  

(6) 

l b i d .

, 

p .   3 2 .   ( 7 )   l b i d .

, 

p .   6 5 .  

( 8 )   AICPA

, 

o p .   c i t .

, 

p .   2 4 .  

(6)

( 9 )   l b i d .

, 

p .   6 8 .   U O )   [ b i d .

, 

pp.  68‑69. 

U l )   1  b i d

 

 

,.

p .   6 9 .  

U2) 

l b i d .

, 

p .   7 0 .  

E  エクシット・ヴァリュウ会計の展開

1 .  

目的適合性概念の導入

スターリングは,会計の再定義にあたって,会計はいかなる測定可能な属 性を説明しようとしているのかを決定しなければならない,という。先に,

エクシット・ヴァリュウは測定可能であるとしたが,測定可能性は必要条 件であっても,十分条件ではない。たとえば, エ ン ト リ ー ・ ヴ ァ リ ュ ウ

( e n t r y   v a l u e  

=再調達時価)を測定し,報告することも可能である。エント リー・ヴァリュウはエクシット・ヴァリュウと同様に測定可能であるから,

測定可能性自体はこれら二つのうちのどちらを選択するか決定できない。会 計における属性の選択は目的適合性を基礎として,すなわち,その情報がい かに利用されるかという乙とを基礎にして行われる,と,乙のように主張

し,目的適合性概念の導入を計るのである。

では,目的適合性概念はどのように定義されるであろうか。

スターリングは,目的適合性は怠思決定モデノレとの関連においてのみ定義 されるという

O

「ある属性の測定は,その属性が意思決定モデソレについて特定されるか,その場合 にのみ意思決定モデノレにとって『適合的』である」と。

このように,スターリングは,その理論構築にあたって意思決定モデノレア プローチを採用するのである

o

ところで,スターリングは目的適合性テストの適用にあたって君、思決定

3) 

プロセスの概略を示している

o

すべての意思決定モデノレは,つぎの項目について情報を要求する。

( 1 )

選択肢=A={al' a

2

,'"

・

H

・ . .

,

a n} 

(2) 結 果

=C={Cl' C 2

,....

・

H

・ " C n} 

( 3 )

選 択=p=諸結果を順序づける関数

(7)

スターリング会計理論 77  これをもとに,意思決定プロセスを次のように図式化している。

第 l段階 第2段階 第

3

段階 第

4

段階

選択肢の決定 結果の予測 優先的結果択 行 重力

a

, 

c .  

の 選

32  C2 

a  i  C  i  C  i  ?  a  i 

a"  C" 

すなわち,芯思決定プロセスの第1段階は現在可能な選択肢

( a 1 t e r n a t i v e s )

のうちから選択を行うことである

D

したがって,この場合,意思決定者は選 択肢を特定する前に結果の予測を行う必要がある

o

第 2段階は各々の選択肢がもたらす結果

( c o n s e q u e n c e s )

を予測するこ とである

O

一つの選択肢の選択は選択肢の結果に依存するのであるから,意 思決定者は選択肢と結果との l対 lの 対 応 を 行 わ ね ば な ら な い 。 逆 に い え ば,一つの結果の予測はすべての選択肢と関連づけられねばならない。

そうして,第

3

段階では芯思決定者は優先的結果,すなわち

r

最適」な

結果を選択しなければならない。

この

J 2

合,会計システムは,情報システムとして志思決定モデノレに迎合的

(4) 

な情報を捉供するものでなければならない,という

O

そ乙で, スタ一リングは I市

i

打iJ拐見dに乙おける芯芯;思決定モデノルレにおける目的適合↑

(5) 

テストを誌みる。

まず,

r 

‑l¥iJ9j・の選択肢」は所要の犠牲と利用可能資金との比較によって決 定される。

選択肢の原則:もし

S i 

t~F t. ならば,資産 i の買収ば時点 t において可能な

選択である。

この場合 ,

Sit=

時点

t

における資産 i1と所要の犠牲 F

t =

時点

t

における利用可能資金

(8)

また,利用可能資金は次の三つの相互に関係、づけられた変数の関数とされる。

Ft=f (Xlt

, 

X2t

…,

Xnt

,ム負債,ム資本)

Xit=

時点

t

における資産 iのエクシット・ヴァリュウ すなわち,利用可能資金の決定にとってはエクシット・ヴァリュウが適合 的である

O

一方,資産の取得に要する犠牲は当該資産のエントリー・ヴァリ

ュウによって特定される

o

S i  t=nit

,もし

i

資産が所有されていない場合 この場合,

nit=

時点

t

における資産

i

のエントリー・ヴァリュウ

また,一つの投資計画全体を取得するの要する犠牲は当該計画に含まれる 諸資産のエントリー・ヴァリュウの総計である

D

かくて,未所有資産のエン

トリー・ヴァリュウは選択肢の決定にとって迎合的である

O

他方,所有資産の保有に要する犠牲は当該資産のエクシット・ヴァリュウ によって特定される。

Sit=Xit

,もし資産

i

が所有されている場合

こ の よ う に , 資 産 の エ ク シ ッ ト ・ ヴ ァ リ ュ ウ 保 有 に 要 す る 犠 牲 額 に 等 し く,その犠牲額は当該資産の売却による利用可能な資金に等しいのであるか ら,選択肢の決定にあたって迎合的であるという

O

つぎに,

r

市場の結果」ついては,新規投資計固または既存の計画を維持 す る こ と の 市 場 結 果 は , 当 該 投 資 か ら 生 ず る 将 来 キ ャ ッ シ ュ ・ フ ロ ー で あ

る。

収益性原口iJ:もし,

S  i  t

く

dit

ならば,投資

i

はその割引率で

S i  t

を投資する より収益的である。

dit=

資産または投資計画 iの時点

t

における割引価値 ただし,この場合,将来キャシュ・フローには投資の産出物からのキャッ シュ・インフローと投資継続のための生産設備の取替え等のキャッシュ・ア ウトフローとから成る

D

したがって割引価値はそれに必要な犠牲額との先額 として示される。

dit‑Sit=i

の純剖引価値

もし,この純額がプラスであれば,投資計画 iは同訓引率で

Su

の投資

(9)

スターリング会計理論

7 9  

よりより収益力が大きいとみなされる

o

乙れは資本予算モデノレとしてよく知 られるが,資本予算は新規計画について検討されるから,乙の場合,割引価 値は新規計画のための犠牲額,すなわち,エントリー・ヴァリュウと比較さ

れる。

dit‑nit=

末所有資産の割引価値

また,このモデノレは既存の投資についても適用される

o

乙の場合,投資は 定期的に再評価され,要求される犠牲額は所有資産のエクシット・ヴァリュ

ウで示される。

dit‑Xit=

所有資産の純割引価値

以上の意思決定プロセスの概略から明らかなように,エクシット・ヴァリ ュウは (1)選択肢の決定, (2)既存投資の収益性の決定,そしてまた, (3)リスク 評価に対して目的適合的であることを主張するのである。

2 .  

エクシット・ヴァリュウと目的適合性 (1)  エクシット・ヴァリュウ法

先にもみたごとく,スターリングは

r

エクシット・ヴァリュウ」ない し「エクシット・ヴァリュウ法」は資産をその即時売却価格(i

mmediate market s e l l i n g  p r i c e )

で評価する方法を意味する,とする

o

そうして,減 価償却は,このエクシット・ヴァリュウの二つの差額であるとする

o

第 1年 度 j切における減価償却は新資産のエントリー・ヴァリュウ(犠牲にされた現金 またはその他の資産のエクシツト・ヴァリュウに相当する〉と第 l期末における当

(7) 

該資産のエクシット・ヴァリュウとの差額である,とスターリングはいう

o

スターリングは,怠思決定プロセスの枠組みにそってエクシット・ヴァリ ュウの目的迎合性テストを誌みる。

まず選択肢について,つぎの命題を提示する

o

市場の鉄則:資産 iのエクシット・ヴァリュウが資産

j

のエントリー・ヴァ リュウより大きいか等しい場合にのみ資産 iは資産

j

と交換さ れうる。

これから,次の二つの原則を導きだす。

(10)

交投原

f t

Ji

1 

:ある所有資産のエクシット・ヴァリュウは当該資産の実際ないしは 潜在的な交換に関してのすべての意思決定について目的適合的であ

る。

交換原則

2

:ある未所有資産のエントリー・ヴァリュウは当該資産の実際ないし 潜在的な交換に関してのすべての意思決定について目的適合的であ

る。

意思決定者が行う第 2段階は各々の選択肢の結果を予測する乙とである。

スターリングは,新規計画の結果ないしは既存の計画の維持の〈市場〉結果 はその計画から生づると予測される将来キャッシュ・フローである

J

スター リングは,この市場結果を収益性原則

( p r o f l t a b i 1 i t yp r i n c i p l e )

と呼んでい る。収益性原則は計画 iが収益性ある選択として位置づけられるためには,

計画 i に要する犠牲は計画 i の割引価値より小さいことを要求する

o

収 益 性意思決定の三つの例を考察しよう

o

資産についての一般的な怠思決定はそれを保有し使用するか,それを売却 し,その売却収益を他の資産に投下するか,どうかということである。すな わち,いま

Xit=

資産 iの

t時点におけるエクシット・ヴァリュウ , dit= 

資産または計画 iの

t

時点における割引価値,とすれば,

保有対売却

:dit 三 三 Xit

もし>ならば,資産を保有 もしくならば,資産を売却

すなわち,乙のモデノレにおいては,売却によるエクシット・ヴァリュウと 使用による割引価値との比較が可能となる

O

また,乙のモデノレの変形は,い ま,

dut‑nut

を未所有資産の純割引価値,

dot‑Xot

を所有資産の純割引価 値とすれば,

保有対取替

(d ut‑nu t )

三三

(dot‑Xot)

もし>ならば,資産を買収 もしくならば,資産を保有

すなわち,乙のモデルにおいてはわれわれは所有資産を未所有資産と取替 えるべきかどうかの意思決定を行うことになる

o

もし,生産技術が変化すれ

(11)

スターリング会計理論

8 1  

ぱ,競争に対処するためにもある所有資産が末所有資産と取替えられるかも しれない。このように,所有資産のエクシット・ヴァリュウは取替の意思決 定に必要であり,また取替は会社の継続のために必要であるのだから,エク シット・ヴァリュウは継続企業にとって必要である

O

エクシット・ヴァリュ ウ評価は会社の清算を意味しない,と

o

保有対売却の意思決定モデノレのもう一つの変形は保有対賃貸借意思決定モ デルで,つぎのように一般化される

o

保有対賃貸借 (d

ot‑Xo t )

手

dγt

もし>なら,資産の保有 もしくなら,資産の賃借

乙のモデルにおいて ,

do t

と

drt

は資産の使用によるキャッシュ・イン フローを含んでいる

o

賃借料支払のキャッシュ・アウトフローは将来の乙と であるから賃借資産の現在犠牲は無い。したがって

d r t

は賃貸借の割引価 値である。所有資産

dot

についていえば,その維持には将来キャッジュ・

アウトフローを含む。かくて

dot‑Xot

は純割引価値である

O

(2)  エントリー・ヴァリュウ法

「 エ ン ト リ ー ・ ヴ ァ リ ュ ウ 」 と は 資 産 を そ の 現 在 貝 入 価 格

( c u r r e n t purchase p r i c e )

で、評価する方法を志味し,減価償却は,これら市場価格の

~10)

問の差額と定義する

O

これはジョンソン=ベノレ(J

ohnsonand B e l l )

が最

(11) 

近,再調達原価

( c u r r e n tr e p l a c e m e n t  c o s t )

として提案したものである

O

エントリー・ヴァリュウもエクシット・ヴァリュウと同様に測定可能であ る

D

エントリー・ヴァリュウは経験的現象をさすものであるから,それは現 在報告を行っている慣行的な配分より優れている

D

しかし,スターリング は,エントリー・ヴァリュウの目的適合性については理解できない,とい

(12) 

う。すべての未所有資産のエントリー・ヴァリュウはそれらの資産のあらゆ る買入れにとって目的迎合的である口しかし,明らかに所有資産のエント リー・ヴァリュウはその売却については非適合的である(何故ならば,それ らはそのエクシット・ヴァリュウで売却されねばならない)と思われる

o

か くして,エントリー・ヴァリュウの目的適合性は所有資産については先の定

(12)

義にはまらない,とこのようにいうのである

o

( 3 )

割 引 価 値 法

つぎに,割引価値法について,スターリンクやはつぎのようにいう

o

この提 案は将来キャッシュ・フローを予測し,それらのフローを一定の適切な利子 率で割引き,こうして得られた割引価値で資産を報告することである

o

会社 の二時点におけるこの割引価値の差額がその期聞における利益として定義さ れる

o

減価償却資産については,当該資産の二時点問における割引価値の差 額がその期間の減価償却(額)として定義される

o

割引価値法においては,資産は先づ独立に決定された割引価値で記録さ れ,それは現金支出額より大きく,割引価値と現金支出額との差額が資産買 収の利益となる

O

あらゆる怠思決定が予測を必要とするのであるから,割引 価値の目的適合性についてはほとんど問題はない,という

O

しかし,割引価値は測定ではない。すなわち,それらは実際の経験的対象 (物)を有していない。つまり, 、主観的、であると,このようにスターリン グは主張する

o

(4)  慣行的に配分された過去の貝入価格

スターリングは,いわゆる「歴史的原価」を「慣行的に配分された過去の 買入価格」とよぷロ彼は歴史的原価が無意味であるという

O

また,歴史的原 価は目的適合性の規準に適合しない。先にかかげた目的適合性テストを適用 すれば,私は歴史的原価を特定するいかなる意思決定モデノレを見出すことは

(14) 

できない,という

O

(5)  慣行的に配分された現在買入価格

ここでいう「慣行的に配分された現在買入価格」とは,一般に「取替原価」

(15) 

のことを指しているのであるが,それは,エドワーズ=ベノレ

(Edwardsand 

(16) 

B e l l )

, レヴズィーン

( R e v s i n )

,

SEC

,その他によって示された種々の 配分および報告手続のことであるとスターリングはいう

O

それらの諸理論 に共通なことは,それらが,過去の買入価格にかえて現在貝入価格の配分で ある,ということである

D

かくして,取替原価も乙の窓味で、は歴史的原価と まったく類似している

O

取替原価は歴史的原価と同様なものであるから,歴

(13)

スターリング会計理論

8 3  

史的原価に対して当はまる批判のすべてが取替原価についても当はまる。先 にもふれたように,配分された数値は測定できない。したがって,取替原価 は経験的検証可能性という第ーの規準を満さない。目的適合性テストに関し ては,取替原価を特定する意思決定モデノレを見たことはない。取替原価法の 目的適合性テストへの関心の欠如は基本的欠点である。かくて,スターリン グは現時点で,取替原価の目的適合性は証明されていないと結論づけねばな

(17) 

らないと,とのようにいう

o

(註)

(1) 

S t e r l i n g .   R.R.

, 

Toward a  S c i e n c e  of A c c o u n t i n g

, 

o p .  

cit., 

p p .   82‑84. 

( 2 )   I b i d .

, 

p.  8 5 .   ( 3 )   I b i d .

, 

p p .  95‑98. 

( 4 )   I b i d .

, 

pp.  98‑100. 

( 5 )   I b i d .

, 

p p .   100‑105. 

(6) 

I b i d .

, 

p .   1 1 8 .   ( 7 )   I b i d .

, 

p .   1 1 7 .   ( 8 )   I b i d .

, 

pp.  117‑157. 

(9) 

I b i d .

, 

p .   1 2

1. 

( 1 0 )   I b i d .

, 

p .   1 2 4 .  

U 1 )   I b i d .

, 

p .   1 2 4 .   J  ohnson

, 

L .  Todd

, 

and B e l l

, 

Ph

i1i

p  W.

, 

"Current Repla‑

cement C o s t s :  

A 

Q u a l i f i e d  O p i n i o n . "  Journal of Accountancy

, 

Nov. 1 9 7 6

, 

p p .   6 3

ー

7 0 .

U 2 )   I b i d .

, 

p .   1 2 4 .   U 3 )   I b i d .

, 

p .   1 2 5 .   (

1

4) 

I b i d .

, 

p p .   141‑144. 

回

Edwards

,E

.   0.

, 

and B e l l

, 

P .   W.

, 

The Theory and Measurement of  B u s i n e s s  l n c o m e .   1 9 6 1 .  

U6) 

Revsine

, 

Lawrence

, 

Replacement C o s t  A c c o u n t i n g

, 

1 9 7 3 .  

U

7) 

S t e r l i n g .   R .   R.

, 

o p .   c i t .

, 

p p .   144‑146. 

(14)

N  エクシット・ヴァリュウと財務諸表

, .

 

貸借対照表モデル

スターリングはつぎのような貸借対照表モデノレを設定している

O

乙乙で考 察の対象とする会社は二つだけの資産ーすなわち,現金と減価償却資産ーと を有し,負債を有しないものとする

D

同会社は生鮮商品を現金で即売すると する

o

したがって棚卸高はない。販売はすべて現金により,受取勘定に関す る問題はない。同様に,収益に関しても何ら問題はない。減価償却が最大の 費用であり,その他の費用として給与は現金で支払われる

o

まず,貸借対照表借方の資産の価額及び総計は次のように定議される

o Xft= : E Xi  t 

i  ε f  

乙こで X

ft

は時点

t

における会社

f

の総資産額であり,それは会社

f

の(要素が

ε

である)すべての資産のエクシット・ヴァリュウの総計であ る。先の仮定の場合,

現 金

XI t

償却資産

X2t 

総 資 産

Xft 

先に証明されたごとく,償却資産のエクシット・ヴァリュウは, (1)経験 的に検証可能であり, (2)意思決定モデルにとって目的適合的である

o

した がって,考察の対象となる追加的な問題は資産総計 X

f t

の如何である。

スターリングは,この総資産の論理化に当って,資産の測定および報告の特 質を財貨支配権

(CommandOver Goods=COG)

すなわち交換価値概念に 求めている

O

まず,現金額は

COG

の尺度である

o

償却資産のエクシット・

ヴァリュウもまた一つの

COG

の測定である

o

乙の二つが合算される場合 会社の総

COG

を測定する乙とになる。すなわち,もし,償却資産のエク シット・ヴァリュウが手元現金と合算されれば,その合計額は,追加的財務 調達を無視しても,市場における会社の総財貨支配力を表わすことになる,

という

D

(15)

スターリング会計理論

8 5  

まず,スターリングは,乙の

COG

概念の第一の規準として

X

の経験的 検証可能性をあげている

o

この規準は諸資産のエクシット・ヴァリュウを合 算することの正当性である

o

問題の核心は,エクシット・ヴァリュウは市場価格であり,それらは市場 価格のすべての特質を有している

O

すなわち,それは需要とそれに対する供 給とによって価格が決定されるという乙とである

o

たとえば,ー単位の棚卸 商品(ー絡に売却された場合)のエクシット・ヴァリュウはー単位ごとのエク

シット・ヴァリュウの 2倍に等しくはない。かくて,会社の全体とエクシツ ト・ヴァリュウ(すべての資産が一括売却された場合)は各資産が個別に売却さ れた場合のエクシット・ヴァリュウの合計に必ずしも等しくない。スターリ

(3) 

ングはつぎのようなモデノレを設定する

D

μ A+ μ B= μ (A    : q B) 

乙こで

μ

は測定操作であり ,Aおよび

B

は 測 定 対 象 , そ し て 中 は 特 定の結合方法を指す。もし,両辺の大きさが等しければ,

μ

によって測定さ れた特質は「加法的J

( a d d i t i v e )

といえる。

乙の式で,先にも述べたごとく, 。が一括売却を表わすとき,エクシッ ト・ヴァリュウは加法的ではない。すなわち,

μ

はエクシット・ヴァリュウ

e

が一括売却行為である場合

μ A+ μ B

チ

μ ( A

<t 

B )

である

O

しかし, <tの他 の解釈が存在する場合,等式が成り立つ。われわれは中を対象物

A

と

B

の結合という解釈ではなく ,

A

および

B

の産出物

( o u t p u t )

の結合と定義 することもできる。

エクシット・ヴァリュウについて,つぎのような経験的検証モデノレを作る

(4) 

乙とができる。

資産A→Aから受取られた金額→Aによって取得可能な財貨 資産

B

→

B

から受取られた金額→

B

によって取得可能な財

f t

資産についてみれば,先にみたごとく,それらが一括売却される

i

見合,

エクシット・ヴァリュウは非加法的である

D

しかし,資産(の売却)から得 られた金額,すなわち,産出物段階では加法的である

o

このことから,われ われは,ゆが個別的な売却と受取った金額の結合を怠味すると解釈した場合

(16)

エクシット・ヴァリュウは加法的といえる。さらに,乙のことは,受取られ た金額の結合から受取り可能な金額の結合予測にまで適用できる

D

す な わ ち,これは,受取り可能な金額を総計し,その総計を怠思決定に用いること ができる。たとえば,資産を保有しつづけるか,売却するかの意思決定がで きる

D

たとえば,

資産

A 1 0 0 ド j レ

資産

B 2 0 0  

合 計

3 0 0 ド ノ レ

が可能であり,総計額は経験的に検証可能かつ目的適合的である

D

また,乙 の総計は総財貨支配力を特定する

o

先に設定した具体例の場合,われわれは,乙の昨の解釈の場合,減価償 却資産のエクシット・ヴァリュウと手元現金を合算できる

D

たとえば,

現 金 ( 時 点

t

における額

1 0 0 ドル

自動車(時点

t

におけるエクシット・ヴァリュウ)

3

,

0 0 0  

総 計(時点

t

における

COG)

3,100

ド ノ レ

(5) 

となり,これは経験的に検証可能な総計である,という。乙れによってエク シット・ヴァリュウ貸借対照表の一貫性を主張するのである

o

2 .  

損益計算書モデル

では,つぎに,スターリングにおいては,利益および損益計算書はどのよ うに論理化されるであろうか。

スターリングはいう。利益についての明白な定義は,個人的消費あるいは 投資額を調整後の

2

時点聞の富

( w e a l t h )

の差額である,と

o

したがって,

適切な宮の尺度が得られれば,適切な利益の尺度を得ることになる

o

Aft+l‑Aft‑1fT=YfT 

Aft=f会社の時点

t

における資産総額 IfT=f会社の期間

T

の投資額 YfT=f会社の期間

T

の純利益

先に「宮」は財貨に対する支配力

(COG)

と解釈された。それは, 乙の 解釈が経験的検証可能性および目的適合性の相互関連的な規準に合致するか

(17)

スターリング会計理論

8 7  

らである

o

かくて

Y

は

COGの増加分である。かくて,損益計算書は COG

の増加分である Y の説明

( e x p l a n at i o n )

である口一般に,利益の構成要 素は交換

(exchange)

と価値変化

( v a l u echange)

である

o COGの増加と

なる顧客との交換は収益であり,

COGの減少となる雇用者との交換は賃金

とよばれる。

COG

の増加となる価値変化は評価上げ,

COGの減少は減価

(7) 

償却となる。

先に掲げた具体的な単純化例の場合,エクシット・ヴァリュウ損益計算書

(8) 

はつぎのごとくである。

収 益 ム

+ X1T ド ノ レ

賃 金 ム

‑ X2T

減価償却費 ム

‑X3T

純 利 益

YfT  ド ノ レ

乙の損益計算書は期間 T に発生した経験的現象における変化の説明であ る。特に,それは顧客と雇用者との交換および償却資産のエクシット・ヴァ リュウの減少から生ずる

COG

の変化を説明する。この利益数字は

COG

の増加または減少の代数和である

D

まさに,収益は

COG

の増加であり,

賃金は

COG

の減少であり,また減価償却は

COG

の減少である

o

このよ

(9) 

うに, 損益計算書は

COG

の増減を説明するものにほかならない。すなわ ち,乙れはある特質の減少を同じ特質の増加から控除し,その特質の純増加 を結果として得るのである。換言すれば,損益計算書は市場において支配可

(10) 

能な財貨の増加の一つの予測を行うことである,とこのようにいう。ここで は,スターリングは,要約すれば,もし資産のエクシット・ヴァリュウが経 験的に検証可能,かつ加法的であるなら,そのエクシット・ヴァリュウの増 加および減少もまた経験的に検証可能,かつ加法的である。また,資産のエ クシット・ヴァリュウおよび資産総計が目的適合的であれば,その増加およ び減少もまた目的適合的である

o

このことを論証し,エクシット・ヴァリュ ウ会計(財務諸表)を合理づけたのである。

(18)

(註)

n u  

円 ︒

﹃ ︐ ム

G U   R U  

司E ‑‑

p p g 

n 

. ︐ ︐ .  

6'b n u 

O 

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o 

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︐ d  r 

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叩 O 

T 

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・

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1 4

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L 6 6 6 6 9 9 p g  

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代 い

I︐ 

l ) ) ) ) ) ) )

﹄

1 2 3 4 5 6 7 8

‑ X   ( ( ( ( ( ( ( ( (  

V  スターリング会計理論の論理構造と現実的意味

1 .

論 理 の 構 造

以上,われわれは,スターリンク*の主張に従って,その論理展開を検討し てきた。いまいちど,その論点の要点を,彼自身の要約に従って整理しょ

つ

O

スターリングの立論の出発点は,会計の第一の問題が,それら会計数値が 経験的対象物を有していないことにある

O

すなわち,会計数値が経験的事象 を写していないというのである

O

この問題の解決には,それが経験的現象を 表わすような報告数値の目的を採用することである

O

そこで,第ーに,もっ とも重要なことは,一般に認められた会計原則は経験的現象について説明す るものでなければならない。この基準は,報告数値が経験的にテストされた ものであるべき一般に認められた監査基準の設定にも適用されるとする

O

たとえば,資産価値の説明または検証についていえば,われわれは,説明 せんとする実体の交換によって生じた過去の価格を示す記録に注目してき た。すなわち,現存価値を正確に表わす数値を検証するのではなく,勘定を

「調査」し,それら過去の価格の配分計算を行っている

o

最近まで,我々は

GAAP

を引用することで,自らを弁護してきた。しかし,裁判所は,特に

C o n t i n e n t a l  V e n d i n g

事件において,

GAAP

は弁護にならないということ

(19)

スターリング会計理論

8 9  

(2) 

を告げている。だが,われわれ自身が財務諸表は真実で,正確,かつ会計人以 外の人によっても理解できるものであるということを確信しなければならな い。われわれは未費消原価の象牙の塔から抜け出し,市場価格という実際の 世界に入るべきである

o

すなわち,会計を経験科学へ転換する必要性を認識

(3) 

すべきである,とこのようにいう。この点,乙の経験的検証可能性の規準を 備えたエクシット・ヴァリュウと同様いくつかの提案があるのであるから,

次の規準が必要となってくる。

会計が直面している第二の問題は,いかなる経験的に検証可能な属性につ

(4) 

いて測定し,報告すべきかということについての選択の問題である

D

そし て,この問題の解決は目的適合性規準の巌密な適用であるとする

o

一般に,

乙のことは,会計人が意思決定科学にも巻き込まれることになる

o

意思決定 理論は情報の束縛に関心を払わぬままモデノレを設定する

o

一方,会計人はモ デノレの特定化に関心を払わずシステム作りを行っているという

o

意思決定と 情報システムとの異った両機能の密接な協力が不可欠である。情報システム 体系のー要素としての会計情報は意思決定モデノレ目的によってコントローノレ

(5) 

されねばならない。

かくて,スターリングは,経験的検証可能性と目的適合性という関連づけ られた規準を採用するというのが,乙の理論の最も重要なメッセージである というのである。その次に主要なメッセージがエクシット・ヴァリュウがこ

(7) 

の両規準を満たすということである。そして,むしろエクシット・ヴァリュ ウ評価法は乙の二つの規準から導きだされた,という論理である

o

乙のように,スターリングは経験的検証可能性と目的適合性とを論理構築 の中心概念に据えている

o

スターリングはいう。もし,経験的に検証可能な 属性が採用されれば,それは会計にとって大きな改善となる

o

例えば,エン トリー・ヴァリュウによる報告は現在の実務より優れている。それは,エン トリー・ヴァリュウの目的迎合性は認め難いとしても,それらは経験的に検 証可能である

O

この経験的検証可能性が極めて主要であり,広範な会計の改 苦aをもたらすが,目的迎合性もまた,利用者のニーズに対応するためには重 要である。そして,芯思決定モデノレにおいて検持したごとく,所有資産に関す

(20)

るエクシット・ヴァリュウ乙そ目的適合的な属性であることが明確に示され

【 8)

た,という

o

すなわち,とこでの主張は,会計について特定の規準を排し,

経験的検証可能性と目的適合性という一般的科学的規準を採用し,科学とし ての会計学構築の第一歩とする,というと乙ろにある

D

2 .  

スターリング会計理論の現実的意味

以上に分析したごとく,スターリングはその会計理論の論理構築に当って 会計の科学化を計るという用具立てを行い,この科学の名において会計コン ペンションを否定する

o

なかんづ、く,それは伝統的会計理論の基礎をなす

「配分」論理を否定し

r

測定」の論理を導きだすところに論理上の役割が ある

o

すなわち,配分のコンペンションにかえて,測定という科学の基本的 方法の導入によって会計数字の検証可能性を保障し,自己の理論を会計ノマラ

ダイムの展開に位置づけるところに特徴がある。

とのように,スターリング理論の基軸は費用・収益対応原則

Cmatching)

を軸とする「配分」論理を排し,

r

測定」の論理を対置するところにある

o

そして,この測定の対象たる「測定可能な属性」を科学的仮説となす規準と して「経験的検証可能性」と「目的適合性」と二つの概念を設定したのであ る

o

それでは,測定可能な属性とは何か,スターリングは経験的検証可能性 と目的適合性とを満す属性としてエクシット・ヴァリュウによる評価方法を 導きだしたのである

D

乙のエクシット・ヴァリュウ概念こそスターリング理 論の中核をなすもので,費用測定,なかんづく減価償却を測定可能な属性に おいて定義することを論理づけたのである

O

すなわち,

r

減価償却は資産 のエクシット・ヴァリュウの減退である」というのがそれである

o

乙れは,

例えば自動車についていえば,その中古市場価格による評価によって測定可 能となる

o

あきらかに,乙れは慣行的な配分に勝るという論理展開である

o

スターリングの仮説については少くとも現在エクシット・ヴァリュウの予測 が可能であり検証可能である点において科学的法則の特質を備えている,と

いうのである。

では,乙のエクシット・ヴァリュウないしエクシット・ヴァリュウ評価方 法のもつ意味はどのようなものであろうか。エクシット・ウ、、ァリュウ会計の

(21)

スターリング会計理論

9 1  

特徴は現在価値での資産の評価替にあるロそれは原価にとらわれない資産の 評価上げ計上が可能であると同時に評価下げ,すなわち,償却資産における 減価償却が可能であることを意味する

o

後者の場合,すべてエクシット・ヴ ァリュウの変化を測定するという論理枠の中で

100

パーセント即時償却もま た可能となるのである

o

現在,会計情報理論の主流をなす意思決定=有用性アプローチは目的適合 性と信頼性概念を軸として代替的情報のなかから意思決定に有用な情報の選 択という論理によって多様な会計方法を論理づけた。これに対して,スター リングは「経験的検証可能性」と「目的適合性」というこつの論理基準をも とに現実を測定するというエクシット・ヴァリュウ会計を提示することによ って配分論理を排し,測定論理への論理(体系)転換によって,従来の費用 配分論理をもってしては律しえない会計実務の要請にこたえんとするところ に,乙の理論の論理としての役割があると考えられる

D

(註)

( 1 )   S t e r l i n g

, 

R R.

, 

Toward a  S c i e n c c e   0/  A c c o u n t i n g .   o t .   c i t .

, 

p .   2 1 3 .   ( 2 ) ,  ( 3 )   I b i d . ,  pp. 214‑215. 

(4), 

( 5 )   I b i d .

, 

p .   2 1 5 .   ( 6 )

, 

( 7 )   I b i d .

, 

p .   2 1 5 .   ( 8 )   I b i d .

, 

p .   2 1 6 .  

( 9 )   I b i d .

, 

p . 7 0

, 

p . 7 6

, 

p . 2 1 6 .  

(

1

0 )   F i n a n c i a l  Accounting Standard Boad

, 

S t a t e m e n t   0 /   F i n a n c i a l  A c c o u n t i n g   C o n c e p t s  No. 2  Q u a l i t a t i v e  C h a r a c t e r i s t i c s   0 /   A c c o u n t i n g  l n / o r m a t i o n .   May  1 9 8 0 .

拙稿

fFASB

財務会計概念構造の特徴

‑FASB

財務会計概念ステイトメン

ト第

2

号についてー

J r

経営と経済』第

6 1

巻第l号,昭和

5 6 年 6

月参照。

参照

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