• 検索結果がありません。

包括的公正価値会計の動向と業績報告の論理

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "包括的公正価値会計の動向と業績報告の論理"

Copied!
21
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

《研究 ノー ト》

包括的公正価値会計の動向と業績報告の論理

‑ 金融商品会計を視点に

田 正

Abstract

Thisresearchwilladdresstheconceptualfoundationsbeingdeve lopedbytheIASB/ASBperformancereportingprojectfortheformatof theslnglestatementofcomprehensiveincome.Because,lnrecent years,developmentinthefinancialreportingmodel,Includingthegreat eruseoffairvalueandreflectingthechangeinthosefai/rvalueinthein‑

comestatement,hasplacedastrainonthetraditionalincomestatement. Thishasledtothequestionsaboutthescopeofperformanceandhowit shouldbereported.

Issuesaddressedinthisprojectincludenextpropositions,thatis, (i)Thereshouldbeasinglestatementofcomprehensiveincomewhich shouldreportallincreaseordecreasesinnetasset,otherthanthosear lSlngfrom transactionswithowners.

(ii)Recyclingbetweencategoriesinthestatementandbetweenthe statementofshareholders'equitywouldbeprohibited.

(iii)Allcomponentofcomprehensiveincomeareclassifiedasamatrix offourcategories(incomebeforeremeasurementorremeasurement, andbusinessorfinancing)suchthattotalbusinessincomelesstotal financlngexpensesisequaltocomprehensiveincome.

Thispaperexaminethetheoreticalissuesrelatedtotheproposed columnardistinctionsinthestatementofcomprehensiveincome.

Keywords:performancereporting,comprehensiveincome,sharehol dervalue

(2)

は じ め に

JWGに よって提起 され,IASBに よって推進 されてい る新 たな金融商品 に 関 す る 「ドラフ ト基準」(1),すなわち,すべての金融商 品 を公正価値 で評価 し,評価損益 をすべて損益計算書 に計上 す る とい う包括的公正価値会計導 入 は,各国会計基準設定主体 の反対 もあ って,直裁 に基準化 され るには至 って いない。 それは少 なか らぬ国の会計基準設定主体 が金融商品会計基準 に関 し て現行の混合測定 アプ ローチ(mixedmeasurementcost‑fairvalueapproach) を主張 し,急速 な包括的公正価値 モ デル (comprehensivefairvaluemeas‑ urementmodel)への移行 に反対 を唱 えてい るこ ととして表 われてい る(2)0

この よ うな状況の下 で,IASBは金融商 品の包括的公正価値 モ デル の導 入 は他 のIASBプ ロジ ェク トであ る 「業 績報 告」 (ReportingPerformance) (3)に よって合理的解決 が可能であ る とい う見解 を示 し,同プ ロジ ェク トを

(200110月以来)急速 に推進 して きた。

一万 で注 目され るのは,IASBが金融商 品会計基準 の見直 しについては, 当面現行基準の改訂 に よって対応 す る とい う方針 を示 した こ とであ る(4)。 こ れ を受 け,IASB2002 6月 に現行IAS32号 「金融商 品 :開示 と表 示」及 IAS39号 「金融商品 :認識 と測定」の改訂 「公開草案」を表 わ してい る(5)0 その改訂 の主要 な狙 いの一 つは 「トレーデ ィング 目的保有」の金融資産 ・負 債 の適用範囲の拡大 を図 るな どの方 向性 を示 した ことにあ る。 それは結論 的 にいえば,業績報告 プロジ ェク トの進展 に先行 して,金融商品会計 におけ る 公正価値 評価 適用 の実質的拡大 を意 図 した もの とみ る こ ともで きるのであ

ここでは,以下,IASB金融商 品会計基準 の改訂 の狙 い と包括的公正価値 会計導入のいわば ̀受 け皿 ' としての 「業績報告 プ ロジ ェク ト」のプ ロセ ス を貫 く会計論理 を整理す る ことに よって,公正価値 会計 の制度的設定 のあ り 方 とその会計的意味 を分析 す る。

(3)

(I) JointWorkingGroupofStandard‑Setters,FinancialInstrumentsandSimilar Items,December,2000.

(2)(3) 日本公認会計士協会JICPAジ ャーナル』Vol.14No.4,April2002,50‑53ペー ジ参照。

(4) 2001 7月,IASBの発足 と同時 に各国基準 とIFRSとの統 合 を 目的 として ス ター トした。

(5)IASB,ExposureDy;aftofProPosedAmendmenttoIAS32,FinancialInstruments:

DisclosureandPresentation・IAS39,FinancialInstruments:Recognitionand Measurement,June,2002・

1.

JAS金融商品会計基準 の見直 し

(1) 現行基準 (lAS39号)の内容

IASBにおける金融商品会計基準の見直 しは包括的公正価値会計導入への 一過程 とみ られ,当面の基準改訂案の内容 を検討 してお く必要がある。以下,

その概要 をみてお こう

IASBは2001 7月に現行のIAS39 (199812月設定)改定 プ ロジ ェク ト の開始 し,同時 にまた,IAS32号の改訂 を合意 した。 その出発点 にな ったの は200012月 にJW Aが 「ドラフ ト基準」 を表 わ した こ とであ るが, これは 全ての金融商品を公正価値で測定す る とい う金融商品会計の大 きな転浜 を提 示 した ものであ る。 しか し, この提案のフ ィー ド ・バ ック効果は多 くの国の 会計基準設定主体 か らの反対意見であ り,包括的公正価値会計モデルの導入

にはプロセ スが必要であ るこ とが示 されたのである(1)

か くして,そのプロセスの一つが既存金融商品会計基準の見直 しであ る と み られ るのであ るが, この改訂 プロジ ェク ト自体はいわゆる 「修正」であ っ て,同会計基準の抜本的再考 を行お うとい うのではない。その要 旨は金融商 品についての 「経営者の保有意図」 に基づ く混合測定モデルの複雑 さを緩和 す るこ と, また金融商 品の測定 に関す るIAS39号 とUS・GAAPとの差異 を 解消せん とするものであ る とされる ところに特徴があ る(2)0

ところで,現行IAS39号は金融商品を次の 4つに区分 した(3)0

(4)

・短期売買 目的で保有す る金融資産叉は金融負債

・満期保有投資

・企業 によ り作 り出された貸付金及び債権

・売却可能金融資産

これ らの測定 に関 してみれば,同号は当初認識後の測定 に関 して上記の 4 区分を前提 にデ リバ テ ィブを含む金融資産 を公正価値 を もって測定 するこ と を原則 とし,次の金融資産 区分 についは個別 に規定 したのであ る。すなわち, これ ら公正価値評価 の対象か ら除外 された金融資産で,固定 した満期 を有す るものは実効金利 を用いた償却原価で測定 し,固定 した満期を有 しない もの は原価で測定 しなければな らない とした。

そ こで公正価値評価 による利得 ・損失の処理 についてみれば(4),ヘ ッジ関 係の一部 とな っていない金融資産叉は金融負債の公正価値 の変動 に よって認 識 された利得叉は損失は以下の ように報告 され る とされた。

(a)短期売買 目的で保有す る金融資産叉は金融負債 に関す る利得叉 は損失 は発生 した期 間の純損益 に含めなければな らない。 これ に関 し,デ リ バ テ ィブはヘ ッジ手段 として指定 されていない限 り常 に短期売 買 目的 で保有す るもの とみなされなければな らない ;

(b)売買可能金融資産 に よる利得叉 は損失 は以下 のいずれかの方法で処理 しなければな らない :

(i)発生 した期の純損益 に含め る ;叉は

(ii)持分変動計算書 を通 して直接 に資本の部 で認識 し,当該金融資産 が売却 , 回収,その他の方法 によ り処分 されるか,当該金融資産が減損 している と判 断 され る ときには,過去 に資本の部 で認識 された累積利得又は損失 を当該事 象が発生 した期の純損益 に含め られ る。

(2) 改訂39号の内容 とね らい

改訂草案のアプローチ法 はIAS39号の適用 を簡素化 し金融商品の測定 に公 正価値 の適用 を拡大 す るこ と,しか もその適用を任意な もの とし強制 を して

いない ことである, といえよう(5)

(5)

既 にみ た ご と く,現 行IAS39号 は特 定 の範 噂 の金 融 商 品 に つ いて は そ れ を 公 正 価 値 で測 定 す るが , その変 動 差額 を損 益計 算 書 に認 識 す る こ とは認 め て い な い。 これ に対 して , 改訂 草 案 は い か な る金融 資産 又 は金融 負債 につ い て もその 当初認 識 時 に売 買 日的保 有 に指 定 す る こ とに よって そ れ を公 正価値 で 測 定 し, その変動 差 額 を損 益 計 算 書 に認識 す る こ とを認 め た の で あ る(6)。 改 訂 草案 は その10項 を次 の ご と く変 更 した (7)0

短期売買 目的で保有する金融資産又は金融負債 とは,当初認識時,企業によって 短期売買 目的で保有すると指定された ものをいう。金融商品は基本的に短期間の うち に売却又は償還する 目的で取得又は引 き受け られた場合に売買 日的保有に指定 され る。 ‑」

す な わ ち改訂 草 案 の眼 目は ,保 有 目的 の 区分 に よる評 価 規 定 の存 在 にか か わ らず ,如 何 な る金 融 商 品 を も 「売 買 日的 」 区分 に指 定 す る こ とに よって公 正 価 値 評 価 を可 能 とす る途 を開 いた こ とで あ る。 改訂 案 は そ の効 用 につ い て 次 の よ うに述 べ て い る(8)0

・まず,提案は現行基準の異なった測定属性を用いる変則状況を緩和できること

・どの金融商品 も当初売買 日的保有に指定することを認めることは公正価値エクス ポージャーのヘ ッジのためのヘ ッジ会計の必要を減少させることになる。

・指定による区分を認めることの利点は売却可能金融資産に関する公正価値損益を 資本の部に直入するか,損益計算書で認識するかの問題は もはや重要ではな くな る。 というのは,企業は当該資産を売買 目的に指定することによってその損益を 損益計算書上に認識することができるからである。

・指定することによって売買 日的保有に区分できることは資産が公正価値で測定 さ れる一方で負債は償却原価で測定されるとい う混合測定モデルか ら生 じる諸問題 を緩和で きる。例 えば,現行IAS39号の もとでは非デ リバティブ負債を売買 目的 に区分することができないことは企業 にとって資産 と負債の貸借対照表計上額 を 対応 させることができない。 この点で,負債を売買 日的保有に指定で きれば,企 業は公正価値変動を資産 ・負債の一貫 した対応関係において認識計上で きること になる。

ただ ,改訂 案 は企 業 を して金 融 商 品 を公 正価値 で測 定 し, その変 動 差額 を 損 益 に認 識 す る こ とを可 能 とす る (強制ではない) が ,企 業 が異 な った会 計 方 法 (例えば,償却原価法) を用 い る こ とに制 限 を加 え る もの で は な い(9)0

以上 が金融 商 品 に関 す る改定 内容 で あ るが, これ か ら も知 れ る よ うに改訂

(6)

基準書案の特徴は測定問題 にあ り,全ての金融商品を当初認識時 に売買 日的 保有 として指定す ることを認め る とい う区分基準の緩和 によって公正価値評 価適用の実質的な拡大 を企図す る ところにある とみ られる(10)

以上 ,改定草案の方 向性は金融商品を経営者の保有意図に基づ く区分 に従 って会計処理 をす る とい う混合測定 アプローチを支 えた区分評価の論理 は放 鄭され,ただ公正価値評価実務の拡大のため基準の弾力化が図 られてい る と み られ るのであ る(ll)。特 に 「経営者 の意 図」の排除は全面 的時価評価 を主 張す るJWG 「ドラフ ト基準」 が とる方 向であ り,金融商品の包括 的な公正 価値評価の流 れ と軌 を一 にする ものである といえよう

(1) 古 内和 明,「リエゾン国会議報告 (3回)(IASBと各 国会計基準設定主体 との 会議)」『JICPAジ ャーナル』Vol.14No4,April2002,51‑52ペー ジ。

(2) IASB,ExposureDraftofProposedAmendmenttoISA32,Financiallnstru‑

ments:DisclosureandPresentation.

IASB,ExposureDraftofProposedAmendmentIAS39,Financialnstruments RecognitionandMeasurement,June,2002,AppendixC,paras.C4C9.

(3)IASB,IAS39,FinancialInstruments:RecognitionandMeasurement, (Revised2000),para.10.

(4) Zbid.,para.103.

(5) IASB,ExposureD71aftofReuised39,SummaryofChanges,p.130.

(6) Zbid.,p.130・

(7) Ibid.,para.10.

(8)Zbid.,AppendixC,BasisforConclusions,paras.C58‑C62.

(9)Zbid.,para.C63.

(10) 例 えば , 日本公認会 計士協 会は,「公開草案第10項 が規定 す る ようように, ど んな金融 商品で も当初認識時 に,売 買 日的保有 として指定 で きるこ とになれば, 本来の 「売 買 日的」のために保有 す る意思 に関わ りな く測定上売 買 目的 に区分す る こ とにな って しまい,売買 目的 と整合 しない。 この よ うに規定 す る こ とは,企 業 が取得 した金融資産 が満期保有 の意 図であ って も叉売 買可能 目的であ って も, この意図 に関係 な く売 買 目的 のため に取得金融資産 の指定 がで きるこ とにな って しま う」 とコメン トした (日本公認 会計士協会 「国際会計基準 (IAS)32号及 び第39号 改訂 公開草案 に対 す るコメン トについて」『JICPAジ ャーナル』Vol.14

(7)

No.12,December2002,96‑100ページ)0

( 1 0

特に留意されるのは,IAS32号,39号の改訂作業が急速に,また各国金融商品 会計基準の改訂動向と無関係にIASBにおいて先行的に推し進められていること である。

2

.業績報告の論理

(1) 業績報告 プ ロジ ェク トの背景

一方 ,金融商品会計への全面時価評価導 入の課題 は, (JWGから)IASB よって引 き継 がれ,「業績報告 プ ロジ ェク ト」の進展 と深 く関係づけ られて いる。 それは業績報告 自体が独立 したテーマであ る と同時 に,それは金融商 品等の全面時価評価の ̀受け皿 '作 りを意味 している とみ られるのであ る。

ところで, 同プ ロジ ェク トはIASBの発足 と同時期 にUK ・ASBとの共 同 プロジ ェク ト (以下,IASB/ASBという) として開始 された (20018月)が, それは直接 には表示の問題 を標傍 しなが らも実質 において金融商品を含めた 資産 ・負債の測定 ,収益 ・費用の認識の問題,すなわち業績や利益概念 に関 する枠組みの大 きな転換の問題 を含んでいる(1)

IASB/ASBは, まず 「業績報告 プ ロジ ェク ト」の背景 に金融商品 をは じ め とす る諸会計基準への公正価値評価の導入があ るこ とをあげている(2)。例 えば,IASにおける公正価値評価規定 は1997年 か ら2000年の間に著 し く増 え, IAS19号 「従業員給付」,IAS38号 「無形資産」,IAS39号 「金融商品 :認識 及び測定」,IAS40号 「投資不動産」,IAS41号 「農業」等 において行 なわれ て きた(3)。これ らの基準は,多 くの場合公正価値変動は損益 に含め られるが, 資本の部 に直入す る とい う処理法 もある (売却可能金融資産の公正価値評価) 評価差額の処理 ・表示 とい う点では一貫性 を欠いているのであ る。

また,「業績報告」問題 は以前 か ら各国において包括利益計算書論 として 展開 されて きた ところであ る。 た とえば, イギ リスではASBはFRS3号 (4)

において第2の業績計算書たる総認識利得損失計算書 を導入 したが,さ らに

(8)

200010月 に同3号の改訂案FRED22号 「財務業績の報告」(5)を表 わ してい る。 またアメ リカでは,FASB1997年 にSFAS130号 「包括利益の報告」

において 「概念ステ イ トメソ ト」第6号が規定 した包括利益概念を実施 に移 してい る(6)0

さ らに,IASCは直接 ではないが,IASCスタ ッフ とG4+1の共 同で1998

年 か ら1999年 の間 に財務 業績 の報 告 に関 す る2つの研究書 を表 わ して い る(7)。 そ うして,IASB/ASBの業績報告 プ ロジ ェク トは この後者 の研究書 に基礎 を置いている。

(2) 業績報告の概念枠組み

IASB/ASB業績報告 プ ロジ ェク トの討議 の基調 とな る概念的な枠組 み に ついては,200110月に 「原則書案」(DraftStatementofPrinciple)(8)が, また2002 1月には 「業績報告 に関す る概念書」(ConceptPaperonPerfor‑ manceReporting,以下,単に 「概念書」 という。「概念書」は暫定案とされ 用語 等は逐次改訂されている)が表 わ されている まず前者 に よってその概念の内 容を検討 しよう

まず,プロジ ェク トの 目的 について,先 の1999G4+1報告書の結論 は 財務業績が一 つの計算書で報告 され るべ きである としたが,本プロジ ェク ト の主た る 目的 も単一の包括利益計算書 (単に業績報告書 という)を開発す るこ

とであ る とされ る点 でG4+1報告書 をベース としている。

この点でプロジ ェク トは表示の問題 に焦点を置 いた ものであ り認識 ・測定 問題 に焦点を置 くものではない とするが,その理論 内容 は結果的に利益概念 の問題や実現 ・未実現概念の廃止 とい った問題 を含んだ ものであ る。

まず,「財務業績」(financialperformance)とはなにを意味す るのか。

IASB/ASB「概 念書」に よれば(9),財務業績 とは包括利益 と同義 であ り,換 言すれば一期間の業績 は総認識収益及び費用 (allrecognizedincomeand expenses)と定義 され それは当該期間 におけ る純資産 の変動額 に等 しい

(9)

とされ る(10)。 この ように,財務業績 は所有主 との取引 (増資,減資,配当支 払い等)以外 か ら生 じる純資産の変動額 であ り,それは総認識収益及び費用 の結果である。すなはち,純資産変動額 ‑総認識収益及び費用 とい う等式 と

して定義 されているのであ る。

では,「業績」の評価はなにに よって行われるのか, また総認識収益及び 費用 とはなにか。IASB概 念 フ レーム ワー クによれば,業績の測定 に用い ら れ るのは利益(profit)であ り,利益の測定要素が収益(income)及び費用(ex‑

penses)であ る。 この (広義の)収益 には収益 (revenue)だけでな く利得 (gain)を含む もの として定義 され,費用の定義 には費用(expense)だけで な く損失(losses)が含 まれ る(ll)。 すなわち,広義の収益 には末実現利得が含 まれ る と同様 に費用 は未実現損失 を含 む もの として定義 されてい るのであ る。

では,認識 された」(recognized)とは如何な る意味 か。IASB基準委員 会 は総認識収益及び費用 を一 つの計算 書 に よって報告 す るこ とを提案 した が,その基本命題は,まず業績の構成項 目は国際会計基準 に規定す る認識規 準 を満たす場合 に計上 されねばな らない とす る。 この ことはすべての業績項 目が必ず しも認諾は れ る とは限 らない.すなわち,それは既存の財務報告モ デルにおける認識及び測定の規準 に合致する項 目のみが認識 される とい うも のである(12)

また,IASB概念 フ レーム ワー クに よれば収益は資産 の増価或いは負債 の 減少の形 を とる将来経済便益の増加が信頼性 を もって測定で きる場合 に認識 され る。すなわち,収益の認識は資産 の増価或いは負債の減少の認識 を もっ て発生す るこ とを意味す る。 同様 に,費用は資産の減少或いは負債の増加の 形 を とる将来経済便益の減少 が信頼性 を もって測定 で きる場合 に認識 され る。すなわち,費用の認識 は負債 の増加或いは資産 の減少の認識 を もって発 生す るこ とを意味す る。 この ように概念フレームワー クにおいては,損益計 算書は所有主 との取引以外 か ら生 じる全ての資産及び負債の変動 を反映 しな

(10)

ければな らない としている(13)こ とか らも先の等式 が成立 し,損益計算書 と 貸借対照表 の連携 は保 たれねばな らない ことになる。

そ こで この ような論理 か らすれば,公正価値変動のある ものを貸借対照表 上,資本 に直入す る といった現行基準 には問題 があ ることになる。IASB 念 フ レーム ワー ク 自体 は資本 の部 (の個別項 目に) に計上 され る収益 ・費用 項 目についての基準や特質を規定 してい るわけではない。現在,資本の部 に 計上 され る諸項 目 (例えば,売却可能金融資産の評価差額や外貨建取引換算差額) の質的特徴 が当該期間の収益 ・費用のそれ と概念的に区分 されているわけで はいない。両者の収益 ・費用は共 に企業の業績評価 に とっては同 じ意味を有 している。む しろ収益 ・費用項 目の一部 が業績報告か ら除外 され ることは債 報の比較可能性や中立性 を損な う効果の方 が大 きい と, この ようにい うので

ある(14)

また,財務諸表 の情報価値 はその予測価値 にあ り,財務諸表の有用性 はそ の情報の もつ予測価値 が増大す るこ とである。 この点,現行損益計算書上の

「ボ トム ・ライン」数値 は多 くの異 な った項 目の総計 を表 わすに過 ぎず,ほ とん ど予測価値 を有 しない。単 に総計 に基づいては将来業績の信頼性あ る評 価 は不可能 であ る。 また現行IFRSの下 ではすべての認識 された収益 ・費用 項 目が当該期 間の損益 に含 まれ る とは限 らない(15)。 それに対 して業績 の構 成要素 を報告す ることは金額 のみな らず構成要素 自体の表示 がで きる。すな わち,業績 の構成要素 ご との情報 を提供す るこ とは利用者の将来業績予測に 役立 つのみな らず,その相対的な意味を評価す るのに役立つ と, この ように

い うのであ る(16)0

この ように包括利益 が業績指標であること,そ してその包括利益 を構成要 素 において示す ところに情報価値 があ ることを強調 し,‑計算書 での区分表 示を論理化す るのであ る。

(1) 小宮山賢 「金融商品の評価」『企業 会計』Vol.55No.1,January2003,85‑91ペー ジ参照。

(11)

(2)IASB,DraftStatementofPrinciples,ReportingRecognizedlncomeandEx‑

penses,SAC Meeting,WashingtonDC.October2001,BasisforConclusions, paras.B8Bll.

(3)Ibid.,para.B9.

(4) ASB,FinancialReportingStandayds3,ReportingFinancialPerformance,1999.

(5) ASB,FRED22,RevisionofFRS3,ReportingFinancialPerformance,Decem‑

ber,2000.

(6) FASB,FAS130,ReportingComprehensiveIncome,1997. FAS130の 目的は 包括利益の開示 を行 うこ とにあ る。その方式 は 1つに限定 されない。 それには, 損益計算書形式 と持分変動計算書形式 があ る。損益計算書形式は,包括利益を企 業の業績指標 とみなす もので, さ らにその方式 には 2つがあ る。‑計算書方式 は 包括利益 をボ トム ライン とす る 「当期利益及び包括利益計算書」であ り,二計算 書方式は当期利益 を表示 す る損益計算書 を作成 した うえで,当期利益 か ら包括利 益 にいた る計算過程 をま とめた包括利益計算書を個別 に作成する ものである。

(7) Johnson,L.T.,andA.Lennard,G4/1specialReport,ReportingFinancial PerformanceCurrentDevelopmentandFutureDirections,FASB,1998・

Cearns,K.,ReportingFinancialPerformance(G411PositionPaPey,Reporting FinancialPerformance :ProposalforChange),1999.

(8)IASB,DraftStatementofPrinciples.

(9)ConceptPaperonPerformanceReporting,2001/08/01revision.

(10) これ らの定義はIASB概念フ レーム ワー クにい う定義 に相当す る。「例 えば,刺 得は非流動資産 か ら生 じるもの も含む。収益の定義 はまた,未実現利益 を含む。

例 えば,それは市場性 あ る有価証券の評価上 げまた長期資産価額 の増価 な どでめ る。利得が損益計算書 に認識 される場合 には,その情報 が経済的意思決定 を行 う ために有用であるため,利得は通常は別箇 に表示 され る。利得は しば しば関連費 用 を控除後の純額 で計上 され る(IASB,FrameworkforthePreparationand PresentationofFinancialStatement,para.76.)

(1I)IASB,DylajlStatementofPrinciples,BasisforConclusions,para.B16.

(1g)Ibid.,para.B19. (13)Ibid.,para.B20.

(14) Zbid.,para.B22. (15)Zbid.,para.B23.

3.

業績報告 の諸原則

IASB/ASB業績報 告 プ ロジ ェク トの背景 にあげ られ るのは次の 2点 であ る。一 つは,財務業績q)構成要素は個 々には異な った情報 を提供す るに もか かわ らず一個 の ̀ボ トム ・ライン'で総額 として示 す業績報告 は有用性 を有 しない。 したが って,プ ロジ ェク トの狙 いは報告 され る業績要素の有用な区

(12)

分概念 を提示 す ることであ る(1)0

第二 は 「営業利益」 (̀operatingearnings')の規定 が暖昧化 しているこ と である。会社 によっては非経常的項 目を除いた会社独 自の利益 を定義す る と いった傾 向が増 えている。 しかるに,それ ら測定値 は規制 も基準化 もな され ていない と, この ように立論 されるのであ る(2)

そ こで, まず本 プロジ ェク トの特徴 はIASBUK ・ASBとの共 同プ ロジ ェク トとして進め られていることを反映 してその概念 内容はUK ・ASBの影 響を強 く受 けた もの とな っているこ とであ る(3)。 いま一 つは概念アプローチ の採用 を決定 し (2002 1月),包括利益計算書 (statementofcomprehen‑

siveincome;)の概念的基礎 とな る一連 の 「業績報告原則」 (performance reportingprinciples)を提示 した ことであ る(4)

IASB/ASBは次の ような 目的 を定義 し, 目的 を実施 に移 すための諸 原則 を示 している。

包括利益計算書の 目的 は,企業 が達 成 した業績 についての理解 を高め情報利 用 者の将来業績 への期待形 成の助 け とな るように当該期間のすべての収益 ・費用 を 範噂化 し表示 す るこ とであ る。

原則 1.包括利益計算書 は総資本利益率(returnoncapitalemployed)と株主資本 利益率(returnonequity)とを区別可能 とす る ものでなければな らない。

原則 2.利得及び損失の構成要素 は,それが将来収益 に関 してほ とん ど情報価値 を有 しない場合 を除 き,総額 として報告 されねばな らない。

原則3.資産 また負債の再測定 か ら生 じる収益 と費用は別箇 に報告 されねばな ら ない。

原則4.包括利益計算書 は経済価値 の変動 が当該報告期間中に発生 した ものでは ない収益 ・費用 を識別 しなければな らない。

原則5.指定 された様式 の枠 内で,あ るいは認 め られない準総計 を用い るこ とな く,包括利益計算書 は次の ような形式 での報告 す るこ とがで きる。

a.その性格 と機能 に よって分析 された企業全体 に関す る情報

b.事 業 セ グ メン ト (地理 的 な い し生産 ベ ー ス) に よって区分 された営業 活動

C.経 営的観 点 に従 った追加区分

原則 1は,すべての包括利益計算書項 目を,基本的 には営業 (businessor operating)か財務(financing)の範噂 の どち らかに配 分す るこ とを意味 し,

(13)

一万 ,原則 3を もって,すべての構成要素 が包括利益計算書上 2つコラム (column),再測定前利益(incomebeforere一measurements)と再測定(re‑

measurements)の どち らかに配分す る とい うマ トリックス として示 され る と す る。

また,原則 4において,当該期間の経済活動 と経済価値 の変動の区別 ,ま たそれの過去の期の経済価値 の変動 と区別すべ きことが示 されている。 これ を 「概念書」は次の ような様式で示 している(5)0

1 包括利益計算書 の構造

合計 再測定前利益 再測定

Total reImencoamebsureemefwents Remeasurements

Business XX X X

Financing 一Y∫ X X

Tax X

(IASBBoardMeeting,PerformanceReportingProject,on18December2002Paper.)

これ らの概念図にい う 「再測定前利益」 また 「再測定」の明確 な定義 はな されていないが,具体的にそれ らに相当する項 目が如何な るものかについて IASB/ASBは逐次その具体例 を検討 している(6)0

例 えば,年金費用についてみれば,

a.営業 ・再測定前利益 (コラム) 一勤務費用,

b.営業 ・再測定 一将来キ ャ ッシ ュ・フローに関す る仮定 の変更 に伴 う保険 数理差損益,

C.財務 ・再測定前収益 一支払利息,資産の期待収益 ,

d.財務 ・再測定 ‑資産収益及び割引率仮定 の変化 に関係 した保険数理差 損益,がそれであ る。

固定資産の例では,

a.営業 ・再測定前利益 ‑減価償却 ,

b.営業 ・再測定 一再評価(revaluation),減損及び売却損益,がその例である。

(14)

また,金融商品についてみれば,

a.償却原価で測定 された金融資産 ・負債 については,減損は再測定 として 表示 し,また

I AS3 9

号 に従 って決定 された受取利息 ・支払利息は再測定 前利益 として表示 され る。

b.

売却可能 に分類 された金融資産 については

,I AS3 9

号 に従 って決定 され た受取利 ・支払利息 は再測定前利益 として表示 され,その他すべての 収益 ・費用項 目は再測定 に表示 され る。

C.売買 日的保有 に分類 された金融資産 ・負債 については,すべての収益 ・ 費用項 目が再測定 に表示 され る。そ して,

d.公正価値 ヘ ッジに関 しては,ヘ ッジ手段 またヘ ッジ対象項 目について 収益 ・費用項 目は共 にヘ ッジ対象項 目の包括利益計算書 に表示 され る としてい る。 以上 が提示 されてい る様式 であ るが,その概念 内容 は如 何な るもであろ うか。

(1)IASB,ConceptPaper,18December2000Revision,p.1・いわゆ る情報 セ ッ ト アプ ローチ と呼ばれ る もの であ り,一期 間の純 資産増 加額 (包括利益) を生 じせ

しめたすべての要 田 を表示 す る とい う考 え方 を指 す とみ られ る(佐藤信彦 「包括 利益概 念 と利益観」 『企業会計』Vol.53No.7,18‑24ペー ジ参照)0

(2)Ibid.,p.].いわゆ る 「実質利益」(ProFormaEarnings)問題の顕在化 を指す とみ られ る。

4.31へリ」5.ppppp

TdTd.イん.クレ.ク山.〃んー1〜・‑・I・・‑つJ456

4,

包括利益計算書の概念構造 とその論理

(1) 概念構造

では, これ ら包括利益計算書の 4区分の範時化は如何 に概念化 され るので あろ うか。

以上 にみた

I AS B/ AS B

が開発 した包括利益計算書の基礎概念 については,

(15)

IASB基準諮問会議 (StandardAdvisoryCouncil) もその評価 を行い側面支 援 を行 ってい る。

SACもまた業績報告の基本 な問題 は, i)「再 測定」に基づ く損益 の区分 範時化 , ii)「財務」費用 と金融資産 か らの収益 との区分範時化 とい う問題 である とす る(1)

まず 「再測定」 に関 して,SACに拠 ってみれば,一般 に収益 ・費用のあ る項 目は他の項 目とその性質を異 にす る と考 え られ る。例 えば,それ らに金 融商品の公正価値変動 ,固定資産の評価損益 ・売却損益 ,年金の数理差損益 等が上 げ られ る。問題は営業活動 と区別 され る価格変動 がなにを意味す るか であ る。すなわち, もしあ る項 目が他 と区別 して扱われ る とした場合には確 固 とした概 念的基礎 と明確 な実務上 の利点 がなければ な らない(2)のであ る が, この こ とをIASB/ASBはその区分概念 を基本命題 として示 したのであ (3)0

あ る資産 また負債 の再測定 か ら生 じる収益 と費用は別箇 に報告 されねば な らな い (原則 3)0

では 「再測定」 とはなにか,それは資産 ・負債の簿価 に込め られている価 格 ない し見積 り額の修正 をい うとされ る。すなわち,再測定 は将来経済便益 ない し義務 に関する期待の修正 か ら生 じる。つま り,将来キ ャッシ ュ ・フロー 予測の修正事項 として定義 されている(4)。 したが って,再測定は次の結果 か

ら生 じる収益 ・費用 は含 まない ことになる。

i)資産 ・負債 の当初認識 を生み出す取引及び事象 ii)資産の費消か ら生 じる費用

iii)時間の経過 か ら発生す る金融ない しその他の収益 ・費用

つ ぎに,再測定 区分の機能 はなにか,SACは再測定 か ら生 じる収益 ・費 用 を分離表示す ることの有用性 をつぎの ようにい う(5)。一 つには,再測定 は 資本投下額の修正であるのだか ら限 られた予測価値 しか有 しない。例 えば, のれんの減損は将来の見積経済便益の修正 であ り,直接 に将来の減損の予測

参照

関連したドキュメント

GAAP での Topic 第820号「公正価値測定」(米国財務会計基準審議会( FASB ) の財務会計基準書( SFAS )第157号「公正価値測定」を体系化したもの)でも要求されて

金融審議会第二部会報告「地域密着型金融の取組みについての 評価と今後の対応について」 (H19.4.5)

 固定資産再評価差額項目

GAAP での Topic 第820号「公正価値測定」(米国財務会計基準審議会(FASB)

ころが,こうした議論は企業と年金が完全に一体的に 運営されており,年金のリターンとリスクがすべて母

論 説 論 説

4.4 コミットメントライン – 未使用 Debt Capacity

 本節では、まず金融負債の公正価値測定への懸念を回避する方法として、草野2010(a) および (b) を参考に、Heckman アプローチと