近 代 本 日 に お け る 外 国 人 処 遇
︱ 外 警 事 察 中 を 心
橋 に
本 誠
は じ め に
一 外 国 人 出 入 国 手 続 制法 の変 遷 1︐ 第 一期
︵一 八五 九〜 一九 一八
︶ 2 第 二期
︵一 九 八一
〜 一九 二九
︶ 3 第 二 期
︵一 九 二 九〜 一九 四五
︶ 一一 不 平 等条 約 期
︵一 八 五九
〜 一八 九 九
︶ の外 国 人管 理取 締 法 制 1 般一 外 国 人 対に す る管 理取 締 法制 2 中 国 人 に対 す る管 理 取締 法 制 一 条約 改 以正 後
︵一 八九
〜九 一九 四 五︶ の外 国人 管 理 締取 法 制 1 般一 外 国 人 対に す る管 理取 締 法 制 2 中 国 人 に対 す る管 理取 締 法 制
︱ くと に中 国 人 労働 者 問題 を中 心 に む すび
近代 日本 にお るけ 外国 人処 遇︱ 外事 警察 を中 心 に 一九 五
法経研究四四巻四号︵一九九六年︶
一九 六 は
じめ に 近代
日本 にお け る外 国 人 の法 的 地 位 を 総 合 的 に考 察 す る作 業 の 一環 とし て︑ 小 論 で は︑ 外事 警 察 にお け る外 国人 処 遇
︱ そ の法 制 度 と運 用 実 態
︱ に つ いて 検 討 し た い︒ そ も そも 外 事 警 察 にお け る外 国 人処 遇 の目 的 は︑ 日本 に在 留
・来 住 す る外 国人 の保 護
・取 締 にあ ると さ れ る︒ そ の意 味 では
︑ 安 政 六
︵一 八 五九
︶ 神牲 奈 川
・長 崎
・函 館 開 港 以後
︑ 攘夷 派 に よ る外 国 人 襲 撃 事 件
︱ 一八 六
〇年 米 国 公 使 館 通 弁官 ヒ ーュ スケ 襲ン 撃 事 件 ︑ 一八 六 一年 第 一次 東 禅 寺 事 件 ︑ 八一 六 二年 第 二次 東 禅 寺 事 件
︑ 生 麦 事 件 等︑ 々︱ の頻 発 が しば しば 欧 米 各 国 と の間 で外 交 問 題化 し た当 時 から の課 題 であ たっ と い う こと が で き る︒ 外事 警 察 に おけ る外 国 人 処 遇 と いう 場 合
︑ そ こ に いか な る事 項 が包 含 さ れ る のか
︒ こ の点 を 概 観 す る に便 利 なも のと し て︑ 一九 二 一
︵昭 和 六︶ 年 内 務省 警 保 局 編
﹃外事 警察 関 係 例 規 集
﹄ が あ る︒ これ によ れば
︑ 内 務 省 警保 局 が所 轄 す る 外 事警 察 事 項 は︑
①
﹁外 国 人 入国 並追 放 関 係
﹂︑② 外 国 人 の
﹁視 察 並 諸 取 締関 係
﹂︑
③ そ の他
︑ の三 つに 分類 され て いる
︒
① さは ら に︑ 外 国 人 入 国取 扱 に関 す る事 項
︑ 旅 券
・国 籍 証 明書
・居 住 証 明 書 等 に関 す る事 項
︑ 査 証 に関 す る事 項
︑ 入国 提 示 金 に関 す る事 項
︑ 外 人国 追 放 に関 す る事 項 に細 分 さ るれ
︒
② は︑ 視 察 並 取締 に関 す る 一般 的 事項
︑ 政治
・思 想 運 動 に関 す る事 項
︑ 軍 事 国 情偵 知 に関 す る事 項
︑ 居住 並 労 働 に関 す る事 項
︑ 外 国 艦 船 に関 す る事 項 武︑ 器携 帯 上陸 並輸 出 入 に関 す る事 項
︑ 外 事 関係 衛 生 警 察 に関 す る事 項 に分 け ら れ る︒ そ し て③ と し て︑ 外 国人 処 遇 等 に関 す る事 項
︑ 在本 邦 外 国 官 憲 並 他 系統 官 庁 と の交 渉 通 信 に関 す る事 項 報︑ 告通 報 に関 す る事 項
︑ 外 事 関 係刑 事 警 察 に関 す る事 項 があ る︒ し か し 紙︑ 幅 等 の都 合 によ り
︑ これ ら の論 点 を 網 羅 的 に取 り上 げ る こと は でき な い︒ 小論 は特 に主 要 な 論点 に限 定 し て考 察
す る も の で あ る こ と を 予 め お 断 り し て お き た い︒ な お
︑ 小 論 は
︑ 次 のよ う な 構 成 を と る
︒ ま ず 外 国 人 出 入 国 手 続 法 制 の変 遷 を 概 観 し
︵第 一章
︶︑ 次 い で 在 留 外 国 人 に 対 す る 管 理 取 締 法 制 を 検 討 す る
︵第 二
︑ 三 章
︶︒ こ う し た 作 業 を 経 て︑ 最 後 に︑ 若 干 の論 点 と 残 さ れ た 課 題 に つ い て指 摘 し た い
︵む す び
︶︒
︵1
︶ 近 代 日本 に おけ る外 国 人 法の 的 地位 を総 合 的 に考 察 す る ため の基 礎 作 業 とし て︑ これ ま 我で 々 関は 係 法令 の整 理作 業 に 取 り組 ん で きた 村︒ 上義 和
・橋 本 誠 一
﹁近 代 外 国 人関 係 法 令年 表
﹂ 貧
︶〜
︵七 未︶ 完
︑
﹃法 経 研 究
︵静 岡 大学 こ 四 一巻 一号
︑ 二号
︑ 三号
︑ 四号
︑ 四 三巻 一号
︑ 四 四巻 二号
︑ 三 号︑ 一九 九 二〜 一九 九 五年
︒
︵2
︶ 小論 全 体 関に わ る先 行 業 績 とし ては
︑ 川 上 厳
﹁出 入国 管 理制 度 の変 遷
﹂
﹃外 人 登録
﹄二 九
〜 六 二号 ︑ 一九 六〇
〜 一九 六 二 年
︑ 同
﹁出 入国 管 理 の歩
﹂み
﹃外 人登 録
﹄ 八九
〜 一〇 五︑ 一〇 七号 ︑ 一九 六 四〜 一九 六 六年 宮︑ 崎 繁 樹
﹁戦 前 のわ が国 にお け る外 国 人 の処 遇
﹂
﹃国 際 法外 交 雑 誌﹄ 七 二巻 二号 ︑ 一九 七 三年 ︑ 一〜 七三 頁
︑ 山 脇 啓造
﹃近 代 日本 と外 国 人労 働者
︱ 一八 九
〇年 代 後半 と 一九 二〇 年 代前 半 にお け る中 国 人
・朝 鮮 人 労働 者 問 題
︱﹄ 明 石書 店 ︑ 一九 九 四年
︑ 等 があ る︒ 小 論 は︑ これ ら諸 先 学 に学 び なが ら
︑ 若 干 の知 見 を新 た に加 え うよ と す るも ので あ る︒
︵3
︶ 年 月 日 に つい ては
︑ 明 治 五 一︵ 八七 三︶ 年 以前 は太 陰 暦 によ り︑ 主 と し て年 号 を 表 記 す る︒ 八一 七 三
︵明 治六
︶年 以後 は 太陽 暦 によ り主 とし て西 暦 表を 記 す る︒
︵4
︶ 内 務 省警 保 局 編
﹃外 事警 察 関 係 規例 集 昭・ 和 六年
﹄ 復 刻 版
・龍 渓 書 舎 ︑ 一九 七 九年
︒ な お
﹃外 事 警 察 係関 例規 集
﹄ 含を む 特 高 警 察関 係 例 規 類 の全 体 像 に つい ては
︑ 荻野 富 士 夫
﹃特 高 警 察 係関 資 料 解 説
﹄不 二出 版 ︑ 一九 九 五年
︑ 二四 九
〜 二五
〇頁
︑ を参 照 近 ︒ 代 本日 にお け る外 国 人処 遇
︱外 事 警 察 を 中 心 に 一九 七
法経研究四四巻四号︵一九九六年︶一九八 一
外 国 人 出 入国 手 続 法 制 の変 遷 周知
のよ う に︑ 安 政 元
︵一 八 五 四
︶年 月二 二 日 日米 和 親 条 約 調 印 によ る開 国 の結 果︑ 日本 は近 代 国際 法秩 序 組に み込 ま れ︑ そ の枠 組 み の中 で
﹁人﹂ と
﹁物
﹂ の往 来 が始 ま たっ
︵神 奈 川
・長 崎
・函 館 開 港 は 一八 五九 年
︶︒
そ れ では
︑ 開 国以 後 外︑ 国 人 が 日本 に出 入 国 す る場 合
︑ いか な る手 続 が 必 要 であ たっ のか そ︑ し てそ れ は いか に変 遷 し た のか 本︒ 章 では
︑ こ の点 に関 し︑ ひと 通 り の概 観 試を たみ いと 思 う︒ 1
第 一期
︵一 八 五九
〜 一九 一八
︶ 日米 和 親 条 約 を はじ め とす る諸 和 親 条約
︑ お よび 安 政 五
︵一 八 五 八︶ 年 日米 修 好 通 商 条 約 な ど の諸 修 好通 商条 約 は︑ 締 盟各 国 の人 民
︵条約 済 国 人
︶ が 日本 に入 国 す る場 合 の手 続 に つ てい 何 の規 定 も設 け て いな い︒ わず か 修に 好 通商 条 約 に付 属 す る貿 易 章 程 が左 のよ う な船 舶 入 港 手続 を定 め る に とど ま る︒ す な わ ち︑ 開 港 場 所 に入 港 す れば 当︑ 該 商船 の﹁船 司 又 は 頭 立 た る者
﹂ は
︑ 入港 後 四 八時 間 以 内 に︑
① 自 国 領 事 の
﹁請 取 書
﹂
︱自 国 法 に従 い適 正 に作 成 さ たれ
﹁船 目録
﹂ 等 の書 類 を 自 国 領 事 に預 け た こと 証を 明 す る書 類
︱ を 日本 役 所 提に 出 し な け れば な ら な い︒ さら に︑
② 船名
・ト ン数
・
﹁船 司 又 は頭 立 た る者
﹂ の氏 名
・乗 船 客 名 o乗 組 員 数 等 を記 載 たし
﹁船 の差 出 書
﹂︑③
﹁船 積 荷 の告 書
﹂
︵船荷 送 状 の写 し
︶︑④
﹁船 中 用 意 の品 物 の目 録
﹂ の提 出 を義 務 づ け ら れ て いる
︵例 えば
︑ 日米 貿 易 章 程第 一則 を 参 照
︶︒
こ うの ち外 国 人 の入 国 手 続 と いえ るも のは
︑ 入 港時 おに け る開 港 場 日本 役 所 への 氏名 の届 出 が あ る程 度 であ る︒ こ の他 に︑ 例 えば 旅 券 等 の携 帯 義が 務 づ け ら れ て いる わ け では な い︒ 各 開 港 場 は︑ 条 約 にも と づ いて 運 用 細 則 を設 け て いる が︑ 例 えば 慶 応
四
︵一 八 六 八︶ 年 天保 山 役 所 則規
︵大阪 港
︶で は︑ 外 国商 船 入が 港 す る際 に︑
﹁乗 糾
﹂と し て船 改 役 人が 乗 り込 み︑ 国籍
・ 船 名
・ト 数ン
・船 長 名 と もと に
﹁旅 客
﹂ に つい て尋 間 行を う も のと され て るい
℃︵ な お︑ 入 国 の際 入国 者 の確 認 が 行 わ れ るが
︑ 出 国時 には そ う し た確 認 行 為 は行 わ れ て ない い︒ 旅 券 等 の携 帯 義を 務 づ けず
︑ 単 に氏 名 等 の確 認 を行 う と うい 取 扱 は 本︑ 来
︑ 条 約締 結 国 の国 民 対を 象 と す るも の であ る︒ し かし
︑ そ れ は 本日 と の間 に通 商 条 約 締を 結 し て いな い国 々 の国 民
︵条 約未 済 国 人
︶ に つい ても 妥当 し て たい よう であ る︒ 例 えば
︑ 当 時 の条 約 未 済 国 人 の代 表 的 存 在 であ る中 国 人 の場 合
︵日清 修 好 条 規 調 印 は 八一 七 一年
︑ 批准 は 八一 七 三年
︶︑安 政 六
︵一 八五 九
︶年 六 月神 奈 川 奉 行 上の 申 が いう うよ に︑ 彼 ら が 日本 に上 陸 す ると き 日は 本 役 所 に申 告 す る だ け であ り︑ 帰 国 の際 別は 段 届 を出 す こ と も な か たっ と 吟誠
℃ か かる 入国 手 続 のあ り方 は︑ 一八 九 四
︵明 治 二七
︶年 英日 通商 航海 条 約
︵七 月 一六 日 調印
︑ 八月 二八 日 公布
︶ を始 め と す る改 正 諸 条 約 の実 施
︱ 一八 九 九
︵明 治 三 二︶ 年 月七 一七 日 よ り実 施
︑ フラ ン ス︑ オ ー スト リ アは 八月 四 実日 施
︱ 以 後 も︑ 変 更 され る こ と はな か たっ よう あで る︒ と は いえ
︑ 現時 点 で これ を断 定 す るだ け の資 料 を 見 い出 得し て いる わ け で は な い︒ た だ
︑ 以 下 の諸 点 から
︑ くか 推 測 し て おき た いと 思 う
︒ す な わ ち︑ 第 一に
︑ 通 商 航 海 条約 及び 属付 文 書
︵議 定 書
・付 属 税 目
︶ に は︑ 入 国手 続 に関 す る言 及 が ま たっ く見 ら れ な い︒ たま
︑ こ れ に関 係 す る 国内 法令 も
︱管 見 の限 り で は︱ 存在 し な い︒ 第 二 に︑ 外 国 人 が旅 券 等 を 所 持 せず に他 国 に入 国 す る こと が きで る と いう のは 当︑ 時 の世 界 的 な慣 行 でも あ たっ と うい こと を指 摘 し てお きた い︒ 世 界 各国 は︑ 一九 世 紀 後 半 には 第次 に︑ 旅 券
・査 証等 義の 務 づ け を行 わ な く な たっ ので あ る︒ そ し て第 一次 世 界 大 戦前 にな る と︑ 自 国民 と外 国 人 に対 し て旅 券 と査 証 を 義務 づ け ると うい 建 て 前 を と たっ 国 とし て は︑ わず か に ロシ ア︑ ペ ル アシ
︑ セ ルビ ア︑ ト ル コ︑ ボ ス ニア
・ヘ ツル ゴェ ヴ ナイ
︑ イハ チを 数 え るだ け であ たっ と 吟減
℃ 日本 の入 国 手続 法制 も こう たし 界世 的 な 趨 勢 従に う も ので あ たっ と考 え る きべ あで ろう
︒ 近代 日本 にお ける 外国 人処 遇︱ 外事 警察 を中 心 に 一九 九