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民間所蔵史料の保存 ・管理に関する研究

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民間所蔵史料の保存 ・管理に関する研究

一 山梨県大月市星野家文書 を素材 にして‑

藤 ・正 人

青 木 陸

日 次

はじめに 一 研究の概要 二 星野家文書の概要

(1)星野家の位置 と文雷の保存環境

( 2 )星野家文書の整理の歴史

三 星野家文書の保存環境調査 (1)課題の設定

(2

) .保存場所の温湿度調査 と分析結果

(3

)保存容器の温湿度調査 と分析結果

(4

)保存封筒 ・紙の改善

四 今後の課題

は じめに

わが国の近世以降の文書記録史料は、民間とくに個人の所蔵にかかるものが 多い。その保存環境は概 して劣悪である。せ っか く蔵の中か ら発見 したのに、

所蔵者や研究者の不適切な保存処置のためにかえって史料の寿命を縮めている 例も数多 く見受けられる。また整理についても、 しばしば誤った方法がとられ

史料館研究紀要

第 二 七 号

五 ている。民間所蔵史料の保存 ・管理の現状は危機的であ り、このままでは私た 四 ちのかけがえのない歴史文化遺産が失われる恐れがあると言っても過言でない。

本稿は、このような状況を打開する方法を検討する‑ ため、安藤正人が平成 5 年度 ・6 年度の 2 年間、文部省科学研究費補助金 ( 一般研究C)を得て行った 萌芽的研究 「 民間所蔵史料の保存 ・管理に関する研究一山梨県大月市星野家文

一 1‑

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民 間 所 蔵 史 料 の 保 存 ・ 管 理 に 関 す る 研 究 (安 藤 ・ 青 木 )

書を素材にして‑」の成果の一部を、青木睦が協力 してまとめたものである。

一 研究の概要 (1)研究課題

本研究は、民間所蔵史料の保存 ・管理についてのガイ ドラインの作成をめざ し、山梨県大月市星野家所蔵文書を素材 として次の 2 点を明 らかにすることを 課題 とした。

a 第 1 課題 :史料保存環境および基盤的史料保存技術の研究と 「 民間史料保 存ガイ ドライン ( 仮称 ) 」の作成

民間とくに個人所蔵史料の場合、空調設備などを使用 しない安価で管理の容 易な史料保存設備 と比較的簡易な保存技術が望まれる。古 くから使用 していた 歳がいいのか、新 しい建物の場合はどのような条件が求められるのか ? 収納 容器は茶箱か金庫か、それとも特製の箱が必要か ? 封筒に入れるとすればど んなものがよいのか ?実際に遭遇するさまざまな例を念頭に置きなが ら、保存 科学の最新の成果と手法を取 り入れて研究を行ない、広 く全国の民間所蔵史料

に適用で きる 「 民間史料保存ガイ ドライン ( 仮称 ) 」の作成を試みる。

b 第 2 課題 :史準の整理 ・管理技術の研究 と 「 民 間史料整理 ガイ ドライン ( 仮称 ) 」の作成

民間とくに個人所蔵史料の整理 ・管理法は、文書館など史料保有機関所戒史 料のそれ とは自ずか ら異なり、なかなか完ぺ きを期 しがたい。 しかし、いわゆ る原秩序尊重の原則や原形保存の原則など、史料整理の基本原則は厳守する必 要がある。史料管理学の最新の成果と手法を取 り入れて研究を行ない、広 く全 国の民間所蔵史料に適用できる 「 民間史料藍理 ガイ ドライン ( 仮称 ) 」の作成 を試みる。

(2)研究方法 と研究経過

平成 5 年度は、まず第 1課題について、①星野家の試験的な保存環境調査を 実施 した。母屋 ( 国指定重要文化財)は解体修理工事中なので、文庫蔵 ( 国指

‑2‑

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定重要文化財)の温度 ・湿度をデータロガーによって 1 993 年 6 月 2 0 日 〜 9 月 1 2 日まで 3 カ月間長期継続測定 した。② デー タはすべてパ ソコンに入力 した。

③史料収納用の中性紙封筒を作成 し、実験的に使用を開始 した。④古文書用桐 箱を試作 し 、 3 箱を星野家に送って保存機能の調査を開始 した。

第 2 課題については、星野家文書約 800 0 点 ( すでに仮整理 目録作成済み) の内、約 4 0 0 0 点のデータを研究補助者の協力を得てパソコンに入力 した。

平成 6 年度は、第 1 課題については、( 丑星野家の通年保存環境調査を実施 し 、 た。母屋の解体修理工事が竣工 したので、母屋 2 階と文庫蔵 2 階の 2 カ所につ いて、室内、茶箱内、桐箱内、段ボール箱内の温度 ・湿度をデータロガーによ って 3 カ月ずつ 4 期に分けて長期継続測定 した。②データはすべてパ ソコンに 入力 し解析 した。③史料収納用の中性紙封筒を作成 し 、1 9 9 4 年 9 月 2 3 日か ら 25 日までの 3 日間、星野家において研究協力者の協力を得て約 1 0 00 点の文書 の入れ替えを行った。

第 2 課題については、①文書 目録データの入力を引 き続 き約 2 0 00 点分行っ た。② 1 9 94 年 9 月 2 3 日か ら 2 5 日までの 3 日間、星野家において研究協力者の 協力を得て文書の補充調査を約 1 5 00 点分実施 したl o③パソコン入力データの 解析を一部行った。

本稿では、以上の研究によって得 られた成果のうち、 もっぱら第 1 課題に絞 って報告 したい。第2 課題については、なお作業が継続中であ り、成果の報告 は他 日を期 したい。

二 星野 家文書 の概要

(1)星野家の位置と文書の保存環境

山梨県は、甲府市を中心 とした西方の盆地部 ( 「国中地方」 と呼ばれて きた 旧山梨 ・八代 ・巨摩 3 郡) と、大月市、都留市、富士吉田市など、東方の山間 部 ( 「 郡内地方」 と呼ばれてきた旧都留郡)に大 きく分かれる。大月市は郡内 地方のほほ中心部に位置 し、歴史的に見れば郡内地方を東西に貫 く甲州道中

‑3‑

史 料 館 研 究 紀 要 第 二 七 号

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民 間 所 蔵 史 料 の 保 存 ・ 管 理 に 関

る 研 究 (安 藤 ・ 青 木 )

( 現在の国道2 0 号線)の各宿場を中心にして発達 してきた。地形的には北側の 関東山地と南側の丹沢山地に挟まれた桂川沿いの河岸段丘上にあ り、乎地は極 めて少ない。

星野家は旧下花咲宿にあ り、現在の地番は山梨県大月市大月町花咲1 9 3番地。

大月駅か ら国道20 号線 ( 旧甲州道中)で西方に1 . 7 キロメー トル、街道の北側 に位置 し、主屋は国道 2 0 号線に直接面 している。屋敷地は間口約 2 6 メー トル、

奥行 61 メー トルで南北に長 く、寅は笹子川に面 している。標高は約 3 7 0 メー ト ルである。

次に気候であるが、山梨県全体は表日本型のうち中央高原型に属 し、大月市 及び上野原町を中心 とした桂川流域はこの中で平雨高温区に属する ( r 大月市 史 ・史料筋J、昭和 51 年 、1 0 3 7頁).夏は炎暑、冬は寒さが厳 しく、気温の偏 差が大 きい。最近の気候データ ( 図表 1 4‑1 ) と大月市大月 ( 都留高等学校) の 1 9 5 6‑ 1 9 65年のデータ ( 図表 1 4 12 、 r 大月市史 ・史料篇」1 03 6頁)を掲げ てお く。

星野家は江戸時代、代々下花咲宿の本陣 ・問屋ならびに下花咲柑名主をつ と め、建物、古文書など貸重な文化財を数多 く伝えている 。1 8 8 0 ( 明治 1 3 ) 年の 明治天皇巡行の際 「 御小 体 」所 となった由緒か ら 、1 9 3 5 ( 昭和 1 0 ) 年1 1月に史 跡 として国の指定を受けたが 、1 9 4 8 ( 昭和 2 3 ) 年 6 月に制度改変に伴って解除。

その後 、1 97 6 ( 昭和 51 ) 年 5 月に、主屋 、文庫戒、籾倉及 び味噌蔵、宅地 1 5 8 6 . 77 m. 、及び家相図 1 点が国の重要文化財 に指定 され現在に至 っている.

また星野家古文書は大月市指定文化財 となっている。

星野家の放物の配置と特徴は次の通 りである ( r 重要文化財星野家住宅文庫 蔵保存修理工卒報告番J、昭和 6 2 年 1 0 月、による)

。1

)

( D主屋 ( 母屋)は、間口 2 1 . 8 メー トル ( 1 2 聞)、奥行 1 4 . 5 メー トル (8 間)、切 安造 り .1 8 3 5 ( 天保 6 )年の火災の後に再建 されたものである。再建年代は明 確ではないが 、1 8 5 2 ( 茄 永5 )年の家相図 ( 重要文化財付属指定)等からみて 天保年間と推定される。外観は 2階建てであるが、内部は階上を3階層に造 り、

‑4‑

(6)

床梁を入れ、大垂木で母屋 を繋 ぐ方式 をとっている。 これは養蚕 を行 うためで ある 。 1 階の間取 りについては図表 1 5 の通 りで、 ここでは詳細 に説明 しない が、西側桁行 4間分の本陣部 と東側桁行 8間分の居室部 に大 きく分かれ、南東 角の通用入 口を入った ところは桁行 5 間の大 きな土間 ( 通称 ダイ ドコロ)にな っている。主屋 は 1 9 9 0( 平成 2 )年か ら解体修理工事が開始 され 、1 9 9 4( 平成 6) 年 3 月に竣工 した。解体修理工事 にあたって建築当初の形態が考証 され、多 く の部分が考証に従って元の形態 に戻 された。 この主屋解体修理工事の報告書 は 1 9 9 4 年 3 月に刊行 されたが、本研究に活かす ことはで きなかった

02)

②文庫蔵は主屋 の西北 に位置 し、主屋 とは渡 り廊下で結 ばれている。桁行 5. 5 メー トル、梁間 4. 6 メー トル、土 蔵造、 2 階建、本瓦葺で、建築年代は主屋再 建時 よ りやや遅れ 、1 852‑53 ( 嘉永 5‑ 6) 年頃 と推定 されている。 2 階は降 り口以外畳敷 きという特徴 を持っている。文庫蔵は、主屋の解体修理工事 に先 立つ 1 9 8 5 ( 昭和 6 0) 年 7 月に解体修理工事 に着手 、1 9 87 ( 昭和 6 2) 年 6 月に完工 している。文庫の北側には井戸が あ り、文庫の防災に適 した建物配置が とられ ている。

③籾蔵及び味噌蔵は、屋敷地の北端に建っている。桁行 1 0 . 9 メ一 日 レ、梁間 5 . 5 メー トルの籾蔵の西側 に桁行 5 . 5 メー トル、梁間 4 . 6 メー トルの味噌蔵が接続 し たもので、いずれ も土蔵造 り 2 階建であるが、全体 に亜鉛引鉄板茸め覆屋 をか けている 。1 835 ( 天保 6 )年の火災の際 には焼失 を免れた といわれてお り、手 法か ら見て も主屋 よ り古い建築 と考え られる。修理工事 は行われていない。

L星野家の文書史料 は、江戸期及 び明治期の古文書 を中心 に、明治期以降の新 聞 ・雑誌等 も含 まれる。元の保存場所 は、主屋、文庫蔵、籾蔵、味噌蔵 な ど各

史 料 館 研 究 紀 要 第 二 七 号

五 所 に分散 していた ようだが、戦前 は もとよ り、後述す る昭和 30 年代以降の何 〇 回かの史料調査の際にも、保存場所や保存状況についての記録は作 られていな い。筆者 ( 安藤) は 1 9 73 ( 昭和 48) 年 に大月市史編纂事業の一環 として東京大 学大学院山口啓二ゼ ミの他のメンバー と共に初めて星野家 を訪れ、史料整理に 着手 したのであるが、残念なが ら、その時にも保存場所や保存状況についての

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民 間 所 蔵 史 料 の 保 存 ・ 管 理 に関 す る 研 究 (安 藤 ・ 青 木 )

現状記録は作成 しなかった。保存状況についての唯一の記録は、現在史料の大 半が入っている古文香箱 ( 茶箱を改造 したもの)の第 1 箱の主義に貼 られた先 代当主星野奇氏執筆の記録で ( 写真 4 参照) 、これによると 1 9 6 5 ( 昭和 4 0 ) 年 9 月に茶箱を改造 した古文香箱及び古文書籍用の棚を制作 した らしいことがわか る。筆者が初めて星野家を訪れた1 973( 昭和4 8)年の時点で も古文書の大半は、

土間 ( ダイ ドコロ) とムコウザシキの古文書籍棚に、茶箱の中に入った状態で 置かれていた。ただそれがすべてではなく、母屋 2 階、文庫蔵、籾蔵、味噌蔵 か らも新発見の ものを含む未整理文書が出てきたと記憶 している。

1 975( 昭和 5 0) 年に大月市史編纂室による史料整理 と日録作成作業が‑投落 した後は、整理済み史料は 1 点ずつ大月市史編纂室が作成 した文書用封筒 ( 角 形 2 号の通常の事務用茶封筒)に入れ、あらたに調達 した数箱の茶箱を含む合

計 41 箱の茶箱に収納 して、元の通 り土間に設けられた古文書籍棚及びムコウ ザシキ ( 板敷 き)に置かれた ( 図表 1 5 参照) 。

これらの茶箱は、主屋の解体修理工事開始に際 して一時的に味噌蔵 1 階に移 されたが、主屋解体修理完了後の 1 99 4 ( 平成 6 )年 3 月に再び主屋 2 階に移 さ れた ( 写真 2・3) 。解体修理前のように土間及びムコウザシキに戻 さなかった のは、主屋 1 階をで きるだけ江戸時代の建築当初の姿のままに置いておきたい とする文化庁担当者の意見によるところが大 きかったと聞いている。

そういうわけで、現在、史料の大半は茶箱に収納 した状態で母屋 2 階に位置 きされている。文雄蔵 と主屋の解体修理工串が続 き、家財等の移動が行われた ので、茶箱収納文書以外の史料がどこにあるかは未確認であるが、おそらく文 庫蔵、籾戒、味噌蔵にも一部史料が残っているはずである。

なお、これまでに史料の収蔵場所 となった母屋 2 階、文庫蔵、籾蔵、味噌蔵 の保存環境にはもちろん優劣があるが、いずれも環境が櫨端に劣悪な場所でな く、保存環境が直接の原因 となった史料のひどい劣化損傷はあまり見受けられ ない。

‑6‑

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(2 )星野家文書の整理の歴史

星野家の花咲来任の経緯等については史料がないのでわからないが、おそ ら く草分けの一人として近世初期から当地に有力な地位を占めていたと思われる。

代々下花咲村名主、下花咲宿本陣 ・問屋を勤めているが、その初期の事情につ いても未解明である‑ o また星野家は当地域有数の地主であ り、米穀販売、薬商 い、あるいは絹織物生産に関わっている時期 もあったようである。

星野家には下花咲村名主文書、下花咲本陣 ・問屋文書のほか、地主経営に関 わる私的な文書など、近世前期から昭和期にいたる膨大な文書が残 されている。

史料飽研究

紀 要 第 二 七 号

また明治期以降の新開 ・雑誌等の印刷物史料 も相当量にのぼる。星野家文書の 整理の歴史について、知 られる事実を順を迫って記す。

a 中央大学歴史学会による調査

まず1 9 5 7 ( 昭和32 ) 、5 8 ( 昭和3 3) 年に中央大学歴史学会が夏期農村歴史調査 として調査 に入っている。その結果、1 95 9 ( 昭和3 4) 年 6 月に中央大学歴史学 会 r 史料 目録第一集一農村歴史調査報告‑」 として 「 甲斐国北都留郡下花咲村

‑旧家 ( H家)文書目録」が発刊 された。 これには1 661 点の文書が収録 され ている。文書番号はなく、文書名 ・作成者 ・年代等が、経済 ・財政、政治 ・法 律、商業 ・金融、農業、工業、交通、土木 ・建築、林業、家、宗教、証文類、

絵図の1 2 大項 目及び小項 目合計2 9 項 目に分類 されて配列されている。

1 96 0 ( 昭和3 5) 年 4 月には ( 奥付発行 日は昭和35 年 5 月)中央大学歴史学会 r 史料 日録第二集一農村歴史調査報告 ‑ 」が発行され、その一部に 「甲斐国北 都留郡下花咲村星野家文書 目録」 として追加分が収録 されている。収録点数は 約5 0 0 点。分類項 目もほぼ同じで、経済 ・財政、政治 ・法律、商業 ・金融、農 二

業、工業、交通、土木 ・建築、林業、家、宗教、その他、書状の1 2 大項 目、 八 小項 目数は合計3 2 である。

中央大学歴史学会の調査については、上記の 2 冊の日録が作成されているも のの、調査時点での保存現状 ( 保存場所や保存容器、劣化損傷状態など)の記 金 剥まもとより、調査方法 ・調査 日程等についての記録 もまった くなく、詳細は

‑7‑

(9)

間 所 戒 史 料の

存 ・ 管 理 に 関

る 研 究 (安 藤 ・ 青 木 )

ほとんどわか らない。

b 徳川林政史研究所による調査

次に、星野家には表紙に 「 星野家文書 目録」 とマジックインキらしきもので 手書 きし、表紙下部に 「 昭和42年1 0月31日」 というペ ン書 きの 日付 と 「 徳川 林政史研究所」の ゴム印がある青焼 コピーの手書 き目録がある。 これは 1 9 6 7

( 昭和42)年 に徳川林政史研究所が行った調査 目録の ようである ( ちなみ に、

後述の古文書収納用茶箱の 「 ‑」の主義書 きに 「 4 2 . 8. 2 6 日所先生外古文書分 類に来 られた とき記す」 とあるのが、この調査のことかと思われる) a

この 日録に収録 されているのは冊子文書のみ 1 0 8 9 件で 、 1‑1 0 8 9 までの通 し番号が付されている。ただ し同表題の もの数冊で 1 番号 を付けられている例 が少なか らずある。中央大学歴史学会の E ] 録 と重なる文書がかな りあ り、新発 見文書 を整理 した ものではない らしい。内容分類や年代分類 はされてお らず、

配列順に どうい う意味があるかは不詳である。形態表記 は史料館 と同 じ方式 ( 横長美、横半半 など)である。なお、星野家文古には、青いスタンプインキ で番号を記 した図書館 ラベルが表紙に貼 ってある文書が見受けられる。番号が 本 目録 と一致するので、この調査時にラベルを貼付 した ものと思われる。 ・

C古文書箱の制作

時期が前後するが、すでに述べたように、古文書用茶箱 「 ‑」の豊の匙には、

茶箱作成の由来 を書いた紙が粘 ってある ( 写真参照) 。先代当主星野奇氏が書 いた ものである 。1 9 6 5 ( 昭和 4 0) 年 9 月 1 7 日の 日付のある 「 古文書棚」 と 「 茶 箱」の図面の下に、後 日書 き加えた らしい次のような記述がある。

「この柏 を一段 に 8 個計 1 6 個を入れ渡 し上記棚は本家入口の土間向ふ座敷に備 七 えた り これは火災の際は共先に持山 し避柾せ しめんがためな り、主人奇の誕 生 日記念 に注文す 制作者 奈良三郎 1 2 6 0 0 0 円) 4 2 . 8. 2 6 日所先生外古文 苔分鰯に来 られた時記す 」

この時制作 された茶箱の古文古箱にはすべて鍵を付け、その姓は当主が厳重 に保管 してこられた。残念なが らどの箱 にどの文書 を入れたのか というような

‑8‑

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記録はなく、文書のもともとの保管形態 との関連は不明である。

d大月市史編纂室による整理と目録作成

大月市史編纂事業の中で、近世担当監修者山口啓二東京大学史料編纂所教授 の指導により東京大学大学院人文科学研究科山口ゼ ミのメンバーを中心 とした 院生 ・学生が整理に着手 したのが1 9 7 3( 昭和 4 8 ) 年 8 月である。着手の状況は、

これに参加 した筆者 ( 安藤)の記憶及び当時の写真記録によれば、茶箱か らビ ニール紐などで括 られた文書の束を取 り出し、広間を使ってほぼ完全な年代順 に並べ直す というものであった。 どの文書がどの茶箱の中にどういう状態で入 っていたかという記録は作成しなかった。

本格的な日録作成にとりかかったのは同年 1 0 月である。筆者が事実上の責 任者 となり、ほとんど毎週土曜 日に数名が通って作業を続けた。この時の作業 記録は星野家に保管 してある。

目録作成作業は 、1 9 7 5 ( 昭和 5 0 ) 年 5 月 31 日に大月市史編纂室の名で r 星野 家文書 目録第一集」( 手書 き青焼版) をまとめて一応終了 した。 この日録には、

1 9 7 5 年 3 月現在で整理を終えた 8 5 2 4 点を収録 している ( 1 点 1 番号)。同目録 はしが さによれば ( 筆者が執筆 したものである) 、他に書簡類、年代不詳の断 片史料、書籍 ・雑誌等、推定約 1 万点が未整理のまま残 されてお り、これ らは 整理を終え次第目録第二集 としてまとめる予定である、 としているが実現 して いない。また 「 本 目録に納めた史料のうちに、上花咲堀江家の旧蔵で星野家に 寄託された史料が一部含 まれているが、特に注記 していない」、 とも書いてい る。前掲の中央大学 日録第 2 集 には 「 堀江家文書 日録」が含 まれているので、

あるいはその文書が星野家に寄託されて星野家文書 と混然一体化 した可能性 も あるが、未確認である。

文書現物の整理は先述のように完全な年月日順 としたので、目録 も年月日順 の配列にした。文書は原則 として 1 点 1 点大月市史編纂室作成の文書収納封筒 に入れ、新 しく追加 した茶箱を加えた計 41 箱の茶箱 に収納 し直 した。 うち、

箱 1 か ら 3 5 までが文書頬 ( 1‑8 5 2 4 番) 、箱 3 6 から 41 までは新聞である.なお、

‑9‑

料 館 研 究 紀

第 二 七 号

(11)

所 蔵 史 料 の

存 ・ 管 理 に関 す る 研 究 (安 藤 ・ 青 木 )

徳川林政史研究所によると思われる貼付 ラベルは、技術上の理由ではがしてい ない ( この図書館 ラベルは、裏側に P VA 接着剤を塗布 して乾燥 し、水分を与 えて貼付する市販製のものと見 られ、容易に剥離できない状態である) 。

三 星野家文書の保存環境調査 (日 課題の設定

茶箱収納文書を中心 に考えると、現在の保存環境上の問題点は以下の通 りで ある。

a 保存場所 は主屋 ( 母屋) 2 階の東南部、すなわち 1 階の土間 ( ダイ ドコ ロ) ・ロバ タ ・ムコウザシキの上にあたる部分である。 この場所は大変広いと いう利点はあるが、屋根か らの輯射熟の影響を受けやす く夏は極めて高温にな る。 また 2 階は窓等の開口部が多 く安易に開けると国道 2 0 号線を通行する事 の排気ガスや塵芥の影響を受けやすい。さらに 2 階の保存場所は 1 階台所の上 部にあたってお り、火災の危険度が他の場所よりも高い。階段 も狭 く急なので、

万一火災等の災害が発生 した場合に 2 階からの持ち出しは極めて囚徒である。

b保存容器は茶箱を使っているが、大 きくて重 く、持ち運びに極めて不便で ある。また文書保存容器としての長所短所、保存場所の環境 との適合性が確認 されていない。

C文書の収納方法は、 1 点ずつ茶封筒に入れたものを寝かさずに直立状態で 収納 した縦置き型である。柔 らかな和紙でできている文書は、立てた状態で長 期に放置されると変形 し、変形のままに固定化 してしまう。変形は特に湿気が 高いときに起 こりやすい。容器内で安定 した状態で収納 されていないため、文 五 番 ・封筒共に変形 し、封筒の角が折れ曲がっているものが多 くみ られる.この

収納方法による悪影響があらわれている。

d 文書を収納 している茶封筒は酸性クラフ ト紙であ り、保存上不適切である ことが明 らかである。文書容器内湿度が 7 0% を越えている場合は、酸性 クラ フ ト紙の酸性因子が文書へ移行 しやすい状況になっていると推定される。

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以上の問題点については、次のような解決策が考えられる。 まず a の保存場 所については、主屋 2 階に特別の仕様で小部屋 を造 り、これを文書収蔵庫 とす る案である。火災等の際の持ち出 しの不便 は解消 されないが、保存環境の改善 は技術的に可能であろう。 しか し、費用がかさむという問題がある。別案 とし ては文庫蔵を利用することが考えられる。文庫蔵は名称の通 り、 もともと文書 庫 として設けられたものであ り、実際、星野家文書の多 くは文庫蔵に長 く保存 されて きたと推定 される。 しか し、家人の話 によれば 1 9 8 5 ( 昭和 6 0 ) 年 〜1 9 8 7 ( 昭和 62) 年の解体修理後、内部湿度が極めて高 く、収納 していた家財の一部 にカビが発生 したこともあることか ら、家人の方は文書の収納場所 として不適 切 なのではないか という危倶 を持ってお られる。 しか しなが ら、 カビ発生の原 因を取 り除き、文庫蔵 を収蔵庫 として用いることも検討する必要がある。 カビ 発生の原因として考えられるのは、蔵改修工事後のならし ・乾燥期間が不十分 であったこと、収納物の湿気、換気 と通風が十分でなかったことなどがあげ ら れよう。今後、改善策を講 じてみる余地はあると考えられる。

) b の保存容器の問題に関 しては、茶箱のかわ りに桐箱等の容器を使用するこ とが考えられるが、保存場所 との関連性が大 きいと思われるので、容器素材の 選択の問題は保存場所 と合わせて検討する必要がある。

C文書の収納方法については、縦置 き型でな く横置 き型にして寝かせ る方法 を採用す ることも考えられる。ーしか し、容器内を横積みにす ることによって、

底部の文書に湿気がこもり、カビの発生や紙の癒着などが起 きやす くなるとい う問題がある。縦置き型の収納方法の問題 を解決するには、文書収納封筒に用 いる紙の厚みをこれまでよりも厚 くする方法があげられる。 くわえて、容器内

史 料 館 研 究 紀 要 第 二 七 号

四 文書の収納量 を適正に保つ ことにより、 より変形を生 じに くくすることも可能 四 である。

d の文書収納用封筒は、現在の酸性紙封筒を中性紙封筒に転換することが有 効 と思われるが、すべての文書 を封筒に入れることが必要かどうかは、収納容 器の改善の問題と総合的に考えあわせるのが賢明がある。

‑l l‑

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民 間 所 蔵 史 料 の 保 存 ・ 管 理 に 関 す る 研 究 (安 藤 ・ 青 木 )

以上の点か ら、本研究では、①保存場所について、母屋 2 階 と文庫蔵の保存 環境 ( 温湿度)の比較調査 と、( 卦保存容器について、茶箱、桐箱、段ボール箱 の環境 ( 温湿度)調整機能の比較調査、の 2 点を主たる調査課題として設定す ることにした。

(2 )保存場所の温湿度調査 と分析結果 a 調査方法

保存場所の科学的な環境調査は、基本的な要素である温度、湿度のほか、二 酸化窒素、二酸化硫茸など、排気ガスに含 まれる有毒物質等について も総合的 に調査する必要があるが、当初予定 していた保存科学専門家の協力 を依航する に至 らず、主屋 ( 母屋 )2 階と文庫蔵 2 階の室内温度及び相対湿度のみ調査す ることにした。調査の方法は次の通 りである。なお 、1 9 9 3 年度に行った文庫蔵 の試験的環境調査については省略 し、以下はすべて 1 9 9 4 年度の調査である。

( ∋使用機器

ACR 社製超小型デー タロガ ‑MODELTL ‑ 2 ( 温度、湿度)本体 3 台、外部 セ ンサー 2 台 ( 写真 1 2・1 3 )

( 参計測地点 と特徴 母屋 2 階 : [ 図表 1 7 ]

東南部 に置かれた文書収納用木製棚の柱の床上約 1 メー トル 2 0 センチの位 置に外部セ ンサーをビニール紐で固定 した。母屋 2 階は、すべて板敷 きで、物 置 として使用する以外 に使い道は考えられていないが、現在は茶箱に入った文 書 と段ボール箱多数に入った蔵書 ・雑誌類、及び空の本棚致本のほかは何 も置 かれていない。文古 と蔵書類が置かれている東南部は他の部分 とは板戸で仕切 ることができるが、通常は開けたままである。

文碓蔵 2 階 : [ 図表 1 9 ]

北I i L t 部角の木製棚の柱の床上約 5 0 セ ンチの位置 にビニール紐 またはガムテ ープで外部セ ンサーを固定 した。文庫蔵 2 階は畳敷 きで三方の壁に木製の物置 棚がP L aかれ、衣類 ・什器その他の家財がほぼいっぱいに収納 されている.他の

‑1 2‑

(14)

二面の壁には明か りとり及び換気用の窓が一つあるが、計測期間中は閉めきっ た 。 1 階への降 り口には横滑 り式の板戸があって空気の流通を遮断で きるよう になってお り、計測中は閉じた状態にした。この文庫蔵にはたまに家人が出入 りするが、通常は 1 階へ の出入 りであ り、計測期間中 2 階に出入 りすることは ほとんどなかった由である。

なお、本来なら母屋 も文庫蔵 も計測地点を複数設定することがで きればよい と思われたが、機器の台数に限界があるため棚の 2 段 目を平均的な場所 と考え て計測地点に選んだ。

( 参計測期間

母屋は

1994

4

7

日か ら

1995

4

月1 0日までの

1

年間、文庫蔵は模器の 関係で

1994

7

14

日か ら

1995

4

月1 0日までの

9

カ月間、計測周期 を

20

分 に設定 して温度、湿度 を計測 した。ただ し、計測周期 を

20

分に設定 したため にデータロガーの記憶容量に限界が生 じ 、 3 カ月ごとにいったん機器を回収 し、

東京に持ち帰ってデータをフロッピーディスクに移 した上で再び設置するとい う作業を繰 り返 した。そのため、計測期間は 3 回のブランクを挟んで 4 期に分 かれている。以下、便宜上、各計測期間を 1 期、 2 期 、3 期、 4 期 と呼ぶこと にしたい。

設置日 l回収 日

94.4.7 94.7.ll

母屋

2

階室内

94.7.14 94.9.25

母屋

2

階室内

94.10.9 95.I

.8

母屋

2

階室内

95.1.18 95.4,10

母屋

2

階室内

b 計測結果 最高温度 ( ℃) 最低温度 ( ℃

) 最高 RH( %) 最低 RH( %)

1

33

.72 ,8.04 73.21 42.07 2

35.70 20.57 73.78 49.

89 354

20.22

p25.54 1.35 85.01 49.8

(15)

民 間 所 蔵史

保存・

管 理 に 関

る 研 究 (安

・ 青

木)

母屋 2 階の室内温湿度の計測結果を各期ごとにグラフに示 したものが、図表 1‑1 から図表 1‑4 である。各期の最高温湿度、最低温湿度は次のとお りである。

外気の温湿度データがない し、詳 しい解析 もしていないので、ごく一般的な 観測 を記すにとどめるが、夏期は 35 . 7 2℃ ( 94 年 8 月 2 日)を最高に 30 ℃を越 える日が非常に多 く、逆に冬期は 0. 0 8℃ ( 9 5 年 1 月31日)を最低に低温の 日が 多 くなっている。湿度は、梅雨期 は 7 3. 21% ( 9 4 年 7 月 2 日)を最高 にほほ 6 0

‑70% に収 まっているが 1 0 月か ら11月にかけて 75% を越 える日があらわれ、

放高湿皮は94年 11 月 1 9 日の 8 5. 01 % となっている. 日変動は、年間を通 じ温湿 度 ともかなり敵 しい変化の様子が見て取れる。

次に文庫蔵 2 階の 2‑ 4 期の温湿度計測結果を、図表 2‑1‑3 のグラフに示 したO各期の最高最低温度及び最高最低湿度は次のとお りである.

最高温度 ( ℃) 滋低温度 ( ℃) 虫高 RH( %) 最低 RH

( %) 2 期 3 1 . 4 2 2 0 . 5 7 7 6 . 4

6 7 3 . 7 3 3 期 2 0 . 5 7 1 . 3 5

8 1 . 8 3 7 4 . 8 7 4 期 1 2 . 8 0

0 , P 8 8 2 . 1 3 7 7 . 1 6 まず温度について言えば、最高温度は 31

. 42℃ ( 94 年 8 月 4 日 、 5 日) と母 屋 2 階に比べ 4 . 3 ℃低 く、夏期 も 3

0 ℃を越える日はあまりない。冬期の最低温 度は母屋 2 階 と同 じである。極めて

特徴的なことは日変動が少ないことである。

相対湿度については、一見 して高湿

皮での安定という特徴が明 らかであるQと くに気温の下がる冬期は 80% 前後を維持 してお り、この レベルは 95 年

4 月に なっても下がっていない。 C考察 母屋 2 階は夏期に極めて高温と

なるが、現在 2 階が使用されてお らず、人の 出入 りもほとんどなく窓も締め切

っている状態のためか、梅雨期の湿度も予想 したほど高 くはなかった。 しかし

、カビの発生条件を満たす数値ではあり、文 沓保存場所 として適当とは思われない

。 1 1月以降の高湿皮は気温の急激な低下

のためだと考え られる。 この時期 は温度が 20 ℃以下の レベルにあるので、カ

(16)

どの発生条件は梅雨期に比べて低いと思われる。

文庫蔵 2 階の湿度が 7 5‑8 2% の高湿皮で安定 しているのは、解体修理完了 後 7 年 と比較的短 く土壁が十分に乾燥 していないためとも考えられるが、吉田 治典氏の調査

3)

によれば、近世の建築ではないか と推測される京都冷泉家の文 庫蔵 も庫内湿度が年間 7 0‑8 0% に一定 している。京都 と大月の気候条件 に差 があるとしても、おそらく土蔵内の高湿皮安定 という特徴は、土蔵自体の持つ 特性によるのではないかと思われる。吉田によれば 「 木材や土壁の材料特性で ある平衡含水率に依存すると考えられる」 ということである。

(3 )保存容器の温湿度調査 と分析結果

a 調査方法

使用機器は前項に同じ。次の 3 種類の文書保存容器について、段ボール箱 と 茶箱については母屋 2 階東南部の古文書収納棚の 2 段 目 ( 床上 7 0 セ ンチ)に、

桐箱については母屋 2 階の左記 と同じ場所及び文庫蔵 2 階北東角の木製棚下段 ( 床上 1 0 センチ)両方に設置 し、容器内部の温湿度計測を行った。

①段ホール箱 ( 星野家で蔵書を入れるのに使っていた通常の ミカン箱) ( 図表 1 0 、写真 3)

②茶箱 ( 木製。材質杉。被せ蓋を董枠でうける形。身は、内側に錫 と思われる 薄い金属板を貼った通常の茶箱を、蓋の短辺片側に表蝶番をつけ、 もう一方に 錠がつけられ、南京錠が懸けられるようになっている。箱の外側全体に茶模造 親を粘って古文書収納箱に改造 したものであ り、全体の三分の二ほどは紙姑が はがれ、下地の茶箱に貼 られた茶銘柄商標がみえている。合わせ木の部分は、

史 料 館 研 究 紀 要 第 二 七 号

親 を帯状 にして貼 り付 けて隙間止めが施 されている。外径 は縦 67c m X横 44 0 C

×高さ 4 0 . 4c m) ( 図表1 1 、写真 4)

③桐箱 ( 今回の研究にあた り、新たに製作 した特注の箱。徳島市たまだケース 製。外被せ蓋式。把手 2 カ所つ き。板厚 1 2 m m。内径は縦 5 0c m X横 4 0c m X高 さ

とのこ く

3 0c m 。蓋の探 さ 1 0c m 。細工は全周砥粉ね り、蓋把手部分の到 り形は長手雲形、

‑1 5‑

(17)

民 間 所 蔵 史 料 の 保 存 ・ 管 理 に 関 す る 研 究 (安 藤 ・ 青 木 )

キー釘打ち、上面銀杏面つけ) ( 図表1 2 。写真1 0)

材質の異なる保存容器の温湿度変化に対する競和作用を正確に比較調査する には、内部を空の状態にして計測するのが望ましいと考えられる。 しかしその ような調査例は、すでに三浦定俊 ・神庭信幸両氏

4

1 によって報告 されているの で、本調査では、実際に文書を収納 した状態での容器内温湿度について比較調 査することにした.すなわち各箱には、一点ずつ文書 を入れた文書整理封筒を 垂直に立てて並べた状態でほぼ一杯 に入れ ( 腕が 1 本差 し込める程度) 、デー タロガーを中央部付近の封筒 と封筒の問、上部から約1 0セ ンチほどの所に浅 く埋めるような形にして設置 した。

計測期間は次の通 りである。

設置 日 l 回収

9 4 . 4 . 7 9 4 . 7 . l 日 l 段 ボール ( 母屋 2 階)

箱 茶箱 桐箱

9 4 . 7 . 1 4 9 4 . 9 . 2 5

‑ 茶箱 桐箱

9 4 . 1 0 . 9 9 5

. 1 . 8 ‑ 茶箱 桐箱

9 5 . 1 . 1 8 9 5 . 4 . 1 0 ‑ 茶箱 桐箱

b 計測結果

①母屋 1 期のみ計測 した。結果は図表3‑1 2 階段 ボール箱 に

グラフで示 した通 りである。最高温 度3 2. 1 8 ℃、叔低温皮8. 7 8 ℃、最高湿度7 2 . 81 %、

最低湿度56 . 2 4%で、先に見た 室内温湿度の最大最低値の振幅の内側にある。 日変動は温度変化はかなり大

き いが、湿度の変動幅は小 さい。 日変動の様子を詳 しく見るために、温度

のピークと湿度の節二ピークがある 7 月 2 日の 3日前後の 6 日間のデータを図

表3‑2 にグラフ表示 してみた。室 内温湿度変化 を合わせて表示 したのでよく

わかるが、温度はほぼ 2‑ 3 時間の タイムラグをもって室内温度に追随 してい

る。湿皮は、 日変動、週変動の範囲

では室内湿皮変化 と容器内湿皮変化 との問にそれほど明確な関係を観察できず、

(18)

容器内湿度変化が比較的緩慢であるが、温度が急上昇すると、容器内の湿度が 下がる傾向が指摘できる。

( 参母屋 2 階茶箱

1 期 〜 4 期の計測結果を室内温湿度変化 とともに図表 4‑1‑4 に示 した。温 度については室内温度変化に追随 していることが明白であるが、湿度について は年間を通 じて極めて変化に乏 しく、かつ高湿皮で推移 していることがわかる。

文書及び文書収納封筒 ( この場合は 1 97 3‑75 年に収納 した酸性紙封筒)か ら 拡散する水分が、茶箱の高い密閉性のため外部にほとんど放出されない結果だ と考えられる。ちなみに各期の茶箱内湿度の最高値、最低値は次の通 りである。

1

期 最高値 7 5 . 7 9% 最低値 7 1 . 3 9 %

2

期 最高値 7 0 , 9 9% 最低値 6 7 . 8 2%

3

期 最高値 6 4 . 7 4% 最低値 5 9 . 0 3 0 / 0

4

期 最高値 ・ 6 0 . 8 3 % 最低値 5 4 , 0 3%

史料館研究

紀 要 節 二 七 号

もう少 し詳 しく日変化、週変化を見るために、厳暑期 と厳寒期 とについて各 6 日間のデータをグラフに表示 してみたのが図表 5‑1 及び ‑2 である。

図表 5‑1 の厳暑期では、おそ らくこの 1 週間は晴天続 きで外気の影響がほ とんどなかったのだろう、室内湿度の変化が見事に温度変化 に対応 している。

これに対 して、茶箱内の湿度はほとんど動いていない。 ところが図表 5‑2 の 厳寒期では、茶箱内湿度が変動幅は相変わらず小さいものの、温度変化とほぼ 平行 して高下 していることが観察できる。室内湿度の影響はほとんど観察でき ない。

③母屋 2 階桐箱

1 期 〜 4 期の計測結果を室内温湿度変化 とともに図表 6‑1‑4 に示 した。温

度については茶箱の場合 とほぼ同じく、室内温度に追随 して変化 している。湿 度変化は室内湿度変化に比べると日変動の幅が きわめて小 さく、高い安定度を 示 していると言っていいが、長期的に観察すると明らかに室内湿度変化の波に 沿って変化 している。

17 ‑

(19)

民 間 所 蔵 史 料 の 保 存 ・ 管 理 に 関 す る 研 究 (安 藤 ・ 青 木 )

図表 7‑1・2 は厳暑期、厳寒期各 1 週間の週変化を見た ものである。図表 7‑1 の敢暑期の場合は桐箱内湿度変化の変動幅が小 さくて見に くいが、規則 的な日変動の波が観察できる。 これは室内湿度に追随 したというよりも、温度 変化によるのではないか。図表 7‑2 の厳寒期では、桐箱内湿度変化は室内湿 度の影響 よりも明らかに温度変化によると見 られる規則的な変動を示 している。

④母屋 2 階段ボール箱 ・茶箱 ・桐箱

以上、母屋 2 階に同条件で設置 した段ボール箱 ・茶箱 ・桐箱について計測結 果を見てきたが、それらをグラフ上で比較するために図表 8‑1 ‑2 を作成 した。

図表 8‑2 は 1 期の各箱内湿度 と室内湿度を示 したものである。茶箱が極め て顕著に高湿皮を保持 している点は先にも見たとお りだが、注 目されるのは、

桐箱 と段ボール箱内の箱内湿度が計測開始当初は茶箱内と同レベルであったに もかかわらず、次第に下がっていき 、 6 月に入って再び上昇傾向を見せている 点である。初期の箱内湿度が高いのは箱に収納 した文書及び文書収納封筒に含 まれる水分量が高かったためであ り、その後の下落は箱外に水分を放出して室 内湿度に近づこうとしているためであろう 。 6 月以降の上昇 も、当然、室内湿 度の上昇に追随 している結果である。

図表 8‑1 は 2 期について茶箱 と桐箱の箱内湿度及び室内湿度 を示 した もの である ( 段ボール箱については計測 していない) 。 この図については既に指摘

したことのほか特に付け加える点はない。

⑤文庫蔵 2 階桐箱

図表 9‑1 ‑3 は 2‑ 3 期の文庫蔵 2 階に設置 した桐箱内の湿度変化 を示 した 三 ものである。この場合、桐箱の中には今回の研究のため新たに作成 した中性紙 毛 封筒に収納 した文番を入れて計測を行った。図表 9‑1 ‑3 を見ると温度はほぼ 室内温度に追随 して変化 し、ほとんど同 じ伯を示 している。湿度は、計測開始 時の 2 期当初段階では、箱に収納 した文書及び文書収納封筒の影響により室内 湿度 よ り 1 0% 程低い数値を示 しているが、緩やかに上昇 して室内湿度の レベ ルに接近 している。そしていったん同レベルに達 したあと 、 9 月以降は室内湿

‑1 8‑

(20)

( 文庫蔵室 内) ( 桐箱内) ( a) ‑(

b)

平均 RH( a) ) 最高 RH 最低 RH 平均 R

H( b)

2

74.95% 75.31% 67.62% 73.70

% lJ25%

3

79.04 76.04 72.3

6 74.65 4.39 4

79.95 80.56

73.02 77.50 2.45

度 よ りもやや低 い数値 で安 定 的 に推 移 し

て い る

。 2

期 当初 を除 くと

、 70‑

8 0% の範囲に収 まっている。箱 内湿度 と

室内湿度 との差 は

、 2‑ 4

各期 の平均 湿度の差で示す と次の通 りであ る。 グ

ラフで見 るか ぎ り、箱内 と室 内の湿度差 は、温度が低いほ ど大 きく、 温度が高いほど小さくなる傾

向にある

。 料 館 研 究 紀 要 二 七 号 史 第 C考察 先 にも述べ た ように、本調査 におけ

る投 ボール箱、茶箱、桐箱 の箱内温湿度 比較 は、内部 に文書 を入れた状態で行

ったため、 とくに湿度変化 は文書 と収納 用封筒の親の吸放湿作用 に強 く影響 を

受 けている と考 え られる。その点で箱 自 体の湿度変化 に対する破和効果 を解析す

るには適切 な方法ではない と思 われ る。

しか し逆 に文書 を収納 した実際の保存状態の もとでの温湿

度環境 を知 る ことも 当然必要である。 第‑ に、内側 に金属板 を粘 った茶箱

の密 閉性 は明白で、収納す る文書 に含 ま れる水分量が多い場合 は本調査事例の

ように高湿皮に固定化 され、温度が高 く なった場合のカビの発生等が心配 され

る。従 って、箱 内に乾燥剤 を入れ る、温 度の低い場所 に保存す る、文書 の利用

のため蓋 を開閉す る際は乾燥 した場所 で 行 う、等の対策が必要ではないか と思

われる。 しか し、文書利用 のための開閉 が比較的頻繁 に行 われ るこ とを想定 した

場合・以上の対策 を所蔵者個人が十分 三

かつ持続的に行 うことは必ず しも容易 とは思 われず、その点か らみて茶箱 は適

切 な文書保存容器 とは言 えない。 第二に、段 ボール箱 についてである

が、計測結果に よれ ば室内湿度変化 に対 する緩和効果がそれな りにあることが

示 された。 しか しデー タロガ‑設置場所

が箱内のほぼ中央部の文書 に挟 まれた所であるこ とか ら、段 ボール箱その もの

(21)

民 間 所 蔵 史 料 の 保 存 ・ 管 理 に 関 す る 研 究 (安 藤 ・ 青 木 )

よりも収納文書の効果を計算に入れる必要があると思われる。それを差 し引 く とすれば、段ボール箱の湿度変化に対する緩衝作用が桐箱に比べかな り低いこ とは明らかである。

第三に桐箱について述べる。桐が備えている湿度緩和作用については三浦 ・ 神庭前掲論文その他によって明らかにされているところであるが、本調査で も 桐箱 ( 正確には桐箱及び収納文書)が室内湿度変化に対 してもっとも緩やかか つ安定的な緩和作用を持っていることが示 された。文庫蔵 2 階での計測におい でも、計測期間の全期間 ( 当初を除 く)を通 じて箱内湿度は室内湿度よりやや 低い レベルの 7 0‑80% の範囲内を維持 していた.ただ し文庫蔵室内の滋高温 皮は 3 0 . 9 2 ℃ 、 8 月の平均温度は 2 8 . 1 4 ℃であるので、厳暑期の一時期はカビの 発生について若干の危快がある。

史料の保存にとって重要なことは、保存環境の管理、特に温度 と相対湿度の コントロールであることが よく知 られるようになった。温度 ・湿度の変化によ って史料が吸放湿することにより膨潤 ・収縮をおこし、物理的な劣化を引き起 こすことが明らかにされたことによる。そこで、史料を根や桐柏などに収納 し て保存する古来よりの方法がなぜ保存に適 していたのか、経験的な発言ではな く、自然科学的に観察実験 して検証 してみようという試みがなされている。参 考までに二つの実験例を見てお きたい。

まず最初にあげる三浦定俊氏の実験例は、「 保存箱内の温湿度変化」を測定 し、箱の役 目を明らかにすることを目的にしている 。 ( 「 保存箱内の温湿度変化」

r 表具の科学」東京Bl 立文化財研究所 1 9 8 5 年) 。

三 三浦氏は昔か ら桐で遣 られた小木箱を二兎にした軸物や巻子用の容器がなぜ 云 用いられてきたのか という理由は、経験的であったとし、箱の中の温度 ・湿度

をどの程度一定 に保 っていたのかを実験 によって明 らかに しようとしている。

柏の保存校能は、①外部の湿度変化を中に伝えない、②外部の温度変化により 中の湿度変化を、容器材質の吸放湿で最小限におさえること、であるo

( D外部の湿度変化の内部への伝達を観察 した結果は次の通 りである。

‑2 0‑

(22)

・桐 と杉の‑重箱は同じ変化傾向を示す。なお、桐 ・杉 よりも比重の軽い材 質の場合は、変化が起 きのるが早 くなる。

・箱の形態による湿度の変化の違いをみると、桟蓋型よりも印龍型の方が湿 度変化が小 さく、印絶型の箱の気密性のよさを示 している。

・新調の箱と史料保存用に以前に調製 した箱では、前者は短期間のうちに外 部湿度に近 くなるのに対 し、後者はそれ よりも時間が経ってか らになる。

史料保存用箱の職人による材質の選択 と仕上げ技術は、恒湿機能に大 きな 役割を果たしている。

料 館

究 紀 要 第 二 七 号

②容浮材質の違いによる外部の温度変化の内部への影響に関する観察結果は 次の通 りである。

・金属 ( 真鎗製)の箱は、外部の温度変化を敏感に内部に伝える。この金属 箱に和紙を入れた場合は湿度変化が小 さくな り、和耗 自体からの放湿があ ったことになる。 もし内部の物が史料であれば、それが犠牲 となって内部 の環境保持がなされてしまう。

・桐 ・杉の‑重箱は、温度変化が大 きくても湿度をほぼ一定に保つ。桐 ・杉 の材質の違いによる差はあまりない。

・二重箱は、温度 ・湿度の変化幅がかな り小 さい。外箱に断熱効果がある。

以上、科学的に見直 した結果を整理 された三浦氏は、この実験の結果をもと に箱の保存横能について興味深い指摘を行っている。その指才 削i . 保存機能の継

I

続性についてである。木箱にいれでもせいぜい 2 ケ月も経てば外界 と同じ湿度 になって L TT f・ うとして、保存機能の継続期間は短いといわれるO木箱は急激な 温度 ・湿度の変化を競和するが、保管環境条件のすべて満たす ものではないと

いう.容器への盲信を戒める言葉の後、昔からの保存箱作 りの技術の中にある

職人の知恵を科学的に見直す必要性を述べ、報告を締 くくっている。

次の事例は、神庭信幸氏の 「 相対湿度変化に対する収納箱の横和効果 」( r 古 文化財の科学 J 3 7 1 992 年) と題 した研究であるo三浦氏の研究によって湿度 変化に付する箱の緩和効果が確認されたのをうけ、それを数値によって破和効

‑2 1‑

(23)

民 間 所 蔵 史 料 の 保 存 ・ 管 理 に 関 す る 研 究 (安 藤 ・ 青 木 )

果の評価を試みたものである。同論文の結論部について簡単に整理 してお くこ とにする。

史料保存用に調製された桐箱は、湿度緩和効果を持つ。それらの湿度半減期 ( 緩和効果を表す数値)は 、2 日 〜6 日の間にあって、湿度の日変動 (1日間) は 1 0% 以下に、半句変動 ( 5 日間位)は 2 0% 以下 に緩和 され、年変動 (1年 周期)については緩和効果がないことが分かったとしている。加えて、神庭氏 と三浦氏の両者に共通する結果は、容器の緩和効果が短期間であ り、長期にわ たる継続性がないこということである。

この二つの実験研究の論文は、昔から作 られてきた容器の保存機能の問題に ついての科学的視点で検証 した先導的なものである。感覚的にとらえていたも のを科学的にとらえ見直 して くれているこのような研究は、伝統的な保存容器 の作製に用いられた技術を基礎 として、これか らの保存容器を考案 していく上 では大変参考になる。

では、これらの研究と今回の保存容器内の温湿度調査 と分析結果か ら気付 く 点をあげておきたい。

第‑は、容器内に史料が収納 されている場合はどのような緩和効果があるの か ということである。材質の異なる保存容器の温度 ・湿度変化に対する緩和効 果を正確に比較研究するには、内部に何 も入れない状態で計測することが望ま しいのは分かる. しか し、各種の保存容器の碇和効果を考えて容器の選択をお こなう場合、容許の中に史料が入れられた状態での計測 も必要なのではないだ ろうかと考える。保存容器には必ず史料が入れられるか らである。三浦氏の論 文で、和紙を入れた場合、木材の放湿 とともに和紙 自体 も放湿 したことが確認 で きるとある.この指摘は、容器内に史料を入れて湿度を計測 した場合に高い 安定度を示 したとしても、容器自体が必ず しもよい条件であるとは言えない論 拠 となる.さらに和紙が吸放湿を行った場合、史料が湿度の緩和作用を持つこ とを意味 し、湿気を吸った り吐いた りと史料にス トレスがかかっていることに なるoあるいは、恒温 ・恒湿の容器であっても吸放湿効果のないものを用いた

‑2 2‑

(24)

場合、湿 り気のある史料 を入れたままに見過 ごしてしまうことがあれば大変危 険な状態 となって しまう可能性がある。今回の調査は、その間題 を実際に検証 したもの といえ、 さらに分析 と考察を重ねる必要があろう。史料素材の紙の平 衡水分は、原料 ( 椿やパルプ等)の純度に既定される。紙種 ごとの平衡水分量、

水分の吸着 ・脱着の速度等を試験することが急務である。特 に、保存容器の材 質のみならず中に入れる史料 と保存容器 との関係 についてはなお今後の研究が 必要である。

第二 として、容器内湿度変化は、室内湿度の影響よ りも室内温度変化による とみ られる変動を示 していることをあげてお く。

第三は、現存 している古史科保存容器の材料 と構造を調査 し、その保存機能 について も科学的な目で見直す ことも必要だとい うことである。伝統的保存容 器に隠された知恵 と技術 を調査することで、保存容器独特の特徴 とか工夫があ らわれて くるか もしれない。現在 も行われている桐箱の仕上げの 「 砥粉止め」

や 「 いぼた磨 き」 ( 水臓 などで箱内外 を磨 くこと)に防湿効果があるとするな らば、古い史料用容器にその技術が使われているかどうか調べることも必要に なって くる。今回新たに発注 した桐箱は、仕上げに 「 砥粉止め」が施 されてい る。

(4 )保存封筒 ・紙の改善

星野家文書の多 くは 、1 9 7 3 ( 昭和 4 8 ) 年か ら 1 9 7 5 ( 昭和 5 0 ) にかけて大月市史 編纂室によって行 われた文書整理の際に、大月市史編纂室の文書整理用封筒 ( 角 2 号事務用封筒)に 1 点ずつ収納 された。 この封筒については pH 測定は行 っていないが、通常の茶封筒であ り酸性紙を使用 していることは明 らかである ので、今回の調査にあたって新たに中性耗封筒に入れ替えることとした。新 し い封筒の規格は次の通 りで 、 2 年間で合計 6 0 0 0 枚 を作成 した ( 図表 1 3 参照) 0

古文書保存用中性紙封筒

大 きさ 2 4 5×3 80

m

m 株式会社ス ミダ梨

用 紙 AF プロテク ト H 厚 2 09 . 3 g /m'( 特種製紙製)

2 3

料 館 研 究 紀 要 第 二 七 号

(25)

民 間 所 蔵 史 料 の 保 存 ・ 管 理 に 関 す る 研 究 (安 藤 ・ 青 木 )

pH 7 . 8 ( 冷水抽出法、特種製紙測定値)

封筒の入れ替え作業は約 1 5 0 0 点終了 し、なお継続中である。なお封筒か ら はみ出る文番、封筒に入らない文書、または入れるのが適当でない文書につい ては、中性紙を使用 して簡易な峡を作った り、中性紙で包むなどの保護を行っ た。使用 した紙の種類等については、図表 1 3 に示 したo

中性紙の長所について述べることは省略 し、民間所蔵 という環境下において の中性紙の短所について触れておきたい。節一点に、中性紙は炭酸カルシウム を 2 0 / o 以上含有 しているので吸水性が商いという問題がある。つまり、湿気を 帯びやす く保湿 Lやすいということである。次に、保湿 しやすい材質であるこ とか ら、カビが繁殖 Lやすいという短所がある。特に中性域および弱酸性域を 好むカビに蝕 まれる危険をはらんでいる。酸性紙の悪影響よりは微少なことで はあるが、看過できないことであ り、環境制御がさらに盃要 となって くる。

収納方法による問題を改善するため、紙の厚みは通常の坪量 1 5 0 g/ n lよりも 厚 くし、容器内での変形を予防 した。

今後の課題

当初の研究計画のなかにあった 「 民間史料保存ガイ ドライン ( 仮称 ) 」 は本 研究期間中には達成できなかった。保存場所や保存容詩及び保存封筒等につい ての一般的なガイ ドラインの提示は可能であるが、個人所蔵文書を中心とした 民間史料の場合は、個人所蔵ゆえの困難な現実的課題が数多 くあ り、星野家文 昏一件のみの個別耕例では、広 く活用可能な具体的なガイ ドラインを提示する ことが姓 しいことが明 らかになったためである。

個人所蔵文番をはじめとする民間所蔵史料の保存 ・管理に関する様々な研究 課題のうち、本研究が 約1 課題 として取 り上げたような保存環境についての研 究は、これまでほとんど取 り組んでこられなかったといってよい。本研究にお いて収処 した温湿皮計測データは、その意味でこの種のものと・ しては初めての データではないかと考えるものである。またコンピュータによるデータ解析を

‑2 4‑

(26)

可能にするデータロガーという最新の計測械器を使用 していることも特筆に値 するのではないかと自負 している。保存科学の専門家 と調査結果について協議 する時間をもてなかったことは誠に残念である。 しかし、幸いフロッピーディ スクの中に入った膨大なデータは残る。この貴重なデータを保存科学の手に委 ね、ぜひ科学的な解析 を行ってもらいたいと考えている。ただ民間所蔵史料の 保存に関わる者 として、この研究を通 じてわが国古来の伝統的な保存施設であ る土蔵や、同じく伝統的な保存容器である桐箱の優秀な特性が確認できたこと は有益であった。 また特に保存環境に関して重要 と思われた点は、保存施設 ( 場所)、保存容器 ( 箱)、収納封筒な どを個々バラパ ラに考えるのではな く、

それらをどう 「 組み合わせ」るか という観点が大切だということである。個人 を初めとする民間の史料保存の現場においては、公的な史料保存機関にくらべ て人的 ・財政的 ・施設的条件が悪いのは当然である。そのような悪条件下で可 能な限 りの環境改善を図ってい くためには、最 も効果的な 「 組み合わせ」を兄 いだすことが重要であろう。

いずれにせ よ、星野家文書は筆者 ( 安藤)にとって大学学部時代以来 2 0 数 年のつ きあいであ り、物的保存管理体制の整備 と第 2 課題に属する基本 日録の 作成を何 とか数年以内に完遂 したいと思うばか りである。

【 注1

1) ( 財)文化財建造物保存技術協会編 r 重要文化財星野家住宅文庫蔵保存修理工事報告

書 J ( 重要文化財星野家住宅星野三郎発行

、1987

年 1 0月)

2)

( 財)文化財建造物保存技術協会霜 r重要文化財星野家住宅 【主屋 ・宅地内建物

( 厩 ・板塀)]修理工事報告書j ( 重要文化財星野家住宅修理委月会発行

、1994

3

月)

3)

吉田 治典 「 文庫の保存環境 ・実測 と予測」 ( 記録史料の保存 ・修復に関する研究集

会実行委員会揃 r 記録史料の保存 と修復 ‑文書 ・書籍 を未来に遺す ‑ 1アグネ技術

センター

、1995

年2 月、所収)

4 ) 三浦定俊 「 保存箱内の温湿度変化」 ( 東京国立文化財研究所 r 表具の科学

」1985

3

月)、神庭 伸幸 「 相対湿度変化 に対する収納箱の緩和効果 」 ( r 古文化財の科学J

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史 料 館 研 究 紀 要 第 二 七 号

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( 付記)大月市の気候データを作成するに際 しては、大月市消防本部か ら詳細な気象資料

を捉供いただいた。記 して謝恵を衣 したい。

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図表 1 0 段ボール箱の図 段 ボールの型 史料館研究紀要第二七
図表 11 茶箱 の図
図表 13 保存封筒
図表 1 4‑1 大 月市の気候 D P 5 0 % 6 0 11 1 1i l d E (kl l労 ) 7 0 8 0 大月市の温ま・ 置皮のデータは 、1994 年 4 月 1 日 ‑1995 年 3 月 31 日の 15 時における牧丘から月平均を打井したものである( 大月市消防本缶提供)。 東京と京蔀の牧丘は 、1996‑1990 年の平均且である (1994 年版r 理科年表J による)。 図表 1 4‑2 大 月市 ( 1 956‑1 965 年間) L A tJ,¶ I 叫 : l lS 4

参照

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