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応用化学専攻 魚躬 和真 UONOMI Kazuma

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Academic year: 2021

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魚躬和真 1

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隅田川河口域における懸濁態の起源解明とその季節変化 Elucidation of the origin of suspended particles

in the Sumida River estuary and its seasonal change

応用化学専攻 魚躬 和真 UONOMI Kazuma

緒言

隅田川周辺は終戦から高度経済成長期にかけて家屋 や工場が林立し、生活排水や工業排水が原因で水質が 悪化して一時は生物が全く生存できないほど汚染が進 んでいた。今日では排水の規制や浄化施設の導入など の処置で水質の改善傾向が見られるが、引き続き浄化 を進める必要がある。更なる河川の浄化のために、各 流域の汚染の度合いを知ることは必要である。水質汚 染の原因の 1 つは懸濁態と呼ばれる 0.45 µm 以上の 粒子であり、河川水中の汚染の度合いを知るためには、

水環境中での懸濁態の起源およびその動態を理解する ことが重要であると言える。

そこで本研究では、隅田川河口域における懸濁態を、

春季・夏季・秋季・冬季の 4 つの季節に分け、さらに 河口域の4地点を選んで採水し、得られた懸濁態の形 状観察と元素濃度の測定を行うことで、懸濁態の起源 とその季節的変化を明らかにした。

実験

河川水試料は2014年11 月から2015 年の11月に かけて、隅田川河口域の 4 地点 (駒形橋、蔵前橋、

両国橋、及び勝鬨橋) でサンプリングした。得られた 試料を、孔径 5.0 及び 0.45 µm ニトロセルロースフ ィルターを用いて順にろ過を行い、乾燥させた後重量 を測定した。この手順を二度行い、一組をSEM観察 用、もう一組を濃度測定用とした。濃度測定用の試料 は、5.0 µm フィルターを白金るつぼに入れ、70% 硝 酸1 mlを加えて130 ℃で加熱し固化させた後LiBO2

を10 mg 加えアルカリ融解を行った。また、0.45 µm

フィルターは 70% 硝酸 3 ml と 30% 過酸化水素 2 mlを加えてマイクロ波分解を行った。

結果及 考察

1. SEM による懸濁態観察

5.0 µm 以上の懸濁態では、プランクトンと土壌粒子

が確認できた (Fig. 1 )。また、同じ季節で上流と下流 の画像を比べると、下流ではプランクトンが支配的で あり、上流では土壌粒子が支配的であった。プランク トンは海水の遡上とともに湾内から移動したものと考 えられ、土壌粒子は河川の流れにより河川底質から巻 き上げられた、または上流から輸送されたものと考え られる。

Fig. 1 5.0 µm フィルター上の懸濁態

0.45-5.0 µm の懸濁態ではプランクトンは観察されず、

土壌粒子と海塩粒子が確認できた (Fig. 2 )。海塩粒子 は海水の遡上により下流域に現れたと考えられる。

Fig. 2 0.45 µm フィルター上の懸濁態 2. 上流から下流にかけての懸濁態の動態

夏季における5.0 µm 以上の粒子の中に含まれる元 素濃度をFig. 3 に示す。

Fig. 3 >5.0 µm の懸濁態中の元素濃度

(2)

魚躬和真 2 Si 濃度は駒形橋から両国橋にかけて減少していた

が、勝鬨橋で濃度が増加した。ここで、Si/Al 比をと ると、河口へ向かうにつれての Si/Al 比は増加の傾向 が、プランクトンのSEM画像上の面積比の増加の傾 向ほぼ一致していることから (Fig. 4 ) Si/Al 比はプラ ンクトンの量を反映していると考えられ、プランクト ンは河口へ向かうにつれて増加している事がわかる。

Fig. 4 Si/Al 比とSEM画像のプランクトンの面積比

Al, Fe 濃度は河口へ向かうにつれて減少傾向を示し

た。Al, Fe は土壌に多く含まれる元素であり、さらに SEM画像では河口へ向かうにつれ土壌粒子が減少し ていたことから、河川水中に存在していた土壌粒子が 塩濃度の増加により凝析し、自重で河川底質へ沈降し たことが原因で濃度が減少したと考えられる。一方で、

河口へ向かうに従って、Na は増加傾向を示している。

Na は海水に多く含まれている元素であり、河口へ近 づき塩濃度が高まるにつれて Na を含んだ海塩粒子 が増加したことが原因と考えられる。

夏季における0.45-5.0 µm の粒子は、5.0 µm 以上の 粒子と同様に、Na 濃度が増加傾向を示した。SEM画 像では海塩粒子と土壌粒子のみが観察されたことから、

この濃度増加は海塩粒子によるものであると考えられ る。Al, Fe 濃度の減少も確認されたが、5.0 µm 以上の 粒子に比べて濃度の変動は小さかった。粒子が小さい ため凝析しても自重で沈降し難いことが原因と考えら れる。

3. 懸濁態の季節変化

Si/Al 比、Al濃度、Na濃度をそれぞれプランクトン、

土壌粒子、海塩粒子の指標とした。

Si/Al 比の大きさは、夏季>秋季>春季>冬季とな

り、特に夏季と秋季では河口へ向かうに従ってSi/Al 比の上昇傾向が確認できた (Fig. 5 )。プランクトンは 日光の強い夏季に最も繁殖し、増大したことを示して いる。

Fig. 5 Si/Al 比の季節変化

Al濃度はすべての季節で、河口に向かうにつれて減 少傾向を示していることが確認できた。濃度を比較す ると、春季が最も高かった。春季では上流の山の雪解 けと梅雨の影響で川の流速が早く、上流から輸送され た、または底質から巻き上げられた土壌粒子が多いこ とが考えられる。

Na濃度を比較すると、春季~夏季にかけて減少して いた。海水は春季~夏季にかけて強い日光の影響によ り密度成層を形成する。塩濃度の低く密度の低い海水 が表層水となり、その海水が河川を遡上するため、春 季~夏季のNa 濃度が秋季、冬季に比べ低いと考えら れる。

結論

5.0 µm 以上の懸濁態は海を起源とするプランクト

ンと地殻を起源とする土壌粒子が主であり、プランク トンは夏季に、土壌粒子は春季に最も多く存在してい

た。0.45-5.0 µm の懸濁態は海を起源とする海塩粒子が

主で、土壌粒子も存在していた。海塩粒子は秋季、冬 季に多く存在していた。

参考文献

1) Schubert, B.; Heininger, P.; Keller, M.; Ricking M.;

Claus, E.Trend Anal. Chem. 2012,36, 58-70.

2) Bilotta, G. S.; Brazier, R. E. Water Res. 2008, 42, 2849-2861.

対外発表

1)魚躬 和真、中澤 隆、古田 直紀: 日本分析化学第 63年会,2014, 広島, 口頭発表.

2) Kazuma Uonomi, Takashi Nakazawa, Naoki Furuta:

2015 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies, Honolulu, Hawaii, USA, Poster.

Fig. 4 Si/Al 比と SEM 画像のプランクトンの面積比

参照

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