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摩擦係数:μ

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Academic year: 2021

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(1)

Earthquake energy

EEQ

Potential energy

-δEP

Dissipated energy

EDP

Kinetic energy EK

+ = +

Earthquake

図-1

エネルギーバランス

斜面の滑り変形に使われる 震動エネルギーEEQ EEQ

斜面,盛土の内部で消費される震動エネルギー

EEQ =EIP–ERD

斜面, 盛土の基礎地盤

入力震動エネルギーEIP

基礎へ逸散するエネルギー ERD 基礎へ逸散するエネルギー ERD

地盤材料の内部減衰・液状化な どによる損失エネルギーEEQ 地盤材料の内部減衰・液状化な

どによる損失エネルギーEEQ

斜面勾配:β, 

摩擦係数:μ

斜面勾配:β, 

摩擦係数:μ

土塊の質量: M ,流動距離:δr 土塊の質量: M ,流動距離:δr

斜面残留変位

( ) ( )

Mg ' E EEQ EQ r

-

= - b d m1

飽和斜面:

( )

r EQ EQ

Mg E E b d

m ×

+ -

= '

等価摩擦係数

図-2

エネルギー法による地震時斜面流動量評価フロー

タイプA タイプB タイプC

タイプA タイプB タイプC

図-3

崩壊タイプ(新潟県中越地震)

1

3

2

図-4

崩壊タイプ(岩手宮城内陸地震)

ケースヒストリーによる地震時斜面崩壊・流動メカニズムのエネルギー的検討 Study on seismically induced slope failures and energy-based flow mechanism by case histories.

土木工学専攻 20 号 小泉 佳祐 Keisuke KOIZUMI 1. はじめに

これまで,地震による斜面安定の評価には,滑り土塊 の力のつり合いにより崩壊の有無を判断し, Newmark 法

1)

などにより滑り面に沿った変形量を求める方法が 用いられてきた.それらの方法は崩壊の有無や滑り面 に沿った剛体的な変形量の算定に適用されるものの,

せん断変形を伴う崩壊や長距離流動崩壊を評価するこ とは困難である.本研究では, 図1に示すように斜面崩 壊のエネルギーバランスにより,エネルギーの観点か ら斜面変形量を定量的に評価することを目指している

2)

.そのため我々は模型実験と剛体ブロックモデルの 理論的考察に基づき,エネルギー法による斜面の地震 時流動量の評価法を図2のように提案した

3)

.エネルギ ー評価法により斜面の流動量を評価するに当た って,摩擦係数 m がどのような値をとるのかは非 常に重要であるが,単純な室力学試験のみでは自 然斜面の複雑な条件を考慮することは困難であ る場合が多い.そこで 2004 年新潟県中越地震にお ける実際の斜面崩壊にエネルギー評価法を当て はめ等価摩擦係数 m を逆算し,摩擦係数と地質地 盤条件などの関連を明らかにする研究を行って

きた

4),5)

.本稿では,新潟県中越地震での斜面崩壊

事例と岩手宮城内陸地震での斜面崩壊事例にお いて,等価摩擦係数の算出方法,計算結果ならび にそこから得られた知見などについて述べる.

2.斜面崩壊での摩擦係数算出法

2004 年新潟県中越地震(中越と略称)で発生 した斜面崩壊事例については, 図 3 のように斜面 崩壊のタイプを 3 つに分けて検討している.

・タイプ A : 20° 内外の流れ盤斜面での土塊の剛 体的移動.これが,大規模な河道閉塞の原因.

・タイプ B:30°程度以上の急勾配受盤・横盤斜

面の浅い崩壊・トップリング崩壊.

・タイプ C :池や棚田を構成する地滑り崩積土の

液状化・軟化,亀裂に起因したパイピング,池の

(2)

1 10 100 1000 10000

10 100

Hypocentral distance R (km) Incident energy EIP/A (kJ/㎡)

EIP 中越 (M=6.8)

EIP 岩手宮城 (M=7.2)

M=6.8 M=7.2 M=6.6 M=6.9

図-5

震源距離

R

と単位面積当たりのエネルギー

EIP/A

の関係

44.0

( ) d

r av

= 5.0

4.5 D = h

21 41 .5

22

12

(

unit m:

)

0.6 0.9 42.4°

13

図-6

剛体ブロックモデル化の例(P-52 付近)

決壊による泥流崩壊.

2008 年岩手宮城内陸地震(岩手宮城と略称)で 発生した斜面崩壊事例については,崩壊が剛体的 に滑っているか否かを各斜面崩壊箇所で図4のよ うにタイプを 3 つに分けて検討している.

・タイプ 1 :比較的大部分が剛体的に滑っている.

・タイプ2:比較的小規模な部分が剛体的に滑っ ている.

・タイプ 3 :剛体的に滑っている部分が全くない.

図 2 の評価フローのスタートに位置する入力エネ ルギーの算出方法を以下に示す. 図 4 は,9 つの防災

科研 KiK-net 観測点(丸印は新潟県中越地震,三角印

は岩手宮城内陸地震)での本震記録から得た 83.4 ~ 260m の深度における単位面積あたりの入射エネルギ ー E

IP

/ A と震源距離 R の関係を示している

6)

.図中の 実線と破線の直線は以下に示す Gutenberg-Richter の式

7)

と点震源からの球面減衰の式,

log E = 1.5 M + 11.8 (1)

(

2

)

/ / 4

E

IP

A E = p R (2)

を用いて計算したものである.ここに E :地震動の 全エネルギー R :震源距離である.実測記録に基づ く地点ごとのエネルギーはばらついているが,震源距 離 R の増加に伴いエネルギー E

IP

/ A が減少する傾向 が現れている.図中に示した破線は 2 つの地震での実 測エネルギー E

IP

/ A を式(1),式(2)の理論式を用いて 最小二乗法により近似したものであり,新潟県中越地 震ではマグニチュード M = 6.6 ,岩手宮城内陸地震で は M = 6.9 に対応する.以下ではこれらの値を用いて 式(1), (2)から E

IP

/ A を計算している.

斜面崩壊に使われる震動エネルギー E

EQ

は,基礎へ の逸散減衰を考慮した場合の上限値を次式によ り与える

8)

( )

2

/ 4 / 1

EQ IP

E E = a + a (3)

こ こ で イ ン ピ ー ダ ン ス 比 a = 0.3 を 仮 定 し ,

/ 0.71

EQ IP

E E = により E

EQ

を求めている.また,

震動エネルギー E

EQ

から,地盤材料の内部減衰や 液状化などによる損失エネルギー E

EQ

¢ を差し引 く必要があるが,今回対象とした地盤条件はそれ ほど軟弱ではないことや,既往の非排水繰返し三

軸試験

4)

によれば液状化に至るまでの損失エネ ルギーは 2 kJ m /

3

程度であり E

EQ

¢áá E

EQ

であるこ とから, E

EQ

がすべて斜面崩壊に使われたとして 計算している.

地震前と地震後の航空写真と航空レーザー測 量データから作成した DEM に基づいて崩壊前後 の平面図・断面図の作成,影響面積の算定とすべ り面の推定をする.その後,崩壊前後の土塊を図 5 のようにブロック化し , 質量 M , 斜面勾配 b , 重 心流動距離 d

rn

を算出する.それらの値と、対象 とする地点の震動エネルギー E

EQ

を用いて土塊 重心の残留変位から等価摩擦係数 m が式(4)によ り算出される

4),5)

.なお,今回算出した等価摩擦 係数 m は全て滑り面上に地下水位があると仮定 している.

( 1 ) (

EQ EQ

)

rn

E E

d Mg

m b

- ¢

= -

(4)

(3)

0 50 100 150 200 250 300 350 400 0

50 100 150 200 250 300

δrn

=δrt

TypeA (中越) TypeB (中越) TypeC (中越) Type1 (岩手宮城) Type2 (岩手宮城) Type3 (岩手宮城) Travel distance of tip δrt (m)

Travel distance of centroid δ

rn (m)

図-7

水平方向流動距離と先端流動距離の関係

0 50 100 150 200 250 300 350 400

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

1.2 TypeA (中越)

TypeB (中越) TypeC (中越) Type1 (岩手宮城) Type2 (岩手宮城) Type3 (岩手宮城)

Travel distance of centroid δr  (m) Initial slope gradient βbe=tanθ

図-8

水平方向流動距離と崩壊前斜面勾配の関係

102 103 104 105 106 107

0.1 1 10 100

Volume of failed slope V (m3) TypeA (中越) TypeB (中越) TypeC (中越) Type1 (岩手宮城) Type2 (岩手宮城) Type3 (岩手宮城) Energy ratio -δEp/EEQ

図-9

崩壊土体積とエネルギー比の関係

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2

0 1 2 3 4

μ=βbe

Equivalent friction coefficient μ=tanφ

Initial slope gradient βbe=tanθ TypeA (中越)

TypeB (中越) TypeC (中越) Type1 (岩手宮城) Type2 (岩手宮城) Type3 (岩手宮城)

図-10

崩壊前斜面勾配と等価摩擦係数の関係

3.結果と考察

まず逆解析以前に DEM データの分析から以下 の結果が得られる.

図 7 は崩壊土塊全体の重心の移動距離から求め た水平方向流動距離 d

rn

を横軸にとり,縦軸にと った土塊先端の距離 d

rt

と対比している.一般に ハザードマップ作製上重要なのは崩壊土塊先端 の流動距離であるが,この図からはバラツキはあ あるものの,重心に着目した以下の検討でも岩手 宮城での 1 つの長距離崩壊を除いては流動距離 に大きな違いはないことが分かる.

図 8 は土塊重心の水平流動距離 d

rn

と崩壊前斜面勾 配 b

be

の関係である.これから中越においては、タ イプ A は崩壊前斜面勾配が低く流動距離が大き い流れ盤の特徴を、タイプ B については崩壊前 斜面勾配が大きく流動距離は小さいことから受 け盤の特徴が現れている.タイプ C については 泥流化しているため,流動距離が大きくなってい るものがある.岩手宮城においては,ほぼ剛体的 な滑りのタイプ 1 が中越のタイプ A と同様に崩 壊前斜面勾配が低く流動距離が大きい特徴を現 している.タイプ 2 , 3 においてはデータ数が少 なくバラつきがみられる.しかし,個々のタイプ 別にも全体的にも斜面勾配 b

be

が小さくなるほど,

流動距離 d

rn

が大きくなる意外な傾向が読み取れ る.

次に逆解析により得られた結果について述べると,

図 9 は崩壊土体積

V

とエネルギー比 - d E

P

/ E

EQ

の関 係 で あ る . 崩 壊 土 体 積

V

が 大 き く な る ほ ど

P

/

EQ

E E

- d は増加している.つまり大きな滑りの エネルギーの大半は地震エネルギー E

EQ

ではな く位置エネルギー - d E

P

によって供給されること を意味している.その一方で小規模崩壊では位置 エネルギーばかりではなく地震エネルギーも無 視しえない大きさになる傾向が読み取れる.中越 と岩手宮城を比較してみると,小規模崩壊になる につれて傾向がそれていくが,大規模崩壊では同 様の傾向が現れている.

図 10 は崩壊前斜面勾配 b

be

と逆算した等価摩擦係

数 m の関係である.全体的に, m は斜面勾配と共

(4)

102 103 104 105 106 107 108 109 1010 1011 1012 0.0

0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0

Equivalent friction coefficient μ=tanφ

Volume of failed slope V (m3) TypeA (中越) TypeB (中越) TypeC (中越) Type1 (岩手宮城) Type2 (岩手宮城) Type3 (岩手宮城) J.HSU (1975)

図-11

崩壊土体積と等価摩擦係数の関係

に大きくなる傾向が読み取れる. これは摩擦係 数を一定値として検討することの多い人工斜面 とは対照的であり,自然斜面の勾配が長期間の自 然災害の履歴により決定されてきたことを示唆 している.また b

be

の小さい範囲では等価摩擦係 数 m は崩壊前斜面勾配 b

be

より下回る傾向がタイ

プ A, C,さらにタイプ 1 について多く現れている.

地震前は当然, m b ³

be

であるから,地震を契機に 摩擦係数が低減したと考えられる.しかし,小規 模崩壊では震動エネルギーに対して流動距離・崩 壊土量が極端に小さいため,等価摩擦係数 m が崩 壊前斜面勾配 b

be

を上回るケースが見て取れる.

図 11 は崩壊土体積V と等価摩擦係数 m の関係であ る.ここで白抜きの星印は既往の大規模崩壊について の分析結果である

9)

.この図より,体積が小さい小 規模崩壊では等価摩擦係数 m は大きく,崩壊土体 積 V が大きくなるほど摩擦係数 m が小さくなる 傾向が読み取れる.全体的に大きなスケールで見 ても既往の大規模崩壊との整合性がよいことが 分かり,特に受け盤斜面のタイプ B,岩手宮城の タイプ 1 についてはデータの連続性がよく,タイ プ A , C についてはそれよりも m が低くなる傾向が 読み取れる.また,中越と岩手宮城を比較すると,

5 3

10

V = m あたりから小規模崩壊になるにつれて互い の傾向はそれていく.逆に,中越と岩手宮城ともに大 規模崩壊になるほど,互いの取りうる値は類似する結 果が得られている.

4.まとめ

まず逆解析以前に,新潟県中越地震と岩手宮城内陸 地震で多数の崩壊斜面の流動距離や斜面勾配などの整 理により以下の知見が得られた.

 全体的にも崩壊タイプごとにも, 崩壊前斜面勾配 の小さい斜面ほど流動距離が大きくなる予想外 の傾向が得られた.

次に,エネルギー法により等価摩擦係数を逆計算す ることにより以下の知見が得られた.

 体積の大きな大規模崩壊ほど等価摩擦係数 m は小さくなる.

 大規模崩壊ほど損失エネルギーの大半は地震エ ネルギーではなく位置エネルギーによって供給

される傾向がある.

 逆算した等価摩擦係数は初期斜面勾配とともに 増加する傾向が読み取れ, 斜面勾配が既往の災害 履歴を反映して決定されたことを示唆している.

 新潟県中越地震タイプ A , C の緩勾配斜面,

岩手宮城内陸地震タイプ 1 の剛体的滑りで は崩壊前斜面勾配 b

be

を等価摩擦係数 m が下 回る傾向となり,地震を契機に摩擦係数が低 減したと考えられる.

 新潟県中越地震と岩手宮城内陸地震を比較 したところ,小規模崩壊では多少の傾向のズ レはあるものの,大規模崩壊では等価摩擦係 数と各パラメータの関係は類似の傾向を示 すことがわかった.

【参考文献】

1)Newmark : “Effects of earthquakes on dams and embankments,”Fifth Rankine Lecture, Geotechnique Vol.15, 1965, pp.139-159 2) 石澤友浩、國生剛 治:エネルギー法による地震時斜面変形量評価方法の開発、土木学会論

文集 C、Vol.62,論文No.4、2006 年、 pp.736-746.3)國生剛治、石澤友

浩:エネルギー概念による地震時斜面流動量評価法と 2004 年新潟県中越 地震への適用,土木学会地震工学研究発表会 2007 4) 國生剛治、石澤 友浩;地震時斜面崩壊における土塊流動距離のエネルギー的評価法と実 崩壊事例への適用、 日本地すべり学会誌、 Vol.47、 No.3、 2010 年、 pp.121-128.

5) Kokusho.T, Ishizawa.T, Nishida.K. : Travel Distance of Failed Slope During 2004 Chuetsu Earthquake and Its Evaluation in Terms of Energy, Soil Dynamics and Earthquake Engineering, Vol.29, No.7, 2009, pp.1159-1169. 6) 鈴木拓:

2009 年度中央大学大学院理工学研究科修士論文 7) Gutenberg, B. : The

energy of earthquakes, Quarterly Journal of the Geological Society of London,

Vol.CXII, No.455, 1955, pp.1-14. 8) Kokusho.T ,and Ishizawa.T : ’’Energy

Approach to Earthquake-Induced Slope Failures and Its Lmplications’’ journal of

geotechnical and geoenvironmental engineering ASCE, 2007 9) Hsu.J :

Catastrophic Debris Streams Generated by Rockfalls, Geological Society of

America Bulletin, v.86, Doc.no.50117, 1975, pp.129-140.

参照

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