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雑誌名 北海道医療大学歯学雑誌

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北海道医療大学学術リポジトリ

三叉神経領域の侵害入力による顎顔面領域の反射機 能の抑制作用 GABAB受容体を介する中枢抑制機構

著者 石井 久淑

雑誌名 北海道医療大学歯学雑誌

巻 30

号 2

ページ 173‑173

発行年 2011‑12

URL http://id.nii.ac.jp/1145/00006541/

(2)

[最近のトピックス]

三叉神経領域の侵害入力による顎顔面領域の反射機能の抑制作用

−GABA

B

受容体を介する中枢抑制機構−

石井久淑

北海道医療大学歯学部口腔生物学系生理学分野

顎顔面領域に生じる痛みは同領域の慢性的な機能障害

(咀嚼や嚥下障害)に多く認められる症候であることか ら(Lobbezoo et al.,

Arch Oral Biol 51 : 713−720, 2006 ; Ertekin et al., Clin Neurol Neurosurg 107 : 32−37, 2004),

三叉神経領域の侵害入力はこれら機能障害の病因に密接 に関連していることが示唆される.近年,三叉神経領域 への侵害刺激(カプサイシン)は嚥下反射を司る脳幹の 孤束核のニューロン活動をGABA入力を介して抑制する ことが報告されている(Tsujimura et al.,

J Physiol 587 :

805−817, 2009

).したがって,これら侵害刺激による

GABA入力系の変調は顎顔面領域の反射機能障害の誘因

として重要であると考えられるが,その詳細なメカニズ ムは明らかにされていない.

近年我々は,孤束核は頸部迷走神経からの求心性入力 で生じる咀嚼筋の反射性副交感神経性血管拡張反応に重 要であることを明らかにした(Ishii et al.,

Brain Res 1312 : 41−53, 2010

).この反射性血管拡張反応は体幹血 圧の低下時においても顎顔面領域の血液供給を担う総頸 動脈の血流を増加させることから,全身的な循環動態の 変化時において咀嚼筋のみならず,顎顔面領域の血流維 持に関与しており,この反射性血管拡張反応の破綻は顎 顔面領域の血流障害の一因となることが示唆された

(Ishii et al.,

Brain Res 1370 : 145−153, 2011).

最近,頸部迷走神経の求心性刺激で誘発される咀嚼筋 の反射性血管拡張反応は舌や下唇へのカプサイシン投与 によって,顕著に抑制されることが明らかになった

Ishii & Izumi, Am J Physiol , in press, 2011

).孤束核に対 するGABAA及びGABAB受容体アゴニスト(ムシモール 及びバクロフェン)の微量注入は咀嚼筋の反射性血管拡 張反応を顕著に抑制することから,孤束核に対する

GABA入力がカプサイシン投与による咀嚼筋の反射性血

管拡張反応の抑制に関わることが示唆された.一方,こ の 抑 制 作 用 は

GABA

B受 容 体 ア ン タ ゴ ニ ス ト (

CGP

35348)によって有意に抑制されたが,GABAA受容体ア ンタゴニスト(ビククリン)の投与では影響を受けなか

った.これは侵害入力による咀嚼筋の反射性血管拡張反 応の抑制作用には

GABA

Aよりも

GABA

B受容体が密接に 関連していることを示している.GABAB受容体はGタン パク質共役受容体であり,細胞膜を過分極させるK ャネルを活性化して,ニューロンの興奮性を長期的に抑 制することが知られている(

Brooks et al. , J Physiol 457 : 115−129, 1992

).したがって,三叉神経領域からの 侵害入力はGABAB受容体を介して顎顔面領域の反射機 能に関わる脳幹(孤束核など)のニューロン活動を抑制 することが示唆され,この中枢抑制機構が諸種の慢性的 な機能障害の発症機序や病態に関連していることが推測 される.

慢性痛を有する状態でのGABAB受容体の質的及び量 的変化については不明な点が多いが,長期的なGABA入 力(

Schousboe, Neurochem Int 34 : 373−377, 1999

)或い は侵害入力(McCarson & Enna,

Neuropharmacology 38 : 1767−1773, 1999

)は中枢神経系における

GABA

B受容体 の発現量を増加させることが報告されている.また,皮 膚に対する侵害刺激はFos(最初期遺伝子)とGABAB 容体に共染色される孤束核のニューロン数を増加させる ことも明らかにされている(Pinto et al.,

Eur J Neurosci 17 : 1393−1402, 2003

).したがって,これら中枢神経系 のGABAB受容体の可塑的変化が慢性的な痛みに基づく 顎顔面領域の反射機能障害の病因に重要な役割を演じて いるのかも知れない.

北海道医療大学歯学雑誌 30! 平成23年 55

(173)

雑誌/第30巻2号   4C150 1C133/本文 119ページから始めること/000     トピ石井 三叉神経領域  2011.12.16 10.42.1

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