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論文審査の結果の要旨 申請者氏名

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Academic year: 2021

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論文審査の結果の要旨

申請者氏名 佐賀 さ やか

脂肪萎縮症は 局所性ま たは 全身性の 体脂肪欠 損を特徴とし 、インス リン抵抗 性、糖尿病お よび脂肪 肝 などの脂質 代謝異常 を合併する症 候群であ る。脂肪組 織はエネルギ ー貯蔵だ けでなく代謝 調節にと っても重要な 臓器で、 脂肪細胞か ら分泌される 重要なア ディポカイン であるレ プチンは食物 摂取と全 身のエネル ギー消費調節 に関与し ている。した がって脂 肪組織の欠損 は循環レ プチン濃度 低下を引き起 こし、そ れに伴 う糖・ 脂質代謝 の異常をもた らす。脂 肪萎縮症で 見られるこれ らの代謝 障害はレプチ ン投与に よ って改善さ れるので 、レプチン 補充療法は脂 肪異栄養 症の治療とし て承認さ れている。ト ランスジ ェニック脂 肪萎縮症マウ スを用い た動物実験 に おいて も 、レプチン欠 乏がイン スリン抵抗 性を引き起こ し、レプ チン補充 によ りインス リン感受性 が 顕著に改 善すること が実証されて いる 。ヒ ト組換えレプ チン(メ トレレプチン )は、脂 肪萎縮症に 伴う代謝性合 併症のた めのレプチン 補充療法 に有効である ことが報 告されてお り、米国およ び日本で 承認 、使用さ れている 薬剤である。 メトレレ プチンは、

脂肪萎縮症患 者におけ る糖および脂 質代謝異 常を顕著に改 善し、脂 肪萎 縮症の 症状が軽減さ れる。

スンクス(Suncus murinus)は日本で実験 動 物として 樹立 されたト ガリネズミ 科の食虫性動 物で、生 理学的および 形態学的 実験に広く使 用されて いる 。その 特徴の 1つ に体脂肪、 特に内臓脂肪 の顕著な 欠乏がある。 スンクス は体脂肪が 非常に少ない にも かか わらず、ヒト およびげ っ歯類と同程 度の血糖 レベルおよ び通常のグル コース代 謝を示す。こ の ように スンクスは特 有のエネ ルギー代謝 機構を有する 動物とい える 。申請者 は 、スン クスの 血中レ プチン量 やレプチン 機能がヒトや 他の動物 とは異なるか もしれな いという仮説 を立て研 究を行った 。

本研究の目的 は、スン クス レプチン の構造お よびその生理 学的役割 、特にイ ンスリン感受 性および グルコース代 謝への関 与を 解明する ことであ る。 そのた めに、スンク ス Lep cDNAをクロー ニング してその配列 およびタ ンパク質構造 を明らかにし 、スンク スの Lep mRNA の組織 分布を 解析し た。

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1. スンクス Lep cDNAのクローニン グと組織 分布

スンクス Lep cDNAのクローニン グは 、3'RACE法と5'-UTRのた めの RT-PCR を組み合わせ ること に よって実施し た 。得 ら れた PCR断片か らコ ンセンサス配 列を決定する ことによ り、完全なコー ド領域 を含むスンク ス Lep cDNAの塩基 配列を決定し た。今回 クローニング したスン クス Lep cDNA 3026 bp であり、

170 アミノ酸 残基(aa)のポリペプチド をコ ードする 513 bp の推 定オープンリ ー デ ィ ン グ フ レ ー ム を 含 ん で い た 。 計 算 上 の レ プ チ ン 前 駆 体 の 分 子 量 (MW)

18.9kDa であった。 推定されたス ンクスレ プチン前駆体 は、その アミノ末端

21 個の疎水性 アミ ノ酸 残基から なる予測 シグナルペプ チドを有 し、成熟 レプ チンは 149 aa であり 、計算上の MW 16.4kDa であった。 スン クスは他の哺 乳動物よりも 体脂肪が 少ないので、Lep 遺伝子発現の組織 分布を調 べることに よ り 、 レ プ チ ン が 脂 肪 組 織 以 外 に も 発 現 さ れ 得 る か ど う か を 確 認 し た 。Lep mRNA の組 織分布を RT-PCR によって確 認し た 結果、Lep 遺伝子発 現は他の哺 乳動物で見ら れる分布 と同様に、白 色脂肪組 織(皮下およ び精巣上 体)および 褐色脂肪組織 において のみ観察され た。

2. スンク スレプチ ン の多重 配列解 析と 進化 系統解析

スンクスレ プチン前 駆体のアミノ 酸配列を ラット、マウ ス、ヒト 、ウマ、ウ シ、ブタ、ネ コおよび イヌを含むい くつかの 哺乳動物種と 比較した 。配列のマ ルチプルアラ インメン ト(多重配列 比較)に は、スンクス と同じト ガリネズミ 科(食虫目 )に属 して いるヨーロッ パトガリ ネズミ(Surx araneus)のレプチ ン 配列も用いた 。レプチ ンはこれら哺 乳動物の 間で高度に保 存されて おり、 スン クスレプチン 前駆体は 、ラット(77%)、マウス(77%)、ヒト(75% )、ウ マ(82%)、

ウシ(80%)、ブタ(80%)、ネコ(78%)、イヌ(76%)およびヨ ーロッパトガ リネズミ(81%)と相 同性が高いこ とが示さ れた 。アライ ンメント の結果から は、スンクス レプチン に 3aa の挿入があるこ とが示された が、これ は他の哺乳 動物には認め られなか った。 塩基配 列の比較 からは 9 塩 基対の挿入 がスンクス Lep遺伝子配列に見 られたが、 挿 入塩基対 数が 3 の倍数 となるた め フレーム シフト変異は 起こさず に 3aa が挿入されたこ とを示してい る 。この 挿入は、ス ンクス Lep遺伝子内に 生じた 9 塩基 対のマイ クロインデル に起因す ると考えら

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れた。いくつ かの哺乳 動物、 特に有 胎盤類 の レプチンアミ ノ酸 配列 を用いて進 化系統樹を作 製し、比 較 した。 参照レ プチ ン配列として 、霊長類 としてヒト 、 チンパンジー およびア カゲザル、げ っ歯類と してラットお よびマウ ス、奇蹄類 としてウマ、 偶蹄類と してウシおよ びブタ、 食肉 目として ネコ およ びイヌ、そ して食虫目と してスン クス(Suncus murinus)とヨーロッパ トガリネ ズミ(Sorex arenius)を用い た。系 統樹分析の結 果は以前 に報告された ものと非 常に類似し ていた。

3.スンクス レプチン の立体 構造解 析

ヒ ト レプ チ ン (PDB コ ー ド :1AX8) の 構 造 に 基づ い て ス ン ク ス レ プ チン の 立体構造モデ ルを作成 したところ 、典型 的な 4つのα-ヘリッ クス 構 造を示した 。 このことから 、今回ク ローン ニング した Lep cDNAは、他の哺 乳 動物由来のレ プチンタンパ ク質と類 似の構造を有 するスン クスレプチン 前駆体タ ンパク質を コードしてい ることを 示している。 CD ル ープに挿入さ れた VPQ 配列がヒ ト レプチンと比 較すると 突出部を形成 している 。しかしなが らこの部 分はレプチ ン受容体への 結合部位 には影響を 与 えない。 そのためスン クスレプ チンは他の 哺乳動物由来 のレプチ ンと同様 の生 理活性を 有すると推測 されたが 、より詳細 な分析のため には、組 換えタンパク 質による レプチン受容 体との結 合実験が必 要である。

本研究では 、ヒト脂 肪萎縮症の動 物モデル としてのスン クスの有 用性を探っ た。他の哺乳 動物より も体脂肪が少 ないスン クスが通常の 条件下で インスリン 抵抗性を示さ ない理由 を明らかにす るために 、スンクスレ プチンの 構造を明ら かにし、ヒト レプチン との違いを同 定した。 本研究によ り以下の 結果が得ら れた。cDNA クローニ ングにより、 スンクス は他の哺乳動 物と相同 性の 高いレ プチンタンパ ク質を有 することが確 認された 。スンクスレ プチンに は他の哺乳 動物のレプチ ンには見 られない 3 つ のアミノ 酸 VPQが、slippage のような マイ クロインデル の結果と して生じたも のと推測 された。予測 した立体 構造はヒト レプチンのも のと類似 しているが 、CDル ー プの VPQ領域はわず かに外側に突 出していた。Lep遺伝 子の発現は、他の哺乳 動物と同様に 、WATおよび BAT

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限られていた 。 これら の結果を総合 的に判断 すると、脂肪 萎縮症の 病態形成に おけるスンク スレプチ ンの役割に決 定的な証 拠を得ること はできな かった。し かし今回発見 した 3ア ミノ酸の挿入 によりレ プチンの機能 やスンク スの代謝が どのような影 響を受け ているかにつ いての興 味がもたれる 。 今後、 組換えタン パク質を用い たレプチ ンの機能の詳 細な分析 を行うことで 、スンク スレプチン の生理学的役 割 および 正常なスンク スがイン スリン抵抗性 を示さな い理由を明 らかにするた めに必要 であ ると申請 者は考察 した 。今後の 研究の進 展により、

スンクスが脂 肪萎縮症 の合併症非発 症モデル として利用で きる可能 性が期待さ れ、脂肪萎縮 症のさら なる病態解明 や新たな 治療起点の開 発につな がると考え られる。加え て獣医学 領域では、こ れまで産 業動物、伴侶 動物とも に脂肪萎縮 症についての 報告がな い。今後、獣 医学領域 においても脂 肪萎縮症 に注目する ことで、これ までは糖 尿病や糖・脂 質代謝異 常と診断され ていた動 物に脂肪萎 縮症が発見さ れる可能 性がある。ス ンクスの ように、げっ 歯類とは 異なる脂肪 萎縮症モデル 動物は、 獣医学領域で 多く見ら れる肉食性動 物のモデ ル動物とし ても重要な役 割を果た すことが期待 される と 申請者 は総括 した 。

以上のように 、本論文 は 、スンクス レプチン の特徴を明ら かにし、 スンクス が脂肪萎縮症 を含む種 々の脂質代謝 異常症の ユニークなモ デル動物 となりうる ことを明らか にした。 このことは獣 医学領域 において 学術 上、応用 上貢献する ところが少な くない。

よって審査委 員一同は 、本論文が博 士(獣医 学)の学位論 文として 十分な価 値を有するも のと認め 、合格と判定 した。

参照

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