日本 管理会計学 会 誌
管理会 計学1999年 第7巻 第1・2合 併 号
諭 文
レ バ レ ッ ジ ド ・ リー ス 取 引の 測 定 方 法 につ い て
一 FASB No .13の 4方 法 に関 連 し て 一
山田 恵一 *
〈 論 文 要 旨〉
本論文の研 究 目 的は,フ ァ イ ナン ス ・リース 取 引 と して の レバ レッ ジ ド・リース 取 引
の測定につ い て, レ サーの 観点か ら, 特にFASB No ユ3 に おい て提示さ れて い る, 「通常
の金 融 リース 法」,「三当事者 間 金 融 リース 法」, 「別 個の面を持っ た投資法 」,お よ び 「統 合的 投資法」の 4方 法の会 計 理 論上の 妥当性を検討 する こ とである.ま た, 本 論 文では,
ノ ン リ コ ース ・デ ッ ト は
, レサーに と
っ て 「償還請求権の行使を受けない 債務 」で ある とい う, FASB No .13 と同一の前 提
に たっ て考 察 する.
「通 常の金 融 リース法 」は, レバ レッ ジ ド・リース取 引が 「レサー」, 「レ シー」, およ
び 「金融 機 関 」の 三当事者, リース財 産を販 売 する 「メ ーカー等」, な ら びに取引 全体を 企 画 し, 遂 行 を調 整 する 「リース 会 社 」に よ り行わ れ る諸 取 引 を 不 可 分一一一体として遂 行 されて い る とい う実 態 を 写 像せず,さらにノ ンリコ ース ・デ ッ トにつ い ては,レサ ーに
とっ て 「償 還請求権の行使を受け ない 債務」で ある に もか か わ らず, これを負債と して 認 識 してい る.したがっ て, 「通 常の金 融 リース法 」は
, 会 計 理 論 上 妥 当 とはい え ない . 「三当 事 者 間 金 融 リース法」は,ノ ンリコ ース ・デ ッ トを負債とし て認 識せ ず,超 過 回 収資金の運用 に よ り得ら れる と予想さ れ る利益 をリース利益に含めず,税 金の 繰延効 果を 考慮 し ない .こ の方法は, 自己資金の み が レサーに よっ て利益 を獲得する た めの真の投資 額を 意味し,現実のキャ ッシュ フロ ーを 基 礎に し ての レサ ーの純投資額を算定 し,そ れ に 対する利 益率が均一に な る ように リース 利 益を配 分 する とい う経 済 的 実 質を適 切に写 像し てい る.し た がっ て 「三当事者 間 金 融り一ス
法 」は,妥当な測定方 法である とい え る. 「別個の 面 を持っ た投資法」は,「三当事者間 金 融リース 法」の特 性に,さ ら にレサー
の 純 投資額の 計算過 程に税 金の繰 延 効 果 とい うマ イナス の キ ャ ッ シュ ・ア ウ ト・フロ ー
を プ ラス の キ ャ ッ シュ ・イ ン ・フ ロ ーとする とい う仮 定 を追 加 し た方 法である.レサー
は リース 期間前 半に発生する課 税 所 得 額以 上 の利益を レバ レッ ジ ド・リース
取 引以外の 本 来の 業 務で計上 で きるこ と が仮 定 とされて お り, 本 来の業 務で充 分 な 利 益 を 計 上で き
な く なっ た場 合に は,税金の繰 延 効 果は得われ ない .し た がっ て,「別 個の面を持っ た投 資法」は,会計理論上妥 当と はい えない .
「統合的 投資法 」は,「別 個の面 を持っ た投資法 」の特 性に, さらに超 過 回 収 資 金の運 用に よ り得ら れ る と予 想さ れ る利 益を リース利 益に含め,その金額 分だけ 過 大に リース利 益を 計上する方法である.この こと か ら, 「統 合 的投資法 」は会 計 理 論上妥 当と はい え ない .
〈 キーワー ド〉
レバ レ ッ ジ ド ・リース
取 引,ファ イ ナン ス ・リース
取 引,レサー,FASB No.13 ,税 金の 繰 延 効 果
1998年 10月 受 付 1999 年 8月 受 理
*東京理科大学 大学院 工学 研 究 科 博 士 後 期 課 程 経 営 「二学 専 攻
1. は じ めに
フ ァ イ ナ ン ス ・リース 取 引と して の レバ レッ ジ ド ・リース 取 引につ い て , 米 国の財 務 会
計 基 準審議 会 (Financial Accon七ing Standards Board ;FASB )は, リース 財産の 貸手
(レサ ー)の 観 点か ら その 代 替 的測 定 方法 と して 「通 常の 金融 リース 法 (The ordinary
financing lease method )」, 「三 当 事 者 間金 融リース法 (The three −party financing lease
method )」, 厂別 個 の面を持っ た投資法 (The investment separate phases method )」,お
よ び 厂統 合 的投資法 (The integral investment method )」,の 4方法を提 示 し,その うち
「別個の 面を持っ た投 資法 」を妥 当な測定 方 法として い る (1). また嶺 [7]に お い て も,
こ れ ら4 方法が検 討さ れ, FASB No .13 と同一一の 見解が示さ れ てい る . 一方, わが国に お
い て は 「リース 取引に係 る会計基 準 に関 す る意見書 」 (以 下, 「リース 会計基準 」 とい う.) が 公 表 され, リース 取 引は , フ ァイナン ス ・リース 取 引 と オペ レーティ ン グ ・iJ 一ス 取 引
とに 分類 さ れ てい る が , レバ レ ッ ジ ド ・リース 取 引に つ い て は, 特 に別 段の 基準 を置い て
い ない の で , こ れ が形 式 的に フ ァ イナン ス ・リース 取引の 条件を満たす 限 り, フ ァ イナン
ス ・リース 取 引 に属 する もの と し て み な し てい ると考え ざるを えない . し か し, リース 会 計 基 準で は, フ ァ イナ ン ス ・リース 取 引の 取 り扱い に つ い て は, その 名 称に も関わ らず,
「原則 と し て 通常の 売 買 取 引 に係 る方法に準 じて 会計 処理 を行 う.」 と してい るの で, レ バ
レ ッ ジ ド ・リース 取 引は, 金融 取 引で はな く, 売 買 取 引 と して 取 り扱わ れる こ と になっ て
い る. レ バ レ ッ ジ ド ・}」 一ス 取引につ い て は,FASB が示す ように, ま た わが国の り一ス 会 計 基 準が フ ァ イナ ンス ・リース取 引 とい うその名 称が示 すように ,そ れ を 金融 取 引 と み
なす場合の 測定方 法を検討 し て お く 必要が ある と思わ れ る.
レ バ レ ッ ジ ド・リース 取引の測定方法を吟味 する た め に は, レサーの 債務が ノ ン リコ ー
ス ・デ ッ トで ある こ とを前提 とす る か 否か を定め る必 要が ある が, 本 論 文で は FASB No .13 と同一
の 前提 に たっ て ,そ れ をノ ン リコ ース ・デ ッ トとし て検 討を行 うこ とにす
る.
また, FASB No .13 が 示す 4方 法 は, 複 雑 な計 算 手 続 を要 す るが, これ まで 一般 化 さ れ て 示 された こ とは なかっ た とい えよ う.4 方 法 を的確に捉 える ため に は, これ ら を一般 式
に よ り示 す こ と が必要である と思 わ れ る.
そ こで , 本論 文で は, フ ァ イ ナ ン ス ・リース 取 引 と して の レバ レ ッ ジ ド ・リース取 引の 測定につ い て , レサ ーの観 点か ら, FASB No.13 が示 す 4方法を一般 式 に よ り示 し, これ らの 会 計 理 論上の妥 当 性を検討 す るこ と を目的 と して い る . その た め に, 次 節で は, レバ レ ッ ジ ド ・リース 取 引の 意 義 と特 性 を 明ら か に し, 第 3節で は, FASB No .13が示 す 4方
レバ レッ ジ ド・リース取引の 測定方法につ い て
法 を吟 味 する ことによ り,そ れ らの 一般 式 を誘導し, さ らに数値モ デル にそ れ ら を適 用 す るこ と に より特 性 を検討 し, 第4節で は, 4方法 の理論的 検 討 を行 う .
2. レバ レ ッ ジ ド ・ リー ス 取 引の 意義と特 性
本節に おい て は, まずレ バ レ ッ ジ ド ・リース 取引の 意義を明 ら か に し,つ ぎに その 特性
を述べ る こ とにす る.
レバ レ ッ ジ ド ・リース 取 引と は, リ← ス 財産の 法律 h の所 有者で ある貸 手 (レ サ ー),
リース 財 産の使 用 者で リース
料を支 払 う借 手 (レ シ ー), リース財 産を購入 する た めの 資 金 を融資す る金 融機関 で ある銀 行 (長 期資金 提 供 者 と言わ れ る場 合 もあ る), リ「 ス財 産 を販 売 するメ ーカ ー等, な ら び に取 引 全 体 を企 画 ・設 計 し, 遂 行 を調 整 する こ とに よ り手 数料 を得る リース 会社が当事者で あ り, こ の 取 引を構成 する レサー とメ ーカー等との リー
ス 財 産の 売 買 契 約, 金融 機 関とレサー との 金銭 消費貸 借 契 約, レサー とレ シーの 賃 貸 借 契 約, な ら び に リース会 社 と他の 当事者 との 諸 契 約は, 契 約条項上 , あるい は実質的に連動
して 同 時に効 力が 生ず る ように なっ て い る取 引で ある. レサ ーは,リ ース 財 産の購 入 資金 総額の 比較的小 さい 割 合 (20 〜40% 程度 )の 自己 資金 と, 金 融 機関 か らの借入 れ た資金
とに より, メ ーカ ー等か ら リース財 産 を購 入する . レサー とレ シー と は
, こ の リース 財 産
につ い て , リース料, リース 期 間等を定め る賃貸借 (リース )契約を結ぶ こ と に よりレ バ
レ ッ ジ ド ・リース 取 引は開 始 さ れ る.
つ ぎに, 以下 に おい て レバ レ ッ ジ ド・リース 取 引の 特 性 を述べ る.
まず , レバ レ ッ ジ ド ・リース取 引は,そ れ を構 成 す る リース 契 約に おい て , リース 期 問 中の 解約が条項上 , あるい は実質的に禁止 さ れて お り, か つ , レサーが負担する リース財 産の購入原価, 支払利息, 固定資 産税, 損害保 険料その 他付随 費用 な ら び に リース 利 益の 合 計 額が リース 期 間 中に レ シーが支 払 うり一ス料 総 額 に よ り, お お む ね回収 され る よ うに 設 定 さ れ るこ とに よ り, フ ァ イ ナ ン ス ・リース 取引 に属 す る もの と さ れて い る,
つ ぎに , 本 論 文で検討 する FASB No .13 におい て 示す4 方法が測定対象 とする レバ レ ッ
ジ ド ・リース 取 引の 特 性 として , レサーの金 融 機 関に対 する 債 務が 「ノ ン リコ ース ・デ ッ ト (nenre −course debt>」である こ とにつ い て 述べ るこ とにする.レサ ーは リース 財 産 を
メ ーカ ー等か ら購 入 するた め に金融 機 関か ら資金 を調 達 し債 務 を負い , 1ノシ ーか ら リース 料 を収 受 して その 債 務の 元 利の 返 済に充 当 する. も しレ シ ーが支 払 能 力を喪失して リース 料 を支 払 うこ と がで きな くなっ た場 合 に, 通 常 は, レサーは金 融 機 関に その債 務の元 本 と 利子 を支 払 うこ と が不 自∫能 と なる .こ の 場 合 に, レサーは金 融 機 関に対 して返 済 不 能 とな る が, レ シーに対す る レサーの リース 料債権の 金 融機 関へ の 譲 渡, り一ス財 産に よ る代物