線形代数学1 No.5 2004. 5.17
2.1 行列の演算 担当:市原
¶ 行列の積 ³
`行m列の行列Aとm行n列の行列B
A=
a11 a12 · · · a1m a21 a22 · · · a2m
· · ·
a`1 a`2 · · · a`m
B =
b11 b12 · · · b1n b21 b22 · · · b2n
· · ·
bm1 bm2 · · · bmn
に対し,
xij =ai1b1k+ai2b2k+· · ·+aimbmk としたとき,
x11 x12 · · · x1n x21 x22 · · · x2n
· · ·
x`1 x`2 · · · x`n
で定まる行列を,行列Aと行列Bの積ABと定義する.
µ ´
例 Ã
a b c d
! Ãx y
!
=
Ãax+by cx+dy
!
à a b c d
! Ã x y z w
!
=
à ax+bz ay+bw cx+dz cy+dw
!
(a b c)
x y z
=ax+by+cz
a b c
(x y z) =
ax ay az bx by bz cx cy cz
a b c d e f g h i
x y z
=
ax+by+cz dx+ey+f z gx+hy+iz
6
例題 5 次の空欄を埋めなさい.
• 積ABが定義できるのは, 行列Aの の数と行列Bの の数が一 致している場合のみ.
• `行m列の行列とm行n列の行列の積は, 行 列の行列になる.
行列のスカラー倍・和
¶ ³
行列のスカラー倍は, 各成分をスカラー倍した行列.つまり, cをスカラーとし
A =
a11 · · · a1m ... ...
an1 · · · anm
としたとき, cA=
ca11 · · · ca1m
... ...
can1 · · · canm
である.
二つの行列の和は, 対応する成分の和を成分にする行列.つまり,
A=
a11 · · · a1m
... ...
an1 · · · anm
, B =
b11 · · · b1m
... ...
bn1 · · · bnm
とすると
A+B =
a11+b11 · · · a1m+b1m
... ...
an1+bn1 · · · anm+bnm
である.
行列の和は, 行の数同士, 列の数同士がそれぞれ等しい場合のみに定義できる.
µ ´
定理 6 (分配法則・結合法則) A, B, C, P, Q, R, X, Y, Zはそれぞれ行列, cはスカ ラーとする. このとき, 次が成り立つ. ただし, 積や和は定義できているとする.
c(A+B) = cA+cB, c(AB) = (cA)B =A(cB)
A(B+C) =AB+AC, (P +Q)R =P R+QR, (XY)Z =X(Y Z)
例題 6
(−3 2) Ã
2
à 1 4
−1 0
!
−
à 0 −1 1 0
!! Ã 4 0
!
を計算しなさい.
7
線形代数学1 No.5 2004. 5.17
2.1 行列の演算 担当:市原
問題 8
(1) 和は計算できるが積は計算できない2つの行列を見つけなさい. またその和を計算 しなさい.
(2) 積は計算できるが和は計算できない2つの行列を見つけなさい. またその積を計算 しなさい.
(3) 2つの行列A, Bで, ABは計算できるがBAは計算できない行列を見つけなさい. またそのときのABを計算しなさい.
(4) 2つの行列A, Bで, AB, BAが共に計算できるがAB 6=BAとなる行列を見つけ なさい. またそのときのAB, BAを計算しなさい.
問題 9 行列A=
Ã1 −1
0 5
! ,B =
Ã1 −1 1 0
! , E =
Ã1 0 0 1
!
に対し, 次の値を計算しなさい. (1) A(3B−5E) +EB
(2) BAB−E3
(3) (2A−2E)(A−5E)
(4) B7
学籍番号 氏名