電流が磁場から受ける力
(改訂2.5)磁場内に流れる電流は力を受ける 方向はフレミングの左手の法則を使う 大きさは F = IBl
磁場は磁束密度として計算 磁場 H の磁束密度は B = µ
0H
電流が受ける力
電流が流れている導線に磁石を近づけると導線は力を受けて,あ る方向に動く。電流は磁場から力を受けるのである。荷電粒子は運 動していると磁場から力を受けるが,これをローレンツ力という。
電動式の機械すべてにこのローレンツ力が使われているので,ロー レンツ力のおかげで人類の文明が支えられているといっても過言で はなく,事実である。
●フレミングの左手の法則 力 の 向 き は ,電 流 の 向 き を 左 手 の 中
指,磁場を人差し指としたときの親指の向いている方向となる。電 流をI,導線の長さをl,磁束密度の大きさをBとすると,電流の 受ける力の大きさF はF =IBlで表現される。
この「 ローレンツ力」について考えてみる。大き さはF =qvB となる。ここで荷電粒子が等速であるとするとき,lの距離を時間 tかけて 進むと すれば,v = l
tなの でF = qlB
t 。ま た直流の 場合,
It=qという電気量と電流の関係が成り立つので,
F = q
t lB=IBl F =IBl
が導かれる。導線が力を受けるが,本来は導線中を移動する電子が 受けるローレンツ力である。ただし,電子が進む方向と逆向きを電 流の向きとするので,左手の法則を使うときは注意したい。
電流の方向と磁場の方向が直交しないとき
電流の向きと磁場の向きが90◦でないときはモーメントのときのよ うに成分分解してやればよい。電流と磁場とのなす角をθとすれば電 流に対して垂直になっていない磁場B は,Bsinθのように垂直な成 分を出して計算する。まさにモーメントと同じ分解の方法である。向 きは電流の向きに中指を向け,分解した磁場の向きに人差し指を向け ればよい。大きさは次のようになる。
F =IBlsinθ
ただし 注意してもらいた いが,ロー レンツ力ときたら 必ずsinθを
使うということをインプットしている人が多いように思える。速度の磁場に対する垂直な成 分と覚えておきたい。角度のとり方によってはcosになることもある。公式だけを丸暗記す るのは危険といえる。なお,なす角が0◦,つまりIとBが同じ向きのとき,ローレンツ力 自体が発生しないので何も起こらない。
電流が作る磁場
電流の進行方向に対して時計回り 直線電流は H = I
2πr 環状電流は H = I
2r
磁束密度 B = µ
0H (µ
0:透磁率 )
電流のまわりの磁場
電流があるとき,そのまわりには磁場が発生している。磁場の向 きはその電流の進行方向を向いて時計回りである。
●直線電流 磁場はベクトルなので,大きさと向きをもつ。直線電
流のとき,向きは電流の進行方向に対して時計回りであり,右ねじ の法則ですぐに分かる。大きさは,電流から遠ければ遠いほど小さ
くなる。I[A]の直線電流の場合,導線から距離rの点での磁場の大きさは次のようになる。
H= I
2πr[A/m]
●円形電流 環状 の導 線に 電 流を 流し た場 合 ,そ の電 流を
時 計回 り に見 る 向き に 磁場 が 発生 す る。ここ で も右 ね じの 法 則 は使 え る 。電 流 に沿って 人 差 し指 ~ 小 指 を曲 げ た とき に親指の向く方向に磁場が発生する。大きさは
H = I 2r[A/m]
右ねじの法則は万能であり,親指を電流の向きでも磁場の向 き で も使 え る。上 の直 線 電流 の 場 合は 親 指が 電 流だ が ,円 形電流の場合は親指が磁場の向きになる。
●ソレノイド コイルを何回も巻いたものをソレノイドコイルとよぶ。電流を流すとソレノ
イドを貫くように磁場が発生する。向きは円形電流と同じで右ねじの法則が使える。磁場の 大きさはコイルの巻き数をn[回/m]として
H=nI[A/m]
である。ここで注意してもらいたいのは巻き数nはコイルを巻いた回数ではなく,単位長さ 辺りの巻き数ということである。いずれの場合も磁場の単位は[A/m]となる。
電流どうしの相互作用
平行に2本の導線を距離rだけ離して両方にIの電流を同じ方 向に流す。BがAの所に作る磁場は
H= I2
2πr B= µ0I2 2πr
であり,Aの導線で長さ∆lの部分が受ける力は,透磁率をµ0と して公式F =IBlから,
F =I1B∆l= µ0I1I2 2πr ∆l
となる 。力の向 きはフレミング の左手の法則 より導線Bに引 き寄せられる 向きとなる。右 ねじとフレミング左手の両方を駆使できるようになれば怖いことはない。
ローレンツ力
(改訂2.0)磁場の中で動く荷電粒子は ローレンツ力という力を受ける 電荷 q ,速さ v ,磁束密度 B で F = qvB
フレミングの左手を使うと楽 動くことで受けるローレンツ力
電 荷Q[C]の荷 電粒 子は強 さE[N/C]の電 場からQE[N]の 静電 気 力を受 ける が,磁場 から は基 本的 に力 を受け ない 。し かし 荷電 粒 子が動 いて いる とき ,磁 場か ら力 を受 ける。これ をローレンツ 力とよ ぶ 。ロ ー レン ツ 力は モ ータ ー の原 理 に 応用 さ れて お り,科
学技術のすべてに関わっている重要な概念である。電荷q,電荷の 速さv,磁束密度Bで電荷の進行方向と磁場の向きが垂直のとき,
ローレンツ力F はF =qvBで表される。
向きは あの 有名 なフレミングの左手の法則でよ い。正 電荷 の進 行方向を電流の向き,すなわち中指の向きにすればよい。
ローレンツ力と円運動
ローレンツ力により電荷が受ける力は常に進行方向と垂直なので,一様な磁場ならば一定 であれば円運動をするとわかる。このときローレンツ力が向心力となる。
例 y >0には磁束密度がBの一様な磁場がこの紙面の表から裏 向きに,y <0には−y向きの電場をかけ,y =−dの場所に質量 mで電荷−eの粒子を置く。粒子はまずy <0部分で電場によって 加速され,y >0部分でローレンツ力を受けてカーブし円運動を始 める 。そ して再 びx軸 まで戻ってく る。戻ってくる 点まで の距離 (図の2r) を求めてみたい。
電荷がx軸に達したときの速さをvとおく。電場からは力eEか ら距 離dの区 間で仕 事を受 けるの で,電 荷が得 た運動 エネ ルギー はeEdとなる。保存則より
eEd= 12mv2 v=
2eEd
m
この速さでy >0に入り,ローレンツ力を受ける。強さはF =evB。 向 きは フ レ ミン グ の左 手 の法 則 より,進 行方 向 右向 き とな る 。だ から 時計回りの 円運動をし て,半周してx軸に到達する。このと き,運動方程式を立てると次のようになる
mvr2 =evB ⇔ r= mv
eB r= 1B
2mEd
e よって,2回目にx軸を横切る点までの距離は2rで,2 B
2mEd
e
となる。ちなみにこの後,一番下の図のようにy >0で半周してy <0に進入してバックし てy >0で半周して…という動きを繰り返す。
電磁誘導のしくみ 物理Ⅰ版
電磁誘導の目的は「 発電」
コイルに磁石を近づけたり
遠ざけたりすることで発電する 右ねじの法則が大活躍
N 極の向きが磁場のプラス向き 発 電
こ の 分野を あ い まい に し て いる と 思 わぬ場 面 で 大 きな ミスを犯す。
何よりも念頭に置いてほしいのが,電磁誘導は発電が目的ということ である。このことを知らなくても問題は解けるが限界がある。電磁誘 導イコール発電ということを知らずにやっている受験生が多い。
電磁誘導の仕組みは次の通りである。コイル,というか導線を環状 にしたものに磁石を近づけたり遠ざけたりすると,コイルに電流が流 れる。この電流を誘導電流といい,電圧を誘導起電力という。このよ うに発電する「行為」や「現象」のことを電磁誘導という。
電圧の大きさは物理IIで扱うとするが,電流の向きは右図のように 考えられる。コイル(環状導線)断面に磁石のN極(N極の作る磁場の 向きが正)を近づけると導線は近づいてきたN極を打ち消す方向に磁
場を作る。この磁場を作るためにコイルに電流が流れる。これをレンツの法則という。誘導 起電力は,磁場の変化が大きければ大きいほど強くなる。つまり,磁石のスピードを速くし たり,導線を何本にも重ねたりすると大きな起電力が得られる。発電機にグルグル巻きのコ イルが使われているのはこのためである。
色 々 な 例
例1の よう に ,「 コ 」の字型を した 導線 で 作った レールの上にレール方向とは垂直になるように金属 の棒を置く。そして下から上向きに磁場を与えて棒 を引いていくことを考える。棒を引くとレール導線 と棒とで囲まれる長方形部分の面積が広くなるので 上向きの磁場が増える。これを阻止するには下向き の磁場を作る電流を導線が流せばよい。右手親指を 下に向ければ時計回りになる。
例2では 正方形 の導線 の面に垂 直に磁 石のN極 を置き,その状態で磁石を遠ざける。このとき上向 きの磁場が減るのでそれを補おうとしてコイルが上
向きの磁場を作る。右手親指を上に向ければ反時計回りになる。
このように,間違えないでもらいたいのは,磁場の変化を妨げる向きに,コイルが磁場を 作る。そのために電流を流すのである。水力発電は山の上から水を勢いよく落としてタービ ンを回して発電する。つまりは位置エネルギーを電気エネルギーに,火力発電は化学エネル ギーを電気エネルギーに,原子力発電は核エネルギーを電気エネルギーに変換する。
電 磁 誘 導
(改訂2.0)電磁誘導とは発電すること コイルはそれまでの磁場を 保とうとしようと電流を流す V = − ∆ Φ
∆ t 発電できる電圧
コイルの反撃
コイルというものはグルグル巻きになっていなくても,環状の導 線であれば「 コイル」という名前が付く。コイルに磁石を近づける と電流が流れる。また,コイルに差し込んだ状態の磁石を素早く抜 いても電流が流れる。コイルを貫く磁場を変化させると電流が流れ る。この現象を電磁誘導とよぶ。流れる電流を誘導電流という。
上の「 要点」の図ではN極を入れている。突然下向きの磁場を かけた場合,上 向きの磁 場をかけるような電流をコイルが流す。コイルが「反撃」すると思えばよいだろう。向きは お馴染み,右ねじの法則で調べてみる。
発電機としてのコイル
磁石を近づけるのは運動エネルギーなどによる。コイルに磁 石を近づけたり遠ざけたりすると電磁誘導が起こる。これは運 動エネルギーが電気エネルギーに変換されたといえる。まさに コイルは発電機なのである。電磁誘導による起電力(電圧)の ことを誘導起電力という。コイルを貫く磁場が変化するときに こ の誘導 が 発 生 す る 。ま ず磁束と い う も の を 考 え る。単 位 は [Wb](ウェーバー)で,磁荷と同じである。
面積あ たり の磁 束が あの有 名な 磁束 密度 であ り,面積S と 磁束密度Bをかけると磁束Φになる。誘導起電力は
V =−∆Φ
∆t
=−∆(BS)
∆t
例) 磁束密度B[T]の磁場の中で,l[m]だけ離れて平行に敷 かれた導線レールの上を鉄の棒が速さvで進む場合,∆t秒で v∆t[m]進むので,面積の増加量は∆S =lv∆t[m2]とすること ができる。ここで誘導起電力の大きさV[V]は,
V = ∆Φ
∆t =B∆S
∆t =Blv∆t
∆t =vBl
公式についているマイナスにはこだわらないようにしたい。コイルの反撃で逆に流れるとい う意味で便宜上ついているだけである。向きは右ねじの法則で考えるだけでよい。
リニアモーター
(改訂2.0)電流が磁場から受けるローレンツ力で運動 F = IBl
電磁誘導で発生する抵抗力 F
R= − V
RR Bl = − vBl
R Bl = − vB
2l
2R
電動式の棒
リニアモーターといえば鉄道のリニアモーターカーを連 想する人も多いだろうが,本来はリニアlinear(直線の)モー ターmotor(電動機)であり,右図のようなしくみのものを さす。電流が流れる長いレールの上にレールと直交するよ うに導体棒を置く。そしてレール面に垂直に磁束密度Bの
磁 場を か け る。そし てスイッチを 入 れて 導 体棒に 電 流を 流 すと 電 流 が磁 場 から 受 ける 力 に よって棒は加速し始める。向きはフレミング左手などを用いればよい。また,図でいう棒の 左側は環状になっており,電磁誘導も起こるため,少し複雑である。
ローレンツ力と逆起電力
まず,図のように間隔Lで平行に敷かれたレールを考える。
磁場は一様で磁束密度はBとし,紙面の表から裏向きとする。
電源は直流で起電力E,抵抗はRとする。そこになめらかに動 く ことの でき る質 量mの導体棒を のせ る。電 流を 流す と棒は ローレンツ力により動く。その動く速さをvとする。また,前 述の通り環状回路なので電磁誘導で逆方向の起電力VRも発生 する 。誘導 起電力はVR =vBL で 表せるの で,電 流をI とす るとキルヒホッフ第2法則から
E−IR−VR = 0 I = E−VR R
棒の運動方程式は棒の加速度の大きさをaとして ma= E−vBL
R BL ma= EBL
R −B2L2 R v これは,速度に比例する抵抗力を受ける運動ということがわか る 。速 度に比 例す る 運動 で はお決まり であ る が,終速度vf を 求めることができる。a= 0として
B2L2
R vf = V BL
R vf = V
●勾配上での運動 同じ実験を勾配上でやる場合を考える。傾斜角をBL θ,磁束密度は鉛直下
向きにB,棒の質量をm,レール間隔L,重力加速度をgとする。上昇速度をvとすれば誘 導起電力は速度と垂直な成分であるBcosθを使い,VR =vBLcosθとなる。同じようにV の電圧をかけたときの電流はI = V −vBLcosθ
R 。導体棒にかかる力は一番下の図のように 重力mgとローレンツ力IBLなので,成分分解すれば運動方程式は次のようになる。
ma= V −vBLcosθ
R BLcosθ−mgsinθ
自 己 誘 導
コイルに電流を流そうとすると 逆向きの電圧で反撃してくる その逆向きの起電力は
V
L= L ∆I
∆t
コイルの自己誘導
コイルに電流を流そうとするとコイルを貫く磁場が突然変わるので,
レンツの法則より,誘導起電力が生じ,誘導電流が流れる。これを自己 誘導といい,その起電力を逆起電力という。しかし,それでも直流電圧
をかけ続けるとコイルもおとなしくなって反撃してこなくなる。要はコ イ ル は流 れ る 電 流 やか け ら れ る電圧が変 化す る こ と が気 に食わ ない の であり,一定の電流なら流し続けても怒らない。時間∆tの間に電流が
∆I 変化したとすると,コイルの反撃による逆起電力は∆I/∆tに比例 する。コイルの定数をLとすると,逆起電力は
L =L∆I
∆t
となる。Lはインダクタンスとよばれ,コイルの巻き数や材質などで決 まる。一般的なMKSA単位系では[H](ヘンリー)の単位を使う。
コイルを含む回路
図Aのような直流回路を考える。スイッチを入れ るとそ の瞬間はコ イルの自己誘導により阻害され,
図Bのような回路になる。50÷25 = 2.0Aの 電流 が流れる。しかし十分な時間が経過するとコイルは
「反撃」してこなくなるので,図Cのように導線と みな せるよう になる 。50÷20 = 2.5A の電流が 流 れる。
そしてその状態でスイッチを切ると次はコイルが 電流を止めないような自己誘導が起こる。その結果 それまで流れていた電流を再現すべく,コイルの下 部分が正極の電源になる。結果,2.5Aを流すため,
隣の抵抗には2.5×5 = 12.5Vの電圧がかかる。よっ
て ,図 の♪ マークの場 所か ら★マークの 場所 の電圧を測ると12.5Vと なり,コイルが一瞬 だけ電池としてはたらくことが分かる。電位は★マークの方が高いことになる。もし★マー
クの近くに接地(アース)があった場合,スイッチを切った瞬間の♪マークの部分 の電位は
−12.5Vとなる。このように,コイルは「変化を嫌う」素子と思ってもらってよい。コンデ ンサーも電荷をためた後,スイッチを切ると一時的に電源としてはたらく。この点はコイル と共通している。
相互誘導と変圧
コイルとコイルを近づけて 片方のコイルに電流を流すと 1 次コイルが磁場を作る
2 次コイルを貫く磁場に変化が起こる 2 次コイルに誘導電流が流れる
相 互 誘 導
発電 所や変電所 から送られ てく る 電気 の電圧は数 万Vに もおよぶ。これをそのまま家庭のコンセントに送ったらドエ ラいことになる。だから変圧器とよばれるモノを使って電圧 を下げている。
変圧器を分かりやすくすると,イラスト①のように2本の コイルを近づけて固定しているツールである。2本のコイル を1次コイル,2次コイルのようによぶ。1次コイルに電流 を流すとその電流によって2次コイルが磁石のようになる。
その磁場によって2次コイルに誘導電流が流れる。これが相 互誘導である。
相互誘導では電圧が変化する。その電圧はコイルの巻き数 に比例する。1次コイルが100回巻き,2次コイルが50回巻 きなら電圧は1/2になる。1次コイルの巻き数,電圧をN1, V1,2次コイルの巻き数,電圧をN2,V2とすると,
N1 :N2 =V1:V2· · · ·(∗)
エネルギーと電力
エネルギー保存の法則は万能であり,ここでも成り立つ。ただ気付きにくいかもしれない。
電力と時間の積が電気エネルギーということを思い出してもらいたい。つまり1次コイルと 2次コイルの間で電力が保存されるということである。1次コイル,2次コイルに流れる電 流をI1,I2とすれば,
V1I1 =V2I2 ⇔ V1 V2 = I2
I1
こ れと前 述の(∗)の式 を 用い ると ,I1 : I2 = N2 :N1とな る 。 つまり,巻き数と電流は反比例することが分かる。
例題 右図 の よう に 巻き 数100回 の1次コ イル と 巻き 数50回 の2次コイルを並べる。2次コイ ルにはR[Ω]の抵抗をつなぎ,
1次コイルにI[A]の電流を流した時,1次コイルの電圧を求めよ。
■解答■ 1次コイルから2次コイルにかけて巻き数が半分になるので,電流は2倍流れる ということになる。2次コイルにつながれたR[Ω]の抵抗に流れる電流は2I[A]となる。よっ て2次コイルの電圧は普通にオームの法則を用いて2RI[V]になる。そして1次コイルの電 圧は巻き数に比例することから4RI[V]になる。
電力が保存されることが分かれば,変圧器や相互誘導の問題はある程度カバーできる。
交 流 回 路 (I) コイル編 (改訂2.7)
コイルのインダクタンスを L とすると コイルのリアクタンスは ωL
コイルにおける電圧降下は V
L= LdI dt
抵抗の場合
抵抗は非常に素直であり交流電圧をかけても,電流は完全に同位相となる。R[Ω]の抵抗 にV(t) = V0sinωtの電圧をか け る と,流れ る 電 流I(t)はオームの法 則 よ り次 の よう に な る。なお,ωを角周波数という。
I(t) = V(t)
R I(t) = V0 R sinωt
電流の位相が遅れるコイル
前の分野で学んだようにコイルに電圧を かけると自己誘導が起こり,電流の流れが 阻止されるような逆起電力が発生する。
V =L∆I
∆t
上の式はコイルにIの電流を流 した時に発生する逆起電力V の式で,Lはコイルの定数 自己インダクタンスを 表す。結局,コイルに おける電圧降下(かかる電圧)とコイル に流れ る 電 流I の 関 係 を 表 し た も の で あ る 。こ の 式 で∆を dに変え れ ば微分 で あ る 。コ イ ル に V(t) =V0sinωtの電圧をかけたとき,コイルに流れる電流を求めてみたい。一般的な参考 書には書かれていない微分方程式ではあるが,それほど難しくないので解き方を解説する。
まず,dにした式で左辺のV にV0sinωtを代入する。
V0sinωt=LdIdt ⇒ V0sinωtdt=LdI
これは,左辺をtで積分し,右辺をI(t)で積分せよという意味であるが,数IIIの知識で十 分に対応できる。左辺は三角関数の積分,右辺は定数の積分をする。
−V0
ω cosωt=LI I =−V0 ωLcosωt
三角比の公式sin(θ−90◦) =−cosθを使うと,次のように位相が遅れた電流が求まる。
I(t) = V0 ωLsin
ωt−π 2
数IIIを選択している人もしていない人も結果は必ず覚えてお い て もら い たい 。この よ う に交流 の 電圧を コイ ル に かけ た 場 合,
電流の位相はπ/2,つまり1/4周期分だけ遅れる。コイルがレン ツの法則より,コイルを貫く磁場の変化に対して「反撃」してい
る か らで あ る 。ま た ,sinやcosの 係 数 を見 る と ,電 流 は電圧 ÷ ωLとなって いる 。オームの 法則を 考え るとこ のωLが抵抗のよ
うな役割を果たしていることが分かる。ωLをリアクタンスとよび,単位は[Ω]である。
コイルに交流電源をかけたときの電流の式は,まず係数を電圧÷ωLとし,三角関数の中身 はπ/2引くと覚えればよい。
交 流 回 路 (II) コンデンサー編 (改訂7.0)
コンデンサーに電圧をかけると 電流がフライングする
電 圧 V
0sin ωt な ら 電 流 は ωCV
0sin
ωt + π 2
リアクタンスは 1/ωC
電流が早くなるコンデンサー
交流回路(I)ではコイルを扱った。コイルに電圧をかけると電流が遅れる。コンデンサー の場合,結論を先に述べるとコイルの反対である。何もたまっていない時,極板間の電位差,
つまり電圧が0なので,導線のように扱えることを思い出してもらいたい。
電気容量C[F]のコンデンサーに交流電圧V(t) = V0sinωtをかけ る。①スイッチを入れ た直後,わずかな電圧であっても,電荷がたまっていない状態で導線扱いなら抵抗がほぼ0 なのでオームの法則的に考えると大きな電流が流れる。だから流れる電流は最大である。
そして②時間が経つにつれ,電圧がV0sinωtで強くなるとコ ンデンサーに電荷がたまってくるため,次第に電流が弱くなって くる 。その後 ③電圧が最大のピークを迎え た時,コンデンサー には電荷が最大にたまっているので一瞬電流が止まる。だから,
電 流 の グラフ は初め はピークか ら 始 ま り,電圧がピークに なっ た時 に0とな る。そし て④電流 はその後逆流,つ まりコンデン サー がたまった 電荷を 電源に「返却する」ので ある。逆流な の で電流 のグラフはマイナス値となる。その後はマイナスのピー クを迎えてまた逆流(正の向き)するのである。
以上から,sinの電圧をかけると電流はcosになることが分か る。数Iのsin(90◦+θ) = cosθを使えば,電流はsin
ωt+ π 2
の関数となるので,電流は電圧よりもπ/2だけフライングする 形になる。コンデンサーのリアクタンスは
ωC1 となることは暗
記 で ある 。容量Cのコ ンデンサー に交流 電圧V(t) = V0sinωt をかけると,流れる電流はI(t) =ωCV0sin
ωt+π 2
となる。
●補足 数学的に 見ると次のよう になる。コンデンサーの 電荷 Qは,電流をI,時間をtとしたらQ=Itである。これをtで 微分し たら
dQdt =Iである。次にQ =CV か ら,dQ
dt =C dVdt なので,V =V0sinωtを代入すると
I =C dVdt ⇔ I(t) =ωCV0cosωt
このようにできるが,この考え方は大学に入ってから習うことである。
交 流 回 路 (III) インピーダンス編
直列につないだときのインピーダンス Z =
R
2+
ωL − 1 ωC
2[Ω]
リアクタンスは抵抗と同じ役割
コイル コンデンサー 電流 遅れる 進む 電圧 進む 遅れる 直列のとき
コイル コンデンサー 電圧は
π 2 進む
π 2 遅れる
コイルとコンデンサーの直列
コイルとコンデンサーを直列に接続すると,各素子を流 れる電流は等しくなる。ところがコイルは電流を遅らせ,コ ンデンサーは進めるはたらきがある。このため,コイルは 電圧が進み,コンデンサーは電圧が遅れることになる。
コイルのリアクタンス:ωL コンデンサーのリアクタンス 1
ωC
この2つを直列に接続すると,コイルとコンデンサーに かかる電圧の位相はちょうどπだけずれる。これはお互い に逆向きの電圧がかかっているということになる。状況に よって違うが,とりあえずコイルを基準にして考えるとコ
ンデンサーのリアクタンスは負の値になるから,合成リアクタンスはωL− 1 ωC
インピーダンス
回路全体の抵抗に相 当するも のをインピーダンスとよぶ 。交流 のときは 角振動数ωの値 によってそのインピーダンスが変化してくる。抵抗,コイル,コンデンサーを直列につない で角振動数ωの交流電圧を加えた場合のインピーダンスを求めてみる。
電流をとりあえずi0とおく。電圧は抵抗(リアクタンス)×電流である。電流の位相(要は sinの中身)をωtとする。コイルの位相に関しては電圧よりも電流が遅れるので,逆を言う と電圧の位相は早くなるから,π/2を足した位相にする。また,リアクタンスはωLなので,
係数はωLi0。コンデンサーは逆に電圧の位相は遅れるので位相はπ/2を引いておき,リア クタンスが1/ωCなので,係数は 1
ωC i0とする。
よってキルヒホッフの第2法則を使うと電圧V(t)は次のよ うにおける。
V(t) =Ri0sinωt+ωLi0sin ωt+π
2
+ i0 ωCsin
ωt−π 2
=Ri0sinωt+ωLi0cosωt− i0
ωC cosωt
=Ri0sinωt+i0
ωL− 1 ωC
cosωt=i0
R2+
ωL− 1 ωC
2
sin(ωt+α)
網掛けした部分がインピーダンスZ[Ω]である。公式としてしっかり覚えてほしい。ベクト ル図を使って求める方法もあるが以上のような三角関数の合成も分かりやすいと思う。
振 動 回 路
(改訂3.5)コンデンサーにたまった電荷が コイルの自己誘導で
電荷 ( 電子 ) がコイル・コンデンサー間を往復 f = 1
2π √
LC T = 2π √ LC
電荷のやりとり
コイルのインダクタンスをL,コンデンサーの電気容量をC とする。まず直流電圧V でコンデンサーを充電した後コイル と 直列に つ なぐ と コ ンデンサー は放電 す る 。する と コ イ ル は 自己誘導により反撃してくるため,初めは電流が抑制される。
しかしコイルの逆起電力が弱くなると電流が1周する。そして 再びコンデンサーが放電する。これの繰り返しで周期的な運動 をす るの で,交流の時 にやった ように 角周波数をωとおい て みる。コンデンサーとコイルをつないだので,流れる電流をI とすれば,リアクタンスと電流をかけて電圧になるので,
ωC I1 =ωLI ω= 1√ LC
電流と周波数
この振動回路には交流電流が流れているといえる。さきほど のωを使えば,簡単に周波数を求めることができる。
ω= 2π
T ⇒ ω = 2πf ⇒ f = ω
2π ⇒ f = 1
2π√ LC また,自己インダクタンスLのコイ ルに電流Iが流れ るとき のコイルがもつエネルギーは,
12LI2で表される。
電気容量Cのコンデンサーに電荷Qをためて電気振動を起 こす。このときコンデンサーの電荷(電子)がすべて コイルを 流れるとき,この回路を流れる電流は最大となる。エネルギー 保存則を用いればよい。各辺第1項はコンデンサー,第2項は コイルのエネルギーである。
Q2
2C + 0 = 0 + 12LI2 I = √Q
LC (=Qω) 振動回路の問題のパターンは決まっている。最大電流 を求めよとか,周期を求めよとか,またグラフを描け (もしくは選べ)とかである。グラフは必ずサイン波に なるが,どこから始まるかが最大のテーマである。時 刻0の状態を考えることが大切である。コンデンサー
とコイルを接続した瞬間を時刻0とした場合,Bから 測るAの電位V のグラフと時計回りの電流I のグラ フは図のようになる。