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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会, 2020 年 2 月 7 日

北海道絶滅危惧植物の

極東ロシアとの比較による固有性の検証と, 遺伝的保全単位の解明

環境資源学専攻 生物生態・体系学講座 植物生態・体系学 土屋 さくら

1.背景と目的

北海道の絶滅危惧植物には,道固有種とされる一方で極東ロシアの近縁種と同種とする見解もあ るなど分類に混乱がある種が含まれる。絶滅危惧植物の保全優先度を評価するためには,その一つ の基準となる固有性の検証が不可欠である。本研究では,道内で特に分布が局限する 3 種を対象に 固有性を検証する。また,その地理的遺伝構造を調べ,遺伝的保全単位を明らかにする。

2.方法

対象種とその近縁種は,礼文島固有種レブンソウ(マメ科)とサハリン州モネロン島固有種トド ジマゲンゲ,礼文島固有種フタナミソウ(キク科)と東北アジア広域種ホソバフタナミソウ,夕張 山系崕山固有種キリギシソウ(キンポウゲ科)とサハリン島固有種カラフトミヤマイチゲである。

核ゲノムの一塩基置換(SNP)により系統解析を行い,単系統性を基準に固有性を評価した。得られ た単系統群を対象に,SNP に基づき地理的遺伝構造を調べた。

3.結果と考察

系統解析から,レブンソウとトドジマゲンゲはそれぞれ単系統になり,レブンソウの固有性が支 持されたことで,保全優先度が高いと評価された。遺伝構造解析では,レブンソウに 3 つの遺伝的 クラスターが認められたが,これら 3 クラスターは全分集団に含まれ,地理的傾向は見られなかっ た。生息域内保全では分集団を区別せず島全体で 1 つの保全単位とすべきである。

フタナミソウは単系統になったが,極東ロシアのホソバフタナミソウのクレードに含まれた。フ タナミソウは,形態的にも多様なホソバフタナミソウの 1 系統と考えられ,固有種として区別する のは妥当ではく,その保全優先度は高いとは言えなかった。一方で,礼文島という小島の生態系の 構成要素という点で保全価値が認められる。フタナミソウは分布の最北の 1 分集団とその他の 4 分 集団で 2 クラスターに分かれ,これらの交雑によると思われる個体も見られた。生息域内保全では,

異なるクラスターである最北の分集団とその他の分集団を保全単位として区別すべきである。

キリギシソウとカラフトミヤマイチゲは各々単系統になり,キリギシソウの固有性が支持された ことで,保全優先度が高いと言えた。また,キリギシソウは分布両端の分集団が異なる 2 クラスタ ーに分かれ,中間地点には両クラスターの交雑個体が認められた。生息域内保全では両端の分集団 を保全単位として区別すべきである。

これら 3 種の生息域外保全株を保有する植物園は北大を含む数園に限られる上,北大植物園の 保有株は一部のクラスターの個体のみである。残るクラスターの個体を保全株として植物園に導入 することが急務である。

参照

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