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高校生の自己肯定感と性受容に関する研究 ―

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Ⅰ. はじめに

 思春期・青年期における自己肯定感の重要性はこ れまで多くの研究によって示されてきている。松井・

佐藤17や松井16は、中学生の学校適応進路(キャ リア)成熟、自己肯定感との関係を検討し、中学生 の自己肯定感を高めることは、学校生活への適応促 進につながるということを指摘している。伊藤4は、

自尊感情と逸脱行為との関連を検討し、中学女子の 不良・犯罪行為「自己肯定感情」との間には負の相 関があることを示しているまた、久芳・竹村15およ び久芳・齊藤・小林101112は、それぞれ小・中・

高校生を対象として、自己肯定感とのかかわりの 関連について検討し、人とのかかわりが良好な方が 自己肯定感が高いことを示している

 自己肯定感の類似概念として、自己受容性、自尊 感情があると考えられる。自己受容性は、従来、個人 の自己実現に必要な一要因として位置づけられ(伊 3)、「ありのままの自己を客観的に認知、全体的 に肯定することであるとされているさらに、認知され た自己の領域として、身体的側面、精神的側面、社 会的側面、役割的側面、全体的側面の5領域を設定 する(沢崎18ほか、自己の多次元性が指摘されてい また、自尊感情は「自己概念に含まれている情報 を評価することであって、今の自分に関するすべての

事柄について自分が抱えている感情から出てくるもの」

(アリス W. ポープら1でありこの自尊感情は、本 人についての客観的情報とその情報に基づいて本人 が行う主観的評価の組み合わせによって構成されて おり、「知覚された自己」「理想の自己」2つの面 から検討することができるとされている。加えて、子ども の場合は、社会、学業、家庭、身体イメージ、全般 的自尊感情という5領域から捉えるが有益だとされる  一方、自己肯定感は「自分自身のあり方を肯定す 気持ちであり、自分のことを好きである気持ち」(高 22と捉えられており、一定以上の自己評価が求 められる点で自尊感情が「西欧的な自己肯定感」と指 摘されるのに対、「日本的な自己肯定感」とされてい また、多次元性を想定する自己受容性や自尊感 とは異なり、自己のあり方を包括的に肯定する感情 と捉えられるため、本研究では、自己肯定感という

念を用いることとする

 椛島8は、社会学の立場から、現代社会の変容 に伴い女性の生き方が変化し、過剰なほど「自己実 現」へ追いつめられておりそのことが自己肯定感・

セルフエスティームに影響を及ぼしていると述べてい 。伊藤5は、女子における性受容は男子比較

思春期以降急激に低下することを明らかにしている また、伊藤7は、女子青年を対象に、自尊感情およ

び身体満足度と性同一性との関連を検討、自尊感

高校生 の 自己肯定感 と 性受容 に 関 する 研究

―社会的性意識と父母像との関連―

A Study of Sense of Self-Affirmation and Acceptance of Sex and Gender among High School Students:

Relationship between Gender Consciousness and Image of Father/Mother キーワード:自己肯定感、性受容、社会的性意識、父母像、高校生

久芳 美恵子  齊藤 真沙美*  小林 正幸**

     *世田谷区教育相談室     **東京学芸大学教職大学院

(2)

自己の性を受容することには関連があることを見 出している。鈴木・伊藤1920は、小学生から大学 生までの女子を対象に女性性受容摂食障害傾向に ついて検討、中学生以上において、女性性受容の 低さが自尊感情に作用して摂食障害傾向をもたらす という過程が考えられるとしている。尚、本研究にお いては「性受容」を鈴木・伊藤19を参考に「女性/

男性であることの性的、身体的および社会的レベル での受容」捉えることとする

 先述の伊藤7の研究においては、性同一性は「父 親への信頼」「母への同一視」「ストレオタイプ的な 性役割への同調」「性的成熟への戸惑い」「性の非 受容」から構成されるとしている。これは本研究で扱 「性受容」を包括する概念であるといえる。「性の非 受容」が本研究の「性受容」を逆の立場から捉えた同 一概念であるとするならば、性役割や母親/父親像 を関連する要因として捉えていく必要があると考えられ また、自尊感情と関連のある要因として、性受容 のほかに、母親への同一視や両親の良好な関係の 認知重要であるとされている。青木2は、女子中学 生を対象に面接調査を行い、性の非受容群における 父親像が、「父親」という面からだけでなく、同一化対 としての母親の夫という側面からもきく影響を及ぼ しており、母親像は「母親」としてのあり方だけでなく

としてのあり重要な要素になるとしている  これまでの研究においては、青年期女子を対象とし たものが多、男子調査対象とし、性別による差異 を検討したり、発達的観点を視野に入れて調査を行っ ている研究はあまり見受けられない。久芳・齊藤・小 14は、小学生男女を対象に、自己肯定感性受 容、社会的性意識および母親/父親像の関連を検 討した結果、男女ともに、性を受容できていることが 自己肯定感の高さに影響を及ぼしていることを明らか にしているまた、女子においては、社会的性意識 および母親像へのポジティブな評価が間接的に自己 肯定感を高めるという結果となった。男子においても 全体としては社会的性意識が強いことが自己肯定感 を高めているが、「ステレオタイプ的性意識」「身体 的劣等感」を介して自己肯定感を低める方向にも作用 していることが確認された。

 これらを踏まえ、本研究では、高校生男女を対象 、自己肯定感、性受容、社会的性意識(「性役割」

類似の概念であるが、「役割」に限定せず、より 義の「性に対する意識」を扱うため、本研究において 「性意識」という言葉を用いる)、母親/父親像を 調査、以下の2点を検討することを目的とする

①性受容社会的性意識、母親/父親像の学年 差を検討する

②自己肯定感と性受容、および社会的性意識、

母親/父親像の関連について検討する

Ⅱ. 方法 1. 対象

 東京都の公立高校、国立高校3校に通う高校生

(高1〜高3)、計1227名(高1377名、高2560名、

3290名)。学年、性別の構成は、Table1に示 した通りである

2. 手続き

 以下の4種類から構成される質問紙調査を実施し た。調査用紙は無記名で、学年性別の記入を求め た。調査は、20084月〜20085月に担任教師 の監督のもと、各学級で一斉に行われた。

①自己肯定感尺度

 自分自身をどの程度肯定的に捉えているかを測定 するために、自己に関する評価を求める尺度で、8 目、4件法、1因子から成る(久芳101112など)。

②性受容尺度

 鈴木・伊藤19、伊藤7の研究を参考に久芳13 が作成した被調査者が自分の性を性的、身体的およ び社会的レベルで受容している程度について回答 求める尺度。女子用12項目、男子用10項目、4件法。

Table 1. 対象生徒の学年別・男女別構成

(3)

③社会的性意識尺度

 鈴木・伊藤19、伊藤7の研究を参考に久芳11 が作成した被調査者の捉えている男女に振り分けら れた性への意識について回答を求める尺度。本研 究においては、自己の性受容により大きく関連してい ると考えられる同性の性意識について回答を求めた。

女子用8項目、男子用10項目、4件法。

④母親像尺度、父親像尺度

 青木2、柏木・高橋9および伊藤7を参考に久 芳ら13が作成した被調査者の親に対する認識につ いて回答を求める尺度。本研究においては、自己の 性受容により大きく関連していると考えられる同性の親

に対する認識について回答を求めた。女子用、男子 ともに8項目、4件法。

Ⅲ. 結果と考察 1. 尺度の検討

 実施した質問紙調査を構成する4種類の尺度につ いて因子分析を行った。その際、分析の手法につい ては久芳13の研究における各尺度の分析を参考 にして行った。

①自己肯定感尺度(Table2-1Table2-2  女子、男子ともに8項目からなる質問紙に対する被

Table 2-1. 高校生女子「自己肯定感尺度」の因子分析結果

Table 2-2. 高校生男子「自己肯定感尺度」の因子分析結果

(4)

調査者の反応について、主成分分析を行った結果、

8項目、1因子が抽出された。

②性受容尺度(Table3-1Table3-2

 女子の12項目からなる質問紙に対する被調査者の

反応について、プロマックス回転による主成分分析 を行った。負荷量の低い1項目を削除し、再度分析 を行った結果、11項目、3因子が抽出された。第1 因子は「中核的性受容・身体的満足」(以下、「中核的・

Table 3-1. 高校生女子「性受容尺度」の因子分析結果

Table 3-2. 高校生男子「性受容尺度」の因子分析結果

(5)

満足」、5項目)、第2因子は「母性的性受容」4項目)、

3因子は「身体的劣等感」2項目)命名した。

 男子の10項目からなる質問紙に対する被調査者の 反応について、プロマックス回転による主成分分析 を行った。負荷量の低い3項目を削除し、再度分析 を行った結果、7項目、3因子が抽出された。第1 子は「身体的満足」3項目)、第2因子は「中核的性 受容」2項目)、第3因子は「身体的劣等感」2項目)

命名した。

③社会的性意識尺度(Table4-1Table4-2  女子の8項目からなる質問紙に対する被調査者の

反応について、バリマックス回転による主成分分析 を行った。負荷量の低い1項目を削除し、再度分析 を行った結果、7項目、2因子が抽出された。第1 因子は「楽観的主婦志向」4項目)、第2因子は「社 会進出」3項目)命名した。

 男子の10項目からなる質問紙に対する被調査者の 反応について、バリマックス回転による主成分分析 を行った。負荷量の低い1項目を削除し、再度分析 を行った結果、9項目、2因子が抽出された。第1 子は「ステレオタイプ的性意識」7項目)、第2因子 「家庭的性意識」2項目)命名した。

Table 4-1. 高校生女子「社会的性意識尺度」の因子分析結果

Table 4-2. 高校生男子「社会的性意識尺度」の因子分析結果

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④母親像尺度・父親像尺度(Table5-1Table5-2  女子の8項目からなる質問紙に対する被調査者の 反応について、プロマックス回転による主成分分析 を行った結果、8項目、2因子が抽出された。第1 子は「母親への同一視」5項目)、第2因子は「妻 しての母親像」3項目)命名した。

 男子の8項目からなる質問紙に対する被調査者の 反応について、主成分分析を行った。負荷量の低い 1項目を削除し、再度分析を行った結果、7項目、1 因子が抽出された。これをポジティブな父親像として 捉えることとする

 男女ともに、性受容尺度を除いて、小学生を対象 とした久芳14の尺度の構造合致する結果が得ら

れた。

 女子の性受容尺度は、小学生においては、「中核 的・母性的性受容」「身体的満足」2因子構造で あったが(久芳ら14)、高校生を対象とした本研究 においては上述の3因子構造が確認された。小学生 高校生を対象とした久芳ら13の調査においては、

3因子構造が見出されていたことから考えると、小学 生では未分化であった性受容が高校生においては 分化したと推測できる。特に身体的・性的成熟に伴 、「母性的性受容」が独立して因子を構成するに 至ったと考えられるまた、小学生とは異なり、「身体 的劣等感」「身体的満足」とは別の因子として抽出 されたことも特筆すべき点である。女子の場合、初潮 に先駆けて生理的に皮下脂肪が急増しはじめ、次第 に丸みをおびた体型へと変化し、明らかに男子との

Table 5-1. 高校生女子「母親像尺度」の因子分析結果

Table 5-2. 高校生女子「父親像尺度」の因子分析結果

(7)

間に体型の差が生じる。鈴木・伊藤19は、中・高 校生の女子は、誰もが第二次性徴に伴身体発達の 認知に戸惑い、混乱している状況にあり、身体面に おいて自己像をゆがめてとらえていると指摘している このことが、本結果に影響を及ぼしている可能性が

考えられる

 男子の性受容尺度は、小学生において「中核的・

身体的満足」「身体的劣等感」2因子構造であっ たもののうち(久芳14)、前者が「身体的満足」「中 核的性受容」に分化3因子構造となった。これは、

久芳13一致する構造である

 高校生においては、男女ともに「身体的劣等感」 因子が抽出されたが、小学生では男子のみに確認 されたことを加味すると、男女の「身体的劣等感」 あり方は女子とは異なる可能性考えられる。この点 に関しては、中学生も含めてより詳細に検討するこ とが求められる

2. 性受容、社会的性意識、母親/父親像の学年 差の検討

 性受容、社会的性意識、母親/父親像の学年差 を検討するために、各尺度の下位尺度得点を算出し た。それぞれの平均値標準偏差はTable6-1Table 6-6に示した。この各下位尺度得点を従属変数として 1要因分散分析を行った。結果は、Table7-1Table 7-3に示した通りである。尚、有意な主効果が確認さ れたものに関しては、Tukey LSD(等分散が確認さ れた場合)、またはDunettC(等分散が確認されな かった場合)を用いて多重比較を行った。

 性受容尺度について、女子は「母性的性受容」 おいて、高1<高2、「身体的劣等感」においては、

1<高3という有意な学年差が確認された。鈴木・

伊藤19は、女性性受容における「母性」・「身体受 容」・「中核的受容」を含む「積極的女性性受容」 年齢とともに高くなる傾向がみられるとしている。本結 果においては、「中核的・満足」には有意差は認めら

Table 6-1. 女子の性受容の平均値・標準偏差

Table 6-3. 女子の社会的性意識の平均値・標準偏差

Table 6-5. 女子の母親像の平均値・標準偏差

Table 6-2. 男子の性受容の平均値・標準偏差

Table 6-4. 男子の社会的性意識の平均値・標準偏差

Table 6-6. 男子の父親像の平均値・標準偏差

(8)

れなかったものの、「母性的性受容」は、高3におい て高くなる傾向が見出された。また、鈴木・伊藤19は、

「身体満足度」は中学生から高校生にかけて低下す ることもらかにしている。本研究の「中核的・満足」

にはこの傾向はみられなかったが、「身体的劣等感」

は学年が上がるとくなることが確認された。前述の 鈴木・伊藤19の研究で用いられた「身体満足度」 は、本研究では「身体的劣等感」として抽出された「自 分の身体は異性から見て魅力的だと」「自分の身 体にコンプレックスがある(逆転項目)」という項目が 含まれている。他者への意識がより強まるとえられる この時期に「満足」よりもより他者のを意識した「劣 等感」に顕著にこの影響が表れたものと推測される  一方、男子においては、いずれも有意な学年差は 認められなかった。東京都幼・小・中・高・心障性 教育研究会23の調査によれば、男女ともに性を受 容している者の割合が小学校高学年から急激に減 始めるとされているが、その後も急激に低下する女子 比較し、男子は大きな変化はなく推移している。 のため、高校生男子を対象とした本研究においては 学年差が確認されなかったのだと思われる

 社会的性意識尺度について、女子は「楽観的主 婦志向」において、高2<高3という有意な学年差が 確認された。伊藤7は、女子におけるストレオタイ プ的な性役割の同調は中3で強まり、周囲からの期 待に敏感になるとしているその後、高校生で低下 有意差はないものの、大学生で増加傾向を示してい 。本結果は、大学生に向けて増加する傾向の一 端であると考えられ、概ねこれを支持するものであると いえる。しかし、先行研究における尺度は性同一性 における1因子として抽出されており、同性だけでな 、異性に対する性役割含めて、その傾向を見出し ているのに対し、本研究では同性についての性意識 に焦点を当てて回答を求めている。このような相違が あるため、単純に比較することは難しく、今後は中学 生、大学生についても調査を実施、性意識の発達 的推移に関しても検討することが必要であるといえる  一方、男子はいずれも有意な学年差は確認されな かった。男子においては、小学生の年齢段階では 学年差が確認されたが(久芳ら14)、高校生におい ては有意な差は認められなかった。これは女子とは 異なり、男では高校生年齢段階においてはある程度、

自己の性への社会的な意識が安定していることを意 味しているこのことは、進路を選択する際の葛藤の 有無とも関連している可能性もあるが、この点に関し ても、前後の年齢段階含めてより詳細な検討が求 められる

 母親像尺度、父親像尺度においては、いずれも 有意な学年差は確認されなかった。伊藤7は、女 子の父親像、母親像とも1から中3にかけて一度低 下し、高2になると回復、大学でさらに肯定的にな るとしているこの研究においては、高1、高2を対 象に調査を行っていないため、本結果比較すること は難しいが、男女ともに高校生の年齢段階では学年 により差は生じないことが明らかになった。

3. 自己肯定感と性受容、社会的性意識、母親/

父親像の関連

 各尺度の因子得点を算出し、自己肯定感と性受 容、社会的性意識、母親/父親像の関連を検討す るため、パス図を作成し、パス解析を行った。結果

Table 7-1. 性受容の学年差の分散分析・多重比較結果

Table 7-2. 社会的性意識の学年差の分散分析・多重比較結果

Table 7-3. 母親像・父親像の学年差の分散分析・多重比較結果

(9)

Figure1-1Figure1-2に示した通りである  女子の性受容尺度の「中核的・満足」、「母性的 性受容」は自己肯定感に影響を及ぼし、「身体的劣 等感」は自己肯定感に負の影響を及ぼしていることが 確認された。社会的性意識尺度の「楽観的主婦志 向」は性受容尺度の「中核的・満足」、「母性的性 受容」、「身体的劣等感」に影響を及ぼしているとい 結果となった。「社会進出」「身体的劣等感」 影響を及ぼしているとともに、自己肯定感に直接的に 影響を及ぼしていた。母親像尺度の「母親への同 一視」「中核的・満足」に影響を及ぼしていること が認められた。「妻としての母親像」「中核的・満 足」、「母性的性受容」に影響を及ぼしているとともに、

自己肯定感に直接的にも影響を及ぼしていることが 確認された。また、母親像尺度の「母親への同一視」

「妻としての母親像」には有意な相関が見出された  先行研究同様、高校生においても、性を受容でき

ていることが自己肯定感の獲得に影響を及ぼすという 結果が得られた。特に、「中核的・満足」の影響は 大きいことが明らかになった。鈴木・伊藤19は、「身 体的満足」「自尊感情」との間には高い相関がある ことを指摘しているまた高校生においては、「積極 的性受容」「自尊感情」に影響を与えるということも 示されており、本結果もこれを支持するものであるとい える

 「楽観的主婦志向」「社会進出」のどちらの社会的 性意識も、性受容の各因子を介して、または直接的 に自己肯定感に相反する正負双方の影響を及ぼして いることが示された。これは、性意識が高い方が間 接的にも直接的にも自己肯定感を高めるという小学生 の結果(久芳ら14とは異なる結果であるどちらの 性意識も「身体的劣等感」を介して自己肯定感に負 の影響を与えていることは注目すべき点である。鈴木・

伊藤19によれば、大学生女子では、「“楽”“得”」

Figure 1-1. 自己肯定感と性受容、社会的性意識、母親像の関連(女子)

Figure 1-2. 自己肯定感と性受容、社会的性意識、父親像の関連(男子)

(10)

という伝統的な性役割を引き受けることが自尊感情を 高められないことに影響を及ぼすとしている。一方、

鈴木・高橋21は、“仕事か家庭か”という二者択一 の生き方ではなく“仕事家庭”両立させようとする 自立的な女性像を象徴している群では、社会的立場 としての女性性を受け入れられないことから生まれてく る葛藤が自己に与える影響は大きいと指摘している つまり、伝統的な性意識においても、社会進出を求 める性意識においてもその社会的意識が高いことに より自己概念に葛藤が生じやすくなり、正の影響だけ でなく、相反する負の影響としても表れていると推察 れる

 また、伊藤6は、青年期における性同一性の形 成には2つの相があるとしている。第1は青年前期で、

身体的側面に危機が訪れ、第2は中・後期は、社 会的側面の危機で、性役割葛藤が急増するとしてい 。社会的性意識が高いことが「身体的劣等感」 高め、自己肯定感を低める方向にも作用するという 果は、第1の相から第2の相への移行期ともいえる 校生の特徴的なありといえるのではないだろうか。

 伊藤7は、青年期女子の自尊感情には両親の良 好な関係の認知と父親への信頼が関係し、母親へ 同一視できないことが性の非受容につながっていると しており、本結果は久芳ら14の小学生を対象とする 結果とも合致するものである。特に「妻としての母親 像」は、「母性的性受容」に影響を与え、直接的にも 自己肯定感に影響を及ぼす結果となった。このことも 伊藤7のいう「母親が父親(夫)信頼に満ちた幸せ な結婚生活を営んでいるという認知」があることの重 要性を示すものであるといえよう

 男子の性受容尺度は「身体的満足」のみが自己肯 定感に影響を及ぼしていることが確認された。社会 的性意識の「ステレオタイプ的性意識」「身体的 満足」、「中核的性受容」、「身体的劣等感」に影響 を及ぼしているという結果となった。「家庭的性意識」

は、性受容への影響は確認されず、自己肯定感に 直接的に影響を与えていた。父親像尺度は「身体的 満足」、「中核的性受容」に影響を与えると同時に、

自己肯定感に直接的にも影響を与えているという結果 となった。また、父親像は、社会的性意識の「ステレ

オタイプ的性意識」「家庭的性意識」それぞれと 意な相関があった。

 小学生の結果(久芳ら14および高校生女子の結 とは異なり、自己肯定感に及ぼしているのは「身体 的満足」のみという結果となった。「身体的満足」 与える影響が大きいということは唯一女子とも一致する 結果である。男子青年の痩身願望について検討した 浦上・小島・沢宮・坂野24の研究によれば、女子 では身体満足度の影響を受ける痩身願望自尊感情 には関連が認められているのに対し、男子では自尊 感情との関連が認められないことを明らかにしている 本研究においても、自己肯定感に与える性受容の影 響は女子に比べて小さいという結果となっており、女 とは異なる影響因があることが推測されるこの点 に関してはより詳細な検討が求められる

 「ステレオタイプ的性意識」「身体的満足」、「中 核的性受容」を高めると同時に「身体的劣等感」を高 める方向にも作用することが明らかになった。これは 小学生の結果とも一致する。女子同様、男子にとって 社会的側面の危機であり、性役割葛藤が急増する 時期であるとも考えられるが、男子においては小学生 でも同様の影響がみられていたことを考えると(久芳ら

14)、今後、女子とは異なる側面を検討する必要が あるストレオタイプ的な男性性を求めるということは、

身体的にも「筋肉質でたくましい」というような男性像を 求めやすい傾向につながっているとも考えられる の意識が高いことが身体的劣等感を高めているとも 推測される。また、前述の浦上24の研究によれば、

男子青年においては、賞賛獲得欲求が他者視点、

自己視点を介して痩身願望を高めることを指摘してい ステレオタイプ的な男性性を求める意識が高いこ とが、他者からの評価を意識させ、劣等感に結びつ もあると考えられる

 小学生同様(久芳ら14)、社会的性意識「父親 像」に正の相関が見出された。「家庭的性意識」 間接的な影響はなく、直接的に自己肯定感に影響 及ぼしていることは、高校生男子の特徴であるといえ 。伊藤5は、女子が母親に対する評価と性受容 の関連で葛藤を抱きやすいのと比較し、男子は葛藤 を抱きにくいとしている。しかし本結果においては、女

(11)

子同様、母親との夫婦関係も含めた父親へのポジ ティブな評価は、間接的にだけでなく、直接的にも 己肯定感に影響を与えており、男子においても重要 な要因であると考えられる

Ⅳ. まとめ

 本研究は、高校生男女を対象に、性受容と社会 的性意識、母親/父親像の学年差を検討した上で、

自己肯定感とそれぞれの関連を明らかにした。その 結果、女子では、高2「母性的性受容」が高まる 一方で、高3「身体的劣等感」が強くなることが認 められた。社会的性意識については、女子で、「楽 観的主婦志向」3で強まるということが明らかに なった。男子においては、いずれも学年差は認めら れなかった。

 女子においては、すべての性受容因子が自己肯 定感に影響を及ぼしていることが確認されたが、男 子においては、「身体的満足」のみという結果となっ た。

 女子においては、「楽観的性意識」および母親像 へのポジティブな評価が強いことが性受容を介して 間接的に自己肯定感を高め、「社会進出」の性意識 「妻としての母親像」は、直接的にも影響を及ぼし ていた。一方、社会的性意識には、「身体的劣等感」

を介して自己肯定感を低める作用見出された。

 男子においては「ステレオタイプ的性意識」「父 親像」「身体的満足」を介して間接的に自己肯定 感を高めており、「家庭的性意識」「父親像」は直 接的に自己肯定感を高めていることが確認された。 かし、男子においては性受容、社会的性意識および 父親像が自己肯定感に与える影響はあまり大きくない ということが明らかになった

Ⅴ. 今後の課題

 本研究においては、性受容に関する研究ではこれ まで対象として扱われてこなかった男子も対象として 調査を行った。先述の通、高校生男子においては、

自己肯定感との関連があまり見出されなかった。した

がって、今後は女子とは異なる影響要因視野に入 れて、研究を重ねていくことが求められる

 伊藤7は、中学生から大学生の女子を対象に同 一性の研究を、鈴木・伊藤19は小学校5年生から 大学生を対象に女性性受容の研究を行っている。性 受容に関して、今後対象を広げ、発達的観点からの 検討を行うことが求められているといえよう

 また、研究を重ねていく中で、自己肯定感を高める ためにどんな援助が効果的であるのかを模索していく ことが必要であると考える

〈引用文献〉

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―現実の差異自意識についての研究 教 育心理学研究,40164-169

4) 伊藤忠弘(2000)青年期の自尊感情と逸脱行 動の関係 日本教育心理学会第42回総会論 文集,636

5) 伊藤裕子(2000a)青年期のジェンダー(特集:

ジェンダーと現代社会) 教育と学,48229- 235

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9) 柏木恵子・高橋恵子(1995)発達心理学とフェ ミニズム ミネルヴァ書房

10) 久芳美惠子・齊藤真沙美・小林正幸(2005

(12)

中学生の自己肯定感とのかかわりとの関連 について 東京女子体育大学紀要,4019- 28

11) 久芳美惠子・齊藤真沙美・小林正幸(2006 小学生の自己肯定感とのかかわりとの関連 について 東京女子体育大学紀要,4113- 24

12) 久芳美惠子・齊藤真沙美・小林正幸(2007a 小、中、高校生の自己肯定感に関する研究  東京女子体育大学紀要,4251-60

13) 久芳美惠子・齊藤真沙美・小林正幸(2007b 自己肯定感と性受容の関連について1)―

尺度作成の試み― 日本教育心理学会第 49回大会総会論文集,502

14) 久芳美恵子・齊藤真沙美・小林正幸(2009 小学生の自己肯定感と性受容に関する研究

―社会的性意識と父母像との関連― 東 京女子体育大学紀要,4455-66

15) 久芳美惠子・竹村美砂(2004)自己肯定感と 人とのかかわり 東京女子体育大学紀要,3 15-23

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(キャリア)の成熟,自己肯定感との関係(Ⅱ)

 新潟大学教育人間科学部紀要(人間・社 会科学編),4237-247

17)松井賢二・佐藤優子(2000)中学生の学校適 進路(キャリア)の成熟,自己肯定感との関 係新潟大学教育人間科学部紀要(人間・社 会科学編),3157-166

18) 沢崎達夫(1993)自己受容に関する研究(1

―新しい自己受容測定尺度の青年期におけ る信頼性と妥当性の検討― カウンセリン グ研究,2629-37

19) 鈴木幹子・伊藤裕子(2001)女子青年におけ る女性性受容と摂食障害傾向―自尊感情、

身体満足度、異性意識を媒介として― 青 年心理学研究,1331-46

20) 鈴木幹子・伊藤裕子(2002「女子青年にお ける女性性受容摂食障害傾向」へのコメント に対するリプライ 青年心理学研究,1499-

106

21) 鈴木慶子・高橋靖恵(2005)青年期女子の女 性性受容―質問紙法とロールシャッハ法に よる検討― 九州大学心理学研究,6281-

293

22) 高垣忠一郎(2004)生きることと自己肯定感  新日本出版社

23) 東京都幼・小・中・高・心障性教育研究会(1999

「児童・生徒の性」1999年調査) 学校図

24) 浦上涼子・小島弥生・沢宮容子・坂野雄二

2009)男子青年における痩身願望について の研究 教育心理学研究,57263-273

参照

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