奈良教育大学学術リポジトリNEAR
学級における社会的受容に関する発達心理学的研究 (?)−異性選択にみられる変動傾向の分析−
著者 上田 敏見
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 19
号 1
ページ 181‑192
発行年 1970‑11‑30
その他のタイトル A DEVELOPMENTAL STUDY OF CHILDREN'S SOCIAL ACCEPTANCE IN THE CLASSROOM : (VI) AN ANALYSIS OF THE DEVELOPMENTAL TRENDS OBSERVED IN
HETEROSEXUAL SOCIOMETRIC CHOICES.
URL http://hdl.handle.net/10105/3065
学級における社会的受容に関する発達心理学的研究(Ⅵ)
‑異性選択にみられる変動傾向の分析‑
上 田 敏 見 (心 理 学 教 室)
I 間
m
191
Kuhlen, R.G.,&Lee,B.J. (1943)は、第6・9・12学年生についてソシオメトリック・
リサーチを行ない、異性選択関係は学年上昇につれて明らかに増加することを見出したOすなわ ち、女子に選ばれた男子は、 6年生では31.2&、 9年生では49.1&12年生では65.i に達し、男 子の選択をうけつけた女子は、それぞれ、 30.8^、 52.4^、 59.;であった。また、異性に選択 を与えた割合をみると、 6年生男子では45%、同女子では39.2^9年生では72.5 回女子では 59.7^、 12年生男子では75%、同女子では63%となり、増加が最も著しいのは6年生から9年生 へかけての時期であった。なお、男子の異性選択の方が女子のそれより多いことが明らかに認め られた。この差異は、ひとつには、選択を同一学年内に制限したために、年長者(異性)をより 好む女子に対して、同年令者をより好む男子の異性選択率が高くなったのであろうと考えられて いる。他方、異性選択を記入する際、女子が男子よりもひかえ目であるということもこの結果に 影響しているであろうと解釈された。
Lewis, G. M. (1958)およびBroderick, C. B., & Fowler, S. E. (1961)は、約30年前と比 べて今日の青年は、以前より低年令で異性への関心を示すようになったと示唆しているが、
Kuhlen, R. G.. & Houlihan, N. B. (1965)は、この点について興'味深い研究を試みたO それ は、前述の1943年の研究結果と此較するため、同一の方法を用いて同地域の生徒(6年生〜12年 生の全学年)の異性選択比率を求めたものである。この結果によると、先ず異性をえらぶ比率 は、男‑女、女一男の6個の比較の中、 5個において、 1943年より1963年の方が有意に高いと認 められたのは1カ所だけであった。このようにして、異性へのより大きな興味は、選択する場合 には明確に認められたが、選択される場合においてはそれほどではなかったわけである。ま た、男子の与える異性選択の方が、女子のそれより多い傾向もほぼ認められた。この結果につい て、著者たちは、男子の方が割合抑制することなく特定の女子に対する興味を表明するかであろ と解している。このように、概していえば、当初の予測通り、最近の青年の方が20年前の青年よ りいっそう大きな異性への関心を示すこと、異性選択傾向は学年上昇につれて増大していくこ と、などが示された。ただし、この研究の被験者の年令範囲が限られているので、 Moreno (193 4)の研究などで示されたV字カーブの発達、つまり、異性選択が小学校低学年ごろまでかなり 著しく、その後は一時減少、 ‑イ・スクール時代に再び増大するという発達傾向における谷が、
1940年代よりも低年令の所に移った事実は確認できなかった。さらに、 Vカーブの谷が浅くなっ たという確証も見出されなかった。
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学級における社会的受容に関する発達心理学的研究(vI) (上田)大西誠一郎(1949)は、小学校四年生から中学3年生までに、 「仲のよい友人」 「仲の悪い友 人」を3人制限法であげさせたが、この結果の車で仲よしとして異性の友人を指名したものの割 合はきわめて少なく、小学校4年生男子で8%、女子で3%、 6年生男子1%、女子1%、中学
生は男女全学年を通じて0%であったO
大西誠一郎・近藤清一郎(1950)は、中学生994名、高校生627名について、 (1)異性とどのよ うな交わり方を欲しているか、 (2)実際にはどのような交わり方をしているか、などについて誼 査した。 CDに関する結果では、 「男とも女ともかまわずいっしょになって遊ぶ」をよいことす
るものの数は、中学男子1年で26%、 2年20%、 3年52%、同女子1年で48%、 2年41%、 3年 42%、高校男子1年40%、2年57%、 3年44%、同女子1年62%、 2年61%、3年61%であった。すな わち、女子の方が各学年とも男子を上廻る高率を示していること、中学から高校に進むにつれて 高率になる傾向があり、しかもその傾向は女子において1、 2年先行して出現するらしいこと、
などが明らかとなった。これに対し、現実の交際においては、同性相互で遊ぶ率が最高で「同性 とばかり遊び、異性とは必要以外口もきかない」が、中学男子1年74%、2年58%、3年67%、同 女子1年65%、2年71%、3年64^ ;高校男子1年52%、2年52%、3年65%、同女子1年42%、 2 年28%、 3年61%であった。このように現実と理想の不一致がはっきり認められた。理想と現実 の一致しているものは、中、高の男女を通じてほぼ20‑'25%にとどまり、不一致はいずれの学年 においても一致しているものの約3‑4倍に達した。この不一致として多くあげられるのは、男 女とも、自分が気が小さい、まだなれない、友人の口がうるさい、などで、家族や世間の批判よ
りも友人の批判の方が強いカをもつ、という結果が見出された。
石黒彰二(1951)は、小学校3年生から中学2年生まで約700名について、比較的包括的な友 人関係と考えられる「仲よし」 (3人制限) 「討議場面における議長」 (1人制限) 「社会科学 習場面における学習仲間」 (2人制限) 「休みの時間における遊び仲間(2人制限)を規準とす るソンオメトリック・テストを行なったが、異性をも指したのは「議長」規準以外ではほとんど みられなかった。 「議長」規準では、女子‑男子の指名が小学3年生で50%、 4年生61./ 、 5 年生59.5^、 6年生37.2%;、中学1年生65.] 、 2年生26.]に対し、男子‑女子の指創ま、小学
4年生でl.; 、 6年生で46%、中学1年生3.3%、 2年生1Q(にすぎなかった。この点につい て、著者は、 「議長の指名が女子から男子への方向に多いことは、男子の性格的な優越性と社会 的習慣の影響によると考えるのが、小学6年以後男子から女子への指名が出現していることは、
青年前期への移行とともに男子の括抗的態度の頗和を来たしたこと、および、この時期における 男女共学が相互の理解を深めさせたことによると考えられる. 」と解している。
内山喜久雄(1953)は、無記名法により、学級内外を問わず異性の友人を無制限に書かせた結 果を報告している。これによると、仲のよい異性をもつ児童数は、男子では小学3年生65.2 ′ 4年生52.4^、 5年生61.< 、 6年生40.( 、中学1年生12.( 、 2年生15A%、 3年生0%と なり、女子では、同じ順に、 95.85^、47.4^、75.( 、42.9: 、30.8; 、4.0^、 8.3^であっ た。この結果は、従来の諸研究と異なり、かなり高率を示しているが、これはおそらく無記名と いう方法のためであろう。
Moreno, J. L. (1953)は、ある公立学校の幼稚園から第8学年までの児童、生徒について、
異性間選択の発達的考察をなした。この場合のソレオメトリック・テストの規準は座席と学級編 成で制限選択数は2人であった。この結果によると、異性間の選択は幼稚園児・小学1年生に巌 も多く、 2年生以後6年生まで次第に減少し、第7 ・第8学年になると再び増加の傾向を示して
学級における社会的受容に関する発達心理学的研究(VI) (上田)
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いる。また、幼稚園児においては男・女児のいずれにおいても異性選択率は同様であるが、この 比率は小学1・2年生では男子においてより高く、3年生では女子に高く、4・5年生
では男・女はぼ同率、8年生では再び女子が高率となることが明らかとなった。この研究に対し て田中熊次郎(1964)は、「モレノの研究の欠点は、排斥関係についての資料がないことであ る。排斥関係の分析も加えると、同性間には選択も多いが排斥も多いこと、異性間には選択も少 ないが排斥も少ないことも示されて、さらに細かい点が明らかになるはずである。」と批判を加 えている。
Bjerstedt,A.(1956)は、スエーデンの小・中学生(第3学年‑第8学年)についての広汎な研
究の中で、普通男女混合クラスにおける異性選択率と、グループ・ワークの経験をもつ男女混合 クラスのそれとを比較した。その結果、3人制限・作業仲間という規準では、男子3・4年生で は前者が1.1、後者が3.65、同5・6年生では前者が9^c
6.D/、後者が4.9;、同7・8年生で
は前者が2.(、後者がU.796、同様に女子3・4年生では前者が1.596、後者が19.8^であっ たOなお研究対象となった18クラスの中、3クラスにおいては、男女間の積極的選択(規準・作 業仲間)が皆無であった。また「好き」(3人制限)という基準では、18クラス中9クラスにお
いて異性選択が皆無であったし、「休憩時間をいっしょにすごす友人」という規準では、グループ
・ワークの経験をもつ12クラス中7クラスにおいて異性への選択が皆無であった。このようにし て、作業仲間の選択という、やや「公的」な好悪と、休憩時間を共にすごす友人という,「準個 人的」な好悪との問には若干の差異が見出された。すなわち、前者における2967個の積極的選択 中、合計6.2%が異性間選択であるのに対し、後者では823個の積極的選択中、異性間選択は2.7
%にすぎなかった。次に、作業仲間の選択における異性間のpositiveな選択とnegativeな選択 とを比べたところ、前者は6.2、後者は874個のnegativeな選択中L‑1¥J.vという多きに達し、
この両者の差は0.1.水準で有意と認められた。さらに作業仲間の選択について選択レベル別分 析を加えたところ、異性間選択の比率は、第1選択548個中O.<、第2選択545個中3r
.i、第3
選択545個中5.8^、第4選択以下の1392個中9,cとなり、第1選択における異性間選択は他の レベルにおけるそれより有意に少ないことが見出された。性差の検討によると、男子からの選択 1427個中異性選択は4.9%であるのに対し、女子からの選択1540個中の7.3^yoが異性に向けられて いた。異性選択が最高率を示すのは6‑8年生であるが、この段階での男子からの異性選択は総 選択数の¥.1%、女子では11.7^、この性差は5%水準で有意となった。
次に、異性間の積極的選択の出現率は、男女いずれにおいても学年上昇につれて増大するよう である。男子からの異性選択は、作業仲間という規準では、3・4年生2.1、5・6年生3.7
%、7・8年生9.fこれに対応する女子の異性選択は、2.1、6.J、14.;となり、休憩
時問をともにすごす友人という規準では、異性選択の合計%は、3・4年で0%、5・6年生で 1.3&、7・8年生で2.Z%となり、発達差は必ずしも明確とはいえないが、少なくとも同一方向 の差を示した。しかし、グループ・ワークの経験の有無と関連づけて分析した結果によると、高 学年において積極的異性選択が増加するという発達傾向は、グル‑プ・ワ‑クの経験をもつクラ ス群においてのみ認められることが明らかとなった。すなわち、ブル‑プ・ワーク経験群の作業 仲間における異性選択率は3・4年生で3.(、7・8年生では17.(、普通の男女混合クラス
のそれは、l.i.と2A%となり、前者における学年差は0.1水準で有意となったが、後者にお ける学年差は有意水準を逸した。以上のBierstedtの諸結果は、グル‑プ・ワークの経験のある クラスの方が一般に異性選択が多く、またその率が高学年で増加すること、個人的な親しい接触
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学級における社会的受容に関する発達心理学的研究(vI) (上田)の場面より比較的公式的な作業場面(more formalized aspects)において異性間選択が生じ易い こと、積極的選択のレベルが下降するにつれて異性間選択がふえること、など、教育の実際面へ の示唆に富んでいるといえよう。
Harris, D. B.,、 & Tseng, S. C. (1957)は、小学校3年生〜高校生3000名について、同性・
異性の仲間に対する態度の分析を試み、男女とも同性の仲間に対してpositive な態度をとるこ と、女子よりも男子においてneutralな態度が多いこと、女子は長ずるにつれて同性に対し、い っそうnegativeな態度をはっきり示すこと、中学年の頃における男女間の反目は、女児が男児 に対する態度を変えることの所産であること、などを見出した。また男の女‑の好意的態度は3 学年から12学年へかけてわずかに減少するが、いずれの学年においても、異性に対する女児の態 度より概して高かったこと、女の男への好意的態度の%は6年生までは減少、その後9年生まで 増大し、その後は一定であること、異性に対する好意的態度の程度は、第8学年以上は男女とも 本質的に等しいこと、などが明らかにされた。
北野栄正(1958)は、学級編成(単式・複式・後々式)と児童の交友関係の特質との関連を分 析し、児童数の多い普通学級ほど同性積極的選択が多く、児童数の少ない複式学級はど異性積極 的選択が多いこと、一般に女子‑男子の選択が多いらしいこと、いずれのタイプの学級において も6年生では異性選択が全然消失すること、異性の相互選択はいかなるタイプの学級、学年にも 皆鯨であること、異性拒否選択は、普通学級では4年生までしかみられないが、複式学級では全 学年にみられた、などの結果を報じている。このようにして、学級の形態とその中で展開される 異性選択関係にはある種の関連性が認められるようである。
Gronlund, N. E. (1959)は、第3学年から大学までの児童、青年についての研究において、
男子から女子への選択は第9学年まではおよそ11' 、その後はわずかに増加し、大学で31%
のピークに達すること、女子の異性選択は第6学年および第10学年ではやや低率であるが、第12 学年までは大体において12‑17:の問で、大学において40%に急増すること、などを報じてい
る。さらに、 6年生40クラスについての研究の結果、異性選択の比率は、ソンオメトリック・テ ストの規準や学校のもつ種々の条件によって相当差異があることを見出し、この面での教育的操 作の可能性を指摘した。
Reese.H‑W. (1962)の研究においては、 5年生の女児が、男児仲間に最も受容されている男 児に対しいっそう好意的となるが、女児仲間で女児が受容されるということと彼女が男児に受容 されることとは無関係であることが示され、 Kanous, L.E.,、 Daugherty,、 R. A.,& Cohn, T.‑S (1962)は異性選択と家庭の社会経済的水準との関係を分析し、社会経済的に低い集団において は異性選択が多くなる事実を明らかにした。
田中熊次郎(1964)は幼児(5才) 11集団、小学1年生〜6年生各学年10集団ずつ、中学1年 生〜3年生各学年8集団ずつ、高校生6集団、大学生7集団、成人(26才〜52才) 4集団にソシ オメトリック・テストを実施し性別下位集団間の選択および排斥反応の選択総数に対する比率を 算出した。それによると、選択反応の比率は幼児22.05^、小学1年生29.6^、同2年生21.t 、 同3年生91 ' 、同4年生12.4 、同5年生%.2%、同6年生8.7^、中学1年生アA%、同2年生 5.( 、同3年生10.t 、高校生i.796、大学生32.596、成人31.(であった。同様に、排斥反応 の比率は、幼児44.1 、小学1年生〜6年生が、それぞれ順に47./ 、 49.33?、 51.1 、 47.0
%、 29.< 、 35.7^、中学1年生〜3年生が、それぞれ順に、 31.796、 20.9^、 19.2&、高校生 が31.5#、大学生が48.6^、成人51.:であった。この結果からすると、これらの集団が関する
学級における社会的受容に関する発達心理学的研究(vI) C上田)
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限りにおいては、性別下位集団問の対立抗争現象が共通の特色といえるようである。なお異性‑
の選択反応比率が小学4年生頃から急激に低下することが注目される。
以上の諸研究によれば、発達にともなう異性選択の変動傾向には、 V字カ‑ブを描くとするも の(Moren0,, 1934)、殊に第7 ・ 8学年以上において異性選択傾向が増大していくことを明らか にしたもの(Kuhlen & Lee,1943;Bjerstedt, 1956 ; Gronlund, 1959; Kuhlen & Houlihan, 19 65)などがあるが、本邦で行なわれた諸研究は、むしろ、中学、高校頃までに異性選択が極端に 減少する傾向のあることを報じ(大西、 1949;内山、 1953;北野;1958;田中、 1964) 、社会文 化的背景ないし慣習のちがいにもとづくと思われる差異をあらわにしている。このことは、地域 差や学校差の存在を示唆したGronlund (1959)の結果からも理解できる。異性選択における性 差については、男子がより高率であるとするもの(Kuhlen& Lee, 1943;1954;依田・大橋・畠 田、 1954 ; Kuhlen & Hou】ihan, 1965)、その逆とするもの(大西・近藤、 1950;Bjerstedt, 19 56;北野、 1958) 、また、必ずしも一貫した結果を示していないもの(Moreno, 1953)などがあ
り、結論は定かではない。これは、おそらく、他の要因が混入Lで性差の直接比較を妨げたため ではないかと考えられる。
そこで本研究は、一般規準( 、好きS= )と特殊的規準(も清掃タ)を用いて小・中学生の異性 選択傾向をたしかめようとするものである。本邦における社会的慣習の現状からみて、少なくと も中学生の頃までは異性選択率は低下するであろうとの予測がたてられた。すなわち、本研究の 目的は、熟知期間15カ月という時点における小・中学校の男女ほぼ同数より成立する学級につい て、次の2仮説を検証することである。
仮説I、一般的規準(、好き≠)を用いたソシオメトリック・テストにおいて、異性に与える 選択数は、学年上昇につれて減少するのであろう。
仮説Ⅱ、特殊的規準( §清掃メ)を用いたソシオメトリック・テストにおいて、異性に与える 選択数は、学年上昇につれて減少するであろう。
11方 汰
新学級編成後少なくとも15カ月を経過した1965年6月末から7月上旬にかけて、男女ほぼ同数 より成り立つ小学校2年生10クラス(男189名、女187名) 、同4年生10クラス(男206名、女193 名) 、同6年生11クラス(男203名、女207名) 、中学2年生10クラス(男23名、女196名) 、総 計男833名、女783名の被験者に、一般的規準を用いた3人制限のソシオメトリック・テストを 実施した。仮説Ⅱの検証には、この被験者の一部(小学校2・4・6年生各6クラス、中学2年 生クラス)を用い、規準は特殊的規準(も清掃タ)としたソシオメトリック・テストを、上述の テスト施行1週間目に実施した。テストの実施は各学級担任に依頼したが、事前に必要な実施手 続きをプリントし、筆者があらかじめ各担任者に面接して説明交付するとともに、さらに細部に ついて綿密な打ち合わせを行ない、実施条件の斉一性が保たれるよう万全の方策を講じたO各担 人教諭に手交したプリントには、およそ、 (イ)先ずソシオメトリック・テスト用紙を配布し、 ‑皮 ゆっくりと問題文を読んでやって下さい。回選択の範囲は同じ組の中の友だちに限って下さい。
再誰の氏名を記入したかは、他の子どもに分らないように、十分子ども相互に注意させて下さ い、 (=jできる限り自然な、自発的反応をするよう、はげましを与えて下さい、などの実施手続き
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学級における社会的受容i・こ関する発達心理学的研究(Ⅵ)の要点をしるしておいた。なお、この被験者はすべて公立小・中学生で、中学生の一部が大阪市 立校の生徒であるが、他のすべては奈良市内の小・中学生であったD
III 結 Eii2
本研究の結果は、仮説Iに関するものと、仮説IIに関するものの2部に分れるO (1)仮説Iに関する検証の結果
各児が一般的規準( ヽ好きタ)を用いた3人制限のソシオメトリック・テストで与えた選択 を分析し、同性に与えた数、異性に与えた数を性別に算出し、与えた選択総数に対する比率を求 めた Table lは同性間・異性間選択の学年別傾向を示したもの、 Table 2は性別傾向を示した
ものである。
Table 1. Developmental trend of choices given to opposite and same sex (criterion: like best)
* number of choices given
Table 2.異性間選択の性別傾向 (規準:好き)
クラス数
被 験 者 数
男 女 計小 (10) 小 (10) 小6 (ll) 中 (10)
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男子の与えた選択数 総数 芸→姦 %
547 79 14.44 607 23 3.79 594 10 1.68 667 14 2.10
計 (41) 833 783 1616 2415 126 5.22
女子の与えた選択数 総数 姦→墓 %
555 59 10.63 567 22 3.8 602 16 2.66 546 18 3.30
2270 115 5.07
先ずTable lをみると、全被験者1616名の与えた選択4685の中、異性に与えたそれは241、
つまり全体の5.] である。これを学年別にみると、小学校2年生の与えた選択の申、異性に与 えたものは19I 、 4年生では3.8:に激減すること、 6年生・中学2年生では3%にも達しな いことが明らかとなった。そこで学年上昇にともなう、このような変動傾向を検定にかけてみる と、 f‑164.44, df‑3, Pく.001となり、学年と同性に与えた選択数・異性に与えた選択数と の連関は有意となった。なお、学年間の差を検定した結果、小学2年生から4年生へかけて異性 選択が有意に減少する(f‑58.05, df‑l, Pく.001)こと、 4年生から6年生へかけても同様に
学級における社会的受容に関する発達心理学的研究(vI) (上田)
ma
有意の減少が認められること(72‑5.61, df‑l, Pく.05), 4年生と中学2年生の間には同様な減 少傾向が示唆されたが、わずかに有意水準を逸したこと(X2‑2.73, df‑l..05くPく.10),6年生 と中学2年生の問の差は有意ではないこと、などが明らかになった.このようにして、この一般 規準に関する限りでは、異性に与える選択数は、少なくとも小学校6年生までは、学年上昇にと
もない着実に減少していくことが確認された。
なお性別に発達傾向を分析したTab】e 2によると、異性に与えた選択数は、小学2年生では 男子に多いようであるが、他の学年ではすべて女子に多いようである。しかしその発達につれて
の減少傾向はきわめて類似している。
(2)仮説Ⅱに関する検証の結果
各児が清掃を規準とする3人制限のソシオメトリック・テストにおいて与えた選択を性別に 整理し、同性・異性に与えた数を算出し、与えた選択総数に対する比率を求めた Table 3は同 性間・異性間選択の学年別傾向を示したもの、 Tab一e 4は性別傾向を示したものである。
Table 3. Developmental trend of choices given to opposite and same sex (criterion : cleani∫lg‑ duty)
* number of choices given
Table 4.異性間選択の性別傾向(規準:清掃)
クラス数
小 (6) 小 (6) 小 (6) 中 (7)
被 験 者 数 男子の与えた選択数 女子の与えた選数択
男 女 計 総数量→姦 % 総数 妾→墓 %
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355 43 12. 11 300 32 10.67 338 1.18 342 15 4.39 324 1.54 341 1.17 479 10 2.09 377 22 5.84
計 (25) 520 476 996 1496 62 4.14 1360 73 5.37
先ず第3表をみると、仝被験者996名の与えた選択2856の中、異性に与えた選択は135、つま り全体の4.73^であり、上述の一般的規準を用いた場合に得た結果と近似していることが分っ た。これを学年別にながめてみると、小学校2年生の与えた選択655の中の11.45&が異性に与え られており、上述の一般的規準で得た結果(12.5#)に近い比率だといえる。小学4年生では異 性選択が、一般的規準で得た結果と同様に激減して2./ になり、6年生では1.; までおちてし まっている。しかし、一般的規準で得た結果とかなり異なり、中学2年生では、 3.74^に増加し
188
学級における社会的受容に関する発達心理学的研究(VI) (上田)たことが注目をひくOそこで、この変動傾向をズ2テストにかけてみたところ、 y2‑89.67, df‑3.
Pく.001となり、学年と同性に与えた選択数・異性に与えた選択数との連関は0.1#水準で有意と なった。そこでさらに進んで学年間の有意差を検定してみた結果、小学2年生から同4年生へか けては異性選択が有意に減少する(ズ2‑38.19, df‑l, Pく.001)こと、小学2年生から同6年生 へかけても当然有意に減少する(%2‑56.46,ar/‑l, Pく.001)こと、小学2年生と中学2年生の 差も有意(Z2‑33.54, df‑l, Pく.001)であること、ただし、 4年生と6年生の差は5%の有意 水準をわずかに逸した(Zサ‑3.42, df‑l)こと、さらに予測に反して、 6年生から中学2年生へ かけて異性選択の有意の増加(*2‑8.12, df‑l, Pく.01)があったこと、 4年生の異性選択量と 中学2年生のそれとの問の差は有意でないこと、などが明らかとなった。このようにして、清掃 という規準を用いたソシオメトリック・テストの結果では、異性に与える選択数は、小学校6年 生まではなだらかながら減少することが確証されたが、 6年生から中学2年生へは有意の増加傾
向が認められた。
なお性別に発達傾向を分析したTable 4によれば、前述の一般的規準における結果と同様に、
異性に与えた選択数は、小学2年生では男子に多いようであるが、他のすべての学年では、 6年 生を除き女子に多いようである。なお、昌をひくのは、女子における小学6年生から中学2年生 へかけての著しい異性選択の増加ぶりである。中学2年女子の異性選択量は同女子の小学4年生 のそれをすらこえているのである。これに対して、男子は小学校4年生以後ほとんど大きな変動 を示してはいない。
IV 考 察
先ず仮説Iは十分に支持されたといえよう。従来なされた多くの研究にともすれば欠けていた 統計的検定の結果、われわれは、異性間の選択が小学2年生から同4年生・ 6年生‑は着実に 減少しつづけていくこと、 6年生と中学2年生の問の差は有意でなく4年生と中学2年生の問の 差はわずかに有意水準を逸したが減少傾向を示唆したこと、などを明確に示すことができた。こ の結果は、大西(1944)の結果ときわめてよく‑致したが、これはソシオメトリック規準が近似
していたからであろう。また、選択制限教(3人)の一致もなんらかの影響をおよぼしているに ちがいない。その他、方法は異なるけれども、内山(1953) 、北野(1958) 、田中(1964)など が得た結果とも一致している.このことは、本研究で得た異性選択の発達傾向が、わが国の児 童、青年に特有な一般的傾向であり、外国とは依然として大きく異なる社会的慣習を端的に反映
しているものといえるであろう。もっとも、 §好きク という規準による選択、つまり、どちらか といえばパーソナルな側面の選択であるための抵抗が、殊に小学6年生や中学2年生にあったの ではないか、とも考えられる。
次に性差の究明はこの研究本来の目的ではないが、性別発達傾向に関連して若干の考察を加え ておきたい。先ず全体としてみると、男子の与えた選択総数2415の中、 126、つまり5.22^が異 性に与えられており、女子の場合では選択数2270の車、 115、つまり5.( が異性に与えられ、
この点だけでは性差がないといえるようである。これに対して、 Bjerstedt (1956)の得た男子の 異性選択は4.< 、女子のそれは7.: 、第6.‑8学年(日本の中学生に相当)の所では5%水準 で女子の与える異性速択が有意に多い、という結果は、くいちがっている。しかしながら、本研
学級における社会的受容に関する発達心理学的研究(VI) (上田)
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究結果の小学6年生および中学2年生のあたりでは女子の与える異性選択が男子のそれより上廻 っている。さらに、この規準( 、好き声)で異性選択がゼロであったクラス数をしらべてみる と、男女いずれにおいてもゼロであったのは、 4年生で2クラス、 6年生で3クラス、中学2年 生では1クラスであった。これを性別に分析してみると男子の異性選択ゼロのクラスは、 4年生 で5クラス、 6年生で7クラス、中学2年生では4クラスとなり、同様に女子の異性選択ゼロ のクラスは、 4年生で2クラス、 6年生で4クラス、中学2年生で7クラスとなった。このこ とは、大まかにいって、女子の異性選択が男子より優越していることを示唆するもので前述の Bjerstedtの結果は、われわれの得たものと完全に矛盾するものでないことが分る。中学2年生 以上高校や大学においても引きつづき異性選択が増加の方向をたどるのか、また、この点におけ る女子の優勢が持続されるものかどうか、これらの問題の究明は今後の研究にゆだねたい。いず れにせよ、本研究で用いた一般的規準とサンプルに関する限り、仮説Iは支持されたといえるで
あろう。
次に仮説Ⅱは一部だけ支持きれた。この規準による異性選択は、全体としては4.73% (2856 個の選択中135)で、一般的規準を用いた場合における比率5.; と近似していた。しかしその 学年別発達傾向は一般的規準のそれと一部異なっていた。すなわち、特殊的規準を用いたこの場 合には、小学校6年までほぼなだらかな異性選択の減少がみられたが、予測に反して、 6年生か
ら中学2年生へかけて異性選択は有意に増加したのである。これをTable4によって性別になが めてみると、この上昇傾向は女子に著しく、男子における傾向は一般的基準の場合のそれとほと んど一致していることが分る。すなわち、この場合の6年生男子の異性選択は全選択のi.: 、 中学2年生のそれは2.( に対し、一般的規準のこれに対応する値は、 6年生男子でl.C 、中 学2年生男子では2.] であった。このようにして、全体として小学6年生から中学2年坐‑か
けて異性選択が増加するのは、この規準における女子のそれの著しい増加に主としてもとづくも のであると恩われる。
なお全体として性差をみてみると、男子は総選択数の4.14%'を異性に与えており、女子は 5.37^を異性に与えている。この結果は同じような年令層の被験者を扱った研究結果(Bjerstedt) と一致している。さらに、この規準( 、清掃≠)で異性選択がゼロであったクラス数をしらべて みると、男女ともにゼロであったのは、 4年生で2クラス、 6年生で3クラス、小学2年生およ び中学2年生では昏無であった。これを性別に分析してみると、男子の異性選択ゼロのクラスは 4年生で5クラス、 6年生も同じく5クラス、中学2年生で2クラスとなり、女子における異性 選択ゼロのクラスは、 4年生で2クラス、 6年生で3クラス、中学2年生では皆無となった。こ の結果は、総じて、この規準による異性選択が一般的規準の場合に比較して増加する傾向がある
こと、女子においてその傾向がよりいっそう著しいこと、などを示唆しているといえよう。
この解釈はいろいろな視点から可能であろう。第1にソシオメトリック・テストにおける規準 と異性選択の問題であるが、 Bjerstedt (1956)は、作業仲間の選択における異性選択比率は6.2 形 (公式化された選択場面) 、休憩時問の友人選択における異性選択比率は2.1% (セミ・パー
ソナルな選択場面) 、好きな友人という、いわばノヾ‑ソナルな選択場面でのそれはわずかに1.3
%であったと報じている。また、 Gron】und (1959)の6年生40クラスを用いた研究においても、
座席・作業・遊びの3規準によって異性選択の程度が異なること、遊びの規準を用いた場合に異 性選択が最低になること、などが明らかにされた。日本の小・中学生を対象とした石黒の研究
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学級における社会的受容に関する発達心理学的研究(vI) (上田)(1951)では、用いられた4規準(仲よし・学習仲間・遊び仲間・議長)の中、議長と学習仲間 以外における異性の友人の指名はほとんどなかった。このようにして、ソシオメトリック選択に おける異性選択は、そこで用いられた規準によって異なること、一般的にいえば、パ‑ソナルな 規準(も好きな友人メ、遊び3= )を用いた場合には異性選択が少なく、作業その他比較的オープ ンな公的接触場面を規準とした場合には異性選択が出現し易いことが考えられる。第2に、女子 の社会的発達が男子のそれより先行しており、そのため規準差の効果が女子にきわめて顕著にあ らわれたこともあるであろう。第3に、清掃活動における男子の役割への期待、身体的優越性の 影響も女子の男子選択を容易にしたことが考えられる。およそ以上のようなことが、本研究に おける2規準にもとづく結果を一部異ならしめたのであろう。いずれにせよ、本研究の用いた特 殊的規準とサンプルに関する限り、仮説Ⅱは半ば支持されるにとどまった。
われわれは、以上両仮説の検証を通じて、わが国の小・中学生においては、異性選択傾向の学 年上昇にともなう低下は ヽ好きクの如きパーソナルな規準においては認められるが、 ヽ清掃クの 如き公的活動場面の異性選択では必ずしも同一傾向を認められないことを明らかにした。このこ
とは実際の教育指導場面にひとつの示唆を与え得るであろう。すなわち、、学級内における、殊に 青年前期の学級内における不必要な性的対立、桔抗の現象を緩和するには、比較的フォーマルな 共同活動事態を設定し、そこで接触のチャンスを与えることが有効であろう、ということであ る。このようにしてグループ・ワークが経験されるならば、前述のBjerstedt (1956)の示した ような、高学年児の高い異性選択傾向が期待できるにちがいないし、このような形を通じて両性 の健全な理解ないし受容をもたらすことが、今日不毛をかこっている生徒指導の重要な一側面で あろう。しかし、今後究明しなければならない問題も決して少なくはない。たとえば、共同学習 作業やグループ運動といった特殊的規準を用いても中学以後の異性選択傾向が上昇を示しつづけ るかどうか、グル‑プ・ウークの種類と異性選択傾向の関係、選択の範囲を学年全体に拡大した 場合、学校全体に拡大した場合の女子の異性選択傾向、選択水準による変動、熟知度による差異 や学級編成による相違、などの解明がそれである。
Ⅴ 総 揺
本研究の目的は、 (I)一般的規準(も好きタ)を用いたソシオメトリック・テストにおいて異 性に与える選択数は、学年上昇につれて減少するであろう、 (n)特殊的規準( §清掃つを用 いたソシオメトリック・テストにおいても異性に与える選択数は、学年上昇につれて減少するで あろう、という2仮説を検証することであった。
仮説Iを検証するためには、新学級編成後少なくとも15カ月を経過した1965年6月末から7 月上旬にかけて、男女ほぼ同数より成立する小学校2年生10クラス(男女計376名)、同4年生10 クラス(男女計399名) 、同6年生11クラス(男女計410名) 、中学校2年生10クラス(男女計43 1名)の被験者に、奄好きタを規準とする3人制限のソシオメトリック・テストを実施した。仮説
Ⅱの検証のために用いた被験者は、前記仮説Iの被験者の一部、すなわち、小学校2年生・ 4年 生・ 6年生各6クラスおよび中学2年生7クラスで、この被験者に、も清掃タを規準とする3人 制限のソシオメトリック・テストを、前記テスト施行後1週間目に実施した。同性・異性に与え
られた選択数と学年との連関をX2テストによって分析した。木研究で得られた結果の主なもの
学級における社会的受容に関する発達心理学的研究(vI) C上田)
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は、およそ次の通りである。
(1)一般的規準( 、好き3= )を用いた場合に異性に与える選択数は、小学校2年生から6年 生までは学年上昇につれて着実に減少することが明らかに認められた。 6年生と中学2年生の 異性選択傾向には有意の差異を見出すことはできなかった。このようにして仮説Iは支持され たといえる。この結果に関連する従来の諸研究との比較がなされー性差の示唆をも含む若干の 考察が加えられた。
(2)特殊的規準(毎清掃タ)を用いた場合に異性に与える選択数は、小学校2年生から6年 生までは学年上昇につれてなだらかな減少を示したが、 6年生から中学2年生‑かけて、それ は有意の増加を示した。このようにして仮説Ⅱは完全には支持されなかった。この結果は一般 的規準を用いて得た結果と比較して考察され、従来の研究で得られた結果などを援用しての解 釈が試みられた。
(3)最後に、両結果の教育的意義と今後の研究が目ざすべき方向について考察がなされ、若 干の示唆が呈出された。
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