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子どもの道徳的判断におよぼす代理強化の組合せの 効果

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

子どもの道徳的判断におよぼす代理強化の組合せの 効果

著者 玉瀬 耕治, 野村 由紀子

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 28

号 1

ページ 233‑244

発行年 1979‑11‑15

その他のタイトル The Effects of Combinations of Vicarious Verbal Reinforcements upon Children's Moral Judgments

URL http://hdl.handle.net/10105/2481

(2)

琵闇tMms巴E^ 刺RIMMM胃は四El国IM!BfaKiiE Bull. Nara Univ. Educ, Vol.28, No.1 (cult. &soc), 1979

子どもの道徳的判断におよはす代理強化の組合せの効果

玉 瀬 耕 治   野 村 由紀子

(心理学教室)    (塩原市立耳成小学校) (昭和54年5月1日受理)

道徳的判断に関する研究は、従来、 2つの流れに沿って、互いに他を刺激しあいながら進めら れてきた。第1の流れは、 Piaget (1932)の発達段階説であり、子どもの道徳的判断は、一定の 順序に従って発達するという考えに立っている。本実験に関連する過失などについての道徳的判

断では、はぽ7歳を境にして、結果論的判断から動機論的判断へと移行することが指摘されてい る。その後Kohlberg (1969)は、 Piagetの段階説を成人にまで拡張して認知発達理論を提唱し、

3つの水準と6つの段階を設定して、その実証的研究を行なっている0

もう1つの流れは社会的学習理論にもとづくもので、 Bandura and McDonald (1963)の実験 に端を発している。彼らはPiaget の段階説を否定し、子どもの遺徳的判断は、社会的モデルや 強化によって形成されることを強調した。彼らの実験は次のようなものであった。被験者として 5歳から11歳までの子どもを用い、動機は良いが物質的損害の大きい物語と、動機は思いが物質 的損害の小さい物語を対にして、どちらがより悪いかを判断させた。 12対についてテストした結 果、どの年齢段階にも動概論的判断をする子どもも結果論的判断をする子どももいることがわか った。次にどちらかの判断に偏っている者だけを集めて、 3つの処理条件で実験した。第1群は、

自分の道徳的判断の方向と逆の判断を示す成人モデルを観察し、モデルの反応を模倣すると強化 された(二重強化)。第2群は、同様のモデルを観察するが、それを模倣しても強化されなかっ た(代理強化)。第3群は、モデルを観察せず、自分の道徳的判断と逆の判断をすると強化され た(直接強化)0

その結果、第1群と第2群では、子どもの判断はモデルと一致する方向に変化した。この実 験から、 Bandura らは、道徳的判断は単に年齢段階に依存して発現するものではなく、家族や 友人などの社会的モデルの影響で決定づけられると考えたのである。その後、 Cowan, Langer, Heavenrich, and Nathanson (1969)、土井(1976)、小坂(1965)、那須(1976)などが追試的 実験を行ない、 Bandura らを支持する結果を得ている。

遺徳的判断に関するこれら2つの流れの違いは、個体内の成熟的要因を重視するか、環境的要 因を重視するかの違いであって、実際にはどちらも無視できない道徳性発達の重要な要因である といえる。段階説においては、どのような段階を設定するか、そしてその段階がいかに普遍性を もつかを検証することが重要であり、社会的学習理論においては、社会的モデルや強化がより有 効に作用する条件の分析が必要であろう。本実験は、社会的学習理論の考えに従って、モデルが 有効に作用するための代理強化の条件について検討しようとするものである。

従来の実験では、代理強化が用いられる場合、モデルの反応に対して正の強化のみを与えるや り方が用いられている。モデルが、たとえば動機論的判断のみを行なう場合には、すべてが正反 応となり、強化は当然正の強化のみとなる。ところで、強化の与え方としては、 3つの型が考え られる。すなわち、 (1)正反応に対しては、 "正しい"とか"よろしい"などの正の強化を与え、

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(3)

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玉瀬 耕治・野村由紀子

誤反応には=まちがい=とか=だめです"などの負の強化を与える場合(RW)、 (2)正反応に対し てのみ正の強化を与え、誤反応には何も強化を与えない場合(RN)、および、 (3)誤反応に対して のみ負の強化を与え、正反応には何も強化を与えない場合(NW)である。

このような強化の与え方の違いは、強化の組合せの研究としてBuss, Braden, Orgel, and Buss (1956)以来、多くの実験が報告されている。直接強化事態においては、一般にRW≒NW>RN の関係が示されている(杉村、 1964),玉瀬・門田(1977)、 Tamase (1978)は言語条件づけ課 題で大学生を用いて代理強化、および二重強化事態における強化の組合せの効果を藷べ、これら の強化事態においても先の関係が認められることを示した。しかし、玉瀬・浜本(1978)が代理 強化事態で小学生についてさらに検討したところ、 RW>NW幸RNの関係が認められた。この ように、いずれの場合においてもRWはつねに優れているが、 RNとNWの関係については 断定できない。

子どもの道徳的判断の形成に関連して、このような酎ヒの組合せの問題をとりあげることは、

親や教師が子どもの行為に称賛や叱責を与えるさいに、どのような与え方をするのが効果的かを 考える上で興味深いものであろう,)強化の事態としては、直接強化、代理酎ヒ、および二重強化 の事態が考えられるので(玉瀕、 1977)、そのいずれの事態についても検討する必要があるが、

本実験では代理強化事態における強化の組合せについて検討する。

方   法

被験者 奈良市立烏見小学校1年生6クラスの児童208名(男114名、女94名)が実験に参加し た。これらの被験者は、クラスごとにRW群、 RN群、またはNW群のいずれかに割り当て られた。このうち、オペラントテストで動機論的判断得点が2‑6点の者に対して主な統計的分 析を行なった。統計的に分析された被験者はRW群(男23名、女13名)、 RN群(男17名、女19 令)、 NW 群(男20名、女16名)とも男女合計は36名であったO

材料 本実験で用いた物語は、動機は良いが物質的損害の大きい物語と、動機は悪いが物矧拘 損害の小さい物語を対にした"過失"に関する物語50対である。このうち、 18対は小坂(1965) が用いた物語を修正したものであり、残り32対は新しく作成したものである(付表1)。オペラ

ントテストとポストテストで同一の10対を用い、実験的処理段階ではモデル用20対、被験者用20 対の40対を使用した。各群の条件を統一するために、物語はすべて実験者がテープに録音した。

物語に登場する名前は、 "たかし"、 "ゆかり"など3字からなるもの、男女各10個ずつを用い、

同一の対は‑度しか用いなかった。

物語をわかりやすくするために、動機に関する部分と結果に関する部分をそれぞれ彩色画に描 いた絵カード50対を用いた。このうち18対は土井(1976)によって使用されたものであり、他の 32対は新しく作製したものであるD

モデルテープは、小学校3年生の児童があらかじめ定められた反応をし、その反応に対して実

験者が強化を与えたものを用いた。モデルの反応は20試行あり、 5試行ごとに2、 3、 4、 5個

の動機論的判断を行なったものである。すなわち、試行とともに動機論的判断を漸増する様式を

用いている,,テープは6種斬用意され、そのうち3本は男児モデル、残りの3本は女児モデルで

あった,つ モデルテープの内容は、 3つの実験条件にあわせて次のように作製された. rwm¥iで

は、モデルの動機論的判断に対して実験者が"そうです"と言ってモデルと同様な選択理由を練

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子どもの道徳的判断におよはす代理強化の組合せの効果

よけいにわるいことをしたとおもうほうのひと の( )に×をつけてください。

1. ( )まさこさん,  ( )まゆみさん 2‑ ( )よしこさん,  ( )かずよさん 3‑ ( )まさおさん,  ( )ゆたかさん 4‑ ( )ゆかりさん,  ( )みちょきん 5‑ ( )さゆりさん,  ( )ひろみさん

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図1 反応用紙の一例

り返し、結果論的判断に対しては"ちがいます"と言って正答の名前とその選択理由を述べた。

RN群用では、モデルの動機論的判断に対してのみ=そうです"と言って選択理由を繰り返した。

NW群用では、モデルの結果論的判断に対してのみ"ちがいます"と言って正答の名前とその 選択理由を述べた。

被験者の反応用として、 13×18cmの大きさの6枚綴りの冊子を用意した。冊子の表紙には、

組、氏名、および性別を書くようになっており、 2枚目からは、図1に示したような反応用紙に なっている。

手続き 実験は、実験者と補助者によってクラスごとに集団で、次の順序で実施された。

(1)オペラントテスト 被験者の道徳的判断の方向を調べるために、 10対の物語を用いた。机上 に鉛筆だけを出させて次のように教示した。

‖これから、みなさんに絵を見せながら、短いお話をします。このお話には、 2人の子ども が出てきます。そして、 2人とも悪いことをしてしまいました。みなさんはよくお話を聞いて、

2人のうちで余計に惑いことをしたと思う方の人の( )に×をつけてください。わかりまし たか。それでは、 1枚めくってください。 1番めのところに、 ̀まきこさん'、 ̀まゆみさん'と 書いていますね。一番上の文を読みます。 ̀よけいにわるいことをしたとおもうほうのひとの

( )に×をつけてください。'いいですね。それでは、お話をします。"

たとえば、 1番については、まず1枚目の絵を見せ、 "まさこさんは、右投げをして遊んでい て、窓ガラスを1枚わりました。Mとテープで説明するo次に2枚目の絵を見せ、 "まゆみさんは、

ガラスふきをしていて、窓ガラスを2枚わりました。"とテープで説明する。最後に両方の絵を 見せ、 "まさこさんとまゆみさんのどちらの方がよけいに悪いことをしたでしょうか。ンくをつけ てください。 ‑‑・できた人は手を挙げてください。"と口頭で教示する。

(2)実験的処理 この段階では、モデル用20対、被験者用20対の合計40対の物語を用いた。モデ ルテープを聞かせる前に、次の教示を与えた。 "今度は、みなさんと同じ小学校1年生の男の子

(女の子)が答えたテープを開いてもらいます。=

テープの中でのモデル‑の教示は次のとおりであった‑,

"これから短いお話をします。このお話には、 2人の子どもが出てきます。そして2人とも 悪いことをしてしまいました。あなたは、どちらがよけいに悪いことをしたと思いますか。そ う思う人の名前と、どうして思ったのかを言ってください。"

このモデル‑の教示を聞かせた後、再び被験者に、 "男の子(女の子)の次には、みなさんに

答えてもらいますから、よく聞いていてください。,"と教示したo モデルが5試行(5つの物語

対)を行なうと、次には被験者が5試行を行ない、またモデルが5試行を行なうと、次には被験

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玉瀬 耕冶・野村由紀子

者が5試行を行なった。モデルと被験者の試行の交番は合計4回行なった。このような手続きの 有効性については玉瀬・前田(1974)によって検討されている。

(3)ポストテスト 2週間後にポストテストを行なった。ここでは、オペラントテストで用いた 10対の物語を使用し、教示も同様の方法で行なった。

結   果

組合せの効果 各試行ごとに動機論的判断によって名前を選択したとみなされる場合に1点を 与え、 10試行ごとの動機論的判断得点を算出した。得点の分布は、低得点(0‑3)の者が多 く、高得点(8‑10)の者は少なかった。このうち、オペラントテストにおける得点が2点から 6点までの者を選んで以下の分析を行なった。図2は、男児モデルと女児モデルをこみにした2 クラスずつからなる各群の平均動機論的判断得点を示したものである。オペラントテストにおけ る3群の成績について分散分析を行なったところ、 F(2/105)‑0.64で有意ではなかった。これ は当然のことながら3群が等質であることを示している。次に、実験的処理の効果を検討するた め、すべての試行ブロックを含む3×4の分散分析を行なった。豪1はその結果を示したもので

」る‑.

この表でわかるように、組合せの主効果、試行の主効果、および組合せと試行の交互作用は、

いずれも1%水準で有意であったO

さらに、分散分析の誤差項を用いて、個々の平均値問の差についてt検定した主な結果は次の とおりであった。組合せの主効果は、 RW群とRN群がともにNW群よりも良いことを示し ている(それぞれf‑4.39、 f‑3.91、いずれもd/‑105)。試行の主効果は、相隣りあうどの試 行ブロックでも有意に成績が上昇していることを示している(順にi‑6.00、 f‑8.01、 f‑3.41、

いずれも rf/‑315)。組合せと試行の交互作用については次のとおりであった。各群ごとにみる

刺   代  

̲ 論   的   判   断   柑

・  

・ .

( 2週Ill】) オペラントテスト     習相i r,柑2

図2 各群の平均動機論的判断得点

蝣1iストテスト

(6)

子どもの道徳的判断におよぽす代理強化の組合せの効果

237

と、 RW群とRN群では習得2ブロックまではブロックごとに成績が有意に上昇し、習得2か らポストテストにかけては差が認められなかったo NW群では、オペラントテストと習得1の 問には差がなく、その後の各ブロック間では有意差が認められた(いずれもMSe‑3.76、 df‑

315を通用)。また、試行ブロックごとに3群の成績を比べてみると、習得1ではRW群とRN 群の問には差がなく(f‑1.74、 d/‑420)、これら2群とNW群との問に有意差が認められた (順にf‑5.00、 *‑3.21、いずれも 4/‑420),習得2およびポストテストにおいても習得1と 同様であった。すなわちRW群と RN群は、全試行ブロックを通じて同じような変化を示し、

NW 群よりも成績が良かったといえるO これは、従来の結果と一致していないので、後に考察 する。

表1平均動機論的判断得点に関する分散分析

C 'IV' :Jl     ‑Ji

被 験者 問 組合 せ軸

」 *

被験者 内 試 行(B)

A x B

,;"! ^  ォー

1817. 23 322. 35 1494. 88

2775. 75 1403. 97 187. 41 1184. 37

MS

ll. 36**

124. 47**

8. 31**

** P<.Ol

モデルの性と被験者の性 6クラスの被験者のうち、 3クラスは男児モデルのテープを聞き、

残り3クラスは女児モデルのテ‑プを聞いたo表2は、モデルの性および被験者の性別に、各群 のオペラントテストからポストテストまでの平均増加量を示したものである。この表について、

3 (組合せ)×2(モデルの性)×2(被験者の性)の分散分析を行なったところ、組合せの主効果 (F‑6.29、 df‑2/%、 P<.01)、および被験者の性(F‑4.08、 #・‑1/96、 P<.05)が有意であ った。しかしモデルの性およびすべての交互作用はいずれも有意にはならなかった。被験者の性 については、表2から明らかなように女子の方が男子よりも成績が良いことを示している。

表2 モデルの性別、被験者の性別平均増加量

男 子 t 女 子 t 全 体

男モ デル

女 モ デ ル

RW RN4.30 4.675.67 6.004.62 5.45 1 NW2.084.223.00

3. 55   5. 32   4. 34

RW    4. 69 RN ‑ 5.13

6. 70   5. 57 5. 83   5. 43

NW    3. 75   3. 00   3.40

i 4.55  5.35

全   体   4. 03   5. 33

(7)

238 玉瀬 新治・野村由紀子

低得点者の分析 以上の分析から除かれたオペラントテストにおける高得点者(7‑10点)忠 よび低得点者(0、 1点)について調べてみた。高得点者の場合は、各群とも成績は横ばい状態 で有意な変化はみられなかった。低得点者の場合は、 3群とも習得2の段階から有意な成績の上 昇を示しており、成績はRN群、 RW群、 NW群の順であった。各群のオペラントテストから ポストテストへの平均増加量は、 RW‑5.60(n‑15)、 RN‑6.20(rt‑20)、 NW‑2.53(n‑17) であった。これらの値について分散分析を行なったところF (2/49) ‑4.37で5%水準で有意で あった。さらに単純効果の検定を行なったところ、 RW群とRN群の問には差がなく(f‑0.44、

d/‑49)、それらの2群とNW群の問に有意差が認められた(順に*‑2.19、 f‑2.82、いずれ も#蝣‑49),これらの結果は先の分析結果と一致しており、低得点者の場合でも同様な代理強化 の組合せの効果がみられることを示している。

議   論

本実験では、モデルの反応を聞かせることによって、 3群とも有意に成績が上昇し、 2週間後 のポストテストでもその成績が維持されていることが明らかとなった。これは社会的学習理論の 立場に立って行なわれた従来の研究を支持するものである。成績の変化を査定するのに、 Ban‑

dura and McDonald (1963)は実験的処理後、ただちにポストテストを行なっているが、小坂 (1965)は1カ月後、土井(1976)と中間(1966)は10週間後、 Cowan, Langer, Heavenrich and Nathanson (1969)と那須(1976)は2週間後にポストテストまたはフォローアップテスト

を行ない、いずれも処理の効果が維持されていることを示しているo Lたがって、実験的処理の 効果はかなり持続的なものであるといえよう。

本実験の主な関心事である代理強化の組合せの効果については、 RW ≒RN>NW という結果 が得られた。これは、弁別学習や言語条件づけ課題で得られてきた従来のRW÷NW>RNとい う結果とは異なるものである。 RW群が優れていることは期待されたとおりであり、これは正と 負の強化をともに用いた方が、どちらか一方を用いた場合よりも情報的にも動機づけ的にも有利 であることから説明できる(Tamase, 1978)。しかし、木実験の場合は、 Wが必ずしも有効に作 用していない。

この原因については、方法論的な問題として2つのことが考えられる。まず第1に、モデルに 対して与えられたRとWの回数が異なっていた。すなわち、 20試行中Rは14回与えられ、 W

は6回しか与えられなかった。これは、モデルの呈示手続きとして、玉東・浜本(1970)の漸増 的方式に従って、 5試行ごとに、 2、 3、 4、 5個とモデルの動機論的判断を増やしたために生 じたことである。したがって、全体的にはRがより強く働く可能性があったかもしれない。し かし、習得の前半10試行(習得1)においては、 RW群でもNW群でも5回ずつRまたはW が与えられている。にもかかわらず、この段階ですでに両群の成績には有意差が認められる。そ れゆえ、強化回数の差以外にもWが有効に作用しなかった原因があると考えられる。

第2に、実験者が与えた理由づけの問題があげられる。本実験では、強化とともに実験者が理

由を述べたが、これは小坂(1965)の方法にならったものである。 RN群とNW群では、その

理由の与え方に違いがあった。 RN群では、モデルが動機論的判断をした時に、実験者は正の強

化とともにモデルが述べた理由を繰り返した。したがって、被験者は続けて2回同じ判断と理由

を聞いたことになる。他方、 NW群では、モデルが結果論的判断をした時に、実験者は負の強

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子どもの道徳的判断におよばす代ヲ・1̲順化の組合せの効果

239

化とモデルと反対の、冊工および理由を述べた,したがって、被験者は一度に両方の判断と理由 を聞いたことになる。

このように、 NW群の場合は、 2つの判断および理由を聞くことによって、 "ちがいます"と いう負の強化として与えられたWの機能が弱められたのではないかと思われるo また、より年 長の子どもや成人の場合であれば、このような理由づけを有効に利用できると考えられるが、小 学1年生の被験者にとっては、これらの酎tiづけが判断に混乱を生じさせたかもしれない。この 点については、代理酎ヒと理由づけを分離してさらに検討してみる必要があろうO

以上のことから、本実験の結果が、代理強化の組合せの効果だけを反映しているかどうかはま だ検討を要するといえる。ところで、実態調査的研究において、玉瀬(1979)は、親の称賛・叱 責の類型をRW型(よくはめよく叱る)、 RN型(よくはめるが叱らない)、およびNW型(よ く叱るがはめない)に分けて、子どもの学力向上要因との関係を調べている。興味深い点は、そ の結果が木実験と類似していることであるOすなわち、親の称賛・叱責類型がRW型とRN勲 の場合には、 NW型の場合に比べて手どもの学力向上要因がよい状態にあるといえる。親の称 賛・叱責と子どもの行動との随伴関係は必ずしも一貫していないし、この研究は、いわば直接強 化に関するものであるので、本実験と対応づけるのは適切でないが、今後さらに、このような実 際的問題との関連づけを考えてみることは意義あることと思われる。

要   約

小学校1年生6クラスの被験者に、動機は良いが物質的損害が大きい物語と、動機は惑いが物 質的損害が小さい物語を対にした…過失"に関する遺徳的判断課題を与えた。代理強化の組合せ の効果を調べるために、オペラント10試行の後、モデルの反応に3つの条件で代理強化が与えら れたテ‑プを聞かせた。つモデルの反応は20試行中、 5試行ごとに、 2、 3、 4、 5個と動機論的 判断を漸増したものであった。 RW群用のテープでは、モデルの動機論的判断に"そうです"と いう正の強化を与え、理由を繰り返すっ結果論的判断には"ちがいます''という負の強化を与え、

正答と理由を述べるo RN群用では、正の強化と理由だけを述べる。 NW群用では、負の強化と 正答およびその理由だけを述べる。 5試行ごとにモデルと被験者が反応を交替して、それぞれ20 試行を行なった0 2週間後にオペラント試行と同一課題でポストテストを行なったo

主な結果は次のとおりである。. (1)3群とも成績は有意に増加し、モデル呈示の効果が認められ た(2)RW群とRN郡の問には差がなく、両群はNW群よりも有意に成績が良かった。 (3)モデ ルの性および代理強化の条件にかかわらず、女児の成績は男児よりも良かったc (4)ほとんど結果 論的判断しかしなかった者でも、モデル呈示によって動機論的判断ができるようになったrっ結果 (2)について方法論的問題が議論された。

引 用 文 献

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Cowan, P.AリLanger, J., Heavenrich, J., & Nathanson, M. 1969 Social learning and Piaget's cognitive

(9)

240

玉瀬 耕治・野村由紀子

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玉瀬耕治・前田和子1974 言語条件づけ事態における観察学習 奈良教育大学教育研究所紀要10, 29‑41.

玉瀬耕治・門田恵子1977 言語条件づけ課題における強化の組合わせ 奈良教育大学紀要 26, 1, 103‑

no.

[付記]本研究に御協力いただいた奈良市立烏見小学校、ならびに絵カードを作製断った本学学生 安倍美 智子さんに心から感謝します。

付表1道 徳 的 判 断 課 題

<オペラントテス 1(A)まきこさんは、

(ち)まゆみさんは、

2仏)よしこきんは、

(B)かずよさんは、

3(A)まきおさんは、

(B)ゆたかさんは、

した。

4仏)ゆかりさんは、

(B)みちょきんは、

5㈱ さゆりさんは、

ました。

(B)ひろみさんは、

6(A)よしおさんは、

た。

(BJ しげるさんは、

7仏)たかしさんは、

(B)さとるさんは、

8(A)みゆきさんは、

した。

(B)めぐみさんは、

トおよびポストテスト用>

石投げをして遊んでいて、窓ガラスを1枚わりました。

ガラスふきをしていて、窓ガラスを2枚わりました。

ハンカチにアイロンをあてていて、 ‑ンカチをたくさんこがしました。

アイロンでいたずらをしていて、ハンカチを少しこかしましたU

おばあさんの荷物を持ってあげていて、ころんで中のものをこわしました。

駅の待合室で走りまわっていて、おばあさんのふろしき包みを落として少し汚しま スーパーにお使いに行って、ころんでたまごを10個わりました。

たまごで遊んでいて、たまごを1個わりました。

食事の時、きらいなおかずがはいったお皿をわざとひっくり返して、ひびをいかせ 食事の後かたづけをしていて、お皿を3枚わりました。

図工の時間に水をかえようとして立った時に、隣りの子の絵をたくさんぬらしまし 図工の時間隣りの子が横を向いている間に、絵のはしに少し落書きしました。

いたずらをしていて、しょうじに小さな穴をあけました。

お掃除をしていて、しょうじをたくさん破りました。

おかあさんが洗たく物を干しているのを手伝っていて、さおを落として10枚汚しま

庭でポール遊びをしていて、干していた洗たく物にあてて、 1枚汚しました。

(10)

子どもの道徳的判断におよばす代理強化の組合せの効果 241 gLAJ まことんさは、マッチでいたずらをしていて、板を1枚焼きました。

(B)おきむさんは、おかあさんのお手伝で紙くずを燃やそうとして、側にあった板を3枚焼きました。

10(A)ひろしさんは、教室のお掃除をしていた時、くぎに服をひっかけて大きな穴をあけました。

tB)つとむさんは、教室の中を走りまわって遊んでいた時、くぎに服をひっかけて小さな穴をあけまし た。

<習得期・モデル用>

1(A)ゆかりさんは、

(B)ひろみさんは、

2(A)たかしさんは、

(ち)おきむさんは、

3(A)よしこさんは、

(B)みちよさんは、

4(A)よしおさんは、

(B)さとるさんは、

しました。

5㈹ まきこさんは、

(B)かずよさんは、

6(A)よしおさんは、

(B)おさむさんは、

7㈱ まことさんは、

ました。

(B)ゆたかさんは、

8(A)よしこさんは、

(B)ひろみさんは、

食事のときけんかをして、お皿を1枚わりました。

お手伝をしていてお皿を5枚わりました。

おとうさんのお手伝でペンキをぬっていて、服をたくさん汚しました。

おとうさんがペンキをぬっているところであばれていて、服を少し汚しました。

体育の時間にボール投げをしていて、教室のガラスを2枚わりました0 遊び時間に教室の中でボール投げをしていて、ガラスを1枚わりました。

かさを振りまわして遊んでいて、小さな穴をあけました。

友だちをかさに入れてあげていて、帰る途中でころび、かさをめちゃめちゃにこわ 教室のお掃除をしていて、花ぴんをこなごなにわりました。

教室の中でけんかをしていて、花ぴんにひびをいかせました。

机の上をかたづけていて、ラジオを落とし、めちゃめちゃにこわしました。

ラジオで遊んでいて、少しこわしました。

お使いに行ってしょうゆのぴんを取ろうとして、しょうゆのぴんを2本倒してわり 店の中で鬼ごっこをしていて、しょうゆのぴんを1本わりました。

台所であばれていて、たまごを落として1個わりました。

おかあさんにたまご焼きを作ってあげようとして、冷蔵庫からたまごを出すときに、

たまごを3個わりました。

9㈱ たかしさんは、

いました。

(B)つとむさんは、

10(A)さゆりさんは、

した。

(B)まゆみさんは、

ll(4 みゆきさんは, (B)みちよさんは、

12(A)ひろしさんは、

(ち)さとるさんは、

近所の子のお守りをしていて、その子のプラモデルをめちゃめちゃにつぶしてしま 弟とプラモデルの取りあいをしていて、少しこわしてしまいました。

お習字の時、友だちにすみを分けてあげようとして、たたみの上をたくさん汚しま お習字の時、あばれていて、たたみの上をすみで少し汚しました。

食事の時、よそ見をしていてコップを1つわりました。

食事のあとかたづけをしていてコップを落とし、 5つわりました。

友だちの飛行機で勝手に遊んでいて、少しこわしました。

友だちが飛行機を作るのを手伝っていて、つまづいてその上にころびめちゃめちゃ にこわしました。

13(A)まことさんは、

(B)しげるさんは、

14(A)さゆりさんは、

(B)かずよさんは、

15(A)ゆかりさんは、

lB)まゆみさんは、

16(A)よしおさんは、

(ち)ゆたかさんは、

17W よしこさんは、

(B)まゆみさんは、

た。

本をかたづけようとして、本をたくさん破りました。

本に落書きをしていて、本を少し破りました。

おとうさんを困らせようとして大事にしていた絵を1枚すてました。

お掃除をしていて、おとうさんが大事にしていた絵を3枚すてました0

おかあさんのお手伝でアイロンをかけていた時、自分の服をたくさんこがしました。

おかあさんの留守にアイロンでいたずらをしていて、自分の服を少しこがしました。

金魚ばちの水をかえようとして、金魚ばちを2つわりました。

石を投げて金魚ばちを1つわりました。

はさみを持って遊んでいて、自分の服に小さな穴をあけました。

おかあさんのお手伝で布を切っていて、まちがって自分の服に大きな穴をあけまし

(11)

18仏)たかしさんは、

(B)しげるさんは、

19(瑚 まさおさんは、

枚わりました。

(B)つとむさんは、

20(瑚 ゆかりさんは、

(B)かずよさんは、

玉瀬 耕治・野村由紀子

水でっほうでいたずらをしていて、通りかかった人の服を少しぬらしましたO お手伝で庭に水をまいていて、通りかかった人の服をたくさんぬらしました。

友だちにレコードを返そうとして、友だちの家に行く途中、ころんでレコードを2 弟とレコードのとりあいをしていて、レコードを1枚わりました。

庭の木にぶらさがって遊んでいて、木の枝を1本折りました。

庭の木の手入れをしていて、木の枝を2本折りました。

<習得期・被験者用>

1(A)まきおさんは、

(ち)しげるさんは、

2(A)ひろしさんは、

(B)ゆたかさんは、

3(A みゆききんは、

(B)まゆみさんは、

4仏)まことさんは、

(B)つとむさんは、

5㈲ さゆりさんは、

(B)めぐみさんは、

6W ゆかりさんは、

(B)めぐみさんは、

7(A)まきおきんは、

(B)さとるさんは、

8(A)まきこさんは、

(B)みちょきんは、

9仏)みゆきさんは、

(B)かずよさんは、

・>‑

10(A)ひろしさんは、

しました。

(B)しげるさんは, 11刷 まさこさんは、

しました。

(B)ひろみさんは、

12(瑚 たかしさんは、

(B)ゆたかさんは、

食事のときけんかをして、コップを1つわりました。

お手伝をしていて、コップを5つわりました。

絵の具をおもちゃにして遊んでいて、服を少し汚しました。

絵をかいていて、服をたくさん汚しました。

体育の時間にボール運動をしていて、花だんの花を5本折りました。

道路でボール遊びをしていて、隣りの家の花を1本折りました.

かきでチャンバラごっこをしていて、かさに小さな穴をあけました。

おとうさんを迎えに行く途中、ころんでかさをめちゃめちゃにこわしました。

教室の中で走りまわって遊んでいて、花ぴんにひびをいかせました。

教室の花ぴんの水を取りかえようとして、花ぴんをこなごなにわりました。

机の上にのって遊んでいて、時計を落として少しこわしました。

机の上をかたづけていて、時計を落としてめちゃめちゃにこわしました。

お使いでジュースを買いにいって帰る途中落として3本わりました。

弟とジュースの取りあいをしていて、落とし、 1本わりました。

たまごで遊んでいて、たまごを1個わりました。

お使いの帰りにころんで、たまごを10個わりました。

妹と人形の取りあいをしていて、人形の手を1つ取ってしまいました0

近所の子のお守りをしていて、その子の人形をめちゃめちゃにつぶしてしまいまし 机の上をかたづけていて、インクぴんをひっくり返してテーブルかけをたくさん汚

インクぴんで遊んでいて、テーブルかけを少し汚しました。

お客様に出すために、お盆の上にコップをのせて運んでいて、つまづいて5つこわ 戸棚からお菓子を取ろうとして、側にあったコップを1つこわしました。

友だちのプラモデルで勝手に遊んでいて、少しこわしました。

友だちがプラモデルを作るのを手伝っていて、つまづいてその上にころび、めちゃ めちゃにこわしました。

13(瑚 よしこさんは、

(B)めぐみさんは、

14W まさおさんは、

(B)おさむさんは、

15(4 よしおさんは、

ました。

(B)つとむさんは、

した。

16(A)まきこさんは、

(B)めぐみさんは、

17(A)みゆきさんは、

図書館‑みんなの本を返しに行く時に、落として5冊汚しました。

本を投げて遊んでいて、 1冊汚しましたo

いたずらをしていて、かべにかけてあった絵を1枚破りました。

お掃除をしていて、かべにかけてあった絵を2枚破りました。

おかあさんの留守にアイロンでいたずらをしていて、おとうさんの服を少しこがし おかあさんのお手伝でアイロンをかけていて、おとうさんの服をたくさんこがしま 石を投げて花ぴんを1つこわしました。

お手伝をしていて、花ぴんを落として2つこわしました。

おかあさんのお手伝で布を切っていて、スカートに大きな穴をあけました。

(12)

(B)ひろみさんは、

18(A)ひろしさんは、

(B)おきむさんは、

19仏)さゆりさんは、

(B)みちょきんは、

20(A)まことさんは、

(B)さとるさんは、

子どもの道徳的判断におよばす代理強化の組合せの効果 はさみで遊んでいて、スカートを少し切りました。

ホースでいたずらをしていて、おとうさんの自動車の中を少しぬらしました。

おとうさんの自動車を洗っていて、中をびしょぬれにしました。

お掃除をしていて、レコードを2枚わりましたO 部屋の中であばれていて、レコードを1枚わりました。

花に水をやっていて花を2本折りました。

公園のお花畑の中を走りまわっていて、花を1本折りました。

243

(13)

244

The Effects of Combinations of Vicarious Verbal Reinforcements upon Children's Moral Judgments

Koji Tamase

Department of Psychology, Nora University of Education, Nara, Japan and

Yukiko Nomura

Miminashi Elementary School, Nara, Japan (Received May 1, 1979)

To examine the effects of combinations of vicarious verbal reinforcements upon child‑

ren's moral judgments, six classes of first graders were given a Piageトtype dilemma problem under one of three combinations of vicarious verbal reinforcements. Each duenlma problem consisted of a pair of two stories; one story involved good intention and large negative consequence, and the other bad intention and small negative consequence. A total 50 problems, 10 for the operant task, 20 for the acquisition task of the subjects, and 20 for the acquisition task of the model, were constructed. Vicarious reinforcements ,were given by the use of taped models in which the model's intentional judgments gradully increased through 20 trials. In the RighトWrong (RW) modeled tape the experimenter reinforced the model's intentional judgment by saying HYes" (right) with the reason of his judgment, and reinforced his consequential judgment by saying HNo" (wrong) with the correction of his answer. In the RighトNothing (RN) modeled tape the experimenter

reinforced only the model's intentional judgment by saying …Yes (right) with the reason

of his judgment. In the Nothing‑Wrong (NW) modeled tape the experimenter reinforced only the model's consequential judgment by saying HNo" with the correction of his answer.

The experiment was performed in every classroom. The moral judgment stones by a taperecorder were presented with their pictures which drew the parts of intention and consequence. The subjects were required to choose a suitable name of the two actors of the stories and to check the name on the answer sheet. After 10 operant trials the subjects listened to 5 trials of the modeled tapes and then 5 trials were required to respond. Five models and 5 subjects acquisition trials were alternately run four times. Post test was administered two weeks after the completion of the acquisition trials.

The statisitical analysis was done for the data of the subjects who showed intentional

judgments 2 to 6 times during the operant trials. The main results were as follows. (1)

Although the number of the intentional judgments increased with trials in all groups, the

RW and the RN groups were superior to the NVV group, the former two being not

different from each other. (2) Girls performed better than boys in all groups. The results

were discussed with reference to the procedure of vicarious reinforcement.

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