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人間の弁別学習における過剰訓練の役割(2)

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(1)

人間の弁別学習における過剰訓練の役割(2)

著者 杉村 健

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

16

1

ページ 171‑193

発行年 1968‑02‑29

その他のタイトル THE ROLE OF OVERTRAINING IN HUMAN DISCRIMINATION LEARNING (2)

URL http://hdl.handle.net/10105/3282

(2)

人間の弁別学習における過剰訓練の役割(2)

r‑  it      二

(心理学教室)

先の論文(杉村、 1967a)において、先行弁別学習の訓練量ないし過剰訓練が弁別の移行にお よはす効果について、移行型、 2つの弁別問題の間の時間間隔、知能および年令などの諸変数と の関連から、従釆の実験的研究を概括し、問題点を示唆した。その後現在に至るまで、数多くの 人間を用いた弁別移行に関する実験が報告されており、そのうちのいくつかのものが先行弁別の 訓練量の問題を扱っている。そこで本論文においては,最初にそれらの実験を紹介し、次に理論 的な問題をまとめ、最後に若干の考察を加えることにする。

最近の実験的研究

過剰訓練効果に関する研究 先行過剰訓練の効果を扱った最近の実験を通覧して気づくこと は、後に述べるZeaman and House (1963)の観察反応説にもとづく研究が多いことである。

それはこの理論が過剰訓練効果を予言しうるからである。これに対してKendler and Kendler (1962)の媒介反応説にもとづく研究は少ないoおそらくその理論が過剰訓練効果を直接扱って いないからであろう。しかし過剰訓練以外の弁別移行や概念形成の研究に対しては、かなりの影 響を与えていることはいうまでもない。ここでは最近の研究を上の2つの理論にかかわりのある

もの、およびTighe and Tighe, Capehart ら、 Cross らの5つに分けてみた。厳密にいえ ば、何れかユつの理論のみに関係しているということはほとんどなく、区別が困難な場合がある ので、これはあくまでも便宜的な分類である。

(1) Zeaman and House説に関連する研究 Eimasは正常児を被験者とする4つの実 験を発表した。最初の実験(Eimas, 1966a)は、色、形、位置の3次元からなる2選択の弁別問 塩において、適切な次元が位置の場合と色の場合のそれぞれについて、不適切の次元が1つのと きと2つのとき、および先行弁別学習が基準までか100回の過剰訓練までかの8条件が作られたO 被験者は平均年令が92.6か月の児童86名であった。逆転学習の結果は表1に示したように、全

表1 Eimas (1966a)の結果:

逆転学習における誤反応(逆対敬)

不適切次元数    基準(9/10)    十100試行

(,'・蝣蝣廻す別

色弁別

rH OJ iI PJ

i I  LO  C M  IO

co<N ^r Ol <O CO N MGO CO H COn   k i   m

*

体としてみると、過剰訓練後および位置弁別における逆転移行が有意に速かったoまた、過剰訓 練と弁別問題の交互作用が有意に近く、このことは位置弁別においては過剰訓練の促進効果がな いが、色弁別では特に不適切次元が2のときに促進効果のあることを示唆している。位置弁別の

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結果については、子どもにとって位置が優勢な次元であるならば、過剰訓練を加えても媒介反応 が強まらないので逆転学習がよくならないと解釈した。

次の論文(Eimas, 1966b)では、平均68.2か月と94.6か月の子どもを用いて、 2段階説に おける媒介反応の性質を検討したo色と形からなる2次元の同時弁別問題が1日25試行中20回正 答の基準までか、それに達してから100試行の過剰訓練を加えるまで学習させられ、その後、先 行弁別刺激とは異なる色と形からなる移行弁別学習が行なわれた。このように2つの弁別問題に おいて異なる刺激価が用いられたのは、道具的反応の転移、新奇性、および部分強化の影響を除 いて純粋に媒介反応のみの転移効果を測定しようとしたからである。表2にもとづいた分散分析 の結果は、移行型と過剰訓練の主効果は有意であったが、年令差および年令に関連する交互作用 は有意にならなかった。この結果から彼は、媒介反応の内容として内的な言語命名を考え、それ が使用できる能力が年令によって異なるという Kendler and Kendler (1962)の立場は支持 できないこと、および動物による結果(Shepp & Eimas, 1964)でも次元内移行が有利である

ことから、発達または年令との関係を考慮しない非言語的肢体を考えるべきであると主張した。

さらにEimas (1966c)は、 5才と8才の子どもを用いて、次元内、次元外および逆転の3つ の移行弁別の成績を比較した。その結果、一般に次元内移行は次元外移行よりもよく、逆転移行 は基準群でも過剰訓練群でも次元内移行と異ならなかった。また、基準群では逆転移行は次元外

表2 Eimas (1969b)の結果:

弁別移行における誤反応(逆対敬)

移行型   基準(20/25)   +100試行

.;;!i W

2 年生

次元内       3.96       2.60 次元外      21.30     16.21 次元内       4.22       2.43 次元外      13.82      10.87

移行よりよいが、過剰訓練群では両移行に差がないことを示した。もっとも新しい論文(Eimas, 1967)においては、選択移行問題を用いて年令(2年生と4年生)、不適切な刺激の性質および過 剰訓練の効果が検討された。その結果は媒介過程の利用と年令との関係を仮定しない2段階説を 支持するものであったが、類似の弁別問題において年令との関係が示されているので(Kendler

& Kendler, 1966) 、児童の弁別学習における媒介過程は2つの異なる面があることを示唆して いる。すなわち、発達とは独立な知覚的反応と発達に関係する内的言語反応とがあり、何れの提 体が生じるかその条件分析を行なうことが残された問題であると述べている。

精神薄弱児を用いたCampioneたち(1965)の研究は、逆転移行が媒介反応だけの過剰訓練 によって促進されることを、次のような実験計画によって実証した。色と形からなる2次元の同 時弁別問題を100試行過剰訓練させてから、 1群は先行弁別とは刺激価が異なる弁別問題を用い て次元内移行させ、もう1群は同様の弁別問題で次元外移行をさせた。そのあとで両群ともに移 行問題の逆転移行を行なった。統制群は先行弁別学習(過剰訓練なし)に続いてその逆転移行のみ が与えられた。以上のような実験計画とその結果は表3に示きれている。これによると、次元内 移行後の逆転学習がもっとも速く、次元外移行後のそれがもっとも遅いことがわかる(表の最右 らん) 。この実験においては、逆転を要求きれる道具的反応については何らの過剰訓練が加えら れていないので、過剰訓練が道具的反応の逆転を促進したという可能性はまったくない。それ

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故、次元内移行後の逆転がよいのは、先行弁別、過剰訓練、次元内移行および逆転移行のすべて にわたって、同一の観察反応が適切であったことによると解釈された0

Heal (1966)は正常な幼児と成人の精神薄弱者を用いて、弁別移行におよぼす手がかりの値、

手がかりの新奇性および過剰訓練の効果を調べた。主な結果は次元内移行が次元外移行よりも有 意に速く、次元外移行は過剰訓練(基準+40試行)によって妨害されるが、次元内移行は促進さ れるということであり、ともに弁別学習の2段階説を支持するものとして解釈された。

表3 Campioneら(1965)の実験計画と結果(試行数)

第1段階  第2段階  第3段階  第4段階 逆 転 原学習(10.15)       逆転(20.02) 次元内 原学習(7.99) 100回過剰 次元内(5.18)逆転(9.32) 次元外 原学習( 6.44) 100回過剰 次元外(ll.24) 逆転(25.61)

Shepp and Turrisi (1966b)は精神年令の平均が3才8か月の精神薄弱児に、色・形の2次元 の同時弁別問題を10回申9回正答の基準と、それに達してから100%および300%の過剰訓練を行 なった。その結果、基準群と100%群では次元内移行と次元外移行の速さに差がないが、 300%の 過剰訓練では次元内移行が有意によい成績を示した。このような訓練量と移行型の交互作用は Zeaman and House説に完全に一致するものであった。

(2) Kendler and Kendler 説に関連する研究  まず彼ら白身の研究をあげなくては ならない Kendler and Kendler (1966)は媒介過程の存在が年令に関係するのか、それとも 先行弁別の訓練量に関係するのかを検討した。保育所児(平均年令55.1か月)と3年生(106.6か 月)に明暗と大ききの2次元からなる選択移行問題が与えられ、そのさい、先行弁別の試行数は 16試行か36試行までであった。選択逆転移行をなした者の割合は表4のとおりで、 (1) 3年生は 保育所児よりも逆転移行者が有意に多いこと、 ( 2 )先行弁別の試行数は逆転移行に有意な影響を

表4 Kendler and Kendler (1966)の結果:

逆転移行者の割合(形)

;蝣こ ∴  ・.:  :>・・

明  暗     39    63      63

大 き さ     32    69      44    82

36     66        54     85

およぽきないことが見出された。そこで彼らは媒介過程は年令の関数であって、訓練童には関係 しないと主張した。

Blank (1966)は過剰訓練と言語化の影響を調べた。幼児(50‑70か月)が大ききの弁別問題を 10回連続正反応の基準までか、それに20回の過剰訓練を加えるまで学習させられ、その後逆転移 行か非道転移行が与えられた。そのさい先行弁別学習で反応する前に『大きい』とか『小さい』とい わせる言語群と、何も言わせない非言語群が作られた。その結果、逆転移行は過剰訓練群が有意

に速かったが、非道転移行では基準群と過剰訓練群のちがいがなかった。また、 Kendler and Kendler (1961)からの予想に反して、言語の使用は逆転移行を促進しなかった。 Uhl (1966)

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は大学生を用いて、先行弁別問題と弁別移行問題における弁別刺激が、全く同じ刺激価のときと 全く異なる刺激価のもとで、先行訓練量を16試行と48試行に変化させ、それぞれのもとでの次元 内移行と次元外移行の速さを比較した。結果は次元内移行と48試行訓練後の移行が有意に速いこ とを示し、後者の過剰訓練による促進効果は Kendler and Kendler (1962)のいう媒介反応 が過剰訓練によって強まるためだと解釈した。しかし、次元外移行も過剰訓練によって促進され ることについては何も説明していない。なお、次元外移行では2つの弁別問題の刺激価が異なる ときに移行が速く、次元内移行では刺激価が同じときに移行が速いという結果については、媒介 反応の強さが般化の減少によって弱められるという仮定にもとづいて解釈したO

(3) Tighe and Tigheの研究  彼ら(1966)はこれまでの研究にひき続いて、弁別学習 の機制について発生的ないし発達的な差異を研究するために、選択移行問題を用いて過剰訓練の 効果を検討した。積木の高低とその上面に書かれた縦じまと横じまの2次元からなる弁別問題が、

ねずみと3、 4才児に与えられたo その結果は表5に示すようになったoねずみ、子どもともに 表5 Tighe and Tighe (1966)の結果:

テスト問題での移行型の割合(形)

先行弁別 高さ弁別       しま弁別

逆転 非逆転 非選択 逆転 非逆転 非選択 基準(18/20) 33.0  0   66.7      83.3 16.7 ねずみ +200    25.0  8.3  66.7      83.3 16.7

十300      100        100

3才児葦莞吉9/10)10冒.530 12.5冒.5芸:3票:冒 4才児警T.ム9/10)壬00002

。。0。8亨:冒512:22昌・o

次元による相違が著しく、しま弁別では子どもの場合、特に4才児において過剰訓練にともなう逆 転移行者の割合の増加がみられるが、高さ弁別ではねずみにおいてそれが減少する傾向があった。

このような種による差は弁別移行問題を用いた彼らの結果(Tighe & Tighe, 1965; Tighe, Brown, & Youngs, 1965)と対応するところから、発達差を予言しない注意説(Mackintosh, 1965; Zeaman & House, 1963)では説明できないと主張した。次元による相違については、

次元の顕著さないし次元に対する注意価のちがいが移行行動に関係することを示唆した。そして 次元性反応の発達に影響する要因として、 (1 )媒介反応の存在と強さ、 (2)適切な次元の顕著さ の程度、および(3)弁別刺激に関する過去の経験の3つを指摘している。

( 4 ) Capehartらの研究  Capehart とその共同研究者たちは過剰訓練効果に影響する要 因を研究した。まず、 Sitterley and Capehart (1966)は1桁の数字の対が偶数であるか(た とえば、 2と2、 4と2)奇数であるか(1と1、 3と1)にもとづいて反応させる課題を大学 生に与え、正答のみに光を出す群と正答に光、誤答にブザーを与える群を作って強化条件の効果

を吟味した。その結果、両群ともに10回申8回正答の基準まで学習した者にくらべて、 15回申13 回および20回申18回の過剰訓練をした者の逆転学習が有意に速く、また強化条件によって逆転学 習の速さが異なることを見出した。同様な課題を用いたHergenhahnら(ユ966)は、『正しい』、『ま ちがい』という言語強化を用いて、 10回申8回正答の基準群よりもそれに10回の過剰訓練を加え た群の逆転学習が有意に速いことを見出した。このような弁別課題においては、手がかりの適

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切、不適切を区別することが困難なので、不適切な手がかりの中性化ということによって過剰訓 練の促進効果は説明できないと主張した。 Temponeら(1966)はLovejoy (1966)の弁別学習 説から、先行弁別学習が困難なとき過剰訓練の促進効果があらわれやすいということを演鐸し、

それを同時弁別問題とそれより困難だといわれている継時弁問題における逆転学習を比較するこ とによって吟味した。正方形の大小弁別が平均6才7か月の子どもに与えられた。先行弁別学習 は同時弁別問題のときに有意に速く、これは継時弁別よりもやさしいことを示し、また逆転学習 は同時弁別、継時弁別ともに過剰訓練によって促進されたが、後者においてのみ統計的に有意で あった。つまり、 Lovejoyからの予想と一致する結果が得られたわけである。

(5) Crossらの研究  Cross and Tyer (1966)は発達的な水準よりも知覚的経験の多 少が過剰訓練効果に関係すると考え、年少児には過剰訓練の促進効果があるが、年長児にはない

という予想を確かめた Vaughter and Cross (1966)は弁別学習における3つの強化説、すな わち報酬の期待ないし正の強化効果を強調する説、非報酬の制止ないし負の強化効果を強調する 説、および報酬と非報酬の両者の役割を認める2過程説の何れが妥当であるかを決定するため に、 5才児を用いて逆転学習の実験を行なった。その結果、過剰訓練の効果は見出されなかった が、報酬と非報酬の両方を与えた群の逆転移行がもっとも速く、これは2過程説を支持するもの

と解釈された。

その地の研究  以下の研究は過剰訓練の効果を扱ってないが、最近の弁別移行ないし弁別転 移の研究の動向を知るのに役立つので、簡単に紹介しておく。

(1)日本の研究  第30回日本h理学会において、渡辺たち(渡辺・長嶋、 1966 ;長嶋・

渡辺、 1966)が正常児と精薄児について言語機能の効果を研究し、藤島(1966)が正常児を用い てYouniss(1964)の追試を行なって類似の結果を得ている。また、第8回日本教育心理学会では、

精神薄弱児を用いた移行学習が4つも発表された。松田・松田(1966)は言語強化の組合わせの効 果を調べ、松田・松田(1966)はHarlow(1959)にもとづく誤反応の分析を行った。茂木ら(1966)

および阿部ら(1966)は、 0′Connor and Hermelin (1959)の追試を行ない、いくつかの問 題を担起した。第31回日本心理学会では、清水(1967)が Harrow (1964)の手法を用いて大 学生と幼児について実験し、 Kendler and Kendler (1959)の言語的媒介説を批判した。渡 辺(1967)は先の研究にひき続いてKendlerたちのいう媒介過程が年令的にいかに推移するか を追求し、また杉村(1967b)は、弁別移行問題における刺激価の変化と過剰訓練の効果を検討 している。

(2)外国の研究  最近の特徴は媒介過程の内容を特殊化しようとする研究が多いことであ る。 Silverman (1966)はKendler and Kendler (1961)の実験を改良して言語化の効果を検 証したが、 Cobb and Rice (1966)は弁別刺激に対して言語命名を付加する予備訓練が、続く 弁別学習とその移行学習に対して効果をもたないことを見出したJohnson (1967)は大学生を 用いて、媒介反応が次元に関係するのか刺激価に関係するのかを問題にし、結局次元性反応であ

ることを確認し、また、 Johnson and White (1967)は次元性についての概念を有する子ども が、そうでない者にくらべて逆転移行が有利であることを示した Wolff (1967)は子どもを用 いて、 Gillman (1967)は大学生を用いてともに次元性の内容を検討した。そして、前者は知質 的媒介説ないし注意説(Zeaman & House, 1963)を支持し、後者は言語的媒介説(Kendler

& Kendler, 1962)を支持した Beilin and Gillman (1967)は子どもの数観念と数を用いた 選択移行行動との間に明確な関係がないことを示した Dickerson (1966)は不適切な刺激の配

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列を操作することにより、また Trabasso ら(1966)は、より単純な弁別問題を用いて次元内 移行、次元外移行、および逆転移行の速さを比較することにより、それぞれ注意説の拡張および 検討を行なった。最後に、 Smiley and Weir (1966) , Suchman and Trabasso (1966)、お よび Wolff (1966)は、次元偏好性が弁別学習および弁別移行において重要な役割を演ずるこ

と、およびそれがKendler らの媒介反応説と同様な予言をなしうることを示唆した。

弁別移行に関する諸現象を説明するために、これまでいろいろな理論が提出されてきた。最近 の弁別学習理論における特徴の1つは、 Spence (1936)以来の伝統的なS‑R説に対して、媒介 過程の存在を重視していることであるO媒介過程をとり入れた理論は、媒介過程の内容、基礎的 仮定、形式化の程度や予言力などの点で異なるけれども、何れも外的なS‑R結合のほかにもう

1つの過程ないし段階が反応を媒介していると考える点では一致している。それ故に、 2段階説 ないし媒介説としてまとめることができる。この論文では、媒介説を便宜的に言語的媒介説と非 言語的または知覚的媒介説に分け、それぞれの主要な理論について述べる。

しかしながら、特に過剰訓練効果に関しては媒介過程を考えない理論がいくつか存在してい る。これに関しては、主として動物を用いた実験結果から、 Hillら(1962)、小牧(1962)、 Paul (1965),およびSperling (1965)が評論している。その理論の中で、人間についての結果を説明 するのによく用いられてきたのは弁別仮説であろう。これは過剰訓練は移行にさいして強化型の 変化をより弁別しやすくし、そして古い反応の消去を速める。それ故、弁別移行が促進されると説 く。最近の研究ではYouniss and Furth (1964, 1965)などが、過剰訓練効果の説明にさいし て消去の速さと媒介反応の強さの2つの要因を仮定している。ここで消去は外的な選択反応に関 係することがらであるので、道具的反応と媒介反応の学習と転移を明確に区別して1つの理論の 中にとり入れた2段階説(たとえば、 Zeaman & House, 1963)の立場と根本的には類似して いるように思える。

言語的媒介説  言語媒介説は主として人間の学習や概念形成を扱うさいに提唱されたもので あり、たとえば、 Goss (1961) , Reese (1962) 、および Kendler and Kendler (1962)な どがあげられる。その中で弁別移行の問題に関してもっとも適切で、もっとも強い影響を与えた 理論はKendlerたちのものであろう。

( 1 ) Kendler and Kendlerの理論  Kendler and Kendler(1962)は逆転移行と非逆 転移行に関する発達的研究の結果にもとづいて、 S‑r‑S‑Rの図式をとり入れた媒介的S‑R説を 提唱した。この説では外的刺激(S)が内的反応(∫)をおこし、それが内的な手がかり(S)

となって外的反応(R)がなされると仮定する。たとえば、被験者が刺激の共通な面に対して言 語ラベルを用いるなら、その言語ラベルそのものが有効刺激になり外的反応が生じる。このよう に刺激場面が手がかりの付加によって変容されると考えるところから、付加的媒介説(Tighe

& Tighe, 1966)とも呼ばれる。この理論の主な特徴は、媒介過程が観察できる外的な S‑Rの 過程と同じ法則に従がうと仮定されていること、および媒介過程が内的な言語反応であって発達 水準に関係していると考えられていることである。後者の仮定は弁別移行問題の遂行における発 達的相違を予言し、彼らは主としてこの面に関する実験的研究を行なった。

彼らは、ねずみや4‑5才以下の幼児は非道転移行の方が逆転移行よりも遠く、 5‑6才以上

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の児童および成人は逆転移行の万が有利であることを、媒介過程の存在の有無と結びつけたので ある。前者は1単位のS‑R説に一致する非媒介者であり、後者は媒介的SIR説に従うように行 動する媒介者であると主張した。 この主張を裏づけるものとして、 Kendler and Kendler (1959)では4才から6才児を用いたとき、群全体としては逆転移行と非逆転移行の速さに差が ないこと、 Kendler, Kendler, and Wells (1960)の3才児では非道転移行の方が速いこと、

選択移行問題を用いたKendler, Kendler, and Learnard (1962)では、 3才から10才までの 間に逆転移行者の割合が37.5% (3才)から50% (4‑6才)を‑て62.5% (10才)に達するこ と、および Kendler, Kendler, and Silfen (1964)のねずみを用いた結果では、その割合が 4.2%であったことなどがあげられる。

ところで、彼らの理論は先行弁別の過剰訓練の効果に関しては直接には何も述べていないが、

先に示した第1の仮定のように、媒介過程が外的なS‑R関係と同じ原理に従うならば、弁別訓 練を多くすればするほど媒介反応も強められると考えてよい。そして媒介反応が次元性反応であ るならば、過剰訓練によって次元に対する媒介反応が強められるので、同じ次元内の逆転移行は 促進され、異なる次元への非運転移行は妨害されることになる。もし消去に重点をおくならば、

外的反応の消去は過剰訓練によって速くなるという証拠があるので、媒介反応の消去も過剰訓練 によって促進きれると考えられる(LudVigson & Caul, 1964) 。しかしこの場合、井逆転移行 が過剰訓練によって促進されるという成人に関する結果は説明できても、逆転移行については外 的反応の消去が媒介反応のそれよりも速いことを仮定しなくてはならない。 何れにしても、

Kendlerたちのいう非媒介者に関しては媒介過程が存在しないので、過剰訓練によって媒介反 応が形成されたり強められたりすることはありえない。それ故、外的なS‑R結合の強度のみに よって弁別移行の成績を予言しなくてはならない。

( 2 ) Kendler and Kendler 理論に関すを論争  最近の弁別移行や概念形成に関する研 究は、 Kendlerたちの理論にかかわりをもっているものが多い。その理論を支持する研究も多 いが批判的な研究もいくつか発表されており、わが国でも Kendler説に対する批判的な見方が 芽生えているようである。これらの研究の実験的な成果についてはすでに述べたので、ここでは 主として理論的な問題について、 Mackintosh (2965)の批判とそれに対する Kendler and Kendler (1966)の反論、 Shepp and Turrisi (1966a)の批判、そして最後にKendler(1963) の講演に対する討論について述べることにする。

( a ) Mackintoshの批判とKendlerたちの反論  Mackintosh (1965)はSutherland (1959)の考えを受けつぎ、 Zeaman and House (1963)やLovejoy (1966)と類似の立場で 選択的注意説を主張している。彼のKendler説に対する批判の要点は次のとおりである(1) 媒介反応の性質が十分に特殊化されていない。媒介過程の有無が5才前後を境界にして明確に区 別をつけることができないし、また媒介反応によって弁別学習がいかに促進されるのかが暖味で ある(2)内的な刺激と反応の事象が、観察可能なS‑R関係と同じ原理に従うという基本的な 仮定に問題がある。何故なら、媒介反応と外的反応の消去の速さが同じであるとすれば、逆転・

非逆転の何れが有利なのか決定できないからである。媒介反応によって逆転移行が有利なことを 予言するには、 Kendlerたち自身がその脚注(1962,P.7)で述べているように、媒介反応が外 的反応よりもゆっくりと消去されることが仮定されなくてはならない。これは基本的な仮定と矛 盾することである。かくしてMackintoshが主張する注意理論においては、注意は動物にも人 間にも共通に存在するものであって、それは刺激次元闇の選択的機能を有し、そして注意と選択

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反応とでは異なるパラメーターを用いるべきだと主張している。

これに対してKendlerand Kendler (1966)は、自説が不確かであることを認めながらも、

次の諸点について反論している (1)理論の不確かきがむしろ研究に対する策略的機能をもっ ているのではないか。弁別移行や選択移行問題における発達的な差はやはり言語機能の差にもと づくものである(2)注意説をS‑Rの用語で記述すれば、 Si‑Rx‑うsa‑RsかS‑s‑Rとな るであろうが、 Mackintoshは後者を考えているようだ。もしそうだとすれば、 S・うSを支配する 法則が明確でない。 (3)媒介反応の消去が外的反応のそれより遅いと仮定することは適切だが、

媒介反応の消去と弁別移行の速さが必ずしも一義的に関係していない。それ故、消去の速さ以外 に媒介反応の階層を考えることがより策略的だ。 (4)媒介過程のモデルを観察しうるSIR関係 に限定する必要はないが、最初のうちは同じ原理を通用することがより合理的である。なお、理 論的な相違は最終的には明確な予言をもたらす数学的公式にはん訳されなくてはならないという 見解で、 Mackintosh との一致を示している。

(b) Shepp and Turrisiの批判  Shepp and Turrisi(1966a)は後に述べる Zeaman and House (1963)の観察反応説の立場から、最近の多数の実験結果を評論した。 その中で Kendler 説の批判に関する部分は次のとおりである(1)逆転移行が有利なことを媒介反応の 存在と結びつけているが、媒介反応と道具的反応のそれぞれについて獲得と消去のパラメーター を特殊化しない限り、逆転移行と非逆転移行の速さは予言できない(2) Kendlerの発達説の有 力な証拠として引用きれている研究には疑問がある。たとえば、 Kendler and Kendler (1959) では先行弁別の速い者は逆転移行が速く、遅い者は非逆転移行が速い。前者は媒介説に一致して 言語的媒体を所有しているが、後者は1単位説に一致して非媒介者であると解釈きれているO し かし、速い学習者において逆転群と統制群に差がないことや、統制群で速い学習者と遅い学習 者の間に差がないことは、速い学習者が媒介者であるという説明と矛盾する。また Kendler, Kendler, and Wells (I960)における非逆転移行は、 Kendler and Kendler (1959)の統制 群に相当するものであり、移行型についての考え方が暖味であるO以上のように、 Sheppらの批 判は主として予言の不確かさと実験条件の不備に関してなされている0

(c ) Kendlerの講演に対する討論  Kendler (1963)の講演にもとづいて行なわれた心 理学者たちの討論は非常に興味がある。まず、 Morrisettによる個人討論では、 (1)媒介過程は 観察できる独立変数および従属変数のそれぞれとの間に、何らかの関係がなくてはならないが、

現在のところそれが十分特殊化されていないこと、 (2)年令は決して十分な先行条件とはいえな いので、媒介反応が生じると予想される条件が特殊化きれない限り、この概念の使用は事後説明 になってしまうことが指摘された。彼は言語の流暢さ、語い、知能などの測度が用いられるなら ば、結果の解釈がかなり明瞭になることを示唆した。

続く集団討論においては、媒介過程の内容ないし機能に関する議論がなされた Spikerは媒 介説を検証するのには発達的な特性は重要でない。むしろ同一年令の者を用いて次元に対する適 切な言語ラベルを訓練したとき、逆転移行より非逆転移行の方がよければKendlerの説は支持

されると述べ、言語的媒介反応が内的であっても外的であっても本質的には同じものだと主張し た Gibsonは人間以外の動物に媒介過程がないと考えるのは疑問であり、たとえば1試行逆転の

ような事実からみても、媒介過程には言語的なものと非言語的なものがあると述べ、 Stevenson がこれに同意した。 Berlyne は媒介反応は言語又は命名による反応のみでなく、言語のない生 体が大ききや色のような次元を弁別するさいの方向づけないし注意反応も媒体として役立ちうる

(10)

と述べた。たとえば大きさに対する媒介反応は刺激の輪郭の一辺にそう眼の運動であり、明暗な いし色の媒介反応は刺激の中心付近における眼の運動と瞳孔反応であると規定するならば、非言 語的な媒介反応の測定が可能であることを示唆した。

Ervinは次のように論じた。 Kendlerがいうように次元的なものがあらかじめ形成されてい るということは、 『白‑黒』とか『大一小』というものが既に命名できる次元を構成しているこ とであり、これは相互の問に強い反意語の連想が形成されていることをあらわす。それ故、反意 語の連想の強さが年長児と年少児を区別するものである。 Kaganは同様な立場にたって、年少 児は『大きい』というような単一価の媒介反応を学習するのに対して、年長児は『大一小』のよ

うな反意語の対からなる媒介反応を学習するのではないかと述べた。これに対してMaccoby, BaldwinおよびMorrisettらは、媒介者が次元ないし反意語対に注意すると仮定する必要があ

るかどうかと反論し、 Levin と Ervinは次元性媒介反応は反意語対の連想価が高いことを検言正 する方法を示唆した。以上のように、この討論はかなり率直な意見が述べられ、興味ある問題を 提起しているのである。

非言語的媒介説  非言語的または知覚的媒介説においては、媒介反応の内容が言語であるこ とを仮定しないOそれは適切な刺激ないし刺激次元を観察(注意)し、道具的(外的)反応を統 制する働きをなすと考えられ、また全刺激場面から不適切な刺激ないし刺激次元を減じるという 選択的機能をもつところから、差引き的媒介説(Tighe & Tighe, 1966)とも呼ばれるo これ に属する理論としては、 Wyckoff (1952)の観察反応説、 Sutherland (1959)の適切な刺激次 元の孤立化ないし刺激分析器にスウィッチすることの学習、 Zeaman and House (1963)の観 察反応説ないし注意説、 Mackintosh (1965)の選択的注意説、およびLovejoy (1966)の注意 説などがあげられる。これらの理論のうちWyckoffの説を除くすべての理論は、媒介反応が刺 激次元に対してなされると仮定する点で一致している。知覚的媒介説のほとんどが主として動物 の実験結果を取扱っているが、その中で Zeaman and House 説だけが人間、特に精神薄弱者 の研究にもとづいているO そこで本論文では彼らの理論を中心にして述べることにする.

(1 ) Zeaman and王Iouseの理論  Zeaman and House (1963)は弁別学習の過程が、

(1)適切な刺激次元に対する観察または注意反応と、 (2)その次元内の手がかりに対する接 近または回避、すなわち道具的反応の2つからなると仮定した。彼らは図1のような確率樹にもと づいて数学的なモデルを作り、弁別学習とその転移に関するいくつかの予言を行なった。

弁別学習における各試行は、 n個の適切および不適切な刺激次元からなるS*の呈示で始めら れるO このS* はn個の括抗する観察反応のうちの1つOi を確率Po(0で誘発するO どんな観 察反応が生じても、それは観察された次元の特殊な手がかりsiとsi′をあらわにするoそしてこの

2つの手がかりがそれぞれ1つずつの道具的な接近反応を、条件づれけられる確率Pr(Oと1 ‑ Pr(Oで誘発するO もし適切な次元への観察反応(OJがなされるなら、正の手がかり(si)へ

の接近反応(Ri)は100%の強化(G)を得る。不適切な観察反応(02‑On)がなされると、そ の道具的反応が何であってもその次元の手がかりに対する反応は50%しか強化きれないO次に, それぞれの結果に応じて変化する観察反応と道具的反応の確率が仮定された。 i亘接強化は観察反 応と道具的反応をβの割合で強めるが、このときに生起しなかった観察反応は間接の消去によっ

一°、.'十IJ‑‑    ∴ :J.il';l 二I;.',.,1 ・"蝣蝣∴J'サ'∴ if."‑‑1 三:I.

生起しなかった観察反応は間接強化によって強められる。このようにして、弁別訓練の終りには 適切な観察反応の確率は高くて不適切なそれは低く、また正刺激への接近反応の確率は高く負刺

(11)

激へのそれは低くなる。

この理論における主要な理論的構成概念 は『次元』であり、そして多くの次元性観 察反応のうちたった1つだけが、道具的反 応に先立って生起すると仮定されている。

もう1つの重要な仮定は、弁別学習中に適 切な次元に対する媒介(観察)とその次元 内の手がかりに対する道具的反応が形成さ れ、それらが次の弁別学習にさいして転移 するということである。このような仮定が 正しいならば、連続する2つの弁別問題に おいて適切な次元が同じとき、つまり次元 内移行のときには、観察反応の正の転移が おこり、適切な次元が異なるとき、つまり 次元外移行のときには負の転移が生じるこ とになる。ここで考えている次元内および 次元外移行は、 Zeaman and House が Table 5‑3(p. 195)に示したものとは異な って、 2つの弁別問題において次元の刺激

裂莞 慧悪 手がかり

S   S

mO

*

colco

2

2

S   S

rII IJ^o

道具的   報酬の 反 応   条 件

rP

r H ̲ l l l l l l l l l )〕

Ri*  >G

R′1・  → G′

〔T/2〕

cPr5^<I x/^[I/2T

[1/2]

n t   E V

S   S

.

0

t

1

ill一P

1

第1段階

G

G′

G

G′

O   C 5 O   O

R

第2段階

‑習慣の結合 ・一一‑ 時間の順序

一一 蠎  . !.       ・'%

価がまったく異なる場合、つまり道具的反 図1 Zeaman and Houseの観察反応説(1963,p.170) 応の転移がない場合である(図2参照)。そこで適切な観察反応(O.)と正しい道具的反応(Ri) が、先行弁別学習および3つの弁別移行学習の出発点でとる確率は表6のようになる。もし出発 点における反応の確率が後の学習を規定すると考えるならば、次元内移行が次元外移行よりも速

いことは明らかであるが、逆転移行の成績は道具的反応の確率に依存していることになる。ま た、媒介反応の転移だけを問題にしたいときは、道具的反応の転移が除かれている(確率0.5) 次元内移行と次元外移行の速さを比較すればよい。

次に過剰訓練の効果についてはどう考えているであろうか。先行弁別の学習基準が高められる ほど、先行弁別学習の終りでは適切な観察反応も正しい道具的反応も強くなる。しかし、道具的

表6 学習の出発点における観察反応と

道具的反応の確率(Zeaman & House, 1963,p.194)

適 切 な      正 し い

観察反応      道具的反応 先 行 学 習        9        .5

逆 転 移 行       商 い       低 い

次元内移行       局 い       .5 次元外移行       低 い       .5

反応の確率は観察反応の確率よりも速く1.0に達してしまうので、過剰訓練試行は道具的反応の 確率が1.0になったあとで、観察反応の確率を1.0にするような働きをする。つまり、弁別移行

の出発点において、先行弁別学習の基準が弱いときには観察反応の確率は小さく、基準が強くな

(12)

ると1.0に近くなる。このことを表6にあてはめてみると、過剰訓練によって観察反応の確率が 増すので、次元内移行と次元外移行の速さのちがいがますます大きくなるであろう。ところでこ の2つの移行を比較した研究をみると、 Furth and Youniss (1964)では全体として次元内移 行がよいが過剰訓練の効果を認めず、 Eimas (1966b)は全体として次元内移行がよく、過剰訓 練によって次元内移行も次元外移行も促進きれ、またShepp and Turrisi (1966b)では移行 型と訓練量の間に有意な交互作用が見出された。この最後の結果は上に述べた理論からの予想と まったく一致するものである。

ここで動物実験の結果を統合して説明しようとした Lovejoy (1966)の理論を簡単に紹介し ておく。彼は位置弁別と明暗弁別において逆転弁別に及ぼす過剰訓練の効果が異なる点に着目し て、弁別学習の過程に注意の概念を導入したのであって,大体の考え方はZeaman and House (1963)に似ている。彼によれば、正反応を選択する確率は注意反応の確率よりも早く増大する ので、過剰訓練がないときは正反応選択率は1.0に近いが、注意反応率は1.0より小さい。過剰 訓練によって注意反応率がユ.0に近づき、逆転後も適切な次元への注意が継続するために過剰訓 練の促進効果が生じる。彼はさらに次のことを仮定した。適切な次元が非常に明白なときには、

最初の注意反応率が高いために過剰訓練の効果がない。つまり、最切の注意反応率が1.0のとき は過剰訓練の促進効果がなく, 0,3から0.7のときにそれがあると述べている。従来の動物を用 いた研究において、位置弁別学習のときに過剰訓練の促進効果がないのは、動物(ねずみ)にと っては位置が明白な手がかりであるからだと考えた。このような適切な次元の明白さないし敢著 さが弁別移行の成績に影響することは、 Tighe and Tighe (1966)によっても示され、また Tempone ら(1966)は同時弁別では過剰訓練の促進効果がないが、より困難な継時弁別ではそ れが見出された。これは前者がより明白な弁別問題であるので、最初から注意反応率が高いこと によると解釈されたO次元の明白きや顕著きの問題は後で述べる次元偏好性とも関係している.

(2) Shepp and Turrisiの評論  Zeaman and Houseの理論が発表されて以来、彼ら とその関係者たちは理論の実験的吟味を精力的に行なってきた Shepp and Turrisi (1966a)

訓練問題・

̲i 三 二二

転移問題

+

+  一   十  ‑   +

奉A

inii r

二三+   ‑

;欠元内移行   逆転移行   次元外移行  非逆転移行

図2 媒介反応の転移をみるための典型的な移行型(Shepp & Turrisi, 1966 a, p. 98)

(13)

はそれらの結果および従来の実験結果を、 『弁別学習における媒介反応の学習と転移』と超して 評論した。これは移行型の特性を厳密に定義し、それぞれについて観察反応と道具的反応の正負 の転移を考慮した理論的予憩と実験結果とが、どの程度一致するかを丹念に調べあげたものであ る。彼らは観察反応説を検証するのに適切な移行型として次の4つを取上げた。図2において、

媒介反応は逆転移行と次元内移行で正の転移があるが、次元外移行では負の転移が生じ、そして 非逆転移行における転移は明らかでない。他方、道具的反応は逆転移行においてのみ負の転移が 生じる.さらに、媒介反応の転移も道具的反応の転移も起こらない統制群として、先行弁別問題 に存在しなかった刺激次元を移行問題で用いる場合が付加されなくてはならない。

彼らが得た結論は大体次のとおりであった (1)次元内移行は常に次元外移行よりも速く、

これは純粋に媒介反応の転移効果のみを示しているので、媒介過程が次元性であることを支持す る (2)次元内移行は過剰訓練の量にともなって速くなるが、次元外移行については一定の結 果が出ていない (3)逆転移行と次元内移行の速さの比較(つまり道具的反応の転移効果)は 一定の結果が示されていない (4)逆転移行、非逆転移行、および次元外移行の比較では、年 長者は一般に逆転移行が通いが年少児の結果は明確でない。最後に、彼らが指摘している問題点 についてまとめておく (1)従釆の研究においては、移行型とそれに対する理論的予言との関 係が明確でない。たとえば、非逆転移行と次元外移行が混同きれていた (2)不適切な次元の 刺激配置が不変であるか、試行間で変化するか、試行内で変化するか、試行間と試行内で同時に 変化するかなどの、刺激配置の効果があまり研究されていない(図3参照) c (3)媒介反応の

不  変  試行問変化  試行内変化   複合変化

=∴二二二二二二

+   ‑       +   ‑

耳A十   一

+ +

図3 不適切次元の刺激変化(Shepp & Turrisi, 1966a, p. 89)

転移量と方向を決定するのには統制群が必要であるが、従来の研究ではそれがほとんど用いられ ていない。 (4)次元内移行が有利なのは適切な媒介反応が転移するのか、不適切な媒介反応の 消去が転移するかの何れかであるが、これまでに媒介反応の消去に関する研究がない (5)一 般に逆転移行は過剰訓練によって速くなるが、それが適切な媒介反応の強さを増大したためか、

道具的反応の逆転を促進したことによるのか区別されなくてはならない (6)次元偏好性が弁 別移行に影響するが、これと媒介反応の転移とは区別すべきである。以上のことがらは今後の研 究を進める上に非常に参考になるものであり、その2、 3の点については次の節で述べるであろ

う。

(14)

考     察

本節においては、これまで述べてきた実験結果や理論を参考にしながら、筆者が日頃考えてい ることを合わせて若干の考察を行なう。いろいろの問題が考えられ、そのうちの2、 3のものに ついては先の論文で考察されているので、本論文では(1)次元偏好性、 (2)媒介過程の測定 法、および(3)媒介過程の特性の3点を取扱うことにする。

次元偏好性  ( 1 )次元に対する被験者の偏好(preference)が発達的に異なるという事実 は古くから色一形の問誼として知られているO この次元偏好性が弁別ないし分類学習に影響する ことが実験的に示されたのは、ごく最近になってからのことである Suchman and Trabasso

(1966)は4才児を用いて、色に対する偏好性が色にもとづく分類行動を促進し、形に対する偏 好性が形分類を促進することを見出した Wolff (1966)はその結果を、 6才児を用いて高さと 明暗の次元について確認し、さらに次元偏好性の効果をKendler and Kendler (1959)の速い 学習者と遅い学習者の区別に関係づけようとした,すなわち、速い学習者とは弁別問題における 適切な次元と被験者の偏好次元とが一致している者であるO逆転移行では偏好次元が適切のまま 継続するが、非逆転移行では非偏好次元での弁別を新たに学習しなくてはならない。それ故、先 行弁別学習の速さが逆転移行とは正の関係をもち、非逆転移行とは負の関係を示すことになる。

不適切次元に対して偏好をもっているときは弁別学習は遅くなり、非逆転移行においては偏好次 元が適切な次元になる。

Smiley and Weir (1966)は上のような考えをさらに発展させた。速い学習者と遅い学習者 をKendler and Kendler (1959)のように媒介過程を所有するかしないかによって区別するよ りも、弁別問題の適切な次元に対する偏好性の有無によって区別した万がよいOそして遅い学習 者は媒介過程がないのではなく、不適切な次元に対する偏好(すなわち媒介または注意)をもっ ているのだと主張した。選択移行問題を用いて行なった彼らの実験によると、偏好次元が適切な 次元として弁別問題を訓練させられた者のうち、 78%の者が逆転移行者であるのに対して、非偏 好次元が適切な次元として訓練された者のうち逆転移行者はわずか25%であったO このことは彼

らの主張を裏づけるものである。

(2)次元偏好性と媒介過程はいかなる関係にあると考えたらよいであろうか。 Shepp and Tlユrrisi (1966a)は両者はまったく別のものと仮定しており、それぞれが弁別移行におよぼす転 移効果を区別すべきだと主張している。他方、 Suchman and Trabasso (1966)は次元偏好性 が観察反応として活動すると述べ、 Smiley and Weir (1966)も次元に対する注意反応と次元 偏好性を同じものとして考えている Kendler and Kendler (1966)は最近の論文の中で媒介 反応を次のように特殊化した。 「被験者は弁別問題の1つまたはいくつかの次元に対する媒介反 応をもって学習場面にやってくる。 適切な次元に対する媒介反応が優勢になったときに学習 が生じる(p.223)」 。この引用文において、媒介反応を次元偏好性と入れかえても何ら混乱が生

じないことは、 2つの概念がよく似ていることを意味するものであろう。

次元偏好性と媒介反応が異なるものか否かは実験的に検証できるかもしれない。しかしながら 少くとも媒介反応が色や形という次元に対する反応であると規定される以上は、次元偏好性と媒 介反応がたとえ同一のものでないにしても、次元偏好性は少なくとも媒介過程の部分を構成して いることは確かである。現在までのところ、媒介反応はそれが言語的であれ知覚的であれ、弁別 学習とその転移に関する成績から推測するだけであって、実験的に操作しうる独立変数と媒介過

(15)

程との関係が明確でない Kendlerたちは年令が独立変数であるというかもしれないが、それは 必ずしも十分な変数であるとはいいがたい。また、 Kendler and Kendler (1959)のいう媒介 者は先行弁別学習の速さによって定義されたものであって、媒介者だから逆転移行が速いという 説明は事後明説のそしりを免れない。何れにしてもMorrisett (Kendler, 1963)が指摘したよ

うに、媒介過程と観察される独立および従属変数との関係が特殊化されていないのである。

そこで、色に対する次元偏好性があれば、被験者は弁別問題の学習にさいしてまず色に注意 し、あるいは色についての媒介過程を用いるというように、次元偏好性と次元性媒介反応との問 に密接な対応関係があることを認めるとしよう。そうすれば、次元偏好性は弁別学習およびそのノ 転移とはまったく独立に鄭定できるので、媒介過程が独立変数として操作的に定義されることに なるであろう。この考えが正しいならば、次元偏好性が今後の研究においてきわめて重要な役割 を演じることになる。最近、弁別移行の成績が適切な次元の種類によって影響を受けることが指 摘されているが、その場合の次元の顕著き、明白さ、あるいは注意価というものは、次元偏好性 の程度によって操作的に規定されるであろう。今までは刺激次元に対する偏好性のみを問題にし たが、刺激価に対する偏好性も考慮されなくてはならない。なお、筆者の研究室では次元偏好性 と先行弁別の訓練量が、次元内および次元外移行に対してどんな影響をもたらすかを実験的に検 討している。

媒介過程の測定法 ( 1 )媒介反応の測定はふつう弁別移行問題と選択移行問題を用いて行な う。前者は群間比較であり、後者は群内比較法であるが、両者ともに先行弁別問題において学習 されたことがらが次の弁別問塩の学習にきいして転移するということを前提としている。たとえ ばZeaman and House (1963)の理論においては、先行弁別で学習された媒介反応と道具的反 応の南方が次の弁別問題の学習に転移すると仮定する。ところで、学習された反応がそのまま転 移し、利用されると考えてよいだろうか。特に幼児を用いた実験においては、たとえ媒介反応が 形成されていても転移しないのではないかと思われるような事例に遭遇することがある。彼らは 2つの弁別問題がまったく異なる学習事態であると考えているのかもしれないO弁別問題で形成 された媒介反応を異なる種類の問題、たとえば分類問題などによって測定しようとする場合に は、媒介反応が存在していても転移しない、すなわち測定できないという可能性が多分にあると 考えられる。また、たとえ媒介反応が存在していても、それが弱いときには転移しないであろう から。転移法によって測定されたものは媒介反応の存在とその強度の関数であるといえる。しか し現在のところ、先行弁別における成績のみでは媒介過程の存在を仮定する2段階説が妥当なの か、それを必要としない1単位のS‑R説が妥当なのか決定できないとされている (Shepp &

Turrisi, 1966a)c そして弁別移行問題や選択移行問題において測定できないときには、媒介反 応が存在しなかったのだと考える方が合理的であるかもしれない。しかしそのその反面、転移法 を唯一の手段にしているということは、媒介過程と独立変数との関係が特殊化されていないとい う事情を反映しているのかもしれない。独立変数とみなされる語い、知能、眼球運動、次元偏好 性などと媒介過程との関係を特殊化することにより、転移法によらない媒介過程の測定が行なえ るであろう。

( 2 )次に媒介反応の転移量とその方向に関する問題がある。従釆の研究は媒介反応の測定に さいして次元内移行と次元外移行の成績を比較してきたが、統制群を設定しない限り、媒介反応 の転移童とその方向を正確に決定することができない。たとえば、次元内移行の速さに有意差が あったとしても、統制群の成績と比較してみないと、媒介反応の転移によって次元内移行が促進

(16)

きれたのか次元外移行が妨害されたのか決定できないのである。そこで統制群を設定するとき、

その先行弁別問題にどんな刺激次元および刺激価を用いたらよいであろうか。移行群の先行弁別 問題に色と形の次元が用いられたとすると、あとに残る次元としては大きさ、数、明暗、方向な どが考えられる。たとえば大きさと数の次元を用いたときに、その刺激価が色と形の点で移行群 のそれとまったく異なるように配慮されなくてはならない。また、移行群においては第2の弁別 問題で新奇な刺激価が呈示されるのに対して、統制群では新奇な刺激次元と刺激価が呈示される ことになる。この新奇性の効果は興味ある問題であるが、現在のところ確実な証拠がない。この ように、統制群の構成にさいしてはいくつかの問題点が存在しているけれども、過剰訓練の効果 を問題にするときにはどうしても必要になってくるOそれは過剰訓練によって学習方法や構えが 形成されると考えられるので、これらの要因が次元性媒介反応の転移効果と分離きれなくてはな

らないからである。

(3)選択移行問題は発達的な差を研究するのに適するといわれているd これは図4に示したよ うに、 3種の弁別問塩が連続して与えられ、第2段階の選択移行問題において被験者が逆転移行 をしていたか、非逆転移行をしていたかが、第3段階のテスト弁別問題の1対に対する反応め仕 方によって決定される仕組みになっている。この方法について2、 3の問題点を指摘する。テス

ト問題においては、選択移行のときの正刺激への反応がそのまま続けられることを前提としてい る。ところが筆者の未発表の研究によると、テスト試行の約20%において選択移行のときの反応 がなされていないのである。この事実はもう一万のテスト対における反応が、何にもとづいてな

されたのか決定できないことを意味するo選択移行の反応を継続したときにのみテスト対におけ る反応が逆転か非逆転かの意味をもつのである。上の事実はこの方法に対して重大な疑問を残す ことになるが、現在までのところ他の研究者の資料がないので決定的なことはいえない。

先行弁別     選択移行    テスト弁別

○[ヨeE] O

・  ①

□+

十      十    +

†   †

逆転反応非逆転反応̀

図4 選択移行問堰の1例

テスト対の何れか一万への反応が10試行中8回以上あることでもって、逆転移行または非運転 移行をした者とみなすのがふつうであるが、第1試行における反応がそれに続く試行の反応を歪 める可能性があると考えられる。何故なら、この刺激対では何れに反応しても強化きれるので、

被験者がもし第1試行での反応が正しいものと考えるならば、その刺激に対する反応を続けるか らであるO この可能性を除去するためには、この刺激対を1回だけ呈示すればよい。もう1つの 問題は、テスト対において逆転反応として指定された刺激は先行弁別における負刺激であり、非 道転移行の反応として指定されたものは正刺激であったということであるoつまり、このやり方 では先行弁別学習における道具的反応の影響と、媒介反応にもとづく反応とが区別できない。こ の区別を可能にする1つの方法は、先行弁別問題に用いたのとは異なる刺激価からなる弁別問題

参照

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