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子どもにおける同一・差異関係の学習(?)
著者 杉村 健
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 29
号 1
ページ 175‑197
発行年 1980‑11‑25
その他のタイトル Learning of Identity‑Difference Relations in Children (I)
URL http://hdl.handle.net/10105/2431
奈良教育大学紀要 第2g巻 第1号(人文・社会)昭和55年 Bull. Nara Uniy.Educ,Vol.29, No.1 (cult. & soc.), 1980
子どもにおける同一・差異関係の学習(I)
杉 村 健 (心理学教室) (昭和55年4月28日受理)
弁別学習における関係の研究
関係の問題は心理学のさまざまな分野において研究されている。たとえば、思考の分野では関 係把握が重要な側面であるとみなされ、これまでに多くの研究が行われてきた。この種の研究に 関連して、かつては関係について2つの立場があった(矢田部, 1949)0 1つは機能主義者とみ なされているJamesやWoodworthによるもので、関係の意識は対象の知覚と同様に単純であ り、直接に与えられると主張した。もう1つは構成主義者であるTitchener によるもので、関 係の意識は複雑であり、多くの心的要素が複合して形成されるものであると主張した。
移調関係 思考における関係把捉の研究では比較的複雑な課題が用いられてきたが、学習の 分野における関係の研究には比較的単純な課題が用いられる。その代表的なものが、弁別学習に おける移調の研究である。ここで問題にされている関係は、主として、 1つの刺激次元(大さき、
明暗など)に属する2つまたは3つの刺激問における、 "より大きい"とか"まんなか"という ような関係である。たとえば、小さい四角(No.1)と大きい四角(No.2)を呈示して、 N0.2を選 択するように訓練し、その後で、 N0.2とそれよりも大きな四角(No.3)を呈示して、どちらの四 角が選択されるかをテストする。もし、 N0.3が選択されたならば、N0.1とN0.2の弁別課題にお いて、 Hより大きい"という2刺激問の関係が学習されていたと判定される。
移調の現象は今健紀初頭から注目されはじめ、 2つの対立する理論をめぐって多数の実験的研 究が行われてきた(Reese, 1968)(その1つであるゲシタルト説(Kohler, 1929)は、関係知覚 は原初的、直接的なものであり、刺激間の関係そのものに対して直接に反応がなされると主張し た。これに対して、個々の刺激に反応が結合されると仮定する連合説(Spence, 1937)は、関係 反応は刺激と反応の問に"より大きい日 というような言語的媒介過程を必要とする高次で複雑な 過程であると主張した(Kuenne, 1946)(このように、関係把握におけるJamesらの見解が弁 別学習におけるゲシタルト説に、 Titchenerの見解が連合説に受けつがれている点が興味深い0
同一・差異(同異)関係 本研究で扱う関係も弁別学習の分野に属するものであるが、上述 した移調における大きさや明暗の関係とは異なって、刺激問の同一(または類似)および差異と いう関係である。すなわち、ある刺激が他の刺激と=同じ" (または‖似ている")かH違う‖
(または"似ていない'つかという関係である。この種の閥係については、 1930年前後に動物(主 としてサルやチンパンジー)を用いた学習実験が初めて行われ、そのあと1940年、 50年代には学 習の可能性について系統発生的な研究が行われた(Harlow, 1951, 1958)c 子どもを用いた学習実 験は1960年頃から盛んになったが、その最初は、筆者の知る限りでは小学4年生を用いたLevy and Cuddy (1956)の研究であろう。
筆者はこれまでに、弁別移行学習、移調、分類学習といった、子どもの弁別学習の研究を行っ
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てきたが、同異関係の学習に興味をもつようになったのには、いくつかの理由がある。最も素朴 な理由は、幼児が同一関係と差異関係を何歳頃から学習できるか、そして、どちらがより速く学 習できるかという疑問であった。移調や移行学習の研究では、大きさ、色、形といった視覚刺激 がもっぱら用いられているが、同異学習の研究では、子どもになじみのある具体物の絵や小模型 も用いることができるという利点がある。後に述べるような種々の学習課題が考案されているこ とも魅力的であり、さらに、移調や移行学習に比べて研究が少なく、理論的にも実験的にも、こ れから発展する可能性があると考えられる。
ところで、同異関係の理解を簡単に調べるのには、 Binet式をはじめ多くの知能検査にみられ るように、 2つの刺激を呈示して、それらが同じものか異なるものかを問えばよい。これは異同 弁別問題とよばれており、関係把握の最も原初的なものであると考えられる。この種の異同弁別 問題では、子どもが刺激間の同異関係を理解できるかどうかを問題にしており、いわば、子ども が現在所有している関係の知識を査定している。同じことが思考における関係把握の研究につい てもいえる。これに対して同異関係の学習では、刺激事態への子どもの反応に対して正誤の情報 を与えることにより、子どもが同異関係を学習できるかどうかを問題にしている。すなわち、単 なる知識ではなくて、関係についての学習の可能性を査定し、関係がどのような過程によって学 習されるかを研究する。
子どもの同異学習に関する文献展望は、筆者の知る限りでは House ら(1974)のものしかな い。これは1974年までに出版されたほとんどの研究を網羅している点で、今後の研究を進める上 で役に立つ。そして、これまでの研究を、彼女らが主張する注意モデルの枠組の中に位置づげ、
解釈しようと試みている点では高く評価されてよい。しかしその反面、他の理論やモデルが無視 されたり正当に評価されていない傾向があり、また実験条件(刺激、教示など)の相違が無視さ れたり、結果の解釈も研究者の本意から離れているように感じられるところがある。
本研究においては、まず、同異関係の学習を研究するために用いられている種々の課題につい て述べ、次に、これまでに提唱された同異学習の理論および関連する発達理論を紹介する。その あとで、筆者が関心をもついくつかの分野の実験的研究を選択し、その主な内容について紹介す る。これによって、同異学習の研究の現状とともに問題点を明らかにし、今後の研究の方向づけ を探りたい。
同異関係の学習課題
同異学習の研究においては、後に述べるようなさまざまな課題が用いられている。その典型的 なものとしてほ、 2つの同じ刺激(A、 A)とそれとは異なる刺激(B)が各試行で呈示され、被験 者はどれか1つを選択するように求められるO 同一学習の場合には各試行で同一刺激(A)を正刺 激とし、差異学習の場合には特異刺激(B)を正刺激とし、被験者の選択反応に応じて正誤の情報 (たとえば、 ‖正しい日、 =まちがい")が与えられる。被験者はこの情報を手がかりとして、
正刺激を一貫して選択するようになり、所定の基準(たとえば、連続10回正反応)に達すると学 習が完成したといわれる。
このような同異課題においては、いつも同じ特定刺激が正刺激にならない点が、普通の弁別課
題とは異なっている。すなわち、第1試行ではAAB、第2試行ではBBAというように、試行
によって同一刺激と特異刺激が変えられるので、特定刺激(AまたはB)を一貫して選択しても
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関係学習はできない。関係学習では3つの刺激を相互に比較して同異関係を判断し、そして同一 または特異刺激を一貫して選択しなくてはならない。そのために、特定刺激への反応を学習させ る普通の弁別学習よりも、高次の認知能力が必要であるとされている。この種の課題では、特定 刺激に反応しても、刺激が提示されている位置に反応しても報酬(正情報)が与えられるが、こ
の報酬は一貫した正反応に導くものではなく、あいまいなものである。このように、特異刺激、
特定刺激、位置という3つの手がかり(サイン)が含まれているので、 Harlow (1951)はこれ を重複サイン課題と名づけた。
水平配列課題 この課題では3刺激(AABまたはA′AB)が水平に並べて呈示され、各試 行において3刺激の中から1つの刺激を選択させる。その際、選択を許される刺激が左、中ある いは右の3つの位置に呈示される場合(3位毘課題)と、左か右の2つの位置に呈示される場合
(2位置課題)がある。前者で最も多く用いられてきたものが特異課題(oddity task)で、特 異刺激(B)を選択するように訓練される。これに対して、同一刺激(A)を選択するように訓練さ れる場合が同一課題(identity task)、類似刺激(AまたはA′)を選択するように訓練される場 合が類似課題(similarity task)である。
2位置課題では、各試行でまんなかに呈示される刺激(たとえばA)が標本の役割をしており、
被験者は左か右の刺激だけを選択するように求められる。ここでの特異課題は、まんなかの標本 刺激とは異なる刺激(B)を選択するように訓練される場合であり、標本不一致課題(nonmatching‑
to‑sample task)ともよばれる。標本刺激と同じ刺激(A)を選択するように訓練される場合は、
同一課題または標本一致課題(matching‑to‑sample task)とよばれる。これらの課題の難易度 を決定するのも重要な研究課題である。
標本比較課題 この課題では、 1つの標本刺激(たとえばA)が上部に2つの比較刺激(A BまたはA'B)が下部に、すなわち3つの刺激が三角形の頂点の位置に呈示されるO標本と同一 の刺激を選択するように訓練される場合が標本一致課題であり、異なる刺激の場合が標本不一致 課題である。普通は3つの刺激を同時に呈示するが、先に標本を呈示し、その後で比較刺激を呈 示する場合があり、これは遅延標本比較課題とよばれている。上述の2位置課題では3刺激が水 平に配列されて標本が目立ちにくいが、標本比較課題では標本が上部に置かれていて、その役割 が最初から明確である。一致課題、 2位置課題と標本比較課題の比較など、基礎的な研究が必要 である。
よく用いられている標本比較課題は、色または形の1次元刺激からなっている。たとえば、赤 色と青色を用いて赤色を標本刺激、赤色と青色を比較刺激としたときに、比較刺激の左右の位置 を変えると2つのセットができる。逆に、青色を標本刺激としたときにも2つのセットができる ので、合計4セットになる。さらに、黄色を加えて3色にし、それらを2色ずつ組み合わせると 12のセットができる。いずれの場合にも、特定刺激が標本刺激になったり比較刺激になったりし、
また、同一刺激になったり特異刺激になったりするので、水平配列課題と同様に、特定刺激に対 する反応によっては学習することができない。
課題の変形 以下に述べるように、同異課題にはさまざまな変形がある。実験結果について 吟味する場合には、実際にどのような課題が用いられたかを明確にする必要があり、課題の変形 を無視して一般的な結論を出すことは危険である。ここでは、水平配列課題を例にして述べるこ とにしよう。
(1)刺激反復‑2刺激(AとB)からなる課題においては、どちらを特異刺激にするか、およ
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び特異刺激を左、中、右のどこに置くかによって、 AAB、 ABA、 BAA、 BBA、 BAB、
ABBという6つのセットができる。普通は、これらのセットがランダムな順で呈示され、特定 刺激が特異刺激になったり同一刺激になったりするので、 2刺激ランダム逆転課題とよばれる。
Aを特異刺激として所定の基準(または試行数)まで学習させ、次にBを特異刺激として学習さ せる場合もある。これは2刺激連続運転課題とよばれている。
次に、 3刺激(A、 B、 C)からなる課題を考えてみよう。この場合には、 AB、 AC、 BC の刺激対についてそれぞれ6セットずつ、合計18セットができる。これらのセットがランダムな 順に呈示されるのが3刺激ランダム逆転課題である。 2刺激課題と比べると、同じ刺激対の反復 と特異刺激の逆転の程度が少なくなる。 AB、 CD、 EF、 GH、一一というように、各セット がすべて異なる刺激対からなる課題も用いられている。この場合には刺激対の反復も特異刺激の 逆転もなく、非反復課題とよばれる。一般に反復課題の方が困難であり、反復の程度が減ると学 習が容易になる。
(2)刺激次元‑移調の研究と同じように、 1次元の刺激からなる課題がしばしば用いられる。
色次元における3刺激ランダム課題であれば、たとえば赤色、黄色、緑色の3つから18セットが できる。さらに、 2次元や3次元の課題を作ることができ、これは次元抽出課題(dlmension‑
abstracted task)とよばれている。 2次元課題であれば1つの次元が同異学習に関連する適切次 元であり、他の次元が不適切次元になる。 3次元課題であれば1つの次元が適切次元、他の2つ の次元が不適切次元になる.一般に次元数が増すと学習が困難になるO
不適切次元の刺激のあり方によって次の2つに分けられる。 1つは、不適切次元の刺激が各セ ット内ですべて異なる場合である.色‑形課題で形が適切次元の場合、赤色の円、黄色の円、青 色の四角というように、不適切次元である色がすべて異なっている。もう1つは、どの次元にも 同一刺激と特異刺激があり、どれを適切次元にするか不適切次元にするかは、実験者によって決 められる。色‑形課題で赤色の円、黄色の円、赤色の四角の場合、形を適切次元にすれば赤色の 四角が特異刺激になり、色を適切次元にすれば黄色の円が特異刺激になる。従来の研究では前者 の方が多く用いられている。
(3)同一刺激‑1セットが3刺激(AAB)からなる課題が最も多く用いられており、この課 題では同一刺激は2つであるが、同一刺激が3つ以上呈示される場合がある。その刺激数に応じ て4刺激課題、 5刺激課題などが作られるが、一般に同一刺激数が増すと同異学習が容易になる。
(4)条件的同異課題‑普通の課題では同一関係か差異関係の、いずれか一方しか学習できな いが、ある条件では同一刺激、他の条件では特異刺激が正刺激になるような課題を作ることがで きる。たとえば、刺激が呈示されるカード(背景)が白色の場合には同一刺激、黒色の場合には特 異刺激が正刺激とされる。このように、条件に応じて学習すべき反応が異なるので条件的同異課 題とよばれており、この学習はかなり困難であることが知られている0
(5)冗長的特異課題‑この課題では、特定刺激(たとえばA)がどの試行においても特異刺激 として呈示され、同一刺激は試行によって変えられる。 A、 B、 Cの3刺激ではABB、 BAB、
BBA、 ACC、 CAC、 CCAという6つのセットができるが、同一刺激の種類をもっと多く してもよい。この例からわかるように、正刺激(A)が特定刺激であると同時に特異刺激であると いう冗長性をもっので、冗長的特異課題(redundant oddity task)とよばれている。この課題 を学習する際に、被験者は特定刺激そのものに反応してもよいし、差異関係に基づいて反応して
もよいし、あるいはその両方によって反応してもよい。したがって、普通の特異課題よりも学習
子どもにおける同一・差異関係の学習(I) Hm
されやすいので、前訓練として用いられている。また、この課題で学習されるものは何かを問題 にすることもできる。
同異学習の理論
不適当反応抑制説 Harlow (1958)はすべての学習が不適当反応(反応傾向)、すなわち誤 り要因の抑制によって説明できるという、単一過程抑制説の立場から、特異課題の学習について 次のように分析した。
2刺激弁別学習においては、特定刺激への反応に与えられる報酬は、刺激が呈示された特定位 置へのあいまいな報酬にもなるので、位置に対する不適当な反応傾向が生じやすい。したがって、
弁別課題の学習に際してはこの反応傾向が抑制されなくてはならない。この考えを特異課題に通 用してみると、特異刺激への反応に与えられる報酬は、特定位置および特定刺激へのあいまいな 報酬にもなるので、 2種の不適当反応が存在する。さらに条件的特異課題においては3種の不適
当反応が存在することになる。このように、あいまいな報酬によって生じる不適当反応(誤り要 因)の数によって課題の難易度が規定される.先に述べた課題の難易度の比較には、この理論が 適用できるものが多いと考えられる。
単一過程抑制説は興奮(接近)傾向と抑制(回避)傾向を仮定するSpence (1936)の2過程 説とともに、弁別学習の古典的な理論とみなされており、その後の研究や理論に多くの影響を与 えた Moon and Harlow (1955)はサルの特異学習において、対象移動、報酬対象固執、無報 酬位置固執などの誤り要因を兄い出し、これが方略分析の研究に発展した。後に述べるWhite
(1965)の学習階層説は、発達によって低次の学習が抑制されて高次の学習が可能になると仮定し ており、ここにも抑制の考えが採用されている。
特異学習と一致(同一)学習の速さについて、 Harlow(1951)は次のように述べているO前者 では特異な(同一でない)ものの選択、後者では同一な(特異でない)ものの選択が求められる ので、両課題は相補的であり、同じ速さで学習されるはずである。この点について、後に述べる Fellows (1968)は特異学習の方が容易であると主張しており、この問題はまだ解決していない。
Harlow (1958)は、特異学習が可能な最低年齢を決定する資料はないが、この学習は幼児の知 的能力を越えるものであると述べており、このことが子どもを用いた特異学習の発達的研究を刺 激した。
注意モデル House (1964)は、弁別学習の注意説(Zeaman & House, 1963)を拡大して、
特異学習に関する連鎖注意モデルを提唱した。このモデルによれば、特異学習の過程は①特異 性を規定する適切ないし媒介(vehicle)次元への注意、 ②適切次元内の手がかり問の特異関係 への注意、 ⑨手がかり(特異刺激)への道具反応の3段階からなっている。このモデルと弁別 学習の注意説の問には、特異関係への注意が挿入され、手がかりが特定刺激ではなくて特異刺激 であるという相違がある。このモデルの第2段階に絶対手がかり(特定刺激)への注意をつけ加 えたものが、図1に示すHouse ら(1974)の連鎖注意モデルである。この図では色が特異関係 を媒介する適切次元であり、 2つの不適切次元には特異関係が存在しないと仮定されている。
被験者は最初に、刺激事態(S*)から各試行で1つの次元を選択(次元に注意)すると仮定さ
れる。第1の次元選択の段階で色に注意したならば、第2段階では特定の色か特異関係のどちら
かに注意する。特定の色に注意した場合には、次の段階で2つの特定の色(CiとCj)のどちらか1
つを選択するという道具反応が行われ、どちらを選択しても平均して50%の報酬(正情報)がラン
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次元の選択 癖定手かかり または関係の (適切な媒介次元:色)選択
特 定 辛
也 係
巳FARE濫
J
酬
% 戟
‑ 仙 V 5
% 0 0 1
S O%
Q‑o
図1 HouseらC1974)の導鎖注意モデル
ダムに与えられる.第2段階で特異関係に注意した場合には、次の段階で特異刺激(0)を選択す ると100^の報酬が与えられ、同一刺激(S)を選択すると報酬はまったく与えられない(または 誤情報が与えられる)。このように、特異学習が行われるためには特異関係‑の注意が必要であ り、さらにその前に適切次元えへの注意が必要であるというように、 2種類の注意の連鎖が仮定 されている。 House らはこのモデルは少し変えるだけで他の同異学習にも通用できるとし、そ の展望では、従来の研究で吟味されている実験変数の効果が、適切次元、同異関係および特定刺 激への注意に関係づけて論じられている。
ルールモデル 連鎖注意モデルでは、学習過程が適切次元への注意から同異関係への注意へ という順序で進むと仮定されているが、 Bowers (1976)はその逆を仮定するルールモデルを作 った。このモデルによれば、問題解決(学習)過程は①問題解決のルールの選択、 ⑧そのル ールを通用する適切次元‑の注意、 @適切次元内の手がかりへの道具反応からなっている。こ こでルールというのは、弁別課題ならば特定刺激を選択し、特異課題ならば特異刺激を選択する 際のルールである。このモデルと注意モデルとの主な違いは、情報が処理される順序(処理系列) にあるとされ、もしルールと次元が平行的に処理されると仮定すれば、 2つのモデルは論理的に 同じものになると考えられている Bowersはどちらのモデルが正しいかを、次の実験で吟味し た。
色と形の2次元からなる3刺激弁別課題と特異課題のそれぞれを原学習と転移に用い、ルール
(課題)が同じか変わるか、適切次元が同じか変わるかによって、表1に示すような4つの組合
せを作った。そして原学習が完成して転移課題が与えられるとき、変えなくてはならない、すな
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わち新たに学習しなくてはならない段階の数によって転移の成績を次のように予測した。 ①同 一同条件:ルールも次元も変えなくてよいので、どちらのモデルでも転移の成績は最も良くなる。
⑧同一異条件:次元が変わるので、連鎖注意モデルでは最初に適切次元を変え、そしてその次 元内のルールを選択しなくてはならない.ルールモデルでは適切次元だけを変えればよいO ⑧ 異一同条件:ルールが変わるので、連鎖注意モデルではルールだけを変えればよいが、ルールモ デルでは最初にルールを変え、そして適切次元に注意しなくてはならないo ④異一異条件:ル ールも次元も変えなくてはならないので、どちらのモデルでも転移の成績は最も悪くなる。
表1 2つのモデノレから予言される 転移の成績(Bowers, 1976)
転移で変える段階数 ルール 次 元
注意モデル ルールモデル 同 同 o o 同 異 2 1 異 同 1 2 異 異 2 2
以上の分析から、同一異条件の成績が異一同条件よりもよくなればルールモデルが支持され、
その逆になれば連鎖注意モデルが支持されると予想した。小学4、 5年生を用いた実験の結果は ル‑ルモデルを支持し、 Bowersは同異学習におけるル‑ルの重要性を強調した。現在のところ、
この実験しかないので結論は下せないが、 2次元の同異学習の成分として次元学習とルール学習 を仮定することは正しいと考えられる。そこで2つのモデルの妥当性を検討するとともに、学習 段階に応じた2種の学習の変化を検討することが必要である。一般的にいって、従来の弁別学習 の研究においては刺激次元を扱ったものが多かったが、今後はルール学習という観点からの研究 が必要であろう。
情報処理モデル Fellows (1968)は、弁別刺激の呈示から弁別反応までの問に、生体の内 部で生じると考えられる操作と情報の流れに基づいて、弁別学習のモデルを提唱した。これを情 報処理モデルとよぶことにする。まず、弁別過程の基本モデルとして、 ①弁別刺激の受容、
⑧感覚入力の分析、 ⑧知覚と反応の間に介在する認知的な判断、 ④観察可能な反応という 4つの独立な操作を仮定した。これに基づいて、図2に示すような標本比較課題のモデルを考案 した。この図では、もとのモデルの本質をそこなわない程度で、一部省略・修正してある。図の 中で四角の部分は操作を、矢印は前の操作からの出力で次の操作に入力される情報を示す。
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