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消費者行動の計量分析への若干の考察

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(1)

消費者行動の計量分析への若干の考察

その他のタイトル Some Considerations in the Econometric Analysis of the Consumer Behavior

著者 浜田 文雅

雑誌名 關西大學經済論集

7

7

ページ 660‑695

発行年 1958‑01‑10

URL http://hdl.handle.net/10112/15644

(2)

消費者行動の計量分析への若干の考察

二︑クライン型消費函数の吟味 三︑基礎的図式 四︑限界消費性向の意味

五 ︑

D e m o n s t r a t i o n

効果と消費習慣

P o t e n t i a l

の顕在化について

六︑資料の検討と計測結果

消費構造の計量分析が始められてから数十年になる︒そしてこの間における内容的発展は非常に目覚ましいもの

があった︒近代統計理論の発達は経済理論の成長と相侯つてこれを実現したのである︒

しかし︑それらの発展が余りにも急速であったために︑同時に数多くの未解決の問題を残してきた︒現在はそれ

らの問題を整理し︑解決してゆく努力をする段階であるものと考えられる︒筆者の試みもまたこのような意図のも

とに始められたが︑拙学未熟のためにその目的の入口で足踏みする程度に終つている︒本論文は︑このような目的

のための第一次接近の域を出ず︑従って問題提起の段階にとどまったが︑分析を進めるための手懸りは示すことが

六六

(3)

661 

消費者行動の計量分析への若干の考察︵浜田︶

二 ︑

て再検討を進めたいと思つている︒

本論では︑幾つかの問題点を指摘したが︑それらは次のようなものである︒即ち︑

①限界消費性向の計測に関する物価水準と人口の処理に関する問題

岡右に関連する消費者物価指数の算定方式に関する問題

③個別商品の需要曲線の対数線型仮説に対する疑問とその修正

六 七

④ 

D e m o n s t r a t i o

n

効果と相対所得の仮説に対する類型としての

" l i v i n g l e a r n i n g e f   f e c t

"

これらの問題を考察するに当つて︑議論に若干の混乱が起つているかも知れないが︑今後は︑個々の問題につい

本論文の内容は︑後半の一部を関西大学経済学部博士課程の森川教授のゼ︑ナールにおいて報告し︑更に全体に

ついては︑昭和三十二年十月三十日に本学経済学会研究例会において報告し︑諸先生及び同僚より貴重なる御意見

を戴き︑また森川教授のゼ︑ナールでは教授及び上田助手より好意ある御批判を戴いたことを記して感謝の言葉に

代える次第である︒

.クラインの占0年に発表されたL.R

c o n o m i c F l u  

u a

t i o n s   i n   t h e   U n i t e d   S t a t e s   1 9 2 i 1 9 4 1  

̀

(4)

数の前に付された``

0

円という記号は﹁予想される﹂ クラインはまづ︑ ︱つの提案を試みることにする︒ る ︒

主体の合理的行動原理を基盤として︑これを巨視的理論に結合することを試み︑更に具体的な経済資料によってそ

の理論の検定を行ったという点で非常に重要な意味を持つ労作であることは既に各国の経済学者の認めるところで

その統計的推定を同時推定方式によって行った初の試みであるという点でも興味ある問題を含んでい

この本の中でクラインが展開した消費理論の微視理論から巨視理論への過程を吟味することによって︑

一個の消費経済単位の今日消費する量を

(X

1.

uN 2

Xm

)

( 1 )  

すれば︑後者は︑今支出されない所得として︑貯蓄と呼ばれる︒このモデルにおいては︑家計︵消費経済単位︶.は︑

1 K

m +2 .

︾ ⁝

x ̀ ‑ ︶と

̀ n m  

3

a

II

gy

(2.1)

i 0

 

J=

m  +

1 

ul lu cN

1X

2

A

が き

xm +1 ,

・ ・・ , X n)  

(2.2) 

を極大にするように行動するものと考える︒ここにU

P i

1

番目の商品の価格︑

( a

c ip a t ed )

の意味である︒従って︑右の

( 2 .

1)

式は︑家

計の支出計画が立てられる期間内における支出予算をその期首に立てることを意味している

g ,

ante

の収支均等式

yは所得であり︑各変

六 八

(5)

663 

( 2 . 3 )   (in1

9

: J n )

市場価格と所得とは家計に対して与えられたものと考えられるから︑これらの変数は微分する場合定数として扱わ

( 2 )  

れる︒ウィルソン教授の議論に従って︑

i

は次のように書くことができる︒即ち︑

•9Xi

(2.4) 

i1 1g oo xi   a n y  

anPin翌………•曹

•(2.5)

 

̀

1 1

( r 1

2"

n

oz ia ny

1

1 

a x ,  

( 2 . 5 )

から各財についての需要函数を求めるには︑︵

2 . 5 )

x i

について解けばよい︒しかしその前にクラインは︑

価格と所得とが同じ比率で変化すれば︑

ゼロ次の同次式となり︑

消費者行動の計量分析への若千の考察︵浜田︶

( 2 . 5 )

について解を次のように表わしている︒即ち︑X i

六 九

功は変化しないから︑需要函数は価格と所得に関する

( 2 . 3 )

( 2 . 4 )

から入を消去すれば︑

00

き `

│11│lka

ミ ゞ

1 1 0 ar ia Xi  

そして出に関する導函数をゼロとおけば︑

m n

01 1U 1i

2 a

Pgきさlgy

き+と

i 0

 

j = m  

+ 1  

極大化は次の函数を形成することによって行われる︒即ち︑ であることは云うまでもない︒

( 2 . 1 )

( 2 . 3 )

(6)

を得る︒ここに︑

S 1 1

P i X i [ P + 1  

g u m  

消費者行動の計葦分析への若千の考察︵浜田︶

( 2 . 6 )  

︶  さ 1 1 X i a

汰 臣

. .  

a

i

a え

ド )

‑ W P i p i ( i

も 2

;

( 3 )  

そこで︑単純化のため

( 2 . 6 )

が均衡点の近傍では線形を近似してもよいとして︑

( 2 . 6

)

を線形と仮定する︒即ち︑

n P j

P  

i   . 1 1 2 a i j a n  

X g  

, ‑ 1  

y

( 2 . 6 )  

︶ 

. a n   Pi(r1

2

;

+ B

g  

( 2 . 6 a )

の両辺に

P i を掛け︑家計の消費支出を求めると︑

( 2 . 6 b )

の右辺第一項と第三項について次の仮定を設ける︒即ち︑

m m  

Mと(aij+0i)

IIaop+念………·…

••(2. 7 )  

1  1 

J ' u  

g I l  

( 4 )

︑ n

Pは一般物価指数である︒そこでクラインは︑

C 1 1

P 浜

i [ P

i 1

1 1

 

( 2 . 6 b )

( 2

. 7)

とから家計の消費函数︑ を家許の固定価格で計算された消費支出合計

• ( 2 . 8 )

t u

  ••....•...•.•...•••...••....•••••••••...

C 1 1 a o +   a 1  

( 2 . 9 )  

ー ー

a o +

︵ 1

a

1 )  

1 ー

0N·

…••………••;••…

S

m

m m m m  

P IIM

a i j

yMPi+26ipi

( 2 : G b )

 

r 0 1 ]

0   1'""1•=

3 0 1  

七 〇

(7)

665 

(2.1)

から

(2.5)

までの展開の結果︑

1

Y

C = a o

 

a 1  

一家計の個別商品に対する需要函数は︑

氏 ︵ さ

( i )

を得る︒そこで︑経済全体の家計数Nについて

( 2

. 8

)

をアグリゲイトすれば︑巨視的消費函数は︑

N N ( i )

5

と さ

1 1 2 ‑ a o

︐ 

.  

g 0   1 

0 1 , g

ー " 1

N 1

︵ こ ︵

3

S

a

i = t  

C 1 1

c g i )

A

l o l l 2 ; a o ( i )

R I 1 1 1

.  

gn“1•=1

造と考えられるがーから演釈しているが︑

Z  +3(0)3 

.

n 1 

(2.10) 

その商品の価格と クラインは︑巨視的消費函数を家計の理論という微視的な理論ーこれが消費理論における基本構

その全体を通じて次の二つの問題を包括している︒即ち︑第一に︑彼は

予想要素︵価格︑所得等の︶を導入することによって貯蓄を説明したことである︒云い換えれば︑貯蓄とは今日支出

されない所得の部分であり︑逆に云えば︑将来支出されるために残された部分と考えることである︒第二に︑個々

の家計の行動を単純総計することによって社会的消費函数を得ていることである︒第一の点については本節の︵註︶

で触れるので︑第二の点について論ずる︒筆者の本論文の主題も実はこの第二の点と密接な関係があるのである︒

'1::>-1~

I I   J~~

t

. . . .  _—-

2

(8)

の得られないことが解かる︒この点については後の第四節に詳しく述べることにする︒従ってここでは単に次の簡

単な説明に止める︒即ち︑

( 2 . 1

0 )

において︑右辺の第二項の変数

y

Pとは

Y

P として一個の変数のように扱わ

( 5 )  

れる︒即ち︑この場合︑一般物価指数Pは単に名目所得Yを実質化するためのデフレーターとして用いられるから︑

る ︒

即ち︑純理論的にはまさに両者は一致するが︑一度これを統計的に推定する場合には︑ この二つの問題は︑ ということである︒ そこで問題は︑ 消費者行動の計羞分析への若干の考察︵浜田︶

その家計の所得に関するゼロ次の同次式であるという結論を得た︒そして

( 2

.

6 a )

のような方程式を︑個別商品に

できない︒何故ならば︑集計の対象となる各商品は︑

が︑その構造係数を得るために必要なのか︑

( 2 . 6 a )

は ︑

そのままの形では各商品について集計することが

その単位がそれぞれ異なるからであり︑これを金額に引直す

( 2 . 6 b )

が名目的な変量間の関係式であることを嫌つて︑

そこで

( 2 . 6 a )

( 2 . 6 b )

のように書き換えられて各商品について集計が行われる︒即ちこの

( 2

6 b ) .

が一家計

の消費函数となるわけである︒しかしクラインは︑

を実質的な変量に置き換え︑

( 2 .

8 )

を得ている︒そして︑今度は社会全体に関する巨視的消費函数を得るために経

巨視的消費函数を求める目的が一体何処にあるかに懸つてぐる︒

それとも実質消費額を予測することが必要なためなのか︑云い換えれ

ば︑限界消費性向を直接求めることが目的か︑それとも︑実質消費額を予測できればその役目は了ると考えるか⁝

一見すると全く矛盾しない問題のような気がするが︑実は問題はそう簡単ではないことが解 済全体の家計について集計して︑

( 2 .

1 0 )

を得たのである︒ ことによって集計が可能となるわけである︒ 関する一家計の需要函数として近似するのである︒

巨視的消費函数

( 2 .   10)

は充分な結果

(9)

ま ︑︐" 

一般に次のような関係式によって表わすことが出来る︒即ち︑ . 

一個の変数として消費函数の中に陽表的に導入されてはこないのである︒しかし︑たとえ

名目所得Yと一般物価指数P

とは相互に密接な関係をもつことは当然であ

る︒従って後の第四節で示すように︑

( 2 . 1 0 )

のような形の消費函数の統計的推定によって求められる限界消費性向

は計量的分析の立場から問題を残していると云わざると得ない︒そして筆者はこの問題解決のための一提案を後節

( 1 )

貯蓄に対するこのような定義は実際の家計の貯蓄決意のどの程度を説明することができるかについては問題があるが︑

クラインは同じ本の後半﹁模型皿﹂において︑更に資産項目を嘩入したより一般的な図式を展開している︒

c . f .

'

^ 

Ec

on

om

ic

  Fl u c tu a t io n s '̀  

P .  

4042; 

P .  

46 ︑ 50

( 2 )   c.f•

E . 

B . 

Wi

ls

on

, 

"

No

te

s  o n  U t il i

t y 

Th

eo

ry

  an d  D

em

an

d  Equations" 

Qu

ar

te

rl

y 

Jo

ur

na

l  o

f   Economics,

o l   V .  

L

X ,

 

Ma

y,

 

1 9 4 6 ,   P .

453 4 6 0   ︑

( 3 )

需要函数︵個別的な︶を線型と仮定することは従来の市湯需要函数への対数線型仮説の近似と一致しないが︑従来の対 数線型の近似の方がむしろ不自然と考えられる︒即ち︑筆者の個人的意見としては︑個別的需要函数は普通の線型の方が 自然の仮定であると考える︒その理由は︑個別需要函数を対数線型と仮定すること裏に︑好むと好まざるとに拘らず︑消 喪者線好場を対数線型と仮定することを意味するからであり︑このことは︑エンゲル係数のコンスタントであることを必 要とし︑現実の家計調査資料に見られる経験的事実と矛盾する︒

消費者がその効用満足を極大にするように財の選択をすることを前提として︑

消費者行動の計量分析への若千の考察︵浜田︶

において試みるつもりである︒ 陽表的にPが導入されないにしても︑ 統計的推定に際しては︑

個人的消費者の購入財の需要表

(10)

I I u l i ( I I M P i 5

‑ s

︒ )

•=1

I I I 3 p i

s

3 0

 

念があることは云うまでもない︒

(吋 N1

X さぶ‘…さ ;P1,P2

P き… pn

I)110:· …••… ••(3.1)

は各購入財の購入量︑

P 1 , P

這 p 2 ,

貯蓄するか消費するかという選択をも考慮するものとすれば︑

( 3 . 1 )

の変数に更に︱つの変数即ち実質的貯蓄額S

( 1 )  

を導入する必要がある︒そこで︑

(3.1)

は次のように書き換えられる︒即ち︑

0(N1 しざ… x")S こきき‘… Pmi

I)110:· …•……… •••(3. 2 )  

ここに

h

は︑貯蓄の誘因となる何らかの指標である︒︵

3 . 1 )

または

( 3 . 2 )

そこで︑筋途をより明瞭なものにするために︑個人的消費者の総効用函数

U

を次のように定義する︒即ち︑

f l l u ( R

 X

1, 

2,

  Xa

, 

·• • Xn

S) ………·… ••(3. 3 )  

右の式は︑個人的消費者の総効用が各購入財の購入量と実質的貯著

Sとに依存していることを示す︒更に︑

( 3 . 1 )

または

( 3 . 2 )

によって明らかなように︑

受けるから︑ 総効用

U

の極大値は︑各購入財の価格とその個人の所得によって制約を

( 3 )  

これを収支均等式として次のように表わすことにする︒即ち︑

⁝⁝⁝⁝⁝⁝⁝⁝⁝⁝⁝⁝⁝⁝⁝⁝

( 3

. 4

)  

S o は名目貯蓄額である︒従って︑消費者の総効用の極大満足を得ることのできる各購入量︵均衡購入呈︶は︑

次の条件を満足しなければならない︒即ち︑周知のラグランジュ乗数法によって次のようにして求められる︒

消費者行動の計量分析への若干の考察︵浜田︶

その根底に消費者選好場の概 は対応する財の価格︑Iは名目所得である︒消費者が︑

(11)

669 

右の条件式系のうち︑第一番目から第n番目までは︑各財の均衡購入量に関する制約を示すものであり︑最後の式

が貯蓄Sを決定する直接の制約となる︒

そこでいま︑単純化のために最後の式を取り除いて考察を進めることにすれば︑第一番目から第n番目までの各

消費者行動の計量分析への若干の考察︵浜田︶

i i l l o  

° ̀ o u  

f } s  

a s  

. A P n 1 1 0  

a u

  O W  

arnax ︑

8

1111

ー ー こ

2 1

〇 箋

a 5 2 0 5 2  

; .   P i   1 1 0  

〇 啜 翌

a x

1  

a x

1  

S 0 1 1 s i  

 

c :  

̀

A  

を満足する︒従って︑

゜ 0

│ 

0: 

ー ー

1 1

醤 者

. 苫

. . .  

.

さ 0

a s

│ 1 1  

O: 

ー ̲

1 1 0 ;  

a さ 1

a x 2  

右の式を満足する

X i ( i 1 1   1

,  

2 ,

  … •n) と S

とは、

dr113  n 

s "

u  

m

mr

│ 

d x

;  

+~ds

1 1 0   O X i

? s  

( 3 . 5 )  

(12)

︵ 註

ai

ll

A  

11

 

. 

Pn  

a 2

1  

. . . 

a

こ 1

P 1  

a 1 1  

Bi

ll消費者行動の計董分析への若干の考察︵浜田︶

( 3 . 5 )

から入を消去することによって加重限界効用均等式が求められ︑更に︑

( 3 . 4 )

( 3 . 5 )

0 0 ( 3 )  

各財の均衡購入量を求めることができる︒消費者選好場を線型と仮定すれば︑各財の限界効用曲線は︑

II

di

+ a ;

X 1  

1  + 

a ; 2  

X 2

 +:'+ 

a ; , ,

x .  

•…

••(3.6)

aX

i 

と書くことができるから︑これを

( 3 . 5 )

( 3 . 4 )

( 3 . 5 )

X i ( i 1 1

1 ,  

2 ,   3 ,

 

n )

1 1

a2

21

:·:·………•••••…·………

(3.

7) 

••••••••••.•••••••••••••

••••••••••••••••••••••••

Xn

11

an

+B

J 

A . 

替 i ー

X1

  1 1

  a

1  + 

f i 1  

この点については後に述べる︒ 式の中辺の第三項はすべてゼロになる︒

き…•••P`i

a 1 2

⁝ ・ :  

l l

1 n

 

a 2

2  

: ・

a 2 n  

•9

• , .  

•/

, .  

•~9~•

 

a

2

••...•

a n n  

A ;   11 1A

8滞図蒋 七六

(13)

ち ︑

( 3

7) .

は ︑

x:

11

c̀

n+

p.

J.

+T

n

P t

X1

  " 

a ・ 1  

+[

'1

'  /

+  T

1 

( 3

B

. 7)

のみに依存するように見えるが︑右辺の所得の係数は外見上からは︑各財の購入量が所得II

も︑第一項aもともに右に示したように︑価格

pi

(i

11

1

2 ,

9 n

)

と消費者選好場の構造係数︵特性値︶

a i j (

i 1 1

1 ,  

( 4 )  

2 ,

n ;

j   1 1

 

0 ,

̀  2

 

,  

・ ・ ・ n

)

とからなつていることが解る︒

0 0 0   ( 3

.   7 )

は基本構造

( 3 . 4 )

( 3 . 5 )

とから導かれた誘導形であるから︑

ことが出来る︒従って︑

( 3

.

7 )

における所得Iの係数には︑価格の変化による各財の購入量への影響までも含まれ

ている訳であるから︑これは当然何らかの形で修正されなければならない︒

この問題に対する通例の打解策としては︑名目所得Iを実質所得に置き換えるために︑適当な物価指数をデフレ

( 4 )  

ーターとして用いる方法が考えられる︒しかしこの方法が余り適当ではない理由を後の第四節で述べる︒

他の︱つの方法が本論文での主眼をなしている︒それは︑直接に所得Iの係数である

B

ような価格効果を取り除こうという試みである︒即ち︑第一の方法と同様に︑この方法もまた︑具体的な計量分析

の立場から便宜上取る手段としてであるが︑︵

3 .

7)

の右辺に︑新らたに適当な物価水準Pを導入するのである︒即

N211a72 十 P92r

+ゞ、き………•…••(3.8)

と書き換えられる。ここに、 I.pt(i111`2• … -n) は当該商品の価格 pi と他の価格との比率を何らかの形で綜合し

(3.1)

を別の形で

s pe c

i fy

したものと云う

(14)

, 1

 

C 1 1 2

.

p k i

さ k

i . a 1 1 2 .

. a k i . P l l

k 1 1 1 i 1 1  

K = t   1

= 1  

II

 

RI 

+ 

~I

~

+ 

~I

' 1 : > j  

( 3 . 9 )

I ( K K = 1  

N  n 

2

ご 2 8

I ( K ) K Q   1 ' 1 1 1  

T I I

.

T 9 k i k f l   1•=1

1

2

k i l l と と a.Ki+32 ご

8

IK+

し . い ‑ T 9 k i p K 0   l  1 = 1  

K = l   1

= 1  

K=1••

u  l 

K = t   1

= 1  

T 9 i p 1 1

r

i j

きである︒

. f 0 1  

p ̀

‑ X

1 1 d ̀

` ﹄

B 9 f ‑ I + T 9

‑ J P

N 1

"

a 1  

f

i

' I + 7

︑ ご .

p

消費者行動の計蓋分析への若千の考察︵浜田︶

たものであり︑また︑

r

P i との比率である︒そして︑I

( 5 )  

えることができる︒即ち︑ クラインの図式によれば︑

( 3 . 8 )

は次のように書き換

§211a92+[• 2  I 

+ 7

̀ '

2   p

………•…·:

. .  

︵ 3 . 9 )  

m n n n  

tpiXill

ぃ.+I.

“B9i+p.

•T"i• …••………… (3.10) 1•=

1

.  

g 0

 

1  ,‑

"

1

‑ n a i  

によって求められるから︑経済全体の家計数をNとすれば︑巨視的消費函数は︑

( 3 . 1 1 )  

七八

(15)

( 1 )

実質的貯蓄とは︑ここでは︑消費されず換言すれば消費を抑制することによってその部分を貯蓄するという意味である︒

( 2 )

ヒックス・・アレン型の消費構造図式では︑普通︑所得がすぺて消費される場合が考えられているが︑現実には当然貯蓄

が考慮される必要があり︑現在は︑ヒックス・アレン型は︑消費構造の部分構造としての意味を持つことは周知の通りで

あるが︑更に︑厳密には︑消費が所得の範囲内でなされるという前提が加わっている訳である︒

( 3 )

この仮定については︑既に慶応大学の辻村江太郎氏の精緻な研究があり︑現実の説明に対して可成りの説得力を持つ研

究成果が発表されている︒

c .  

f .

 

(

﹁三田学会雑誌﹂四五巻七号①

︵岩波︶﹁経済研究﹂五巻四号②

﹁三田学会雑誌﹂四九巻五号

( 4 )

普通︑巨視的消費函数の統計的測定は︑一人当り実質額としての所得・消費関係式に対して行はれている︒

( 5 )  

L .  

R•

K l e i n ,  

"

E c o n o m i c   F l u c t u a t i o n s "

  P .  

4 2 4 3

 

クラインの図式

( 2 . 5 . 6 d )

と全く同じ型の図式であるが︑右の式を更に社会全体の家計についてアグリゲイトしたものが

本文の

( 3 . 1 0 )

式である︒

限 界 消 費 性 向

名目所得を実質額に切り換えるために適当なデフレーターを用いる方法における難点

今︑消費支出金額をC︑名目所得を

Y

これらを実質額に換算する適当なデフレーターをPとすれば︑社会全体

のアグリゲイトされた巨視的消費函数は次のように書けるものとする︒

消費者行動の計量分析への若干の考察︵浜田︶ は︑次のようにして明瞭なものとなる︒ 前節の第一の方法即ち︑

四 ︑

の 意 味

(16)

の成分eiを更に検討してみると︑

C1

PC1

dC 

│ .

111 

e 1  

dp

 

e 2 .dP 

'dY 

p

b1

1 

d P  

C  . 

dC 

1  . 

dp

 

y  1 ー

]t

Y.

i ようにして次に

b

の性格を再検討してみる︒

消費者行動の計蓋分析への若干の考察︵浜田︶

( 4 . 2 )

は ︑

KI Ia +b

︵ ー ド

4 .

1 )  

p p .  

b

は︑周知のような巨視的限界消費性向である︒そこで︑

( 4 . 1 )

は一見して解かるように実質額について

の所得・消費関係を示す式であるが︑

b l l  

これを

( Y

̲ P )

について微分したものが限界消費性向

b

である︒そこでこの

~

~1(;

'

>  ‑ ‑ ‑ . .  

~1~

.

I I

 

d

C

C

dP

t

/dY

Y

dP

t

( 4 . 2 )  

dC

 

⁝  

1  1

ー ー ー

e1

 

1 ,

e 2  

i

⁝ ( 4 .

2 ' )  

dC

  dY 

と書くことができる︒

( 4

.

2 '

)

の右辺の第一要素の分子にある

e l

は︑物価変動に対する名目的消費支出の弾力性係

数であり、分母にある念は、名目所得に対する物価の弾力性係数である。更に右辺の第二要素U〗})が名目所得に

対する名目消費支出金額の相対的増加比率即ち︑名目的限界消費性向であることは云うまでもない︒そこで︑

( 4 . 2 ' )  

八〇

(17)

( 4

. 2

)

︑ ︵

4 .

2 '

) ,

  (

4 .

  3 )

 

第二の方法を取る理由を少し補足する必要がある︒

c

了を需要の価格弾力

( 4

. 2

)

︑ ︵

4 .

2 '

)

︑ ︵

4 .

3 )

を見ると︑実質的限界消費性向

b

は︑名目的限界消費性向

d d

性と物価の所得弾力性とで割引いているように感じられる︒しかし︑そこには二つの前提がなされていることに注

意しなければならない︒即ち︑需要の価格弾力性係数が一定であるという前提が一っ︑物価の所得弾力性係数が一

定であるという前提が他の︱つである︒そして︑従来なされて来た計量分析では︑

う結論に確信が持たれていないことが︑

右のような検討を経て︑ この分野での数多くの労作によって暗示されている︒

筆者は第一の方法即ち︑物価水準をデフレーターとして用いる方法に疑問を抱いたの

︶  

で︑前節の結論から第二の方法を考察することにした︒

消費者行動の計量分析への若千の考察︵浜田︶

b 1 1  

( 1 1

  e2)  (1 

+ 7 ]

︶ 

dC

 

, 1  

1+7  1 

b 1 1  

1 1   e 2  

dC 

e 1  

1 1 醗 ・

{ I

I 崎

. か

1 1 ( c

+ 醗 .

p

・ {

1

十 二

1 1 醗 ・

{ T

)

りは︑実質的消費支出の価格弾力性係数であり︑クライン流のアグリゲイションを仮定すれば︑個別商品に

対する各家計の需要の価格弾力性の加重平均値となる︒これを

( 2

. 2

̀

e i

( 4 . 3 )  

この両者が安定的なものだとい

( 4 . 3 )

の右辺の

(18)

676 

第一要素を構成する二つの係数7と約とを第二の方法によって分離するだけでは意味がない︒何故ならば︑名目的

限界消費性向

d C ‑ i y

そのものは︑当然物価水準の変化と共に変化するであろうから︑物価水準Pを消費函数の中に

陽表的に導入することにこそ意味があるのである︒即ち︑前節の

( 3

1 1 )

.

C=~+PY+TP•

…·:·…•………

(3.11)

0 0 0  

これを

y

について偏微分すると︑

…·………•………

•(4.4)

その中どれだけの割合が消費に支出されるかを示すものであることは云うまで

限界消費性向に影響を与えるもう︱つの要素として人口がある︒

費支出を対応させるのが普通行われる方法である︒ この点に関しては︑従来一人当りの所得及び消

そこで︑物価水準に関する右の議論を人口の変動に適用すれば次のようになる︒

社会の総所得︵実質︑分配︶を

y

︑消費支出︵実質︶をC︑人口をN

+ P ( 4 . 5 )  

I I I R

. 匂

︵名目︶が微小部分増加した場合︑

は単なる名目的限界消費性向ではなく︑

B

I I .

涸 き y

一般に巨視的消費函数は︑

.  

物価水準をある一定水準︵任意の︶に固定したときに︑

(19)

消費者行動の計量分析への若干の考察︵浜田︶

( 4

.   8

)

における変数N を得ることができる︒従つて︑

a11(7

﹂ こ

( 4 . 6 ' )  

dC 

1 , 1  

€1

a11•

dY

⁝  

1 ー €2

むは現在の経済理論の常識として余り意味を持たないから︑

( 4

.  

7 )   dC 

•••••••••••••••.••••••••••••••••••••••••••

dY 

前述の議論と同様に︑限界消費性向から人口の変動による消費の変動効果を分離す

( 3 . 1 1 )

は更に次のように書き換えることができる︒

( 4

. 8

)  

a  + 

f i  

+

TP + 

8  N•

…••………

0

の経済学的意味は︑所得と物価水準を一定としたとき︑人口が増加すれば

国民総消費支出に如何なる影響を与えるかということにある︒このことは︑わが国のように人口増加に悩む経済に

おいては非常に重要な意味を持つであろうと考えられる︒

dC  N 

ー,ー

€1 c 

d ・

N  

d N

 

dY 

I I  

:;, 

I ‑ !  

I /  

~ ~

‑ ‑ ‑ ‑ ‑‑ ‑ ‑ ‑ ‑

忍竺

ヽ ヽ I I  

この式を

Y N

. . . . . .   . . . . . .   I  I 

琴 崚 叶尺壼

これを無視すれば︑

( 4 . 6 )

は ︑

dC 

( 4 . 6 )

dY  . 

(20)

TVo(

0 ^

‑ q ‑ ^

 

1 )  

となり︑物価水準の変化によって乗数の値が修正されることになる︒

V o

であるから︑がを物価変動を無視した場合の乗数とすれば︑

d P  

3

dp  

k1171

1 1

1 ‑ f i

'

T

d y  

ケインズ型の乗数K

. は ︑

d P   d y  

P I

I P

︑ T

l l p 9

dC 

d Y  

dp  

IIP+T.m 

dC 

i  dC 

1 1  

( : J d Y   + T d P  

巨視的消費函数に物価水準を陽表的に導入することによって︑乗数理論による所得の波及過程に物価水準の変化

を導入する手続きは次のようにして行われる︒即ち︑本文の第三節の︵

3 . 1 1

)

式をPyについて全微分すれば︑

消費者行動の計量分析への若干の考察︵浜田︶

K^•K9

( i )  

八四

参照

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