審 査 論 文 要 旨(日本文)
論文提出者氏名: 三浦太郎 審査論文
題 名:鼻汁中サイトカインから見たRSウイルス感染症の重症化解析
著 者:三浦太郎,柏木保代,河島尚志
掲載誌:小児感染免疫 25巻3号 (2013年掲載予定)
【背景と目的】
Respiratory Syncytial Virus (RSV)感染症は乳幼児における上・下気道炎の病因の1つであ り,国内で年間2−3万人程度の入院があると推測されている.RSVはほぼ100%の小児が2 歳までには感染を受けるとされるが,臨床の場において人工呼吸器管理を必要とするような 重症化をきたすことも多い.将来的な喘息の発症因子としての関与も指摘されており,重症 化のメカニズムの解明は非常に有益である.
今回我々は,重症度を予測する因子を検討することを目的とし, RSV の初感染部位である鼻 腔での免疫反応を調べるため、RSV 感染症の重症,軽症間における鼻汁でのサイトカインの検 討を行った.さらに宿主側の免疫応答の背景としての Single Nucleotide Polymorphisms (SNPs)を検討した.
【対象および方法】
2011 年 10 月から 2012 年 2 月までに RSV 感染症にて本院に入院及び外来加療を行なった計 46 人の鼻汁を採取した. 呼吸状態の評価をクリニカルスコアを用いて,重症群と 軽症群に分 けて比較検討した.3 種類のケモカインと 14 種類のサイトカインの測定を行った. さらにそ の結果をふまえ,鼻汁の濃淡による誤差を排除するために, messenger RNA レベルでの IL-6,
IL-8, IL-13 の検討を,重症群 5 例と軽症群 9 例で行った.
また,宿主側の免疫応答の背景として IL-8 -251T/A における SNPs の検討を,重症群 7 例,
軽症群 7 例,健常児 10 例を用いて行った
【結果】
サイトカインプロファイリングではIL-13 が, messenger RNAレベルではIL-8が重症群に おいて高値であった. IL-8-251T/A SNPsにおける重症度での比較では, AのアレルがRSV 感染症群でコントロールと比べ有意差を認めた.
【結論・考察】
RSV 感染症の重症度は, RSV の外来要因と遺伝的な宿主要因によるサイトカイン・ケモカ イン過剰産生の関連が示唆された.
サイトカインプロファイリングと定量化した messenger RNA レベルで結果に差が見られた ことは検体数を増やせば出なかったのでは無いかと考えられた.
乳児期早期のRSV感染症はTh2の優位な反応を誘導するという機序があり,これらの児が今 後喘息を含むアレルギーを呈するのか,症例数を増やして検討していく必要があると思われ た.
東 京 医 科 大 学