• 検索結果がありません。

論文審査の結果の要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "論文審査の結果の要旨"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1

論文審査の結果の要旨

氏名:桜 庭 望

博士の専攻分野の名称:博士(総合社会文化)

論文題名:「社会教育主事の役割に関する実証的研究~市区町村行政組織に着目して~」

審査委員: (主査) 教授 北 野 秋 男

(副査) 教授 眞 邉 一 近 教授 関 川 悦 雄

<論文審査要旨>

1.本論文の構成

戦後、社会教育・生涯学習の発展・振興に一定の役割を果たしてきた社会教育主事は、近年においては 行財政改革等の影響で、その数は縮減傾向にある。本論文は、戦後から現代までの社会教育主事の専門的 職務内容や行政組織内での役割、地域社会での貢献などに焦点を当てながら、わが国おける社会教育主事 の存在それ自体を検証・評価することを試みたものである。

先行研究においては、主に社会教育主事に関する法的・政策的研究、ならびに専門的職務内容に関する 解明がなされてきたものの、本論文に見られるような社会教育主事の行政組織内での異動に焦点化した研 究は存在せず、また教育委員会と首長部局との関係、都道府県と市区町村教育委員会での役割の違いを解 明した研究も皆無の状態であった。本論文は、先行研究との差異や内容的な独創性から見ても、その学術 的意味と価値は高く評価されるものである。

本論文において考察の対象となった社会教育主事とは、都道府県及び市区町村教育委員会内に配置され、

地域内において社会教育を担う者に対して専門的・技術的な助言と指導を与える役割を担う教育職員のこ とである。全国の社会教育主事数は、2011 年においては 2,518 人であったものの、その数は過去 10 年間と 比べると半減している。主なる要因は、行財政改革、市区町村合併などとともに、社会教育主事の職務内 容に関する自治体内の認識低下が挙げられる。こうした社会教育主事削減の動向に対しては、依然として 社会教育主事の職務に関する意義と重要性が指摘され、「社会教育法」による教育委員会への必置義務継続 に関する議論も行われている。以上の点からすると、社会教育主事が行政組織内において果たす役割や影 響を検証する研究成果は、社会教育主事の存続自体にとっても重要な意味と価値を与えるものとなる。

本論文の構成は、序章・終章に加えて本文が8章構成でなされ、わが国の社会教育主事制度の制度的・

法的・政策的展開が歴史的に考察されているだけでなく、都道府県・市区町村教育委員会と一般行政内に おける職務内容や役割を実証的に解明するものとなっている。本文は、A4版(40 字 X30 行 )で 209 頁で ある。本文は全体を2部構成とし、序章に続く第1部を「社会教育主事制度の変遷」(第1章~第4章)、

第2部を「社会教育主事の役割と影響」(第5章~第8章、終章)として論じている。本論文の構成は、以 下の通りである。

序章・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 第1部 社会教育主事制度の変遷

第1章 社会教育主事制度の歴史・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 第2章 都道府県の社会教育主事・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51 第3章 派遣社会教育主事の役割・・・・・・・・・・・・・・・・・・・74 第4章 行政組織内における社会教育主事のキャリア・・・・・・・・・・108 第2部 社会教育主事の役割と影響

第5章 市区町村行政型社会教育主事の経験と自治体での活用・・・・・・136 第6章 社会教育主事のネットワーク・・・・・・・・・・・・・・・・・148 第7章 社会教育主事の専門性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・163 第8章 新たな時代の地域住民への支援・・・・・・・・・・・・・・・・184

(2)

2

終章・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・196 2 本論文の概要

序章では、我が国の生涯学習振興策の動向と社会教育主事の現状を提示し、先行研究においては都道府 県と市区町村行政の違い、市区町村の行政職員の異動という現実に即した研究が皆無であった点を指摘し ている。

第1章では、社会教育主事制度を大正期以降の歴史的推移から概観している。社会教育主事の変遷にお いては、三つの重要な転換期が指摘される。第 1 期においては、昭和 34(1959)年に社会教育主事が市町村 に必置義務化されたこと、第2期においては、生涯学習の理念の導入により、社会教育は個人の要請にも 対応することになったこと、第 3 期においては、行財政改革により社会教育主事をめぐる環境が大きく変 化し、新しい公共行政の担い手として注目されるようになった点である。

第2章では、都道府県の社会教育主事について論じている。戦後の社会教育主事制度は、戦前の反省を もとに生まれ変わったものの、行政組織は戦前からの仕組みを引き継ぐものであった。本章では、都道府 県の社会教育主事の役割が各自治体における業務内容を通じて検討されている。

第3章では、派遣社会教育主事制度の役割と実態が解明されている。派遣社会教育主事制度が社会教育 主事全般に及ぼした影響は大きく、同制度により全国の社会教育主事数が増加したものの、制度の変質が 不可避となったことが指摘されている。

第4章では、行政組織内において社会教育主事がどのようなキャリアを形成しているかが類型的に示さ れている。都道府県、市区町村それぞれの教育委員会で行われる異動の実態から、社会教育主事の異動を 行政組織全体で捉えていく必要があることが示される。

第5章では、市区町村行政型社会教育主事の経験と自治体内での活用について、聞き取り調査を基に分 析が行なわれている。様々な行政組織内の部局経験との比較から、社会教育行政と社会教育主事の業務内 容の特徴が指摘される。

第6章では、社会教育主事の行政組織内での位置づけをネットワーク化という観点から分析し、社会教 育主事が人とのつながりだけでなく、様々な個人や団体をつなぐ中心的な役割を果たしていることも指摘 される。

第7章では、社会教育主事の専門性が問われ、今日の社会教育主事に求められものは、様々な組織と 組織をつなぐコーディネーター機能であることが指摘される。また、社会教育主事が持つ資質・能力とし て「行動力」「発想力」「企画力」「対応力」「継続力」「調整力」が必要であることも指摘される。

第8章では、社会教育主事が果たす役割が時代に応じて変化してきたことを踏まえ、さらに指定管 理者制度など行政の新たな仕組みへの対応が述べられている。今日の自治体職員に求められる資質・

能力は、「社会教育主事の経験によって培うことができる」という重要な指摘がなされる。

終章では、地方自治が必置規制・緩和の方向へと進む中で、社会教育主事の必置を継続する必要が あるとの認識が示され、新たな人材育成のためのロールモデルの存在が大きいことが結論とされてい る。

3 本論文の成果と今後の課題

本論文の内容において、学術的価値がとりわけ高い点は、これまでの先行研究が都道府県と市区町村の 社会教育主事の専門性の差異、ならびに派遣社会教育主事の制度と役割に関する問題を全く検証してこな かった点に鑑みて、派遣社会教育主事制度が定着するにつれ、どのような評価がなされてきたかを実証的 に検討した点である。本論文では、派遣先市町村と派遣社会教育主事本人の双方の立場から、派遣社会教 育主事制度を歴史的に検討することがなされ、市町村行政に及ぼす影響に関する分析が行われている。

以上のような考察を通じて、本論文においては社会教育主事、ないしは社会教育主事に相当する職務が 自治体行政組織内に必要であるだけでなく、新たな能力形成が求められている点が論証されている。さら には、社会教育主事経験者の異動と他部局業務経験の比較研究により、社会教育主事経験によって企画調 整力などが培われるだけでなく、住民と行政のネットワークが構築され、異動後もその経験を活かすこと が可能である点も解明されている。

しかしながら、本論文においては社会教育主事の職務・役割などの重要性が指摘されるものの、現実の

(3)

3

社会教育主事の配置は10年前と比べると半減し、社会教育主事の存在それ自体、ならびに社会教育主事の 経験の有無が一般行政組織内でも充分に認められているとは言い難い。また、「住民との協働」を進める 上でも、これまでの社会教育主事のあり方では地域住民のニーズにも十分に答えるものとはならないであ ろう。こうした新たな社会教育主事の専門性だけでなく、行政組織内での役割、地域住民との協働など新 たなモデルが必要となり、さらなる理論研究と事例研究も必要となろう。

本論文に求められる点、ならびに今後の課題として挙げられる点は、教育行財政改革・民営化などの影 響で削減傾向にある中での社会教育主事の新たな役割モデルの提示と社会教育主事の配置において効果を 上げている自治体の実証的研究であろう。また、わが国の生涯学習の進展の中で、社会教育主事の在り方 も変化せざるをえない。こうした社会教育主事を取り巻く厳しい現実を直視して、新たな社会教育主事の 役割と意味が模索される必要があり、今後の継続的な研究を期待したい。以上、本論文における今後の課 題はあるものの、博士(総合社会文化)の学位を授与されるに値するものと認められる。

以 上 平成29年1月31日

参照

関連したドキュメント

仏像に対する知識は、これまでの学校教育では必

  「教育とは,発達しつつある個人のなかに  主観的な文化を展開させようとする文化活動

しかし、前回の改定以降においても、

・条例第 37 条・第 62 条において、軽微なものなど規則で定める変更については、届出が不要とされ、その具 体的な要件が規則に定められている(規則第

歴史的にはニュージーランドの災害対応は自然災害から軍事目的のための Civil Defence 要素を含めたものに転換され、さらに自然災害対策に再度転換がなされるといった背景が

第三に﹁文学的ファシズム﹂についてである︒これはディー

今回のアンケート結果では、本学の教育の根幹をなす事柄として、

1、研究の目的 本研究の目的は、開発教育の主体形成の理論的構造を明らかにし、今日の日本における