九州工業大学研究報告(工学)N。.551987年12月 45
インピーダンス板上の二つの不連続点による
平面電磁波の散乱
(昭和62年6月30日 原稿受付)
電子工学科鹿毛慶雄
電子工学科(大学院)山内慎二
Scattering of A PIane Electromagnetic Wave by Two
Discontinuities of Impedance Planesby Yoshio KAGE Shinli YAMAUCHI
Abstract
Thi・p・pe・d・・cHb…h・b・・k・・a・t・・i・g・f・pl…d・・…m・g…i・ …e(H…v・)ca・・,d b}
two discon加uities of impedance pIanes which are approxim田ely con5idered in5tea〔I of lossy dielec−
tric slabs.
. The effect of multipIe scattering bet、veen the two discontinuities is numerically 5hown when lhe di・t・n・e b・twe・・th・m i・ab・・・…w…1・・gth・If・he di・・−i・sh…e・・h・・ah・If w・vel,ng・h,
th・・c・・t・・i・g P・tt・m i・…y・imiI・・…h…f・・i・gl・di・c…inuity. Th・・ff・・t。f muldpl。,,a,.
tering is dep〔三ndent upon the incidellt angle of the plane wave.
Lまえがき 綱数値計酬果砒蚊した1・文をすでに蹴た」)
その結果,損失がかなり大きくσ∫ωε。≧ユ.0で,し 2種の半無限誘電体スラブの接合部に平面電磁波が入 かもスラブの厚さが誘電体の表皮厚さより大きければ,
射したとき,接合部によって惹き起こされる散乱波を解 インピーダンス板近似は祖失誘電体スラブのよい近似法 析的に厳密に求める問題は,問題の構成が比較的簡単で であることがわかった。
あるにもかかわらず理論的な取扱いに面倒な手続きを要 本論文では上記の結論を踏まえ,図1ωに示す2つの し・また理詮的結果の故仙計P二も大変手間を必要とする。 不連続部をもつ諭E体スラブの接合を,同図(b}に示すよ この問題の取扱いを容易にするために,誘電体スラブ うな2つの不連綻点をもつインピーダンス板の接合に置
を媒質の固有インピ・一ダンスで置き換えたインピーダン き換え,これに平而電磁波が入射したときの散乱浪を求 ス板近似法によって境界条件を簡略化し,インピーダン める問題を扱い,理論的な再刊斤および数他例を示すこと ス板の接合点による散乱波を求める問題に置き換えれ にする。
ぱ・理違的な取扱いや数値計算の手続きが非常に簡略化 インピーダンス板上に不連続点が2つある場合には,
される。 それらの川の距離が小さ1ナれば,一方の不述続.点からの インピーダンス板近似法の宥効性を検討するために, 肚乱波が再び他方の不連続点によって散乱される多頂散
2つの半無限損失誘電体スラブの接合部による平面波の 乱が起こることが考えられるが,誘rE体の損失があるこ
散乱について,厳密解とインピーダンス板近似法による とや、llt一の不連続点による散1乱波パターンがかなり
46 鹿毛慶雄・山内恒二
シャープであることから,その効果はあまり顕著ではな y
ロ ミ いものと考えられる。多重散乱効果は入射 平面波の入射 1∩c噛n細。肥 ガ角に大きく依存するものと思われるので、散乱点川の距
離および入射角の影響について考察することにする。 b なお.ここでは入射平面波の磁界ベクトルが入射 面に /
剛なH波の胎について・艮扱うことにする白 力ε゜⑭日
2.問題の設定
図1回に示すように2つの接合部を持つ誘電体スラブ
を考え,これを図1(b)のように2種のインピーダンス板
の接合に置き換えて,その不連続部に平而電磁波が入射 ㈲Two lunc†ions of†hree dieteclric 51cb5.
するときの散乱問題を解析する。それぞれの板は図に向 かって左からZ、,Zコ,Z,の表面インピーダンスを有し,
ソ
厚さは考えないものとする。表面インピーダンスは次式 E 爪∩c噛nい匂o肥 ガ
@ ●
@ H
b
/ ノ//
力ε。εΨ。.σ・)
NZ〃
田・E2.P。・σ2) [εoε1.μ。・σ)
@ 多
/多 一a o aニ
S[ロb
一b
X
,、 , . →x
1
lrrlped口nc{〕 −a O 、、 θ白z・=嚊e「 P(°n已 \
s
ここに・・購電イ…プの踊1臨ε・およびμ・は・
@ 、b、1。,,d。nce,、。_,・・h_・d…†・sy・…
それぞれ真空中の誘電率および透磁率である。
入射波はH波であるから次のように表される。
図一1 G白ometry ol the problem.
∬∫ =fよH β 副工鵠o−」ノ細0」
E ==・___ユ__πロ×1ヨ戸 (2)
為一勘㌫卜。i。,,,) ピ「蕊
こ二蕊界(訓を一次界(_)と散乱界 厨一一謡芸 (71
{E°,1∫つに分解する。すなわち Eご=Hご=〃,ノ=⑪
(E「.〃1)=(EP,∬つ+G㌢,正」つ (3) 次の境昇条件を満足するように式(6)の解を決定する。
一次界はZ、=Z、のときの電磁界で次式で与えられ (B])(E㌔ノrヨは外向放射条件を満足する。
る。 (B2)ぽ〃りはそれぞれのインピーダンス板上でイ
卿エ劔一f」・,一ぽ…(・−1・・+R・一一) 川 ンピーダ以耕を糊互する・
Eこ(エ.、)一響H・。一一(・一一一R・−w z・一一{芸L。. 1エ1>・
ただし噸射係数で獄で与えらオτる・ @ 昂一吉一儲…、 1エk・
R−一d;藷卜/巨}・・〕 すなわら
z方向には昇が一撫ある剖一れば.糊昇は次肪 H・「(エ・・+)−yl酬エ・・÷)=° 輪α〔8}
程式によって与えられる. 典,囲一y捌エ・°+)=° 1水α
富壽+司肱◎
(6}(B
c㌫遮還鷲1E磁界のインピーダンス板上の二つの不連続点による平面電磁波の散乱 47
靱∫馴・・ω一時゜) 国く・において一次界が境界酬・を齪すること酬 ・1ばyH±・・0)からの距離 らかなので散乱界に閲する項のみ残る。境界条件をフ_
リエ成分で表せば次式となる。
3.散乱界のプーリ工成分
蹴の空1鵬一1周繊、1協ためにはの吉rレ蹴島鰍ζ〕1・一・・蜘1エk・ 。・
フーリエ変換を定義する・ 1司くαであるから1}内の閏数は整閏数となるの
∫(ζ)一∫二抽・噺 でこれを醐とおく・
止
〔9] Aコ{ζ)十}㌔一A:(ζ〕=Pコ(ζ)
∫ω一抽ζ)・一触 あ鋼、.輌
に灘篇::慧鷲蕊;‡こヨll驚蒜 山ζ]一隠ア{ζ〕 回
失を仮定し∫nκ・〈0とするが.Ii上終的にはこれを零とす 次に1司〉αにおいて境界条件(B2)を適用する。
る。また図2の領域UおよびLで正則な関数を.それぞ まず聞数∫1°回,E°(エ)を次のように定義する。
れ符号+および一で示すことにする。 O l司くα 波動方程式{6〕にフーリエ変換を施すと次のようになる。 H°ω= HC已,ω=ff 日÷R〕e一幅田理 工<一α
∫」ご(ζ・]ノ〕=ゴ1・(ζ)ε 輌止μ 〔ll) エ〉α
ただL』,(ζ)は未知閲故である。 式{固をフーリエ変換すると次のようになる。
三1撒籔::∵㈹llll韓;㌶∴∵1㍍
これらを用いて1エ1>ロにおける境界条件をフーリエ 成分で表せぱ次式となる。
lmζ
±∬1〃吋ζ)鞠ζ)1一ド]E咋ζト☆・1、(ζ羽・一・古dζ一〇 介一・・
1エ1>ロ {切 エ<一αのとき領域D 内の租分路Cを上半平而で無限 遠点に延ばして半無阻甜分路とすることができる。従っ て[]内の閲・数は領域Uで正則であり,未知閏数甲1司{ζ1
ィReζ を用いて次のように;1:、ける。
. 」・(ζ)ll+慧ト∫∫・{ζ}一王1E・〔ζ)=・・(ζ}エ<一・〔1呂・
またエ〉αのとき領域D 内の描分路Cを下半平而で
・1 三。 半無酬頒とできるので日肋暇は鰍1一で正
L 則であ1,.細咽数。1−(ζ)を用いて次のように割†る。
固一2
A1!li°ns in c°mpl白xζ一plan⌒ 刷1+:li}+㈹一脚一・1−(‥〉・・1・・48 鹿毛慶雄・山内慎二
ここで新た妹知閏数。,・(ζ〕を導入し となる・これを式⑳を用いて云に剛二代入すると・
とする㌫瓢1はそオ_〔域u,Lで正ll端一一(ζ禦蹴論
㌶㍍難‡{㍗二代入Lさら醐の +(講}ぎ撒(ζ)臨 )蜘
となり,散乱界のフーリエ成分は求まった。
器辛叢宇ジ(ζ聞〃°(ζ)−r1E°1引e ローP・+{ζ)召一佃
エ<_ロ ω 4.還方散乱界
:i:聯・・ 蜘蜘一γ蜘1・ F』・rゆ{° 散乱界蹴.ぷ}佐乱界のフーリエ成分綱を
⇒°四 逆変換することに劫夢、のように求まる。
三㍑運㌫拓引r−,一⇒定ぼ・・)一訂[ζき蕊艦綜;1ピ
である. 一」≧−11・声噸1・研
式四を核関数κ(ζ)を使って変.形する。 ここで次のような変数変換を行う。
臨(ζ}+杣+
h壽薯テ酬1・ す㌶1㌶㌶㌫i蕊1㌶
一・一加gIW・・ … 散乱獅次のように表される゜
κ(ζ)一:li§κ一{ζ}一κ・≒) ㈱ 一⊥ 副…・i・・)
従って式塒変形すれば次式がi!}られる. 2π一…5i・(伊十θ 2)1( ・+y1・・si・・)
一(ζ}+ζ一蠕・S・ド芸÷一ξ 偏C°Sの ・∫e輪ぎ三ヂdξ 聞
一謬蜘+蔑器ヒ{ζ}一κ一(・・C⇒ ・卿1紛を・。・》1の条件の下で鞍音隠法で話価す
≡φ{ζ} 加る;・禦乱界1まフレ訓撒用いて次のように}E
ここでA・=酬(ユ+∫炉y孟(1一欄刷である。 めbれる・
L蕊鷲㌶竃鷺:㌶1 ∫一一、緯;欝蒜1−)
∵㌶㌫㌶㌶廻数である゜ @ [{e−÷1拳lle一コ:+2疏
lirnφ(ζ}−0(ζ司} C2η
であ二;・らLi・u・ill・の定理よIL .。−1丁、一一一・/÷−C(・。…)一 (÷−5(・・…))1]
φ{ζ)≡o
∴;i;㌶;[鷲二_ ⇒ 一・≠籔『㌘
コ 磯 [le讐i還1ε/厩+2海・
インピーダンス板上の二つの不辿続点による平面電磁波の散乱 49
・・一・÷・一⌒囲巳一α・ψ・ヨー∫(÷−5(⇒}]臼3 。。;:蒜:㈹) 9卍 ε1=4.O− 1.Oi
ここに ε2=杜O−LOi
・一品・i・9]θ 1趾
C{エ),S〔エ〕はフレネル閲数で次式のとお1}である。
日=30尊
日=1び
c(エ)遠∬c芸£d・ 旧ぴ.. 日 一旧一12−・・び
tCi3}
{39
8(エ)一
u∬響d↓ 図一3ぷ隠lll=::;1㍑゜d』5.数値例および考察
数仙計算を行うにあたって入射電磁波の周波数は
f=].o民10・{臣) goo
∫=10,{Hz)とし,散乱界は瓦。ρ=1000の遠方で観測す κ。ρ・]00D.o
るものとした・また,インピーダンス板の鞭定数1ま複 篭蒜 \
素比誘電率をε1=・4−1∫,εコニ8−1匡として計算した。
以下数値例に従って考察を行う、
図3はκ。α=0.8,つま1〕2つの不連続部の間隔が1/4 旧O°
60について示している。どの角度においても散乱パター
日弓0匂
ロコ ぽ ロ ドら
波是程度の場合の散乱界のパターンを角度θが1げ,3ぱ, κ゜ヨ已o I品
o _
θ=1げ
oo
図一4 Sca廿erθd l旧ld panθms by two dls一 ンが不迎続部がユつの場合とよく似・ている。すなわち2 eontinutles of lmp白danじe p【aneSI
つの不連続部のnij隔が.λ射波長に対して短いなら2点
問による多重散乱の影響はほとんどなく,1接合のとき
と驚㌫蕊蕊㌔:θ_帆三熟 91ぴ、㌶1
6ぴについて示したのが図4である。2つの不連続部の εド8 o−tDi 聞隔は約1波長である。図を見ると縦方向へのふくらみ
が各々の角度θについて見られるが,これが多垂散乱の
髭晋である。そしてそのふくらみは角度θが大きくなる 旧O° o°
コヰ ぼ
コ ロお ロにつれて小さくなっている。これは角度θが増すにつれ 日吐卍 1己B1 て横方向(x軸方向)に進む散乱波が少なくなるためだ
図一5 Scattered flold patterrls by h岸o dls一 と思われる。そのため散乱波がもうユつの散乱点で散乱 oontinutlos of imp日danoe planes,
されるという多重散乱の影桿が角度θが増すにつれて小
さくなっている。図5は角度θを6ぱ一定にしたときに.2つの不連続 点からの散乱バターンの正:ね合わせと考えられる。そし 部の川隔を変えたときの肚乱パターンを示したものであ てその散乱波の行路差のためと思われるサイドローブが
る。1は川隔が1/4澁長,2は1波長,3は2波長程度 現れている。である。これを見るとユでは川隔が短いため1接合と似 以上の考察力・ら2つの不迎続部の川隔が訂4il呈長程度
たパターンになり.2では多∫n散乱の影響によリパター だと多lin散乱の影響はほとんどないが.1波長程度にな
ンにふくらみがあるのがわかる。そして3においては1川 るとその影響が現れ.またその影響は角度θが小さい程
隔が遠いため多:屯散乱の影響があまりなく,2つの散乱 大きいことがわかった。
50 鹿毛慶雄・山内慎二
付録
6・むすび A.1 爪要な定理の概略 2つの接舗を持つ誘電体スラブの不連続部による平 ωLb・・端の定理
面電磁波の散乱問題を.2腫のインピーダンス板の接合 もし∫(ζ)が整閏数で1引一゜°対して
による散乱問題に置き換えて解析したqそして数値計算 1∫{ζ)1≦λflζ1」 (」、LPは定故) (Al)
により散乱パターンを求め,2つの接合部の間隔および ならば.∫(ζ)は高々[P]次の多項式である。ただし 角度θを変化させ散乱パターンの迫いを考察した。その [P]はPの整数部を表す。
詰果,2つの接合部の間隔が1/4波長と非常に短い場台 (2)Abdの定理 は狐散舌Lの影響はほとんどなく1つの接合部をもっ場 ∫回のフーリエ変換を
鑑二∵㌫㌶蕊蕊i呈蕊丁 ∫(ζ一)一∫:∫(一 (A2)
脚が小さい程大きいこともわかった。 と定義すると・もし一ユ<・1<°は「して
今後の縄としては.2つの齢昂を持つ誘電体スラ 鋼一肋n・認 (A3)
プによる平而電磁波の散乱問題を解オ斤し.インピーダン ならば(止冗は定数)
ス概II/法と比1轍討することや,異なる媒質か靖る ∫{ζ〕−Ar(・+1)・・pl・↓(・1+1)121・ζ 1・翻(A4)
周期髄を持つモデルからのli胤問題への応脆どが考 となる・(r(・)はガンマ閏数)
えられる。 ただし上式で極限過程は・すべて」・下剛頁である・
参考文献 A.2核関数の因数分解
核閲数を次のように変形する。
翼轍鋼蕊一罐lj驚61:二」蒜κ(ζ)一三烹1一聯一鵠(A・)
2)淋.内田・ 二つの・1三無阻誘電牌ラブによる平面1E融 。Fz。JZh。,−z。lz, (A6)
{…罐L ・f⊇(B)・」62 B Nu 12¶PP 1]3㍗1139 L1〔ζ)およびL雌それぞれL(ζ}−L・(ζ〕IL−{ζ)の形
3)倒己1・・インピーダンス板近似法によるn宝乱川題の研究 @ に分解すればよい。文献抽の方法を用いると.次のよ
、;L蕊士蕊漂バ,・・A岬_輌,1−1・。 うに与えられる・
、r甑漂蒜㍍}蕊=:1謬rr L・{ζ)一・疏{1一為1≒。,11/2
for the SoluIion of the 】コnロinl Diff亡r田t拍l E{luauonS;
ζ
@ …1÷エ1=1・ ≡辱三ldω]〔A・)