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女子大学生に対する栄養教育の効果

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Academic year: 2021

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女子大学生に対する栄養教育の効果

松 永 知 恵

Effect of dietetics education on nutrition situation in woman students.

Tomoe Matsunaga

Summary

In a recent young generation, the partial dietary habit is a problem. It is important the individ- ual dietary behavior are understood. The nutrient intake of women college students which to be a dietician were examined. The influence of dietetics education in a college was investigated. This study was aimed for actual situation grasp of subjects.

Key words: dietetics education, woman students, dietitian, dietary habits, behavioral science,

1.緒

この数十年の食生活の多様化,生活環境の変化は著しく,特に若い世代の食生活の乱れが問題に なっている。平成18年国民健康栄養調査によれば,20−29歳女性において朝食欠食率は22.5%と増 加,野菜摂取量は26.

g/day

であり,目標とされる3

g

に達していなかった。また,脂肪エネル ギー比率30%以上の者の割合は20歳以上の女性全体で約3割を占めた。栄養素別の摂取状況につい ても,カルシウムや鉄の摂取量は日本人の食事摂取基準25年度版における目標量・推奨量よりも 少なく,いくつかの問題点が指摘されていた1)「健康日本21」の目標にも「脂肪エネルギー比率の 減少」「野菜の摂取量の増加」「朝食を欠食する人の減少」などが揚げられている2)。このように,

青年期から食行動上に多くの問題点が生じており,偏った栄養摂取状態や,好ましくない食生活習 慣の継続から引き起こされる生活習慣病等が懸念されている。健康維持,生活習慣病を予防する観 点からも20代の食生活の見直し,規則正しい生活を送ることは重要である。

栄養に関する知識のある女子大学生においても,微量ミネラル等の摂取量は不足状態であり,栄 養摂取に対する姿勢もまた消極的との報告がある3)。よく知られているように,長年の習慣となっ ている食生活を変容させるのは容易ではない。それは管理栄養士を目指す学生にとっても同様であ ろう。栄養管理を行う際には,対象者の現状把握を行い,それに見合った目標設定が重要である。

そこで本研究では,管理栄養士課程所属の学生を対象に,食物摂取頻度調査と食生活に関するア ンケートを行い,食行動の変化を調査した。管理栄養士課程における教育が,学生自身の食事内容 や食生活に対する考え方や行動に,どのような影響を与えているのかを検討すべく,まずは学生の 実態を把握することを目的とした。

活水論文集 第52集

(2)

2.方 1.調査期間

調査期間は平成19年4月〜1月の9ヶ月であった。調査は3か月ごとに4回(4月,7月,10月,

1月)実施した。

2.被験者と調査方法

被験者は本学管理栄養士課程の女子学生(n=79,年齢20.5±0.8歳,身長19.6±5.!,体重 1.1±6.$,BMI0.1±2.$")とした。調査方法は食物摂取頻度調査(FFQg)および食生活 習慣に関するアンケート調査を用い,自記式回答とした。被験者には,調査開始前に研究目的等を 説明し,同意を得たうえで回答してもらった。

栄養摂取量は

FFQg

からエクセル栄養君

Ver.

4.5(建帛社)を用いて割り出した。第3回目(1 月)調査が終わった時点で3回分(4月,7月,10月)の結果を被験者に伝えた。栄養教育分野の 授業課題の一つとして,その結果を各自に評価させ,食生活における問題点を抽出させた。さらに 問題解決のための目標を立てさせ,実行するように促した。その他,カリキュラム上の大学教育以 外に特別な介入(栄養教育・指導)は行わなかった。

第4回目(1月)調査終了後,摂取状況の変化を集計し分析した。結果は全て平均値±標準偏差 で表し,差の検定にはt検定を用いて行い,有意水準は危険率5%以下とした。

3.結

3ヶ月ごとに調査した栄養摂取状況の結果を表1に示す。

摂取エネルギー量についてみると,4月調査の結果が10.2±44.

kcal/day

と最も高く,7月 で若干減少し,10月も大きな変化はなかったが,1月の結果では18.0±32.

kcal/day

と減少し ていた。タンパク質摂取量でも4月調査結果が最も多く57.0±16.

g/day

で,同様な変動をし,1 月は51.1±13.

g/day

と減少していた。脂質摂取量も4月調査結果が60.3±21.

g/day

と最も高かっ たが,調査を繰り返すにつれ減少傾向が見られた(表1)。脂肪エネルギー比率は,4月:32.5±

4.6%,7月:31.7±4.7%,10月:30.6±4.5%,1月:30.8±4.7%で あ っ た。い ず れ も 平 均 が 0%を越えた。

ミネラル類についてみると,調査4回ともカルシウムと鉄の摂取量は日本人の食事摂取基準(2 年度版)の目標量・推奨量を満たさなかった。まず,カルシウム摂取量については4月調査結果で

8.5±10.

g/day

となり,約20%少なかった。7月,10月とあまり変化は見られなかったが,1

月調査結果では約35%も少なかった(図1)。次に,鉄摂取量を見てみると,カルシウム摂取量と 同様の変動を示した。4月調査結果において6.2±2.

mg/day

であったが,1月の結果では5.2±1.

mg/day

まで下がった(図2)。マグネシウムと亜鉛も同様に,4月調査結果が最も高く,7月,1

月に少し減少し,1月調査結果では最も低い値を示した。

ビタミン類についてみると,ビタミンC摂取量が非常に少なかった(表1)。4月調査結果で74.

±58.

mg/day,7月は6

5.1±39.

mg/day,1

0月は67.4±35.

mg/day

と若干増加し,1月は63.8±

2.

mg/day

とさらに減少した。いずれも推奨量1#を越えることはなかった(図3)。ビタミン

と葉酸についても同様な変動であった。しかしながら摂取量は毎回個人差が大きく,非常にば

(3)

らつきが見られた。

表1.摂取エネルギー量と栄養素摂取状況

4月 7月 0月 1月

エネルギー $ 0.2 ± 44.9 13.5 ± 48.8 16.3 ± 33.4 18.0 ± 32. タンパク質 # 7.0 ± 6. 4.1 ± 4. 5.6 ± 4. 1.1 ± 3. 脂質 # 0.3 ± 1. 6.1 ± 7. 4.4 ± 4. 0.3 ± 5. 炭水化物 # 6.6 ± 4. 7.5 ± 2. 1.1 ± 4. 2.6 ± 3. カルシウム " 8.5 ± 10. 0.0 ± 17. 0.4 ± 13. 3.0 ± 17. マグネシウム " 5.8 ± 6. 2.2 ± 6. 6.9 ± 9. 2.6 ± 9.

" 6.2 ± 2. 5.8 ± 2. 5.9 ± 2. 5.2 ± 1.

亜鉛 " 7.0 ± 1. 6.7 ± 2. 6.7 ± 1. 6.3 ± 1.

ビタミンB1 " 0.9 ± 0. 0.4 ± 0. 0.6 ± 0. 0.1 ± 0. 葉酸 ! 7.2 ± 15. 9.5 ± 4. 1.2 ± 4. 1.4 ± 7. ビタミンC " 4.0 ± 8. 5.1 ± 9. 7.4 ± 5. 3.8 ± 2. 数値は平均値±標準偏差で示す。

図3.ビタミンC摂取量の変動 棒グラフは平均値(n=79)を示す。

横点線は20−29歳女性の推奨量1mg/dayを示す。

図1.カルシウム摂取量の変動 棒グラフは平均値(n=79)を示す。

横点線は20−29歳女性の目標量6mg/dayを示す。

図2.鉄摂取量の変動 棒グラフは平均値(n=79)を示す。

横 点 線 は 月 経 有20−29歳 女 性 の 推 奨 量10.mg/

dayを示す。

女子大学生に対する栄養教育の効果

(4)

次に,食品群別摂取量の変動を表2に示す。

野菜類と果実類の摂取量は非常に少なかった。緑黄色野菜は約2

g/day,その他の野菜は2

5〜3

g

/day,果実類は約3

g/day

と明らかに不足状態であった。しかも野菜類全体を見ると徐々に減少し,

1月調査では緑黄色野菜は15.8±9.

g/day,その他の野菜は2

5.7±17.

g/day

と最も少なかった。

逆に,油脂類の摂取量は非常に多かった。菓子類の摂取量も多かったが,両者とも,調査をくり返 すたびに減少してきた。肉類については7月調査の摂取量が10.0±98.

g/day

と減少し,10月,

1月は増加する谷型に変動していた。豆類については1月の摂取量が47.1±33.

g/day

と顕著に少 なかった。乳類の摂取量は増減が大きく,気候のよい季節に多く摂取しており,外気温が下がる1 月は減少し1

g

に満たなかった。本調査で共通して,4月調査時の摂取量が最も多かった。また,

食品群においても摂取量の個人差は大きかった。

4.考

本学1〜2年生では主に専門基礎科目を学習する。「社会・環境と健康」「食べ物と健康」「人 体の構造と疾病の成り立ち」の分野を中心に授業を受け,この2年間で専門基礎知識を習得できる ようにカリキュラムが構成されている。しかし,本結果から推測するに,その知識を自らの食生活 に反映するまでには至っていないようである。

表2.食品群別摂取量の変動 (単位:!

4月 7月 0月 1月

穀類 9.4 ± 16. 7.6 ± 14. 0.3 ± 19. 3.5 ± 15. 肉類 5.6 ± 3. 0.0 ± 8. 3.9 ± 8. 0.1 ± 10. 魚介類 2.4 ± 6. 3.2 ± 1. 9.9 ± 8. 1.7 ± 0. 豆類 3.6 ± 9. 1.7 ± 7. 4.4 ± 1. 7.1 ± 3. 乳類 4.6 ± 2. 0.5 ± 7. 1.1 ± 2. 4.9 ± 0. 緑黄色野菜 0.5 ± 5. 9.3 ± 2. 8.6 ± 1. 5.8 ± 9. その他野菜 9.2 ± 3. 6.4 ± 6. 6.9 ± 4. 5.7 ± 7. 果実類 5.3 ± 6. 7.0 ± 8. 9.9 ± 3. 2.4 ± 5. 油脂類 2.9 ± 3. 1.5 ± 9. 8.0 ± 6. 7.4 ± 7. 菓子類 2.0 ± 27. 3.0 ± 11. 7.1 ± 12. 0.4 ± 17. 数値は平均値±標準偏差で示す。

図4.脂肪エネルギー比率の変動

棒グラフは平均値(n=79)を示す。 *p<0.

(5)

平成18年国民健康栄養調査結果にも書かれているように,20−29歳女性は脂質過多の食事に偏っ ている。本研究の被験者は女子大学生であり,同世代である。結果をみるとやはり,脂肪エネルギー 比率は,4月:32.5±4.6%,7月:31.7±4.7%,10月:30.6±4.5%,1月:30.8±4.7%と高値 であった。平均では30%を下回ることはなかったが,t検定を行ったところ4月にくらべ10月と1 月の調査結果は有意に減少していた(図4)。被験者らは脂質過多の食事を日常的に取っていると 推測されるが,栄養教育効果は徐々に現れているようである。脂肪エネルギー比率の高い食事を続 けると肥満や脂質異常症,動脈硬化など血液疾患を引き起こす要因となるため,今後も注意が必要 であると言える。

次にビタミン類,ミネラル類不足についても懸念される。カルシウムは目標量6

mg/day

を全く 超えられなかった(図1)。3回分の結果から目標量に対する充足率は約78%であったのが,1月 摂取量では約65%とさらに減少した。その理由のひとつとして,表2の乳類の1月値が極端に少な いことが関連していると考えられる。若年時のカルシウム不足は骨粗鬆症の発症リスクを高める。

骨粗鬆症予防の面からも早急な改善が望まれる。平成18年国民健康栄養調査において,20−29歳女 性の鉄摂取平均は7.

mg/day

であった1)。鉄の推奨量(月経あり)は10.

mg/day

だが,本研究にお いて,鉄摂取量充足率は約60%程度であった(図2)。このように日常的に鉄不足状態が続いてい るとしたら,潜在的に鉄欠乏性貧血を引き起こしている可能性が示唆される。今後は,血液検査も 合わせて調査し,指導する必要があると考える。また,ビタミンC摂取量も推奨量1

mg/day

を越 えることはなかった(図3)。ビタミンCを多く含む食品である果実類とその他野菜の摂取量を見 てみると,両者とも3

g

前後しか摂取していないことがわかる(表2)。1人暮らしをしている被 験者からは,「野菜や果物は腐りやすいのであまり購入しない」との意見が得られた。親元もしく は学生寮で生活している学生と比べて野菜類や果物類の摂取量は少ない傾向が見られた。このよう に,各栄養素で摂取量の個人差が非常に大きかった。特に大学生の生活様式はバラエティに富んで おり,それによって食事摂取量はかなり影響されたと言える。

本研究では,3ヶ月ごとに食事調査を行い,調査結果を被験者に返却した。結果について個人的 な指導は行わなかった。なぜなら,被験者ら自身が管理栄養士になるための勉強をしているので,

自主的な自己管理を望んだからである。ただし,授業中に調査結果を取り上げて,学生自身に各自 の栄養評価をさせ,問題点を洗い出すという課題を出した。そのうえで,問題解決のための目標を 立て,食生活の悪い点を改善するという行動を実行するように促した。これら一連の作業は,自ら の栄養摂取状況を把握できる利点があった。このような調査や学習を境に,食事改善を始める学生 や行動変容のきっかけになったと感想に述べた学生も数多くいた。また,同時期に専門科目を多く 学ぶため,栄養摂取状況および食生活に関する考え方に影響があったと推測される。しかしながら,

行動変容の維持期に到達し習慣化している学生はほとんどおらず,良い習慣と悪い習慣を行ったり 来たりしているというのが現状である。

今回の研究はあくまでも女子大学生の食生活実態把握であった。しかし,研究を進めていく中で,

さらに精密な分析をしていく必要があると示唆され,継続的な調査を続けることが望ましいと考え る。また,結果を今後の教育に活かし,各自が健康管理を進んで行うように促していきたい。

女子大学生に対する栄養教育の効果

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本研究を進めるにあたり,食生活健康学科 井上靖久教授には丁寧かつ的確なご助言を賜りまし た。ならびに,長崎大学 医学部 第一生理教室 松本逸郎准教授からのさまざまなご指摘に深謝 いたします。また,柴田阿弥子さん,浦本朋子さんのご協力に感謝いたします。

参考文献 1)平成18年国民健康・栄養調査結果の概要,厚生労働省

2)財団法人健康・体力づくり事業財団「健康日本21中間評価報告書」,http://www.kenkounippon21.gr.jp/(27.4.

0)

3)杉浦令子,里和スミエ,湊 久美子:第六次改定日本人の栄養所要量から見た女子大生および鉄欠乏性貧血学 生の栄養摂取状況.和洋女子大学紀要,41,59,21.

4)日本人の食事摂取基準(25年度版)

5)畑 栄一,土井由利子:行動科学 健康づくりのための理論と応用,南江堂,東京,27.

(29年1月31日受理)

参照

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