●今月の話題●
現在使える、住宅取得支援制度
本年 4 月の消費税引上げ以降、住宅ローン減税の拡充や、住宅関連税制の拡充、すまい 給付金の創設など様々な住宅取得支援制度がその内容を充足し、登場している。今回は、
現在(平成26 年 11月)時点、これから住宅を取得しようとしている人が使える制度を中 心にそれぞれの制度の概要を紹介する。
一般社団法人 金融検定協会試験部 中山 哲、 田 春菜
■多様な住宅取得支援制度、終了間際の制度も
消費者の住宅取得を後押しするため、住宅ローン減税の拡充やすまい給付金といった「住 宅の新規購入」を支援する制度をはじめ、認定長期優良住宅の新築をした場合の所得税額 の特別控除や住宅金融支援機構の優良住宅支援制度(フラット35S)など、「質の高い住宅 の取得」に向けた支援策など、現在は、住宅取得の支援策と一概にいっても様々な制度が 存在する。
また、来年度からは相続税の増税も決定しており、それに伴い、相続税対策に関連した 住宅取得支援制度の特例にも注目が集まっている。その中でも、金額の大きな支援策とい えば、「住宅取得資金等の贈与等に係る非課税措置」だが、この制度は本年 12 月末で期限 を迎える。現在は、期限の延長と非課税金額の拡大が検討されているところであるが、ま だ結論には至っていない。
今回は、大まかに、住宅ローン利用者が活用できる制度と相続税対策の制度の 2 つの視 点に分け、11 月現在、住宅取得者が活用できる制度の概要をまとめていく。なお、住宅ロ ーン減税、すまい給付金については、過去数回に渡り本誌で取り上げているので、そちら も参考にされたい。
(1)住宅ローン減税
住宅ローン減税制度は、住宅ローンを借りて住宅を購入する場合に、購入者の金利負担 の軽減を図るための制度であり、毎年末の住宅ローン残高又は住宅の取得対価のうちいず れか少ない方の金額の1.0%が10年間に渡り所得税の額から控除される。あくまで、「自宅
取得促進」のための制度であるので、投資目的の住宅や別荘などは対象外であり、自分が 住むための家屋でなければ控除の対象とはならない。
この住宅ローン減税は、平成 26 年 4月から、消費税の増税にあわせて大幅に拡充され、
適用期限が、平成29年12月末まで4年間延長となった。また、それと同時に従来は、原 則2,000万円までの住宅ローン残高に対し毎年1.0%(10年で最大200万円)の控除額が 認められる仕組みであったのを、4,000万円までの住宅ローン残高に対し毎年1.0%(10年 間で最大400万円)の控除額が認められるよう拡充された。
①控除額
図表1 現行の住宅ローン控除限度額
一般住宅 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅 居住年 残高限度額 控除率 最大控除額 残高限度 控除率 最大控除額 平成26年4月~
平成29年12月
4,000万円
(5,000万円)
1.0%
(1.2%)
400万円
(600万円)
5,000万円
(5,000万円)
1.0%
(1.2%)
500万円
(600万円)
※()内は東日本大震災等に係る再建住宅に適用されるもの
②対象となる住宅の主な要件 新築住宅の場合
・ 住宅取得後6ヵ月以内に入居し、引き続き住んでいること
・ 家屋の床面積が50㎡以上
・ 床面積の2分の1以上が、専ら自己の居住の用に供されるものであること
・ 控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下(退職金など一時的に多額の収入 があり、その年の1年間の合計所得が3,000万円を超えると、その年はローン控除 が受けられず、またこの1年分は繰延べされない)
・ 民間の金融機関や住宅金融支援機構などの住宅ローン等を利用していること
・ 住宅ローン等の返済期間が10年以上で、分割して返済すること 中古住宅の場合の追加要件(新築住宅の要件のほかに)
・ その家屋の取得の日以前20年以内(マンション等の耐火建築物については25年以 内)に建築されたものであること。ただし、地震に対する安全上必要な構造方法に 関する技術的基準、またはこれに準ずるものに適合しその要件を満たしていれば建 築後の上記年数に制限はない。要件を満たしていないときでも、取得後に耐震改修 工事を行なって、耐震基準に適合していることが証明された場合であれば可
・ 建築後使用されたことがある家屋
③対象借入金の主な適用要件
・ 契約において償還期間が 10 年以上の割賦償還の方法により、返済することとされ ている住宅の取得及び増改築に係る借入金、及び敷地に係る借入金
・ 給与取得者(役員を除く)の雇用主からの借入金で、本人の負担する利息が年1.0%
以上となるもの
・ 住宅の取得とともに、その敷地を取得した場合の借入金
・ 住宅の新築前2年以内に取得した敷地に係る金融機関などからの借入金で、一定期 間内に住宅を建築することが条件となっているもの
・ 住宅の新築日前に、一定の期間内の建築条件付で、都市再生機構などから宅地分譲 を受けた場合の金融機関などからの借入金
・ 住宅の新築工事着工後に、住宅金融支援機構などから受領する借入金により、住宅 敷地を取得したときの借入金
・ 「勤務先」から金利が1.0%未満の社内融資を受けている場合は、会社から利子補 給を受けているとみなされるため、控除対象外となる。ただし、銀行や住宅支援機 構など、民間や公的機関からの融資であれば、たとえ金利が1.0%未満でも住宅ロ ーン控除の対象外とはならない
(2)すまい給付金
さて、上記住宅ローン減税は、支払っている所得税や住民税から控除されるもので、納 税額の少ない収入の低い人ほど税額控除額を使いきれずに消費税による負担増を補えない。
そこで、住宅ローン減税の拡充による負担軽減効果が十分に及ばない収入層に対して、住 宅ローン減税とあわせて消費税率引上げによる負担の軽減を図る制度として、すまい給付 金が設立された。このため、すまい給付金制度は、収入によって給付額が変わる仕組みと なっている。
①給付金額
収入額(都道府県民税の所得割額)によって給付基礎額が決まり、次の計算により給付 額が算定される。
給付額=給付基礎額×登記上の持合分割 図表2 すまい給付金給付額(消費税8%時)
収入の目安 都道府県民税の所得割額 給付基礎額 425万円以下 6.89万円以下 30万円 425万円超475万円以下 6.89万円超8.39万円以下 20万円 475万円超510万円以下 8.39万円超9.38万円以下 10万円 収入の目安は、夫婦(妻は専業主婦)の夫の場合をモデルにした試算結果。
なお、神奈川県は収入の目安は同じであるが、住民税の税率が他の都道府県と異なるた め、所得割額が図表2とは異なるので注意しておこう。
②対象者の主な要件
・ 住宅の所有者:不動産登記上の持分保有者
・ 住宅の居住者:住民票において、取得した住宅への居住が確認できる者
・ 収入が一定以下の者:8%時 収入額目安510万円( 夫婦(妻は収入なし)及び中 学生以下の子どもが2人の世帯の場合)
・ 住宅ローンを利用しない場合、年齢が50才以上の者
③対象となる住宅の主な要件 住宅ローン利用者の条件 新築住宅の場合
・ 自らが居住する
・ 家屋の床面積が50㎡以上
・ 第三者機関の検査を受けた住宅であること(施工中の検査)
中古住宅の場合
・ 売主が宅地建物取引業者であること
・ 自らが居住する
・ 家屋の床面積50㎡以上
・ 現行の耐震基準を満たす住宅であること
・ 第三者機関の検査を受けた住宅であること(売買時等の検査)
現金取得者の追加要件
新築住宅の場合(住宅ローン利用者の新築住宅の場合の要件のほかに)
・ フラット35Sの基準を満たす
なお、上記、②主な対象者の要件にもあるとおり、住宅ローンを利用しない、現金取得 者の場合は、新築住宅・中古住宅、どちらの場合でも年齢が50才以上の者とする年齢によ る追加要件があるので注意されたい。
(3)所得税額の特別控除(認定長期優良住宅の新築等による)
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づく認定長期優良住宅を新築または取 得した場合、その標準的な性能強化費用相当額の10%相当額(最高限度額65万円)をその 年分の所得税額から控除でき、その年分の所得税額から控除しきれない金額は、翌年分の 所得税額から控除ができる。なお、住宅ローン減税との選択適用である。
①控除額
標準的な性能強化費用相当額=1㎡あたりの標準的な性能強化費用×住宅の床面積(㎡)
図表3 認定住宅新築等特別税額控除 控除限度額 居住年 平成26年4月~平成29年12月 対象住宅 認定長期優良住宅/認定低炭素住宅 控除対象限度額 650万円
控除限度額 65万円
適用期限 平成29年12月31日までの間に居住
②適用要件
・ 認定住宅の新築又は建築後使用されたことのない認定住宅の取得であること
・ 新築又は取得の日から6ヵ月以内に居住の用に供していること
・ この税額控除を受ける年分の合計所得金額が、3,000万円以下であること
・ 新築又は取得をした住宅の床面積が50㎡以上であり、床面積の2分の1以上の部 分が専ら居住の用に供すること
・ 居住の用に供した年とその前後2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の 長期譲渡所得の課税の特例及び居住用財産の譲渡所得の特別控除の適用を受けて いないこと
(4)優良住宅取得支援制度(フラット35S)
優良住宅取得支援制度(フラット35S)は、フラット35を利用する際、「省エネルギー性」
「耐震性」「耐久性・可変性」「バリアフリー性」の4つの性能に優れた住まい基準のうち、
いずれか 1 つの基準を満たす住宅を取得する場合に、金利を引下げ、優良住宅の供給を促 進する制度である。
①金利優遇内容
金利Aプラン 当初10年間 年▲0.3%
金利Bプラン 当初5年間 年▲0.3%
②技術基準の内容
現行制度では優遇内容が、金利 A プランと金利B プランに分かれており、優遇内容が金 利Aプランの方が充実している分、求められる技術基準の内容も高度なものになっている。
ただし、Aプランは新築・中古とも同じ基準だが、Bプランには中古特有の要件を設けてお り、中古住宅を購入する場合でもフラット 35S の利用による優遇措置を受けられる間口を 広げている。
図表4 金利Aプラン(新築住宅・中古住宅共通の基準)
省エネルギー性
①「エネルギーの使用の合理化に関する法律」に基 づく「住宅事業主の判断の基準(通称トップランナ ー基準)」に適合する住宅(一戸建てに限る)
②認定低炭素住宅 耐久性・可変性 ③長期優良住宅
耐震性 ④耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)3の住宅
バリアフリー性
⑤高齢者等配慮対策等級4以上の住宅(共同住宅の 専用部分は等級3でも可)
図表5 金利Bプラン(新築住宅・中古住宅共通の基準)
省エネルギー性 ①省エネルギー対策等級4の住宅
耐久性・可変性
②劣化対策等級3の住宅で、かつ、維持管理対策等 級2以上の住宅(共同住宅等については、一定の更 新対策が必要)
耐震性
③耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上の住宅
④免震建築物
バリアフリー性 ⑤高齢者等配慮対策等級3以上の住宅
図表6 金利Bプラン(中古住宅特有の基準)
省エネルギー性(開口部断熱) ①二重サッシまたは複層ガラスを使用した住宅
省エネルギー性(外壁等断熱)
②建設住宅性能評価書の交付を受けた住宅(省エネ ルギー対策等級2以上)または中古マンションらく らくフラット35のうち【フラット35】S(省エネル ギー性に適合するもの)として登録された住宅
バリアフリー性(手すり設置)(段差解消)
③浴室及び階段に手すりが設置された住宅
④屋内の段差が解消された住宅
■相続対策としての住宅取得を後押しする諸制度
平成27年1月以降、相続税が増税となる。その狙いの一つは「高齢者の保有する財産を、
若い世代に早期に移転することによる経済活性化」とされており、贈与税は減税となって いる。この結果「生前贈与」が注目を集めており、特に住宅取得目的の資金贈与について は「住宅取得等資金贈与の特例」が利用できる。
日本経済新聞社の「日経生活モニター調査」(平成26年10月11日~15日実施)でも、
財産を配偶者や子供に継がせる立場の人のうち、相続税の対策を実施したり、検討したり しているというのは全体の 53%であり、うち、「今後実施する」との回答が 38%と最多で あった。その他「実施済みで今後も検討」(11%)、「実施済み」(4%)という回答となって いるが、実施済みまたは検討中の具体策としては(複数回答)、25%が「住宅取得等資金贈 与の特例」の活用をあげているのである。
冒頭でも述べたとおり、この特例は本年中に期限切れとなる制度であるが、この調査結 果を見る限り、期限内までは当制度を利用した住宅取得は相当数あると見込まれるし、ま た、制度を拡充したうえで期限を延長するのではないかという観測もあるので、住宅ロー ンアドバイザーとしては、改めてこの特例の制度内容を整理・理解しておいたほうがよい だろう。
また、相続税増税対策としては、「二世帯住宅の取得」「賃貸併用住宅の取得」も効果が あるとされているが、その背景には、こうした住宅を相続により取得した場合の、当該遺 産の相続税評価額を引き下げる相続税制上の特例措置がある。したがって、相続税増税対 策としてこうした住宅を取得しようとする顧客との各種交渉にあたっては、関連する税制 の内容についてきちんと理解しておく必要があるし、また、相続税増税の影響を受けそう な顧客に対しては、この種の優遇税制活用を見込んだ住宅取得を勧めることなども求めら
れよう。
そこで以下では、「相続対策としての住宅取得を後押しする諸制度」として、「住宅取得 等資金贈与の特例」「二世帯住宅の評価減」「賃貸併用住宅の評価減」につき紹介する。
(1)住宅取得等資金贈与の特例
①概要
平成26年12月31日までに父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、住宅取得等資 金(自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築もしくは取得または増改築等の対価にあ てるための金銭)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の表の非課税 限度額までの金額について、贈与税が非課税となる。
図表7
平成26年
省エネ等住宅※の場合
(東日本大震災の被災者の場合)
1,000万円
(1,500万円)
上記以外の住宅の場合
(東日本大震災の被災者の場合)
500万円
(1,000万円)
※省エネ等住宅:省エネルギー対策等級4相当であること、耐震等級(構造躯体の倒壊等 防止)2以上であることまたは免震建築物であること
②適用対象財産
本制度の適用対象となる住宅は、贈与を受ける人が居住する(家屋の床面積の2分の1 以上に相当する部分に居住する)ものとして新築もしくは取得するもの、あるいは増改築 するものである。新築もしくは取得と、増改築の場合で、以下のように適用要件が異なっ ている。
イ.新築・取得
・床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50㎡以
上240㎡以下
・中古住宅の取得の場合、取得の日以前 20年以内(耐火建築物の場合は 25 年以内)
に建築されたもの、もしくは、耐震基準に適合すること ロ.増改築
・床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50㎡以
上240㎡以下
・増改築等の工事に要した費用の額が100万円以上であること
など
③その他要件
贈与を受けた人については、その贈与を受けた年分の所得税に係る合計所得金額が2,000 万円以下でなければならない。その他、贈与を受けた年の翌年3月15日までに取得等をし、
居住することや、期限内の申告を必要とするなどの要件をクリアしなければ適用を受ける ことはできない。
④制度の併用
本特例は、贈与税の暦年課税制度もしくは相続時精算課税制度との併用が可能である。
すなわち、暦年課税制度と併用した場合は 110 万円の基礎控除に本制度の非課税限度額を 加えた額を贈与金額から控除した金額が贈与税の対象となる。相続時精算課税制度を利用 した場合は、2,500万円の特別控除に本制度の非課税限度額を加えた額を贈与金額から控除 した金額が贈与税の対象となる。
(2)二世帯住宅の評価減
二世帯住宅の評価減とは、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」を 利用することで、相続人が相続する資産の評価を大幅に減らし、結果として相続税額を抑 制する効果を狙ったものである。
この特例は、相続を受ける宅地等の状況によって、以下のように評価減額の割合を定め ている。
「特定居住用宅地等」の場合、地積240㎡※までを限度に、8割の評価減となる。
「特定事業用宅地等」の場合、地積400㎡までを限度に、8割の評価減となる。
「貸付事業用宅地等」の場合、地積200㎡までを限度に、5割の評価減となる。
※「特定居住用宅地等」の場合、平成27年以降330㎡までが限度となる。
「特定居住用宅地等」(被相続人(死亡した人)が居住していた住居)である二世帯住宅 を遺族が相続で取得した場合、適用要件を満たしていれば、当該資産の評価額は 8 割減と なる。相続人(相続する人)が配偶者であれば無条件に評価減を受けられるが、それ以外 の場合は、所定の適用要件を満たしているかどうかが注意すべき点となる。
適用要件は以下のとおりである。
取得者 適用要件
被相続人の配偶者 要件なし
被相続人と同居していた親族 引き続き居住すること
被相続人と同居していない親族 相続開始前の3年以内に自己もしくは自己の配偶者の持 ち家に居住したことがないこと
すなわち、相続による取得者が子息等の親族の場合は、被相続人(死亡した人)と同居 していて、引き続きその住居に居住することが条件になるため、評価減を受けるには、「同 居」という条件をクリアしなければならない。
そこで注目を集めるのが「二世帯住宅」である。二世帯住宅なら、「同居」の条件をクリ
アできるからだ。
さらに、平成26年1月1日以降は、「二世帯住宅」にかかる適用条件が緩和されており、
ますます「二世帯住宅」が相続税対策として注目を集めている。
「二世帯住宅」には、
①玄関や台所、浴室、トイレなどを共用する「同居タイプ」
②玄関や台所、浴室、トイレなどのうち一部のみを共用する「部分共用タイプ」
③玄関や台所、浴室、トイレなどをすべて別々に設ける「完全分離タイプ」
があるが、平成25年までは、一棟の二世帯住宅で「構造上区分のあるもの」の場合は「同 居」として取り扱われず、したがって評価減を受けることができなかった。「構造上区分の あるもの」とは、「二世帯住宅の中で行き来ができないもの」ということで、具体的には内 部に内階段がないようなタイプの二世帯住宅がこれにあたる。上記②や③で、「玄関」を別々 に設けている場合などは「外階段のみ」というケースが多く、特例の対象とならなかった のである。
しかし、平成26年以降の相続ではこの規制が緩和され、どのような二世帯住宅でも適用 されている。
相続税を節税できないのも困るが、様々な問題から「完全同居」も避けたい、というよ うな理由から二世帯住宅を検討対象外としてきた世帯も多いのではないだろうか。しかし 現在は、上記のとおり完全分離型の二世帯住宅であっても「同居」とみなされ特例対象と なっているため、相続税対策として活用するケースは増加していると思われる。
平成27年以降の相続税増税により、二世帯住宅の取得を対策として検討する人も増えて くるだろう。住宅ローンアドバイザーとしても、この特例につききちんと理解しておくこ とがますます求められる。
(3)賃貸併用住宅の評価減
賃貸併用住宅を相続により取得する場合は、賃貸部分につき、大きく分けて二つの評価 減を受けることができる。
まずは、土地・建物が貸家建付地や貸家としての評価減であり、次いで、前項で解説し た「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」による評価減である。
①土地・建物の評価減
土地・建物が貸家建付地や貸家として評価減となるのは、以下の評価方法による。
イ.土地(貸家建付地)の評価方法
貸家の目的とされている宅地、すなわち、所有する土地に建築した家屋を他に貸し付け ている場合の、その土地のことを「貸家建付地」といい、以下のように評価する。
貸家建付地評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合)
例えば借地権割合が 0.7、借家権割合が 0.3だとすると、評価減割合は 21%ということ
になる。
ロ.建物(貸家)の評価
建物は貸家となり、その評価は次のように行う。
貸家評価額=自用家屋評価額(固定資産評価額)×(1-借家権割合)
すなわち、上記と同じく借家権割合が 0.3であれば、評価減の割合は 30%ということに なる。
②小規模宅地の特例
賃貸併用住宅の賃貸部分は「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」
において「貸付事業用宅地等」とされるため、上記の評価減に加え、本特例による評価減 を受けることも可能である。
(2)で解説したとおり、「貸付事業用宅地等」は、地積200㎡までを限度に、5割の評価減
となる。適用要件は、相続により取得した親族が、当該貸付事業を引き継ぐことである。
上記の例で、貸家建付地として21%の評価減を受けていたとすると、さらに50%の評価 減を受ける結果、最終的に60.5%の評価減となるのである。
親と同居せず、独立して自宅を構えている子息はやはり多いものである。こうしたケー スでは「小規模宅地特例」による評価減を受けられず、相続税負担を抑えることができな い。平成27年以降の相続税制改正により、その負担額はさらに増すことになる。
しかし、親の居住する自宅を賃貸併用住宅として建て替えれば、上記のような評価減を 受けることができる。さらに、賃貸併用住宅であれば、アパートローンではなく住宅ロー ンを利用でき、金利が抑えられるほか、住宅ローン減税制度を受けることも可能であるか ら、住宅ローンアドバイザーとしては、こうした点も踏まえたアドバイスも求められるの ではないだろうか。
以上、述べてきたように、住宅取得の支援制度は現在様々なものがある。これらの制度 は、税制改正や消費税の動向などで、年毎に延長や拡充といった制度の変更が著しい。住 宅ローンアドバイザーは顧客のニーズに合わせ、これらの支援策について的確にアドバイ スできるように日々知識を更新していくようにしていきたい。