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関数のよさを感得させる学習課題の工夫

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Academic year: 2021

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(1)

平成20年度 理数教育ステップアップ研修 実践記録

関数のよさを感得させる学習課題の工夫

−中学校2学年数学での「リレーバトンパス」の考察−

(実践者 妙高市立新井中学校 渡辺 勝行)

当校の3年生におけるアンケート調査によると、1次関数について苦手意識をもっている生徒 が多い傾向にある。その理由としては 「意味がわからない 「関係式をつくるのが難しい 「グ 、 」 」 ラフの読み取りができない」などがあげられている。2年生の「1次関数」の指導においては、

、 、 。

関数の意味理解を大切にし その有用性を実感させる活動を取り入れ そのよさを味わわせたい 本実践では、具体的に次のような改善を試みた。

( ) 比例との関連を意識しながら丁寧な指導を心掛ける。

1

( ) 単元指導計画を工夫し、表、式、グラフを相互に関連付けて調べる能力を育成する。

2

( ) 日常生活で関数を利用する活動を取り入れ、関数的な見方や考え方のよさを味わわせる。

3

基本的事項の習熟後の応用段階では、数学的活動を取り入れて学習そのものや活用しようとす る意欲の向上を図った。具体的な活動として 「リレーのバトンパス」についての考察を取り上 、 げた。本来であれば、2次関数を学習した後の課題となっているが、データの提示方法を工夫し て、変域を定めた1次関数の連続として扱えるように工夫した。生徒の生のデータを使っている ので、課題解決に向けた意欲も高く、熱心な活動が見られた。

まとめの段階では、課題の難度が高く解決まで至った生徒は少なかったが、教師側からの説明 によりその有用性を感じ取らせることができたと考えている。

1 「理数の面白さや深く追究する楽しさなどを味わわせる」ための構想

( ) 既習事項との関連を意識した丁寧な指導

1

対象である2年生の生徒は、NRTの結果から1学年の学習内容の定着率が低く、数学を苦手と している生徒が多い。とりわけ数量関係の領域の正答率の全国比は75%となっており、既習事項

。 、 「 」

である比例単元の復習や関連を取り入れた指導が必要である 例えば 1次の2 1次関数グラフ では、デジMATHを活用し比例のグラフを平行移動させるなど視覚に訴える教材を取り入れ、1 学年の学習内容を補充しながら指導する。

( ) 表、式、グラフを相互に関連付けて調べる能力の育成をねらった単元指導計画の工夫

2

先述の3年生に対するアンケートを受けて、1次関数のグラフをかいたり、条件から直線の式を 求めたりする時間を十分に確保し、基本的な知識の習得や処理の習熟を図りたい。また、連立方程 式との関連の場面でも式とグラフの関連を大切にしていく必要がある。

次 学習内容( 時数 ) 学習活動 評価と方法

1 1 1次関数( )

3

・ 関数 1次関数の意味を知る 、 。 ○ ともなって変わる2つの数量の

関係を式で表そうとする (関) 。

(2)

y=a x+b y x

x y

1 を調べることから考察し、1次 ことができる (表) 。

次 関数では変化の割合が一定であ ○ が の1次式で表せるとき、

関 ることを知る。 は の1次関数である、という

数 ことが分かる (知) 。

2 1次関数の ・ 1次関数のグラフは直線とな ○ グラフから1次関数の式を求め グラフ( )

4

ることを知り、傾きや切片など ることができる (表) 。

の用語とグラフの関係などがわ ○ 1次関数の式 とグ

かる。 ラフの傾き、切片との関係がわか

る (知) 。

○ 能率のよい方法でグラフをかこ

・ 1次関数のグラフの特徴を利 うとする (関) 。

用して 能率よくグラフをかく 、 。 ○ 傾きと切片を利用して、能率的 にグラフをかくことができる。

(知・考)

3 直線の式の ・ 直線の式を、いろいろな方法 ○ 与えられた条件から直線の式を 求め方( )

3

で求める。 求めることができる (表) 。 2 1 2元1次方程 ・ 2元1次方程式と1次関数は ○ 2元1次方程式の解と1次関数

式のグラフ( )

1

同じ関係を表していることを理 のグラフ上の点の座標との関係が

方 解する。 わかる (知) 。

程 ○ 2元1次方程式のグラフをかく

式 ことができる。

1 2 連立方程式の ・ 連立方程式の解は、それらの ○ 連立方程式の解は、それぞれの 次 解とグラフ( )

3

方程式のグラフの交点の座標と 条件を満たす点の集まりである直 関 なっていることを理解する。 線の共通部分(交点)であること

数 に気付く (考) 。

○ 連立方程式をグラフをかいて解 くことができる。また、グラフの 交点を連立方程式で求めることが できる (表) 。

3 1 1次関数の ・ 日常の事象の中にも1次関数 ○ 日常の事象についての問題解決

、 。

利用( )

3

を用いて解決できる問題がある に グラフ等を利用しようとする 1 ことを知り、1次関数を利用し (関・考)

次 て問題を解く。

数 2 リレーバトン ・ リレーバトンパスの方法につ ○ グラフを利用して、バトンパス の パスの追究( )

1

いて考察する。 を考察しようとする。

利 (関・考)

4 まとめと練習( )

2

・ 様々な問題に取り組み、本単 ○ 4観点から総合的に評価する。

元で学習してきた内容全般を振 り返る。

( ) 日常生活で関数を利用する数学的活動

3

単元の導入段階や基本的事項の習熟後の応用段階では、数学的活動を取り入れて学習そのものや 活用しようとする意欲の向上を図りたい。特に、対応する値を求める活動を通して式のよさや、グ ラフの直観性のよさを味わわせ、関数学習の意欲を高めたい。

体育祭で行った学級対抗リレー、8月の北京オリンピック視聴の経験など、生徒が身近に感じる 題材を扱うことで数学に対する興味関心が高められる。本来ならば、2次関数となるものも扱うこ とになるが、ビデオなどの機器を活用し、グラフを折れ線グラフで表すことで擬似的に1次関数の 利用として扱うことができる。このことは、高校数学で学習する微分の要素も含まれるため、後に つながる数学経験の一つとしても期待できる。また、複雑な計算を必要としないため、グラフ表現

、 。

の直観的なよさを感じさせ いろいろな場面で活用しようとする意欲を高められると期待している

(3)

y

y x 2 授業の実際

( ) ねらい

1

○ よりよいバトンパスの方法についてグラフを利用して考察する活動を通して、その有用性を 感得させいろいろな場面で活用しようとする意欲を高める。

( ) 展開

2

学習活動 教師の働きかけと生徒の反応

① 北京オリンピックのリレーのビ 陸上競技部の生徒に、走り出すポイントの付け方を聞く。

デオを見る。 S「足の大きさを使って、走り出すポイントを付ける 」 。

→ この部分が十分他の生徒に伝わらなかったため、課題 の把握がスムーズにいかなかったと考えられる。

課題の把握

「最高のリレーバトンパスについてグラフを使って追究しよう」

② 4人グループになり、パソコン 事前に取っておいたデータを提示する。

を使って受け手と渡し手のグラフ を作る。

<データ>

・ 受け手のビデオ映像(

15

f/

sec

1秒間に

15

フレームのデータなので、

ムービーメーカーで3フレームずつコマ 送 り し て 、

1/5

秒 単 位の 距 離 デ ー タ を記 録 し 、 グラフ化する。

生徒がかいたグラフ

ビデオから数値を読み取る活動では、1次関数を学習し ていることから、 の値が一定の割合で増加すると思い込 んでいる生徒が多く見られた。グループ活動では、そうい った予想とのギャップを話し合いながら解決し、作業を進 める姿も見られた。

また、 と の対応表からグラフ用紙に点をとり、グラ フをかく段階では、数学を苦手としている生徒も教えても らいながら作業を進め、全員がグラフを完成させた。

コーンの間隔は1m

(4)

・ 渡し手のビデオ映像

100 10

コマ送りをして mの終わりまで m間隔でタイム計測を行い、そのデータ をもとにOHP用紙にグラフ化する。

その結果、直線となることを確認した。

生徒がかいたグラフ

③ 2つのグラフを重ね合わせなが ・ 2つのグラフを重ね合わせる。

ら、リレーのポイントの付け方を 考察する。

渡し手の直線を平行移動させながら、真剣に追究する姿 が見られた。

④ 走り出しポイントおよびその理 走り出しポイントを見出したグループの代表が、その結

由の発表 果を発表する。

ここでは、結果の報告に留ま ってしまったため、後日詳細を 解説することを予告し、自己評 価用紙の記入に移った。

⑤ 自己評価用紙の記入

コーンの間隔は10m

(5)

<生徒自己評価および感想>

はい ← → いいえ

A B C D

ア 課題に興味をもって取り組んだ。

60.0

40.0

0.0

0.0

% イ 日常の場面でグラフを利用できる

56.7

30.0

13.3

0.0

ことを理解できた。

ウ グループ活動に積極的に参加した。

83.3

13.3

3.3

0.0

% エ 他の人の考えが役立った。

60.0

36.7

3.3

0.0

% オ 日常のいろいろな場面でグラフを

20.0

63.3

13.3

3.3

利用したいと思った。

<<感想>>

○ 自分たちがいつも練習しているリレーのバトンパスがグラフで表せて、数学的に考えることがで きることにびっくりしました。自分の走りがグラフになったので、どこで加速しているかとかもよ くわかりました。今後の自分の走りに生かしたいと思います。

○ グラフを使ってどこの場所が一番パスしやすいのかが分かった。ペアは違うけれど、来年の参考 にしたいです。自分たちで研究したい。

○ 今回はリレーをやったけれど、他にもまだグラフを使えることはたくさんあるし、グラフは便利 だと思います。

・ 数学でした勉強はテストだけではなく、リレーなどを攻略することができる。

・ 今度リレーをするときは、これを生かして走ってみたいです。

、 。

・ バトンを渡すには 受け手と渡し手の距離があっているとうまくなるんだとグラフを見て思った

・ いつもと変わった授業でおもしろかった。よくわかった。

・ 今回の授業は、とても楽しくできてよかった。

・ 何事もグラフを使って書くと、思ったより分かりやすくて、簡単でした。

・ 班で協力してできた。

・ グラフを使って書くと分かりやすいなあと思いました。難しいものも簡単になるなあと思いまし た。

・ よくわかってよかった。

・ 楽しかったです。

・ 新感覚の授業で楽しくできた。

・ データをかくのがたのしかった。

・ 普通にグラフをかいただけではリレーのことだとわからなかったけれど、下にずらすとやっと理 解できてすごいと思った。

・ 実際の走りをグラフにすることができてよかった。

・ 教科書とかの問題は分かりやすくてやりやすかったけれど、実際の記録をもとにグラフをつくろ うとすると大変なんだなと思った。

・ パソコン難しい。まあ楽しかった。

・ 難しくてよくわからなかった。

○は、陸上競技部に所属し、今回のデータを提供してくれた生徒

(6)

<資料>

受け手のグラフ

渡し手のグラフ

バトンパスの例 学習プリント

この例では、直線の切片が−4であることか ら、4m手前で走り出せばよいことがわかる。

(7)

3 実践の考察とまとめ

( ) 「リレーバトンパス」の課題について

1

授業後の生徒の自己評価にも見られるとおり、多くの生徒は興味をもって課題に取り組んでお り、日常生活に活用できたことについて一定の満足感を得たようである。その要因を考えてみる と、次のことが考えられる。

① 生徒の実際の「走り」を利用したこと

② コンピュータを使って、各自の力でデータを収集できたこと

③ グループで協力しながらグラフをかいたこと

④ 日常の「走り」が数学で処理できたこと

⑤ 高度な計算処理を必要とせず、直観的に理解できること

① 生徒の実際の「走り」を利用したこと

この効果は大きかったと感じている。ビデオを利用することで、実感をもって自分たちの身 近な題材であると感じさせられ、より興味を高めることができた。実際に走った生徒も、今後 の競技に役立てたいという感想をもってくれたことは、何よりもうれしい。

② コンピュータを使って、各自の力でデータを収集できたこと

数値を自らの手で収集する作業は非常にはんさで、授業の中に取り入れることは難しい。コ ンピュータは、その特性をいかすことで可能にしてくれる。事前の編集作業は慣れないと大変 であるが、コンピュータ活用の効果も大きいと考えている。

③ グループで協力しながらグラフをかいたこと

対象生徒の実態として、学力差の大きい集団をどのような学習形態で活動させるかが大切な ポイントとなる。今回は、グループで学習を進める形態ととった。コンピュータが得意な生徒 に使わせたいという意図もあったが、グラフを各

。 段階でも話し合い協力しながらかく姿がみられた 結果的に、全員が受け手のグラフを完成させるこ とができ、グループ学習が機能していたと考えて いる。

④ 日常の「走り」が数学で処理できたこと

この実践では、整理されたデータでなく、生の データを利用している。受け手の距離の測定時に も体のどの部分で読み取るかという点でも誤差が

生じる。しかし、スタートしてすぐに安定し、その測定誤差もほとんど関係なくグラフができ あがる。直観的に、速さが安定していくことが確認でき、ほとんどすべての生徒のグラフが課 題解決に利用できることが確認された。そして、直線の切片を読み取るという、直観的な解決 方法も大きな魅力であると考えている。

⑤ 高度な計算処理を必要とせず、直観的に理解できること

課題の提示方法に改善の余地があるが、日常生活を関数で考えるためは、生徒にとって身近

で興味をもって取り組むことができる題材であると考えられる。また、生徒の実態に応じてで

はあるが、発展性ももっている。

(8)

y=ax2

y=ax2

y=ax2 0≦x≦1

x= 2

y=ax2

0≦x≦1

一方で、課題提示について、大いに反省すべき点がある。まず、対象生徒の学力実態を考える と、課題をより絞って 「スムーズなバトンパスをするには、渡し手が何メートル手前に来たら 、 スタートすればよいか」とした方がとらえやすかったと考えられる。また、はじめに渡し手のグ

、 。 、

ラフも受け手と同じグラフ用紙にかかせたために 混乱を生じさせてしまった これらのことは 2年生にとってこの課題はかなり難しいということを示している。

( ) 関数

2

との関連について

リレーバトンパスの題材は、ほぼ等加速度 運 動 で あ る と 考 え ら れ る こ と か ら 、 関 数 の利用として扱われることが多い。

今回は1次関数の題材として扱うために、ビ

、 。

デオを利用して 実際の走りをデータ化した 右のグラフは、代表生徒のデータに原点付近 で、近似している関数 を重ねたも のである。 の部分では、ほぼ近似 している。しかし、その後もわずかではある が加速しており、 付近でほぼ最高速と なっていると考えられる。今回、3人のデー タをとっているが、いずれのグラフも同じ傾 向が見られる。

関数 の題材として扱う場合は、受

け手のデータをとる際に、 の範囲

のデータが必要となる。そうでないと、走り

出しポイントの予測にずれが生じ、検証実験

の成功も得られないと考えられる。

参照

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