応用解析学 レジメ , Ver. 1
2009/01/03,
西岡•
この レジメ, Ver 1
は講義最終日2009/01/09
以降に書き換えることがある.
なお 「2009/01/16 (
金), 2
限」に期末試験をおこなう.
•
質問/
リクエスト のあるものは「オフィスアワー=
水曜4
限」に2
号館11
階38
号室 にくる こと.
•
それ以外の曜日/
時間も,
質問/
リクエスト を受け付けるが,
研究室には不在の可能性がある.
1 2
変数関数1.1
距離と領域• 2
次元平面R
2の2
点P = (x, y), Q = (a, b)
の距離ρ(P, Q)
をρ(P, Q) ≡ √
(x − a)
2+ (y − b)
2 で定義する.
•
点P = (x, y) ∈ D
にたいし,
部分集合(1.1) B
r(P ) ≡ { Q ∈ R
2: ρ(P, Q) < r } ⊂ R
2 をP
を中心とした半径r
の球 と呼ぶ.
●
●
X y b
a P
Q
P
r
注意
1.1. n
次元空間R
n の点P = (x
1, x
2, · · · , x
n)
と点Q = (a
1, a
2, · · · , a
n)
の距離としては, ρ(P, Q) ≡ √
(x
1− a
1)
2+ (x
2− a
2)
2+ · · · + (x
n− a
n)
2, (1.2)
ρ
∗(P, Q) ≡ max {| x
1− a
1| , | x
2− a
2|| , · · · , | x
n− a
n|} , ρ
†(P, Q) ≡ | x
1− a
1| + 1
2 | x
2− a
2|| + · · · + 1
2
n| x
n− a
n|
等があるが,
どれも同値である.
ただし, ρ
∗ とρ
† は無限次元空間に拡張できる. ⋄
• D ⊂ R
2 を領域という.
ある数K > 0
にたいし, D
が原点を中心とした半径K
の球に含まれる, i.e.
D ⊂ B
K(0)
となるとき, D
を有界な領域 という.
1.2 2
変数関数• R
2 の領域D
において,
f : (x, y) ∈ D → R
1 という関係をD
で定義された実数値関数f
という.
• 2
変数関数f (x, y)
の視覚的な意味は, 3
次元空間R
3 の図形である.
領域D
で定義されたf (x, y)
にた いしG = { (x, y, f (x, y)) : (x, y) ∈ D } ⊂ R
3 をf
のグラフという.
例題
1.2. (i) f (x, y) = − x − y + 1, D = { 0 ≤ x ≤ 1, 0 ≤ y ≤ 1 }
のグラフは下図の左側の平面である.
0 0.2
0.4 0.6
0.8 1 0
0.2 0.4
0.6 0.81
-1 -0.5
0 0.5
1
0 0.2
0.4 0.6
0.8 0
0.2 0.4
0.6 0.8
(ii) g(x, y) = 1
x
2+ y
2+ 1 , D = {− 2 ≤ x ≤ 2, − 2 ≤ y ≤ 2 }
のグラフは下図の右側の曲面である.
-2 -1
0 1
2 -2 -1
0 1
2
0 0.25
0.5 0.75 1
-2 -1
0 1
練習問題
1.3.
関数f (x, y) ≡ x
2+ y
2の概形を描け. ⋄
2
関数の極限2.1 1
変数関数の極限• D
内部の点x
0にたいし, lim
x→x0,x∈Df (x) = a
であるとき,
関数f
はx
0で極限a
をもつ という*1.
•
極限という言葉は,
数列{ a
n}
に対してよく使われるが,
実は関数に対する物と同じである:
命題
2.1.
関数f
がx
0で極限a
をもつ. ⇔ { x
n}
をD
に含まれる数列とする.
すべてのn
でx
n̸ = x
0かつ
lim
nx
n= x
0∈ D
なら, lim
nf (x
n) = a. ⋄
•
これにより,
関数の極限は(
基礎数学で勉強した)
数列の極限に帰着することが判った.
2.2 2
変数関数の極限定義域
D
の関数f(P )
にたいし,
点P = (x, y)
がD
内のいかなる路を通って点Q = (a, b)
に近づいてもlim
P→Q
f (P ) = α
が存在するとき
, f
は点Q
で極限値α
を持つ という.
ここで, P = (x, y) → (a, b) = Q
は, (1.2)
で与えられた
ρ
にたいしρ(P, Q) → 0
を意味するが,
点P
が 点Q
に近づく方法は無数にあることを注意する.
例題
2.2. (x, y) ̸ = (0, 0)
で定義された関数f (x, y) = x y
√ x
2+ y
4 はQ = (0, 0)
で極限値0
を持つ.
[
解答]
!1.0
!0.5 0.0
0.5
1.0 !1.0
!0.5 0.0
0.5 1.0
!0.5 0.0 0.5
| x | ≤ √
x
2+ y
4だから| x y
√ x
2+ y
4− 0 | = √ | x |
x
2+ y
4· | y | ≤ | y | → 0 as (x, y) → (0, 0). 2
例題
2.3. (x, y) ̸ = (0, 0)
で定義された関数h(x, y) = x − y x + y
はQ = (0, 0)
で極限値を持たない事を示せ.
[
ヒント=
下の図]
*1 ここでf(x0)の値とaにはなんの関係も無いことを注意せよ.
y=x y=-2x
y=-x/2
[
解答] y = αx
を保って, x → 0, y → 0
となるときlim
(x,y)→(0,0)
h(x, y) = lim
(x,y)→(0,0)
(1 − α)x
(1 + α)x = 1 − α 1 + α .
これはα
の値により異なるので,
極限値は存在しない.
例えば,
α = 1
のときh(x, y) → 0, α = − 2
のときh(x, y) → − 3, α = − 1/2
のときh(x, y) → 3
となる. 2
3
連続関数3.1 1
変数の連続関数関数
f
がx
0 で極限値a
をもち,
しかもf (x
0) = a
のとき, f
はx = x
0 で連続 といい, D
の全ての 点x
で連続な関数をD
で連続な関数 という.
注意
3.1.
連続の定義をε-δ
論法を使って厳密に述べてみよう.
( ∗ )
関数f
はx = x
0 で連続”
とは,
任意のε > 0
にたいし,
あるδ > 0
があり,
| x − x
0| ≤ δ ⇒ | f (x) − f (x
0) | ≤ ε
となる事である. ⋄
3.2 2
変数の連続関数領域
D
で定義された関数f (P )
が 点Q = (a, b) ∈ D
で連続とは, lim
P→Q
f (P) = f (Q)
となることである.
注意
3.2.
多変数関数の連続の定義をε − δ
論法を使って厳密に述べてみよう.
( ∗ ) P = (x, y)
を関数f
の定義域D
内の点とする. f
が 点Q = (a, b) ∈ D
で連続とは,
任意のε > 0
にたいし,
あるδ > 0
があり,
ρ(P, Q) ≡ √
(x − a)
2+ (y − b)
2< δ ⇒ | f (P ) − f (Q) | < ε. ⋄
•
多変数関数も, 1
変数関数の場合と同様に都合の良い性質を備えている:
定理
3.3 (
最大値,
最小値).
有界閉領域D
で連続な関数f (P )
はD
で最大値と最小値をとる. ⋄
定理3.4 (
中間値の定理).
関数f (P )
は領域D
で連続.
任意にとった2
点Q, R ∈ D
でf (Q) < f (R)
の とき, f (Q) < c < f (R)
となる任意の数c
にたいし, f (S) = c
となる点S ∈ D
が存在する. ⋄
4
偏微分f
を領域D
で定義された連続関数とする.
(4.1) lim
x→x0
f (x, y
0) − f (x
0, y
0) x − x
0が存在するとき
, f
は 点(x
0, y
0)
でx
偏微分可能 といい, (4.1) = f
x(x
0, y
0) (= ∂f
∂x (x
0, y
0)
とも表示する)
と表す.
さらに,
このf
x(x
0, y
0)
をf
のx
偏導関数 と呼ぶ.
同様に,
x
lim
→x0f (x, y
0) − f (x
0, y
0)
x − x
0≡ f
y(x
0, y
0) (= ∂f
∂y (x
0, y
0)
とも表示する)
が存在するとき
, f
は 点(x
0, y
0)
でy
偏微分可能 といい,
この極限値f
y(x
0, y
0)
をf
のy
偏導関数 と呼ぶ.
注意
4.1.
大雑把に言えば,
偏微分しようとする変数以外は定数と考えて微分することが偏微分である.
そ のため1変数の場合の微分公式が,
そのまま偏微分にも適用できる.
•
増分記号∆:
変数x
が増える量を「x
の増分」と呼び, ∆x
で表す. (∆x
は2
文字だが, 1
つの量で ある.)
x → x + ∆x
と変化したときに,
関数f (x, y)
がどれだけ変化するか考える. ∆x
が小さい とき, x-
偏 微分の定義を思い出すと,
f (x + ∆x, y) − f (x, y) = f (x + ∆x, y) − f (x, y)
∆x ∆x ≅ f
x(x, y) ∆x.
同様に
, ∆y
が小さい としてy → y + ∆y
と変化したときには, f (x, y + ∆y) − f (x, y) = f (x, y + ∆y) − f (x, y)
∆y ∆y ≅ f
y(x, y) ∆y.
命題
4.2 (
合成関数の微分). (i) 2
変数関数z = f (x, y)
と2
変数関数x = g(u, v), y = h(u, v)
の合成関 数f (g(u, v), h(u, v))
の偏微分について,
次の式が成立する.
∂f
∂u = f
x(x, y) g
u(u, v) + f
y(x, y) h
u(u, v)
∂f
∂v = f
x(x, y) g
v(u, v) + f
y(x, y) h
v(u, v). ⋄ (4.2)
例題
4.3. 2
変数関数f (x, y)
は滑らかとする. x = r cos θ, y = r sin θ
として, ∂f
∂r , ∂f
∂r
を求めよ. (
極座標系への変換)
[
解答] g
r= cos θ, g
θ= − r sin θ, h
r= sin θ, h
θ= r cos θ
だから,
∂f
∂r = f
x(r cos θ, r sin θ) cos θ + f
y(r cos θ, r sin θ) sin θ.
∂f
∂θ = − f
x(r cos θ, r sin θ)) r sin θ + f
y(r cos θ, r sin θ)) r cos θ. 2
注意
4.4 (
線形代数の利用). 2 × 2
行列(4.3) ∂(x, y)
∂(u, v) ≡
( g
u(u, v) h
u(u, v) g
v(u, v) h
v(u, v)
)
を使うと*2
, (4.2)
は行列の記法を使って( f
u(u, v)
f
v(u, v) )
= ∂(x, y)
∂(u, v)
( f
x(x, y) f
y(x, y)
)
ただし
x = g(u, v), y = h(u, v)
と表せる.
4.1
高階偏微分1
変数の場合と同様,
偏微分でも 偏導関数の偏微分 を考えることが出来る.
(4.4) lim
x→x0
f
x(x, y
0) − f
x(x
0, y
0) x − x
0= f
xx(x
0, y
0) (= ∂
2f
∂x
2(x
0, y
0)
とも表示する).
これ以外にも
(4.5) lim
y→y0
f
x(x
0, y) − f
x(x
0, y
0)
y − y
0= f
xy(x
0, y
0), (= ∂
2f
∂x∂y (x
0, y
0)
とも表示する).
(4.6) lim
x→x0
f
y(x, y
0) − f
y(x
0, y
0) x − x
0= f
yx(x
0, y
0), (= ∂
2f
∂y∂x (x
0, y
0)
とも表示する).
(4.7) lim
y→y0
f
y(x
0, y) − f
y(x
0, y
0)
y − y
0= f
yy(x
0, y
0) (= ∂
2f
∂y
2(x
0, y
0)
とも表示する).
などの
2
階偏微分 および2
階偏導関数 がある.
ここで
(4.5)
と(4.6)
は偏微分の順序が異なるが,
適当な条件の下では同じになる.
命題
4.5.
関数f
の偏導関数f
xy(x, y), (4.5)
とf
yx(x, y), (4.6)
が 領域D
で共に存在し,
連続である.
こ のとき,
両者は一致する. ⋄
この議論を何度も繰り返すと 自然数
m, n
にたいし∂
mf
∂x
m(x, y), ∂
nf
∂y
n(x, y), ∂
m+nf
∂x
m∂y
n(x, y)
という 高階偏微分と高階偏導関数 を考えることができる
.
さらに 命題4.5
と類似した結果が成立する.
5
偏微分の応用5.1
多変数関数でのTaylor
の定理1
変数の関数f (x)
にたいして,
テイラー の定理 は大変有用な定理であった.
定理
5.1 (
テイラー展開- 1
変数関数).
関数f
は 区間(a, b)
でn + 1
階まで微分可能.
点c, x ∈ (a, b)
に たいし,
次が成立:
ある点y
がありf (x) = f (c) + f
′(c)
1! (x − c) + f
′′(c)
2! (x − c)
2+ · · · + f
(n)(c)
n! (x − c)
n+ R
n+1,
ここで, | y − c | < | x − c |
でありR
n+1≡ f
(n+1)(y)
(n + 1)! (x − c)
n+1. ⋄ (5.1)
*2 (4.3)の行列式をヤコビ行列式(ヤコビアン)と言い,多変数関数の積分で重要な役割を果たしている.
同様に
2
変数の関数f (x, y)
にも テイラーの定理 が成立している:
定理
5.2 (
テイラー展開).
関数f (x, y)
にはn + 1
階までの連続な偏導関数が存在する.
このとき,
ある0 < θ < 1
にたいし,
次の等式が成立する:
f (a + h, b + k) = f (a, b) + (
h f
x(a, b) + k f
y(a, b) ) + 1
2!
(
h
2f
xx(a, b) + 2h k f
xy(a, b) + k
2f
yy(a, b) ) + · · · + 1
n!
( h ∂
∂x + k ∂
∂y )
nf (a, b) + R
n+1, R
n+1≡ 1
(n + 1)!
( h ∂
∂x + k ∂
∂y )
n+1f (a + θh, b + θk).
ただし
(
h ∂
∂x + k ∂
∂y )
nf (a, b) =
∑
nℓ=0
k
C
ℓh
n−ℓk
ℓ∂
nf
∂x
n−ℓ∂y
ℓ(a, b)
である*3. ⋄
5.2
極大と極小定義
5.3. f (x, y)
を2
変数関数とする.
(i)
「点P = (a, b)
で極大」とは,
点P
の適当な近傍U
にたいし,
次が成立すること. f (P ) ≥ f (Q), Q ∈ U, Q ̸ = P.
(ii)
「点P = (a, b)
で極小」とは,
点P
の適当な近傍U
にたいし,
次が成立すること. f (P ) ≥ f (Q), Q ∈ U, Q ̸ = P.
!2
!1 0
1
2 !2
!1 0
1 2
0.0 0.5 1.0
!2
!1 0
1
2 !2
!1 0
1 2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8
図5.1 2変数関数の極大/極小
•
極大と極小を併せて,
「極値」という.
•
応用上は,
極値を調べることが重要.
*3 kCℓ=k!/`
ℓ! (k−ℓ)!´ .
•
極値は最大/
最小とは必ずしも一致しない.
•
ではどうやって極値を調べるのか? ⇒
微分/
偏微分.
偏微分可能な関数f (x, y)
にたいし,
関数H(x, y)
を(5.2) H(x, y) ≡ f
xx(x, y) f
yy(x, y) − (
f
xy(x, y) )
2で定義する*4
.
次の 定理5.4
は「多変数関数でのテイラー展開」から得られる.
定理
5.4.
関数f (x, y)
は2
階までの連続な偏導関数が存在している. f
がある 点P = (a, b)
で(5.3) f
x(a, b) = 0 f
y(a, b) = 0.
を満たしている
.
(i) H(a, b) > 0 , f
xx(a, b) > 0.
*5⇒ f
は 点P
で極小値をもつ. (ii) H(a, b) > 0 , f
xx(a, b) < 0. ⇒ f
は 点P
で極大値をもつ. (iii) H(a, b) < 0. ⇒
点P
はf
の極値ではない.
(iv) H(a, b) = 0. ⇒
これだけでは極値かどうか判定できない. ⋄
例題5.5.
次の関数の極値を調べよ.
(i) f (x, y) = x
3− 3x
2+ y
2, (ii) f (x, y) = (x + y)
2+ x
4+ y
4, (iii) f (x, y) = x
2+ y
3.
[
解答] (i) Step 1.
偏微分f
x(x, y) = 3x
2− 6x = 0 → x = 0, 2.
f
y(x, y) = 2y = 0 → y = 0.
これより
(0, 0)
と(2, 0)
が極点の候補者.
Step 2. f
xx(x, y) = 6x − 6, f
yy(x, y) = 2, f
xy(x, y) = 0.
まず
(0, 0)
を調べる:
f
xx(0, 0) = − 6 < 0, H(0, 0) = − 6 · 2 − 0
2= − 12 < 0.
よって
(0, 0)
は極点ではない.
つぎに(2, 0)
を調べる:
f
xx(2, 0) = 12 − 6 = 6 > 0, H(2, 0) = 6 · 2 − 0
2= 12 > 0.
よって
(2, 0)
で極小値f (2, 0) = 2
3− 3 · 2
2= − 4
をとる. (ii)
偏微分0 = f
x(x, y) = 2(x + y) + 4x
3, 0 = f
y(x, y) = 2(x + y) + 4y
3 第一式から第二式を引いて0 = 4(x
3− y
3) = 4(x − y)(x
2+ xy + y
2) = 4(x − y) { (x + y
2 )
2+ 3 4 y
2}
これの解はx = y
もしくはx = 0 = y.
*4 このHを「ヘシアン」と呼ぶ.
*5 (ii-a)と(ii-b)では,fxx(a, b)をfyy(a, b)で代用してもよい.
1. x = y
をf
x(x, y) = 0
に代入して,
0 = f
x(x, x) = 4x + 4x
3= 4x(1 + x
2) → x = 0, y = 0.
2. f
x(0, 0) = 0, f
y(0, 0) = 0.
よって
,
極点の候補者は(0, 0).
Step 2. x ̸ = 0
もしくはy ̸ = 0
なら,
f (0, 0) = 0 < f (x, y) = (x + y)
2+ x
4+ y
4→ (0, 0)
で極小値0.
(iii) Step 1.
偏微分f
x(x, y) = 2x, f
y(x, y) = 3y
2.
これより, (0, 0)
が極値の候補者.
Step 2. 2
階の偏微分f
xx(x, y) = 2, f
yy(x, y) = 6y, f
xy(x, y) = 0.
これから
H (0, 0) = 2 · 0 − 0
2= 0
つまり(0, 0)
が極点かどうかは,
まだ判定できない.
じつは極点ではない.
!5
0
5
!2 0
2
!20 0 20 40
練習問題
5.6.
次の関数の極値を調べよ.
(i) f(x, y) = x
2− xy + y
2− 4x − y, (ii) f (x, y) = xy (
a − x − y ) . (iii) f (x, y) = √
x
2+ y
2. ⋄
6
最適化問題6.1
等式制約条件付き最適化問題前節の 定理
5.4
で論じた 極大/
極小 より難しい問題を論ずる.
問題6.1 (
等式制約条件付き最適化問題).
二つの滑らかな関数(6.1) f (x, y) : R
2→ R
1, g(x, y) : R
2→ R
1 と 実数b
が与えられている.
このとき(6.2) max
(x,y)
f (x, y) subjects to g(x, y) = b
の値
(=
最適値)
をもとめよ.
なお,
最適値を実現する(x
∗, y
∗)
を最適解とよぶ. ♠
最適解を完全に求める方法は複雑だが
,
その候補者だけなら次の方法でほぼ満足のいく結果が得られる.
まず,
問題6.1
にたいし(6.3) L(x, y, λ) ≡ f (x, y) + λ (
b − g(x, y) )
をラグランジュ関数と呼ぶ.
定理
6.2 (
ラグランジュの乗数法).
等式制約条件付き最適化問題(6.2)
の最適解(x
∗, y
∗)
が(6.4) ¯¯g
x(x
∗, y
∗)¯¯ + ¯¯g
y(x
∗, y
∗)¯¯ ̸ = 0
を満たしている
.
このとき,
あるλ
∗∈ R
1 が存在して,
次が成立する:
L
x(x
∗, y
∗, λ
∗) = f
x(x
∗, y
∗) − λ
∗g
x(x
∗, y
∗) = 0, L
y(x
∗, y
∗, λ
∗) = f
y(x
∗, y
∗) − λ
∗g
y(x
∗, y
∗) = 0, L
λ(x
∗, y
∗, λ
∗) = b − g(x
∗, y
∗) = 0. ⋄
(6.5)
この 定理
(
ラグランジュの乗数定理)
から,
問題6.1
の解(x
∗, y
∗)
が次の手順で求められることが判った: Step 1. (6.5)
を満たす(x
∗, y
∗, λ
∗)
をすべて見つける.
定理6.2
より,
これらの(x
∗, y
∗, λ
∗)
が最適 解の候補者である.
Step 2. Step 1
で求めた(x
∗, y
∗, λ
∗)
を実際にf (x, y)
に代入し,
真の最適解を決定する.
例題6.3.
次の等式制約条件付きの最適値問題を解け.
(6.6) max
(x,y)
xy subject to 2x
2+ y
2= 3 [
解答]
ラグランジュ関数はL(x, y, λ) = xy + λ (
3 − 2x − y
2)
である. (6.5)
より0 = L
x(x, y, λ) = y − 2λ 0 = L
y(x, y, λ) = x − 2λy 0 = L
λ(x, y, λ) = 3 − 2x − y
2 だから,
0 = 3 − 2 × (4λ
2) − (2λ)
2 が得られ, λ = ± 1/2
となる.
つまり最適解の候補者は(x, y, λ) = (1, 1, 1/2), (1, − 1, − 1/2).
これを
f (x, y) = xy
に代入して,
最適解= (1, 1, 1/2),
最適値= 1
となる. 2
練習問題6.4.
つぎの等式制約条件つき最適化問題を解け.
(i) max( x + y ) subject to 2x
2+ y
2+ y = 3.
(ii) min( − x
2y ) subject to x + y
2= 5 .
(iii)
制約条件x
2+ y
2= 1
の下でx
3+ y
3 の最大値と最小値をもとめよ. (iv) max( xy + yz + zx ) subject to x + y + 2z = 3 and x + 3y = 1.
[
ヒント] :
ラグランジュ関数はL(x, y, z, λ
1, λ
2) = xy + yz + zx + λ
1(3 − x − y − 2z) + λ
2(1 − x − 3y).
(v) max( x + 2y + z ) subject to x
2+ y
2+ z
2= 1 and x + z = 1. ♥
6.2
不等式制約条件付きの最適化問題真に不等式の制約条件 が付いた最適化問題を考える
.
この問題は 等式制約条件付きの最適値問題 より格段に複雑である.
問題
6.5 (
不等式制約条件付きの最適化問題). (6.1)
であるような滑らかな関数f (x, y), g(x, y)
と実数b
が与えられている.
このとき(6.7) max
(x,y)
f (x, y) subjects to g(x, y) ≤ b
の値と最適解(x
∗, y
∗)
をもとめよ. ♠
この問題も最適解
(x
∗, y
∗)
の満たす十分条件を調べて,
最適解の候補者を探す方法で解決できる.
ただ一 般に,
等式制約条件の場合より 候補者の数 が多くなる.
前と同様に
(6.7)
に対応するラグランジュ関数を(6.8) L(x, y, λ) ≡ f (x, y) + λ (
b − g(x, y) )
で定義する*6.
定理
6.6 (
クーン・タッカー).
不等式制約条件付き最適化問題(6.7)
の最適解(x
∗, y
∗)
が(6.4)
を満たして いる.
このとき,
あるλ
∗∈ R
1 が存在して,
次が成立する:
L
x(x
∗, y
∗, λ
∗) = f
x(x
∗, y
∗) − λ
∗g
x(x
∗, y
∗) = 0, L
y(x
∗, y
∗, λ
∗) = f
y(x
∗, y
∗) − λ
∗g
y(x
∗, y
∗) = 0, L
λ(x
∗, y
∗, λ
∗) = b − g(x
∗, y
∗) ≥ 0 and λ
∗≥ 0, λ
∗L
λ(x
∗, y
∗, λ
∗) = λ
∗(
b − g(x
∗, y
∗) )
= 0. ⋄ (6.9)
この 定理
(
クーン・タッカー)
から,
問題6.1
の解(x
∗, y
∗)
が次の手順で求められることが判った: Step 1. (6.9)
を満たす(x
∗, y
∗, λ
∗)
をすべて見つける.
定理6.6
より,
これらの(x
∗, y
∗, λ
∗)
が最適 解の候補者である.
Step 2. Step 1
で求めた(x
∗, y
∗, λ
∗)
を実際にf (x, y)
に代入し,
真の最適解を決定する.
例題6.7.
次の不等式制約条件付きの最適化問題を解け.
max
(x,y)
x
2+ y subject to x
2+ y
2≤ 1. ⋄ [
解答]
この場合のラグランジュ関数はL(x, y, λ) = x
2+ y + λ (
1 − x
2− y
2)
となる. (6.9)
より最適解の候補者を求めよう.
0 = L
x(x, y, λ) = 2x − 2λx, 0 = L
y(x, y, λ) = 1 − 2λy, 0 ≤ L
λ(x, y, λ) = 1 − x
2− y
2, λ ≥ 0,
0 = λ L
λ(x, y, λ) = λ (
1 − x
2− y
2) .
*6 (6.7)で制約条件が逆の不等式g(x, y)≥bならラグランジュ関数は(6.8)と別のものとなる.この点が, 等式制約条件の場
合 と異なる.
第
1
式より, x ̸ = 0, λ = 1
もしくはx = 0 .
一方,
第2
式より, λ ̸ = 0, y = 1/2λ
が判る.
第3
〜 第5
式も考慮すると,
x = 0
の場合⇒ (x, y, λ) = (0, 1, 1 2 ), x ̸ = 0, λ = 1
の場合⇒ (x, y, λ) = ( ±
√ 3 2 , 1
2 , 1)
が最適解の候補者となる.
この候補者を実際にf (x, y)
に代入して, (x
∗, y
∗) = ( ± √
3/2, 1/2)
が最適解(
二 つある),
最適値は5/4
である. 2
練習問題
6.8.
次の不等式制約条件付き最適化問題を解け. (i) max
(x,y)
( x
2+ y
2) subject to 2x
2+ y
2≤ 4. (ii) max
(x,y)
( x
2+ y ) subject to 2x
2+ y
2≤ 4.
(iii) max
(x,y)
( 2(x − y)
2− x
4− y
4)
subject to x
2+ y
2≤ 5.
7
最適化問題の応用企業および消費者の行動を最適化問題の立場から説明する
.
7.1
消費者の行動個人の消費者が
2
種類の商品X, Y
を量x, y
だけ消費する.
彼は 予算制約の下で,
自己の満足(=
効用)
が最大になるように行動する
.
ここで満足の度合いは,
効用関数u(x, y)
で表現出来るとする.
効用関数は 消費が多けれ ば,
満足が大きい ので,
u(x, y)
はx, y
の増加関数⇔ u
x(x, y) ≥ 0, u
y(x, y) ≥ 0
を満たしている.
例題
7.1.
消費者の予算をm,
効用関数をu(x, y) = x
2y
としたときの,
消費者の行動を調べる.
商品X
の価格をP
X, Y
の価格をP
Y とすると,
消費者の行動は,
次の最適解である:
(7.1) max
x≥0, y≥0
u(x, y) subjects to P
Xx + P
Yy ≤ m
この
(7.1)
に対応するラグランジュ関数はL(x, y, λ) = x
2y + λ (
m − P
Xx − P
Yy )
となり,
クーン・タッカーの定理6.6
から0 = L
x(x, y, λ) = 2x y − λP
X, 0 = L
y(x, y, λ) = x
2− λP
Y, 0 ≤ L
λ(x, y, λ) = m − P
Xx − P
Yy, λ ≥ 0
0 = λ L
λ(x, y, λ) = λ (
m − P
Xx − P
Yy ) . u(0, y) = 0
だからx ̸ = 0.
よって第1
式と第2
式から2x y P
X= λ = x
2P
Y⇒ x = 2P
YP
Xy
第5
式から0 = m − P
X× 2P
YP
Xy − P
Yy ⇒ y = m
3P
Y, x = 2m
3P
X つまり最適解(x
∗, y
∗)
は(2m/3P
X, m/3P
Y). 2
7.2
企業の行動企業は
,
資本K
と労働L
から製品を量q
だけを生産する.
ここで企業は 資本と労働量の制約の下で,
利潤が最大になるように行動する
.
例題7.2.
生産量q
はq = 6 K
1/3L
1/2で表される
(=
生産関数).
いま,
生産物の価格p,
資本の価格*7r,
労働の価格*8w
とすると,
企業の利潤π(K, L) = p q − r K − w L = 6 p K
1/3L
1/2− r K − w L
制約条件K ≥ 0, L ≥ 0
の下で, π(K, L)
を最大にする.
まず極値は次式を満たしている
.
0 = π
K(K, L) = 2 p K
−2/3L
1/2− r, 0 = π
L(K, L) = 3 p K
1/3L
−1/2− ω
これから,
(K
∗, L
∗) = ( 6
3p
6r
3w
3, 18
2p
6r
2w
4)
が最適解の候補者である
.
この
(K
∗, L
∗)
で極大値をとるか調べる. π
KK(K, L) = − 4
3 p K
−5/3L
1/2⇒ π
KK(K
∗, L
∗) < 0 π
LL(K, L) = − 2
3 p K
1/3L
−3/2⇒ π
LL(K
∗, L
∗) < 0
H (K, L) ≡ π
KK(K, L) × π
LL(K, L) − π
KL(K, L)
2= p
2K − 4/3 L
−1⇒ H (K
∗, L
∗) > 0
となるから,
定理5.4
より極大値となることが示された. 2
*7 資本を借りるための賃貸率.
*8 賃金率
8
練習問題の解答練習問題
1.3
解答下の図
,
回転放物面と呼ばれる.
!4
!2 0
2
4!4
!2 0
2 4
0 10 20 30
練習問題
5.6
解答(i) ((3, 2)
で極小− 7. (ii) (a/3, a/3)
で極大a
3/27. (iii) (0.0)
で極小値0.
練習問題
6.4
解答(i) f (x, y) = x + y, g(x, y) = x
2+ y
2+ y, b = 3
とし,
ラグランジュの乗数法を用い る.
ラグランジュ関数はL(x, y, λ) = x + y + λ(3 − 2x
2− y
2− y)
となる.
(a) 0 = L
x(x, y, λ) = 1 − 4λx (b) 0 = L
y(x, y, λ) = 1 − 2λy − λ (c) 0 = L
λ(x, y, λ) = 3 − 2x
2− y
2− y
(a)
よりx = 1/(4λ)
と(b)
よりy = 1/(2λ) − 1/2
を(c)
に代入するとy
だけの式が得られる: 3 − 2 · ( 1
4λ )
2− ( 1 2λ − 1
2 )
2− ( 1 2λ − 1
2 ) = 0.
これを変形して
,
13 4 − 3
8λ = 0.
従って
, λ
2= 3
26
を得る.
すなわち, λ = ±
√ 3
26
である. x, y
はλ
で表されていたから,
それぞれ代入す るとCase 1. λ =
√ 3
26
のとき, (a)
よりx = 1
4
√ 26
3 , (b)
よりy = 1 2 (
√ 26 3 − 1).
Case 2. λ = −
√ 3
26
のとき, (a)
よりx = − 1
4
√ 26
3 , (b)
よりy = − 1 2 (
√ 26
3 + 1).
つまり最適解の候補者は
(x, y, λ) = ( 1
4
√ 26 3 , 1
2 (
√ 26 3 − 1),
√ 3 26
) ,
( − 1 4
√ 26 3 , − 1
2 (
√ 26
3 + 1), −
√ 3 26
)
が最適解の候補者となる
.
これらを実際にf (x, y)
に代入して大小を比較する: (x
∗, y
∗) =
( 1 4
√ 26 3 , 1
2 (
√ 26 3 − 1)
)
が最適解
,
最適値は3 4
√ 26 3 − 1
2
である. (ii)
ラグランジュ関数はL(x, y, λ) = − x
2y + λ(5 − x − y
2)
となる.
(a) 0 = L
x(x, y, λ) = − 2xy − λ, (b) 0 = L
y(x, y, λ) = − x
2− 2λy, (c) 0 = L
λ(x, y, λ) = 5 − x − y
2. (c)
よりx = 5 − y
2を(a)
に代入し計算すると, λ = − 2y(5 − y
2)
を得る.
x, λ
の値を(b)
に代入するとy
だけの式が得られる:
− (5 − y
2) + 4y
2(5 − y
2) = 0.
これを変形し
,
(y
2− 1)(y
2− 5) = 0.
ゆえに
, y = ± 1 or ± √
5
である. x, λ
はy
で表されていたから,
それぞれ代入すると(x, y, λ) = (4, ± 1, ± 8), (0, ± √
5, 0)
が最適解の候補者である.
これを実際にf (x, y)
に代入し(x
∗, y
∗) = (4, 1)
が最適解,
最適値は− 16
である.
(iii)
ラグランジュ関数はL(x, y, λ) = x
3+ y
3+ λ(1 − x
2− y
2)
となる.
(a) 0 = L
x(x, y, λ) = 3x
2− 2λx, (b) 0 = L
y(x, y, λ) = 3y
2− 2λy, (c) 0 = L
λ(x, y, λ) = 1 − x
2− y
2. (a)
を変形するとx(3x − 2λ) = 0
だから, x = 0 or x = 2λ/3
である.
また