ネーターの定理とその応用
A05SA024
安本真士2010
年2
月22
日発表の流れ
深谷賢治 著:解析力学と微分形式(岩波書店)に従ってハミルトン方程式を 考察する。
1. イントロダクション
2.
幾何学からの準備3.
正準変換4.
ネーターの定理とその応用1 イントロダクション
ハミルトン方程式なる微分方程式を幾何学的に 解く。
⇓
第一積分(解曲線上一定値をとる関数)を探し、解の存在する 空間の次元を落とす。
⇓
第一積分の満たす条件がネーターの定理によって与えられる。
以下、指示がなければ q1,…, qn, p1,…, pn を R2n の座標とする。
定義 1 (ハミルトン方程式). H ∈ C∞(R2n) :関数 H が次の偏微分方程式系
dqi
dt = ∂H
∂pi dpi
dt = −∂H
∂qi (1)
をみたすとき、(1) を H をハミルトニアンとするハミルトン方程式という。
※ハミルトニアンの物理的意味:エネルギー 例
m:質点の質量、q:質点の位置、F = F(q):物体に働く力 に対し、
H := p2
2m + V (p := mdq
dt、V :ポテンシャル ((⇐⇒
def
dV
dq = −F)) とおくと、H:解曲線上一定値となる。(⇒ 力学的エネルギー保存則)
2 幾何学からの準備
定義 2.
XH :=
∑n i=1
(∂H
∂pi
∂
∂qi − ∂H
∂qi
∂
∂pi )
を、ハミルトニアン H に対するハミルトン・ベクトル場という。また XH : C∞(R2n) → C∞(R2n), G ∈ C∞(R2n) に対し、
XH(G) :=
∑n i=1
(∂H
∂pi
∂G
∂qi − ∂H
∂qi
∂G
∂pi )
を、H に対するハミルトン・ベクトル場による 関数 G の微分という。
定義 3. 1. f ∈ C∞(R2n) に対し、微分1形式 df =
∑n i=1
( ∂f
∂qi dqi + ∂f
∂pi dpi )
を、 f の外微分という。
2. R2n の座標 q1,· · · , qn, p1,· · · , pn に対し、微分2形式
ω :=
∑n i=1
dqi ∧ dpi を、symplectic 形式という。
定義 4 (1 パラメータ変換群).
V =
∑n i=1
(
V i ∂
∂qi + V i+n ∂
∂pi )
: 完備なベクトル場
l(t) : 積分曲線 (
⇐⇒def V (l(t)) = dl(t)
dt , l(0) = a )
ϕt : a 7−→ l(t) なるϕtを、V が生成する1パラメータ変換群という。
命題 1. ϕt+s = ϕt(ϕs) = ϕs(ϕt)
定義 5 (Poisson 括弧). H, G ∈ C∞(R2n) に対し、
{G, H} := XH(G) と定めるとき、{,} を P oisson 括弧という。
3 正準変換
微分同相の像の上での
symplectic
形式なる微分形式を微分 同相による引き戻し(pull back)
を考えたときに、定義域上のsymplectic
形式に一致する変数変換を正準変換という。⇓
正準変換の持つ性質がネーターの定理の条件に必要となる。
定義 6. Φ : R2n −→ R2n:微分同相 ω := ∑n
i=1 dqi ∧ dpi:定義域の symplectic 形式 Ω := ∑n
i=1 dQi ∧ dPi:値域の symplectic 形式とする。
Φ∗Ω = ω をみたすとき、Φ を正準変換という。
(Φ∗Ω : Φによるpull back)
命題 2. V が生成する 1 パラメータ変換群 {ϕt} が正準変換
⇐⇒ ∃G ∈ C∞(R2n) s.t. V = XG 証明
V が生成する 1 パラメータ変換群 {ϕt} が正準変換より
(∑n )
ポアンカレの補題より
∃G ∈ C∞(R2n) s.t. dG =
∑n i=1
(V idqi − V n+idpi)
ベクトル場の各成分を比較して V = XG. 逆にたどれば逆が言える。
命題 3. f ∈ C∞(R2n), V : R2n 上のベクトル場に対し、次は同値。
(1)V (f) = 0 (2)f ◦ ϕt = f
証明
∂
∂tf(ϕt(a))¯¯
¯¯t=t0
を求めればよい。
4 ネーターの定理とその応用
定理 1 (ネーターの定理).
H ∈ C∞(R2n) : 関数 に対し、次は同値である。
(1)∃G ∈ C∞(R2n) s.t. {H, G} = 0
(2)∃ϕt : 正準変換で 1 パラメータ変換群 s.t. H ◦ ϕt = H
また、ϕtに対応するベクトル場は、ハミルトン・ベクトル場 XGである。
証明
(1) ⇒ (2) 命題2より XG が生成する ϕt は正準変換からなり、
XG(H) = {H, G} = 0 より命題3から H ◦ ϕt = H
(2) ⇒ (1)ϕtはあるベクトル場 V から生成され、ϕt : 正準変換より 命題2から ∃ ∈ ∞ R2n
例(角運動量)
n = 2 のとき、重力場のもとでの運 動を考える。
H := p21 + p22
2m − GmM
√q12 + q22
ϕt
q1 q2 p1 p1
:=
q1 cost − q2 sint q1 sint + q2 cost p1 cost − p2 sint p1 sint + p2 cost
と定めると、ϕt:正準変換となる。
(ϕt:原点を中心とした角度 t の定める正準変換)
この ϕt なる変換に関してハミルトニアン H は不変である。
ϕt の定めるベクトル場は、
V = −q2 ∂
∂q1 + q1 ∂
∂q2 − p2 ∂
∂p1 + p1 ∂
∂p2
となり、G := q1p2 − p1q2 とおくと V = XG を満たす。よってネーターの 定理より G は H をハミルトニアンとするハミルトン方程式の第1積分で ある。G のことを角運動量といい、この例は角運動量保存則を意味する。
(ケプラーの第 2 法則)
さらに定数 H0, G0 に対し等位面
Σ(H0, G0) := {(q1, q2, p1, p2) ∈ R4 | H(q1, q2, p1, p2) = H0, G(q1, q2, p1, p2) = G0} はコンパクトかつ弧状連結ならばトーラスになる。また Σ(H0, G0) に含ま
れるハミルトン方程式の解は全て周期解であるか、全て Σ(H0, G0) で稠密 である。
上の例のように、第一積分を見つけること によって四次元空間内におけるハミルトン方 程式の解曲線の存在領域を、四次元の中の二 次元の図形(不変トーラス)にまで絞り込む ことができる。
⇒ これがハミルトン方程式を幾何学的に 解く ということである。
5 展望:アーノルド - リウビルの定理
H ∈ C∞(R2n) をハミルトニアンとするハミルトン方程式の第1積分が n 個 G1 = H,…, Gn あり、{Gi, Gj} = 0 かつ gradG1, gradGn が一次独立 であるとする。定数 G10,…, Gn0 に対し
Σ(G10,…, Gn0) := {(q, p) ∈ R2n | Gi(q, p) = Gi0 (i = 1,· · · , n)} がコンパクトかつ弧状連結であると仮定すると、
Σ(G10,…, Gn0) は n 次元トーラスにな る。また Σ(G10,…, Gn0) に含まれるハミル トン方程式の解は全て周期解であるか、全て Σ(G10, …, Gn0) で稠密である。