原 著
論文受付 2012年 3 月 27 日 論文受理 2013年 3 月 2 日 Code No. 754放射線治療計画装置を用いた kV-CBCT 吸収線量評価
∼前立腺がん放射線治療に及ぼす影響∼
川村哲朗
1村上直基
1岡村佳明
1西村英輝
2宮脇大輔
2木村邦彦
1土師 守
1佐々木良平
2Evaluation of Absorbed Dose from Kilovoltage Cone-beam Computed
Tomography by Radiotherapy Planning System:
Influence on the Radiation Therapy for Prostate Cancer
Tetsuro Kawamura,1* Naoki Murakami,1 Yoshiaki Okamura,1 Hideki Nishimura,2
Daisuke Miyawaki,2 Kunihiko Kimura,1 Mamoru Hase,1 and Ryohei Sasaki2 1Department of Radiology, Kakogawa West City Hospital
2Division of Radiation Oncology, Kobe University Graduate School of Medicine
Received March 27, 2012; Revision accepted March 2, 2013 Code No. 754
Summary
Image-guided radiation therapy (IGRT) is increasingly being used in modern radiation therapy, and it is now possible to verify a patient’s position using kilo-voltage cone-beam computed tomography (kV-CBCT). However, if kV-CBCT is used frequently, the dose absorbed by the body cannot be disregarded. A number of studies have been made on the absorbed dose of kV-CBCT, in which absorbed dose measurements were made using a computed tomography dose index (CTDI) or a thermoluminescent dosimeter (TLD). Other methods include comparison of the absorbed dose between a kV-CBCT and other modalities. These techniques are now in common use. However, dose distribution within the patient varies with the patient’s size, posture and the part of the body to which radiation therapy is applied. The chief purpose of this study was to evaluate the dose distribution of kV-CBCT by employing a radiotherapy planning system (RTPS); a secondary aim was to examine the influence of a dose of kV-CBCT radiation when used to treat prostate cancer. The beam data of an on-board imager (OBI) was registered in the RTPS, after which modeling was performed. The radiation dosimetry was arranged by the dosimeter in an elliptical phantom. Rotational radiation treatment was used to obtain the dose distribution of the kV-CBCT within the patient, and the patient dose was evaluated based on the simulation of the dose distribution. In radiation therapy for prostate cancer, if kV-CBCT was applied daily, the dose increment within the planning target volume (PTV) and the organ in question was about 1 Gy.
Key words: image-guided radiation therapy, kilovoltage cone-beam computed tomography, absorbed dose,
dose distribution
*Proceeding author
緒 言
近年,画像誘導放射線治療(image-guided radiation therapy: IGRT)が普及し始め,kV cone-beam computed tomography(kV-CBCT)による位置照合の有用性が示さ れている1, 2).しかし,高頻度に使用すると身体に与え る吸収線量も無視することはできない.kV-CBCT の被 ばく線量についての報告は,CT dose index(CTDI)や thermoluminescent dosimeter(TLD)による線量測定3∼5, 6), または他のモダリティとの線量比較7, 8)が一般的であり, これらによって kV-CBCT による被ばく線量が把握され てきた.しかし,kV-CBCT の被ばくによる体内線量分 布は,患者体格や治療体位,さらには照射部位の違い など患者個々の状態によってさまざまな分布を示す. 本研究の目的は,放射線治療計画装置(radiotherapy planning system: RTPS)にて kV-CBCT の線量分布を再 現し,前立腺がん放射線治療に及ぼす影響について検 1加古川西市民病院放射線科 2神戸大学医学部附属病院放射線腫瘍科
討することである.
1.方 法
1-1 位置決め用 X 線装置(X-ray simulator)の実効 エネルギー算出
Varian Medical Systems 社製 Clinac-ix の位置決め用 X線 装置である on-board imager(OBI)(version1.4)に half bow-tie filterを装着し X 線管を 0˚ の位置(gantry: 90˚)として,指 頭 型 6 cc 電 離 箱 検出器(Radcal 社 製 9015用 10×5−6)を用いてアルミニウム半価層(half value layer: HVL)を求めた.HVL は照射線量が 50%以下に 減衰するまでアルミニウム板を付加して実測を行い,測 定値から算出した.線量計は Radcal 社製 Model 9015 Radiation Monitor Controllerを用いた.橘らの方法9)を 参考に電離箱検出器は isocenter に配置し,X 線管と isocenterの中間にアルミニウム板(GAMMEX RMI 社製 RMI115A純度:99%)を設置した.アルミニウム板の保 持には固定台を作成し,アルミニウム板の両側方を支 持することによって X 線軸上に固定具が重ならないよ うな構造とした.X 線照射条件は,125 kV,80 mA, 100 ms,測定時の照射野サイズはプローブの大きさに 絞り 3×3 cm とした.得られた HVL から実効エネル ギーの算出を行った10).半価層測定時の幾何学的配置 を Fig. 1 に示す. 1-2 kV-CBCT の吸収線量測定 kV-CBCT の撮影条件は,Mode Name:Pelvis(360˚ 回 転),125 kV,80 mA,13 ms,680 mA second(mAs), half bow-tie filter(+)とし, 楕 円 形 フ ァント ム(IBA Dosimetry社製 I’mRT Phantom)を用いて測定を行っ た.Isocenter にファントムの中心位置を設置し,この位 置を測定点とした.測定には PTW-Freiburg 社製 0.6 cc Farmer chamber(type 30013)を用いた.測定時の照射野 サイズは,当院の臨床に用いている kV-CBCT 撮影範囲 に合わせて X1=6.8 cm,X2=23.5 cm,Y1=Y2=5.4 cm と した.これは,long 方向の撮影範囲が 8 cm となる照射 野サイズである. 吸収線量への変換は 1-1 で求めた実効エネルギーか ら質量エネルギー吸収を評価し,次式から算出した10, 11).
Dmed=Xout·F·K·(Wair/e)·{(μen/ρ)water/(μen/ρ)air}
Xout:測定値 F:校正定数 K:温度気圧補正係数 Wair:空気の W 値(33.97 eV) (μen/ρ)water:水の質量エネルギー吸収係数 (μen/ρ)air:空気の質量エネルギー吸収係数 今回,Radcal 社製の指頭型 6 cc 電離箱検出器をリ ファレンス線量計としたため,校正定数を F としてい る.クロスキャリブレーションには,X 線照射条件を, 125 kV,80 mA,100 ms,照射野サイズ 10×10 cm とし て指頭型 6 cc 電離箱検出器と 0.6 cc Farmer chamber を isocenterに設置した.それぞれ測定を行い測定値の比 を取ることによって校正定数とした.なお,測定時は線 質指標である quality index を half bow-tai filter 装着時 と同程度とするためにアルミニウム板を付加した. 1-3 位置決め用 X 線装置のプロファイル取得 深部量百分率(percent depth dose: PDD),軸外線量 比(off-center ratio: OCR)の 測 定を行った.測 定に は,PTW-Freiburg 社製一次 元走 査 式 水ファントム (MP1)と PTW-Freiburg 社製 0.125 cc Semiflex chamber (type31010),PTW-Freiburg 社製 0.35 cc Roos chamber (type34001),線 量 計 は PTW-Freiburg 社 製 UNIDOS
webline,解 析 用ソフトウェアに PTW-Freiburg 社製 MEPHYSTO mc2を使用した.今回,水ファントムに一 次元走査式 MP1 を使用した過程には,X 線位置決め装 置の X 線管と検出器が撮影位置に設置された状態でな ければ X 線曝射できないという事情から三次元走査式 水ファントムを使用することができなかったためである. PDD の測定条件は,kV-CBCT 撮影時の条件と同じ 125 kV,80 mA,half bow-tie filter(+)とし,SSD 100 cm, パ ル ス幅 10 ms にて 透 視 撮 影を 行った.測 定 には PTW31010 Semiflex,PTW 34001 Roos を使用した.そ れぞれを比較しピーク深以降で二つの線量計による相 違はなかったため,PTW 34001 Roos を採用した.PDD の測定間隔は 1∼10 mm までを 1 mm 間隔,その後を 2,3,4,7,10,13,16,19,21 cm の深さにて測定を 行った.また,OCR の測定条件は,125 kV,80 mA, 100 msとし,各位置にて,それぞれ 10 回撮影を行い平 均値を測定値とした.測定には PTW31010 Semiflex Fig. 1 Geometry of the half-value layer’s measurement.
を使用し,シンワ測定株式会社製直尺シルバー 30 cm (JIS 1 級)にて治療寝台上の MP1 水ファントムを測定位 置へ移動させた.OCR の測定間隔は X 軸方向,Y 軸方 向は共に 1 cm 間隔とし,深さ方向は 1,4,10,19 cm とした. 1-4 治療計画装置のモデリング
治療計画装置は Philips Medical Systems 社製 Pinnacle3 (Version 8.0 m)を使用した.治療計画装置における線 量計算には実測ベースのアルゴリズムである clarkson 法が用いられておらず,convolution・superposition 法の みが用いられているため,モデリング作業が必要とな る.また,治療計画装置には wedge の形状を任意に登 録できる機能が付属している.よって今回は half bow-tie filterの形状を wedge として登録した. モデリングは計画装置の機能にある auto-modeling を 使用し,その後,測定データとの誤差ができるだけ少な くなるように manual にて各種設定を変更しつつモデリ ングを繰り返し行った.また,half bow-tie filter の形状 は実際の幾何学的形状ではなく,こちらも測定データと の誤差が小さくなるように形を形成した. 1-5 kV-CBCT の照射 monitor unit(MU)値の決定 kV-CBCT は治療計画装置上にて回転照射として計算 させ,1-2 で測定した楕円形ファントムの中心位置での 吸収線量と等しくなるような MU 値を kV-CBCT の照射 MU値として設定した.このとき計画装置上の fraction sizeを 100 と設定し,線量計算結果を 100 で除すること によって細かい値を算出した. この作業によって kV-CBCT の計算結果を絶対線量 として取り扱うことを可能とした. 1-6 実測とシミュレーションとの比較 治療計画装置にタフウォータファントム(京都科学)の CT画像を登録し,モデリングした kV-CBCT のビーム を垂直に照射した.治療計画装置によって計算された PDDと OCR を実測と比較し,精度を確認した.また, kV-CBCT撮影時の線量分布とシミュレーションによる 線量分布を比較するため楕円形ファントムに 1-2 でクロ スキャリブレーションを行った PTW 30013 farmer を挿 入して kV-CBCT の撮影を行い,各測定点での線量を 照合のための指標として実測した.測定点は Fig. 2 に 示す①∼⑨の位置とし,測定回数は各位置それぞれ 4 回とした.治療計画装置上での線量計算には,Fig. 2 の 実測と同様な位置にそれぞれ PTW 30013 farmer を挿入 した CT 画像を用い,照射 MU 値は 1-5 で求めた値とし た.評価点計算線量の算出には,電離空洞内は水とし て登録し,電離空洞内の平均線量を計画線量とした. 1-7 骨盤部の線量分布 前立腺がん治療を受けた患者の CT 画像を利用して kV-CBCTの線量分布シミュレーションを行った.さら に,当院の前立腺がんに対する強度変調放射線治療 (intensity modulated radiation therapy: IMRT)の線量分 布に重ね合わせ,dose volume histogram(DVH)の変化 を観察した.この時の処方線量は D95% ≥74 Gy/37 fr, kV-CBCT撮影回数は 37 回とした. なお,臨床画像の使用にあたっては,当院の規定に 基づき非連結匿名化を行い,情報管理委員会の許可を 得たものである. 2.結 果 2-1 半 価 層 法 に よ る 実 効 エ ネ ル ギ ー の 算 出 と kV-CBCT 吸収線量 kV-CBCT 撮影時の条件である管電圧 125 kV,管電 流 80 mA とし,撮影時間 100 ms,half bow-tie filter(+) でのアルミニウム半価層は 5.7 mm,実効エネルギーは 44.9 keV,quality index は 0.359 となった.また,クロ スキャリブレーション時のアルミニウム板厚は 1.3 mm となり,楕円形ファントム中心位置における kV-CBCT の吸 収 線 量は,1-2 に示した計 算式から 2.37 cGy で あった. 2-2 OBI のプロファイル取得
OBI の PDD,OCR を そ れ ぞ れ Fig. 3,4 に 示 す. Crossplane方向で左右非対称となった.
2-3 治療計画装置のモデリング
2-2 で得たプロファイルと half bow-tie filter の形状を 治療計画装置に登録し,PDD,OCR のモデリングを 行った.計画装置に登録した half bow-tie filter の形状
を Fig. 5 に, モ デ リ ン グ 結 果 の PDD を Fig. 6 に, depth:1 cm で正規化した OCR を Fig. 7 に示す.PDD で depth の浅い部分に大きな差を認めた. 2-4 実測とシミュレーションとの比較 1-6 の方法から得た PDD,OCR を Fig. 8,9 に,PDD における実測と RTPS におけるシミュレーションとの誤 差率を Table 1 に示す.PDD,OCR 共にモデリングと 同様な結果を示した.また,1-5 から求めた kV-CBCT の 照 射 MU 値は,計 画 装 置 の calibration point で の dose/MUを 0.01 cGy/MU に設 定した場 合 473 MU となった.この MU 値を用いてシミュレーションした 回転照射時の線量分布およびプロファイルカーブを Fig. 10,11 に,また,実測線量とシミュレーションとの 比較結果を Table 2 に示す.すべての測定点において ±2%以内に一致した. 2-5 骨盤部の線量分布 患者の体格別(A:痩せ型,B:中肉中背,C:肥満)に 計 算した kV-CBCT の 線 量 分 布を Fig. 12 に,1 回の kV-CBCT撮影による各臓器別の吸収線量を Table 3 に 示す.kV-CBCT 撮影での吸収線量は患者の体格が小 さいほど多くなり,体表面の正中付近になるにつれて高 くなる傾向となった.また,kV-CBCT 撮影 1 回分での吸 収線量の maximum dose は,膀胱線量で 1.7∼3.9 cGy, Fig. 3 PDD curve of the X-ray simulator in the water
phantom.
Fig. 4 OCR curves of the X-ray simulator in the water phantom.
Fig. 5 The shape of the half bow-tie filter registered in the RTPS.
Fig. 6 Comparison of the PDD between measurement of the X-ray simulator and the modeling results of the RTPS.
Fig. 7 Comparison of the OCR between measurement of the X-ray simulator and the modeling results of the RTPS.
Fig. 8 Comparison of the PDD between measure-ment of the X-ray simulator and calculation results of the RTPS.
Table 1 Relative error of the PDD between measurement of the X-ray simulator and calculation results of the RTPS Measurement 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 2.0 3.0 4.0 7.0 10.0 13.0 16.0 19.0 21.0 depth (cm)
Error (%) −64.10 −4.29 −0.89 1.12 0.23 0.01 −0.13 0.77 0.43 0.10 0.82 1.34 1.39 1.21 0.99
Fig. 10 Dose distribution in the elliptical phantom. The kV-CBCT dose distribution was calculated by RTPS.
Fig. 11 Profile curve of dose distribution in the elliptical phantom.
Table 2 Measurement values in the elliptical phantom
Measurement point ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ Simulation 2.37 2.84 2.82 2.28 2.28 3.72 3.73 2.06 2.07 dose (cGy) Measurement 2.37±0.04 2.85±0.04 2.82±0.04 2.30±0.01 2.27±0.01 3.66±0.01 3.36±0.01 2.06±0.02 2.05±0.01 dose (cGy) Error (%) 0.00 0.35 0.00 0.88 −0.44 −1.61 −1.88 0.00 −0.97 Comparison of the absorbed dose between measured values and simulated values.
Fig. 12 Dose distribution in the pelvis.
Fig. 13 Dose distribution in the pelvis.
Comparison of the dose distribution between IMRT and IMRT+kV-CBCT.
Table 3 The kV-CBCT dose in the pelvis, when the kV-CBCT was used once
Patient’s physique A B C Maximum dose Bladder 3.9 3.4 1.7 (cGy) Rectum 3.2 3.1 1.9 PTV 3.1 2.6 1.8 Mean dose Bladder 2.9 2.4 1.3 (cGy) Rectum 2.8 2.5 1.5 PTV 2.8 2.4 1.6
Fig. 14 Comparison of the dose volume histogram between IMRT and IMRT+kV-CBCT.
Table 4 Comparison of the absorbed dose between IMRT and IMRT+kV-CBCT Bladder Rectum PTV Maximum dose IMRT (cGy) 7764.9 7732.6 7892.9
IMRT+kV-CBCT (cGy) 7867.3 7818.3 7983.0 Dose increment (cGy) 82.4 85.7 90.1 Percentage increase (%) 1.1 1.1 1.1 Mean dose IMRT (cGy) 2910.8 3079.2 7538.9 IMRT+kV-CBCT (cGy) 3000.8 3171.5 7627.2 Dose increment (cGy) 90.0 92.3 88.3 Percentage increase (%) 3.1 3.0 1.2 D95%≥74 Gy
直 腸 線 量 で 1.9∼3.2 cGy, 計 画 標 的 体 積(planning target volume: PTV)の線量で 1.8∼3.1 cGy の増加を認 めた.
さらに,体格 B に対して IMRT と IMRT+kV-CBCT
について求めた線量分布と DVH の変化を Fig. 13,14 に,吸収線量の変化を Table 4 に示す.kV-CBCT の撮 影を行うことによって膀胱,直腸,PTV の maximum doseはそれぞれ 82.4 cGy,85.7 cGy,90.1 cGy,さらに
mean doseにおいては同様に 90.0 cGy,92.3 cGy,88.3 cGy の線量増加を認めた. 3.考 察 測定された HVL は,Song らの報告5)にある同条件下 のものとよく一致していた. PDD において depth の浅い部分のモデリング結果に 実測との差が大きくみられた(Fig. 6).これは,治療計 画装置に登録されている幾何学的配置が OBI と異な ること,登録可能なスペクトルの最小エネルギーが 0.1 MeVであることなどが原因と考えられる.また,実 測とシミュレーションとの比較においても,Fig. 8,9 に 示すようにモデリング結果とほぼ同様な結果となった. RTPSでのシミュレーション結果と実測データの一致度 合いは,kV-CBCT のシミュレーションが相対的な線量 分布を計算するうえでの正確性を反映することになる. これらの結果から皮膚表面の線量評価は困難であると 思われた.
OCR においては Fig. 4 に示すように crossplane 方向 において左右非対称となった.これは,ヒール効果と half bow-tie filterの特殊な形状による影響だと考えら れ,crossplane 方向に線質の変化が懸念される.橘らの 報告12)によると CT スキャナにおいて直径 320 mm の円 柱水ファントム中のスキャンフィールド中心部と辺縁部 の吸収線量変換係数の差は 0.1%とし,中心部のスペク トル評価のみで吸収線量の変換係数を求めても問題は ないとしている.しかし,CT スキャナのビーム成形 フィルタと kV-CBCT の half bow-tie filter は形状が異な るため正確な kV-CBCT 吸収線量測定には別途確認が 必要であり今後の課題である. また,回転照射における実測とシミュレーションの比 較においては,測定点⑥,⑦で他の測定点より誤差率 が大きくなった(Table 2).誤差要因として考えられるも のは,モデリング結果,電離箱測定の精度,測定位置 誤差,カウチの影響などさまざまであるが,Fig. 11 に示 すようにプロファイル①はプロファイル②より急峻な線 量変化を示しており測定位置誤差が大きく影響したも のと考えられた.しかしながら,すべての測定点で ±2%以内で一致(Table 2)したことから通常の前立腺放 射線治療で contouring が行われる膀胱,直腸,PTV な ど体内臓器の線量評価は可能と判断した. 回転照射における線量分布シミュレーションでは,通 常の放射線治療で使われる MV エネルギーを用いた場 合,回転中心に高線量域が発生する.これに対して kV エネルギーを用いた場合においては,Fig. 10 に示すよ うに楕円形ファントムの前面と後面に高線量域が発生し ている.これは,kV エネルギーは MV エネルギーに比 べて深さ方向に対する減衰が大きいために回転中心に 線量が集中しなかったものと考えられる.このことは, 実際の患者の CT 画像を使ったシミュレーション結果で ある Fig. 12 からも同様なことがいえる.さらに,このシ ミュレーションにおいては患者の体格別(A:痩せ型,B: 中肉中背,C:肥満)に吸収線量を評価した.kV-CBCT には診断領域の CT で使われている X 線量変調撮影機 能が存在しないために患者の体格によって照射線量を 調整することができない.したがって,kV-CBCT にお ける吸収線量は患者の体格が小さいほど多くなる結果 (Fig. 12,Table 3)となった.今後は,患者の体格に合 わせた撮影条件の最適化の必要性があるものと考えら れた. また,臨床例を用いてシミュレーションを行う場合, 不均質補正を加えるか否かは非常に大きな問題であ る.Ding らの報告13)によると,骨のなどの高原子番号 素材において kV-CBCT ビームなどの低エネルギー X 線では光電効果が増加することによって骨と軟組織の 質量エネルギー吸収係数の比は 4 になるとしている. 今回のシミュレーションにおいては,骨部分が高線量に なることはなく RTPS の計算アルゴリズムの限界と考 えられた.しかしながら軟組織では,Ding らのモンテ カルロシミュレーションによる検討において照射条件 125 kV,80 mA,25 ms,照射野 X1=8.3 cm,X2=24.9 cm, Y1=Y2=11.8 cm の条件下で前立腺の線量が 4 cGy と なったのに対して,今回の RTPS におけるシミュレー ションでは照射条件 125 kV,80 mA,13 ms,照射野 X1=6.8 cm,X2=23.5 cm,Y1=Y2=5.4 cm の撮影条件下 で PTV 平均線量が 2.8∼1.6 cGy となり撮影条件および 照射野条件の違いを考慮するとよく一致しているものと 思われた. 放射線治療時に kV-CBCT を使用することで PTV,リ スク臓器共に吸収線量は増加した.本研究では Table 4 に示すように maximum dose においては膀胱,直腸, PTV共に 1.1%の線量増加を認め,mean dose において は膀胱の線量増加がもっとも大きく 3.1%となった. Michalskiらの報告14)によると,直腸障害は 60 Gy 以上 の線量で晩期障害と著しく関連し,45 Gy 以下の線量に おいては関連性が見出せていないとして,3D-CRT およ び IMRT を安全に行うためのポイントを V50<50%, V60<35%,V70<20%,V75<15%としている.さらに, Viswanathanらの報告15)では,前立腺がん治療において 泌尿生殖器障害は線量−容積と関連性がなく膀胱線量 の許容値は知られていないとしながら,V80<15%, V75<25%,V70<35%,V65<30%としていることから
も,今回の検討における線量増加は臨床的に問題にな るとはいえない.しかしながら,kV-CBCT による吸収 線量増加の影響は,kV-CBCT の撮影頻度と各施設で の治療計画時の線量制約にも関係する.高線量投与時 には,リスク臓器に対する治療計画時の線量制約を満 たすことが困難になると予想され,そのうえさらに kV-CBCTを高頻度に使用することになれば治療計画時 の線量制約を超えてしまう恐れがあり,撮影頻度に対 する検討も必要である. 今後,主流になると思われる adaptive radiotherapy の ように kV-CBCT 画像を用いて経過中の病巣の縮小や 体重減少による線量分布の変化の確認修正を行う治療 法では,kV-CBCT の使用頻度が増加すると考えられ る.特に頭頸部治療で高頻度に kV-CBCT を使用する こととなれば水晶体など低線量で障害が発生する可能 性もあり,骨盤部よりも線量制約に対する影響が大きく なると予想される.このような障害の発生を防ぐため に,治療計画装置において投与線量と kV-CBCT など IGRTを使用することによる線量増加を加味した計画の 意義は大きいと考えられる. 4.結 語 本研究では OBI のビームデータを治療計画装置に登 録することによって kV-CBCT の吸収線量が前立腺 IMRTに及ぼす影響について検討した.その結果, kV-CBCTによる体内線量分布および吸収線量を把握す ることができ,前立腺 IMRT 時の各臓器に与える影響 について確認できた. kV-CBCT の撮影回数を不必要に増やさないことは重 要であるが,撮影回数を減らすことが必ず患者利益に 繋がるとも言い難い.高頻度に kV-CBCT を使用する場 合は,あらかじめリスク臓器の線量制約に kV-CBCT の 吸収線量を加味した形で治療計画を行うか,kV-CBCT の吸収線量レポートを作成するなど,各施設の内情に 合った方法で kV-CBCT の吸収線量を管理する必要性 があると考えられた. 謝 辞 本稿をまとめるにあたり,ご助言をいただきました放 射線技術学会近畿部会論文塾の皆様に深く感謝いたし ます. なお,本研究の要旨は日本放射線腫瘍学会第 23 回 学術大会(2010 年,浦安)にて発表した. 参考文献 1)中川恵一.FPDによる放射線治療の高精度化.日放技学誌 2009; 65(6): 846-850. 2)小玉卓史,幡野和男,遠山尚紀,他.放射線治療における FPDの役割─On Board Imagerについて─.日放技学誌 2009; 65(6): 856-860.
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問合先
〒 675-8611 加古川市米田町平津 384-1 加古川西市民病院放射線科 川村哲朗