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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

ケイショウコウケツアツシャニタイスルケンコウ ショホウノテキヨウトコウカニカンスルケンキュウ

(ダイ5ホウ) : チュウコンネンシャノスポーツノ ケイゾクジョウケンオサグル

徳永, 幹雄

Institute of Health Science, Kyushu University

川崎, 晃一

Institute of Health Science, Kyushu University

上園, 慶子

Institute of Health Science, Kyushu University

橋本, 公雄

Institute of Health Science, Kyushu University

https://doi.org/10.15017/648

出版情報:健康科学. 18, pp.81-85, 1996-03-31. Institute of Health Science,Kyushu University バージョン:

権利関係:

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ー研究資料一

軽症高血圧者に対する健康処方の 適用と効果に関する研究(第 5 報 )

ー中高年者のスポーツの継続条件をさぐる一 雄

雄 幹 公 永 本 徳

橋 川 崎 晃 一 上 園 慶 子

A S t u d y  on t h e  A p p l i c a t i o n  and E f f e c t  o f  H e a l t h  F o r m u l a '   t o  M i d d l e ‑ a g e d  Men and Women w i t h  Mild H y p e r t e n s i o n :  

V.  Looking f o r  t h e  C o n d i t i o n s  t o  Keep Doing  S p o r t s  i n  t h e  M i d d l e ‑ a g e d  

Mikio TOKUNAGA, Terukazu KAWASAKI, Keiko UEZONO,  and Kimio HASHIMOTO 

多くの大学で行われている公開講座と同様に,筆者 健テニスクラブ)を結成し,現在も続いている。この らも過去に肥満教室,水泳教室,テニスの初級教室・ 事例を中心に,中高年者のスポーツの継続要因につい 中級教室,家庭婦人テニス教室,テニスの科学講座(講 て考察してみたい。

義のみ),そして,軽症高血圧者の運動教室・テニス教

室などを担当してきた。 1.大学は何を指導し,何を与えているか。

公開講座の終了後に世話役ができ,スポーツは一時 昭和61年と62年に3カ月間(週2回, 1回2時間,

的に継続されるが,それは長くて3 4年である。 13: 30 15: 30,合計26回)にわたって血圧に関する しかし,ここに例外的に継続している教室が1つあ 講義とテニスの指導を行った。その内容については,

る。それは軽症高血圧者のテニス教室である。昭和61 徳永ら1),2),3)が報告した。

年 (1986年)にスタートしたので,最も長い人は10年 軽症高血圧者のテニス教室終了後,自動血圧計とテ 目である。九州大学健康科学センターテニスクラブ(九 ニスコート(クレーコート)の使用を許可し,年1回

表1.九健テニスクラブ10年の歩み

開 孟

61  62  63 元 2 3  4  5  6  7 

千 千 平 千 午 『 千 午 千 午

│  │ 

公開講座 九健テニスクラブを結成し自主運営。 ↑10周年記念パーティと としてスタート (退会者,新規加入者あり) テニス大会の実施

↓ .61年:平均64才, 10名

• 62年:平均65才, 11名 1.高血圧に関する講義

2.テニスの初心者指導(とにかく,ゲームができるようにする)

3.各種測定…形態・体力測定,歩行数の測定,安静時及び運動中の血圧測定,血液検査,特性 不安調査,健康度調査など

Institute of Health Science, Kyushu University 11, Kasuga 816, Japan. 

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82  健 康 科 学 第18巻

写真1 10周年記念テニス大会の合間

の定期健康診断と各種相談に応じている。その後の経 るので,その継続要因について自由に作文を書いて貰 過の概要は表1のとおりである。最初のテニス教室か った。その中から概要を簡単に抜幸すると次のとおり

ら10年目を迎えたことになる。 である。

1)井ロー夫氏 (86オ)

2.どのようにして運営されているか。 ・開始時 75オ,明治生れ, 60年前の学生時代はサ 継続希望者の自主運営である。各自でテニス前後に ッカー,スキー,テニスなど経験,数え年で87オ,

血圧測定をする。会則を設定(会長,会計,トレーニ あと 3年で90オ。

ング係,指導係など)し,スポーツ傷害保険に加入し 90オで棺おけの資格は目の前。

た。テニスは正月とお盆以外の週2回(月,木), 1回 ・テニス,野菜畑(30年),1リットルの牛乳で健康。

2時間 (13: 30  15 : 30)実施。時々,部内大会(対 ・現在,三半規管がないため,バランスをとるのが 外試合なし),小旅行,懇親会を実施する。メンバーは 難しい。

男女半々で現在,会員は15名。最高86歳。 ・ラケットにボールがうまく当たるようになるのに 5年かかった。横とか前はダメ。

3.どんな人がやめたか。 ・血圧は測り方で違う。測り方でいくらでも高血圧 有職者及び他のテニスクラプ所属者は継続を希望し 者が生まれる。

ない。技術の上達をとくに要求する人は,数年間続い 海外旅行をする。海外でテニスをみると楽しくや ても,もの足りなさを感じて他のクラプヘ移る。何か るのが一番とつくづく思う。

の疾病や傷害を起した人。人間関係でトラプルがあっ ・眼の手術,平成6年1月に右眼,8月左眼の白内

た人。 障手術。

4.どんな人が継続しているか。

血圧が下がった人。テニスの楽しさ・面白さがわか った人。仲間がいる人。勝敗にこだわらない人。健康 第一。仲間との親睦を大切にする人。教えたがらない。

主体性があること,などである。

また,一時やめて復帰した人として,子育てが終わ った人,夫または妻の死,等々もいる。

5.本教室における継続者の事例

軽症高血圧者のテニス教室を開始して, 10年目にな

・血圧だけを注意すれば棺桶に入るまでテニスがで きる。

2) 古賀茂男氏 (80オ)

・開始時 70オ,現会長,未経験者 妻チェ子氏も 同会員。

・自分の健康は自分で守る。足腰を鍛え体力の維持 が信念。

・運動やスポーツは血圧管理に有効。

• 10周年記念祝賀会(パーティーとテニス大会)の 主催者。

・継続理由 1.テニス環境がよい。クレーコート

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2.学校側の支援。定期的健康診断の 実施,技術指導,自動血圧計の設 置など。

3.勝敗を度外視。健康第一。テニス に魅力。仲間との親睦。

4.会則と契約を守る(コートの草取 り,センターの大掃除などもある)。

会費が安いこと(1カ月1,000円)。

・現在86オの会員井口氏を目標にしている。

・足腰を一層丈夫に。耳,目,手などの機能的維持。

いつまでもマイカー運転できるようにしたい。

・食事,運動,ストレスに注意して体力づくりに努 力したい。

• 15周年(西暦2000年)記念祝賀会を目標に楽しく 続けたい。

3) 古賀チョ子氏 (76オ)

・開始時 66オ。未経験者。夫,古賀茂男氏の勧誘。

・高血圧者。通院していた。医師もテニスの継続を 推奨。

・足腰が強くなった。背筋が伸び,持久力ができた。

老人クラプでも若くて姿勢がよいと言われる。本 年の敬老の日に表彰された。

•平成 6 年11 月パプアニューギニアの戦跡,慰霊の 旅で最年長ながら元気に旅ができた。(テニスのお 陰)

・白球の音を響かせながらコートを動き回る時,年 令も忘れてポールを追う楽しみがある。

・ベンチで汗をふき,打法を語り合う気持ちはさわ やか,自分を生き生きさせてくれる。

・体質と体力を変えて,明日の生活の泉となる。

・健康のため,白球を追うテニスをいつまでも続け たい。

4) 水谷勝太郎氏 (76オ)

・開始時 65オ。未経験者。小学校の頃から陸上競 技をしていた。

・仲間が良いこと…陽気に明る<和気あいあい,人 の悪口を言う事もなく,だんまりをきめ込む人も いない。

•もう少しテニスが上手になりたいと思うようにな った。週一回,他のレッスンを受講中,つまり,

週3回テニス。

・疲労感なく適当な運動と思う。今後も続ける自信 がある。

・元気でテニスが続けられる事を祈っている。

5)古賀義夫氏 (79オ)

・開始時 69オ。経験者。途中3年間休部。

•平成 5 年 4 月 奥さん死亡で,気分を紛らわすた めに趣味をふやした。

1.テニス…アウト,ィンでいやな思いする。

2.囲碁・・横から口をはさむ人がいる。

3.麻雀…最もエキサイトする。女性は口数が多 く,大声を出す。

4.ゲートボール…監督が大勢の前でやかましく いう。しかし,自分がミスした時iしすまして いる。精神面の教育が不十分なので人気が落 ちた。

・ダブルスのパートナーに長々と教えるのがいる。

教えすぎはよくない。

•なかなか試合を始めない人がいる。

•新人に教えたがる人がいるがよくない。一番上手 な人が精神面,技術面をコーチする必要がある。

・精神面,技術面について, ミーティングをしたが よい。

6)末吉康隆氏 (71オ)

・開始時 62オ,経験者。現在,故障中ながら参加。

・講座終了後,血圧は正常値内で安定している。

・ケガで休むことが多くなった。

昭和63年12月〜平成元年6月, 6カ月椎間板ヘル ニア

平成6年11月〜平成7年3月,気管支炎 平成7年4月〜現在,変形性右膝関節症

・健康には注意してきたが,老化が進んでいるので あろう。

•NHK の働きざかりの健康特集で,「体力低下を防 ぐこと」「定期的に行うこと」「勝敗にこだわらな いこと」「寒さに対して防衛すること」「心は健や かに」を40オ以上の運動5原則としていた。

・健康八快のすすめとして,快食,快眠,快便,快 談,快尿,快歩,快笑,快声と書いてあった。

・健康に留意し,楽しいテニスを続けたい。

7)佐藤浩一氏 (46オ)

・開始時 42オ。新規加入者。

・入会して驚かされた。親子ほど年齢差のある人が,

生き生きとした姿で,何と楽しいテニスをみせつ けられた。感動した。

•この人達の年齢までテニスを続けようと思った。

生涯スポーツとして最適と思った。

•この人達をみて,テニスは筋力ではなく,うまく

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84  健 康 科 学 第18巻

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写真2 楽しくダプルスが終って(右端井口氏,左より 2人目古賀チヨ子氏)

当てることが重要ということを学んだ。 力月。

・ダプルスでピッタリ息が合った時の感動と緊張感 ・ラケットも握ったことがなかった。

が何ともいえない。 ・ボールが当たる喜び。外気浴できる喜び。 仲間と

・健康チェックとアドバイス,旅行の話やお土産, 語り合える喜び。試合に参加できる喜びで一杯。

人生勉強,など楽しい。 ・試合では皆さんの足をひっぱりながらも,仲間と

生涯スポツとしてテニスを続けていきたい。 自分の健康のため続けていきたい。

8)藤 輝 代 氏 (51オ) ・大先照をお手本にしたい。

・開始時 41オ。未経験者,子供の育児のため永い

問休み。平成7年6月より復帰。 6.スポーツの継続条件について

・テニスをやめて身体の調子が悪かった。精神的ス A.スポーツ集団としての条件

トレスだと気付きバドミントンを始めた。 九健テニスクラプ10年間での事例報告等から継続条

・テニスは夫に進められて始めた。行動的で明るい 件についてみると,その要因は多様である。小集団が 性格になった。 成功する条件として環境,構造,課題的問題の視点か

・夫と同じ趣味を持ち,二人で楽しめる幸わせをし らみると,次のような好条件があったものと思われる。

みじみ感じている。 1).環境的問題

・適度な運動をすることで頭痛が治り,いつしか腰 ①緑の木々に囲まれたクレーコート 2面。月 ・木

痛もなくなった。 は自由に使用できる。(施設)

・健康だからこそ,テニス,バドミントンを楽しむ ②実践的研究として公認されている。(大学内にお ことができるのだ,と健康に感謝している。 ける位置づけ)

・高齢者のテニスをみて元気が湧いてくる。 ③更衣室,シャワー室の使用許可,自動血圧計の

・素晴らしい仲間と楽しいテニスを続けていきたい。 使用許可,定期健康診断の実施,各種相談に応 9)玉里とし子氏 (68オ) じる。(大学側のサポート)

・開始時 60オ。昭和15年頃女学校で軟式テニス。 ④要するに,環境を整え,ほったらかし。

新規加入者。他の会員に勧誘された。 2).構造的問題

・九健グループは明る<楽しいグループでうれしい。 ① 現在会員数は15名。減少したら随時募集。カム

・健康診断をして頂き,テニスができるので幸福で バック体制がある。(部員数)

ある。 ②高齢者集団,技術的には初心者,男女半々,知

・健康を維持しながら,テニスをしたい。 的レベルが高い。(メンバーの特性)

10)今村峰子氏 (43オ) ③会長,会計係,準備運動係,指導係などがある。

・開始時 42オ。末経験者。新規加入者。入会後5 会則 •その他の契約がある。スポーツ傷害保険

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④楽しい仲間がいる。茶話会,忘年会,小旅行な どをして人間関係がよい。(ソシオメトリック構 造)

⑤緊急連絡網あり。(コミュニケーション構造)

3).課題(機能)的問題

①目標は健康第一。勝敗にこだわらない。血圧管 理。(生産性)

②人間関係が極めて良好。高齢者を見習いたい。

(凝集性)

③いつまでも健康でありたい。楽しくテニスをし たい。週2回参加する。毎回出欠をチェックし ている。(志気・やる気)

④九大でテニスをしている。その会員である。会 則と契約を守る。(成員性)

B.スポーツ参加者の個人的条件

最後に,スポーツを継続するためには集団としての 条件が整備されると同時に,個人的条件が重要となる。

そのためには,次のようなスポーツに対する意識の高 揚,主体性の育成,そして指導上の注意が重要な課題

と思われる。

1).スポーツに対する目標の設定と意識の高揚 スポーツ行動を継続されるためには,目標の設定 が指導され,スポーツ意識として感情的態度,信念,

規範信念の育成が重要である。次のような公式で示 される。

スポーツ行動〜行動意圏=感情的態度x信念X規 範信念

・感情的態度:特定状況におけるスポーツに対

・信 念:特定状況におけるスポーツの効 果に対する信念

・規範信念:スポーツについての重要な他者 の期待に対する信念

2).主体性の育成

自分の至適運動量を認識し,それに合った運動の しかたをコントロールできる能力の育成が重要であ る。

3).指導上の注意点

指導者はスポーツにおける勝敗観に関わる指導,

対人関係の維持の重要性,スポーツの効果とその根 拠について,とくに注意して指導する必要があると 思われた。

参 考 文 献

1)徳永幹雄・川崎晃ー・上圏慶子・岡部弘道・吉川 和利・冷川昭子・陳錦鋤:軽症高血圧者に対す る健康処方の適用と効果に関する研究(第1報)一 3カ月の運動教室について一.健康科学, 9:63‑ 78,  1987. 

2)徳永幹雄・川崎晃ー・上園慶子:軽症高血庄者に 対する健康処方の適用と効果に関する研究(第2 報)ー3カ月のテニス教室について一.健康科学,

10 : 59‑71,  1988. 

3)徳永幹雄・川崎晃ー・上園慶子・橋本公雄:軽症 高血圧者に対する健康処方の適用と効果に関する 研究(第3報)ー第2回のテニス教室について一.

健康科学, 11: 107‑120,  1989. 

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参照

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