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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

ドラッグフリー衛星への搭載を目指した100μN級超 小型イオンエンジンの開発

池田, 凌

九州大学総合理工学府先端エネルギー理工学専攻

http://hdl.handle.net/2324/4150505

出版情報:九州大学, 2018, 修士, 修士 バージョン:

権利関係:

(2)

平成 30 年度

九州大学大学院 総合理工学府 先端エネルギー理工学専攻

修 士 論 文

論文名

ドラッグフリー衛星への搭載を目指した

100 N 級超小型イオンエンジンの開発

氏 名 池田 凌

指導教員名 山本 直嗣 教授

森田 太智 助教

(3)

目次

第1章 序論 ... 1

1.1 研究背景および目的 ... 1

第2章 イオンエンジンの作動原理 ... 4

2.1 イオンエンジンの作動原理 ... 4

2.2 性能目標 ... 6

第3章 JIEDIツールを用いたグリッド設計 ... 9

3.1 JIEDI tool ... 9

3.2 計算体系・計算条件 ... 10

3.3 計算結果 ... 12

第4章 100 N級イオンエンジンの性能測定 ... 17

4.1 製作した100 N級イオンエンジン ... 17

4.2 実験体系 ... 19

4.2.1 真空排気系 ... 19

4.2.2 マイクロ波送電系 ... 20

4.2.3 イオンビーム電流測定系 ... 21

4.3 実験結果 ... 22

4.4 推進性能 ... 27

第5章 CNT-FECの設置条件がイオンエンジンの中和に及ぼす影響 ... 30

5.1 研究背景及び目的 ... 30

5.2 CNT-FECの作動原理 ... 31

5.3 実験装置及び実験方法 ... 32

5.3.1 真空排気系 ... 32

5.3.2 イオン源および電子源 ... 33

5.4 実験方法 ... 34

5.4.1 CNT-FECとイオン源の相対位置に関する実験方法 ... 34

5.4.2 イオンビームプロファイル測定実験の実験方法 ... 37

5.5 実験結果及び考察 ... 39

5.5.1 CNT-FEC単体性能試験結果 ... 39

5.5.2 CNT-FECとイオン源の同時作動の実験結果 ... 41

5.5.3 CNT-FECの相対位置の変化による中和性能測定実験結果 ... 42

(4)

5.5.4 CNT-FECとイオン源の相対角度の変化による中和性能測定実験

結果 ... 43

5.5.5 イオンビームプロファイル測定結果 ... 45

第6章 結論 ... 48

参考文献 ... 49

謝辞 ... 51

(5)

1

第 1 章 序論

1.1 研究背景および目的

2014年12月3日に種子島宇宙センターから小惑星探査機「はやぶさ2」が 2018年6月27日に目的の小惑星「リュウグウ」に到着した1).限られた探査機の サイズで地球から約2億8千万km離れた小惑星探査には,限られた燃費の良い エンジンが必要になり,「はやぶさプロジェクト」には電気推進機の一種であるイ オンエンジンが採用されている.

電気推進機は,探査機に取り付けられた太陽電池等で得られた電気エネルギー で推進剤をプラズマ化させこれを加速噴射し,その反力で推力を得る推進機であ る.これは,推進剤の化学反応から推力を得る化学推進に比べ推力は著しく小さ いものの,推進機の燃費を表す比推力は非常に高いといった特徴を持つ2)

「はやぶさ」では,イオンエンジンを使用し世界で初めて地球重力圏外にある 天体のサンプルリターンに成功したが,アメリカの「OSIRIS-REx」によるサンプ ルリターン3)や中国の月面探査機「嫦娥4号」など世界各国での宇宙開発は激化 している.日本が宇宙開発で他国をリードする技術の一つとして,ドラッグフリ ー衛星が挙げられる.ドラッグフリー衛星とは太陽光の輻射圧やダストによる外

乱(Drag)に抗して,重力のみで決まる軌道を運動することができる衛星のことを

表す4).現在,日本では国立天文台や京都大学を中心にドラッグフリー衛星を利 用したプロジェクトとしてDECi-hertz Interferometer Gravitational wave Observatory

(DECIGO)が検討されている5).このプロジェクトの目的は重力波から,電磁波に

よる観測では得ることの出来ない天体現象の重要な情報を得ることである.

DECIGOプロジェクトは地上の干渉計やNASAとESAの共同計画であるLaser

Interferometer Space Antenna(LISA)6)の検出可能帯域外の0.1 – 10 Hzの検出を期待し ている.このようにドラッグフリー衛星はレーザー干渉,電波方探,立体視,長 焦点距離の望遠鏡の実現など様々な用途が見込まれており,日本が宇宙開発にお いて他国をリードするためには必要不可欠な技術である.

(6)

2

上述したDECIGO計画では1000 km離れた3基のドラッグフリー衛星が想定さ

れている.そして,その衛星に取り付けられた推進機を用いて衛星間の相対位置 を厳密に維持しなければならない.これを実現するためには刻々を変化する抗力 に合わせて推力を制御できる推進機が必要である.要求性能として3年間の運用 を想定した1000 Nsのトータルインパルス,0.1 – 100 Nの推力,0.1 N/Hz1/2と いう低い推力ノイズが求められる5).これらの要求を満たす推進機として,Field-

emission electric propulsion(FEEP)などがあるが7),計測機器を汚さないイオンエン

ジン8)も有力な推進システムである.

ドラッグフリー衛星の推進システムに求められる要求性能のひとつに3桁にも 及ぶ広い推力可変範囲がある.従来のイオンスラスタにおいて,推力を変化させ る方法としては,ガスの流量やイオンビーム引き出し電極間の電圧を変更し,推 力を変更してきた.しかし,これらの方法では4倍程度の範囲内でしか推力を変 更することができず9, 10),要求されている3桁の推力可変範囲を達成することは 困難である.

そこで著者らは3桁にも亘るスロットリングレンジを達成するためにイオンビ ームの引き出し原理に着目した.イオンエンジンにおいて,イオンの加速はグリ ッド間に印加された電界によって行われる.このグリッド間に印加する電界の

ON/OFFを高速で切り替えることによりイオンビームの排出と停止を高速で繰り

返すことが可能だと考えた.グリッド間の電界のON/OFFを変更するにはスクリ ーングリッドもしくはアクセルグリッドに印加する電圧を制御する必要がある.

本研究ではアクセルグリッドに印加する電圧を制御することにより電極間の電界 を制御する.この理由として,アクセル電流はスクリーン電流よりも小さく,ま た変更するための電荷量も少ないため応答がいいためである.本システムのイオ ンスラスタは電流密度等イオンの引き出し条件は最適動作点から変更しないた め,寿命やイオンビームの拡がりに与える影響も小さい.エネルギー変換効率や 推進剤利用効率の低下は避けられないが,他のワイドスロットリングレンジエン ジンにはない,高度な制御性やクリーンな排出ガスなどの特徴をもつワイドスロ ットリングレンジのイオンエンジンの需要は高いと考えられる.

(7)

3

飯島ら11)によってイオンビームの排出と停止の時間の割合であるduty比を制御 することにより,イオンビーム電流すなわち推力が制御できることが確認でき た.

しかし,これまでに用いたイオンエンジンは1 mN級のイオンエンジンであ り,100 Nでの作動では性能が低下し,動作も不安定になるなどの問題点が確認 された.そこで100 N級に最適化したイオン源(イオンエンジン)を設計,製作,

評価するとともに,電子源との噛み合わせ試験を行い,システムとしての評価を 行うことが本研究の目的である.

(8)

4

第 2 章 イオンエンジンの作動原理

2.1 イオンエンジンの作動原理

イオンエンジンの作動原理の概略図を図2.1-1に示す.イオンエンジンは主にプ ラズマ生成部,イオン加速(静電加速)部,イオンビームの中和部の3部分で構成 されている.イオンエンジンは主にイオン生成部において推進剤を電離させ,静 電加速部において2枚ないし3枚のグリッドを用いてイオンのみを加速し,下流 にて電子源から放出される電子によって電気的中性なプラズマジェットとして噴 射し,その反力によって推進力を得る推進機である12).以下に各領域の説明をす る.

① プラズマ生成

イオンエンジンにおいてプラズマ生成はイオン源が担う.プラズマ生成の方法 に違いはあるがプラズマの生成は次の過程を踏む.まず(1)電子を生成・加速して 電離能力を持った高エネルギー1次電子にする.(2)損失させないように閉じ込め る.(3)中性粒子に衝突させて推進剤を電離させる.(4)静電加速部に供給する.

プラズマ生成の方法には,直流放電式イオン源,高周波放電式イオン源,マイ クロ波放電式イオン源などに分類される12).本研究では無電極プラズマ生成が特 徴で小惑星探査機「はやぶさ」にも採用されたECR型マイクロ波放電式イオン源 の方式のイオンエンジンについて取り扱う.

② イオン加速(静電加速)部

静電加速部は2枚ないし3枚の多孔電極(グリッド)から構成されており,一般 的にグリッドシステムと呼ばれる.上流(放電室側)からスクリーングリッド,ア クセルグリッド,ディセルグリッドと呼ばれる.それぞれのグリッドの間隔は1 mm以下のものがほとんどで,この近接設置した3枚のグリッドに,スクリーン

(9)

5

電源やアクセル電源から,1 kV, −150 V, 0 Vといった電位を与え,図2.1-2に示 すような空間電位を形成する.この電位差を利用してイオン源からスクリーング リッドの孔を通じイオンが引き出される.スクリーングリッドの孔を通過したイ オンはスクリーン-アクセル間の電界によって加速され,アクセル-ディセル間の 逆電位勾配によってわずかに減速し噴射される.アクセル-ディセル間の逆電位勾 配は下流からの電子の侵入を阻止する役割もある.

③ 中和部

中和部の主な役割はイオン源からグリッドを介し加速噴射されたイオン電流に 等価な電子電流を空間に噴射し,イオンエンジンの電気的中性を維持することで ある.イオンエンジンがイオンのみを噴射すればイオンエンジン含め宇宙機全体 が負に帯電するため,噴射したイオンが再び引き戻され推力発生は不可能にな る.このため噴射したイオンと同数の電子を放出する必要があるが,その電流量 は中和器やビームプラズマの電位のわずかな高低の変化によって,自動的かつ自 然に行われ,特に積極的な制御を必要としない.

図2.1-1 イオンエンジンの作動概略図

プラズマ生成 イオン加速 イオンビーム中和

電子放出&中和 推進剤

マイクロ波

イオン 電子 中性子

(10)

6

図2.1-2 イオンビーム引き出しの流れ

2.2 性能目標

本研究で開発するイオンエンジンの目標性能および開発を行うにあたり想定し たイオンエンジンの作動条件を表2.2-1に示す.

イオンエンジンはイオンビーム電流や加速電圧,マイクロ波電力,推進剤流量 から推進性能を算出できる.式(2-1)から式(2-5)に,イオンエンジンの性能を示す 主なパラメータの説明とその定義式を示す.

スクリーン 電源

アクセル 電源

スクリーングリッド アクセルグリッド ディセルグリッド

Ion beam (Ib)

Vs Is イオン源内

プラズマ イオン 引き出し面

Ib

(11)

7

・推力F

推進機の推力を示す値.イオンエンジンにおいてはイオンビームの加速噴射に より発生する.

e V m J 2

v m

F  

i b

b i b [N] (2-1)

・比推力Isp

単位時間あたりに消費する推進剤の重量あたりの推力.推進機の燃費に当た る.

i b u

i

sp m

eV 2 g m I F

[sec] (2-2)

・推進効率t

投入した電力がどれだけの推力発生の運動エネルギーに変換されたかを表すも の

P m 2

F P

v 2 m

1

2 2

b

t

 

 

(2-3)

・推進剤利用効率u

推進剤として供給される粒子のうち,イオンビームとして排出される粒子の割 合

m e

J mi b

u  

(2-4)

・イオン生成コストc

ビームとなるイオン個当たり生成に要するエネルギー

b d

c J

P

 [W/A] (2-5)

(12)

8

ここでm 推進剤(Xe)の質量流量[kg/s],

はイオンの速度[m/s],Jbはビーム電流

[A],miはXeイオンの質量[kg],Vbはビーム加速電圧[V],gは重力加速度

[m/s2],Pdはプラズマ生成に要する電力[W]である.これらの定義式と目標推力か ら算出した本研究の目標推進性能を表2.2-2に示す.

表2.2-1 目標とするイオンエンジンの作動条件

Microwave power 2 W

Mass flow rate 0.05 sccm

Ion beam current 3 mA

Thrust 100 N

Throttling range 0.1 N – 100 N

Screen voltage 1000 V

Accel. voltage -150 V

Decel. Voltage 0 V

表2.2-2 目標とするイオンエンジンの推進性能

Target

Microwave power, W 2

Ion beam current, mA 3

Ion beam production cost, W/A 667 Propellant utilization, % 83.2

Thrust, N 100

Thrust efficiency, % 50.5

Isp, sec 3238

(13)

9

第 3 章 JIEDI ツールを用いたグリッド設計

3.1 JIEDI tool

イオンエンジンにおいて各グリッドの材質,孔径,厚さ,印加電圧,グリッド 間距離は,各々が独立して決められるものではない.それぞれグリッドシステム において考慮すべき事象や用途によって試行錯誤しながら決定していく必要があ る.そのため,普遍的なグリッドシステムの設計方法はないことを念頭に置く

12)

しかし,グリッドシステムの形状や印加電圧の設計を実地試験のみに頼ること は効率的ではない.そこで本研究ではJAXA Ion Engine Development

Initiatives(JIEDI)ツールを使用し,グリッドシステムの設計を行った.JIEDIツー

ルは多孔からなるイオンエンジンの静電加速部の一孔に着目し,そこで引き起こ されるグリッド損耗とイオン加速系の寿命評価を目的として開発されたツールで ある.

JIEDIツールは特定の時刻における電位,イオンビームの流れ,グリッド電

流,損耗率などを計算することができる.これらの計算は主にJIEDIツールの中 のOPTJと呼ばれるプログラムを使用している.図3.1-2にJIEDIツールのフロー チャートを示す(13

図3.1-1 OPTJの計算領域

le

rs ra rd

t

d

l

d

t

a

t

s

l

g

30°

x

z y

Sc. Ac. De.

(14)

10

図3.1-2 OPTJのフローチャート

3.2 計算体系・計算条件

JIEDIツールにて計算するパラメータの範囲を表3.2-1に示す.これらのパラメ

ータの範囲はこれまで開発されてきたイオンエンジン及び本研究で開発するイオ ンエンジンの性能に基づき決定した.グリッドの材料にはスパッタリング率が低 く,熱膨張率がほぼゼロ,熱伝導率が良いなどの特徴を持つ炭素複合材を使用す る.開発を行う放電室内の中性粒子密度は不明であり,中性ガスの閉じ込めと孔 の数の関係を調べる目的で孔数の異なる2種類のグリッドシステムの設計を行 う.OPTJにおける計算条件は表3.2-2に示す条件である.

OPTJ 開始

終了 データ読込

中性粒子密度計算

ポアソン方程式の求解(ICCG) 電子密度はボルツマンの方程式

主流イオンビーム軌道計算,

イオン電荷密度計算

収束判定

グリッド損耗粒子追跡による 再堆積率評価 電荷交換,弾性散乱イオン,

中性粒子追跡による損耗率評価

正味損耗率出力

No

Yes

(15)

11

表3.2-1 計算パラメータの範囲

Number of holes 18, 37

Screen hole diameter, mm 1.2

Screen – Accel. gap, mm 0.2 – 1.0 (0.1 mm刻み)

Accel. – Decel. Gap, mm 1, 1.5

Accel. diameter, mm 0.4 – 1.0 (0.1 mm刻み) Decel. Diameter, mm 0.5, 0.8, 1.0, 1.2, 1.5

表 3.2-2 OPTJにおける計算条件

Parameter Value

Propellant Xenon

Grid material Carbon – carbon composite

Grid voltage (Sc., Ac., De.) 1000 V, -150 V, 0 V

Ion beam current per hole 0.167 mA/hole, 0.081 mA/hole

Discharge voltage 30 V

Doubly charged ion fraction 3 eV Grid surface temperature 350 K

Electron temperature 3 eV

Propellant utilization efficiency 0.833

Sticking factor 0.78

Sputtering model Williams

(16)

12

3.3 計算結果

JIEDIツールは比推力や各グリッドのイオンの衝突など様々な値を結果として

出力する.JIEDIツールでは計算条件において目標のイオンビーム電流を孔数で 除した値を一孔あたりの電流値として計算するため,今回の設計ではイオンエン ジンの静電加速部における損失Ia(アクセル電流)を減らすこと着目した.

イオンエンジンにおいて最終的に加速噴射され推力を担う成分をIb(イオンビー ム電流)は,イオン源から静電加速部に供給され加速されるイオン成分IsおよびIa

Ib=Is− Iaの関係がある.つまりIaを小さくすることでロスのないビームの引き 出しが可能になる.

そこで,本研究におけるJIEDIツールを用いたグリッド設計において,Isに対 するIaの割合で各パラメータの評価を行う.また,中野ら(14によると, ON/OFF 制御においてイオンビームの引き出しがOFFからONに変化する際,定常状態に なるまでにイオンが各グリッドに衝突することが報告されている.そこで,ドラ ッグフリー衛星への搭載を想定し,イオンビームの発散角でも評価を行う.

図3.3-1にアクセルグリッドの孔径を表3.2-1の範囲で変化させたときのビーム

発散角を示す.また,図3.3-2にアクセルグリッドの孔径を表3.2-1の範囲で変化 させたときのIa/Isを示す.

本研究では各パラメータを表3.2-1の範囲で各々計算したため,本稿では代表し てアクセルグリッドの孔の大きさの影響を示す.

図3.3-1からアクセルグリッド孔径を変化させたときのイオンビーム発散角は孔

数により傾向が異なることが分かった.また,各孔数においてアクセルグリッド の大きさが変わるとイオンビーム発散角が大きく変化することはないという結果 になった.図3.3-2からアクセルグリッドの孔径が大きくなるとスクリーン電流に 対するアクセル電流も小さくなりある一定のアクセルグリッド孔径になるとほぼ ゼロで一定になる.Ia(アクセル電流)は電荷交換イオン電流,弾性散乱イオン電 流,直接衝突イオン電流を含んでおり,グリッドのスパッタリングに大きく影響 する直接散乱イオンIaiが0になるパラメータを本研究では採用する.ビーム発散

(17)

13

角とIa / Isが低いパラメータ(孔数18で0.8 mm,孔数37で0.6 mm)が本研究に最 も適したパラメータだと考える.他のパラメータも同様に解析を行った.

JIEDIツールにてグリッドパラメータの設計を行った結果を表3.3-1から表3.3-3

に示す.表3.3-3のパラメータは,On-Off制御を用いたイオンエンジンに関する 共同研究者の東京都立産業技術高等専門学校の中野正勝准教授が同様の目標性能 で計算した結果である.本研究ではこの表3.3-3のパラメータのグリッドも同様に 製作し,性能評価を行う.また表3.3-1と表3.3-2のときのパラメータのときのイ オンビーム軌道を図3.3-3および図3.3-4に示す.図3.3-3および図3.3-4はどちら もビームがグリッドに衝突せずに引き出されていることが確認できた.今回のグ リッド形状の最適化では主に前述の方法でパラメータを決定したが,イオンビー ム軌道を確認したときに,明確なグリッド衝突が見られたときはイオンの引き出 しの整合性を表すNP/H(規格化パービアンス)(式3-1)を計算し,イオン電流が各グ リッドに衝突しないパラメータの調整を行った.ここでIhは1孔あたりのスクリ ーン電流,Vsは電位差,dsはグリッドの静電加速長さ,Dsはスクリーングリッド 孔直径である.



 

 



 

 

s s 32 h

2

s s h hn

d D Vs

I

d D

p p (3-1)

(18)

14

図3.3-1 アクセルグリッド孔径とビーム発散角の計算結果

図3.3-2 アクセルグリッド孔径とIa/Isの関係

0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 0

2 4 6 8 10 12 14

18 (0.167 mA/hole) 37 (0.081 mA/hole)

Beam divergenc e angle , deg

Accel. hole diameter, mm

0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

Ia / Is

Accel. hole diameter, mm

18 (0.167 mA/hole) 37 (0.081 mA/hole)

(19)

15

表3.3-1 イオンエンジンパラメータ (Type1)

Parameter Screen Accel. Decel.

Hole diameter, mm 1.2 0.8 1.0

Potentail, V 1000 -150 0

Thickness, mm 0.3

Hole pitch 3.5

Material Poco graphite

Grid gap 0.4 0.5

Number of holes 18

表3.3-2 イオンエンジンパラメータ (Type2)

Parameter Screen Accel. Decel.

Hole diameter, mm 1.2 0.7 1.0

Potentail, V 1000 -150 0

Thickness, mm 0.3

Hole pitch 2.5

Material Poco graphite

Grid gap 0.8 0.5

Number of holes 37

表3.3-3 イオンエンジンパラメータ (Type3)

Parameter Screen Accel. Decel.

Hole diameter, mm 1.2 0.7 0.7

Potentail, V 1000 -150 0

Thickness, mm 0.3 0.6 0.3

Hole pitch 2.5

Material Poco graphite

Grid gap 1.0 0.3

Number of holes 37

(20)

16

図3.3-3 Type1のイオンビーム軌道

図3.3-4 Type2のイオンビーム軌道

Screen Accel. Decel.

上流 下流

Screen Accel. Decel.

上流 下流

(21)

17

第 4 章 100 N 級イオンエンジンの性能測定

4.1 製作した 100 N 級イオンエンジン 

本研究にて開発した超小型マイクロ波放電式イオンエンジンを図4.1-1に,イオ ンエンジンの断面概略図を図4.1-2示す.放電室は高さ19 mm,内径24 mmの円 筒形で軟鉄製である.放電室内部にはサマリウムコバルト(Sm-Co)製磁石を配置し ている.放電室内部上流側にはリング型(8 mm× 3.0 mm×3.0 mm)のサマリウ ムコバルト磁石を設置し,放電室内部下流側にはセグメント型(r 9 mm×R 12 mm

×2 mm×90 deg)を4個設置している.なお,リング型は高さ方向に磁化してお り,セグメント型は外径がS極,内径がN極に磁化されている.サマリウムコバ ルトは高い磁気特性を持ち限界使用温度も約350度と高温での使用にも適してい る.

アンテナはモリブデン(Mo)製で,SMAコネクタ(female)に固定している.アン テナの画像を図4.1-3に示す.アンテナ形状は過去の研究により推進効率がよい9 mmの星型アンテナを用いた15)

グリッドはPoco graphite製で,第3章の計算結果に基に決定したパラメータで 製作した.3枚のグリッドの下流側にある等方性カーボン製のリング型取付部材 とボロンナイトライド(BN)製絶縁部材によって各グリッド間隔の調整および絶縁 性を維持している.イオンエンジンで一番大きい部分はmmである.本研究 ではグリッドの固定にチタン製のねじを使用した.イオンエンジンは各グリッド 間を絶縁する必要があり,セラミックスのねじおよびワッシャーで固定する方法 がある.しかし,本研究で製作したスラスタは,実際の衛星打ち上げにおける振 動や衝撃を想定しチタン製のねじを使用し,取付部材および各グリッド間隔に対 応したBN製インシュレータ(4個×3)にて電気的絶縁性を維持する方法を採用し た.

(22)

18

図4.1-1 イオンエンジンの写真

図4.1-2 イオンエンジンの断面図

Gas inlet Microwave

16.2 mm

24 mm 27.5 mm

Sm-Co magnet

Boron Nitride Soft iron

Carbon

Discharge chamber

Grid

Antenna Insulator

Insulator

(23)

19

図4.1-3 放電室内部の写真(Sm-Co磁石およびMo製9 mmの星型アンテナ)

4.2 実験体系

第4章で述べるイオンエンジンの性能測定は以下の実験装置を用いた.実験装 置は主に真空排気系,マイクロ波送電系,イオンエンジン本体から構成されてい る.今回の性能測定実験では中和器は設置していない.また各グリッドに印加す る電圧はスクリーン電圧600 V, 800 V, 1000 V,アクセル電圧−150 V,ディセル電

圧0 V(チャンバー,GNDと同電位)とした.また推進剤流量は0.05 sccm,0.1

sccm,0.15 sccmの3パターンにて測定を行った.

4.2.1 真空排気系

本実験で使用した真空チャンバーを図4.2.1に示す.真空容器はSUS製で,直

径30 cm,高さ27 cmの円筒形である.この真空容器は本研究ではすべて電気的

にアースされ,基準電位となっている.表4.1-1にこの真空容器で使用した真空排 気装置を示す.ドライ真空ポンプは粗排気用,ターボ分子ポンプは高真空用であ りこの2種類のポンプを排気に使用した.この真空チャンバーにおいて到達圧力 10− 5 Paオーダーを実現できていることが確認できた.本実験における真空度は推 進剤流量最大0.15 sccm(14.8 g/s)で1.32×10−3 Paであった.

推進剤には純度99.995 %のキセノンガスを使用した.流量はサーマルマスフロ ーコントローラーにて調整を行った.

9mm

Gas inlet

(24)

20

図4.2.1 イオンエンジンの測定に使用した真空チャンバー

表4.1-1 使用したポンプのスペック

真空ポンプ メーカー 型番 排気量 ドライ真空ポンプ 樫山工業 NeoDry 15E 250 l/min ターボ分子ポンプ Varian Turbo-V 550 550 l/sec (at N2)

4.2.2 マイクロ波送電系

本研究では周波数2.45 GHzのマイクロ波を使用した.一般的に2.45 GHzの発 信に用いられるマグネトロン管のマイクロ波ジェネレータでは低電力領域での発 振が不安定である.そこで,マイクロ波ジェネレータより発振されたマイクロ波 をアンプによって増幅している.マイクロ波電力はスラスタに発振されるまで各 種ケーブルやコネクタ等を経由するため,実際のマイクロ波のアンプが出力する 値と異なる場合がある.そのため,パワーメーターを使用し,イオンエンジンに 発振されているマイクロ波の電力を測定し,マイクロ波のアンプの出力値と較正 している.

(25)

21

4.2.3 イオンビーム電流測定系

本研究で製作したイオンエンジンの性能測定において,イオンビーム電流量か ら各推進性能を見積もった.イオンビーム電流測定の概略図を図4.2.3-1に示す.

イオンビーム電流はスクリーン電流からアクセル電流,ディセル電流を引いた 値である.スクリーン電流はスクリーン電源からスクリーングリッドに向かう電 流を正とし,アクセル電流とディセル電流は各グリッドから各電源に向かう電流 を正とした.電流の測定にはスクリーン,アクセルともにI-V変換回路を用い た.測定手順は,推進剤とマイクロ波により放電室内にプラズマを点火させ,測 定条件に推進剤流量および引き出し電圧を調整する.その後較正したマイクロ波 電力を変化させながらマイクロ波電力とイオンビーム電流量の関係を調査した.

イオンビームは以下の式より算出した.

d a s

b

I I I

I   

(4-1)

測定データはデータロガーにより対象のマイクロ波電力のときのイオンビーム 電流20点の平均値であり.測定は各条件で3回ずつ行った.図4.2.3-2にイオン ビーム引き出し時のイオンエンジンの画像を示す.

図4.2.3-1 イオンビーム引き出し実験の概略図

Microwave generator

Sc. grid Ac. grid De. grid Ion beam Vacuum chamber

DC block Coaxial cable

A 1000 V, 800 V, 600 V A

−150 V

Is

Ia A Id

(26)

22

図4.2.3-2 イオンエンジン作動中の画像

4.3 実験結果

図4.3-1に本研究で製作した3パターンのグリッドのマイクロ波投入電力とイオ

ンビーム電流の関係を示す.図4.3-1において推進剤流量m は0.05 sccmであり,

加速電圧

V

bは1000 Vである.

すべてのグリッドにおいてマイクロ波電力を大きくすればするほど,イオンビ ーム電流量は増加したことがわかる.各グリッドパラメータのときの引き出しイ オンビーム電流量の違いは低推進剤流量のときはほぼ見られなかった.マイクロ 波を3 W以上投入すると,Type1よりもType2, 3のほうが,イオンビーム電流量 が大きくなった.Type2とType3はほぼ同じ電流量を表していたが,Type3におい

て4 W, 5 Wでややイオンビーム電流が増加した.これはマイクロ波のアンプが4

W, 5 W付近で不安定であり,パワーメーターで較正した出力値とわずかにずれた

値を4 W,5 Wとしたためだと考えられる.いずれのグリッドにおいても目標作

動条件のマイクロ波電力2 W,推進剤流量0.05 sccmでイオンビーム電流を達成す ることはできず,目標作動条件においてイオンビーム電流はType1=0.56 mA,

Type2=0.68 mA,Type3=0.62 mAであり,目標の3 mAに対し約20 %程度しか達成

することができなかった.

(27)

23

図4.3-1 各グリッドとイオンビーム電流量の関係

m =0.05 sccm,

V

b=1000 V

図4.3-2にイオンビーム電流の推進剤流量依存性を示す.図4.3-2は表3.3-2の

Type2のグリッドで,加速電圧

V

bは1000 Vである.図4.3-1と同様に推進剤流量

を大きくするとイオンビーム電流は大きくなる.しかし,マイクロ波が8 W以上 になると推進剤流量0.1 sccm,0.15 sccmともにピークダウンしていることが分か った.本研究で製作したイオンエンジンにおいては,推進剤流量が大きいと放電 室内の中性粒子との衝突が頻繁になり過ぎて,電離エネルギー以下の電離に寄与 しない電子が多く,性能が悪くなったと考えられる.

4.1でも述べたが,本研究では強度に不安のあるセラミック製のねじを使用せ ず,チタン製のねじに変更し他の部品で電気的絶縁性を維持している.このチタ ン製のねじが4本×3枚グリッドで12本使用されており,それぞれの支持ねじの 近接ねじは異なる電圧が印加されている.異なる電圧とねじの先鋭形状により電 圧を印加するほど異常放電が増加したと考えられる.

0 2 4 6 8 10 12

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

Type1 Type2 Type3

Io n b ea m c ur rent , m A

Incident microwave power, W

(28)

24

図4.3-2 推進剤流量とイオンビーム電流量の関係

Type2,

V

b=1000 V

次に図4.3-3にイオンビーム電流の加速電圧依存性を示す.図4.3-3は表3.3-3

に示すグリッドType3の結果である.加速電圧も推進剤流量およびグリッドパラ メータと同様に低マイクロ波電力のときは,ビーム電流の違いは高マイクロ波電 力に比べ小さい.また,600 V,800 Vはマイクロ波電力6 W–12 Wではほぼビー ム電流は一定になっている.加速電圧が大きくなると,その分イオンが運動エネ ルギーを得てイオンビーム電流が増加する.イオンビーム電流量を増加させるた めには,空間電荷正減速を考慮し高い電圧を印加する必要がある.ビーム電流が 目標値を達成できていない原因のひとつとして単純にプラズマの密度が薄い,も しくは空間電荷制限速から決まるビームの放出面であるシース形状が張り出して いないことが考えられる.加速電圧の増加に伴いイオンビーム電流量が増加する とイオンエンジンにて以上放電の頻度が高くなるという問題点が生じた.各グリ ッドやイオン源間の絶縁はきちんと取れているが,加速電圧の増加に伴うエンジ

0 2 4 6 8 10 12

0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

m=0.05 sccm m=0.1 sccm m=0.15 sccm

Io n b ea m c ur rent , m A

Incident microwave power, W

(29)

25

ンの異常放電の頻度増大に関して,これはイオンエンジンの形状や使用部品に影 響があると考えられる.

図4.3-3 加速電圧とイオンビーム電流量の関係

Type3, m =0.15 sccm

図4.3-1から図4.3-3で分かるように本研究で開発を目指すイオンエンジンの性

能は達成できなかったため,アンテナおよび磁場形状に着目し改良に取り組ん だ.アンテナを9 mmの星型から5 mmの円盤型アンテナに変更し,星型の同様 の性能測定を行った.図4.3-4に使用した円盤型アンテナの画像を示す.材質は星 型と同様でモリブデン製である.

また星型アンテナでは放電室の表面から3 mmの位置(図4.3-5のx)にセグメン ト型の磁石を設置していたが,性能が不十分であったため,ECR層の形状変化に より性能測定を行った.図4.3-6に星型アンテナと円盤型アンテナのイオンビーム 電流量を示す.図4.3-6より,円盤型アンテナの方がイオンビーム電流が増加し

2 4 6 8 10 12

0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

600 V 800 V 1000 V

Io n b ea m c ur rent , m A

Incident microwave power, W

(30)

26

た.これは円盤型の方が表面積,側面積が小さいためだと考えられる.本研究に おける電子の加熱過程において,星型では磁気チューブを往復している電子がア ンテナ表面で再結合してしまいアンテナ表面でエネルギー損失が発生したためビ ーム電流が低下したと考えられる.マイクロ波放電を用いたプラズマ推進機にお いて,低推進剤流量ではアンテナが形成する電場の強度が電離に与える影響が大 きいことが過去の研究16)で報告されており,そのためイオンビーム電流が低かっ たと考えられる.したがって,本研究で取り扱う低推進剤流量のイオンエンジン では磁気チューブを遮る表面積が小さく,円周で等しく電子を加熱する円盤型の がカップリングがいい結果になった.また,xで示す磁石の位置に関し,3 mmか ら5 mm上流側に変更したことによる性能向上は確認されなかった.今後の性能 向上に向けて数値解析と並行して磁石の位置,磁場強度,磁石の配置など実験と 数値解析を並行しながら最適値を見つける必要があると考えられる.

図4.3-4 円盤型アンテナ

図4.3-5 磁場形状の変更位置

Gas inlet Microwave

Discharge chamber

Antenna Insulator

x

5 mm

(31)

27

図4.3-6 アンテナ形状とイオンビーム電流量の関係

Type2,

V

b=1000 V

4.4 推進性能

図4.4-1にイオンエンジンの性能測定結果から算出した推力を示す.図4.4-2に

は目標の作動条件であるマイクロ波電力2 Wと推進剤流量0.05 sccmを含めた条 件における推力を示す.図4.4-2より,目標の2Wで100 Nを達成することはで きなかった.円盤型アンテナにおいて,マイクロ波電力2 Wと推進剤流量0.05 sccmにおける最大推力として66 Nという値を得た.100 Nオーダーに乗せる には少なくとも4 W以上のマイクロ波投入電力が必要になることが分かった.算 出に用いた式は2価イオンやビームの発散を考慮していないため,実際の推力は 算出式より小さくなることが考えられる.正確な推力測定を求めるにはスラスト スタンドなどを用いた直接推力計測などが必要になる.

0 2 4 6 8 10 12

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0

Ion beam c urrent, mA

Incident microwave power, W

Star, x=3 mm Star, x=5 mm Disk, x=3 mm Disk, x=5 mm

(32)

28

図4.4-1 イオンエンジンのマイクロ波電力と推力の関係

m =0.05 sccm,

V

b=1000 V

本研究において開発したイオンエンジンの代表性能を目標性能と比較したもの

を表4.4-1に示す.本研究では推力で換算すると目標推力に対し最高で66 %の達

成度になった.性能向上の見通しとして磁場形状の解析により最適化を行うこと がまず挙げられる.また,JIEDIツールを用いて設計したグリッドに関してはこ れまで様々な研究機関で開発されたイオンエンジンと比較し,グリッドのピッチ と開口率の改良を行うことで目標性能を達成することができると考えられる.目

標の100 Nは達成することができなかったが,従来の11)1 mN級のイオンエンジ

ンで不安定であった低推進剤流量および低マイクロ波投入電力におけるプラズマ 点火とビーム引き出しは十分達成することができたと言えるであろう.

加速電圧が大きくなると発生する異常放電に関しては,システムにエンジンを 組み込むことを考えると解決しなければならない課題である.まずは,異常放電

0 2 4 6 8 10 12

0 50 100 150 200

Star, x=3 mm Star, x=5 mm Star, x=3 mm Star, x=5 mm

Thrust, μN

Incident microwave power, W

(33)

29

がどの部分で発生しているのかをエンジンを様々な方向や条件から観察し調査す る必要がある.

本研究において開発したイオンエンジンは破損しやすい炭素複合材のグリッド が剥き出しの状態であり,取扱に注意する必要がある.必要であればイオン源な どの形状改良やイオン源と組み合わせるカバーのようなものも別途製作する必要 があると考えられる.

表4.4-1 目標性能と代表性能のスラスタ性能比較

Experiment Target

Microwave power, W 2 2

Mass flow rate, sccm 0.05 0.05

Ion beam current, mA 1.26 3

Ion beam production cost, W/A 1587 667 Propellant utilization, % 34.9 83.2

Thrust, N 66 157

Thrust efficiency, % 12.1 44.8

Isp, sec 1360 3238

(34)

30

第 5 章 CNT-FEC の設置条件がイオンエンジ ンの中和に及ぼす影響

5.1 研究背景及び目的

宇宙機器において電子を放出する役割の電子源(Cathode)は第2章で述べたイ オンエンジンやその他ホールスラスタなど電気推進機におけるイオンビームの中 和や推進機の帯電防止などである.電子源に関する技術はこれまで様々な研究が 行われてきた.現在,電子源の新しい技術として電界放出型電子源の研究が進め られている.電界放出型電子源(Field Emission Cathode)は金属や半導体表面に高電 界を印加して,物質内の電子が放出される「電界電子放出現象」を利用した電子 放出装置である.簡易構造,低消費電力,作動ガスが不要といった特徴があり,

衛星や宇宙システムを小型・軽量化するための中和器としてホローカソード,マ イクロ波放電型カソードに代わる電子源として研究が進められている17)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)では,デブリ除去を目的としたHTV搭載導電性 テザー実証実験(Kounotori Integrated Tether Experiment)が行われ,デブリ除去シス テムを小型・軽量化できる電界放出型電子源が使用された.またこの実証実験で は,低真空領域での耐久性が高いカーボンナノチューブ(Carbon NanoTube)を利用 したタイプの電子源が用いられた18).このように電子源は,KITEのような衛星 の帯電防止のための電子放出や電気推進機における中和器の役割など宇宙機器に おいて必要不可欠なデバイスである.作動ガス不要な電子源としてマイクロ波中 和器もあるが,本研究で取り扱う100 Nレベルのイオン源に対しては中和電流の 大きさが噛み合っていない.作動ガスが不要かつ100 Nのイオン源の中和にも対 応できる電界放出型電子源はドラッグフリー衛星や小型衛星との相性がいい.

ここで,宇宙空間では軌道上の衛星姿勢を考慮する必要があり,電子源の配置 に制約がある可能性も存在する.しかし,電界放出型電子源を電気推進機の中和 器として使用する際の設置条件が中和に及ぼす影響に関する測定は行われておら ず,実際の中和現象を理解する上では重要な課題として考えられる.

(35)

31

本研究では,イオンエンジンにおけるイオン源と電子源の距離および角度の 変化が中和に及ぼす影響を測定した.

5.2 CNT-FEC の作動原理

本研究ではカーボンナノチューブ(Carbon NanoTubes:CNT)をエミッタ材料とし て用いた電界放出型電子源を使用する.本研究で使用したCNT-FECの画像を図に

示す.CNT-FECは主にエミッション電極とゲート電極で構成される.この両電極

間に電位差を発生させエミッタ材料表面の電界が109~1011 V/mオーダーに達した ときに電界電子放出が行われる.これは電子に対するポテンシャル障壁が高電界 によって薄くなり,電子の波動性によって電子がポテンシャル障壁を通り抜ける ことが可能となるためである.これをトンネル効果と呼び,この現象を利用して 電子放出が行われる.この電界放出によって得られる電流はFowler-Nordheimの 式(5-1)によって表される.





  23

E e 2

e 3

heF 3 exp m h 8

f

J e  

2

-8 (5-1)

ここでeは電気素量,hはプランク定数,meは電子質量,は仕事関数,Feは先 端の表面電界である.エミッタ先端が放物面であるとき

E

F

E

 

(5-2)

) r / d 4 ln(

r

V E 2

tip tip

 (5-3)

と表される.このとき は電解増倍係数,Eは電極間電界,rtipはエミッタ先端 の曲率半径,dは電極間距離,Vは電極間電位差である.

(36)

32

図5.2-1 CNT-FECの概略図

5.3 実験装置及び実験方法

5.3.1 真空排気系

第5章に関する実験は独立行政法人宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所「ス ペースサイエンスチャンバー」を使用して行った.スペースサイエンスチャンバ ーの外観を図5.3.1に示す.真空チャンバーは直径2.5 m,長さ約5 mのSUS製円 筒状真空容器である.排気にはメカニカルブースターポンプ1台とロータリーポ ンプ2台で粗挽きを行った後,ターボ分子ポンプ1台とクライオポンプ2台を用 いて高真空まで排気する.到達圧力は5.96×10-5 Paであった.また,キセノンガ ス流入時(Xeガス14.8 g/s)に1.35×10-4 Paであった.

図5.3.1 スペースサイエンスチャンバーの外観

Electrons

Emitter Gate

(37)

33

5.3.2 イオン源および電子源

本研究では,第4章までに開発したイオンエンジンを使用した.イオンエンジ ンの詳細については第4章に述べてある.グリッドのパラメータは表3.3-2の

Type2のグリッドを使用した.なお,アンテナは図4.1-3の9 mmの星型アンテナ

を使用した.本実験ではイオンエンジンにシールドを設置し実験を行った.シー ルドをつける理由としては,正の高電位にバイアスされたイオン源本体が外表面 を電気的に露出していると,周囲から電子を引き寄せ電力損失になるためであ る.そこで電気的接地されたシールドカバーをかけることにより電場または磁場 を遮蔽する必要があるためシールドを設置している.

CNT-FECは図5.3.2に示す独立行政法人宇宙航空研究開発機構の88 mm× 88

mmのCNT-FECを使用した.このCNT-FECはゲート電圧400 V–500 Vで最大

20 mAの電子を引き出すことができる.

図5.3.2 本研究で使用したCNT-FEC

88 mm

88 mm

t=3 mm

(38)

34

5.4 実験方法

5.4.1 CNT-FEC とイオン源の相対位置に関する実験方法

本実験のスペースサイエンスチャンバー内の画像を図5.4.1-1に示す.本実験に おいてイオン源(イオンエンジン)と電子源(CNT-FEC)の距離は,イオン源の中心と 電界放出型電子源の中心の距離を示す.イオン源と電界放出型電子源の中心の高 さは定盤から210.5 mmの高さに設置した.本実験では電界放出型電子源を3Dプ リンターで製作したタフレジン製の回転部材に固定し,それをトラバース及びス テッピングモータにて位置および角度を制御する.距離に関しては,110 mm –

300 mmの範囲で電界放出型電子源が移動する.角度に関しては,イオン源(シー

ルド表面)と電界放出型電子源の表面が平行な状態を0度とし,5度刻みで+100 度,−100度まで回転する.なお,電界放出型電子源がイオン源側に傾く角度を正 とし電界放出型電子源の表面の中心を回転軸中心とした.位置移動ならびに角度 回転の実験概略図をそれぞれ図5.4.1-2と図5.4.1-3に示す.

また,本実験における回路の概略図を図5.4.1-4に示す.イオンエンジンに関し て,本研究ではスクリーン電圧を1000 V,アクセル電圧を−150 V,ディセル電圧 を0 Vとしている.また,特に断らない場合マイクロ波電力は6 W,推進剤流量

(Xe)は0.15 sccm(14.8 g/s)としている.測定電流は電流プローブおよびI-V変換回

路を用いて測定した.電圧は差動プローブにて測定を行った.系の中和を評価す るためにイオンエンジンのシステム全体は真空チャンバーから電気的に絶縁され ている,つまり電子源はチャンバー内で電気的に浮いている状態である.後に説 明する電子源とグランドの電位差VCGは差動プローブにて測定した.

本研究で確認する項目は主にCNT-FECがイオン源のイオンビームを中和できて いるか,また電子源の相対位置変化によるVCGの変化を測定する.CNT-FECがイ オンビームを中和できているかはイオン源からのビーム電流とCNT-FECからのエ ミッション電流で判断する.イオンビーム電流とエミッション電流が等価であれ ば中和に成功したと言える.また,イオンビーム電流は以下の式(5-4)で表され る.

(39)

35

shield decel.

a s

b I I I I

I     (5-4)

ここで,Idecel.はディセルグリッドから流れてくる電流,

I

shieldはイオンエン ジンに取り付けたシールドから流れてくる電流を示す.本実験においてイオンエ ンジンとシールドは電気的に絶縁されている.

エミッション電流(中和電流)は以下の式(5-5)で表される.

Gate Emitter

Emission

I I

I  

(5-5)

VCGはCNT-FEC(Cathode)のグランド(Ground)の電位差であり,宇宙空間では宇

宙プラズマに対する衛星(電子源)の電位である.この電位差が衛星(電子源)へのイ オンの流入を引き起こし,帯電や故障の原因につながるため,VCGは中和におい て重要なパラメータである.なお,本研究において以後VCGは絶対値が小さい 方,つまり負に深い方をVCGが低い,負に浅い方をVCGが高いと呼ぶ.

図5.4.1-1 真空チャンバー内のセットアップ

電界放出型電子源 イオン源

電界放出型電子源

210.5 mm

(40)

36

図5.4.1-2 FECの移動に関する実験の概略図

図5.4.1-3 FECの移動に関する実験の概略図

Ion Engine Head

Traverse

110 mm 300 mm

FEC

210.5 mm

0

Ion Engine Head FEC

Traverse

150 mm 200 mm 250 mm

+100 -100

上面図

210.5 mm

0

(41)

37

図5.4.1-4 イオンエンジンとCNT-FECの作動回路概略図

5.4.2 イオンビームプロファイル測定実験の実験方法

CNT – FECとイオンエンジンの噛み合わせにおいて,CNT – FECの有無がイオ

ンビームの収束に与える影響を調査するためにイオンビームのプロファイル計測 を行った.イオン源のみだとイオンビームを周囲に撒き散らす形で噴射するが,

電子源による中和ができているとイオンビームが収束する.逆に中和が出来てい ないと,イオンビーム中のイオン同士の反発でビームが発散する.この現象を確 認するためにCNT-FECの有無およびエミッション電流の供給能力の変化がビーム の発散に与える影響を調査することがプロファイル測定の目的である.

真空容器はスペースサイエンスチャンバーを使用し,チャンバー内の3次元ト ラバース装置にイオンコレクタを取り付けてイオンビームのプロファイル計測を 行った.

イオンコレクタの外観を図5.4.2-1に示す.イオンコレクタは50 mm×50 mmの カーボン製であり中心に直径9 mmの円状の捕集用コレクタが取り付けられてい

CNT-FEC Microwave

discharge ion engine

Vacuum chamber

ions electrons

Mass flow controller

Microwave source

0-500 V -150 V 1000 V

DC Block

V

Target

Shield

(42)

38

る.コレクタにはイオンの捕集および電子の追い返しを行うために−30 Vの電圧 を印加した.

チャンバー内のXYZ座標は図5.4.2-2に,本実験のセットアップにおけるXYZ

座標を図5.4.2-3に示す.イオンコレクタの作動範囲はイオン源のシールドの中心

を原点とし,本実験ではビーム下流方向(X方向)500 mmの位置で測定を行う.Z 方向に関してはイオン源のシールド表面の中心(原点)である.イオンコレクタが Y方向の +50 cmから−75 cmまで5 cm刻みで移動する.各点にはイオンコレクタ が3秒滞在し,イオンコレクタによりイオンビームの測定を行い5 cm移動を繰り 返し行う.イオンコレクタで検出される電流値はAオーダーで非常に小さいた め,I-V変換回路を用いてノイズの影響を小さくし,測定を行った.

図5.4.2-1 イオンコレクタの外観

図5.4.2-2 真空チャンバー内の3次元トラバース

50 mm

50 mm

9 mm

X Z Y

(43)

39

図5.4.2-3 本実験のセットアップにおけるXYZ座標

5.5 実験結果及び考察

5.5.1 CNT-FEC 単体性能試験結果

イオンエンジンとCNT-FECの噛み合わせ試験の前にCNT-FECの単体性能試験

結果を図5.5.1-1に示す.このとき,イオン源は作動させずにイオン源の推進剤の

Xeガスも流していない状態である.図5.5.1-1より,ゲート電圧が150 V付近に なるとエミッタ電流,ゲート電流の引き出しが確認できた.この単体性能試験で は,ゲート電圧215 Vでエミッタ電流1.7 mAを確認できた.

次にXeガスを投入した状態でのCNT-FECの性能確認を行った.その結果を図

5.5.1-2に示す.Xeガスは0.2 sccmであり,イオン源は作動させていない.図

5.5.1-2よりXe雰囲気下,ガス投入による真空容器内の圧力が上昇しても電子が

引き出されることが確認できた.このとき,ゲート電圧260 Vでエミッタ電流5 mAを確認できた.

電界放出型電子源 イオン源

X Z

Y

(44)

40

図5.5.1-1 CNT-FECの単体性能実験結果

図5.5.1-2 Xeガスを投入したときのCNT-FEC単体性能実験結果

0 50 100 150 200 250

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

Emitter current Gate current

Curr ent, mA

Gate voltage, V

0 100 200 300 400

0 1 2 3 4 5 6

Emitter current Gate current

Curr ent, mA

Time, sec

(45)

41

5.5.2 CNT-FEC とイオン源の同時作動の実験結果

CNT-FECとイオン源の同時作動実験の結果を図5.5.2-1に示す.イオン源の作

動条件はマイクロ波投入電力8 W,推進剤流量0.2 sccmである.図5.5.2-1からゲ ート電圧を操作せずにイオン源とCNT-FECを定常運転させた場合,きちんとビー ム電流と等価なエミッション電流が引き出されていた.しかし,ゲート電圧を大 きくし,引き出し電流を大きくする,すなわちエミッション電流を大きくすると それに追随してイオンビームも大きくなった.図5.5.2-2もゲート電圧を変化させ たときのイオンビーム電流,エミッション電流の変化を示したものである.こち らも同様にゲート電圧,イオンビーム電流,エミッション電流が連動していた.

イオン源と作動条件は変更しておらず基本的にほぼ一定の値を示すが,本実験で はゲート電圧とともにイオンビーム電流,エミッション電流が増加した.これは 電子が増えてイオンエンジンの電子がねじ部分に入ったためだと考えられる.電 子源の供給能力が増え,電子がある一定のエネルギーを超えてイオンエンジンの シールド内部に入っているためイオンビーム電流もエミッション電流増加に伴い 増えたと考えられる.

図5.5.2-1 イオン源とCNT-FECの同時作動実験結果(a)

0 50 100 150 200

0 1 2 3 4 5

Ion beam current Emission current Gate voltage

Time, sec

Current, mA

320 325 330 335 340

Gate voltage, V

(46)

42

図5.5.2-2 イオン源とCNT-FECの同時作動実験結果(b)

5.5.3 CNT-FEC の相対位置の変化による中和性能測定実 験結果

図5.5.3-1にCNT-FECの相対位置を変化させたときのVCGの変化を示す.この

ときイオンビーム電流は1.911 mAでエミッション電流は1.911 mAを確認でき た.本実験では110 mm – 300 mmの範囲の測定を行う予定だったが,測定機器の 設定ミスにより一部記録できなかった.図5.5.3-1よりイオン源との距離が大きく なればなるほどVCGが低くなることが分かった.そのため,衛星においてイオン 源に対する自由度として距離を大きくしすぎるとVCGが大きくなり周辺のイオン やエネルギーの高い中性ガスの流入が引き起こる可能性がある.より詳しくVCG

について調べるためには周辺プラズマ諸量の計測などが必要であると考えられ る.

130 140 150 160 170 180 190 200

0 2 4 6 8 10

Ion beam curent Emission current Gate voltage

Time, sec

Current, mA

260 280 300 320 340

Gate voltage, V

(47)

43

図5.5.3-1 CNT-FECの位置を変化させたときのVCGの変化

5.5.4 CNT-FEC とイオン源の相対角度の変化による中和

性能測定実験結果

図5.5.4-1にCNT-FECの相対位置を変化させたときのVCGの変化を示す.

本実験において.ゲート電圧は238 Vであった.その他の条件は先に述べた実 験と同じである.この実験においてイオンビームとエミッション電流の値は表

5.5.4に示すとおりであった.

図5.5.4-1からCNT-FECをイオン源から離れていく方向に向ければ向けるほど

VCGは低くなることが分かった.イオン源との距離がいずれにおいてもエミッシ ョン電流は引き出されているためCNT-FECの特徴としてどの方向を向いていても 電子は放出されていることが確認できた.しかし,FECが負の方向になるとVCG

が短絡してしまうことがあった.短絡しているデータは図5.5.4-1から省いてい る.したがって,CNT-FECの自由度としては,どの角度に設置してもエミッショ

0 50 100 150 200 250 300 350

-20 -15 -10 -5 0

V

CG

, V

Position, mm

(48)

44

ン電流は確認できるが,正の方向すなわちプルーム・ビーム側に傾けないとVCG

が大きくなる可能性がある.表5.5.4ではイオンビーム電流とエミッション電流が 不一致になっているが,これは本実験がもっとも異常放電が起きた実験であり,0 点の調整には注意していたが,不安定なデータとなりずれてしまったと考えられ る.

表5.5.4 CNT-FECの回転時のイオンビーム電流とエミッション電流

Distance between ion source and cathode Ion beam current Emission current

150 mm 2.17 mA 2.19 mA

200 mm 2.18 mA 1.85 mA

250 mm 2.13 mA 2.91 mA

図5.5.4-1 CNT-FECの角度を変化させたときのVCGの変化

-100 -50 0 50 100

-50 -40 -30 -20 -10 0

V

CG

, V

Angle, deg

150 mm

200 mm

250 mm

(49)

45

5.5.5 イオンビームプロファイル測定結果

イオンビームプロファイルは様々な条件で計測を行った.表5.5.5-1と表5.5.5-2 に実験条件をまとめ,図に実験結果を示す.プロファイル計測はイオン源-CNT-

FEC間距離を200 mm,150 mmの2パターン測定した.

図5.5.5-1, 2より,CNT-FECを作動させずにイオン源のみの場合,イオンが撒

き散らされプロファイルの山が平たくなっているが,CNT-FECと同時作動させる ことによりイオンビームが収束されていることが分かった.これによりイオンビ ームのプロファイルからもCNT-FECを用いたイオンエンジンの中和に成功したと 言える.ここで,本実験におけるイオン源と電子源のそれぞれの電流を表5.5.5-1

と表5.5.5-2に記載してある.本実験でも使用した100 N級のイオンエンジンは

今回の実験条件における性能はイオンビーム電流2.0 mAである.しかし,ゲート 電圧を大きくし,エミッション電流を大きくした状態ではエミッション電流に追 随してイオンビーム電流も大きくなっていた.これは明らかに通常のイオンビー ム電流ではないと考えられる.これらの原因として考えられるのは,高速イオン と低速中性粒子の電荷交換により発生した低速イオンに起因する電流が計測され ており,通常では計測されないようなイオンビーム電流になったと考えられる,

CNT-FECからのエミッション電流を増やすと電子過多の状態になりCEXの影響

がプロファイルにも影響したと考えられる.この現象を詳細に理解するためには 周辺プラズマ諸量やターゲット設置による計測が必要であると考えられる.

表5.5.5-1 プロファイル測定実験条件(イオン源–電子源間距離200 mm)

条件 Ib, mA IE, mA

Test condition A イオン源のみ 1.62 -

Test condition B イオン源+FEC 1.51 1.50

Test condition C イオン源+FEC(ゲート電圧up) 3.51 3.11

Test condition D イオン源+FEC(ゲート電圧down) 1.51 3.34

Test condition E イオン源+FEC(ゲート電圧up) 6.14 5.82

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表5.5.5-2 プロファイル測定実験条件(イオン源–電子源間距離150 mm)

条件 Ib, mA IE, mA

Test condition F イオン源のみ 1.19 -

Test condition G イオン源+FEC(ゲート電圧up) 2.17 2.14

Test condition H イオン源+FEC 1.23 2.63

図5.5.5-1 イオンビームプロファイル(イオン源–電子源間距離200 mm)

-80 -60 -40 -20 0 20 40 60

0 1 2 3

A B C D E

Current density, μA/cm2

Position, cm

参照

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