• 検索結果がありません。

90 青山学院大学図書館報

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "90 青山学院大学図書館報"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

青山学院大学図書館報 

巻頭エッセイ   クラシックへの回帰 

      ………… 山北 宣久2〜3  オノマトペは日本語の宝物 

       ………… 内田 ゆず 4  斎藤茂吉のこと……… 梅津 順一 5  痛快な経営物語『田宮模型の仕事』 

       ………… 細田 高道 6  グローバル化とローカル―ハワード・ジン 

図書館の蔵書から 

 木村靖子先生のこと ……… 高嶋 修一 8〜9   〈狐〉−図書館員だった匿名書評家− 

       ………… 安倍 紀雄 9  相模原 選書ツアー 

 学生が選んだ本……… 10〜11  図書館広報板 

 「オリエンテーションのご案内」………12  次 

目 

April 1, 2011 No. 90

ISSN 1345−3505

間島記念館(青山キャンパス) 

(2)

■ 巻 頭 エ ッ セ イ

 

 青山学院生が恵まれていることの一つに すばらしい図書館がある。最新の機材も導 入され、あらゆるニーズに即座に応えうる 機能は蔵書の充実振りと相俟って世界のトッ プクラスである。 

 加えて環境、スペースなどの良さが確保 され、まさにこのうえない恵みに浴するこ とができる特権の保有者が青山学院大学生 である。全くご同慶にたえない。 

 しかし、その恵みに応えているのか、宝 の持ち腐れになっていないか。その答えは 各人が出すほかはない。 

 最近目にした文明批評の一節にこう記さ れていた。「リテラシー(Literacy)つまり

「読み書き能力」の衰退とヴィデオシー

(Videocy)つまり「映像感受能力」の隆盛 が人間の精神文化を著しく歪めてしまって いる」 

 図書館に足を向けなくなったのはスパイ もの、ホラー、ミステリー、さらにはコミッ クにアニメ、そして恋愛小説、そうしたた ぐいが置いてないからなのかも知れない。 

 こうした傾向が危険なのは、そのあまり の分かりやすさのために読む者、観る者か ら思考力もしくは思考習慣を奪うというこ とにあるのだろう。分かりにくいもの、とっ つきにくいものと格闘する過程において思 考力が培われていくという側面が欠落して

しまうなら成長は止まってしまう。 

 松尾芭蕉は俳諧の精神を説明して言った。 

「深くくぐって軽く浮くことである」まこ とに深く潜る者こそ軽く浮きうるのであっ て、そこからさりげなくして、なお人の心 の動きを見抜く洞察力が与えられるのであ ろう。 

 しかし、深く潜ることなく軽く浮くこと のみを願うところから軽薄さが氾濫する現 実が世を覆う。 

 そんな中、実用書・参考書のたぐいだけ でなく時代の波をくぐり抜けてきた古きも のから新しく学び取る重厚さが実は大切な のではないかとしきりに思う。 

 なにせ国会図書館の本を一日一冊読んだ として 1 万年以上かかるという本の多さだ。

そんな中、何を読んだら良いのか、それ自 体大きな問題である。 

 旧約聖書のコヘレトの言葉 12 章 12 節  以下にこう記されている。 

 「書物はいくら記してもきりがない。 

  学びすぎれば体が疲れる。 

  すべてに耳を傾けて得た結論。 

  神を畏れ、その戒めを守れ。 

  これこそ 人間のすべて。」 

 「いくら記してもきりがない」書物はま さに洪水現象を呈している。「印刷される 本の半分は売れない/売れる本の半分は読 

院  長  山 北 宣 久 

YAMAKITA Nobuhisa

クラシックへの回帰 

クラシックへの回帰 

(3)

まれない/読まれる本の半分は理解されな い/理解されたと思われる本の半分は誤解 されている」これが相場らしい。全く眩暈 がするほどである。 

 こうした傾向性を貫くものがクラシック  古典である。クラシックの語源はラテン 語である。ローマでは市民を財産の寡多に よって六つの階級(クラシス)に区分した が、「最高階級の」という形容詞をクラシクゥ スと言った。そしてここから「クラシック 古典」という言葉が由来したのだ。 

 従ってクラシック、古典とは「最高の」

ものであり、すべての人に認められ、いく ら古くなっても、長い時間を経てその内容 の深さゆえに輝きを失わないものなのだ。

このクラシックへ深く潜り、現代の多岐多 様な現実に鮮やかに対応していく知恵を獲 得していく、まさに「温故知新」させるも のが図書館に埋蔵されている。これをも生 かさない手はない。 

 激動の時代にこそ古典の存在感は意味を 持つ。つまりクラシックへの回帰は単なる 懐古趣味を超えた、新生・革新・刷新をも たらし、とらえ直し・やり直し、そして生 き直す力をもたらすのだ。 

 クラシックといえばアメリカでは医学生 が卒業する時、ウィリアム・オスラー博士 の講演集「平静」(Aequanimitas)が贈られ るそうだが、その巻末には Bed-side Library  for medical students という頁があり医学 徒が就寝前 30 分に毎日読むことを勧める 本が列挙されているとのこと。 

①聖書 ②シェクスピア ③モンテニュー 

④プルターク英雄論 ⑤神曲 ⑥医学の宗 教(トマス・ブラウン) ⑦エピクテータス 

⑧ドンキホーテ ⑨エマソン ⑩オリバー・

ウェンデン・ホルムズ Tishe Leben 叢書   私は、①は読みつづけているが、②と⑤ と⑨を少し斜め読みした位だからクラシッ クへの回帰などと偉そうに言えないことが バレてしまう。 

 しかしオスラー博士のリストでなくても 古今東西の古典に青年時代触れたか否かで 結構その後の人生に差がつくのだろうと実 感している。 

 これから人生を歩み出そうとしている青 年諸君には羨望をすら感じるほど、もうとっ くに too late の域をトボトボ歩んでいる私 である。 

 まあ図書館で纏まった時間に己が身を沈 潜できるなどということは最大の贅沢だと いうことは大いに自覚しておいて欲しい。 

「本を読む人は決して孤独に陥らない。 

 本を読む人は決して退屈しない。 

 本を読む人は決して無知にならない。 

 本を読む人は決して狭い世界に住むこと   がない。」と言われている。 

 これはまた図書館に通う人は‥‥と置き 換えてもよいのだろう。 

 人生は出会いで決まるなら本との出会い も同じだろう。昨日までとはちがった眼で 世の中を見ることができるようになる本と 図書館で出会うならこれは最高!  

 

(4)

内 田 ゆ ず 

UCHIDA Yuzu

オノマトペは日本語の宝物 

 人間の赤ちゃんが言葉を覚えるように、自然に話せるよう になるロボットを作りたい。これは、私が取り組んでいる研 究の最終目標である。あるとき、赤ちゃんの日常生活を観察 させていただけることになった。その赤ちゃんのお母さんは

「あむあむごっくんしてね」、「電車がきたよーガタンゴトン」

のように、擬態語・擬音語表現を多用して話しかけていた。

このときから、私の研究の興味は日本語の擬態語・擬音語に も向けられるようになった。 

 日本語の語彙には、動作や事物の形状、状態を表す擬態語

(例:あむあむ、ふわふわ)と事物の音や声を表す擬音語(例:がたんごとん、ぱちぱち)

が豊富に存在している。タイトルにある オノマトペ とは、これら擬音語・擬態語と呼 ばれる言葉をまとめたものを指す。オノマトペは生き生きとした表現力をもち、日本語で のコミュニケーションには欠かせないものとなっている。 

 今回私は『擬音語・擬態語 4500 日本語オノマトペ辞典』(小野正弘編、小学館)を紹介 したい。私がオノマトペの研究を始めてから、随分とお世話になった本である。この本は、

その名が示す通り辞典であるから、この場で紹介するには相応しくないかもしれない。し かし、4,500 語にものぼる見出し語、豊富な用例を用いた丁寧な解説、似た意味のオノマ トペの使い分けの方法、オノマトペの歴史的変遷にいたるまで、膨大な情報が網羅されて おり、大変興味深い。ところどころにあるコラムでは、お茶漬けを掻き込む音を、中高年 は「さらさら」、若い世代では「ガツガツ」と表現する、などと いうことが映画やテレビのコマーシャルの時代背景とともに紹 介されていたりする。オノマトペに関して何か知りたいことが できたときは、この辞典を開くと良いだろう。 

 読み物として楽しむならば、同じ著者による『オノマトペが あるから日本語は楽しい― 擬音語・擬態語の豊かな世界』(小野 正弘著 平凡社)をお薦めする。こちらはゴルゴ 13 の「シュボッ」

などの身近な例を題材にしており、親しみやすい。 

(理工学部電気電子工学科助手 自然言語処理、概念獲得システム) 

(青 813 / O2-1) 

(相 814 / O67N) 

(青 814 / O5-1) 

(相 814 / O67O) 

(5)

梅 津 順 一 

UMETSU Junichi

斎藤茂吉のこと 

 最初に図書館で本を借りたのはいつのことかと自問して、

小学校の図書室が浮かび、斎藤茂吉の肖像が掲げてあったの を思い出した。茂吉は同郷の歌人、小学校の先輩なのである。

所は、東に蔵王連峰を仰ぐ山形県上山市。小学校の講堂で、我 らが偉人茂吉は少年時代納屋の二階で一心に勉強したが、時 間を惜しむあまり屎瓶をもって籠ったと聞いたこともあった。 

 小学校は町の中心部の小高い丘、城址公園の近くにあり、

そこには茂吉の歌碑も建てられていた。 

 足乳根の 母に連れられ 川越えし  

       田越えしことも ありにけむもの   私が最初にそらんじた茂吉の歌である。中学の授業では、

『赤光』(岩波文庫)に収められた「死にたもふ母」の連作を 学んだこともあった。 

 死に近き 母に添寝の しんしんと  

       遠田のかはづ 天に聞ゆる    のど赤き 玄鳥ふたつ 屋梁にゐて  

       足乳根の母は 死にたまふなり 

 茂吉は明治二十九年、十五歳で故郷を離れ、東京の親戚の医師宅に寄寓。開成中学、一 高、東大医学部と進み、見込まれて婿養子となり、義父の創立した青山脳病院の経営を担っ た。母を想う歌には、望郷の念が沁みわたっている。 

 北杜夫の評伝『青年茂吉』(岩波現代文庫)によれば、父 茂吉はいつまでも農民的朴訥さが抜けない田夫野人であっ たが、十三歳下の幼な妻、輝子は病院長の令嬢、テニスも するハイカラな器量よし。どう見ても無理な「マドンナと 田舎風インテリ」の組み合わせだが、家の論理が二人を強 固に結び合わせていた。その重圧への反動が茂吉の芸術的 創造力の源泉であり、老境に南極にまで旅した猛女斎藤輝 子の行動力を生んだのであろう。 

 評伝には、茂吉は小さい頃から小用が近く、寝小便に苦 しんだとも書いてあった。こんな歴史再発見も読書ならで はの楽しみである。 

(総合文化政策学部総合文化政策学科教授 経済思想史) 

(青 911.168 / S2-13 / 2) 

(相 911.168 / S2-13 / 2) 

(青 910.28 / S6-46) 

(6)

細 田 高 道 

HOSODA Takamichi

痛快な経営物語『田宮模型の仕事』 

 私は古本屋をふらっとのぞくのが好きです。古本屋での楽 しみとは予期せぬ本との出会いではないでしょうか。ご紹介 する『田宮模型の仕事』(田宮俊作著、文春文庫)もそんな 経緯で入手した本です。この本は田宮模型(正確には株式会 社タミヤ。以下タミヤとします。)の現社長さんによる、会 社を継いでからの奮闘ぶりを描き下ろしたものです。 

 日本の製造業で世界に名の知れた会社、となると自動車メー カーや家電メーカーなどがまず思いつくと思いますが、模型 会社であるタミヤもその一つといっていいでしょう。例えば、

ロンドンの模型屋さんに行くとタミヤの製品が特等席で売られているのをよく目にします。

多少値段は高いですが、つくりが精巧で人気が高いのです。 

 この本は波乱万丈の歴史が読みやすい文章で書かれているので、非常に楽しく読むこと ができ、後味もさわやかです。私は経営の指南書としてもみなさんにこの本をお薦めした いと思います。もともとは静岡県で木を材料とした模型を製造販売していた小さな会社タ ミヤ。そのタミヤがどのようにしてその後大きく成長していったのでしょうか? この本 にはその秘密が克明に書かれています。木製模型からプラモデルへの転換、といった経営 戦略の大転換。そして、プラモデル・メーカーとして販路をいかに拡大するか、といった マーケティング。そして、海外への進出の経緯など、重要な会社の転換期にどのようにか じ取りをしてきたかを知ることができます。同時に、多くの失敗や試行錯誤の事例につい ても触れられており、その克服の過程などは最高に読みごたえがあります。 

 世界中のファンを魅了しつづけ経営的にも成功しているタミヤ。その背景には模型を愛 し、こだわる部分にはとことんこだわってきた社長の奮闘があったことは間違いないでしょ う。そして、会社の継続的発展には製品の品質や精巧さだけでなく、信頼をベースとした 人と人とのつながりが重要である、という隠れたメッセージがあるような気がしてなりま せん。      (国際マネジメント研究科准教授 サプライチェーン・マネジメント) 

(青 507.9 / T1-1) 

(7)

新 倉   修 

NIIKURA Osamu

グローバル化とローカル――ハワード・ジン 

『民衆のアメリカ史』 と私たち 

ハワード・ジン著 明石書店 

(青 253.01 / Z1-1 / 1〜2) 

(相 253.01 / Z4M / V.1〜2) 

 本書の書き出しは、コロンブスが大西洋を横断して,バハマ島に上陸する場面だった。

これを島民の目線で描く。ラス・カサスの有名な『インディアス史』を引用しつつ、虐殺 の歴史が語られる。「ジェノサイド」(集団殺害)という表現すら穏当に聞こえるほどの殺 戮の果てに、労働力を補うために、大量の黒人奴隷がセネガルのゴレ島から積み出された。

こういう実例を踏まえて、ハワード・ジンは、「歴史は国家の記憶」というヘンリー・キッ シンジャーの説を否定して、貧者・敗者の現実を描きながら、明るい未来をさぐりたいと いうような歴史観を披瀝している。 

 原書で 700 頁近い大著を邦訳によっても読みこなすのは、率直に言って、むずかしい。

しかし、グローバリゼーションが、否が応でも、日米両国の歴史を近づけ、重ね合わせ、新 しい帝国の歴史が生まれつつある現在、信頼に足りるアメリカ史は、多くの教訓を与える。 

 日本の近代は、衆知のように、1853 年に始まる。青山学院の歴史もこれと無縁では、も ちろんない。ペルー提督が遣ってきてから 21 年目に、麻布の地に、青山学院の礎石が置か れた。旧幕臣の津田仙がこれを大いに助けた。 

 それより 3 年前に、岩倉具視大使以下、政府要人や津田仙の愛嬢・梅子を含む一行が、

勝麟太郎の操舵する咸臨丸で太平洋を横断して、不平等条約 改正の下交渉に出かけている。このとき、日本は、坂の下の 泥沼を踏み越えて、坂の上の雲をめざすことになった。 

 因縁話めくが、この遣欧使節団を建議したのは、オランダ 生まれの宣教師フルベッキだった(ちなみに夫妻の墓碑は青 山墓地にある)。1859 年に来日し、長崎で佐賀藩士を教えた。

その高弟に大隈重信がいた。フルベッキは 2 つの教科しか教 えなかったという。ひとつは聖書で、もうひとつはアメリカ 合衆国憲法だった。万物の真理はここから生まれる、という 力強いメッセージが込められている。それを実感するために も『民衆のアメリカ史』は必読と言わざるを得ない。 

 

◇      /Howard Zinn.(青 973 / Z5-6 / 2) 

(法務研究科教授 刑事法、フランス法、国際人権法) 

A people,

s history of the United States: 1492-Present

(8)

高 嶋 修 一 

TAKASHIMA Shuichi

木村靖子先生のこと 

 学会出張の途中で立ち寄ったアムステルダムの街を歩きながら、30 年近く前に日本人 学校で「音楽」を教わった木村靖子先生のことを考えていた。先生は当時おそらく 30 代で、

オランダ人の御主人との間に、私と同じくらいの年齢の子供がいた。偏見を承知で言えば、

音楽家であったうえに海外在住日本人だったから、今から考えれば両方の属性を掛け合わ せて少し変わった人だったかもしれない。1 学年 30 人たらず、小中学校あわせて 200 人ちょっ との小さな学校で全校生の授業を受け持っていた。 

 思い出話によくある、自分が周囲から浮いていたという類のエピソードは要するに自慢 話の一類型なのだけれど、少しだけ許してほしい。小学校低学年の私にとって音楽の時間 というのは、「お勉強科目」の退屈さから解放される限りでは嬉しかったものの、いっぽ うでどこか居心地の悪さもあるものだった。とりわけ耐えがたいのは歌だ。下手とか上手 とかいう以前に、人前で歌うという行為がどうしようもなく恥ずかしいのだ。これは理屈 ではない。合唱は適当にごまかせるが、独唱ではそれもできない。ついでに言えば、踊る のも恥ずかしかった。自由にダンスをしろと言われたので、音楽のかかっている間ずっと 直立不動でいたことがあった。こういう感覚は今も変わらない。 

 優れた指導者というのは誰でも、周囲に「自分はあの人にとって特別だ」と思わせる能 力を良い意味で備えているものだが、それを差し引いても先生はそのような子供に能力以 上の評価と必要以上の愛情をくれた。音楽会のときに私を花形楽器である大太鼓のパート に指名したのも、やはり「特別」だったからだと思う。楽器はまだマシだ。およそ才能の 無い子供にとってハーモニカだの笛だのは、所詮「お勉強」の延長でしかなく、音符を一 定動作の指示記号として頭で覚えておけば何とかなる。だがそれにも限界があり、何度やっ ても周りのパートに合わせて叩くことができず、結局私は先生の期待に応えられず「鈴」

に左遷されてしまった。考えてみれば始めから「鈴」の子もいた訳で、それからもちろん 代わりに大太鼓を射止めた者もいたのであって、つくづく 子供の世界も残酷だと思う。 

 小学校 3 年生の時だと思うが、音楽の時間がおわって教室 を出ていこうとしたら、先生に突然抱き寄せられて、頭に 軽いキスをされたことがあった。それが「ママのキス」であっ たことは子供でももちろん理解できたのだけれど、なぜ先 生がそんなことをしたのかはわからなかったから、ちょっ と戸惑った。ただ、先生の唇が髪の毛にふれたときのザワッ とした感触だけは今でもよく覚えていて、これからも多分 忘れない。要するにそういう質と量の愛情を一生分受け取っ たということなのだろう。 

 先生が激しい闘病生活の末に安楽死を選んだと聞き及ん だのは、私が大学生の時だった。10 年くらい会っていなかっ たから何となく実感が湧かなかったというのが正直なとこ ろで、日本女性初の安楽死という事件性ゆえにいくつかの 

ネーダーコールン靖子著  祥伝社(2001年) 

(相 916 / N45U) 

図 

図  書  書  館  館  の  の  蔵  蔵  書  書  か  か  ら  ら 

(9)

メディアが取り上げるところともなったが、そういうことにも特別の関心は湧かなかっ た。「ネーダーコールン靖子」という、知ってはいたが馴染みのない名前で報じられたの も一因かもしれない。大学の友人が「君のまわりには偉い人がいるんだねえ」と言ったこ とだけが耳の奥に残っている。 

 死んだあとになって、先生の名前で 2 冊の本が刊行された。一つは長年詠んでいたとい う短歌集であり、もう一つがここに掲げる日記である。聞くところによれば、これはその 手の問題を考えるに際しての必読書になっているのだそうだ。そういう「学問的」意義付 けがなされたゆえであろうが、本学の図書館にも所蔵されていると最近知った。短歌集の ほうはないらしい。私の手元には 2 冊ともあるのだが、両方とも実はまだ口絵より先を繙 いたことがない。読んでもいない本の紹介をよりによって図書館報でするのは珍しいだろ うか。手に入れただけで読んだことのない「ツンドク」の本はたくさんあるから私には特 別なことでもないのだけれど、あえて釈明をするならば、読んだら泣いてしまうだろうし、

いい年齢をして泣くのはやはり恥ずかしいということなのだ。 (経済学部経済学科准教授) 

           

 駅の売店などで『夕刊フジ』と並んで売られている『日刊ゲンダイ』という夕刊紙があ ります。このサラリーマンを主な読者対象とした新聞に、 新刊よみどころ という書評コ ラムが 2003 年 7 月まで約 22 年半にわたって、毎週水曜日に連載されていました。文末の 署名は〈狐〉となっていて、著者の正体は不明でした。いわゆる匿名書評です。 

 その欄で紹介される本は、小説はもちろんエッセイ、ノンフィクション、学術書からコ ミックに至るまで、多岐にわたっていました。そしてなによりも よみどころ を語る狐 氏の語り口がすばらしく、紹介される本そのものよりもおもしろく感じられることがしば しばありました。よくある辛口の匿名書評とは違って、狐氏は作品の斜め後ろくらいの位 置に立って、その本の著者の心につかずはなれずの言葉で、時にやさしく、時に力強く、

読む人に向かって、その本の魅力をつづっていたのです。そして、それを読むのは満員電 車のつり革につかまりながら『日刊ゲンダイ』を手に持つ多くのサラリーマンたちでした。 

 狐氏は、氏の言葉によれば「自分の書いた文章が雑踏でも通用する」ものになっている か、ということにこだわっていました。 

 この狐氏の正体は、実は青山学院大学図書館の館員だったのです。本名は山村修氏とい います。文筆家として独立できるだけの筆力がありながら、同氏が大学職員としてサラリー マン勤務を続けたのは、そのことと無関係ではなかったと思います。 

  新刊よみどころ は 1992 年に『狐の書評』(本の雑誌社)として初単行本化されました(現 在は『水曜日は狐の書評』(2004)『もっと、狐の書評』(2008)としてちくま文庫に所収)。

他にも『野蛮な図書目録』(洋泉社,1996)、『狐の読書快然』(同,1999)といったタイトルで 刊行されました。 

 また、本名の山村修名義では、『遅読のすすめ』(新潮社,2002)、『書評家〈狐〉の読書遺産』

(文春新書,2007)などの、これも読み逃せない本を多数執筆しています。 

 残念ながら、同氏は 2006 年 8 月に病のため 56 歳で故人となってしまいました。死の直 前の 7 月に刊行された『〈狐〉が選んだ入門書』(ちくま新書,2006)のあとがきで、みずか ら狐の覆面をはずしたあとに……。        (本館 図書部運用課) 

 

安 倍 紀 雄 

ABE Norio

〈狐〉−図書館員だった匿名書評家− 

(10)

 昨年 12 月 8 日に、紀伊國屋書店横浜店で選書ツアーを実施しました。「選書」とは、文 字どおり図書館に置く本を選ぶこと。学生の視点から書店で手に取って本を選ぶ、という 初めての試みに、相模原キャンパスの 2 年生から 4 年生の 9 名が参加しました。 

 図書館スタッフから選書基準の簡単な説明をした後、カゴを持って売場へ繰り出します。

あっという間にあふれるほどの本をカゴに詰め込む学生や、立ち止まって本の中身を吟味 する学生など、思い思いの本を手に取ります。1 時間半をかけて、読みたい本、読んでほ しい本を選び、159 冊が集まりました。その中から既に万代記念図書館にある本を除いた 95 冊を購入しました。 

               

  1 月には館内の展示コーナーに本を並べ、成果のお披露目をしました。選書した学生に よるコメントが添えられている本もあり、次々と貸し出される様子から、他の学生の興味 も引いていることが伺えました。 

学 生 が 選 ん だ 本  学 生 が 選 ん だ 本 

選 書  選  書 ツ  ツ  ア ー  ア  ー 

相  模  原 

(11)

参加した学生からは次のような感想が寄せられました。 

 

 楽しかったです。他の学生さんが選ぶ本も興味深くて、読書の幅が広がりました。(文 学部 2 年) 

 ふだん図書館を利用している時は、「あの本がない」「この分野の情報が少ない」などと 文句を言っていますが、いざ「自由に選んでいいよ」と言われると、なかなか欲しい本 はみつからないものです。(文学部 2 年) 

 一冊の本を選ぶのに何分もかかり、一時間半ではとても時間が足りなかったように思い ますが、色々な本が見られてよかったです。(経済学部 2 年) 

 とにかく楽しかったです!! 普段高くてなかなか買えないし、手に取らないけど読んで みたかった専門書などを次から次へとカゴに入れていく経験はなかったので、ついつい 選びすぎてしまいました。(法学部 2 年) 

 興味はあるけれど高くて買うことができない本と出会うきっかけになり、すごく楽しかっ たです。(国際政治経済学部 2 年) 

 自分が図書館の選書に携われるとは思っていなかったので、選んでいる時は興奮してし まうくらいでした。(理工学部 3 年) 

 自分やみんなが読みそうな、勉強になりそうな本を選ぶのが楽しかった。選書基準が少 し分かりにくかった。(理工学部 4 年) 

 自分がどういう本に興味があるかを認識しました。選んだ本が多くの人に読んでもらえ たら嬉しいです。(理工学部 4 年) 

 

 このほかに、次回開催に関する問い合わせや、青山での実施希望も多く寄せられました。 

(万代記念図書館) 

(12)

青山学院スクール・モットー 地の塩、世の光 The Salt of the Earth、The Light of the World 青山学院大学図書館報 AGULI 第 90 号 2011 年 4 月 1 日発行 

編 集 青山学院大学図書館報編集委員会・大学図書館広報担当 TEL.03-3499-1402 FAX.03-3407-4472  発 行 青山学院大学図書館 〒150-8366 東京都渋谷区渋谷 4-4-25 http://www.agulin.aoyama.ac.jp/

図  書  館  広  報  板 

= 4月の図書館オリエンテーションのご案内 =  本館 青山キャンパス 

万代記念図書館 相模原キャンパス 

◆資料の探し方クイックガイド   

所要時間40分  各回先着22名(要・事前申込) 

受付:図書館1Fレファレンスカウンター 

皆さんに実際にPCに触っていただきながら、資料の探 し方をわかりやすく説明します。 

PCをあまり使ったことのない方は申込時にご相談ください 

●授業に役立つ図書館ツアー   

所要時間30分  各回先着8名(要・事前申込) 

受付:図書館1Fレファレンスカウンター 

実際に図書館施設を歩いて、資料の探し方を体験しなが ら、覚えていただけます。 

《予定表》 

14:50−15:30 15:40−16:10 16:30−17:10 17:20−17:50 18:10−18:50 19:00−19:30

4/12 

(火) 

◆ 

● 

◆ 

●  4/13 

(水) 

◆ 

● 

◆ 

●  4/14 

(木) 

◆ 

● 

◆ 

● 

◆ 

●  4/15 

(金) 

◆ 

● 

◆ 

●  4/16 

(土) 

4/18 

(月) 

◆ 

● 

◆ 

● 

4/19 

(火) 

◆ 

● 

◆ 

● 

◆ 

● 

4/20 

(水) 

◆ 

● 

◆ 

● 

4/21 

(木) 

◆ 

● 

◆ 

● 

4/22 

(金) 

◆ 

● 

◆ 

● 

◆ 

● 

◆ 

● 

◆ 

●  4/23 

(土) 

◆ 

● 

◆ 

● 

図書館内を歩きながら、本の貸出・返却などの基本的な利用方法や、簡単な本の探し方を説明します。

レポートや試験の直前に慌てる前に、高校までとは違う大学図書館の利用方法をマスターしてください。 

集合場所 : B棟1階 図書館内中央吹き抜け下  各回先着100名まで 

★上記日程で参加できなかった方は、予約制で受け付けます★ 

 4月11日(月)〜22日(金) ※土日除く 

11:00〜11:50  13:30〜14:20  15:00〜15:50   前日までに1階メインカウンターへお申し込みください。 

4日(月) 

日文 

教育・国政経  社会情報 

11:00〜11:50

総文・物数・化生  経営 

フ文・心理 

13:00〜13:50

英米文  経済 

現デ・電気・機械・経シス  史・情テク 

15:00〜15:50

5日(火) 

6日(水) 

7日(木) 

全学部  全学部  全学部 

8日(金) 

4月 

12:30−13:30 18:00−19:00

4/16 

(土) 

A B

4/23 

(土) 

B A

《予定表》 

図書館利用  オリエンテーション 

※4日(月)の英米文学科のみ15:10〜16:00

初心者マークの 

For Freshman

図書館長人事のお知らせ  3月31日付で任期満了となった山本吉宣図書館長に代わり、 

4月1日より三村優美子経営学部教授が就任されました。 

大学院生向け  オリエンテーション  A. 法情報の探し方コース  B. 国マネ・会計プロ・経済・ 

  経営・研究科コース 

参照

関連したドキュメント

・「中学生の職場体験学習」は、市内 2 中学 から 7 名の依頼があり、 図書館の仕事を理 解、体験し働くことの意義を習得して頂い た。

British Library, The National Archives (UK), Science Museum Library (London), Museum of Science and Industry, Victoria and Albert Museum, The National Portrait Gallery,

[r]

保健学類図書室 School of Health Science Library 【鶴間キャンパス】. 平成12年4月移転開館 338㎡

モ大旨五言也︒二四︵1︶不同二六︵2︶対︒又七言連句尤稀也︒所謂上クテリケタリ

 角間キャンパス南地区に建 設が進められていた自然科学 系図書館と南福利施設が2月 いっぱいで完成し,4月(一

The Antiquities Museum inside the Bibliotheca Alexandrina is solely unique that it is built within the sancta of a library, which embodies the luster of the world’s most famous

 当図書室は、専門図書館として数学、応用数学、計算機科学、理論物理学の分野の文