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昭和大学薬学部生体制御機能薬学講座薬理学部門

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(1)

プリン作動性 P2X 4 受容体サブタイプはウシ大動脈  内皮細胞の一酸化窒素産生に関与する

昭和大学薬学部生体制御機能薬学講座薬理学部門

黄  洋 一  野部 浩司

抄録:血管内皮細胞は,血流から受ける ずり応力(シェアストレス) に刺激され,一酸化 窒素(NO)を産生する.この機序として,シェアストレスにより内皮細胞表面で合成された ATP が,近接する ATP 受容体を刺激して NO 合成酵素(eNOS)を活性化する経路が提唱さ れている.ATP 受容体は,P2X 受容体および P2Y 受容体に大別され,それぞれに複数のサブ タイプが存在するが,内皮細胞の NO 産生に関与する受容体サブタイプについては,不明な点 がある.ウシ大動脈内皮細胞には,P2X 受容体ファミリーの P2X4および P2X7サブタイプ,

P2Y 受容体ファミリーの P2Y1および P2Y2サブタイプの存在が報告されている.本研究では NO 産生に関与する ATP 受容体サブタイプの解明を目的とした.まず,培養ウシ大動脈内皮 細胞を NO 蛍光プローブ DAF-FM 存在下で ATP 受容体刺激薬 ATP

γ

S により刺激し,遊離 した NO と DAF-FM との反応産物である DAF-FMT を逆相 HPLC により蛍光検出した.そ の結果,ATP

γ

S(0 〜 10 µM)による NO 遊離量の濃度依存的な増加を測定することができた.

また,この ATPγS(3 µM)による NO 遊離は,NO 合成酵素阻害薬 L-NMMA(100 µM)存 在下でほぼ完全に抑制されることから,eNOS の活性化によることが確認された.次に,ATP

γ

S(3 µM)による NO 産生が P2X あるいは P2Y 受容体のいずれを介しているかを検討した.

非選択的 P2X 受容体遮断薬の PPADS は,培養内皮細胞の ATP

γ

S による NO 遊離を濃度依 存的に抑制し,その IC50値は 5.8 µM であった.この値は,PPADS による P2X 受容体阻害作  用の文献値(IC50= 10 µM;マウス,ヒト)とほぼ一致した.一方,非選択的 P2Y 受容体遮断 薬である Reactive Blue 2 の NO 遊離阻害作用は,報告されている P2Y 受容体阻害作用に比べ 著しく弱かった.そこで,この NO 産生が P2X4あるいは P2X7受容体のいずれを介しているか を検討した.選択的 P2X4受容体遮断薬の 5-BDBD は,培養内皮細胞の ATP

γ

S による NO 遊 離を濃度依存的に抑制し,その IC50値は 2.2 µM であった.この値は,5-BDBD による P2X4受 容体阻害作用の文献値(IC50= 1.2 µM)とほぼ一致した.一方,選択的 P2X7受容体遮断薬 A438079 の IC50値は 0.1 〜 0.3 µM と報告されているが,培養内皮細胞の NO 遊離は 1 µM の A438079 存在下でも抑制されず,また,10 µM でもその抑制率は 29%程度であった.以上の結 果から,ウシ大動脈内皮細胞の NO 産生は,主に P2X4受容体を介していると結論した.

キーワード:ウシ大動脈内皮細胞,一酸化窒素,ATP 受容体遮断薬,P2X4受容体

緒 言

 血管内皮細胞は,血流から受ける ずり応力

(シェアストレス) により恒常的に一酸化窒素

(NO)を産生している.実際,ヒト,ウシおよびマ ウスの培養血管内皮細胞にシェアストレスを負荷す ると,細胞内 Ca2+濃度上昇と共に NO 産生の促進 することが報告されている1,2).これと同様の反応 は,細胞外に添加した ATP によっても引き起こさ

れる3,4).一方,シェアストレスは,培養内皮細胞 から ATP を遊離させる2,5).これらのことから,

シェアストレスによる NO 産生の機序として,内皮 細胞表面で合成された ATP が,近接する ATP 受 容体を介して細胞内 Ca2+濃度を上昇させ NO 合成 酵素(eNOS)を活性化する経路が提唱されている.

 ATP 受容体には,P2X 受容体(イオンチャネル 型受容体)および P2Y 受容体(G タンパク質共役 型受容体)があり,それぞれ 7 種類(P2X1 〜 7)お  原  著

責任著者

(2)

よび 8 種類(P2Y1,P2Y2,P2Y4,P2Y6,P2Y11 〜 14)  のサブタイプが存在する6,7).P2X 受容体の刺激は 非選択的陽イオンチャネルの開口を介して,また,

P2Y 受容体の刺激はホスファチジルイノシトール

(PI)代謝回転の促進を介して細胞内 Ca2+濃度を上 昇させる.従って,P2X および P2Y 受容体のいず れも eNOS  を活性化することができると考えられ ている.

 培養ウシ大動脈内皮細胞には,P2X4および P2X7

受容体の mRNA およびタンパク質の発現が報告さ れている8).また,P2Y1および P2Y2受容体をそれ ぞれの活性化薬で刺激すると,PI 代謝回転が促進 することから,P2Y1および P2Y2受容体の発現も 示唆されている9).しかし,いずれの受容体サブタ イプが ATP による NO 産生に関与しているかは明 らかでない.そこで,本研究では NO 産生に関与す る主要な ATP 受容体サブタイプの解明を目的とし て,ATP 受容体刺激薬である ATPγS により培養 ウシ大動脈内皮細胞を刺激した際の NO 遊離量を定 量的に測定し,これに対する各種受容体遮断薬の効 果を検討した.

研 究 方 法  1.溶液および試薬類の調製

 4‑(2‑Hydroxyethyl) piperazine‑1‑ethane sulfonic  acid(HEPES) 緩 衝 Krebs 溶 液(KHB) は,

135 mM NaCl, 5.0 mM KCl, 2.5 mM CaC12, 1.2 mM  MgCl2, 5 mM glucoseおよび8.4 mM HEPESを含み,

1N NaOH で pH 7.4 に調整した.NO 遊離剤(

±

)‑ 

(E)‑4‑methyl‑2‑[(E)‑hydroxyamino]‑5‑nitro‑ 

6‑methoxy‑3‑hexanamide (NOR‑1;Dojindo  Laboratories)は,ジメチルスルホキシド(DMSO)

中 で は NO を 遊 離 し な い の で,DMSO に 溶 解

(10 mM)し小分けして

20℃で保存した.使用直 前に DMSO に希釈(0 〜 200 µM)し,更に KHB 中に 1,000 倍希釈(0 〜 200 nM)して NO を遊離さ せた.NO 蛍光プローブである Diaminofluorescein- FM (DAF-FM;Adipogen International Inc.)は,

DMSO に溶解(6.9 mM)し小分けして

20℃で保 存した.使用直前に KHB に希釈(5 µM)して実験 に用いた.

 2.ウシ大動脈内皮細胞の培養

 ウシ大動脈内皮細胞(BAEC;Cell Systems Co.)

は,10%ウシ胎児血清(FCS;Thermo Trace Co.) 

を含む培地中,コラーゲンコート(0.03% Type Ⅰ;

KOKEN Co.)した培養ディッシュ(6 cmφ;Iwaki  Co.)に播種し,5%炭酸ガスインキュベータ中で継 代培養した.培地には,フェノールレッドを含まな い Dulbeccoʼs Modified Eagleʼs Medium (DMEM; 

Sigma Chemical Co.)を用いた.この細胞をコラー ゲンコートした 24  穴プレート(Iwaki Co.)に播種 し,コンフレントになるまで培養後,実験に用いた.

 3.逆相高速液体クロマトグラフィー(逆相 HPLC)

  カ ラ ム に は,TSK-gel octadecyl-2PW(4.6 mm  I.D.

×

15 cm;Tosoh Co.)を用いた.移動相には,9 

%アセトニトリルを含む 50 mM リン酸ナトリウム 緩衝液(pH 8.0)を用いた(流速 1 ml/min).試料 注 入 量 は,20 µl と し た. 検 出 は, 励 起 波 長 470  nm および蛍光波長 515 nm に設定して行った.分 析と次の分析の間に 30%アセトニトリルを含む 50 mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH 8.0)を 3 分 間流してカラムを洗浄した.

 4.NO 遊離剤 NOR-1 からの NO 遊離量の測定  NOR-1 を,5 µM DAF-FM お よ び 100µM L-ア ルギニンを含む KHB 中に添加して 1,000 倍希釈し

(終濃度 0 〜 200 nM),37℃で 60 分間インキュベー トした.その後,KHB 中に遊離した NO と DAF- FM  の 反 応 産 物 で あ る DAF-FM triazole(DAF- FMT)を逆相 HPLC により蛍光検出した.

 5.ウシ大動脈内皮細胞からの NO 遊離量の測定  24 穴プレート上でコンフレントまで培養したウ シ大動脈内皮細胞を KHB (0.5 ml)で 3 回洗浄後, 

5 µM DAF-FM および 100 µM L-アルギニンを含 む KHB (0.25 ml)中で,ATPγS により 37℃で 60 分間刺激した.その後,KHB 中に生成した DAF- FMT を 逆 相 HPLC に よ り 蛍 光 検 出 し た. 各 種 ATP 受 容 体 遮 断 薬 お よ び NO 合 成 酵 素 阻 害 薬

(L-NMMA;100 µM)は,ATPγS 刺激 3 分前に添 加した.

 6.統計学的解析

 統計処理は,統計演算プログラム ystat2013 (医 学図書出版)を用いて行った.ウシ大動脈内皮細胞 からの NO 遊離量は , 平均値

±

標準誤差で表した.

多群間の平均値の差の検定は analysis of variance

(ANOVA)を用いて行い,有意差が認められた場 合に Bonferroni あるいは SNK の多重比較法により

(3)

検定した.P < 0.05 をもって統計学的に有意と判 定した.

結 果

 1.NO 遊離剤 NOR-1 からの NO 遊離量の検量線  1 モルの NOR-1 は,約 1 モルの NO を発生する.

発生した NO を蛍光プローブ DAF-FM と反応させ,

反応産物である DAF-FMT を逆相 HPLC により測 定した.縦軸に DAF-FMT の相対蛍光量を,横軸 に NOR-1 の濃度をとり検量線を作成した.その結 果,NOR-1,0 〜 200 nM の濃度域で良好な直線性 が認められ(r2= 0.998),NO の定量的測定が可能 であった(図 1).

 2.ATP

γ

S によるウシ大動脈内皮細胞の NO 産生  ウシ大動脈内皮細胞を NO 蛍光プローブ DAF- FM 存在下で ATPγS により刺激し,遊離した NO と DAF-FM との反応産物である DAF-FMT を逆 相 HPLC により測定した.その結果,ATPγS によ る NO 遊離量の濃度依存的な増加を測定することが できた(図 2A).また,この ATPγS(3 µM)に よる NO 遊離は,NO 合成酵素阻害薬 L-NMMA 存 在下でほぼ完全に抑制されることから(図 2B),

図 1 逆相 HPLC による NO 測定の検量線 NO 遊離剤 NOR-1(最終濃度 0 〜 200 nM)を,NO 蛍 光プローブである DAF-FM(5 µM)を含む KHB 中に 添加し,37℃で 60 分間インキュベートした.その後,

KHB 中に遊離した NO と DAF-FM  の反応産物である DAF-FM triazole(DAF-FMT)を逆相 HPLC により蛍 光検出(励起波長 470 nm,蛍光波長 515 nm)した.縦 軸に DAF-FMT の相対蛍光量を,横軸に NOR-1 の濃度 をとり検量線を作成した(r2= 0.998).

図 2 ATPγS によるウシ大動脈内皮細胞の NO 産生

ウシ大動脈内皮細胞を,NO 蛍光プローブである DAF-FM を含む KHB 中で,ATP

γ

S によ り刺激(37℃,60 分間)後,生成した NO と DAF-FM の反応産物 DAF-FMT を逆相 HPLC により蛍光検出した.A:ATP

γ

S(0 〜 10 µM)による NO 遊離量の濃度依存性.B:NO 合成酵素阻害剤 L-NMMA の NO 遊離抑制作用.L-NMMA(100 µM)は,ATP

γ

S(3 µM)

刺激 3 分前に添加した.縦軸は図 1 の検量線から換算した細胞 106個あたりの NO 遊離量で 表し,値は平均値

±

標準誤差で示した(n = 3).**P < 0.01;図 2A では ATPγS 非存在下 での NO 遊離量(CON)に対する有意差を表す(ANOVA 後 Bonferroni 検定).図 2B では ATP

γ

S 非存在下(CON)と存在下,および ATPγS 存在下と L-NMMA 共存下での NO 遊 離量の間の有意差を表す(ANOVA 後 SNK 検定).

(4)

NO 合成酵素(eNOS)の活性化によることが確認 された.

 3.ウシ大動脈内皮細胞の NO 産生に関与する ATP 受容体サブタイプ

 ATP

γ

S によるウシ大動脈内皮細胞の NO 産生が,

P2X および P2Y のいずれを介しているかを明らか にするため,まず,非選択的 P2X 受容体遮断薬 PPADS および非選択的 P2Y 受容体遮断薬 Reactive   Blue 2 の効果について検討した.その結果,ATP

γ

S

(3 µM)によるウシ大動脈内皮細胞からの NO 遊離 量は,PPADS 存在下で濃度依存的に抑制され(IC50

= 5.8 µM),30 µM で完全に抑制された(図 3).一方,

Reactive Blue 2 は,100 µM でも NO 遊離を完全に は抑制せず,その抑制率は 56%であった(図 3).

 そこで,この NO 産生に関与する P2X 受容体サ ブタイプを明らかにするため,次に,選択的 P2X4

受容体遮断薬 5-BDBD および選択的 P2X7受容体遮 断薬 A438079 の効果について検討した.その結果,

ATPγS(3 µM)によるウシ大動脈内皮細胞からの NO 遊離量は,5-BDBD 存在下で濃度依存的に抑制 された(図 4:IC50= 2.2 µM).一方, A438079 は 1 µM まで NO 遊離を抑制せず, 10 µM でも抑制率 は 29%であった(図 4).

考 察

 本研究では,まず,ATP 受容体刺激による培養 ウシ大動脈内皮細胞の NO 産生について検討した.

ATP は,内皮細胞表面の ATP 受容体を刺激する が,それ自身は細胞表面の ecto-ATPase により分 解される10).そこで,非分解性の ATP 受容体刺激 薬である ATP

γ

S により培養内皮細胞を刺激した.

その結果,濃度依存的な NO 産生量の増加が認めら

図 3  ウシ大動脈内皮細胞の NO 産生に対する P2X お よび P2Y 受容体遮断薬の作用

ウシ大動脈内皮細胞を,NO 蛍光プローブである DAF- FM を含む KHB 中で,3 µM ATP

γ

S により刺激(37℃,

60 分 間 ) 後, 生 成 し た NO と DAF-FM  の 反 応 産 物 DAF-FMT を逆相 HPLC により蛍光検出した.非選択 的 P2X 受容体遮断薬 PPADS および非選択的 P2Y 受容 体遮断薬 Reactive Blue 2 は,ATP

γ

S 刺激 3 分前に添 加した.縦軸は,各受容体遮断薬の非存在下で測定し た NO 遊離量を 100%として表し,値は平均値

±

標準誤 差で示した(n = 3).P < 0.05,**P < 0.01;各受容 体遮断薬非存在下での NO 遊離量に対する有意差を表 す(ANOVA 後 Bonferroni 検定).

図 4  ウシ大動脈内皮細胞の NO 産生に対する P2X4 よび P2X7受容体遮断薬の作用

ウシ大動脈内皮細胞を,NO 蛍光プローブである DAF- FM を含む KHB 中で,3 µM ATP

γ

S により刺激(37℃,

60 分 間 ) 後, 生 成 し た NO と DAF-FM  の 反 応 産 物 DAF-FMT を逆相 HPLC により蛍光検出した.非選択 的 P2X4受容体遮断薬 5-BDBD および非選択的 P2X7 容体遮断薬 A438079 は,ATPγS 刺激 3 分前に添加した.

縦軸は,各受容体遮断薬の非存在下で測定した NO 遊 離量を 100%として表し,値は平均値

±

標準誤差で示し た(n = 3).P < 0.05,**P < 0.01;各受容体遮断薬 非存在下でのNO遊離量に対する有意差を表す(ANOVA 後 Bonferroni 検定).

(5)

れ(図 2A),これは NO 合成酵素(eNOS)の活性 化によることが確認された(図 2B).

 培養ウシ大動脈内皮細胞の ATP 受容体には,

P2X 受容体ファミリーの P2X4 および P2X7サブタ イプ,P2Y 受容体ファミリーの P2Y1および P2Y2

サブタイプの存在が報告されている8,9).そこで,

次 に,ATPγS に よ る NO 産 生 が P2X あ る い は P2Y 受容体のいずれを介しているかを検討した.

非選択的 P2X 受容体遮断薬の PPADS は,30 µM  以上で培養内皮細胞の ATP

γ

S による NO 遊離を完 全に抑制した(IC50= 5.8 µM).この結果は,PPADS による P2X 受容体阻害作用の文献値(IC50= 10 µM;

マウス,ヒト)とほぼ一致する11).一方,非選択的 P2Y 受容体遮断薬の Reactive Blue 2 は 100 µM で P2Y 受容体を完全に阻害(IC50= 30 µM)することが 報告されているが12),NO 遊離の抑制率は 100 µM の Reactive Blue 2 存在下でも 56%程度で完全には抑制 されなかった(IC50= 80 µM).以上の結果から,ウ シ大動脈内皮細胞の NO 産生は,主に P2X 受容体を 介することが明らかとなった.

 そこで,この NO 産生が P2X4あるいは P2X7受容 体のいずれを介しているかを検討した.選択的 P2X4

受容体遮断薬の 5-BDBD は,培養内皮細胞の ATP

γ

S による NO 遊離を濃度依存的に抑制し,その IC50

値は 2.2 µM であった.この値は,5-BDBD による P2X4受容体阻害作用の文献値(IC50= 1.2 µM)と ほぼ一致した13).一方,選択的 P2X7受容体遮断薬 A438079 の IC50値は 0.1 〜 0.3 µM と報告されてい  るが14),培養内皮細胞の NO 遊離は 1 µM の A438079  存在下でも抑制されず,また,10 µM でもその抑制 率は 29%程度であった.以上の結果から,ウシ大動 脈内皮細胞の NO 産生は,主に P2X4受容体を介し ていると結論した.

 血管内皮細胞の産生する NO は,血管拡張による 血圧低下作用の他,血小板凝集抑制作用や血管平滑 筋細胞の遊走・増殖抑制作用を有し粥状動脈硬化症 の初期病変形成を抑制している15).従って,ATP による血管内皮細胞の NO 産生が,どの ATP 受容 体サブタイプを介しているかを明らかにすること は,高血圧治療薬や粥状動脈硬化の進展抑制薬の開 発に重要である.これまで,特定の ATP 受容体サ ブタイプをノックダウンしたヒト,ウシおよびマウ  ス培養血管内皮細胞を用いた研究では,P2X4受容

体が NO 産生に関与するとの報告があるが1,3,4),最 近,P2Y2受容体の関与も報告されている2,16).これ らの結果は,血管内皮細胞の NO 産生には,P2X4お よび P2Y2受容体のいずれもが関与することを示唆 しているが,どちらが機能的に主要なサブタイプで あるかは不明であった.本研究では,これらの受容 体を刺激した際の NO 遊離量を定量的に測定し,こ れに対する受容体遮断薬の効果を薬理学的に検討し た.その結果,ウシ大動脈内皮細胞の NO 産生に関 与する主要な ATP 受容体は,P2X4受容体であるこ とを明らかにした.ヒトの血管内皮細胞においても P2X4受容体が,NO 産生に関与する主要なサブタイ プであるかについては今後の検討が必要である.

利益相反

 本研究に関し,開示すべき利益相反はない.

文  献

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(7)

PURINERGIC P2X

4

 RECEPTOR SUBTYPE MEDIATES NITRIC OXIDE   PRODUCTION IN BOVINE AORTIC ENDOTHELIAL CELLS

Yang-Il F

ANG

 and Koji N

OBE

Division of Pharmacology, Department of Pharmacology, Toxicology & Therapeutics,   Showa University School of Pharmacy

 Abstract    Shear stress-induced nitric oxide (NO) production in vascular endothelial cells is re- ported to be mediated by the release of ATP and autocrine activation of purinergic P2 receptors, which  have seven P2X and eight P2Y subtypes.  In bovine aortic endothelial cells (BAECs), the expression of  P2X4, P2X7, P2Y1 and P2Y2 subtypes has been reported.  In the present study, we examined which par- ticular subtypes are involved in the NO release from cultured BAECs.  The amount of NO released from  the NO donor NOR-1 or BAECs into the HEPES-buffered Krebs solution was measured by HPLC fluo- rometry using DAF-FM, which reacts with NO to form the fluorescent triazole derivative DAF-FMT.  A  linear relationship (r2= 0.998) was observed between the concentration of NOR-1 (0 〜 200 nM) and the  fluorescence intensity of DAF-FMT.  When BAECs were stimulated with ATPγS (a nonhydrolyzable  ATP analog; 0 〜 10

µM) for 60 min at 37℃, the amount of NO released was increased in a concentration-

dependent manner.  Such an increase was not observed in the presence of L-NMMA (a NO synthase in- hibitor).  PPADS (a non-selective P2X antagonist) and 5-BDBD (a selective P2X4 antagonist) inhibited  the ATPγS (3

µM)-induced NO production with an IC

50 of 5.8

µM and 1.2 µM, respectively.  These IC

50  values were similar to those found in previous reports.  On the other hand, the inhibitory actions of reac- tive blue 2 (a non-selective P2Y antagonist) and A438079 (a selective P2X7 antagonist) against ATPγS- induced NO production were less potent than in previous reports.  These results suggest that the P2X4  subtype is mainly involved in the ATP

γ

S-induced NO production in BAECs.

Key words:  bovine aortic endothelial cells (BAECs), nitric oxide (NO), purinergic P2 receptor antago-

nists, P2X4 subtype

〔受付:2 月 10 日,受理:2 月 22 日,2017〕

参照

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