論文内容要旨
Influence of periostin on synoviocytes in knee osteoarthritis
(変形性膝関節症患者の関節滑膜細胞由来のペリオスチンの影響に対 する検討)
In vivo Vol.31 No.1 P.69-78 2017 年 掲載
生理系生理学生体制御学分野 田鹿 佑太朗
【目的】慢性関節疾患である変形性膝関節症(膝 OA)は、膝の疼痛、変形お よび機能不全を起こし、中高年者の ADL、QOL の低下に深刻な影響を及ぼ す疾患である。しかし膝 OA の発症・増悪化機構に関しては不明な点が多 い。細胞外マトリックスタンパク質であるペリオスチンは IL-4、IL-13 等 の炎症性サイトカインや力学的負荷により線維芽細胞や上皮細胞で産生 され、各種細胞の αV インテグリンに結合して炎症性メディエーターを産 生する組織リモデリング誘発因子である。近年、ペリオスチンが膝 OA 時 に増加することが報告され、関節病変の進行に関与する細胞外マトリック ス分解酵素の発現に影響することが予想されるが充分な解析はおこなわ れていない。そこで本研究では膝 OA 関節液のペリオスチンと関連サイト カインを測定し、また膝 OA 由来滑膜細胞(OA-SY 細胞)を用い、ペリオス チン添加による細胞外マトリックス分解酵素(MMP)および阻害物質(TIMP)
への影響を検討した。
【対象と方法】昭和大学藤が丘病院整形外科を人工関節置換術のために受
診した膝 OA 患者 53 例(平均 76 歳)を対象とした。患者は Kellgren–
Lawrence 法により Grade1~4 に分類し、関節液のペリオスチンならびに IL-4、IL-13、TGF-β を ELISA 法により測定した。次に OA-SY 細胞に 0.01μg
~0.5μg/ml の異なる濃度のペリオスチンを添加し、細胞培養上清を採取 して MMP および TIMP を ELISA 法により測定した。また同培養細胞を回収 して mRNA をリアルタイム RT-PCR で測定した。さらに OA-SY 細胞に異なる 濃度のペリオスチンとデキサメサゾン 100nM を添加することにより下流 カスケードへの影響を検討した。
【結果】膝 OA の Grade 上昇に従い関節液中のペリオスチンおよび IL-13 の有意な増加を認めた。また OA-SY 細胞へのペリオスチン添加で MMP-2 お よび-3 産生および mRNA 発現が有意に上昇することが判明し、このペリオ スチン誘導性 MMP-2 および-3 産生と mRNA 発現はデキサメサゾンの添加に より抑制された。
【結論】膝 OA 関節では IL-13 誘導性にペリオスチンが発現することが示 唆された。またペリオスチンは OA-SY 細胞の MMP 産生を促すことが判明し た。MMP はリモデリング機構を進展させる重要な調節因子であるが、その 過度な発現は関節破壊をもたらす。本研究により関節液中のペリオスチン が MMP 出現の調節に関与する可能性が示唆され、膝 OA 組織の病態移行期 における新たなバイオマーカーになり得ると考えられた。またデキサメサ ゾンはペリオスチン誘導性の過度な関節リモデリングを抑制する可能性 が推察された。