複次統合療法的家族療法における参加者の治療的変 化の検討
著者 大野 美佐子
雑誌名 東京家政大学附属臨床相談センター紀要
巻 15
ページ 61‑68
発行年 2015‑03
出版者 東京家政大学附属臨床相談センター
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010093/
【はじめに】
複次統合療法(pluralistic-integrated therapy)
とは,理論統合だけでなく,実践技法としても 個人療法と集団療法,さらにはチームアプロー チの実質的展開を可能にするグループセラピィ の諸手法の統合的展開のことである1)。そし て,個人の特定の問題や課題に対して,精神内 的,対人的,対集団・組織・社会的フィールド における全人格的成長を促進することに複次統 合療法の目的がある1)。目的に沿って複数の異 なった心理療法手法を組み合わせることもあ り,その一般的臨床技法に,一人のセラピスト
(ファシリテータ)が個人療法と集団療法を同時
並行で組み合わせて行なっていくコンバイン ド・セラピィ(combined psychotherapy)があり,
このコンバインド・セラピィは,アメリカ集団 精神療法学会(AGPA)の学会誌2009年1号の全 ての頁を独占して特集されている。それだけ注 目度が高いにも関わらず,実践者の数は少な く,とりわけ本邦において見かけることは殆ど ない2)3)。それは,主催者となるセラピストに 集団療法のファシリテータとしての技量も要求 される上,より多くの知識や負担が必要とされ てくるからであろう。
ここで,論題である「複次統合療法的家族療 法」の本文中における定義を明確にしておく。
敢えて「複次統合療法的家族療法」を名乗るの は,個人に対して行なわれる集団療法の形式
複次統合療法的家族療法における参加者の治療的変化の検討
大野 美佐子
Studies in Participant’s Therapeutic Changes through Pluralistic-integrated Therapy Misako OHNO
要旨
複次統合療法(pluralistic-integrated therapy)とは,理論的統合のみならず,実践的には,個人療法と集団療法,さらには医 療や教育面からのアプローチをも可能にする,グループセラピィの諸手法の統合的展開のことである1)。本研究では,我が 国では珍しいこの心理療法を実践し,成果を挙げている研究所を例に挙げ,治療による参加者の変化を質問紙調査によって 明らかにすることを目的とする。本研究では,既存の質問紙を用いた量的研究【研究Ⅰ】と,理論生成を目的とした質的研 究【研究Ⅱ】を実施した。その結果,研究Ⅰにおいて,複次統合療法的家族療法の治療効果と見られる幾つかの結果を統計 的に示唆することが出来た。また,研究Ⅱでは,グラウンデッド・セオリー・アプローチ(Grounded Theory Approach;以下 GTAと略す)を用いて分析を行ない,10個のカテゴリーと,それらの関連性を見出すことで,複次統合療法的家族療法(特 に,コンバインド・セラピィ)の治療構造,治療機序,及び参加者の治療的変化を明らかにすることが出来た。このことは,
今後この治療法の導入を検討している治療者たちに,一つの指針を提供することへ繋がるものと考えている。
キーワード:複次統合療法,集団療法,家族療法,コンバインド・セラピィ,グラウンデッド・セオリー・アプローチ
医療法人社団ヘルメス会J戸越銀座クリニック
複次統合療法的家族療法における参加者の治療的変化の検討
が,複合家族療法(multiple family therapy)を 採っている点を強調していきたいからである。
従って,複次統合療法的家族療法を定義するな らば,「理論統合だけでなく,実践技法として も個人療法と集団療法,さらにはチームアプ ローチの実質的展開を可能にするグループセラ ピィの諸手法の統合的展開であり,特に集団療 法の形式として複合家族療法を採択するもの」
と言うことができるであろう。
本研究では,我が国では珍しい複次統合療法 的家族療法を実践し,成果を挙げている「さち 臨床心理研究所」の取り組みを紹介し,治療に よる参加者の変化を,明らかにしていくことを 目的とする。本研究により,我が国における複 次統合療法の治療機序を明らかにする一助にな ることが期待される。
【調査・方法】
1.既存尺度を用いた量的研究【研究Ⅰ】
調査対象者 さち臨床心理研究所の複合家族療 法(土曜日)に参加し,かつ月・水・金曜日に開 催されている個人療法にも参加した経験のあ る,即ち,複次統合療法的家族療法の参加者を 対象に,既存の尺度を用いた質問紙調査を実施 した。主催者のTh.の承認と,本人からの研究 協力の同意書の提出があった80名(男性31名,
女性49名)を研究対象者とした。
調査手続き 2011年7月23日(土曜日)に,調 査者本人が口頭にて研究の主旨,及び調査への 協力要請を行なった。各自その場で実施しても らい,その場で回収した。
なお,郵送による回収の希望者に対しては,
返信用封筒を同時に手渡し,後日郵送にて回収 し た 。 郵 送 に よ る 回 収 を 含 め , 回 収 率 は 96.39%であった。
調査内容(測定尺度)
(1)フェイスシート:①記入年月日,②年齢,
③性別,④さち臨床心理研究所所属年数,
⑤さち臨床心理研究所の集団療法へのひ と月の参加回数,⑥家族構成,⑦現在さ ち臨床心理研究所に関係している家族の 内訳,⑧さち臨床心理研究所への来談理 由,について尋ねた。
(2)FACESⅢ(The Family Adaptability and
Cohesion Evaluation Scale Ⅲ;家族機能測
定尺度)(3)日本語版POMS(Profile of Mood States;気 分プロフィール検査)
(4)RSES(Rosenberg Self Esteem Scale;ローゼ ンバーグ自尊感情尺度)
2.理論生成を目的とした質的研究【研究Ⅱ】
調査対象者 研究Ⅰの対象者の内,さらに研 究Ⅱへの主催者の
Th.の承認,及び,本人から
の研究協力の承諾が得られた人物を対象に,複 次統合療法的家族療法の治療構造,及び参加者 の治療的変化を明らかにすることを目的とし て,自由記述式の回答法による質問紙調査を実 施した。調査手続き 2011年8月27日(土曜日)に,調 査者本人が口頭にて研究の主旨,及び調査への 協力要請を行なった。質問紙の項目は,調査者 が一項目ごとにその場で読み上げ,調査対象者 が,質問項目の意図する内容に疑問等が出た場 合,その都度説明を行ない,質問項目の内容理 解の統一を図った。説明終了後,調査対象者全 員に,切手を貼った返信用封筒を配布し,後日 郵送法にて回収を行なったところ,72名分の 回収があり,回収率は91.14%であった。
調査内容 質問項目としては,複次統合療法的 家族療法に参加したことによる,自分自身や家 族の変化を問うオープン・クエスチョン,個人 療法と集団療法を組み合わせたこと(コンバイ ンド・セラピィ)による治療構造や治療機序を 問うオープン・クエスチョン等の,全11項目 から構成されている。
分析手続き 研究Ⅱの分析方法には,グラウ ンデッド・セオリー・アプローチ(Grounded
Theory Approach;以下 GTA
と略す)を採用し た。GTAは,相互作用及びプロセス性を押さ え,かつ実践知・研究知産出を可能とする方法 論として有効であり,さらには,質的研究法の 中で最も手続きが体系化されているという利点 がある4)。【結果・解釈】
1.既存尺度を用いた量的研究【研究Ⅰ】
研究Ⅰの調査対象者80名(男性31名,女性 49名)のフェイスシート上の質問項目の基礎統 計を算出した。その結果,研究Ⅰの対象者は,
IP31 名 (36.74 ±16.20),母 親 30 名 (58.90±
7.68),父親18名(60.67±
9.04)であることが判
明した。
フェイスシート上の質問項目「最初の来所理 由」に関して,調査対象者80名の基礎統計を集 計したところ,最初の来所理由が「不登校」であ る者が全体の35.00%,同じく「ひきこもり」が 16.25%で あ り ,こ の 2つ の 来 所 理 由 だ け で 51.25%と,全体の約半数以上を占めていること が判明した。
FACES
Ⅲの各下位尺度(凝集性,適応性尺度)得点を従属変数,治療参加上の立場(IP,母 親,父親)を独立変数として,一元配置の分散
分析を実施したところ,両下位尺度において,
3者間に統計的有意差は検出されなかった。こ れらのことから,本尺度は,個人的な病理では なく,家族全体の病理を示す指標であると見な し,分析及び検討を行なった。本研究では,
FACES
Ⅲの3類型(極端群・中間群・バランス群)において,最も理想的な家族均衡である「バ ランス群」に,調査対象者の約半数にあたる 46.3%もの人たちが属することが判明した。こ れは,このグループの構成メンバーには,病気 の治療を最大の目的とする「医療モデル」の人た ちと,人間的成長を目的とする「成長モデル」の 人たちの2群が存在するという可能性を示唆し ていると言えるだろう。
日本語版
POMS
(以下,POMSと略す)の各下 位尺度得点の基礎統計を,治療参加上の立場別 に算出し,POMSの各下位尺度得点を従属変 数,治療参加上の立場を独立変数として,一元 配置の分散分析を実施した。その結果,緊張‐不安(T
- A)尺度(F(2,74)=4.712, p<.05),疲 労(F)尺度(F(2,74)=5.582, p<.01),混乱(C)
尺度(F(2,71)=3.390, p<.05)において,統計 的有意差が検出された。Tukeyの
HSD
法(以下,Tukey
法と略す)による多重比較を行なったところ,統計的有意差が検出された3下位尺度全 てにおいて,IPと父親間での有意差が見られ た。この結果から,IPが不安や緊張に苛まれ,
疲労し,思考が混乱状態にある一方で,そのよ うな状態の
IP
を同じ家族の中に抱えつつも,それに巻き込まれることなく,日常と何ら変わ らぬ精神状態を維持しているという,良く言え ば「冷静」,悪く言えば,家庭の問題に「無関心」
な父親像が浮かび上がってくる。このように,
同じ家族でありながら,IPと父親の間には,か なりの心理的距離があり,危機感や感受性を共
複次統合療法的家族療法における参加者の治療的変化の検討
有できない状態にあることが推測された。
治療参加上の立場をより詳細に分類し,それ らを独立変数として,再度,POMSの各下位尺 度得点を従属変数とした一元配置の分散分析を 実施した。独立変数の詳細な内訳は,①IP(息 子),②IP(娘),③息子(IP)を持つ母親,④娘
(IP)を持つ母親,⑤息子(IP)を持つ父親,⑥ 娘(IP)を持つ父親,の6類型である。その結 果,怒り‐ 敵意(A
- H)尺度においてのみ,5%
水準で統計的有意差が検出された(F(5,67)=
2.361, p<.05)。さらにTukey法による多重比較 を行ったところ,IP(息子)と息子(IP)を持つ 母親の間で5%水準の統計的有意差が見られ た。この結果から,IPとして何かしらの症状を 呈している息子は,自分に対して,あるいは
「家族」といった特定対象や,「社会全体」といっ た漠然とした対象に対して,激しい怒りや憤り の感情を抱いている状態であることが窺われ る。かつてひきこもりの当事者であった上山5)
が書いた著書の中に,「ひきこもりの原点は,
苦痛さらに言えば怒りだと思います。現在にお いて,怒りと恐怖が表裏一体となって身動きで きないまま硬直している…,それがひきこもり だと思います」という一節がある。また,浅 田・境6)は,「以前会ったひきこもりの状態の 30代の男性は,親戚の人,元職場の人など他 者に対する激しい怒りを筆者に語っていた」と 記述している。このように,ひきこもりの当事 者,それは主に男性であるが,激しい「怒り」の 感情を抱いていることが,先行研究から推察す ることが出来る。その一方で,その様な大きな 怒りの感情を抱えた息子と,同じ家庭内に暮ら しているはずの母親が,怒りや敵意を殆ど抱え ていないという非常に興味深い結果となった。
RSES
得点の基礎統計を,治療参加上の立場別に算出し,RSES得点を従属変数,治療参加 上の立場を独立変数として,一元配置の分散分 析を実施した結果,統計的有意差は検出されな かった(F(2,75)=2.331, n.s.)。また,過去に山 本ら(1982)の邦訳した
RSES
を使用し,かつ,平均値及び標準偏差の結果が記載された研究論 文として,健康な大学生・専門学校生を対象と した,塩澤(2008)の結果(30.55
±
6.70)と,粕 谷(2002)の結果(30.20±
6.91)が存在する。本 調 査 に お け るIP
のRSES
得 点 はM=31.77,
SD=7.72であり,健常者を対象にしたこれら
の先行研究の平均値を上回っていることが判明 した。研究Ⅰで明らかにされた,対象者の各属性
(年齢,所属年数,参加回数,関係者割合),
FACES Ⅲの下位尺度,POMS
の下位尺度,及び自尊感情尺度に関連が見られるかを検討するた めに,相関分析を実施した(Table1)。その結 果,さち臨床研究所の所属年数と,凝集性尺 度,緊張‐不安(T
- A)尺度,抑うつ‐落ち込み
(D)尺度間に統計的有意な負の相関が,RSES 得点間に統計的有意な正の相関が見られ,複次 統合療法的家族療法への長年に渡る治療参加の 結果,その治療効果として,家族各々の自立傾 向が強まるのと同時に,緊張や不安,抑うつや 落ち込みといったネガティブな精神状態が,安 定の方向に向かうのと同時に,自尊感情も高 まっていくことが判明した。さち臨床心理研究 所への家族内での関係者割合と適応性尺度間に も統計的有意な正の相関が見られ,これは治療 に関与する家族成員が増えるにつれ,治療での 学びや気づきを活かし,その時々に応じて柔軟 に家族内の役割を変化させることが出来るよう になるという様相を示すものだと推測される。
また,凝集性尺度と適応性尺度間に統計的有意
な正の相関が検出された。これは,家族内の情 緒的絆,心理的距離が深まっていった場合にお いても,家族内役割が固定化・硬直化すること なく,家族システムが状況的・発達的危機(ス トレス)に際して,その力構造,役割構造,関 係の在り方を柔軟に変化させていけることを意 味しており,これも複次統合療法的家族療法の 治療効果の一つかも知れない。
2.理論生成を目的とした質的研究【研究Ⅱ】
研究Ⅱでは,複次統合療法的家族療法(中で も,コンバインド・セラピィ)における治療構 造,治療機序,そして参加者の治療的変化を明 らかにすることを目的とし,調査対象者72名 分(IP26名,母親30名,父親15名,夫1名)の 自由記述式質問紙の内容を
GTAにより分析し
た。分析の結果,《潜在的な病理》,《治療参加 への動機づけ》,《個人療法への適用内容》,《集 団療法への適用内容》,《個人療法の特徴》,《集 団療法の特徴》,《医療モデルの治療中断》,《医 療モデルの治療終結》,《最終到達目標》,《目標 到達により生じる感情》という10カテゴリーが 抽出され,比較検討した結果,《集団療法の特 徴》がコアカテゴリーに定められた。そして,それらの一連の流れが,Figure1に示した「複 次統合療法的家族療法の治療構造,及び参加者 の治療的変化を示すカテゴリー関連図」である。
Figure1において,太字はカテゴリー名,細 字はそれらを構成するサブカテゴリー名,斜字 はプロパティ名とディメンション,点線はこの データには無いが予測できる関係及びカテゴ リーを示している。このように,複次統合療法 的家族療法,または,コンバインド・セラピィ の治療構造,治療機序が明示できたことは,今 後の実践や導入を検討している治療者たちに,
一つの指針を提供することに繋がるものと考え ている。クライエントの両治療法への最適な参 加方法を治療者が見極めていく上でも,個人療 法において,治療者との信頼関係を築き,心身 共にある程度の回復が見られてから初めて,ク ライエントに集団療法への参加の促しが可能に なるという,一連の流れがFigure1に示されて いる。見ず知らずの人たちが集う集団療法へ参 加するということは,クライエントにとって,
大きな不安や緊張をもたらすものであり,いく ら病気を治す為だとは言え,「出来ればそのよ うな所には参加したくない」というものが,誰 しもが抱く思いであろう。しかし,治療者との 信頼関係が確立されていれば,「この治療者が 勧めることならば受けてみよう」,「集団療法で 何か起こったとしても,きっと治療者が助けて くれるだろう」といった気持ちがクライエント に生じ,集団療法へのスムーズな導入が可能に なるのである。そういった意味でも,集団療法 への参加前に,個人療法をしっかりと受けてお くことは必要不可欠な事項であると思われる。
《集団療法の特徴》は,一連の諸カテゴリーの 中心である「コアカテゴリー」に相当する。そ れだけ,このカテゴリーの果たす役割は大き く,本カテゴリーを無くして,この研究を語る ことは不可能であるとも言えるだろう。基本的 には,《集団療法への適用内容》であると判断さ れた相談内容を持つ対象者が,集団療法へと参 加する流れではあるが,コンバインド・セラ ピィ方式の持つ,柔軟かつ流動的なその治療構 造により,《集団療法の特徴》に対し,疑問を抱 いたり,自分には合わないように感じたりした 際には,治療者との相談の下,いつでも個人療 法を併用したり,あるいは個人療法のみに切り 換えることが可能である。このことは《個人療
複次統合療法的家族療法における参加者の治療的変化の検討
法の特徴》に対しても言うことができ,それと 同時に,この流れは可逆的でもある。即ちクラ イエントは,自分のその時の状態,状況,また は目的に応じて,自由にこの2つの治療法を行 き来できるのである。そして,自分の治療に とって最も良いと心から納得できるスタイルを 選択することにより,治療者への信頼(ラポー ル)が確固たるものとなり,その結果として,
治療効果の上昇にも繋がっていくのである。
中釜7)は,「合同面接(単家族)が最初で,そ こから個人面接に分かれたのであり,逆ではこ う上手くはいかず,更なる配慮が求められるだ ろう」と述べている。しかし,本研究では,最初 に個人療法において治療者とクライエントのラ ポールをしっかりと形成した後,複合家族療法 に参加した方が,ドロップ・アウトの減少へと 繋がることが示唆される結果となり,中釜の「家 族面接から個人面接へ」というアプローチに対 して,一石を投じる見解となった。Feldman8)
は,異種の面接を導入する順番は,個人面接と 家族面接の統合にとって重要なポイントの一つ になることを指摘しており,今後もこの課題は 論議すべき重要なファクターであると思われ る。
さらに,個人療法と集団療法を組み合わせる に際して,集団療法の施行やその内容に重点を 置き,個人療法を「集団療法を補うもの」とし,
集団療法の補助的利用に留めることによって,
円滑なコンバインド・セラピィの実施が可能に なるということが,本研究において示された。
集団療法と個人療法の位置付けを鑑みると,未 だ本邦においては,あくまでも個人療法が心理 療法の第一選択肢であり,個人療法における膠 着状況の打開や,個人療法では学習しにくい社
会的スキルの獲得などを目的として,集団療法 が不定期に,かつ補助的な役割を持って実施さ れる,という認識の方が一般的である。本邦で は,集団療法の実施や,それを指導するファシ リテータの育成に対して,今ひとつ積極性に欠 ける傾向があるのは,現在集団療法が置かれて いる,その位置付けに因る所も大きいであろ う。従って,本研究において,集団療法の優れ た治療効果が示されたことにより,集団療法の 持つ可能性や有効性の,今後の再検討へと繋 がっていくことが期待される。そして,集団療 法を効果的なものに出来る,優秀なファシリ テータの育成が,我が国の臨床心理学の分野に おける課題であり,急務であると考える。
【謝辞】
本研究を執筆するにあたり,指導教官の近喰 ふじ子教授には,ご多忙の中,私の個別指導の 為に,何度も貴重なお時間を割いて頂きまし た。そして,その都度,私が気づかなかった新 たな閃きを与えて下さるような,懇切丁寧で,
かつ的確なご指導・ご鞭撻を頂き,誠に感謝し ております。そして,本研究の調査にあたり,
調査の実施を快くご承諾下さいました,さち臨 床心理研究所所長の小野幸子先生,調査にご協 力下さいました,さち臨床心理研究所の約80 名の参加者の皆様に,心から深く御礼申し上げ ます。
【引用文献】
1)小谷英文(2009).グループセラピィの現在 現代のエスプリ, 504, 5
-
23.2)下坂幸三(1998).心理療法の常識 金剛 出版
3)Melito, R. (2006). Integration Individual and
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381.4)木下康仁(2004).グラウンデッド・セオ リー・アプローチ―質的実証研究の再生 弘文堂
5)上山和樹(2001).「ひきこもり」だった僕か ら講談社
6)浅田みちる,境泉洋(2008).ひきこもり状 態の青年に対する親のかかわり方に関する 研究 ―母親への半構造化面接の分析―
徳島大学総合科学部人間科学研究,16,125
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143.7)中釜洋子(2007).心理療法の統合の新し い動向 精神療法, 33, 31
-
39.8)Feldman, L.B. (1992). Integrating individual and family therapy. MA : Brunner/Mazel.
Table1 対象者の属性, FACESⅢ, POMS, 及び
RSES
における相関関係複次統合療法的家族療法における参加者の治療的変化の検討
Abstract
Pluralistic-integrated therapy incorporates new visions in the methods of group therapies,not only by integrating some of the theories, but also medical and educational methods. This paper will explore what method of therapy the institute practices and how these therapeutic changes affect participants and parents. A questionnaire was used in Study I. The Grounded Theory Approach was used for the analysis in Study II. In this way, the effects of the therapy are revealed in Study I. In addition, Study II identified ten categories that are closely related. I think that a series of this kind of evidence can provide practitioners with therapy guidelines.
Key words:
pluralistic-integrated therapy, group therapy, family therapy, combined therapy, grounded theory approach
Figure1 複次統合療法的家族療法の治療構造,及び参加者の治療的変化を示すカテゴリー関連図