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平成20年度 研究開発国際展開検討委員会

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Academic year: 2021

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平成20年度

研究開発国際展開検討委員会 調査研究報告書 (概要版)

-メタナショナル的視点と研究開発国際展開-

平成21年3月

社団法人 研究産業協会

この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。

http://ringring-keirin.jp/

JRIA20 国際展開

(2)

はしがき

本委員会「研究開発国際展開検討委員会」は、研究産業協会が平成 16 年 3 月に発表し た報告書実績をふまえて、平成 19 年度より活動を開始し、研究開発の国際展開に関するあ らたな提言につながる議論を行っている。本報告書は 2 年目である平成 20 年度の活動とそ の結果についてまとめたものである。

本報告書であらためて記すまでもなく、平成 20 年度は世界の経済情勢が激変した 1 年 である。この間、研究開発の国際展開を取り巻く環境は大きく変化した。研究開発はもと もと投資回収期間が長く、中長期的かつ継続的取組みが不可欠な組織的活動である。短期 的なトレンドや組織内の合意形成の容易さに頼らず、戦略的な判断にもとづかなければな らない。しかしながら昨今の情勢は、研究開発も経済動向の影響を受ける対象として例外 ではなく、研究開発の国際展開は、個々の組織にとってきわめてむずかしい判断を要する 命題であることをあらためて示している。

今年度は、研究開発の国際展開を論じる対象として中国を中心に据え、委員会内の意見 交換、有識者の講演開催と中国への訪問調査を実施した。特に中国は、考察の対象として きわめて多面・多様であること、また状況の変化が激しいことから、考察の時期や考察者 の立場等によりしばしば極端な議論になりがちである。そのため、本委員会では、過大評 価も過小評価も排した考察を心がけた。

研究開発に関わる中国への進出・中国との連携にあたって、従来最初に想定されたのは 低コストの期待と技術流出の懸念であろう。しかし、低コストを目的とした研究開発の進 出・連携は、かつて低コスト労働力を求めて渡り鳥のように生産拠点を移動し結果として 高いコストを支払った不本意な歴史を繰返すことになる。また、技術流出についても、日 本から中国へという一方的な流れにのみ注意を払っていればよいとは限らない。研究開発 を国際展開する側と受入れる側の共通の利益と方向をどう見出していくか、何を得て何を 供与するか。目的を明確にした上で行動を起こすべきであることは言うまでもない。情報 の価値が時間とともに減価することを留意いただいた上で、本報告書が議論活性化の手が かりとなれば幸いである。

社団法人 研究産業協会

(3)

研究開発国際展開検討委員会 名簿

(平成 20年 3 月現在)

<委員長>

出井 敏夫 三菱電機(株) 開発業務部 担当部長

<委員>

松本 幸則 三洋電機(株) 研究開発本部 経営企画室 オープンR&D推進部 部長 井関 貴資 (株)日本総合研究所 総合研究部門 産業政策・技術戦略クラスター

主任研究員

古宅 文衛 (株)日本総合研究所 研究事業本部 副主任研究員 江間 俊一 日本電気(株) 研究企画部 統括マネージャー

宮澤 利夫 (株)リコー グループ技術開発本部 グループ技術企画室 シニアスペシャリスト

(会社名50音順)

<事務局>

舩津 貞二郎 研究産業協会 専務理事 菅生 繁男 研究産業協会 総務部長 小林 一雄 研究産業協会 企画部長 松田 香織 研究産業協会 企画部 主任

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(社)研究産業協会 平成 20 年度報告書

平成 20 年度 研究開発国際展開検討委員会調査研究報告書概要

背景と目的

平成 14・15 年度に国際展開委員会の活動を通じて挙げられた、民間企業の研究開発国 際展開の主目的・戦略 7 項目(①情報収集・チャンネルの拡大②人材の確保③研究開発関 連費の削減④標準化活動への参加⑤知識・技術力へのアクセス⑥ローカライゼーション⑦ グローバルな連携等によるコストダウンや競争力の強化)をふまえ、研究開発の国際展開 に関するあらたな提言に向け、平成 19 年度より活動を行っている。平成 20 年度は民間企 業から 6 名参加という委員構成である。

平成 20 年度委員会活動において議論された課題

昨年度抽出した課題を「メタナショナル経営」の視点から考察を図った。

(1)研究開発の国際展開とは:国際展開を図っている業種と目的、業種を超えた共通点 の有無、事業重視か競争力重視か、国際的連携/役割分担の事例

(2)海外に研究拠点を持つ今日的意義:現地に拠点を持たず共同研究を行うケースと比 較して優位点は何か?

(3)海外に研究拠点を持つ場合のマネジメント:トップは日本人か現地人か、プロフィ ットセンター化コストセンターか、工場進出と研究拠点進出とのマネジメントの違い、

人件費が安い国での研究開発の意味、人材の流動化に伴う知的財産の取扱い/情報管理

(技術流出・技術汚染防止)

(4)その他:リエゾンオフィスと研究所拠点を持つことの違い

今年度の活動

(1)ブレーンストーミング:活動方針・問題意識の議論

昨今研究開発の国際展開を議論する上で欠かせないのは「メタナショナル経営」呼ば れる視点である。「メタナショナル経営」とは、世界中に存在する知識資源を活用して自 社の競争力の再構築を図る経営の意味である。今年度は、この「メタナショナル経営」の 視点からみた研究開発の国際展開を議論し、中でも考察の対象として中国を中心に据え、

委員会内の意見交換、有識者の講演開催と実際に中国への訪問調査を行った。

(2)講演会形式によるヒアリング/ディスカッション

「メタナショナル経営」に関して豊富な研究実績・経験を有する講師を招いて計 2 回 の講演会を開催した。

・「研究開発のグローバル化と中国」

講師:政策研究大学院大学 科学技術政策プログラム・ディレクター、准教授

(独)科学技術振興機構 中国総合研究センター・副センター長 角南 篤氏 日中の経済関係と研究開発の国際化の状況、日本企業が中国で研究開発を行う形態と 理由から 4 つのパターンが認められる(①進出した現地の会社の中に R&D 部門を設立② まったく何もないところに独立した研究開発センターを設立③現地の大学や研究機関と 連携する形で R&D センターを設立④中国政府の R&D/教育政策と連携)。今後日本の企業

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がメタナショナルに向けて動くとした場合、中国の存在は 1 つの鍵であるが、留学生も 含めた人材、天然資源等いろいろな目的で多層的にやらないと限界があり、トータルシ ステムとして連携すべきであることが示唆された。

・「グローバル R&D メタナショナル的視座」

講師:慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授

(独)経済産業研究所(RIETI)ファカルティフェロー 浅川和宏氏

日本は GDP あたりの研究開発費は世界一で研究者数も米国に次いでいるが、サイエン ス・リンケージは先進国最低である。ドメスティックではあるが、相当スパイキー(尖 鋭的)で優れている一方、グローバルなコラボレーション・知の還流という意味では鎖 国状態である。海外に拠点を持つと、現地からの技術調達は促進されるが、その拠点を 介してのナレッジソーシングは、その拠点にある程度の技術開発能力を与えないと意味 がない。いわゆるリスニングポストを置くだけではほとんど意味がない。その意味で現 地拠点経由のオープンイノベーションにはかなりの投資が必要であるとの見解が示され た。

訪問調査:中国国内の R&D 拠点を訪問・ヒアリング

中国に進出している外資企業の研究開発のアプローチが業種ごとまたは日系企業と欧 米系企業で共通点や違いがあるのかを調査することを目的として、電機系、食品系、化 学系、素材系、IT 系など多くの業種から候補企業をリストアップし訪問調査の打診を行 った。実際に訪問の了解を得たのは電機・IT 系が中心であったが、企業の視点以外から の調査も必要との考えから、政府系機関や中国で注目されている大学の科技園(サイエ ンスパーク)の訪問調査も行った。

[訪問先(所在地)]

・ 政府系機関:JETRO(北京/上海)、NEDO(北京)

・ 日系企業:日立(北京)、Panasonic(北京)、三菱電機(北京)

・ 欧米系企業:マイクロソフト(北京)、フィリップス(上海)

・ 中国の大学/サイエンスパーク:清華科技園(北京)、上海交通大学/上海紫竹科学 園区(上海)

まず政府系機関である JETRO でのヒアリングからは、北京では世界有数の研究ポテン シャルを有する大学の人材確保を狙った R&D 拠点の設立が多く、一方上海地区ではマー ケティングや物流、R&D の総合経営戦略拠点としての意味合いが強い拠点が多いことが 示唆された。欧米系企業が 5~10 年以上の長期的スパンで内陸部の開発に乗り出そうと しているのに対し、日系企業ではそのような先行投資という考え方をしている企業は少 なく、知的財産の流出を懸念して R&D 拠点の進出には消極的である傾向があることが確 認された。また、NEDO 北京事務所のヒアリング結果から、上記「⑤知識・技術力へのア クセス」に関し、レアメタルや貴重な生態環境等の資源を獲得する価値を考え、日本と の間でシェアする関係の構築が不十分であるとの考察を得た。

日系企業現地法人のヒアリングでは、「②人材の確保」や「⑦グローバルな連携等によ るコストダウンや競争力の強化」等の目的からの R&D 拠点の進出が多く見られ、特に北 京地域での産学連携体制の確立及びその優秀人材の確保による、地域性を活かした R&D 体制を確立している企業も存在することがうかがえた。また、次世代の標準化活動のテ

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ーマを選択した研究に関しても盛んである。このような連携を可能にしているのは、政 府の有力機関との太いパイプ・信頼関係を結んで来たからだと推察される。

一方、欧米企業の研究開発拠点からは、中国をアジアの影響力のある一拠点として捉 えている傾向があり、ある企業は基礎研究を北京で行い、また人材育成や標準化活動に も力点を置いている。別の企業でも、大学との共同研究や優秀人材の採用、及び標準化 活動への参加などを目的にしているが、双方とも長期的な相互の利益に立った関係構築 というスタンスがあることが興味深い。

また、中国のサイエンスパークに関しては、米国モデルに類似している程、インキュ ベーションが極めて盛んな大学もあり、また大型の施設が必要な場合、その広大な国土 を利用して企業誘致に成功している郊外型のサイエンスパークも存在する。

以上を総合的に考察すると、中国における研究開発拠点の意義が、これまでの単なる

「情報収集・チャネルの拡大」といった側面だけではなく、「知識・技術力へのアクセス」、

「ローカライゼーション(地元の技術の吸収)」、「(日本ではいない)優秀人材の確保」

といった様に、先進的な企業では、その進出の意味合いが変わってきていることには留 意すべきであろう。

さらに言えば、国際的な戦略である、「国際標準化活動」への企業戦略の布石としての 研究開発拠点の進出であるのではないか、とも一部の欧米企業の研究開発戦略からは推 察されるであろう。知的財産保護も当然ではあるが、その先を見据えた国際標準化によ る研究開発成果の公開、及び結果としての市場の獲得という長期的な視点での国際的な 研究開発も、今後深堀調査が必要と考えられる。

今年度のまとめ

平成 21 年度以降議論すべき課題(当該国=進出先あるいは連携先の国)

研究開発もまた経済動向の影響を受ける対象として例外ではないという認識のもと、組 織にとって研究開発の国際展開がどのような意味をもたらすのか、「メタナショナル経営」

の視点から引続き考察していく。

(1)当該国が関わる研究開発の国際展開の意味

・企業の当該国展開と研究開発の当該国展開との関連(事業と研究開発の整合)

・当該国に研究拠点を持つ今日的意義/研究開発を行う理由/成果の評価

(2)当該国に研究拠点を持つ場合のマネジメント

・優秀人材の確保

(3)当該国における/対当該国の技術・情報管理

・実効性のある知財管理、技術管理

参照

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