この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
序
わが国経済の安定成長への推進にあたり、機械情報産業をめぐる経済的、社会的諸条件は急 速な変化を見せており、社会生活における環境、防災、都市、住宅、福祉、教育等、直面する 問題の解決を図るためには、技術開発力の強化に加えて、ますます多様化、高度化する社会的 ニーズに適応する機械情報システムの研究開発が必要であります。
このような社会情勢に対応し、各方面の要請に応えるため、財団法人 機械システム振興協会 では、日本自転車振興会から機械工業振興資金の交付を受けて、経済産業省のご指導のもとに、
機械システムの開発等に関する補助事業、新機械システム普及促進補助事業等を実施しており ます。
特に、システム開発に関する事業を効果的に推進するためには、国内外における先端技術、
あるいはシステム統合化技術に関する調査研究を先行して実施する必要がありますので、当協 会に総合システム調査開発委員会(委員長 放送大学 副学長 中島尚正 氏)を設置し、同委員 会のご指導のもとにシステム技術開発に関する調査研究事業を民間の調査機関等の協力を得て 実施しております。
この「マイクロ化学システムに関する調査研究報告書」は、上記事業の一環として、当協会 が マイクロ化学プロセス技術研究組合に委託して実施した調査研究の成果であります。
今後、機械情報産業に関する諸施策が展開されていくうえで、本調査研究の成果が一つの礎 石として役立てば幸いであります。
平成17年3月
財団法人 機械システム振興協会
はじめに
この報告書は、マイクロ化学プロセス技術研究組合が平成16年度事業として、財団法人機械 システム振興協会より委託を受けて実施した「マイクロ化学システムに関する調査研究」の実 施内容をまとめたものです。
数百μm以下の微小な流路や空間を形成し、化学プロセスを集積するマイクロ化学システム 技術は、反応・分析・計測の効率化・高速化のための革新的な技術としてのみならず新規な特 異反応場としても注目され、次世代の高速高感度化学分析装置、高効率化学プラントの化学産 業、医療、製薬、バイオ関連、食品産業等幅広い分野から大きな期待が寄せられています。こ のマイクロ化学システムの研究は、欧州、北米、日本と3極化しており、世界的に積極的な取 り組みが行われ、その開発競争も熾烈になっております。
本調査研究では、日本におけるマイクロ化学システムの早期普及と産業界の国際競争力確保 を目指し、そのために必要な共通プラットフォームを構築するための、製品やシステムのアウ トプットイメージを明確にしたデバイス等の標準的仕様項目とその技術的課題の抽出、及び本 技術に関する世界の動向を把握し、産業界及び我が国として実施すべき取り組みを戦略的に策 定することを目的としております、具体的には、文献による調査、特許状況の調査、アンケー トによる企業・学会等における当該分野への意識調査、国内及び海外での直接訪問による面接 調査等を実施しました。そしてこれらの調査結果を元に当該技術分野における技術動向及び技 術課題を把握し、今後取り組むべき技術課題を明確化し、マイクロ化学プラントにおいては「超 高速精密生産システムの技術開発」を、またマイクロチップでは「分散型高度分析検査システ ムの開発」を提言しました。
終わりに、この調査研究事業の実施に当って、委託事業として取り上げていただきました財 団法人機械システム振興協会に深く感謝申し上げますと共に、この調査研究事業にご協力いた だきました委員長及び委員の方々に対しまして厚く御礼を申し上げます。
マイクロ化学プロセス技術研究組合
目 次
序 はじめに
1 調査研究の目的 ………1
2 調査研究の実施体制 ………1
3 調査研究成果の要約 ………5
3.1 マイクロ化学プラント技術実用化に向けての調査研究 ………5
3.1.1 マイクロ装置の標準化に関する現状と要求仕様の調査研究 ………5
3.1.2 装置製造技術の現状と要求仕様の調査研究 ………6
3.1.3 マイクロ化学プラントに適した反応系の提示・類型化 ………7
3.1.4 装置形状と機能についての調査研究 ………9
3.1.5 長期連続運転時の問題点の抽出と対策の調査研究 ………10
3.2 マイクロチップ技術実用化に向けての調査研究 ………13
3.2.1 マイクロデバイスの標準化に関する現状と要求仕様の調査研究 ………13
3.2.2 マイクロ化学単位操作技術の標準化に関する現状と要求仕様の調査研究 ……23
3.2.3 製造技術の標準化に関する動向と課題の調査研究 ………29
3.2.4 システムを構築していく場合の標準化に関する調査研究 ………31
3.2.5 マイクロチップシステムを化学分析として用いる場合に公定法等と整合を とり標準化するための調査研究 ………35
4 調査研究の今後の課題及び展開 ………36
4.1 マイクロ化学プラント技術実用化に向けた戦略策定 ………36
4.1.1 マイクロ化学プラント早期実現のための戦略 ………36
4.1.2 マイクロ化学プラント技術普及のための方策 ………39
4.2 マイクロチップ技術実用化に向けた戦略策定 ………40
4.2.1 戦略目標 ………40
4.2.2 研究開発施策 ………41
4.2.3 規格化・標準化 ………41
1 調査研究の目的
ガラスや金属に微小な流路や空間を形成し、化学プロセスを集積するマイクロ化学システム 技術は、高速高効率な化学プロセスの構築を可能とすることから、化学物質生産や各種分析の 効率化、オンサイト型分析の実現など、幅広い分野への展開が期待されており、日米欧各国に おいて積極的な取り組みが行われている。現在のところ日本が同分野においてリードしている ものの、欧米先進国との技術差は僅少であり、早期に実用化に向けた本技術の共通プラットフ ォームを構築して普及を図り、内外でのデファクトスタンダードを確立することが我が国製造 業の競争力確保の観点から重要である。
本調査研究では、マイクロ化学システムの早期普及と産業界の国際競争力確保を目指し、そ のために必要な共通プラットフォームを構築するために、製品やシステムのアウトプットイメ ージを明確にしたデバイス等の標準的仕様項目とその技術的課題の抽出、及び本技術に関する 世界の動向を把握し、企業(産業界)及び我が国として実施すべき取り組みを戦略的に策定す ることを目的とする。
2 調査研究の実施体制
マイクロ化学プロセス技術研究組合内に、学識経験者、メーカー、ユーザー企業の代表者か らなる委員会を組織し、この委員会にて本実施計画の決定と執行を図り、かつ「ワーキンググ ループ」を設けて専門事項に関する作業を分担して調査研究を行った。
実施組織
マイクロ化学プロセス技術研究組合
マイクロ化学プラント技術調査 研究委員(第1委員会)
マイクロチップ技術調査 研究委員(第2委員会)
ワーキンググループ
(第1WG)
ワーキンググループ
(第2WG)
(財)機械システム振興協会 総合システム調査開発委員会 委託
委員会の構成
≪総合システム調査開発委員会委員名簿≫
(順不同・敬称略)
委員長 放送大学 中 島 尚 正 副学長
委 員 政策研究大学院大学 藤 正 巌
政策研究科 教授
委 員 東京工業大学 廣 田 薫 大学院総合理工学研究科
知能システム科学専攻 教授
委 員 東京大学 藤 岡 健 彦 大学院工学系研究科
助教授
委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 太 田 公 廣 産学官連携部門
コーディネータ
委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 志 村 洋 文 産学官連携部門
シニアリサーチャ
(1)第1委員会委員
(順不同・敬称略)
委員長 長谷部 伸治 京都大学大学院工学研究科化学工学専攻教授
笠 潮 旭化成エンジニアリング株式会社システム機器事業部事業部長 塩島 壮夫 出光興産株式会社総合開発センター
安宅 喜久雄 宇部興産株式会社研究開発本部複合研究室 石川 雅国 三協化学株式会社社長室参与
柳沢 健一 住友ベークライト株式会社技術部技師長 飛沢 猛 大日本インキ化学工業株式会社研究開発本部
プロセス開発センター
加藤 賢二 日本油脂株式会社筑波研究所所長
市川 靖典 富士写真フイルム株式会社先進コア技術研究所NR
西野 充晃 三菱化学エンジニアリング株式会社技術本部技術管理部次長 磯崎 克巳 横河電機株式会社先端技術研究所 センシング研究室 田中 正人 東京工業大学資源化学研究所教授
事務局 伊藤 和臣 マイクロ化学プロセス技術研究組合京都集中研究所 第一部長
(2)第2委員会委員
(順不同・敬称略)
委員長 北森 武彦 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻教授
副委員長 藤田 博之 東京大学生産技術研究所マイクロメカトロニクス国際研 センター教授
金 幸夫 東京大学工学部付属総合試験所協調工学プロジェクト助教授 前田 英明 産業技術総合研究所九州センターマイクロ空間化学研究ラボ 長
前田龍太郎 産業技術総合研究所先進製造プロセス研究部門マイクロ実装 研究グループ長
永井 聡 産業技術総合研究所評価部主席評価役&産学官連携コーディ ネーター
富樫 盛典 ㈱日立製作所機械研究所MEMSプロジェクト主任研究員 下出 浩治 旭化成㈱先端材料・融合研究所バイオ応用開発グループ主幹
研究員
中西 博昭 ㈱島津製作所基盤技術研究所MEMSグループ主任研究員 渡辺 博夫 日立化成工業㈱ライフサイエンスセンタ 主任研究員 西野 充晃 三菱化学エンジニアリング㈱技術本部技術管理部次長 企画
管理グループマネージャー
服部 明彦 日本板硝子㈱情報電子カンパニー企画開発室マイクロ化学チ ッププロジェクトリーダー 主席技師
兼重 俊彦 塩野義製薬㈱診断薬部・研究開発部門 西澤恵一郎 東ソー㈱東京研究所
佐藤 静治 伊藤ライフサイエンス㈱代表取締役社長
根本 清志 オリンパス㈱研究開発センター研究開発本部基礎技術部医療 用光計測1グループ主任研究員
幹 事 小島 建治 日本電子㈱経営戦略室副理事
幹 事 原田 勝仁 ㈱日立ハイテクノロジーズライフサイエンス事業統括本部事 業企画本部販売促進部担当部長
幹 事 関 秀世 ㈱堀場製作所開発センター新技術企画プロジェクトマネージ ャー
事務局 北岡 光夫 マイクロ化学プロセス技術研究組合 神奈川集中研究所技術 第二部長
オブザーバ 辻本 崇紀 経済産業省 製造産業局産業機械課課長補佐(技術担当)
オブザーバ 加納 誠介 経済産業省 製造産業局産業機械課係長 オブザーバ 中桐 裕子 経済産業省 製造産業局産業機械課係長
オブザーバ 浅野 由香 経済産業省 製造産業局産業機械課精密機械三係
3 調査研究成果の要約
3.1 マイクロ化学プラント技術実用化に向けての調査研究
3.1.1 マイクロ装置の標準化に関する現状と要求仕様の調査研究
(1) 調査項目
今後マイクロ化学プラント技術の実用化を目指すためには、世界における研究の現状を知る と同時に、ユーザー及びメーカーの真のニーズを見極め、必要な研究課題を抽出する必要があ る。このような観点から、マイクロ化学プラントの実用化を促進するための現状と課題に関す る調査を行った。調査は文献調査、アンケート、ヒアリング(国内、海外)という手段で実施 した。以下、全体の調査項目を示す。
文献調査では、2002年以降2004年7月までの学術論文と特許を、「マイクロ反応器」、「マ イクロ混合器」、「マイクロ装置」をキーワードとしてSciFinderを利用して検索し、得られた アブストラクトより更に精選されたものを抄録した。
アンケート調査は、マイクロ化学システム技術に関連した活動を行っている学協会及び学協 会内組織の協力を得て、重複も含めて300名弱の研究者や技術者に対してアンケートを送付し、
最終的に95の回答を得た。
国内ヒアリング調査は、2005年1月14日から27日までの2週間、アンケート調査及び文 献調査の結果から22の国内企業及び研究機関(大学、高専を含む)を厳選して訪問し、各分野 での関連項目について聞き取り調査を行った。
海外調査は、2005年1月4日から19日までの2週間、ヨーロッパ8ヶ所において、マイク ロ化学プラントに関する12の先端企業及び組織を訪問した。各組織においてマイクロ化学プラ ントの実用化へ向けての動きと問題点を調査した。
(2) 調査内容と研究課題
文献調査結果からは、ドイツにおいて 2000 年に標準化を目的とした産学横断的プラットフ ォームが設立され、その研究成果として単なる装置間接続規格統一に留まらず、マイクロプラ ントシステム全体を対象としたコンセプト(バックボーンシステム)の構築と、それに基づい たエレメント製作、ラボスケールでの実証に関する報告が見られた。海外ヒアリングにてこの ドイツにおける標準化のその後の進展状況を調査した結果、マイクロ化学システム技術に対す る積極的取組みは、先進のドイツのみならず全欧州に広がりを見せ、複数の大規模プロジェク トが並行して立ち上がりつつ状況にあることが明らかとなった。
マイクロ化学プロセスでは、装置の形状がその性能に大きく影響を与える。よって、マイク ロ化の特徴を最大限に生かそうとした場合、利用する装置は個別設計とならざるを得ない。一 方、対象とする製品毎に個別に装置を設計し製作していたのでは、装置が高価となりまた製作
に多大な時間を要することになる。よって、様々な要求に柔軟に対処できるという特長を有し つつ、できるだけ標準化した安価な装置を開発していく必要がある。リアクタ内部やチップの み交換できるベースフレームの共通化や、様々な要求にプレートの組み合わせで対応できる装 置の開発が必要である。
また、装置の標準化以前に、ユーザーとメーカーの間で装置要求仕様伝達のための共通の要 素が明確になっていないことが、装置の開発とその利用が進まない大きな要因となっているこ とが明らかとなった。よって、産官学の連携によるこの共通基盤の整備も重要な研究課題であ る。具体的には、装置に関する情報(耐圧性、混合効率、温度制御能力、流路形状、流路体積、
流路寸法精度、断面形状、エッジのR、流路面粗度など)と、生産しようとしている物質に関 する情報(生産量、平均滞留時間とその分布、反応速度定数、粘度、発熱量など)の関係を整 理し、デバイスのユーザーが何を指定すれば装置が製作できるのかを明らかにしていく必要が ある。
装置コネクタ類の標準化に対するニーズは高く、ドイツを中心に標準化が試行されているが、
コネクタ部の容積などの点から未だ確定した構造が提案されていない状況である。マイクロ化 学に関する研究を単品のデバイス利用の研究からトータルプラントを利用した研究の段階に進 めるためには、早急に開発を進める必要がある課題である。それにはまず、マイクロデバイス を利用する様々な系に対して、装置接合部に要求される仕様を明確にし、それらの仕様を満た すコネクタ構造を明らかにする必要がある。様々な反応系に対して検討する必要があり、かつ 競争的研究課題でないことから、関係各社が共同で進めるべき検討課題である。
3.1.2 装置製造技術の現状と要求仕様の調査研究
マイクロ化学プラントで要求されるデバイスを製作することは、近年の MEMS 技術の発達 により可能になってきていると考えてよい。ただし、マイクロ化学プラントでは様々な条件で 使用されるため、形状加工技術以外にも様々な加工技術が必要となる。この項目では、「長時間 連続でマイクロ化学プラントを運転する」ことを視野に入れた最近の研究成果について調査し た。調査方法は、文献調査・国内アンケート調査・国内ヒアリング調査・海外ヒアリング調査 から装置製造技術の現状と要求仕様の調査、更には技術上の問題点の抽出を行った。具体的に は、「マイクロポンプ」・「マイクロバルブ」・「コネクタ」・「マイクロ分離」に関するハード的な 技術についての文献調査を行い、そこから抽出した装置製作上の問題点を「形状加工技術」・「接 合技術(閉流路作成)と耐圧性」・「操作端(バルブ、ポンプ)組み込み技術」・「計測端同時作 成技術」としてまとめ、検討した。得られた研究課題を以下に示す。
マイクロ化学プラント技術の早期実用化に向けて、装置製造技術の観点から見た研究開発課
題をまとめる。
一つは、マイクロ化学プラントの検討実験をより広範囲の領域で容易に実施できるようなデ バイスの開発である。このようなデバイスを開発することにより、マイクロ化学プラント技術 の適用範囲を化学プロセス以外にも拡大できる可能性がある。これらの中では、ポンプ、バル ブ、コネクタ、その他のデバイスの使用温度、圧力、耐薬品性などの仕様を、広範囲でバリエ ーションがあるものにすることも含まれている。ポンプに関しては、特に無脈動性が要求され ている。コネクタの接続標準化もこのことからの要求である。
もう一つは、マイクロ化学プラント実用化に欠かせない、実生産時の早期生産安定に関する 課題である。製品を生産する場合、プラントを長時間連続で運転することが前提である。ポン プ・バルブ・コネクタ、その他のデバイスに対して、長時間運転時の動作安定性や堅牢性が要 求される。また、生産性アップのためナンバリングアップする場合には、ポンプ流量アップが 要求され、高圧力・大流量・無脈動の連続供給ポンプのニーズが必然的に高くなるであろう。
このような要求に耐えられるデバイス開発を進める必要がある。
なお、ポンプ・バルブ・コネクタ、その他のマイクロデバイスの要求仕様について、上記に 加えて、実用化という観点からコンパクトで安価なものにすることも重要である。
3.1.3 マイクロ化学プラントに適した反応系の提示・類型化
マイクロ化学プラントに適した反応系に関する情報を広く抽出し、整理・類型化を実施する ため、文献調査、アンケート調査、国内外ヒアリング調査を行った。
文献調査では、モデル反応としてエステル化、酸化、還元、C-C結合形成、選択エポキシ化、
アシル化、選択ハロゲン化、ラジカル重合、たんぱく質分解等の反応への適用例が見られた。
この他、主として 2001 年以前にマイクロシステムを用いて研究された有機合成反応(ジアゾ 化、ニトロ化、Wittig反応、アルドール反応、鈴木反応、フッ素化等)については、いくつか の総説に詳しく紹介されていた。
また、マイクロシステムと組み合わせる技術として、超臨界流体技術、マイクロ波照射技術、
イオン性流体技術等の研究が見られ、広く適用可能性が検討されている状況が判明した。実用 化を目指したプロセスとしては、自動車等の移動体に搭載される燃料電池に供給する水素製造 装置に関する研究が盛んに実施されている。更にポリマー微粒子、無機微粒子、金属コロイド、
マイクロカプセルの製造といった分野での研究例も見られた。
このように、マイクロシステムの適用性はモデル反応が中心ではあるものの、基礎化学反応 からファインケミカル反応、微粒子製造等に至るまで、幅広い分野でその適用性が検討されて いる。調査の情報を整理し、マイクロ化に適した反応系毎にそこで利用されているマイクロ化
学プラントの特徴・機能を、表1.3-1に整理した。
表1.3-1 マイクロ化学プロセスに適用されている反応系等の分類 マイクロ化学プロセスの特徴・機能
適用反応系等 温度精 密制御
迅速 混合
滞留時 間制御
接触時
間制御 高圧 移動体 オンデ マンド
効果 具体的な
適用事例
高発熱反応 高吸熱反応 (有機・無機)
◎ ○
・反応温度均 一化
・反応条件緩 和
・安全化
・選択性向上
・収率向上
・エポキシ化反応
・プロパンの酸化脱水 反応
・ハロゲン化反応
・グリニャール反応
・グリニャール交換反応
・水添反応
・ニトロ化反応
改質反応 ○ ○ ○ ○ ・移動体積載 ・MeOH 改質反応等
高速・高発熱
高分子反応 ◎ ○
・分子量制御
・分子量分布 狭化
・リビング重合
・ラジカル重合
微粒子生成 ◎
(核生成)
◎
(結晶成長)
・粒系制御
・粒径分布狭 化
・顔料製造
・セラミックパウダー製造
・ポリマー微粒子製造
エマルジョン生成 ◎ ○ ・ エ マ ル シ ゙ ョ ン 生
産性向上 ・スキンクリーム製造
生化学反応 ○ ・タンバク質分解反応
低収率・低選択率
反応 ○ ◎ ○
・収率向上
・超臨界条件 の利用
・セルロース関連反応
・εカプロラクタム生成
◎:特に利用されている機能、○:利用されている機能、アンダーライン:事業化事例
表1.3-1に示されるように、主としてマイクロ化学プロセスに求められる重要な機能は、
「温度精密制御」、「迅速混合」及び「滞留時間精密制御」の3点であり、これらはいずれも既 往の化学プロセスでは実現できないマイクロ化学システム固有の特徴である。これらの機能を 巧みに活用した具体的な反応の研究は、欧州をはじめ、日本、米国において盛んに研究され、
その報告数は着実に増加している。また、超臨界流体技術、マイクロ波等の外部刺激、及びイ オン性流体技術といった他の要素技術とマイクロ化学システムと組み合わせることによって、
収率や選択率を積極的に向上させる研究事例も増加しつつある。
しかし、今回の調査で判明した限りにおいては現在までに事業化に至った事例は微粒子製造
の2件、及びアンケート調査で既に生産プラントを稼動していると回答された1件の合計3件 に留まっている。マイクロ化学プラントに適した反応系とは、こうした優れた機能を活かすこ とで、従来のバッチプロセス等では得られなかったような付加価値が製品や生産プラントに付 与される反応系に絞られる。更にこれらの反応系が事業化に至るには、その製品の付加価値が 市場ニーズやコストにマッチする必要性も求められる。
現在行われている「マイクロ分析・生産システム」プロジェクトにおいて、今年度すでに3 つのパイロットスケールのプラントが稼動し、来年度にもいくつかの稼動が予定されている。
今後とも事業化へ向けた研究開発が加速されることは間違いない。しかし、マイクロ化学シス テム技術の発展と本技術の社会貢献を着実に推進するためには、これらの固有の特徴が活用で きる可能性のある反応系がより多く提案される必要がある。今回の調査では顕在化した反応系 の提示・類型化を実施したが、今後は潜在している反応系を掘り起こし、マイクロ化学システ ムに適した反応系シーズを類型化して提示していくことも必要ではないかと考える。
3.1.4 装置形状と機能についての調査研究
マイクロ化学プロセスにおいては、個々の反応や混合プロセスに応じて、最適な装置形状が 存在することが知られている。そこで‘装置の形状’を切り口に調査を行い、今後の技術開発 の方向性に関して考察した。具体的には、1) 閉塞防止機能を考慮した形状 2) 反応速度の精 密制御を考慮した形状 3) 迅速混合可能性を考慮した形状 4) 滞留時間の精密制御可能性を 考慮した形状 5) 接触時間の精密制御可能性を考慮した形状 に着目し調査を行った。
アンケート調査や国内ヒアリング調査では、多くの企業、研究機関が閉塞防止を今後の課題 と考えている結果が出ている。対応策として、閉塞が発生しても問題にならない様な設計等の 工夫、流路幅の拡大(マイクロリアクタ⇒ミリリアクタ)などが考えられている。また、閉塞 防止機能を考慮した形状としては、円筒状の多重層流を形成させ、界面で発生した反応生成物
(あるいは析出物)を流路に直接触れないようにすることで、閉塞防止を考慮した構造が報告 されている
装置形状と機能の発現に関する研究課題は、「最適な形状を設計する」と、「設計図通りに製 作する」という二つの課題に大別できる。
最適形状の設計においては、マイクロ空間内では、重力よりも界面張力が与える影響が大き い等、メートル空間では無視できた事象が無視できないことを考慮する必要がある。マイクロ 空間ではメートル空間で発展してきた設計通則(公式や規格)をそのまま適用することは困難 であり、設計のパラダイム変革が必要である。
このパラダイム変革を実現するためには、マイクロ空間内で起こっている物質の挙動を観察
する技術を確立し、その挙動の解析すること、更にそれらから科学的に説明できる設計理論を 構築することが重要である。マイクロ空間での挙動を説明できる理論が構築できれば、シミュ レーションの信頼性も向上し、形状最適化のより一層の進歩が期待できる。
形状の最適化を図るためには、実験による検証と、その結果の設計へのフィードバックのプ ロセスを繰り返し実行し、リファインを重ねることが必須である。従って、製作技術の重要な ポイントは、最適設計された形状を正確に加工することと共に、所望の材料に、迅速・安価に 微細流路等を加工する技術であると考えられる。
3.1.5 長期連続運転時の問題点の抽出と対策の調査研究
マイクロ化学プラントを長期連続運転するためには、実験室と異なった様々な問題が生じる と予想される。問題点を予め列挙し、その対策を検討しておくことで、実用化にスムーズに移 行できる。そこで、(1) 計測技術、(2) 制御技術、(3) 保全技術(閉塞)、(4) 保全技 術(腐食)、(5) 保全技術(その他)、(6) スタートアップ、シャットダウン時の問題点、の 各項目について、それぞれ調査を行い、研究開発課題を抽出した。以下、調査から得られた今 後の研究課題を示す。
(1) 計測技術
市販のマクロ用センサではデッドボリュームが大きく、マイクロ化学プラントの内部状況を 測定する目的に使用するには形状が大きすぎる。よって、マイクロ化学プラントに使用できる 小型・安価なセンサが要求されている。また、センサに関しては研究レベルであり、長期連続 運転を視野に入れた実生産用の開発・検証が行われていない。各業種の協調した開発により、
流体の状態変化の計測方法の開発、実装方法の開発、長期連続運転を考慮した材質選択と性能 保証、計測システムの構築が必要である。
長期連続運転には、運転制御を目的として、マイクロ流路内の温度計測技術、流量計測技術、
圧力計測技術が必要とされる。安全確保を目的として、気泡や閉塞の検出などの異常検出技術 も必要となる。研究・評価用として、上記に加え、流路内の温度分布及び速度分布、水素イオ ン濃度(pH)などの濃度の測定の要求もある。また、マイクロ化学の特長を生かす速い反応、
爆発性の反応の制御には、応答の速いセンサが必要となる。
センサシステムの構築も課題である。マイクロ化学プラントの場合には、ナンバリングアッ プにより信号数が増大する問題を内包している。チップに集積化した場合には、センサからの 電気信号をチップから取り出すコネクタについても考慮が必要となる。むやみにセンサをつけ るのではなく、ナンバリングアップを考慮に入れ、連続運転に必要な必要最小限のセンサを効 率的に設置すべきである。ナンバリングアップ時の計測制御用の電気配線を容易に構築するた
めの無線システムの導入、ブロック単位の計測制御が期待される。
マイクロ化学プラントを運転するにあたり、閉塞の有無や場所、程度の検出、閉塞につなが る気泡の検出など異常を検出する技術が必要とされる。検出した異常情報により装置の運転停 止などの制御を行う。現状では、流路に設置された電極により気泡を検出する方法、圧力セン サにより閉塞を検出する方法が提案されている。実プラントの保全目的に使える異常検出技術、
異常検出システムの開発が望まれる。保全目的としては、異常検出技術とともに、温度、流量、
圧力等の状態監視が必要となる。
(2) 制御技術
流量制御に関しては、分岐した流路や、ナンバリングアップ時の様に、複数の流路における 流量を一定に制御する手法の確立が必要であり、特に流路設計技術だけでそれを制御すること を可能とすることがもっとも望ましい。更に、ナンバリングアップに対応するために、小型で 安価な装置開発が望まれる。
温度制御に関する開発課題としては、温度をとにかく精密に制御することが要求されている。
具体的には、リアクタに極めて近接した小型精密な過熱/冷却部品、同じくセンサ、特に非接触 型温度センサの活用、更にヒーターとセンサのフィードバック制御、等があげられる。
圧力制御装置については、温度や流量の制御と比較すると優先順位は落ちる傾向にあるが、
超臨界流体や気体の処理のリアクタの実用化が増えるに従い需要増加すると考えられる。今後 の開発課題としては、高い応答性と密閉性を有するバルブについて良い提案がなく、その開発 が課題であると考えられる。更に耐圧性、耐溶剤性の高いものについても必要である。
トータルの制御システムに関する課題としては、まずマイクロリアクタの制御システムが従 来スケールのリアクタ装置と同じもので十分なのか、それともマイクロ特有のものが必要にな るのかを明確化する必要がある。次に、非常に早い反応系に適用するために、センサ、制御装 置(A/D,CPU,D/A)、調整手段(バルブなど)における高速応答性及び高精度化が要求される。
特にセンサと調整手段にそれが要求されるが、現在保有の技術で十分なのかを明確化し、必要 に応じて開発する必要がある。更には、各装置の無線化、非接触化、ブロック化がシステム構 築上望ましいと考えられる。
(3) 保全技術(閉塞)
閉塞を回避するために必要であると考えられる研究開発課題を整理すると、先ずは閉塞を検 知する仕組みの考案、そして検知した後の対処方法、もしくは流路が閉塞しないマイクロ流路 内表面の工夫などがあげられる。マイクロ流路の閉塞を検知する方法として先ず思いつくのは 圧力によるセンシングである。特に単一流路のマイクロデバイスでは閉塞は即座に連続運転の 停止に直結するため、圧力センサに要求されるのは急速な変化にも対応できる応答性と感度の
向上、更に流路内の流れを極力乱さない設置方法とセンサの小型化や簡易化など、そして耐酸 や耐溶剤性、耐熱性などが必要とされる。また、複数の流路を持つマイクロデバイスではどこ の部分の流路が閉塞気味か、どの流路が既に閉塞しているかなどを検知できれば詰まりの進行 度合いを定量的に把握できるため安定運転にはとても有効である。その他、閉塞により流量が 変動する場合などには流量計も有効であるが、流量計も圧力センサと同様、急速な変化にも対 応できる応答性と感度の向上、更に流路の流れを極力乱さない様な設置方法と流量計の小型化 や簡易化、耐酸や耐溶剤性、耐熱性などが要求される。
(4) 保全技術(腐食)
マイクロ化学プラントで対象となる反応は多岐にわたるため、腐食の問題を画一的に論じる ことはできない。したがって、他の調査研究課題と同様に、防食技術に関してはかなりのバラ エティーを予め準備し、個々に応じた提案ができる体制作りが必要である。
腐食防止策として、流路の表面処理、表面改質、薄膜コ-ティングなどが考えられる。従来の プラントでは寸法が大きすぎるため適用できなかったこれらの手法も、対象が実験装置なみと なるため、市販の装置で処理できる可能性がある。ただし、これらの技術は化学分野との馴染 みは薄く、過去に実績がないため、普及させるには信頼性が保証できる表面技術にまで育て上 げることが必要である。共通の課題であるため各機関が協力して検討を進めるのが効率的であ る。更に、触媒担持などの機能も付与し、バルクに対して表面が大きいというマイクロの特性 を積極的に利用したデバイスの開発が望まれる。
(5) 保全技術(その他)
マイクロ化学プラントにおける閉塞・腐食以外の長期連続運転の保全技術については、日本 国内ではパイロットプラントが立ち上がっておらず、明確な課題、問題点が見えていない状況 である。ドイツにおいては、数例のパイロットプラントが作られているが、長期連続運転上の 問題点は公表されていない。マイクロ化学プロセス技術研究組合(MCPT)の現プロジェクトに おいて、今後 1年のうちに 10 例程度のパイロットプラントが作られる予定であり、この試み の中で、保全技術の知見が蓄積されていくであろう。しかし、保全技術は、数例のパイロット プラントを作ればよいのではなく、多種のパイロットプラントそして実プラントを作り、継続 して問題点を抽出し、解決策を見出す必要がある。
保全の問題点としては、メンテナンス(洗浄)方法、爆発等の安全性の確保、停電対策、漏 れ対策が挙げられている。触媒再生の方法、表面状態の変化も連続運転をする上で考慮の必要 がある。
(6) スタートアップ、シャットダウン時の問題点
日本国内では、スタートアップ、シャットダウン時の運転について明確な課題、問題点が見
えていない状況である。実験段階の設備では、実プラントでは使えない周辺装置が使われてお り、長期連続運転を視野に入れた検証が行われていない。マイクロ化学プロセス技術研究組合 (MCPT)の現プロジェクトで作る予定であるパイロットプラントにおいて知見が得られるであ ろうが、継続して試験を行い、検討を進めていく必要がある。
マイクロ化学プラントは、ボリュームが少なく、温度制御が容易なため、スタートアップ、
シャットダウン時の無駄が少なくなる点が特長とも言われているが、スタートアップ時の安定 性、シャットダウン時の微粒子の付着の問題が指摘されている。連続運転期間をできるだけ長 くし、スタートアップ、シャットダウン回数を減らす努力も必要である。
3.2 マイクロチップ技術実用化に向けての調査研究
3.2.1 マイクロデバイスの標準化に関する現状と要求仕様の調査研究
(1) 送液ポンプ、バルブ、ミキサー、流路コネクタなどの流体デバイス
マイクロ送液ポンプは可動部の有無により、機械式と非機械式に分類することができる[1]。
前者の機械式には、ダイヤフラム型、超音波型、回転型などがあり、アクチュエータの機械的 仕事を流体に伝える方式である。中でもダイヤフラム型が最も多く実用段階に達している。後 者の非機械式には、電気浸透流型、電磁流体力型、相変化型、表面張力型などがある。非機械 式の最大の利点は構造が単純なところであるが、流路を閉じる機構がないため逆流を防ぐこと ができなく、電界や熱を与えるため応用範囲が限定される。最近、非機械式の表面張力型の中 で、固体表面に電位差を加えることで見かけのぬれ性を変化させるエレクトロウェッティング
(electrowetting)を利用する興味深い方法も提案されている。
マイクロバルブを構造の観点から分類すると、ダイヤフラム構造と梁構造になる。一方、駆 動方式で分類すると、電磁力、圧電駆動力、静電気力、熱駆動力になる。また、構造と駆動方 式とともに重要な要素である材質としては、単結晶シリコンと、シリコーンゴムや感光性樹脂 などの樹脂材に分類できる。また扱う作動流体としては気体が多かったが、最近では作動流体 としては各種の実用化のニーズに対応するため気体から生体高分子などを含んだ液体に移行し てきている。
マイクロミキサーを流れの挙動の観点から分類すると2種類になる。1つは層流を維持してミ キシングする方法、もう1つは流れを乱してミキシングする方法になる。前者の層流を維持して ミキシングする方法では、流路幅よりも流路深さの寸法を大きくする事で2液の界面の面積をな るべく大きくし、両層の厚さを薄くすることが効果的である。また、マイクロチャネルの構造 を工夫して2液の入口を複数に分割して交互に流す多層流にすることも効果的である。後者の流 れを乱してミキシングする方法では、アレイ化したマイクロノズルを用いて液体を他の液体に
噴出させて界面を乱す方法が提案されている。また、超音波を応用した微量液の非接ミキシン グ方法も開発されている。一方、最大6種類の液体を任意の比率で混合するマイクロミキサーも 開発されている。このマイクロミキサーは、50mm×80mmという名刺サイズの外形寸法で、
従来の数百倍に相当する毎分数十ミリリッター以上の液体を処理することができ、化学薬品の 高精度の調整や店頭での飲料の味・香りのブレンドへの応用が期待されている。
マイクロ流路コネクタは、接続方法という観点から2つに分類できる。1つは独立して存在す るマイクロ流路基板同士をチューブにより接続する方法である。もう1つはマイクロ流路基板を 縦に積み上げて流路コネクタにより接続する方法である。前者のチューブにより接続する方法 では、チューブとしてシリコーンゴムなどの柔らかい材質を用いるケースがほとんどであり、
コネクタを基板と接続する方法として接着剤を用いるのが一般的である。後者の流路コネクタ により接続する方法では、基板同士を小型のOリングで接続するのが一般的である。最近では 基板の間に穴のあいたシリコーンゴムのシートを用いた方法が有効であるという報告がある。
上述した送液ポンプ、バルブ、ミキサー、及び流路コネクタ等のマイクロデバイスの標準化 に向けての要求仕様は、小型化、高精度化、取扱いの容易さ、低コスト化、及び汎用的な耐腐 食性などがある。
(2) 圧力センサ、流量センサ、熱センサなどの流体センシング用デバイス
圧力センサについては、マイクロ化学用の圧力センサ及び圧力計測は、マイクロチップ材質 によって違いが見られる。ガラス材質のみのマイクロチップに使用できる圧力センサの研究は、
マイクロ化学プロセス技術研究組合の研究テーマ以外に確認されていない。既存のセンサを使 用して圧力計測した研究はあったが、圧力計測専用のバイパスを作ってマイクロチップの外で 計測しているため、デッドボリュームが大きいこと、圧力計測の信頼性、流体の流れへの影響 など問題が多い。シリコンを含むマイクロチップ材質の場合は、マイクロチップ内に作りこむ タイプの圧力センサの研究がされている。マイクロチップの片方の基板自体(シリコン基板)
に圧力計測用のゲージを形成し、もう1枚の基板を貼り付けたものが研究されている。もう 1 枚の基板には、ガラスやPDMS(Poly dimethyl siloxane)などが使われている。この場合、
シリコンを使っているため、アルカリ性溶液や酸性溶液などについては、耐食性の観点から使 用が困難である。また、マイクロチップと一緒に作り込むため、測定箇所について自由度がな いことや、マイクロチップパターンを変える場合でも圧力センサもパターンを変える必要があ り、汎用性に問題がある。また、破壊耐圧性能にも問題があるものと思われる。
流量センサには、レーザードップラー流速計、熱式の流速計、渦流量計、側管を用いるもの や、羽根の回転を見るなど機械的なもの等々、多くの種類がある。マイクロチャネル内の流体 は非常に微小な測定対象であるので、流れを乱さずに流速を測定できる方式は限られてくる。
レーザードップラー方式では、何らかの散乱体をマイクロ流れの中に添加することが系を 乱すことになり、また渦流量計や機械式の方法も不適当である。キャピラリー内の流量を 測定する方法として、熱式のものがいくつか存在する。SENSIRION社の液体マスフロー センサや、名古屋工大津田研究室の成果を元にしたピコデバイスのピコフローモニターな どがその例であり、性能的には微小流量の測定に十分適応可能であるが、ガラス製マイク ロチップの内部の測定に直接適用することはできない。これらと同様のセンサを埋め込ん だマイクロチップを作製することも可能であるが、そうするとマイクロチップと共にセン サを使い捨てにしなければならなくなる。これらのセンサは安価ではないので、使い捨て にすることはあまり望ましくない。フローイング熱レンズマイクロ流量センサは、外部か らの光照射で非接触式に測定が可能であるという点が特徴である。非接触式であるため、
マイクロチャネルにアライメントする方法、振動等によるアライメントのずれ、などが解 決すべき課題である。
熱センサでは、熱電対、測温抵抗体、放射温度計などがあるが、放射温度計ではガラス マイクロチップ内部にあるチャネルの温度を測定するのは難しい。熱電対などのセンサを チャネルに近接させて測定する方法をとることになるが、センサ自体の熱容量が大きいと チャネルに対する影響が大きく、レスポンスも悪いので、できるだけ小型なセンサを利用 することになる。市販されている超小型熱電対を導入する方法、薄膜で製作した金属パタ ーンを抵抗体としてチャネルに接近させる方法などは有効であり、研究レベルではそのよ うな微小センサがマイクロシステムの温度計測に使用されている。しかし、これらの小型 センサでは、マイクロチャネル内の温度分布を測定することができない。マイクロチャネ ル内の溶液に蛍光試薬を混入しなければならないというデメリットはあるものの、蛍光ク エンチングの温度依存性を利用して温度分布を測定することができる。この方法は、用い る蛍光物質によって測定可能温度領域が変わる。現時点で60度程度までの温度計測に成功 している。マイクロチャネル内温度測定の標準化・規格化ということに関しては、特に意 味のある動きはみられない。
(3) 熱レンズ顕微鏡、ウェーブガイドセンサ、粒子カウンタなどの検出デバイス
マイクロチップの利点は、試料量の大幅な低減や化学処理時間の短縮及び流路デザインによ り複雑な反応を制御できることなどがあげられる。しかし、マイクロ化学チップの多くの利点 に対して、検出という観点から見ると、試料量が少ないということは大きなデメリットである。
したがって汎用的で超高感度な検出法は、マイクロ化学チップ実用化のためのキーポイントと なる。汎用性、応用性、感度の点から熱レンズ顕微鏡法をマイクロ化学チップの検出法へと応 用の研究が進められている。また、エヴァネッセント波を利用したウェーブガイドセンサや
SPR法、コールター原理を利用した粒子カウント検出法もマイクロ化学チップの検出手法とし て開発が進められている。
1) 熱レンズ顕微鏡法
顕微鏡といえば通常微小物体の形状を観測する手法であるが、エックス線領域から赤外領域 までの幅広い領域の分光法と組み合わせることによって、濃度や組成、状態などの物質情報や 化学情報などを得ることができるようになる。特に最近では、単一細胞などの生体試料を
in-situ、in-vivo測定できる光学領域の顕微鏡に対するニーズが高まっており、単一分子レベル
の感度と汎用性が求められている。これまで、感度の点から、レーザー誘起蛍光法を応用した 共焦点蛍光顕微鏡や近接場蛍光顕微鏡が主に用いられており、実際に単一分子測定が多数報告 されている。しかし、蛍光法は原理的に測定対象が蛍光物質に限定されるために、汎用性とい う点が欠落している。これらの背景のもとに、東京大学 北森教授らは非蛍光性物質を単一分 子レベルの感度で測定できる熱レンズ顕微鏡を独自に開発してきた。熱レンズ分光法自体は40 年ほど前から知られている古い原理であるが、顕微鏡との組み合わせを実現できたのは北森教 授らが最初であり、これは熱レンズ分光法に適した光学的な工夫に起因している。現在では、
熱レンズ顕微鏡はマイクロ化学チップ等の微小空間の高感度かつ汎用測定ツールとして広く認 知されてきている。
① 熱レンズ分光分析法の原理
まず、一般的な熱レンズ分光法について説明する。通常、熱レンズ法には測定対象の吸収波 長にあわせた波長の励起光と、吸収を持たないプローブ光の2本のレーザー光を用いる。測定 対象に吸収された励起光のエネルギーが無輻射緩和を経て熱として放出されると、レーザーの 強度分布(通常ガウス分布)及び熱拡散により焦点付近に光軸に垂直な温度勾配が生成する。
温度変化が微小である場合、温度変化ΔT は屈折率変化Δnと比例の関係にある。このため、
Δnが中心部で最も大きく、光軸から離れるほどΔnが小さくなる屈折率分布を生じる。この 屈折率分布が擬似的な光学レンズ(熱レンズ)として作用する。これを熱レンズ効果と呼ぶ。
一般的に熱レンズのレンズとしての度は、定常状態では1/f=Pαℓ(dn/dt)/πJκω2のように表 される。ここで、fは熱レンズの焦点距離、J はジュールの係数、κは媒質の熱伝導率、ωは 励起光のスポット半径、P は励起光のパワー、αは吸収係数(試料の濃度に比例)、ℓは光路長
(通常セルの深さに相当)、dn/dTは屈折率の温度係数である。この熱レンズ効果により励起光 自身も光路が変化するので、この変化を試料の後に設置したピンホールにより検出することが 可能である(一光束法)。しかし、この場合原理的に高バックグラウンド測定となり、また試料 や容器壁面による励起光の散乱など測定の外乱が混入しやすいので、一般的には試料に吸収の ない波長のプローブ光を同軸に導入して、これにより熱レンズ効果を検出する(二光束法)。こ
の場合、プローブ光の光量変化は、熱レンズの度すなわち試料の濃度に比例するために、この 光量変化から定量分析が可能となる。前述の式からわかるように、熱レンズ分光法の感度は、
光学的には励起光のパワーPを上げて強く絞る(ωを小さくする)ほど向上することがわかる。
また、試料の吸収係数α、媒質の屈折率の温度係数dn/dTと熱伝導率κの比(媒質に由来する 増強因子)が大きいほど感度が向上する。
以上述べた一般的な熱レンズ分光法は、約40年前から知られている古い原理であり、特にレー ザーが開発された 1970 年代から積極的に用いられ、同様に光吸収を利用する吸光光度法と比 べて2桁から3桁も高感度であることが実証されてきた。しかし、顕微鏡下についてはこれま で実現しなかった。北森教授らは、色収差の補正等の光学系を改善し、マイクロ化学チップ用 の熱レンズ顕微鏡を初めて実現した。
② 熱レンズ分光検出デバイスの開発状況
基本的に、励起光とプローブ光を同軸に対物レンズに導いて、試料に集光照射すればよい。試 料を透過した光は対物レンズによって再び平行光にされた後、励起光はフィルタによってカッ トされ、プローブ光のみがピンホールを通った後にフォトダイオードにより検出される。ノイ ズを低減するために、励起光は光チョッパーによりある周波数(1kHz程度)で強度変調され、
プローブ光の出力成分の中から変調周波数と同期する成分のみがロックインアンプで検出され る。焦点差の調整のために、プローブ光の出射直後にビームエキスパンダを改良した発散角調 整ユニットが配置されている。これにより最適な焦点差を実現している。
このように初期の熱レンズ顕微鏡は、大型のレーザーを用い、光学部品を防振台の上にばら ばらに組み上げていたために、必然的に光路長が1~2mと長くなっていた。そのために、微妙 な光軸調整が要求され、実用という点からは程遠い装置構成であった。北森教授らは、これら の問題を解決するために、小型のレーザーを用い、光源から検出器までを顕微鏡に一体化した デスクトップサイズの熱レンズ顕微鏡を開発した。励起光には半導体励起の固体レーザー(代 表的な波長 532nm)、プローブ光には半導体レーザー(波長 670nm)を用いた。調整箇所は、
焦点差調整用のレンズ対とダイクロイックミラー、コンデンサレンズの3つだけで、従来と比 べて操作性が大幅に向上した。また、本装置は小型でありながら従来と同等の感度を有する上 に、一体化したことで振動などの外乱に対する耐性が大幅に向上した。なお、本装置は大学発 ベンチャーであるマイクロ化学技研株式会社より市販されるに至っている。
日本板硝子株式会社では、デスクトップサイズからポータブルサイズへの開発を進められて いる。ポータブルサイズ化にあたっては、従来の空間光学系からファイバー光学系とすること で大幅な小型化を実現されている。また、熱レンズ光学系に必要となる①励起光とプローブ光 の同軸調整、②励起光とプローブ光の焦点差の調整については、すべて光ファイバーと
SELFOC®マイクロレンズ(日本板硝子株式会社製)により実現されている。SELFOC®マイク ロレンズとは中心軸からの距離により連続的に屈折率を変化させた円筒形状のレンズであり、
光多重通信で頻繁に用いられている。まず、①の同軸調整については、励起光を反射しプロー ブ光を透過する誘電体多層膜を2つのSELFOC®マイクロレンズ(直径:1.8mm、長さ:4mm)
で挟んだ構造の合波器により、自動的に実現できている。また、②の焦点差の調整については、
SELFOC®マイクロレンズの直径や長さ、材質を変えることで最適な焦点差とした。本装置の
場合、励起光に658nm、プローブ光に785nm(ともに半導体レーザー: LD)、集光用のSELFOC® マイクロレンズには直径1mm、長さ2.3mmを用いたので、焦点差は40μm(設計値)となる。
更に、検出光学系をシンプルな構成として小型化し、信号処理に必要となるロックインアンプ の機能を限定してボード化することで、全体としてW×D×H:220mm×230mm×250mmの 実用的な装置が開発されている。
2) ウェーブガイドセンサ
フォトリソグラフィ技術を利用して、光学ガラス基板上に光導波路パターンを形成した導波 路型センサは、センサが一枚のガラス板のみで構成されることから構造が単純で安定動作が可 能なセンサである。マイクロチップ技術の領域においても、複数の機関が導波路センサを持ち 込んで研究開発に取り組んでいる。しかし多くの報告は、検出のための光を引き回すためのツ ールとして利用しているだけで、検出原理が吸光度測定であるアプリケーションにとどまって いる。光路長と感度に密接な関係を持つ吸光度を採用することで、光路長を稼ぐことが困難な マイクロチップ技術との親和性には疑問がある。
一方で検出にエヴァネッセント波を利用することにより、検出エリアをセンサ表面から
100nm程度の領域に限定することにより、測定感度を試料容量と独立化させ、微量な試料を扱
う技術であるマイクロチップ技術との親和性を確保したセンサの報告もされている。これらの 多くは、SPR現象を利用した応用であり、検出感度はあるものの定量性を持たせることが困難 である。
導波路パターンでマッハ・ツェンダー型の干渉計を形成し、検出原理にエヴァネッセント波 を利用したウェーブガイドセンサは、導波路型センサと、エヴァネッセント利用の長所を併せ 持つセンサである。また、干渉計を利用することで、検出の定量性も確保することが可能であ り、マイクロチップ技術との親和性が極めて高いと考えられる。
現在、このウェーブガイドセンサを用いたマイクロチップとして、環境免疫分析が可能なチ ップを京都電子(株)が開発している。具体的な測定対象物をダイオキシンに定めて取り組ん でいる。ダイオキシン誘導体で 1×10-9g/mL オーダの検出感度があることを実証した。また、
引き続き、ダイオキシンの純物質検出に取り組んでいる。導波路型センサの特徴として、半導
体と同様に、用意に集積化が可能であることが指摘できる。ひとつのチップに多数のセンサを 集積化することで、マイクロチップの得意分野である多項目・迅速測定に適合したセンサとな る。現在、マルチ化したセンサの基本動作特性を評価し、実用的な性能が確保できていること を確認されている。今後は、マルチ化センサを免疫センサとして機能できる形へと開発が期待 される。
3) 粒子カウンタ
大気中に浮遊している粒子状物質は単に視界を悪くするだけでなく、生態系や人体への影響 も大きいと考えられる。特に粒子径が1μm以下の粒子は呼吸器官疾患やアレルギー、発ガン 性に多大な影響があるのではないか考えられている。この微粒子を簡易的に即時測定可能な小 型装置の開発のため、コールター方式を用いた微小粒子計測マイクロチップの開発が堀場製作 所(株)で行われている。
チップはSiとガラスの2層構造で、Siに流路、ガラスに電極が形成されている。サイズは
7mm×8mm×0.7mmである。
ポリスチレン(PS)粒子を電解質溶液(NaCl:0.9%)に分散させたサンプルを流速100μl/min で送液し、このときの電極間の出力変化を測定する。測定は出力の直流成分をカット後、増幅 を行いオシロスコープによって観測を行われている。
アパーチャー径29μmでは測定限界 φ1μmで、出力パルスのばらつきはCV(Coefficient of
Variation:変動係数):18%であった。アパーチャー径を49μmから29μmにすることにより
感度は約 2.5倍増加している。理論上、アパーチャー断面積に感度が逆比例することから考え て、計算値2.8 倍に対して相応の感度増が見込めることが確認できた。このことからアパーチ ャー断面積を更に微小化にすることでナノオーダーの微粒子が計測可能と思われる。
微小粒子測定用のカウンティングチップを作製した。アパーチャー径29μmの粒計測チップ を用いたとき、検出限界はφ1μm(PS粒子)であり、CV値は18%であった。今後更にアパ ーチャー径を微小化することでナノ領域の微粒子の計測が可能と思われる。
4) 標準化に向けた要求仕様
検出デバイス側からみたマイクロ化学チップ技術における標準化は、信号処理系の使用のイ ンターフェイス、使用電圧、等やマイクロ化学チップのサイズ、送液系のチューブ、コネクタ ー、バルブ、等があげられるが、現時点では明確な標準化に向けた要求仕様は存在しておらず、
今後マイクロ化学チップが新しい産業への成長する過程において合理的に決定されるべきと考 えられる。
(4) MSやNMRなどの既存の大型分析装置とのI/Fデバイス
質量分析計(Mass Spectrometer)や核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance)などの大
型分析装置とマイクロチップとのインターフェイスを実現することで、チップ上で展開される 様々なアプリケーションに対するオンライン分析が可能となり、従来のオンチップ検出法と比 べて、定性解析能力の飛躍的向上が期待されている。
(5) マイクロ化学チップの形状
マイクロ化学チップの形状としては、四角、丸といった、外観形状だけではなく、流路配置、
アクセス孔に関するもの(配置、位置、サイズなど)、チップの厚さ、などについても考慮しな ければ、測定装置、液送りシステム等とのインターフェイスを構築する上で不具合が発生する ことになる。
1) 外観形状
外観形状については大きく、角型、丸型(CD型)、その他(多角形)に分類して考えること ができよう。
CD型のデバイスについては、実際の CD のサイズ、もしくは半導体プロセスで一般に用い られるインチサイズが用いられることが多いと思われる。これは主に製造プロセス(装置)に よるものと考えられる。しかし角型、その他のものについては流路の都合のみでサイズが決ま る傾向が高く、統一的な規格は存在しない状況にある。その中で、マイクロ化学技研(株)が 自社製のガラスチップで統一サイズを使用し、それに応じたチップ用ホルダー、アクセス孔に 合わせたコネクタ類を一貫して製作、販売しているのは特筆に値すると言える。
2) 流路の配置
流路の配置については、角型では縁に平行の方向が主であり、自然な形態と思われるが、Y 字流路などが含まれる場合は必ずしも縁に平行にはならない。実際の使用上で流路配置が問題 になるのは、観測、検出を行う場合が主と思われるため、流路の方向よりは、観測・検出ポイ ント間の距離・配置形状、デバイス上の位置(周辺機器類が邪魔にならないよう)等が問題に なると考えられる。また、製造を考えた場合は、流路間の最小距離等の製造上発生する制限な どを考慮したデザインルールについても確立させていくことが必要となる。
CD 型のチップについては、中心から放射状に流路が形成されるものと、丸に関係無く角型 と同様に複数流路が平行に流れる形状の物が有る。これは製造を半導体プロセスを流用したこ とでSiウェハーの形状をそのままなぞったことによると思われる。また、放射状に流路が形成 されるのは、遠心力を液送りの動力源とするためである場合もあるが、それぞれの流路間での
Inlet~Outlet までの距離を同じにすることを目的とした場合には無駄な面積が発生せず好ま
しい形態である。
その他の形状としては、Electrospray Ionization MASSといった従来の検出系とのI/Fチッ プなどでは多角形のものも見られる。これらについては、現実の検出系に合わせることが必要
なため、従来機器側の規格に配慮した形態を考える必要があろう。
3) アクセス孔の配置
チップと外部との間で液体類をやり取りするアクセス孔の配置は、CD 型では周辺に沿って 円状に並べる配置のものも有るが、円弧状とは言え外縁とは無関係に配置されるものも見られ る。更にこれらを混在したものも見られる。
角型のチップの場合も周辺に沿ってアクセス孔を配置することが多いようであるが、間隔、
外縁からの距離などは特に統一はされていない。なおアクセス孔の径について特に記載のある 文献はあまり無いが、コネクタ類などが規格化されるにつれおのずと統一されていくと考えら れる。
4) チップの厚さ
チップの厚さについては、基材となるガラス、プラスチックの一枚当たりの厚さが基本パラ メータとなるが、これについても文献で触れられることは多くない。熱レンズのように照射さ れるレーザを絞るような検出系の場合、基材の厚さに制限が発生することが有り得る。また、
流路となる溝が刻まれる基材の厚さとカバーシートとの厚さについてもそれぞれ基準となる数 値を決める必要がある。なお、必要な強度を保てるのであれば薄いものの方が保管する上では 好ましいと言える。
5) チップの構成
チップの構成としては、流路となる溝を刻んだ平板に溝を刻んでいないカバーシート用の平 板を貼り合わせるのが最も簡便で一般的なものであるが、溝を刻んだ複数の平板を貼りあわせ 積層構造を形成するものも見られる。また、それぞれ表面に溝を刻んだ2枚の板を溝のある面 同士で貼りあわせ流路断面形状に工夫を加えるものも有る。これらは当然複数枚の平板を積み 重ねるため全体の厚みが増す。更に流体ハンドリングの単位要素毎にデバイスを形成し、それ を積み重ねることで一連のプロセスを実現する生化学IC(Biochemical IC)の開発報告も見ら れる。この場合、各要素デバイス間でのインターフェイス等を合わせることが必須であり、マ イクロ化学チップの領域として規格化を目指した研究例と言えるが普及には至っていないのが 現状である。
(6) 上記以外に分析・化学合成システムを構築するのに必要なデバイス
以上2.1.1から2.1.5で述べられたものが、マイクロ化学チップシステムを構築す る上で基本となる部分であるが、特に医療用など個別用途を考えた際には更に必要とされる要 素技術(パーツ)が存在する。全てをここで詳述することは困難であるので、内容を絞り紹介 すると共に、今後の方向性について考察する。