Mechanical Engineering Art 2007 展
―機械研究におけるアート―
1. はじめに
機械工学とアートは,対極に位置し ていると多くの人が考えるかもしれな い.工学が人類の生活と安全を支える 学問であるのに対して,アートはさま ざまな材料と方法を用いて,主に視覚 的な美を実現する創造的活動とされて いる. しかしその幅は広く,現代アートの 美術展に足を運ぶと「どうしてこれが アートなの ?」としばしば思う.同時 に長年に固化された常識から解放され ると,「これがアートなら機械工学の 研究プロセスのなかにもアートと呼べ る美しさがある」と気付かされる.
2. 北海道支部フォーラム
(社)日本機械学会北海道支部では,支部フォーラム企画として,また創立 110 周年支部行事の一環として 2007 年 に「Mechanical Engineering Art 2007 展―機械研究におけるアート」,
略して mea2007 を実施した(図 1).
その視点は,固いイメージを持たれが ちな機械工学の研究において,大学生 から小中高生や一般の方までを対象と して,工学研究の多面的な魅力を視覚 的に PR することにある.
具体的には,機械工学の研究過程で 得られるイメージのうち,アート性を 感じさせる写真を展示して,工学研究 には美的な魅力もあることをアピール した.企画段階では,北海道内の日本 機械学会会員に展示の目的を説明し て,mea2007 への応募の依頼をした.
全国に例のない〈機械工学とアートの 組み合わせ〉の企画にもかかわらず,
道内の機械系 4 大学から応募をいただ いた.それらのさまざまな分野の研究
(実験,理論,計算)から得られるイメー ジのうち,アート性を感じさせる作品 20 点を選考して,A2 版パネルにて魅 力ある解説とともに展示した.図 2~
図 5 は,その一例である.
本展の開催は,初回は札幌雪祭りに あわせて 2007 年 2 月 6 日~ 9 日に,
同大通り会場に隣接する札幌市民会館 アートギャラリーにおいて行った(図 6).夜の九時まで開いて,雪祭りの見 物客にも立ち寄ってもらった.その後 は,北海道大学工学部ロビー,北海道 支部総会会場,室蘭工業大学,北海道 工業大学などを会場に 2007 年夏まで 随時開催された.
さらに,この展示をベースに,北海 道新聞(発行部数 120 万部)(1)の全道 版に,2007 年 4 月から月一度のペー スにて「工学 de あ~と」の連載を行い,
11 月までに計 8 回の掲載を行った(図
7).プロの記者の修正によるわかりや すい解説もあり,反響を呼んだ.
3. おわりに
アート(art)にはもともと技術の 意味があり,芸術は人を精神的に満た すことから,生活を豊かにするため存 在する工学との間に垣根は少ないのか もしれない.「『決まりごと』や『もう 知っていること』に縛られないで,
ちょっと心を自由にして,アートを見 てください」(2)という解説は,まさし
く優れた研究者が研究に向かうときの 態度と同じである.この mea 企画は いったん終了したが,機械工学の社会 への啓蒙と理解促進にこの観点からの アプローチも有効ではと考えている.
(原稿受付 2007 年 12 月 17 日)
〔成田吉弘 北海道大学〕
●文 献
( 1 )http://www5.hokkaido-np.co.jp/hanbai/
( 2 )国立新美術館,Door to Contemporary Art,
国立新美術館ガイドブック,1(2007),
17.
図 1 mea2007 のポスター
図 4 アルミ合金壊食現象・鉛筆 のしんに力士二人分の力
(提供:風間俊治(室蘭工業大学))
図 5 液体燃料が燃焼したら…イ ソギンチャクが登場
(提供:大島伸行(北海道大学),伊藤裕一(木 更津工業高等専門学校))
図 2 空を漂う雪だるま集団 ?
(提供:佐々木正史(北見工業大学))
図 3 虫の触覚 ? 円盤曲げる空気の動き
(提供:平元理峰(北海道工業大学))
図 6 札幌雪祭り期間の mea2007 展
(札幌市民会館)
図 7 北海道新聞掲載の 「工学 de あ~と」
(2007年4月24日第1回掲載)
日本機械学会誌 2008.3 Vol.111No.1072