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九州大学学術情報リポジトリ Kyushu University Institutional Repository 使える! 統計検定 機械学習 : II : 3 群以上の場合の有意差検定 高木, 英行九州大学大学院芸術工学研究院

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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

使える!統計検定・機械学習 : II : 3群以上の場合

の有意差検定

高木, 英行

九州大学大学院芸術工学研究院

http://hdl.handle.net/2324/1467639

出版情報:システム/制御/情報 : システム制御情報学会誌. 58 (10), pp.432-438, 2014-10. システム

制御情報学会

バージョン:

権利関係:

(2)

1.

はじめに

「使える!統計検定」講座は,統計検定の数学的側面 の解説ではなく,ユーザとしての利用ノウハウを説明す るシリーズで,読者が「どのような場合に,どの検定手 法を,どのように使えばよいのか」を理解して実際に使 えるようになっていただくことを目的としている.残念 なことに,実験結果のグラフを見て「視覚的に」差があ りそうだというだけで,自分の提案手法が有効であると 主張する発表がいまだにあるのが現状である.この状況 下,統計検定ユーザとしての筆者の利用ノウハウを書く だけでも多少はお役に立つであろうと考えたことが本解 説をお引き受けした背景である. 本解説の対象者は,「統計検定をしなくちゃならないの で,小難しいことはどうでもいいから,すぐ使えるよう にちょちょっと教えてほしい.高価な商用の統計解析ソ フトは持っていないし,フリーでも統計解析用プログラ ミング言語Rをインストールしたり覚えたりするのは面 倒だ.Excelなら少しは使える」,という読者を想定し ている. 連載第1回目の解説[1]では第1 図の左半分の2群の 場合を扱った.第2回目の本解説では図の右半分,すな わち,三つ以上のデータグループ(標本,群)の各平均 値の差が統計的な意味を持った差なのか,それとも,誤 差の範疇なのかを判定する検定手法について説明する.k 個のパターン認識手法や最適探索手法やニューラルネッ ト学習手法などの性能比較をし,他手法に比較して有意 に優れた手法がありうるかどうかを判定するような場合 がその応用事例である.なお,本連載の内容のスライド はダウンロード可能である[2].

2.

検定手法選定のための 3 条件

本連載のハイライトである「どの検定手法をどのよう に選ぶか」の解答が第1 表の3点をチェックすることで ある.この結果,第1図の23通りの場合分けができ,読 者が選択すべき統計検定手法が確定する. 連載第2回目の本解説では,三つ以上の手法の平均性 能値の間に有意な性能差があるかどうかを判定する場合 を扱うので,第1表の第1判定条件はもちろん3群以上 九州大学大学院 芸術工学研究院

Key Words: statistical tests, analysis of variance, ANOVA, Kruskal-Wallis test,Friedman test,multiple comparison.

第1図 本連載講座で扱う平均値間の差を検定する手法一覧 第1表 検定手法選択のための三つの判定条件 (1) 比較対象数が2群か3群以上か? (2) 各群のデータが正規分布をしているか否か? (3) 各群のデータに対応関係があるか否か? である. 第2の判定条件は,各群のデータが正規分布をしてい ると見なせるかどうかである.第 2 図は三つの進化計 算手法の探索性能を複数の試行の平均収束曲線で比較す る例で,第g世代で3手法間に有意な性能差があるかど うかを示すには,第g世代での3手法の性能値データが おのおの正規分布をしているかどうかを検定(正規性の 検定)することから始める.講座連載第1回目で紹介し たように,正規性の検定手法にはいろいろあり,フリー のExcel用のアドイン1もあるので,この正規性検定を 行い,すべてのデータグループのデータが正規分布をし ていると判断できれば3.の分散分析を適用する2.そう でなければ4.のKruskal-Wallis検定かFriedman検定 を選択する. 第3の判定条件は,群間にデータの対応関係があるか どうかである.たとえば,日本人,米国人,北欧人の身 長データの場合は,同じ人のデータではないので対応 関係がないといえる.食前,食中,食後の血糖値を調べ 1たとえば,執筆時現在,http://www.vector.co.jp/ フリーの正規性検定ツールがある. 23.1で述べるが,Excelの分散分析には正規性だけで なく等分散性も要求される.

(3)

高木:使える!統計検定・機械学習— II 433 第2図 第g世代で性能差に有意な差があるかどうかを調べ たい収束曲線の例 第3図 Excel2013で用意されているデータ分析ツール たデータでは,同じ人の食前,食中,食後の血糖値がわ かっているので,対応関係があるといえる.データに対 応関係がある場合の方が,情報量が多いため有意差の検 出力が高い.本連載第1回目の解説[1]で述べたように, 実験計画の段階でデータに対応関係をもたせるようにす れば,提案手法の優位性を統計的に示すことができるか もしれない.

3.

データに正規性がある場合

3.1

データに対応関係がない場合: 一元配置の分散分析 Excelメニューで「データ」→「データ分析」1を選択 すると,3種類の分散分析が見つかる(第 3図).デー タが正規分布をしておりデータに群間の対応関係がない 場合は「分散分析:一元配置」を選択する. 第 4図左のように,データグループ2間のデータに対 応関係がない場合の要素はデータグループだけで,同図 右のように対応関係がある場合はデータグループとデー タの二つの要素がある,と考えて,前者をsingle factor (一元配置),後者をtwo-factor(二元配置)とよぶ.3.1 と3.2のようにデータグループ間のデータに対応関係が 1初めて利用する場合は,Excelの「ファイル」「オプ ション」「アドイン」から「分析ツール」を有効にする こと. 2統計の分野では「群」「標本」の用語が使われるが, 第2表(b),(c)のように,Excelの分散分析表出力で は「列」と表現される. 第4図 一元配置(要素が一つ)と二元配置(要素が二つ) あるかないかの違いが,一元配置か二元配置の違いにな る.第 2 図の例でいえば,第n世代での収束性能値を 第5図(a)のように集めて検定する場合,要因は比較す るアルゴリズムだけなので一元配置である. つぎに3 群以上の場合の等分散性検定手法である Bartlettの検定3をしてすべてのデータグループの分散が 等しいといえるかどうかを調べる.講座連載第1回目で は,F検定を用いて正規分布するデータの等分散性を調 べ,分散が等しい場合のt-検定,または,等しくない場 合のWelchのt-検定を選んだ[1].分散分析でも同様に等 分散性がある場合の分散分析と成り立たない場合の分散 分析(Welchの分散分析)がある.最近の統計解析パッ ケージやR言語には両者が用意されているが,Excelの 分析ツールにはWelchの分散分析が用意されていない (第3 図)ので,正規性はあるが等分散性が成り立たな い場合は,Excelを諦めてWelchの分散分析の入った統 計パッケージを持っている人にお願いをしよう. Excel分析ツールから「分散分析:一元配置」を実行 すると,第2表(a)のような分散分析表が得られる4.こ の中のp値が0.05あるいは0.01以下であれば,危険率 5%あるいは1%でデータグループの平均間のどこかに有 意な差があると結論付ける.「どこか」では困る,という 検定ユーザは5.の多重比較を行う.

3.2

データに対応関係がある場合: 二元配置の分散分析 データが正規分布をしておりデータに対応関係があ る場合は二元配置の分散分析を選択する.前節同様, Bartlettの検定で等分散性が成り立たない場合はExcel での二元配置分散分析を諦めて4.2のFriedman検定を 選択するか,Welchの分散分析の入った統計パッケージ を持っている人にお願いをしよう. 二元配置には「繰り返しのない二元配置」と「繰り返 しのある二元配置」がある.第5図(b)のように同じ初 3執 筆 現 在 ,http://www.vector.co.jp/に フ リ ー の Bartlett検定ツールがある. 42表は分散分析表の形式を示すためにダミーデータ で作成したものである.

(4)

第5図 分散分析のためのデータ形式.(a)一元配置.比較 するアルゴリズムだけが要素.(b)繰り返しのない 二元配置.比較するアルゴリズムと初期探索点が要 素.(c)繰り返しのある二元配置.比較するアルゴ リズムとベンチマーク関数が要素で,各関数でいろ いろな初期探索点からの収束性能値を調べる.(d) 繰り返しのない三元配置. 期探索点同士でアルゴリズムを比較する場合,初期探索 点が第2の要素に加わる.同じ条件で比較するという情 報量が増えたぶん第5 図(a)の一元配置よりも有意差の 検定力が上がる.しかし,繰り返しのない二元配置では, あるアルゴリズムのある初期探索点でのデータが一つし かないため,二つの要素について解析しようにも,平均 値も分散も計算できない.初期探索点の代わりにベンチ マーク関数を第2の要素としても同じことである.二つ の要因間の交互作用がないと仮定できる場合にのみ正規 性の検定や等分散性の検定などができるが,交互作用の 有無についての検定もできないので,得られた分散分析 結果も近似と割り切ったほうが無難である.これらのこ とから,各条件で複数のデータをとって繰り返しのある 二元配置分散分析を行うことが望ましい. 列 30.5005 2 15.2503 3.67503 0.04052 3.40283 誤差 99.5928 24 4.14970 合計 218.963 38 (c)「分散分析:繰り返しのある二元配置」 変動要因 変動 自由度 分散 観測された P-値 F境界値 分散比 標本 26.8750 5 5.3750 1.21172 0.36121 3.10588 列 16.6667 1 16.6667 3.75728 0.07646 4.74723 交互作用 17.2483 5 3.44967 0.77768 0.58429 3.10588 繰り返し 53.2300 12 4.43583 誤差 合計 114.020 23 第5 図(c)は,アルゴリズムとベンチマーク関数の2 要素に対して,ベンチマーク関数で複数の初期探索点で 性能評価した場合で,繰り返しのある二元配置という. 上述の繰り返しのない二元配置の問題が解決できる.ま た,第 2表(c)のように交互作用も検定できるので,た とえば,ある特性のベンチマーク関数には強いが別の特 性の関数には弱いようなアルゴリズムが含まれるかどう かの情報が得られる.さらに情報量を増やして第5 図 (d)のデータ配列にすると,アルゴリズム,ベンチマー ク関数,初期探索点という三つの要素を解析する三元配 置になる. Excelでは第3 図の2種類の二元配置分散分析(「分 散分析:繰り返しのない二元配置」と「分散分析:繰り 返しのある二元配置」)が用意されており,これらを選 択して実行すると,第 2 表(b)(c)のような分散分析表 が得られる1.データグループの各平均値間に有意な差 があるかどうかを判定するには,分散分析表に複数ある p値の中から「列」のp値に注目し,0.05あるいは0.01 以下かどうかで有意差判定をする. 3.1で述べたように,この分散分析でデータグループ 間に有意な差があることがわかっても,「どこか」に有意 な差があること以上はわからない.「どこに」有意な差が あるかを知るには5.の多重比較をする必要がある. 12(c)の中で「標本」とあるのは,データグルー プ(群)ではなくおのおののデータサンプルを意味し ている.統計分野では標本=群とすることが多いので, このExcel表現は紛らわしい.

(5)

高木:使える!統計検定・機械学習— II 435

4.

データに正規性がない場合

4.1

データに対応関係がない場合:

Kruskal-Wallis

検定 講座連載第1回目の2群間の有意差検定[1]と同様, データが正規分布しているとはいえない場合はノンパラ メトリックな検定方法を選択する.ノンパラメトリック 検定方法はデータ値の大小の順位関係を利用して有意に 偏っているかどうかを判定する. データに対応関係がない場合は,第1表から Kruskal-Wallis検定を選択する.検定手順は以下のとおりである. (step 1) 全データに順位(rank)を付ける1 (step 2) 4種類の数値(N , k, ni, Ri)を求める. (step 3) 検定のためのH値を計算する. H = 12 N (N + 1) ki=1 R2 i ni −3(N +1) (1) (step 4) Hを付録第A1表のKruskal-Wallis検定表に 照らし合わせて有意差判定を行う.データ規模が大 きくて付録第A1表が使えない場合は,Hが自由度 k− 1χ2に従うものとしてχ2検定表で有意差判 定を行う. データ数が6個,5個,6個から成る三つのデータグ ループ(群数=3)の第6 図の例を使って検定方法を見 てみよう. (step 1)まず図のように全データに第1位~第17位ま での順位を付ける. (step 2)つぎに4種類の数値を求める.データ総数 N = 17個,グループ数k = 3,各データ数(n1,n2,n3) = (6,5,6)個,順位の累積数(R1,R2,R3) = (38,69,46),を 求める. (step 3)これらの数値を(1)式に代入すると H = 12 N (N + 1) ki=1 R2 i ni −3(N +1) = 12 17(17 + 1) (382 6 + 692 5 + 462 6 ) −3(17+1) = 6.609 (step 4)H = 6.609を付録第A1表と比較する.表の (n2,n1,n3) = (5,6,6)の危険率5%と1%のH の有意 点(H = 5.765およびH = 8.124)と比較する.すると, 第7図のような関係がある.この図の斜線部分は,全体 面積のうちの1%を占める領域であり,H = 6.609はこ のわずかな領域に入るような危険率で有意な差があると はいえないが,危険率5%の領域(有意点の右側の領域) には入っているので,少なくとも危険率5%では三つの データグループ間のどこかに有意な差があるといえる. 1Excelにはデータ値から順位を求めるRANK()関数が 用意されている.順位は昇べき順でも降べき順でもよ い.同順位には平均順位を割り振る. 第6図 Kruskal-Wallis検定の例題.計算にはまず,N:全 データ個数,k:データグループ数(群数),ni:第 i番目のデータグループのデータ数,Ri:第i番目 のデータグループの各データに割り振られた順位の 総和,を求める. 第7図 H = 6.609を危険率5%と1%の有意点と比較する. 「どこに」有意な差があるかを調べるには5.の多重比較 を行う. データ総数N が17を超えたり,四つ以上のデータ グループ間の比較をする場合は,付録第A1表が使え ない.この場合は,Hが自由度k− 1χ2分布に従う ものとして,統計の教科書などにあるχ2検定表で有意 差判定を行う.ExcelにはCHISQ.INV.RT(確率,自 由度)関数が用意されているので,χ2分布での危険率 1%と5%の有意水準をCHISQ.INV.RT(0.01, k− 1)CHISQ.INV.RT(0.05, k− 1)から求め,Hをこれらと 比較した方が簡単であろう.

4.2

データに対応関係がある場合:

Friedman

検定 データグループ間のデータに対応関係がある場合は, 第1表からFriedman検定を選択する.この検定方法は, 対応するデータ間の順位を求め,データグループごとの 順位に偏りがないかを調べる.検定手順は以下のとおり である. (step 1) データグループ間の対応のあるデータの間で 順位(rank)を付ける. (step 2) 3種類の数値(データグループ数(群数)k, 各グループのデータ数(群サイズ)n,第i番目の データグループの順位の合計Ri)を求める. (step 3) 検定のためのχ2 r値を計算する.

(6)

第4表 第3表を変換した性能の順位表 評価 手法 問題 a b c d A 4 2 1 3       B 3 2 1 4 C 4 1 2 3 評価問題数 D 4 1 3 2 (n = 4) 合計順位        15 6 7 12 � �� � 手法(a,b,c,d)の数(k = 4) 第8図 第3 表を図的化し,対応する4データ内で第1位 から第4位の順位を付けたもの χ2r= 12 nk(k + 1) ki=1 R2i−3n(k +1) (2) (step 4) χ2 rを付録第A2表のFriedman検定表に照ら し合わせて有意差判定を行う.群数や総データ数が 多い場合は,χ2 rが自由度k− 1χ2分布に従うも のとしてχ2検定表で有意差判定を行う. Friedman検定の演習をしてみよう.第3 表は4種類 の手法(a,b,c,d)を評価問題(A,B,C,D)に適用し,4 種類の手法の間に有意な性能差があるかどうかを検定す る例である. (step 1)同じ評価問題で4手法(a,b,c,d)の性能競争が できるので(すなわち,データに対応関係があるので), 第8図のように評価問題ごとに性能順位を求め,順位表 (第4 表)に書き直す. (step 2)この順位表から3種類の数値を求めると,k = 4 グループ,n = 4データ,(R1,R2,R3,R4) =(15, 6, 7, 12). 8.1 <危険率1%の有意点(9.6)」なので,危険率1%で有 意な差があるとはいえないが,危険率5%で四つのデータ グループの間のどこかに有意な差があるといえる.デー タグループ数がk = 5以上の場合は,4.1で述べたよう にχ2検定表かExcelのCHISQ.INV.RT()関数を使って 有意差判定を行う. 「どこに」有意な差があるかを調べ るには次節の多重比較を行う.

5.

多重比較

本解説で紹介したすべての検定方法で,有意差があり と判定された場合は多群間のどこかに有意な差がある, という表現をした.これは,「多群間に有意な差はない」 という帰無仮説が否定されても「どこに」有意な差があ ることを示すことにはならないためである.しかし現実 問題として,自分の提案手法が従来法よりも優れている ことを実験的に示したいがために統計検定をする読者に とって,「どこかに有意差がある」といわれても困る. 連載第1回目の解説[1]で2群の平均値の差の検定方 法を学んだのだから,それぞれの平均値間にこの検定法 を適用すれば「どこに」有意な差があるのかが簡単にわ かるではないか,との声が聞こえてきそうである.しか し,単純に2群の検定手法を複数回適用して3群以上の 場合の検定の代用としてはいけない.m回適用して1回 でも有意差を検出したら本解説の3群以上の場合の検定 方法1回で有意差検出をしたことに相当するので,この 場合の信頼水準は(2群の差の検定の信頼水準)mになっ てしまう.たとえば,三つの平均値間に危険率5%の t-検定を3回適用すれば,危険率14%(= 1−(1−0.05)3 の分散分析をしたことに相当するので,甘い検定をして いることになる1 では,2群の判定を厳しくして複数回適用し,全体と してちょうどよい有意水準になるようにすればよいので はないか,という考えが生まれよう.これが多重比較で ある. これまで多くの多重比較法が提案されており,どの手 法を使うべきか迷ってしまう.まずは全体像が見えるよ うに,すべての群間の対比較(データグループのすべて 1有意というべきでない状況を有意と判断してしまう誤 りを第1種の過り(または偽陽性,α過誤)という.そ の逆に有意というべき状況を有意ではないという誤り を第2種の過り(または偽陰性,β過誤)という.

(7)

高木:使える!統計検定・機械学習— II 437 第5表 文献[4]の表1.3の一部を抜き出し加筆した多重比 較法.*は等分散性/非等分散性にかかわらず適用 可能な手法で,そのほかは等分散性データへの適用 手法.◎○□△の記号は有意差の検出力の高い順を 示す. 比較1:すべての群間の対比較への適用, 比較2:対照群との対比較への適用, 分布1:データが正規分布している場合への適用, 分布2:データが正規分布以外の分布をしている場 合への適用. 手法 比較 1 比較 2 分布 1 分布 2 Tukey-Kramer法 □ ○ Dunnett法 □ ○ Sheff´e法 △ △ ○ Steel-Dwass法 □ ○ Steel法 □ ○ Bonferroni法 Holm法 □ □ ○ ○ Shaffer法 Holland-Copenhaver法 ○ ○ ○ Tukey-Welsch法 ○ ○ ○ Peritz法 ◎ ○ ○ Dunnettの ◎ ○ ○ 逐次既客型検定法 の二つの平均値間の差の検定)をする場合の代表的な多 重比較法と,対照群との対比較(一つのデータグループ とその他すべてのデータグループとの平均値間の差の検 定)をする代表的な多重比較法を第5表に示す.文献[5] にも同様に多重比較法の選択フローチャートがある. 第 5 表を眺めると,Bonferroni法とその改良版であ るHolm法が使えるようになれば,オールマイティに利 用できそうである.ほかの手法を使いたい場合は,統計 パッケージに各検定方法に合った多重比較法がセットに されていることが多いので,その中から使えばよい.フ リーのソフト1もある. Bonferroni法の計算は非常に簡単なので統計ソフトを 探す必要はない.データグループ(群)数をkとしよう. 連載第1回目[1]の2群の検定手法を適用する回数(す べての群間対比較ならkC2回,対照群との対比較なら k−1回)で有意水準を割って検定を厳しく補正するだけ である(逆にp値にこの回数を掛けても同じこと).た とえば,4群の検定を行うために6回の2群の検定手法 を適用して6個のp値を求めた場合は,これらのp値を 0.05/6および0.01/6と比較することで,危険率5%およ び1%で有意差があるかどうかを検定する.Bonferroni の補正は簡単であるが,検定結果が厳しくなる傾向に ある. Holmの方法はBonferroni法のこの点を改良したもの で,Excelや電卓で簡単に計算できる.データグループ 1たとえば,執筆時現在,http://www.vector.co.jp/ フリーの多重検定ツールがある. 第6表 4群にHolm法を適用した例 2群間 p値 補正p値式 補正p値 群1–群2 0.0076 =p値*6 0.0456 群2–群4 0.0095 =p値*5 0.0475 群2–群3 0.0280 =p値*4 0.1120 群1–群3 0.0320 =p値*3 0.0960 群3–群4 0.0380 =p値*2 0.0760 群1–群4 0.0410 =p値*1 0.0410 (群)数をk,2群用の検定を適用する回数をrとしよう. (step 1) データグループ(群)のすべての群間に, 第 1 図の2群の検定手法を適用しp値を求める. 適用する検定手法は連載第1回目[1]を参照のこと. (step 2) 得られたp値を昇べき順に並べ替える. (step 3) iを並べ替えた順とすると,補正p= p×(r +1−i)を求める. (step 4) 並び替えた順に補正p値が危険率5%,また は,1%で有意差判定を行う.有意水準を超えた段 階で判定をやめ,それ以降の群間には有意差なしと する. k = 4群の場合の適用例を示す.(step 2)の状態が 第 6 表の第1列,第2列であるとしよう.第3列が, r =kC2= 6とする(step 3)の 計算式で,第4列がその 結果である.危険率5%の場合,(群1–群2)と(群2–群 4)のみが有意差ありと判断する.(群1–群4)の補正p 値は0.05未満であるが,(step 4)にしたがって補正p値 上位第2位までのみを有意な差と判断する.

6.

おわりに

講座連載第2回目の本解説は,3群以上の場合の平均 値間に有意な差があるかどうかを検定する手法の選択方 法と使い方について説明した.連載第1回目と第2回目 をご覧いただければ,まずはどの検定手法を使えばよい かの判断がつき,具体的に計算ができると思う.講座連 載第3回目は,主観評価実験によく使われる検定手法に ついて解説する予定である. 謝 辞 本解説は数理統計学がご専門の永田靖教授(早稲田大 学創造理工学部)に監修をいただいた.御礼申し上げる. また九大大学院芸術工学研究院の大草孝介助教には資料 提供とコメントをいただいた.御礼申し上げる. (2014年6月2日受付) 参 考 文 献 [1] 高木: 使える!統計検定・機械学習— I —2群間の有 意差検定; システム/制御/情報, Vol. 58, No. 8, pp. 345–351 (2014) [2] http://www.design.kyushu-u.ac.jp/˜takagi/ TAKAGI/downloadablefileJ.html

(8)

の有意点.n1, n2, n3 は群数3の場合のデータ個 数([3]のデータをもとに本表を作成). データ数 危険率 データ数 危険率 n1 n2 n3 5% 1% n1 n2 n3 5% 1% 2 2 2 – – 3 3 3 5.606 7.2 2 2 3 4.714 – 3 3 4 5.791 6.746 2 2 4 5.333 – 3 3 5 6.649 7.079 2 2 5 5.16 6.533 3 3 6 5.615 7.41 2 2 6 5.346 6.655 3 3 7 5.62 7.228 2 2 7 5.143 7 3 3 8 5.617 7.35 2 2 8 5.356 6.664 3 3 9 5.589 7.422 2 2 9 5.26 6.897 3 3 10 5.588 7.372 2 2 10 5.12 6.537 3 3 11 5.583 7.418 2 2 11 5.164 6.766 3 4 4 5.599 7.144 2 2 12 5.173 6.761 3 4 5 5.656 7.445 2 2 13 5.199 6.792 3 4 6 5.61 7.5 2 3 3 5.361 - 3 4 7 5.623 7.55 2 3 4 5.444 6.444 3 4 8 5.623 7.585 2 3 5 5.251 6.909 3 4 9 5.652 7.614 2 3 6 5.349 6.97 3 4 10 5.661 7.617 2 3 7 5.357 6.839 3 5 5 5.706 7.578 2 3 8 5.316 7.022 3 5 6 5.602 7.591 2 3 9 5.34 7.006 3 5 7 5.607 7.697 2 3 10 5.362 7.042 3 5 8 5.614 7.706 2 3 11 5.374 7.094 3 5 9 5.67 7.733 2 3 12 5.35 7.134 3 6 6 5.625 7.725 2 4 4 5.455 7.036 3 6 7 5.689 7.756 2 4 5 5.273 7.205 3 6 8 5.678 7.796 2 4 6 5.34 7.34 3 7 7 5.688 7.81 2 4 7 5.376 7.321 4 4 4 5.692 7.654 2 4 8 5.393 7.35 4 4 5 5.657 7.76 2 4 9 5.4 7.364 4 4 6 6.681 7.795 2 4 10 5.345 7.357 4 4 7 5.65 7.814 2 4 11 5.365 7.396 4 4 8 5.779 7.853 2 5 5 5.339 7.339 4 4 9 5.704 7.91 2 5 6 5.339 7.376 4 5 5 5.666 7.823 2 5 7 5.393 7.45 4 5 6 5.661 7.936 2 5 8 5.415 7.44 4 5 7 5.733 7.931 2 5 9 5.396 7.447 4 5 8 5.718 7.992 2 5 10 5.42 7.514 4 6 6 5.724 8 2 6 6 5.41 7.467 4 6 7 5.706 8.039 2 6 7 5.357 7.491 5 5 5 5.78 8 2 6 8 5.404 7.522 5 5 6 5.729 8.028 2 6 9 5.392 7.566 5 5 7 5.708 8.108 2 7 7 5.398 7.491 5 6 6 5.765 8.124 2 7 8 5.403 7.571 8 6.25 9.0 9 6.22 9.56 5.99 9.21 3 7.4 9.0 4 4 7.8 9.6 5 7.8 9.96 7.81 11.34 著 者 略 歴 たか 高 木ぎ    ひで英 ゆき行 1956年7月生. 1981年九州芸術工科大 学修士課程修了.1981~1995年松下電器 産業(株),1991~1993年UC Berkeley 客員研究員,1995年九州芸術工科大学助 教授,2003年統合により九州大学助教授, 現在九州大学教授.人間要素を取り込む計 算知能等の研究に従事.博士(工学).信学会篠原記念学術奨 励賞(1989),知能情報ファジィ学会論文賞(2003),最優秀論

文賞(KES’97, IIZUKA’98, ICOIN-15, ICGEC’12),功労

賞(スロバキア人工知能学会2002,IEEE SMC学会2003), IEEE SMC学会 Best Associate Editor賞 (2005),2009 IEEE Most Active SMC Technical Committee賞(2010),

各受賞.日本ファジィ学会理事・監事 (1999–2003),IEEE SMC学会Vice-President (2006–2009),進化計算学会理事 (2010–2012),IEEE SMC学会日本支部長(2014–2015).

参照

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