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2 法学研究 号 (2015) はじめにいわゆる宝塚市パチンコ条例事件判決(最判平成十四年七月九日民集五六巻六号一一三四頁)により わが国では行政上の義務の司法的執行の可能性が閉ざされ(1 )た(2 ) これを受けて 学説では行政的執行の見直しがなされているが 行政的執行の各手段は機能不

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ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ(石垣聡一朗)

  

ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ

 

 

 

 

  は じ め に 第Ⅰ章   連邦行政執行法の構造    第1節   連邦法とラント法の対象領域    第2節   連邦行政執行法における強制手段の規定 第Ⅱ章   代償強制拘留制度について    第1節   制度概要    第2節   連邦行政執行法一六条一項の規定    第3節   連邦行政執行法一六条二項及び三項の規定    第4節   代償強制拘留制度運用の一例 第Ⅲ章   代償強制拘留制度の意義    第1節   代償強制拘留制度をめぐる現在の学説の動向    第2節   代償強制拘留制度の位置づけ    第3節   小括および考察   お わ り に

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法学研究 45・46 号(2015)

はじめに

    いわゆる宝塚市パチンコ条例事件判決(最判平成十四年七月九日民集五六巻六号一一三四頁)により、わが国 で は 行 政 上 の 義 務 の 司 法 的 執 行 の 可 能 性 が 閉 ざ さ れ ( 1) た ( 2) 。 こ れ を 受 け て、 学 説 で は 行 政 的 執 行 の 見 直 し が な さ れ て い る が、 行 政 的 執 行 の 各 手 段 は 機 能 不 全 に 陥 っ て い る と さ れ る ( 3) 。 そ の よ う な 状 況 下 で 、 公 表 ( 4) や 違 反 金 ( 5) と い っ た 伝 統 的 な 行 政 強 制 概 念 に は 含 ま れ な い 新 た な 義 務 履 行 確 保 手 段 の 提 唱 も 積 極 的 に な さ れ て い る が ( 6) 、 他 方で、伝統的な行政強制手段である執行罰の活用論も根強く唱えられている ( 7) 。   この執行罰活用論は、伝統的な行政強制手段に位置づけられる手段に再度注目するという点で、現在提唱され ているその他の義務履行確保手段とは異なるといえる。執行罰は、義務の不履行に対して、一定額の過料を課す ことを通告して間接的に義務の履行を促し、それでも義務を履行しないときに、これを強制的に徴収する義務履 行 確 保 の 手 段 で あ る ( 8) 。 執 行 罰 は、 わ が 国 で 戦 前 に 制 定 さ れ て い た 行 政 強 制 の 一 般 法 で あ る 旧・ 行 政 執 行 法 に お い て 存 在 し て い た も の の ( 9) 、 戦 後 は 行 政 執 行 法 が 廃 止 さ れ た こ と も あ り、 現 在 は 砂 防 法 36条 に お い て の み ( 10) 、 そ の規定をみることができる。執行罰活用論が有力に唱えられる根拠として、執行罰は義務の履行がなされるまで 何度も課すことができることや、刑罰である罰金との均衡を図る必要性がないので、柔軟に金額を設定できるこ とが挙げられる ( 11) 。また、直接強制に比べて穏当な手段であることもその理由とされる。   執行罰が規定されていた旧・行政執行法は、プロイセンで一八八三年に制定された一般ラント行政法をモデル に し た も の で あ る ( 12) 。 一 般 ラ ン ト 行 政 法 に は 行 政 強 制 手 段 と し て、 代 執 行、 執 行 罰、 直 接 強 制 が 規 定 さ れ て お り、 わが国への行政強制の導入にあたり、非常に強い影響を受けたことが伺われる。また、現在のドイツの行政強制

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ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ(石垣聡一朗) に 関 す る 一 般 法 で あ る 連 邦 行 政 執 行 法( Verwaltungs ‐ Vollstreckungsgesetz ) に お い て も、 執 行 罰 を 強 制 金 に 名称変更したものの、基本的な枠組みは維持されている。わが国の行政強制に関する研究は、主にドイツの連邦 行 政 執 行 法 を そ の 対 象 に し て き て い る ( 13) 。 た だ、 一 般 ラ ン ト 行 政 法 に お い て も、 現 在 の 連 邦 行 政 執 行 法 に お い て も採用されているにもかかわらず、旧・行政執行法では採用されず、わが国でも研究が殆ど進んでいない行政強 制制度が存在する。それが、本稿で採り上げる代償強制拘留制度である。代償強制拘留制度とは、義務者に対し て 強 制 金 が 課 さ れ た に も か か わ ら ず、 強 制 金 を 徴 収 す る こ と が で き ず、 か つ、 義 務 の 履 行 が な さ れ な い と き に、 義務者の身柄を拘束することによって、義務の自発的履行を促す制度である ( 14) 。   現在のわが国の行政上の義務履行確保手段の機能不全という状況に照らせば、執行罰の活用は大きな役割を果 たすと思われる。もっとも、その導入に関する議論を行なうのであれば、ドイツの行政強制制度を把握する必要 があろう。ドイツにおける強制金には、代償強制拘留制度というマイナーな制度が付随している以上、代償強制 拘留制度を含めて考えなければ、強制金という行政強制制度の全容を把握することはできないのではないだろう か。とすれば、代償強制拘留制度を研究する必要性が多少なりともあると考える。なお、本稿は、わが国への代 償強制拘留制度の導入という立法論的視点から代償強制拘留制度を含むドイツの行政強制制度を研究するもので はない。ドイツにおける代償強制拘留制度を研究することにより、同制度の意義を把握し、ひいては行政強制制 度 と 行 政 強 制 概 念 を 把 握 す る こ と に 主 眼 を 置 い て い る。 そ こ で 以 下 で は、 ま ず 連 邦 行 政 執 行 法 の 構 造 を 概 観 し、 代償強制拘留の前提となる強制金を含めた行政強制手段がどのように位置づけられているのかを考察する(第Ⅰ 章) 。その上で、代償強制拘留制度の概要を紹介し(第Ⅱ章) 、判例を踏まえながら、代償強制拘留制度の連邦行 政執行法における意義、位置づけを考察していく(第Ⅲ章) 。

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法学研究 45・46 号(2015)

第Ⅰ章

 

連邦行政執行法の構造

  代償強制拘留制度を論じるにあたり、同制度を規定する連邦行政執行法の構造を概観する必要があろう。そこ で本章では、代償強制拘留制度が前提とする連邦行政執行法の各強制手段を中心に検討することで、同制度がい かなる体系の中に位置づけられるかという点を明らかにしていく。 第1節   連邦法とラント法の対象領域   まず、連邦行政執行法の立法管轄について検討する。基本法三〇条によれば、国家の権能の行使および任務の 遂 行 は、 基 本 法 に 特 定 の 定 め が な く、 ま た は 基 本 法 が 特 に 認 め て い な い 限 り 州 の 所 轄 と さ れ る ( 15) 。 そ し て、 基 本 法 31条は、連邦法は州法に優越すると規定している。ここから、連邦法と州法が同一の領域について立法した場 合には、そのまま連邦法が優越するかどうか、検討する必要がある。   基 本 法 七 〇 条 一 項 は、 連 邦 に 授 権 さ れ て い な い 限 り 州 が 立 法 権 を 有 す る こ と を 規 定 し て い る が ( 16) 、 連 邦 が、 連 邦 内 の 均 一 性 を 維 持 す る た め な ど の 理 由 で 専 属 的 立 法 権 を 行 使 す る こ と が 多 い の が 現 状 の よ う で あ る ( 17) 。 他 方 で、 同法七二条、七四条、七四 a条および一〇五条二項において、連邦が立法権を行使しない場合に州が立法権を行 使することが可能である。これを、競合的立法管轄と呼ぶが、競合的立法管轄が発生した場合には、州法が適用 されることとなる。そこで、行政強制について規程する行政執行法について、競合的立法管轄が発生するか否か について検討する。   競合的立法管轄の対象は、基本法七二条に規定されており、その対象を列挙することはここでは避けるが、そ の中には、刑法及び刑の執行、裁判手続、国家賠償責任等が含まれているものの、強制執行手続については規定

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ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ(石垣聡一朗) されていない。ここから、行政執行法については、競合的立法管轄は発生せず、連邦行政執行法は連邦により課 された義務、ラントが規定する行政執行法はラントにより課された義務がその対象となる。   そこで、本稿では、特に例外的な規定を置いているラントを除き、連邦行政執行法を主な対象として論じる。 第2節   連邦行政執行法における強制手段の規定   ここでは、 連邦行政執行法の規定する行政強制制度の構造について、 各手段相互の位置づけを中心に考察する。 とりわけ考察の中心となるのは、行政強制手段について規定する連邦行政執行法九条である。なお、同条と代償 強制拘留を規程する同法十六条との関係については、後述のⅢ章で詳細に検討する。 (1)例外としての即時執行   連邦行政執行法の定める具体的な強制手段の内容は、同法第二章において規定されている。まず、同法六条一 項は、物の引き渡しまたは作為、受忍もしくは不作為を対象とする行政行為の執行は、同法九条で規定された強 制 手 段 に よ り 行 う こ と と し て い る。 た だ し、 同 法 六 条 二 項 で は、 「 犯 罪 も し く は 過 料 の 構 成 要 件 に 該 当 す る 違 法 行為を阻止するため、または急迫の危険を避けるため即時の執行が必要であるときは、先行する行政行為を行う ことなく、行政官庁は行政強制を適用できる」と規定しており、即時執行を例外的に規定している ( 18) 。 (2)連邦行政執行法九条において規定される各手段   連邦行政執行法九条一項は、一〇条の規定する代執行、一一条の規定する強制金、一二条の規定する直接強制 の三つの手段を列挙している。そして、一一条の強制金の補充的手段として同法一六条において代償強制拘留を

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法学研究 45・46 号(2015) 規 定 す る ( 19) 。 代 償 強 制 拘 留 に つ い て は 次 章 以 下 で 詳 細 に 考 察 す る の で、 こ こ で は そ れ 以 外 の 連 邦 行 政 執 行 法 が 定 める強制手段について検討を加える。 なお、 連邦法ではこの他に、 個別法において強制手段についての規定があり、 優先的にその適用が予定されている場合がある。例えば、 滞在法 ( Aufenthaltsgesetz ) 五七条、 五八条、 五八 a条、 さらに、 感染予防法 ( Infektionsschutzgesetz )二八条、 三〇条そして三三条に規定されている直接強制などである。 こ う し た 場 合 に は、 特 別 法 に 対 し て 一 般 法 は 劣 後 す る こ と に な る ( 20) 。 な お、 本 稿 で は、 こ の よ う な 個 別 法 は 考 察 対象から除外する。   ま ず、 連 邦 行 政 執 行 法 九 条 一 項 は、 強 制 手 段 の 適 用 に つ い て の 一 般 的 順 序 を 定 め て は い な い ( 21) 。 そ れ ゆ え 条 文 上 は、 こ れ ら の 強 制 手 段 の 適 用 に つ い て、 明 確 な 優 先 順 位 は 判 明 し な い ( 22) 。 こ の 点 に つ き、 連 邦 行 政 執 行 法 の 代 表的なコンメンタールである Engelhardt/App によれば、 「代替的作為義務の場合には、 まず代執行が適切であり、 非代替的作為義務と不作為義務の場合、代執行が効を奏しない場合には強制金でもって対処すべきである」とさ れ、 そ し て 直 接 強 制 は、 「 代 執 行 と 強 制 金 で は 目 的 に 到 達 で き な い と き、 ま た は 代 執 行 と 強 制 金 で は 効 を 奏 し な い と き に、 最 終 的 に 問 題 に な る 」 と さ れ る ( 23) 。 す な わ ち、 同 法 九 条 一 項 の 文 言 は、 そ こ で 列 挙 さ れ た 三 つ の 強 制 手 段 を 同 列 に 扱 っ て い る が、 同 項 は 単 に 強 制 手 段 を 列 挙 し た に す ぎ ず、 各 手 段 の 個 別 の 性 質 と そ の 位 置 づ け は、 そ れ ぞ れ の 手 段 が 規 定 さ れ て い る 同 法 の 一 〇 条・ 一 一 条・ 一 二 条 の 内 容 か ら 明 ら か に な る ( 24) 。 以 下 で は、 こ の 見 解に拠りつつ、各手段ついて簡潔に概観していく。なお、連邦行政執行法に規定される強制手段における代償強 制拘留制度の位置づけは、第Ⅲ章2節で詳細に検討するので、ここでは検討の対象から除外する。 (3)代執行   代執行は、代替的作為義務について、第三者が義務者に代わって執行し、執行に要した費用を義務者から徴収

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ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ(石垣聡一朗) す る 制 度 で あ る ( 25) 。 代 執 行 は、 代 替 的 作 為 義 務 に つ い て 強 制 可 能 な と き に の み 適 用 が 検 討 さ れ る。 義 務 者 以 外 の 者による義務の履行の実現が実際上も法律的にも許容されるときには、代替的作為義務となる。そして、義務者 または第三者のいずれが代替的作為義務を実施するかは、事実上の効果は同一であるので、執行官庁は代執行の 正当化を検討するに当たり、この点を考慮する必要はない。受忍義務と不作為義務については、第三者による代 替が不可能なので、そもそも代執行の対象とはならない ( 26) 。代執行に要した費用は義務者から徴収される。   なお、わが国の行政代執行法の規定する行政代執行と異なり、ドイツの連邦行政執行法に基づく代執行は、代 替 的 作 為 義 務 に つ い て、 行 政 庁 で は な く 第 三 者 に よ り 義 務 の 実 現 を 図 る 点 に 特 徴 が あ る ( 27) 。 そ れ ゆ え、 わ が 国 に おける行政代執行は、ドイツの行政強制制度の下では直接強制に分類される点に留意する必要がある。   また、代執行が不適当な場合には、代替的作為義務に対しても強制金が適用されることになる。この代執行が 不適当な場合については、次の強制金の項で検討していく。 (4)強制金   強制金は、主として非代替的作為義務に対する強制手段である。義務の履行がなされるまで金銭的負担を課す こ と に よ り、 義 務 者 の 意 思 に 依 存 し つ つ も、 義 務 者 に 対 し て 自 発 的 な 義 務 の 履 行 を 要 求 す る 制 度 で あ る ( 28) 。 強 制 金 は、 代 替 的 作 為 義 務 に も 非 代 替 的 作 為 義 務 に も 適 用 す る こ と が で き る。 Sadler は 強 制 金 の 項 目 の 冒 頭 で、 強 制 金 は、 「 非 代 替 的 作 為 義 務 の 場 合 の 強 制 手 段 で あ る。 立 法 者 は、 非 代 替 的 作 為 義 務 の 場 合 の 拘 束 力 の あ る 強 制 手 段 と し て 強 制 金 を 制 定 し た 」 と 記 し て お り ( 29) 、 念 頭 に 置 か れ て い る の は 非 代 替 的 作 為 義 務 の 場 合 で あ る こ と を 強調する。そして、強制金は、当該義務が履行されるまで何度でも金銭的負担を課すことができるので、義務者 に対して、義務の履行を促す心理的抑圧効果が認められる ( 30) 。

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法学研究 45・46 号(2015)   前述のように、強制金は非代替的作為義務を念頭に置いているが、連邦行政執行法一一条一項二文により、代 執 行 が 不 適 当 な 場 合 に は、 代 替 的 作 為 義 務 に つ い て も 強 制 金 を 課 す こ と が 可 能 で あ る ( 31) 。 こ こ で、 こ の「 代 執 行 が不適当な場合」がどのような場合を指すのかが問題となる。この点は、代償強制拘留が強制金を前提としてい ることとの関係で、代償強制拘留の対象となる義務が非代替的作為義務に限られるのか、それとも代替的作為義 務 に も 及 ぶ の か と い う 問 題 と 関 連 す る。 「 不 適 当( untunlich ) ( 32) 」 と い う 文 言 は 一 般 的 で 不 確 定 な 法 概 念 で あ る こ と か ら、 こ の 概 念 の 解 釈 が 必 要 に な る ( 33) 。 代 執 行 が 不 適 当 な 状 況 で あ る と い う こ と は、 代 執 行 が、 執 行 官 庁 の 採 りうる強制手段から除外されることを意味する。代執行が不適当な状況であるにもかかわらず、代執行の戒告を することは違法であり、その場合には代執行に代わり、同法一一条一項二文に従って強制金が第一次的な手段と な る ( 34) 。 そ れ ゆ え、 代 替 的 作 為 義 務 の 場 合 に 代 執 行 が 不 適 当 な 場 合 で あ っ た と し て も、 直 ち に 直 接 強 制 の 適 用 場 面へと移行するのではなく、その場合には強制金を適用すべき場面となる。ここから、代替的作為義務の場合に も、直接強制と強制金に付随する代償強制拘留との優先関係が問題となる。この点については、第Ⅲ章で考察し ていく。   代執行はいかなるときに「不適当」な場合に該当し、強制金の適用が許容されるのか、という論点へ戻る。代 執行の費用が、義務者自身により義務の履行がなされるよりも高額な費用となる場合があるが、それだけでは代 執行が不適当であるとはいえない。もっとも、執行官庁が代執行を強制手段として選択する際には、代執行の費 用 を 義 務 者 が 負 担 す る と い う 点 も 考 慮 し な け れ ば な ら な い ( 35) 。 こ の 問 題 を 考 慮 す る に あ た っ て は、 義 務 者 に 代 執 行費用の支払い能力がある場合とない場合とで場合分けをして考えるべきである。というのも、とりわけ代執行 が「不適当」な場合に該当するのは、義務者に支払い能力がないときであるからである ( 36) 。   義務者に代執行費用を負担するほどの支払い能力がないときに、強制金を課したとしても、おおよそそれは徴

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ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ(石垣聡一朗) 収できない可能性が高い。このような場合に強制金を課すことについては、これを認める見解と認めない見解と が分かれる。これらの見解については、第Ⅲ章1節にて詳細に検討する。ここで簡潔に言及すると、代替的作為 義務で義務者に支払い能力がない場合に強制金を課したとしても、そのような場合には義務者に対して代償強制 拘留が適用されうる。それにより、義務の自発的履行が促される以上、強制金を課したとしても許容されるとい う見解がある。他方で、このような場合に強制金を賦課したのであれば、それは支払い能力がないが故に、代償 強 制 拘 留 と い う 身 体 の 自 由 を 剥 奪 す る 刑 罰 類 似 の も の へ と 性 質 が 移 行 す る の で あ る か ら 許 さ れ な い と い う 見 解 も あ る 。 こ の 見 解 に 従 う 場 合 に は 、 強 制 金 を 適 用 せ ず に 、 直 接 強 制 に よ り 義 務 の 履 行 が な さ れ る と い う こ と に な ろ う 。   義 務 者 に 代 執 行 費 用 の 支 払 い 能 力 が あ る 場 合 に は、 「 代 執 行 は 不 適 当 で な い と は い え な い 」 と さ れ る ( 37) 。 こ の ような微妙な言い回しがなされる理由として、代執行費用の徴収と強制金を何度も賦課した場合の総額との関係 が挙げられる。すなわち、おおよそ代執行の実施費用は、義務者が自発的に義務を履行した場合と比べて高額に な る。 そ れ に も か か わ ら ず、 強 制 金 が 代 執 行 に 比 べ 寛 大 な( schonendere ) 手 段 と い い き れ な い の は、 反 復 し て 強 制 金 を 賦 課 し た 場 合 に は 代 執 行 の 費 用 よ り も 高 額 に な る か ら で あ る ( 38) 。 結 論 と し て は、 義 務 者 の 行 動 が 重 要 に な る ( 39) 。 す な わ ち、 代 替 的 作 為 義 務 に お い て 代 執 行 が 不 適 当 な 場 合 に は、 通 常 で あ れ ば 義 務 者 の 自 発 的 履 行 を 促 す強制金が、代執行に比べて適切な手段といいうるのであろう。しかし、義務者が自発的履行を行なわなかった 場合には、強制金よりも、代執行を実施したうえで代執行費用を徴収した方が、結果として義務者の負担は軽減 される。ただし、この場合であってもそれだけを理由として「代執行が不適当である」とはいえないのであるか ら、この点を重視すべきではないだろう。とすれば、代執行以前に強制金を賦課することで義務者の自発的履行 を求める方法が適切なのではないだろうか ( 40) 。

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法学研究 45・46 号(2015)   な お、 強 制 金 が 刑 罰 の 一 種 で あ る 罰 金 に 該 当 す る か、 と い う 議 論 が あ っ た ( 41) 。 し か し、 強 制 金 を 含 む 行 政 強 制 は 行 政 行 為 で あ り、 刑 罰 で も な け れ ば、 秩 序 違 反 法 に 従 っ た 措 置 で も な い。 そ れ ゆ え、 強 制 金 は 罰 金 で は な い。 強制金は、歴史的にも一八九一年に制定されたプロイセン警察行政法五五条において、純粋な行政強制手段とし て規定された。これは、プロイセン一般ラント行政法一三二条までの行政強制に関する規定に「執行罰」として 規定されていたものを、性質を変えずに「強制金」として規定したものである。それゆえ、強制金は義務違反行 為に対して金銭を賦課することにより義務の自発的履行を促すものであり、刑罰とは性格が異なる。 (5)直接強制   直 接 強 制 は 、代 執 行 と 強 制 金 で は 義 務 の 履 行 と い う 目 的 を 達 し え な い と き に 、執 行 官 庁 が 義 務 者 に 作 為 、受 忍 、 不 作 為 に 係 る 義 務 の 履 行 を 強 要 し 、 ま た は 作 為 を 自 ら 執 行 す る こ と で 、 行 政 目 的 の 実 現 を 図 る 手 段 で あ る ( 連 邦 行 政 執 行 法 一 二 条 )。 直 接 強 制 は 、 義 務 者 に 対 し て 強 制 権 の 発 動 に よ り 義 務 を 履 行 さ せ る も の と 、 執 行 官 庁 の 自 己 執 行 に よ る も の と い う 二 つ に 分 類 さ れ る 。 後 者 は 、 代 替 的 作 為 義 務 に つ い て 執 行 官 庁 が 自 身 で 直 接 に 執 行 す る と い う 点 で 、 第 三 者 に よ る 執 行 が な さ れ る 代 執 行 と 区 別 さ れ る 。 直 接 強 制 は 代 替 的 作 為 義 務 に も 非 代 替 的 作 為 義 務 に も 用 い る こ と が で き る 。 こ の よ う に 、 直 接 強 制 は 非 常 に 便 利 な 行 政 強 制 手 段 で あ る が 、 そ れ と 同 時 に 極 め て 厳 格 な 強 制 手 段 で あ る の で 、 最 終 手 段 と し て 用 い ら れ る ( 42) 。 そ し て 、 同 法 の 文 言 か ら し て 、 代 執 行 に 関 す る 関 係 に お い て も 、 強 制 金 に 対 す る 関 係 に お い て も よ り 高 い( höherrangig )位 置 に あ る と い え る ( 43) 。 す な わ ち 、 原 則 と し て 執 行 官 庁 は 、 非 代 替 的 作 為 義 務 と 不 作 為 義 務 の 場 合 に は 先 に 強 制 金 を 賦 課 す る こ と で 義 務 の 自 発 的 履 行 を 試 み な け れ ば な ら ず 、 代 替 的 作 為 義 務 の 場 合 に は 代 執 行 と 強 制 金 に よ る 義 務 の 履 行 を 試 み な け れ ば な ら な い 。

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ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ(石垣聡一朗)   次に、他の二つの手段と直接強制との関係について考察することにより、直接強制の位置づけを検討する。   ま ず、 強 制 金 と の 関 係 で は、 直 接 強 制 は 原 則 的 に 劣 後 す る 手 段 で あ る と い う こ と は 条 文 上 明 ら か で あ る ( 44) 。 強 制 金 で は 目 的 を 果 た し え な い と い う 要 件 は、 一 般 的 に は、 す で に 強 制 金 が 過 去 に 強 制 手 段 と し て 適 用 さ れ た が、 効 果 が な か っ た と い う と き に 充 足 さ れ る ( 45) 。 ま た、 直 接 強 制 の 適 用 場 面 と し て、 そ れ 以 前 に 適 用 し た 代 執 行 と 強 制金では目的を果たせないときばかりではなく、それらの手段の適用の前に、それらの手段では目的を果たせな い と い う こ と が 確 定 し て い る 場 合 も 挙 げ ら れ る ( 46) 。 強 制 金 と の 関 係 に 絞 れ ば、 強 制 金 が 不 適 当( untunlich )な 場 合 がこれに該当するが、強制金が不適当な場合とは、強制金の適用が完全に不適切であるか、または目的に適合し な い 場 合 を い う と さ れ て い る ( 47) 。 Rudolph は、 行 政 措 置 の 緊 急 性 を 考 慮 す る と 執 行 の 延 期 が 許 容 さ れ な い よ う な 場 合 に は、 強 制 金 の 適 用 は 不 適 切 で あ る と す る ( 48) 。 他 に も、 例 え ば、 開 催 が 禁 止 さ れ た デ モ や 集 会 の 禁 止、 も し くは占有している家屋の即時の明け渡しに対しても、強制金の適用は不適切であるとされているし、禁止された 営 業 活 動 が、 許 容 さ れ て い な い に も か か わ ら ず、 継 続 し て な さ れ て い る 場 合 に も 強 制 金 の 適 用 は 不 適 切 で あ り、 その代わりに直接強制という方法により、営業用地の閉鎖を命じうるとしている ( 49) 。   次に、代執行との関係について考察していく。ここでは、執行官庁による自己執行という場面が念頭に置かれ ることとなる。既述の通り、代執行と直接強制との違いは、第三者による執行であるか否かという点に求められ る。連邦行政執行法一二条一項の文言からすれば、代替的作為義務の場合には代執行を優先することが原則であ るが、例外が認められている。その例外として挙げられるのが、義務者に支払い能力がない場合の執行官庁によ る自己執行である。繰り返しになるが、代替的作為義務の強制に際して、それを実際に執行する者が公務員であ れば、直接強制としての自己執行であり、代執行との差異は、実際に執行する者が第三者でるかどうかという点 に し か 存 在 し な い ( 50) 。 さ ら に、 費 用 面 に 着 目 す れ ば、 代 執 行 に 比 べ 義 務 者 の 負 担 す る 費 用 は 少 な く な る こ と も あ

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法学研究 45・46 号(2015) り、むしろ直接強制の方が適当であると思われる場合も存在する。しかし学説は、同法の規定を見誤ってはなら な い と し て い る ( 51) 。 す な わ ち、 同 法 一 二 条 は 代 執 行 が 直 接 強 制 に 優 先 す る こ と を 規 定 し て い る の で、 仮 に 直 接 強 制の方が代執行に比べて穏当な手段であると思われたとしても、法を無視してまで直接強制を適用することは許 されない。それゆえ、執行官庁は、公務員が代替的作為義務を義務者の代わりに実施するときには、自己執行の 実施に際して代執行の方がなお適切かどうかを考慮しなければならず、義務者の支払い能力も考慮しなければな らない ( 52) 。   こ の よ う に、 直 接 強 制 は 代 執 行 と 強 制 金 に 対 し て 規 定 上 は 優 先 順 位 が 劣 後 す る 手 段 で は あ る が、 「 目 的 を 達 し えない」という要件は緩和されていることから、実質的には直接強制が代執行に対して必ずしも劣後する強制手 段であるとまでは言い切れないと考える。 (6)執行官庁の選択裁量に対する統制   連邦行政執行法に規定される三つの手段のうち、どの強制手段を執行に際して選択するかについては、執行官 庁 に 選 択 裁 量 が 認 め ら れ る。 も っ と も、 そ の 選 択 順 序 に つ い て は、 既 述 の と お り、 一 応 の 順 序 が 決 ま っ て い る。 例えば、強制金は、連邦行政執行法の規定に従えば代替的作為義務については代執行が「不適当である」ときに はじめて許容されるとされているように、その適用に一定の制約がある。そして、執行官庁に認められた裁量に 対する統制手段として、列挙主義と比例原則が挙げられる。具体的には、列挙主義により、新たな強制手段の創 設の禁止という統制を受け、その上で限られた強制手段からの選択に際して、比例原則という二段階の統制を受 けることになる。  

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ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ(石垣聡一朗) ①列挙主義   同法九条一項に明文上の規定はないものの、 同項から列挙主義 ( Numerus-clausus-Prinzip )が要求される、 と解 さ れ て い る ( 53) 。「 強 制 手 段 の 選 択 に 関 し て、 危 険 を 回 避 す る た め に 警 察 は 必 要 不 可 欠 な 手 段 を 採 り う る 」 と い う よ うな警察法が一般条項として設けているような規定を、警察法とは異なり行政執行法は規定していない。その代 わ り、 行 政 執 行 法 は 個 別 に 採 り う る 措 置 を 列 挙 し て い る。 ド イ ツ の 行 政 執 行 法 の 教 科 書 で あ る App/Wettlaufer に よ れ ば、 こ の よ う な 執 行 官 庁 が 採 り う る 措 置 は、 次 に 記 す 一 一 の も の が 挙 げ ら れ る と さ れ て い る ( 54) 。 す な わ ち、 a)動産の差押え (連邦行政執行法五条一項と同項が準用する租税基本法 ( AbgabenOrdnung:AO )二八五条一項) 、 b)債権とその他の財産権の差押え(連邦行政執行法五条一項と同項が準用する租税基本法三〇九、 三一八ならび に三二一条) 、 c)保全抵当登記についての申請(連邦行政執行法五条一項と同項が準用する租税基本法三二二条 一項二文ならびに民事訴訟法八六七条) 、 d)競売の申立て(連邦行政執行法五条一項と同項が準用する租税基本 法三二二条一項二文ならびに強制競売法一五条) 、 e)強制管理の申請(連邦行政執行法五条一項と同項が準用す る 租 税 基 本 法 三 二 二 条 一 項 二 文 な ら び に 強 制 競 売 法 一 四 六 条 )、 f)破 産 表 の 届 出( 連 邦 行 政 執 行 法 五 条 一 項 と 同 項 が 準 用 す る 租 税 基 本 法 二 五 一 条 二 項 一 文 な ら び に 破 産 法 一 七 四 条 )、 g)代 執 行( 連 邦 行 政 執 行 法 九 条 一 項, 一〇条) 、 h)強制金(連邦行政執行法九条一項,一一条) 、 i)強制拘留(連邦行政執行法一六条) 、 j)直接強制 ( 連 邦 行 政 執 行 法 九 条 一 項, 一 二 条 )、 k)民 事 訴 訟 法 八 九 四 条 の 規 定 す る 意 思 表 示 の 表 明 の 擬 制、 と い う 各 手 段 である。列挙主義が要求されている以上、執行官庁は、ここに挙げた手段以外の強制手段を新たに創設してはな ら な い ( 55) 。 な お、 執 行 手 段 の 選 択 の 際 に は、 金 銭 債 権 に つ い て は 上 述 の う ち 金 銭 債 権 に か か わ る a)か ら f)の 各 手 段 の み に 限 定 さ れ、 そ の 他 の 義 務 に つ い て は そ の 他 の 手 段 に 選 択 肢 が 限 定 さ れ る ( 56) 。 た と え ば、 義 務 者 が 自 身 の 土 地 に 建 て た 園 亭( Gartenlaube ) ( 57) の 取 り 壊 し を 拒 ん だ と し て も、 執 行 官 庁 は 電 気、 水 道 そ し て ガ ス の 供 給

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法学研究 45・46 号(2015) 停止により園亭の取り壊しの強制をしようとすることはできない。また、学生寮の部屋の明け渡しを、卒業証明 書 や 大 学 の 卒 業 証 書 を 発 行 し な い こ と に よ り 強 制 す る こ と も 禁 止 さ れ て い る ( 58) 。 す な わ ち、 強 制 手 段 の 選 択 に 際 し て 執 行 官 庁 が 列 挙 主 義 に よ る 裁 量 統 制 を 受 け る 以 上 は、 こ う し た 手 段 は 当 然 の こ と な が ら 選 択 し え な い ( 59) 。 こ のように、連邦行政執行法により列挙主義が採用されているドイツにおいては、選択しうる強制手段が相当程度 制約を受けることにより、執行官庁の裁量は狭められることとなる。 ②比例原則   列 挙 主 義 に よ り、 強 制 手 段 を 官 庁 が 独 自 に 創 出 す る 余 地 は な い こ と を 論 じ た が、 執 行 官 庁 は 強 制 手 段 の 選 択 の 裁 量 に 関 し て さ ら な る 制 約 を 受 け る こ と に な る。 そ れ が、 連 邦 行 政 執 行 法 九 条 二 項 が 規 定 す る 比 例 原 則 で あ る。 同 原 則 は 列 挙 主 義 と は 異 な っ て 明 文 上 の 規 定 が あ る ( 60) 。 比 例 原 則 は 適 合 性( Geeignetheit )、 必 要 性 ( Erforderlichkeit )、 適 切 性( Angemessenheit )と い う 3 つ の 原 則 か ら 成 る ( 61) 。 同 原 則 は、 連 邦 法 と 全 て の ラ ン ト 法に根拠を有する執行官庁の裁量に対して、より高位で包括的な原則であり、法治国家原則と基本権の本質に根 拠を有し、特に基本法一条一項と二条一項が同原則を要求していると解されている ( 62) 。   一 九 六 八 年 三 月 五 日 の 連 邦 憲 法 裁 判 所 判 決 は、 行 政 実 務 に 対 し て 特 に 大 き な 意 義 を 持 つ。 そ こ で は、 「 比 例 原 則 と 過 剰 性 禁 止 原 則 は、 あ ら ゆ る 国 家 の 行 為 へ の 包 括 的 な 指 導 原 理( Leitregeln )と し て、 法 治 国 家 主 義 か ら も た らされるのであり、 それゆえ憲法上の地位を有する」 と述べられている ( 63) 。ここから判例上も、 行政強制という 「国 家の行為」についても比例原則や過剰性禁止原則が妥当することは確立しているといえる。   すなわち、執行官庁が強制手段を選択する際には、前述の適合性原則、必要性原則、適切性原則に合致した手 段を選択しなければならない。例えば、強制金により不作為義務の履行が十分に期待できるにもかかわらず、直 接強制を用いて義務の履行を図ろうとすることは許されないということになるのだろう。カッセル行政裁判所の

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ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ(石垣聡一朗) 判 決 は、 「 違 法 駐 車 に よ り、 法 益 の 侵 害 が 一 時 間 以 上 継 続 し た 時 に は、 自 動 車 の レ ッ カ ー 移 動 は 比 例 原 則 に 適 合 する。しかし、わずかに駐車時間を超えたり、所有者を容易に見つけることが可能であったにもかかわらずレッ カー移動したりした場合には、過剰性の禁止に反するので、このような執行措置は違法である」としている ( 64) 。   こ こ ま で は、 各 強 制 手 段 相 互 に お け る 比 例 関 係 に つ い て 簡 潔 に 検 討 し て き た が、 個 別 の 強 制 手 段 の 中 で も 比 例 原 則 は 適 用 さ れ る こ と に な る。 そ れ が 顕 著 に 表 れ る の が、 強 制 金 の 金 額 の 決 定 で あ る ( 65) 。 あ る 特 定 の 義 務 の 違 反 に 対 し て、 最 初 の 強 制 金 の 決 定 が 戒 告 さ れ る 場 合、 法 定 上 限 額 を 戒 告 し て は な ら な い。 と い う の も、 そ う す る こ と に よ っ て、 義 務 の 履 行 が な さ れ な か っ た 場 合 に 2 回 目 以 降 の 強 制 金 の 金 額 を 上 げ る こ と が 可 能 に な る か ら で あ る。 ま た、 比 例 原 則 の 観 点 か ら は、 初 め て の 違 反 な の か そ れ と も 再 度 の 違 反 な の か と い う 義 務 違 反 の 執 拗 さ、 関 係 者 の 支 払 い 能 力 と 義 務 違 反 行 為 の 重 要 性 を 考 慮 し な け れ ば な ら な い ( 66) 。 例 え ば、 義 務 者 が、 強 制 金 の 戒 告 で は 官 庁 の 命 令 に 従 う 気 に は な ら ず、 そ し て 更 な る 強 制 金 の 戒 告 で も っ て、 義 務 者 に 対 し て 気 持 ち の 変 化 ( Sinnesänderung )を 生 じ さ せ る 根 拠 が な い 場 合 な ど に は、 更 な る 強 制 金 の 戒 告 は、 手 段 の 不 適 合 性 が 認 め ら れ ることから、比例原則に違反し違法となる ( 67) 。   以上述べたように、強制手段の選択に際して執行官庁に認められている裁量は、列挙主義と比例原則により制 限を受けることになる。 (7)小括   −連邦行政執行法九条一項に規定される各手段の位置づけ −   以 上 の 考 察 を ま と め る と、 連 邦 行 政 執 行 法 九 条 一 項 は 強 制 手 段 を 列 挙 し て い る が、 そ れ ら の 各 手 段 の 間 で は、 原則的には、代執行と強制金は位置づけが同等であり、これらの手段がその義務の性質に照らして第一次的に適 用される。その際の代執行と強制金との間の適用点の区別のメルクマールは、対象となっている義務が代替的作

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法学研究 45・46 号(2015) 為義務であるか、非代替的作為義務であるか、という点にある。そして、これらの強制手段が不適当であるとき に、直接強制が適用される ( 68) 。   しかしながら、既述のとおり、連邦行政執行法の中にはそのような執行手段の優先順位についての規定は存在 していない。また、 どの強制手段を執行官庁が選択するのか、 については官庁の裁量が認められていることから、 そこには法の解釈が必要となる。なお、既述のとおり、執行官庁の裁量に対しては、列挙主義と同条二項に規定 されている比例原則の適用を受ける。   同法一〇条から一二条の規定を解釈すれば、代替的作為義務の場合には、まずは代執行で義務の履行を図るべ きであるが、代執行が不適当な場合には強制金ないしは直接強制により義務の履行が図られる。この不適当な場 合について、念頭に置かれるのは、義務者の支払い能力が欠けている場合である。この場合について、学説は対 立しており、強制金を課すことができるとする説と、強制金ではなく直接強制で対処すべきとする説がある。前 者を採用した場合でも、強制金の賦課後も義務者が義務の履行をしないのであれば、直接強制へと移行すること と な り、 い ず れ に せ よ 直 接 強 制 の 適 用 場 面 と な る ( 69) 。 こ の 場 合 に 加 え て、 第 三 者 に よ る 執 行 が 不 適 切 な 場 合 に は、 執行官庁による自己執行という直接強制により義務の履行が図られることとなる。   非代替的作為義務の場合には、原則として強制金による義務の履行が図られる。しかし、強制金にも不適当な 場 合 が あ り、 そ の 際 に は 直 接 強 制 が 適 用 さ れ る。 そ の 一 例 と し て 時 間 的 な 逼 迫 性 が 認 め ら れ る 場 合 が 挙 げ ら れ、 具体的にはデモや集会の禁止や、営業活動の禁止などが挙げられる。   同 法 一 二 条 の 規 定 か ら す れ ば、 「 直 接 強 制 は 代 執 行 と 強 制 金 で は 目 的 を 達 し え な い と き 」 と い う 要 件 の 下、 最 終手段として規定されてはいるが、実際はそのハードルは高いとはいえない。しかしながら、直接強制を選択す る際の執行官庁の裁量は、 比例原則による制約を受けることになる。特に、 憲法上も要求される適合性、 必要性、

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ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ(石垣聡一朗) 義務者への最小の侵害、狭義の比例原則という比例原則の要求を満たさなければ、直接強制という手段を選択す ることはできない。   現在のドイツの行政強制手段は、柔軟性を有しているといえる。他方で、行政強制という行政権の権力行使の うち最も侵害の程度が強い行為に対する抑制という視点を、明確に感じ取ることができるといえるだろう。次章 以下では、補充的手段とされている代償強制拘留制度について検討していく。

第Ⅱ章

 

代償強制拘留制度について

  この章では、代償強制拘留制度について簡潔に説明する。なお、連邦行政執行法内での位置づけ及び判例の詳 細な検討については、後述の第Ⅲ章二節に譲り、この章では連邦行政執行法規定の各項についての総論的な説明 に留める。 第1節   制度概要   代償強制拘留制度は、義務者が任意にその義務を履行せず、強制金が課されたにもかかわらず強制金を支払わ なかった場合ないしはそれでも義務を履行しなかった場合に、義務者の身体を拘束する可能性を示唆することに より、義務の自発的履行を担保する制度である。代償強制拘留は、強制金の支払いを目的とするのではなく、義 務者による義務の自発的履行を目的とする。代償強制拘留の執行は、行政強制手段の中で最も厳格な基本権への 侵 害 で あ る た め ( 70) 、 論 者 の 中 に は、 連 邦 行 政 執 行 法 に 規 定 さ れ る 各 強 制 手 段 の 中 で 最 終 手 段 と し て 位 置 づ け る 者 もいる。この点については、第Ⅲ章で詳細に検討する。

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法学研究 45・46 号(2015)   わ が 国 に お け る 類 似 の 制 度 と し て は、 行 政 上 の 義 務 の 履 行 に 対 し て で は な い も の の、 刑 罰 と し て 科 さ れ た 罰 金を被告が支払えなかった場合に、 被告の身柄を拘束し、 労役させることで罰金の支払いに充てる労役場留置(刑 法十八条 四項)が挙げられる。 第2節   連邦行政執行法 16条1項の規定 (1)同項の内容   まず、同項は

“Ist das Zwangsgeld uneinbringlich, so kann das Verwaltungsgeri

cht auf Antrag der

Vollzugsbehörde nach Anhörung des Pflichtigen durch Beschluß Ers

atzzwangshaft anordnen, wenn bei

Androhung des Zwangsgeldes hierauf hingewiesen worden ist. Das

Grundrecht des Artikels 2 Abs. 2 Satz 2

des Grundgesetzes wird insoweit eingeschränkt.”

と規定する。   こ れ を 訳 す と、 「 強 制 金 を 徴 収 す る こ と が で き ず、 強 制 金 の 戒 告 に お い て そ の 教 示 が な さ れ て い る と き は、 行 政裁判所は執行官庁の申立てに基づき、義務者に対する聴聞を行った後、決定により代償強制拘留を命ずること ができる。基本法第二条二項第二段の基本権はこの限りにおいて制限される。 」 ( 71) となる。   こ こ か ら、 代 償 強 制 拘 留 制 度 は、 「 強 制 金 を 徴 収 す る こ と が で き な い と き 」 に 初 め て 適 用 さ れ る 強 制 手 段 で あ る こ と が 明 ら か と な る ( 72) 。 つ ま り 同 制 度 は、 強 制 金 の 存 在 を 前 提 と し て、 徴 収 さ れ え な い 強 制 金 に 対 す る 代 償 と し て の 性 質 を 有 す る に 過 ぎ な い、 補 充 的 制 度 で あ る ( 73) 。 こ の 補 充 的 制 度 に す ぎ な い と い う こ と は、 前 述 の 行 政 執 行 法 九 条 一 項 に 記 載 さ れ て い る、 国 家 が 採 り う る 行 政 強 制 手 段 と し て 列 挙 さ れ て い る 代 執 行( 一 〇 条 )・ 強 制 金 (一一条) ・ 直接強制 (一二条) の各強制手段の中に代償強制拘留が含まれていないことからも推測できる ( 74) 。また、 強制金の代償に過ぎないことから、代償強制拘留が実施されたとしても、当該義務が履行されたとみなされるわ

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ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ(石垣聡一朗) けではなく、当該義務の不履行に対して課された強制金が消滅するに過ぎない。   なお、代償強制拘留が刑罰に該当するか否かという論点があるので、ここで簡潔に紹介する。代償強制拘留制 度は、義務者の身柄を拘束するという点において、刑罰類似の制度である。しかし、代償強制拘留が前提とする 強 制 金 が 刑 罰 で な い 以 上、 そ れ に 補 充 的 に 位 置 づ け ら れ て い る 代 償 強 制 拘 留 制 度 も ま た、 刑 罰 と は い え な い ( 75) 。 こ の 点 で、 ド イ ツ に お け る 秩 序 違 反 法( Gesetz über Ordnungswidrigkeiten = OWiG ) 96条 に お け る 強 制 拘 留 ( 76) と は異なる性質の拘留制度である ( 77) 。 (2)連邦法と異なるラント法の規定   連邦法と多くのラント法における行政強制制度の中での代償強制拘留の位置づけは、既述のとおり、強制金の 補充的手段としてのものである。他方で、代償強制拘留について連邦法と異なる行政執行法を設けるラントとし て、ヘッセン州、ハンブルク州、ザールラント州、バイエルン州の各ラントがある。ヘッセン州では代償強制拘 留 制 度 の 規 定 が 存 在 し な い ( 78) 。 ハ ン ブ ル ク 州 と ザ ー ル ラ ン ト の 両 州 に お い て は、 代 償 強 制 拘 留 で は な く、 強 制 拘 留( Erzwingungshaft )と し て、 独 立 し た 行 政 強 制 手 段 と し て の 拘 留 制 度 が 設 け ら れ て い る ( 79) 。 バ イ エ ル ン 州 で は 名 称 は 代 償 強 制 拘 留( Ersatzzwangshaft )と い う 呼 称 で あ る が、 こ れ も、 連 邦 の 代 償 強 制 拘 留 制 度 と は 内 容 が 異 なり、ハンブルク州やザールラント州と同様、その実質は強制拘留に他ならない。これらのラントにおける拘留 制度は、 強制金に対する代償としてではなく、 独立した行政強制手段として規定されている。この点で、 もはや 「代 償 」 と は 言 え な い 独 立 の 強 制 手 段 と い え る。 も っ と も、 強 制 拘 留 と い う 手 段 の 過 酷 さ ゆ え に ( 80) 、 い ず れ の 強 制 手 段も効を奏さなかったときに、 最終手段として (代償) 強制拘留は適用される。それゆえ、 強制拘留の適用にあたっ て は、 そ の 他 の 強 制 手 段 の 適 用 で は 明 ら か に 効 果 が な い と 見 込 ま れ る こ と も 必 要 で あ る ( 81) 。 既 述 の と お り、 連 邦

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法学研究 45・46 号(2015) 行政執行法の規定によれば、代償強制拘留はあくまでも補充的手段として規定されている。そしてその理由とし て、代償強制拘留は、基本権、特に人身の自由に対する侵害の程度が強いことが挙げられる。これらのラントに お け る( 代 償 ) 強 制 拘 留 の 規 定 に つ い て も、 こ の 点 に 配 慮 し た 結 果、 ( 代 償 ) 強 制 拘 留 は 最 終 手 段 と し て 規 定 さ れているということができる。   こ の よ う に、 連 邦 と 異 な る 規 定 を 置 い て い る ラ ン ト が 存 在 す る が、 こ こ で は バ イ エ ル ン 州 の 規 定 つ い て 紹 介 す る ( 82) 。 バ イ エ ル ン 州 で は 代 償 強 制 拘 留 に つ い て、 同 州 の 行 政 送 達・ 行 政 執 行 法 三 三 条 及 び 三 七 条 一 項 三 文 に 規 定している。同法三三条一項によれば、連邦法があくまでも強制金の代償措置としているのに対し、同項の規定 する代償強制拘留は、 期待された直接強制が効を奏しない場合にも代償強制拘留の適用がある旨について規定し、 連邦の規定に比べ強制手段としての権限が強化されている。つまり、連邦の代償強制拘留はあくまでも強制金の 補充的制度として位置づけられているが、バイエルン州の規定では、強制金も直接強制も成果がない場合という 留保がなされてはいるものの、 独立した制度として代償強制拘留を用いるという点でその対象は広がっている ( 83) 。     ま た、 そ の 期 間 に つ い て も、 連 邦 行 政 執 行 法 一 六 条 二 項 ( 84) で は、 一 日 以 上 二 週 間 以 下 と 規 定 さ れ て い る が、 同 州では延長されている。すなわち、同州の行政送達・行政執行法三三条二項は、代償強制拘留の期間を一日以上 二 週 間 以 下 と 規 定 し て は い る も の の、 同 法 三 七 条 一 項 三 文 に よ り、 義 務 者 に 対 し て 複 数 の 義 務 が 課 さ れ て お り、 そ れ ら の 義 務 が 履 行 さ れ ず に 代 償 強 制 拘 留 へ と 移 行 す る 場 合 に は、 合 計 四 週 間 ま で 期 間 が 延 長 さ れ る ( 85) 。 こ の よ うに、バイエルン州では代償強制拘留の役割が連邦と比べて強化されている。   ラントにより代償強制拘留の規定は異なるが、強制金の補充的制度という連邦型、独立した強制手段としての ( 代 償 ) 強 制 拘 留 制 度 と い う バ イ エ ル ン 型、 規 定 そ の も の を 廃 止 す る ヘ ッ セ ン 型 と い う 三 種 類 の 規 定 が 現 状 で は なされている。

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ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ(石垣聡一朗) (3)代償強制拘留執行時の要件と手続   代償強制拘留を執行する際の前提条件は、行政執行法一六条一項に規定されており、それぞれ三つの要件と手 続に分けることが可能である。   要件としては、①「強制金を徴収することができないとき」②「強制金の戒告のときに代償強制拘留の教示が なされているとき」 の二つに加えて、 明文上示されてはいないものの、 ③ 「強制金が不可争的に確定しているとき」 が 要 求 さ れ る と 解 釈 す る 者 も い る ( 86) 。 す な わ ち、 義 務 の 履 行 が な さ れ ず、 執 行 官 庁 が 強 制 金 を 課 す 戒 告 を す る 際 に、義務の履行がなされないか、もしくは強制金が支払われない場合には、代償強制拘留へと移行する可能性を 予め義務者に教示しなければならない。そして、③の要件については、第Ⅲ章2節で検討するが、ここでも簡潔 にその内容に触れる。この要件は、代償強制拘留の強制金に対する補充的性格ゆえに生じる要件であるが、代償 強制拘留の前提となる強制金が不可争的に確定していなければ、代償強制拘留の前提が崩れてしまうため、強制 金の効力を不可争的に確定していなければならない、とするものである。これらは、代償強制拘留の補充的性格 を表すとともに、義務者の身柄を直接拘留するという過酷さゆえに、極めて厳格な要件を執行官庁に課すことに より、基本権に配慮する規定となっている ( 87) 。   代償強制拘留の手続に関する規定として、①「行政裁判所は執行官庁の申立てに基づき」②「義務者に対する 聴聞を行った後」③「決定により代償強制拘留を命じることができる」という三つの部分からなっている。この 裁判所レヴェルでの手続が要求される根拠として、基本法一〇四条二項の裁判官留保制度を挙げるられる。基本 法 一 〇 四 条 二 項 の 規 定 か ら、 国 民 の 自 由 の 剥 奪 を 許 容 す る こ と に 関 し て は、 裁 判 官 が 決 定 し な け れ ば な ら な い。 それゆえ、代償強制拘留という義務者の身柄を拘束する制度を執行するには、裁判所の決定が必要とされる。公 聴会を経て、裁判所は代償強制拘留を認めるか否かの決定をするが、義務者が病気または妊娠中であった場合に

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法学研究 45・46 号(2015) は、行政庁による申請を却下する。   なお、執行官庁が強制金を課す際に代償強制拘留の教示をせずに、裁判所に対して執行申立てをした場合につ いては、執行申立て後に義務者に対して代償強制拘留の教示をしたとしても、瑕疵の治癒は認められない。この 場合には、執行官庁は義務者に対して、再度強制金を課したうえで、代償強制拘留の可能性を教示しなければな らない。このように、代償強制拘留の実施に当たっては、要件、手続共に非常に厳格なものとなっており、代償 強制拘留に対する抑制的な姿勢がみられる。ただし、ノルトラインヴェストファーレン州行政執行法六一条一項 とザクセン州行政執行法二三条一項では、執行申立て後に代償強制拘留の戒告を行ったとしても、代償強制拘留 を認める旨の規定がなされており、連邦法とは異なる ( 88) 。   さらに、連邦行政執行法九条二項が定める比例原則も、代償強制拘留を決定するにあたり当然ながら適用があ る。代償強制拘留制度と比例原則の関係については第Ⅲ章2節4項で検討する。 (4)代償強制拘留の目的   代償強制拘留制度が強制金を前提としていることは既述の通りである。そこで、代償強制拘留の目的は、強制 金の徴収にあるのか、それとも義務の自発的履行に向けられているのかという論点がある。   この点、裁判所は執行官庁の申立てに基づいて代償強制拘留の可否を決定するが、執行官庁による代償強制拘 留の執行申立ては行政処分ではないと考えられている。それは、強制金の賦課という基礎となる処分が、効を奏 し な か っ た が た め に 代 償 強 制 拘 留 へ と 変 更 さ れ る に す ぎ な い た め で あ る と さ れ て い る ( 89) 。 換 言 す れ ば、 代 償 強 制 拘留の性質は、強制金が変質したものにすぎない。とすれば、変質する前の強制金の意義について検討する必要 があろう。

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ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ(石垣聡一朗)   前 述 の と お り、 強 制 金 の 目 的 は、 い う ま で も な く 義 務 者 に 課 さ れ た 義 務 の 履 行 を 目 的 と す る も の で あ る。 そ れゆえ、代償強制拘留制度の目的とするところは、強制金の支払いではなく、義務の履行にある ( 90) 。   ここまでの検討をまとめれば、代償強制拘留制度は、義務者に対して心理的抑圧効果により義務の自発的履行 を求める強制金を補充するための、さらに強度な心理的抑圧効果を有する制度であり、その目的は義務者による 義務の自発的履行にあるということが可能である。 第3節   連邦行政執行法 16条2項及び3項の規定 (1) 16条2項について   同 条 二 項 は

、“Die Ersatzzwangshaft beträgt mindestens einen Tag, höchstens z

wei Wochen.” と 規 定 し て い る 。 すなわち、代償強制拘留の期間についての規定であり、その期間は一日以上二週間以下とされている。州によっ てはこの規定が異なり、例えばバイエルン州では、既述の通り、複数の義務が課されていた場合には最長四週間 となる。 (2) 16条3項について   同条三項は、 “Die Ersatzzwangshaft ist auf Antrag der Vollzugsbehörde von der Justizverwaltung nach den Bestimmungen der §§ 802g, 802h und 802j Abs. 2 der Zivilprozeßordnung zu vollstrecken.” と 定 め て お り、 民 事 訴 訟 法 九 〇 一 条、 九 〇 四 条 か ら 九 一 一 条 ま で の 準 用 規 定 で あ る ( 91) 。 本 項 に よ り、 代 償 強 制 拘 留 の 際 に そ の 対 象 か ら 除 外 さ れ る 者 が 出 て く る。 例 を 挙 げ る と、 議 会 の 会 期 中 の 議 員( 民 事 訴 訟 法 九 〇 四 条 )、 健 康 状 態 が 不 安 な者(同法九〇六条)などである。なお、議員については、議会の承認があれば、代償強制拘留へ移行すること

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法学研究 45・46 号(2015) が可能である。 第4節   代償強制拘留制度運用の一例   ここまで連邦行政執行法一六条に基づく代償強制拘留制度の制度説明を行ってきたが、実際に代償強制拘留が 認容された判例を通じて、どのような場面で代償強制拘留が許容されているのかについて概観していく。ここで は、代償強制拘留が認容された近年の判例を紹介することで、現在でも代償強制拘留が運用されていることも併 せて論じていく。 (1)事実の概要、判旨   本 件( VG Ansbach10.Kammer ,2011.2.16,AN 10 V 11.00249 ) は、 義 務 者 に 運 転 免 許 証 の 返 還 命 令 が 発 せ ら れ たにもかかわらず、これを履行しなかったために五日間の代償強制拘留が認められた事案である。代償強制拘留 がどのような過程を経て認容されたかを確認するために、まずは本件の流れを時系列で追う。   二 〇 〇 九 年 一 二 月 二 一 日 の 決 定 に よ り、 申 立 人 ( 92) は、 被 申 立 人( Antragsgegner ) ( 93) に 対 し、 車 両 運 行 許 可 を 取 り消し、期限までに運転免許証を引き渡さない場合には強制的に没収することを戒告した。   その後、被申立人は、電話で取り決めた期日までに、運転免許証の引渡しをしなかった。これにより、申立人 は、被申立人は自発的には運転免許証を引き渡さないと結論づけた。   二〇一〇年九月一日の決定で被申立人は運転免許証を引き渡すことを義務付けられ、そしてその不履行の場合 に対して一〇〇〇ユーロの強制金が戒告された。それにもかかわらず、被申立人は義務である運転免許証の引渡 義務を履行しなかった。この強制金の戒告の際に、申立人は代償強制拘留の可能性も教示していたが、被申立人

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ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ(石垣聡一朗) は支払期限までに強制金の支払いもせず、申立人の執行措置は効果の無いままであった。   二〇一一年一月二四日の決定で、申立人は、バイエルンのアンスバッハ行政裁判所に対して、被申立人への代 償強制拘留の指示を申請した。被申立人はこの時点でもなお運転免許証の引渡しをしておらず、警察による直接 強制もなされたが効を奏さず、前述のとおり、強制金も効を奏しなかった。そこで、申立人により、強制金を課 す際に教示されていた代償強制拘留が、バイエルン行政送達・行政執行法三三条に基づいて申請された。   バイエルン州行政送達・行政執行法三三条は、代償強制拘留について規定しており、強制金と直接強制が効を 奏しなかった場合に、義務者の聴聞に応じて、執行官庁による代償強制拘留の申立てを認めることができる。   二〇一〇年九月一日の通達(決定)で申立人から被申立人に対して、代償強制拘留の可能性について明確に教 示された。裁判手続において、被申立人に対して法的な聴聞が規定通りに実施された。   同 裁 判 所 は、 「 五 日 間 の 代 償 強 制 拘 留 と い う 申 立 人 の 申 請 は、 運 転 免 許 証 書 の 返 還 と い う 目 的 に 対 す る 契 機 と なる」として、代償強制拘留の申請を認めた。 (2)考察   この判旨を前述の代償強制拘留の要件・手続に照らし、どのように認定されたのかについて検討する。まず要 件であるが、代償強制拘留の要件は、①「強制金を徴収することができないとき」②「強制金の戒告の際に代償 強 制 拘 留 の 教 示 が な さ れ て い る と き 」 で あ る ( 94) 。 な お、 既 述 の 通 り、 バ イ エ ル ン 州 の 行 政 執 行 法 は ① の 要 件 が 異 なり、強制金が効を奏しない場合に加えて直接強制が効を奏さなかった場合にも適用される。本件において①の 要件は二〇一〇年九月一日の決定により課された一〇〇〇ユーロの強制金が期限までには徴収されなかった。そ して、この決定の際に、強制金の戒告に合わせて代償強制拘留の教示もなされていることから、②の要件も充足

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法学研究 45・46 号(2015) する。また、二〇〇九年一二月二一日の決定で直接強制の適用も効を奏しなかったので、バイエルン州の規定に 照らしても、要件を満たす。   次に代償強制拘留の手続であるが、先に記した①「行政裁判所は執行官庁の申し立てに基づき」②「義務者に 対する聴聞を行った後」③「決定により代償強制拘留を命じることができる」というものである。こちらも要件 への当てはめを行うと、まず①の手続は、二〇一一年一月二四日の決定で申立人たる執行官庁がアンスバッハ行 政裁判所に申立てを行ったことにより充足され、裁判所による被申立人への聴聞もなされていることから②の手 続も充足し、二〇一一年二月一六日の行政裁判所の決定によって、③の手続も充足されたといえる。   このように、 運転免許証の所有者がその引渡義務を履行せず、 強制金も直接強制も効を奏しなかった場合にも、 厳格な要件と手続を踏まえた上で、代償強制拘留が認められているということが判明する。現在でもなお代償強 制拘留が実務において運用されている一例ということができよう。

第Ⅲ章

 

代償強制拘留制度の意義

  代 償 強 制 拘 留 制 度 は 非 常 に 過 酷 な 制 度 で あ る に も か か わ ら ず、 歴 史 上 削 除 さ れ る こ と は な か っ た ( 95) 。 す な わ ち、 慣習法として存在していた制度が成文法としての地位を得るに至り、現在まで存在し続けている。やはりそこに は、代償強制拘留制度に何らかの意義があると考えるのが自然なのではないだろうか。そこで本章では代償強制 拘 留 制 度 の 意 義 を 考 察 し て い く。 ま ず、 同 制 度 を め ぐ る 学 説 の 状 況 を 整 理 す る( 第 1 節 )。 そ の 上 で、 学 説 や 判 例を検討することで、 同制度の位置づけを図り (第2節) 、これまでの議論を踏まえたうえで小括を行う (第3節) 。

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ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ(石垣聡一朗) 第1節   代償強制拘留制度をめぐる現在の学説の動向   本 節 で は、 学 説 の 動 向 に つ い て 考 察 す る。 わ が 国 に お い て 代 償 強 制 拘 留 制 度 を 紹 介 し た 2 つ の 論 稿 が あ る が、 同 制 度 へ の 評 価 に つ い て は 差 異 が み ら れ る ( 96) 。 そ こ で、 両 者 を 比 較 し つ つ、 わ が 国 に お け る 代 償 強 制 拘 留 制 度 の 学説の動向をまとめる。また、ドイツにおいても、支払い能力が欠如する義務者に対して強制金を課すことが許 容されるか否かについて対立があるので、ここで紹介する。 (1)消極的評価   代償強制拘留制度が、義務者の身柄を拘留するという非常に苛酷な制度であることは第Ⅱ章で記したとおりで ある。それゆえ、同制度に対しても消極的な評価がなされることもある。わが国でこの分野に特化した唯一の研 究 で あ る 折 登 教 授 の 論 文 で も、 「 代 償 強 制 拘 留 の 実 効 性 確 保 手 段 と し て の 効 果 が 期 待 さ れ て い る ほ ど 無 い の で は な い か 」 と さ れ、 ま た、 「 稀 に し か 課 さ れ な い と 分 か っ て い る 手 段 に ど れ ほ ど の 威 嚇 的 効 果 が あ る と い う の で あ ろ う か 」 と さ れ て い る ( 97) 。 ま た、 わ が 国 の 行 政 強 制 に 関 す る 研 究 で は 第 一 人 者 で あ る 廣 岡 教 授 も 同 制 度 に 対 し て 否 定 的 な 見 解 を 述 べ て お り、 多 少 長 く な る が 引 用 す る。 そ こ で は、 「 こ れ は も う 日 本 で は と う て い そ ん な こ と は 問題にならないと思いますけれども、ドイツの場合は執行罰の徴収ができない場合は、それに代わるものとして 二週間以下の拘留がありますね。拘留はわが国では民訴ですら認めていないのですから、そんな制度の採用はと う て い 話 に な ら な い と 思 い ま す 」 と し て い る ( 98) 。 さ ら に、 廣 岡 教 授 の 包 括 的 か つ 詳 細 な 研 究 以 来、 ほ と ん ど 研 究 されてこなかった代償強制拘留制度に焦点を当て、代償強制拘留制度を立法論的に研究した西津教授も、実際に ド イ ツ の 行 政 実 務 担 当 者 に 対 し て 実 施 し た 現 地 調 査 を 基 に、 「 代 償 強 制 拘 留 制 度 は、 裁 判 所 も そ の 適 用 に は 一 般 的 に 極 め て 慎 重 で、 ほ と ん ど 適 用 事 例 は な い 」 と し ( 99) 、 さ ら に、 ミ ュ ン ヘ ン 市 に 対 す る 調 査 で「 代 償 強 制 拘 留 は、

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法学研究 45・46 号(2015) その執行について、行政庁が重大な決断をしなければならず、また、多大の時間及び労力を要するため、ミュン ヘ ン 市 に お い て も 実 績 は 皆 無 に 近 い 」 と し て い る ( 100) 。 ま た、 折 登 教 授 は、 ド イ ツ に お い て 同 制 度 が 現 存 し て い る の は、 「 わ が 国 と 異 な り、 プ ロ イ セ ン 期 か ら す で に こ の 制 度 が 存 在 し て い た と い う 歴 史 的 事 実 に あ る よ う に 思 わ れ る 」 と し て い る ( 101) 。 こ れ ら を 踏 ま え れ ば、 代 償 強 制 拘 留 制 度 に 積 極 的 存 在 意 義 を 見 出 す の は 困 難 で あ る よ う に 思える。   また、代償強制拘留制度が歴史上存続の危機に瀕したのは、同制度が前提とする執行罰(強制金)の撤廃が議 論された一八六〇年代から七〇年代にかけての時期くらいのものであり、それ以外は撤廃の議論がなされた形跡 はない。しかもその際の議論は、 執行罰を義務者に課すことが刑罰との二重処罰に該当するかというものであり、 代償強制拘留制度の過酷性や前近代性などが議論の俎上に載せられたことすらない。そうだとすれば、代償強制 拘留制度は、 撤廃するほどの積極的理由がないが故に存在している、 とする折登教授の説も納得できる。しかし、 このような消極的理由だけで制度は存続するものなのだろうか。 (2)代償強制拘留制度への積極的評価   代 償 強 制 拘 留 制 度 に 再 び 焦 点 を 当 て た 西 津 教 授 は、 折 登 教 授 の 見 解 ( 102) に 対 し て、 実 務 的 な 観 点 か ら 反 論 す る ( 103) 。 これは、前項でも簡潔に触れたが、西津教授が実施したドイツの都市の実務担当者への調査とわが国の自治体へ の ア ン ケ ー ト 調 査 に 基 づ く も の で あ る。 西 津 教 授 の 調 査 に よ れ ば、 マ ク デ ブ ル ク 市 の 実 務 担 当 者 が、 「 強 制 金 の 戒 告 に お い て 代 償 強 制 拘 留 の 適 用 可 能 性 が 警 告 さ れ る こ と に よ る 一 定 の 威 嚇 効 果 」 を 肯 定 し て お り ( 104) 、 ベ ル リ ン 市 シ ャ ル ロ ッ テ ン ブ ル ク・ ヴ ィ ル マ ー ス ド ル フ 行 政 区 の 担 当 者 も、 「 代 償 強 制 拘 留 が 存 在 し、 強 制 金 の 戒 告 に お いて代償強制拘留に関する警告を併せて行いうることは、義務を履行させるための威嚇力を確保する上で必要で

参照

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