• 検索結果がありません。

第3部 公共領域のマネジメント

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "第3部 公共領域のマネジメント"

Copied!
124
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

第3部 公共領域のマネジメント

(2)

第8章 公共領域のマネジメント

公共領域では、政策的課題ごとに、多様な当事者や組織が、制度の作動している 組織フィールドで協働する。組織単体、そして組織間関係以上に、複雑な利害を調 整することが求められる。このため、核に位置する行政組織が、いかに公共領域を マネジメントしていくのかという点は、公共領域の組織過程論にとって重要な一部 を構成している。ここにマネジメントとは、目標を達成するための一連の意思決定 と行動である(大住, 2005, p.3)。経営者の目的の明確化および具体化のプロセスと、

経営者の目標の達成プロセスの2つを内容にもつと理解する。

ここで、第3部でとりあげるマネジメントの対象である公共領域については、以 下のように解する。第5章で論じたように、公共領域は、政策的課題の解決を目的 として、多様な流れをふまえて形成される。前述したように、マネジメントが、目 標を達成するための一連の意思決定と行動であるならば、公共領域のマネジメント には、政策的課題解決のために、行政組織が核となって主導的に組織的形態として の公共領域を形成し、多様なアクターと対等な資格で意思決定を行い、行動する局 面も含むと考えることが適切である。そこで、第 3部で分析する「公共領域のマネ ジメント」でいう「公共領域」には、①形成後の公共領域、ならびに、②形成途上 の公共領域のいずれも含んでいると考える。

つぎに、本章では、組織間関係論を応用し、公共領域のマネジメントについて考 察する。内容としては、以下の4点について議論をおこなう。

第 1に、第 5章であげた 3つのパースペクティブ(資源依存、ネットワーク、制 度化)のマネジメントへのアプローチを再整理し、公共領域での活用を検討する。

第 2に、公共領域におけるコミュニケーションの側面について、組織間関係の議 論を参照して考察を行う241。近代組織論では、コミュニケーションが組織成立の 3 要素の一つとして重視されている(Barnard, 1938=1968)。組織間関係論が組織論 の応用であり、公共領域が組織間関係論の拡張であるとすれば、マネジメントにつ いても、コミュニケーションの観点より議論しておく必要があると考えられる。

組織間コミュニケーションの意義をふまえ、公共領域のコミュニケーション媒体 としての IT に注目し、電子政府ないしは電子自治体を活用した政策形成の意義と マネジメントに言及する(環境政策分野における政策過程と自治体ホームページと の関係ならびにコンテンツ分析については第 9章で行う)。

第 3に、ガバナンス・レジームにおいて、公共領域の核となる行政の包括的マネ

241 な お、組織間の ネットワー クによるコ ミュニケー ション構造 については 、信頼理論 とと もに、ネッ トワーク・パースペク ティブでふ れたところ であること から、ここ では 再論 しない。このほかコミ ュニケーシ ョン・パタ ーンについ ての議論に ついては 、山倉

(1993, p.133-136)を参照 。

(3)

ジ メ ン ト の あ り 方 に 議 論 を 展 開 す る 。 多 様 な 利 害 関 係 者 に 配 慮 す る ホ リ ス テ ィ ッ ク・アプローチの重要性を指摘する。そのうえで、組織間関係論におけるホリステ ィック・アプローチを確認しつつ、公共領域のマネジメントへ戦略マネジメント論 を導入する。本論文では、戦略マネジメント論のなかでも、ホリスティック・アプ ローチに立つ Balanced Scorecard(以下「BSC」という)に注目する(BSC のケ ーススタディおよび比較分析については第 10章で行う)。

最後に、以上を総括しつつ、公共領域の組織過程について論じる。

第1節

組織間関係におけるマネジメント論と公共領域

本節では、組織間関係論の3つのパースペクティブにおいてマネジメントがどの ように扱われているかサーベイする。サーベイの軸としては、公共領域との接点を 求め議論を集約する。資源依存パースペクティブでは、広範にマネジメントについ て論じられていることもあり、公共領域に関連する、主体間の調整メカニズムの側 面に焦点をあてる242 , 243

第1項 資源依存パースペクティブ

資源依存パースペクティブでは、組織が存続し成長していくためには、第 1 に、

他の組織から資源を調達し、他の組織に何らかのアウトプットをもたらさなければ ならないこと、第 2に、組織は自らの自治を保持し、他の組織への依存を回避して、

可能な限りパワーの拡大を目指す存在であること、を前提とする(山倉, 1993, p.67)。

そして、他の組織との依存関係をどのようにマネジメントするかについて考察する。

依存の類型にはいくつかあるが、公共領域では「協働」に着目するので、双方依 存、すなわち、複数の組織が双方向で依存している状態が基本である。双方向的で あるほど、「組織間調整メカニズム」が重要となる。

組 織 間 調 整 メ カ ニ ズ ム に つ い て は 、 ト ン プ ソ ン ら (Thompson and McEwen, 1958)がはじめて調整メカニズムの内実を明らかにした後、トンプソン(Thompson, 1967)がエマーソン(Emerson, 1962)のパワー依存モデルと結合し、組織が他の

242 組 織間関係論 については 、もっぱら 山倉(1993)の整理に 依拠する。 なお、第 3 章 3節 2項(5)で述べたよう に、資源依 存パースペ クティブと 協同戦略パ ースペクテ ィ ブと は、相互補 完関係にあ る。そこで 、以下資源 依存パース ペクティブ の部分で協 同戦 略パ ースペクテ ィブの議論 についても ふれること とする。

243 以 下に直接と りあげなか った主な論 点として 、「組織 の組織 」論(山倉, 1993, p.159-179)、すなわち、組織集合体の 組織化の領 域、および 、組織間変 動と変革(山倉, 1993, p.181-212)の議論が ある。組織 集合体の組 織化および 組織間変動 の議論につ い ては 、第 5章の 公共領域の 形成および 深化に関係 している。変革につい ては、外縁 が必 ずし も明確では ない公共領 域で議論す ることは、時期 尚早で はないかと 思われる。今後 の課 題である。

(4)

組織との依存をどのように回避するのかという点から分析を行った。

これらの先行研究を背景にして、国内では、組織間調整メカニズムの分類につい ては、主に山倉健嗣と佐々木利廣の 2人の論者がいる。

山倉は、フェファー=サランシック(Pfeffer and Salancik, 1978)が依存関係処 理のメカニズムとして、依存そのものの吸収、依存の部分的吸収、および、第三者 機関を通じての操作、の 3 つを析出した点に注目し、それぞれを、①自律化戦略、

②協調戦略、③政治戦略、と称して整理する(山倉, 1993, p.97-117)。

①の自律化戦略は、組織が他の組織への依存、すなわち「制約条件」そのものを 吸収したり回避したりする戦略である。例えば、直接制約条件そのものを吸収する 合併や買収のほか、多角化や部品の内製化等がある。

②の協調戦略は、組織が他の組織との依存関係を認めたうえで、交渉により合意 し、安定した関係を築く戦略である。依存、すなわち、「制約条件」そのものを全部 吸収するのではなく、限定された範囲で部分的に制約条件を吸収することを目指す。

非公式なものから公式なものの順に、(a)インフォーマルなメカニズムとしての共通 の期待あるいは暗黙の了解にもとづく規範形成、(b)契約、(c)役員の受け入れと兼任、

(d)合弁事業、および、(e)業界団体のようなアソシエーション、など幅広い。

③の政治戦略は、第三者機関の介入、あるいは、第三者機関への働きかけを通じ て、依存関係を間接的に操作する戦略である。

一方、佐々木は244、ガルブレイス(Galbraith, 1977)、フェファー=サランシッ ク(Pfeffer and Salancik, 1978)、ツァイトハムルら(Zeithaml and Zeithaml, 1984) 等にもとづき分類し、①自発的戦略、②協調的戦略、③戦略的工作に区分する(佐々 木, 1990, p.39-47)。②は山倉の②協調戦略に相当する。③は山倉の①自律化戦略 に相当する。①の自発的戦略は、組織のもつ資源等をもとに、制御可能な要素のみ を操作して対応する戦略である。製品多様化、広告、社会的責任への対応等がある。

なお、山倉の政治的戦略に対応したものも①に含まれるため、山倉の③よりも広い。

ところで、公共領域は、特定の政策的課題解決のために、行政組織を核として、

多様な当事者が協働する組織フィールドである。このため、2 人の論者の整理した 戦略のうち、協調戦略に関係する。そこで以下、山倉の協調戦略に掲げられた戦略 を公共領域で解釈してみたい。

(a)の規範形成は、公共領域にとって基礎となるものである。住民や企業から自治 体に対する不信感のある状況で協働することは困難であり、そもそも公共領域は形 成されないし、深化もないだろう。一方、たとえば環境政策の場合には、行政側か

244 佐 々 木 は 、 類 型 化 の 前 提 と し て 以 下 の よ う に 集 団 戦 略 へ の 流 れ を 整 理 す る 。 即 ち 、 企業 の対外的戦 略について は、①所与 の環境を前 提とした 「経営戦 略」、②環境を具体 的 な組 織からなる ことを前提 に戦略的選 択を行うと する「企業戦 略」、③特定 産業内の競 争 企業 の動向に注 目する 「産業 戦略」、④複 数企業によ る意思決定 をすすめる ことにかか る

「集団戦略 」、とに段階的に 区分でき 、①から④の 段階へと発 展してきた とする。佐々木 のい う集団戦略 は、山倉の いう組織間 調整メカニ ズムに近い ものと考え られる。

(5)

ら、企業や住民の自発的行動に期待する側面が規範化することもあるだろう。例え ば、ごみの不法投棄については、法令による規制の以前に、企業や住民の「自制」

という規範が作動しているはずである。

(b)の契約については、PFIに代表される、行政と民間とのパートナーシップで用

いられる戦略である。例えば、民間が施設建設後に、行政へ施設所有権を移転した う え で 、 維 持 管 理 に つ い て は 民 間 で 行 う 、 い わ ゆ る 「BTO(Build-Transfer- Operate)」方式でみた場合、設計・建設期間から運営期間にかけて発生する可能性 のあるさまざまなリスクについて、行政と民間のいずれがリスクを負担するかにつ いては、事業者選定の手続で明示されるとともに、厳しい交渉を経て事業契約に書 き込まれる。

(d)の合弁事業については、一時期盛んに設立された第 3セクター方式による事業

がある。行政と民間双方の「無責任」の表出によりコンフリクトを生じたり、経営 悪化する団体が散見されるものの、本来は、行政と民間双方の創意工夫が発揮でき る可能性のある戦略である。ただ、過去の失敗を繰り返さないために、(b)の契約も 併用して責任体制を確立し、明文化されたかたちでコントロールを行っていくこと が必要であろう。

(e)のアソシエーションについては、公共領域では企業のような形式は考えにくい。

企業では、法の範囲内で、限られた市場をめぐりシェアや利益を分け合う行動に出 ることはありえる。一方、自治体では一般に競争関係にあるとはいうものの、現実 には企業誘致など一部である。ただし、特定の政策課題に関して、まず自治体が研 究会のような会議体をつくって活動をはじめ、次のステップで、より公式の活動を 展開するために実務者協議会のような組織を設置して、民間企業等との間で交渉を するようなことはありえる。そこで、アソシエーションも選択肢となるものと考え る245

以上に対して、(c)役員の受け入れ等については、民間企業から専門的知見を有す る者を、行政組織の幹部に招くことが考えられる。たとえば、いわゆるIT関連企業 から自治体の「最高情報責任者(CIO: Chief Information Officer)」として受け入 れることがありうる246。ただ、行政組織の場合には、一般に総合職(ゼネラリスト)

の採用が多く専門的技術を持つ専門職(スペシャリスト)は少ないため(西尾, 2001,

245 な お、いくつか の自治体が 集まって会 議体を組織 し、国に対 して制度改 正や補助金 等の 要望を行う ことは協調 戦略ではな く、政治戦 略に分類さ れる。ただ し、公共領 域で は、 自治体が、 住民、NPOや 企業など と協働する ことを前提 とするため 、このよう な 政治 戦略につい ては考察の 対象外であ る。

246 も っとも、一 般的に自治 体のCIOには、職員が 就任する例 が多いよう である。都 道 府県 においては 33団体(70.2%)がCIOを任命 しており、 市区町村に おいては1,340

団体(73.3%)が任命して いる。しか し、これら の団体にお いて、CIOの役職は、都道

府県 については 副知事が17団体(51.5% )と 最も多 く、市 区町村 においては 助役が1,039 団体(77.5%)と 最も多い。内 部の職員が就 任するケー スがほとん であると推 察される。

(出 所)総務省 自治行政局 地域情報政 策室, 2007, p.4.

(6)

p.144-145)、 む し ろ 民 間 企 業 の 有 す る 専 門 的 ノ ウ ハ ウ を 調 達 す る こ と が 目 的 で あ る。すなわち、協調戦略の本来の趣旨である、組織が他の組織との依存関係を認め たうえで、交渉により合意し、安定した関係を築くというものではない。そこで、

協調戦略としての役員の受け入れについては考えにくいだろう。行政と特定企業と の癒着を防止する観点からも、この点は支持されると思われる。

しかしながら、役員の受け入れが協調戦略として利用が難しいとしても、行政組 織がさまざまな専門的ノウハウや、顧客としての住民のニーズ等を適切に吸収し、

外部環境と協調していくかという問題は残る。対応としては、一つには、比較的ゆ るやかな関係形成を通じて協調ないし交流を目指すタイプとして、委員会等への住 民等からの公募委員の採用が考えられ、もう一つには、ITを活用して掲示板やメー ルのような電子的方法で交流を図る道が考えられる。

以上から、公共領域における協調戦略としては、①規範形成、②契約、③合弁事 業、および、④アソシエーションを析出できる。

ところで、協調戦略では、自律化戦略と異なって、制約条件を完全には吸収して いない。このため、柔軟性の面で優れる一方で、他の組織ないし行為者の裁量を認 めるので、調整事項が増大する。

そ の よ う な 問 題 が あ る と し て も 、 協 調 戦 略 に は 以 下 の よ う な 利 点 が あ る ( 山 倉,

1993, p.103)。第1に、他の組織の情報を得ることができる、第 2に、依存してい

る他の組織に対するコミュニケーション経路を確保できる、第3に、他の組織から の支持という正当性を獲得できる契機となる、といった点である。これらのメリッ トについては、前述した、規範形成など、4 つの戦略を公共領域で用いる場合にも 類推することは可能であろう。

一方、協調行動を集合体レベルでみる、協同戦略パースペクティブでは、どのよ うにマネジメントについて議論しているのだろうか。

第 3章で素描したように、アストレイ=フォムブランは、協同戦略を、①同盟型

(同種組織間で間接的結びつき)、②集積型(同種組織間で直接的結びつき)、③接 合型(異種組織間で直接的結びつき)、④有機型(異種組織間で間接的結びつき)、

に4分類する(Astley and Fombrun, 1983)。

これを公共領域のマネジメントにあてはめれば、③か④になる。③の接合型では、

組織間の協定や契約締結や合弁がある。④の有機型では、ネットワーク型の組織的 形態や制度化がある。

協同戦略パースペクティブでは、組織の協同体レベルを分析対象していることや、

組織間の共生に焦点をあてる点で、資源依存パースペクティブとはアプローチは異 なるものの、そこでとられるマネジメントについては類似する部分がある。

(7)

第2項 ネットワーク・パースペクティブ

第 4章でも論じたように、ネットワーク・パースペクティブでは、社会ネットワ ーク分析と信頼理論とを複合する「埋め込み」アプローチが有力である。

すなわち、社会ネットワークのもつ構造特性、つまり、①関係的埋め込み、②構 造的埋め込み、③文化や制度的埋め込みに代表されるネットワークの質的特性が、

信頼に影響を及ぼす、ということを命題に議論をすすめる(若林, 2006)。

ただ、構造特性から信頼へ影響を及ぼす、というときの構造特性は、必ずしも静 的なものとしてはとらえられていない。

若林によれば、構造特性の内実を適切に把握することができるならば、「信頼のマ ネジメントも可能」である(若林, 2006, p.107)247。社会ネットワーク分析により、

組織がある信頼性を産み出す構造特性を持つネットワークを形成し、利用し、ある いは、変動させる戦略が可能であるとする。これが「組織の信頼戦略」である。

公共領域に直接関連するものとして、プロヴァンらも、社会ネットワーク分析を 活用してネットワーク構造を分析し、各アクターの関係を捉えてネットワークの持 続性を確認したり、協働する組織間の信頼の水準の高さや信頼の水準の変動などを 明らかにしたりすることで、コミュニティ開発をマネジメントすることが可能であ るとする(Provan et al., 2005)。

また、信頼の分析に社会ネットワーク分析「以外の」アプローチをとる研究でも、

マネジメントに言及する。スネイブリー=トレイシーは、福祉関係の NPO 間の協 働のケーススタディで、信頼形成に影響を与える要素を、内的要因と外的要因に分 けて分析する(Snavely and Tracy, 2002)。 このうち、内的要因としてのリーダー シップ、政治力および財政的資源については、マネジメントの対象となるという。

エデレンボス=クリジン(Edelenbos and Klijn, 2007)は、PPPプロジェクトの 失敗例における信頼関係の変化の分析のなかで、プロジェクト実施過程では、契約 条項が厳密に作動することで、複数の協働関係が、二者間の機会主義的な関係に転 じ、結果的に利害衝突による信頼状況の悪化が生じたと析出する。そして、この結 果をふまえて信頼関係の継続的マネジメントの重要性を強調する。

こうして、ネットワーク・パースペクティブにおいては、コミュニケーションの あり方が重要となり、信頼のマネジメントのあり方が大きなテーマとなっている。

そして、このことは公共領域にもあてはまる。

247 若 林は 、自動車 や電機産業 をモデルに 、大手発注 企業と外注 企業との間 の外注品質 管理 におけるコ ミュニケー ション・ネットワーク を分析して いる。この なかで、大手発 注企 業メーカー が、強くて 凝集的な紐 帯を構築し 、信頼を生 み出すこと は、目的達 成の ため の「ソフト な権力と管 理の手段」 であるとい う(若林, 2006, p.129)。

(8)

第3項 制度化パースペクティブ

制度化パースペクティブでは、制度的圧力のもとでは同型化が起こりやすい点を 指摘する。オルドリッチは、「組織が考慮に入れる主要な要素は、他の組織である」

という(Aldrich, 2008, p.265)。 同型化については、主なものとして、①強制的同 型化、②模倣的同型化、③規範的同型化である(DiMaggio and Powell, 1983, p.150;

DiMaggio and Powell, 1991, p.67; 山倉, 1993, p.53)。

制度は、組織フィールドに作用し、その内部で行動する特定の組織や行為者に対 して制度的な文脈を与えている。一般化された模範型、つまり規範や信念は社会化 の流れを経て「下へ」、つまり、組織フィールドへと至る(「トップダウン」の流れ)。

しかし、これらの模範型は、組織フィールドで同型化を通じて再生産されるだけ ではない。個人や組織などの解釈や創案によって、修正されたり再構築されたりも する(Scott, 1995=1998, p.228)。つまり、組織からの「ボトムアップ」の流れ も 存在する。組織と組織の行為者が、制度の構造を創り出すことに対して、より能動 的でより大きく関与することもありえる。環境からの圧力に対する解決策として、

独 特 な 文 化 が 創 造 さ れ る よ う な 「 非 合 理 的 な プ ロ セ ス 」 も 生 じ う る (Scott, 1995=1998, p.227)。

以上を受けて、スコットはいう。

「 組 織 は 環 境 に よ っ て 影 響 さ れ た り 、 環 境 に よ る 侵 入 を 受 け た り す る こ と さ え あ る が 、 組 織 は ま た 、 こ れ ら 影 響 の 企 て に 対 し 、 創 造 的 に ま た 戦 略 的 に 反 応 す る こ と も 可 能 で あ る 。 組 織 は 、 類 似 し た 圧 力 に 直 面 し て い る 他 の 組 織 と 協 力 し て 行 動 す る こ と に よ っ て 、 環 境 か ら の 要 求 に 対 し 、 と き に は 反 撃 、 抑 制 、 出 し 抜 き 、 あ る い は 要 求 の 再 定 義 を お こ な う こ と が で き る 。・ ・( 中 略 )・ ・ 組 織 は 、 そ れ が 置 か れ た 制 度 的 環 境 の 産 物 で は あ る が 、 大 部 分 の 現 代 的 組 織 は 、・ ・( 中 略)・・チェス盤を積極的に利用する棋士(active players)として構築されてい る」(Scott, 1995=1998, p.211)。

こうして、制度化パースペクティブにおいても、制度的圧力に直面しつつ、組織 フィールドに位置する組織や行為者が、制度に戦略的に働きかけることを認め、マ ネジメントの可能性を肯定する。具体的なマネジメントの内容については、このパ ースペクティブでは必ずしも十分に明確にされていないものの、組織フィールドに 対する制度の内容((a)意味のシステムや行動パターン、(b)構成的・規範的規則、

(c)規制・強制プロセス)を解釈し、組織内部の行為者側からの戦略的選択あるい は創案を検討していくこと(「制度解釈―戦略的選択・創案」プロセス)が、制度化 パースペクティブにおけるマネジメントの基礎となるものと解される。

(9)

以上みてきたように、公共領域のマネジメントへ展開可能な手法として、資源依 存パースペクティブないしは協同戦略パースペクティブでは、①規範の形成、②契 約、③合弁、④アソシエーション、⑤ネットワーク型の組織的形態、がある。また、

ネットワーク・パースペクティブでは、埋め込みの操作等による信頼関係のマネジ メントがある。制度化パースペクティブでは、具体的な手法について抽出すること が難しいものの、「制度解釈―戦略的選択・創案」プロセスへの配慮を指摘すること ができる。

(10)

公共領域のコミュニケーション―電子政府によるマネジメント 第2節

第1項 組織間コミュニケーションの意義

第 2 章第 1 節で論じたように、組織が成立する 3 要素は、バーナードによると、

第1に協働意欲、第 2に共通目的、そして第 3に伝達、すなわちコミュニケーショ ンである(Barnard, 1938=1968, p.85)。共通の目的があり、組織のなかで伝達が おこなわれ周知されていく必要がある。シンボル解釈やイメージ操作が可能な人間 システム(Boulding, 1956)として機能するには、コミュニケーションを通じた社 会的交換が不可欠である。

このことは組織間関係にもあてはまる。山倉は、組織間コミュニケーションにつ いていくつかの局面から意義を明らかにしている(山倉, 1993, p.71-74)。ここで は、組織間コミュニケーションの内容と機能について論じる。

組織間コミュニケーションの内容には 3 つある。第1に、2つ以上の組織間の社 会的交換のプロセスである。組織間では、物の売買に代表される経済的交換が行わ れるのが通常であるが、コミュニケーションを通じた情報のやりとりを含む社会的 交換も行われる。第 2に、組織間コミュニケーションは、組織から他の組織への意 図にもとづく働きかけである。これは組織成立の 3要素のうちの一つである協働意 欲に関連する。組織間関係の成立に際しても、何らかの協働意欲ないし協働意図が あり、伝達されて成立するのが一般であろう。第 3に、組織間コミュニケーション では、組織間の意味の形成と意味の共有がおこなわれる。山倉によれば、コミュニ ケーションは「単なる情報交換としてではなく、2 つ以上の組織間で意味が伝えら れ、解釈され、新たな意味を形成・共有していくプロセスである」(山倉, 1993, p.73)。

次に、組織間コミュニケーションの機能には3つある。第 1に、組織間調整機能 である。第 2に、組織間の価値共有機能である。第 3に、組織間の資源交換の円滑 化機能である。3 つの機能は並列関係にあるというよりは、調整の結果、共通の認 知図式が形成されて価値の共有が進み、結果として円滑な資源交換が可能となる、

というように、因果の連鎖にあると思われる。

それでは上記のような内容と機能をもつ組織間コミュニケーションにおける「媒 体」の特質をどのようにとらえればよいのか。

山倉は、組織間コミュニケーションは、その複雑性から、情報の多義性が生じや すいとみる。多義性から生じる不確実性は組織間の関係を不安定にすることから、

コミュニケーションの媒体を論じるにあたっては、情報処理能力の増大よりも、多 義性への対応こそが中核的課題となるとする(山倉, 1993, p.82)。すなわち、コミ

(11)

ュニケーション媒体の量的能力よりも質的能力を重視している248

第2項 公共領域におけるコミュニケーション・マネジメント

本項では、組織間コミュニケーションの規定と媒体のもつべき仕組みを、公共領 域におけるコミュニケーション・マネジメントにも展開してみることとしたい。

公共領域は、行政組織を核に協働がおこなわれる、現実の、あるいは、仮想的な システムである。協働は、複数の組織ないしは行為者が、対等な資格で、政策的課 題解決のために、領域横断的に行う、自発的かつ透明で開かれた協力関係ないし共 同作業である。コミュニケーションの必要性は組織および組織間関係の議論とパラ レルにとらえられる。そこで、基本的には、前述のコミュニケーションの内容、機 能および媒体の考察において、「組織間」とある部分を「複数の組織ないしは行為者 間」と置き換えればよい。

ただ、公共領域が行政を核としていることや、領域の外縁が不分明な場合がみら れるなど、組織間関係とは相違点があるために、検討しておくべきことがある。

第1に、公共領域では行政組織を核とするために、「協働」の定義にいう対等性や 透明性の確保が難しい。一般に個々の住民には政策立案能力がないため、住民が、

適切に政策代替案を提示できることはまれであろう249。また、通常、住民よりも行 政のほうが政策に関する情報量では優位に立つ。情報公開制度があるとしても手間 暇がかかるとともに、住民が制度に通じ、欲しい情報を的確に得ることには熟練を 要しよう。一部の自治体では、行政から積極的に情報開示を行う制度を設けている が250、普及するには時間を要しよう。こうして透明性の点にも難点があるだろう。

第 2に、組織文化の違いや行政独特の仕事の仕方等から、各主体間での意味の形 成が円滑にはいかない可能性がある。現代においても「繁文縟礼」が残っているし、

トラブルなどへの対処が民間企業並に迅速におこなわれないことも多いだろう。

第 3に、公共領域では協働の外縁が不分明であることから、どのようにして周縁 部 の ア ク タ ー と 適 切 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 図 る の か と い う 問 題 も あ る

248 山 倉は 、このこ とを「情報処 理能力から 意味移転能 力へ」という(山倉, 1993, p.83)。

ただ 、後者は、組織間にお ける意味「 形成」能力 といったほ うが適切だ と思われる 。山 倉も 別の箇所で 意味形成の 意義を強調 している( 山倉, 1993, p.81)。

249 こ のことは、第 4章 3節 4項(3)②(e)で も指摘し たように、 スコットも 「現代社会 で組 織フィール ドを産出し、か たちづ くる合理化 の枠組みは、主 として 知的職業と 公職 に従 事する者に よって構成 される 」(Scott, 1994b, p.71)と指摘 する。協働 する住民は 、 行政 組織と同じ 組織フィー ルドに属す る。

250 た とえば東京 都では、東京都情報公 開条例( 平成 11年3 月19日条 例第 5号 )の な かに 、「情報公表 制度」を設 けている(第 31 条 )。この制度は、基 本計画 や中間段階 の 計画 などで重要 なもの等に ついては、住民 などか らの請求を まつまでも なく、東京 都側 から 積極的に開 示する責務 を定めた制 度である(第 30条 情報公 開の総 合的な推進 に 関す る都等の責 務)。(出所 )東京都

(12)

(Stevenson and Greenberg, 2000)。多様な主体間での意味の形成と意味の共有に は慎重さが求められる。

そこで、公共領域におけるコミュニケーションは、組織間コミュニケーションよ りも一層複雑である。情報の多義性は、格段に増す可能性がある251

このため、組織間コミュニケーションとは異なり、情報処理能力の増大化と多義 性の解消への対応とを、「同時に」達成する必要があると考えるべきである。いいか えれば、コミュニケーション媒体の「量的能力」と「質的能力」の双方を重視しつ つマネジメントする必要がでてくる。ここに、電子政府あるいは電子自治体を利用 する、本来的な意義あるいは可能性を見いだすことができるのではなかろうか252。 それでは、仮想的なシステムとしての電子政府に関し、「量的能力」および「質的能 力」の内実ならびに充実については、どのように政策へ具体化され、議論されてきて いるのだろうか。公共領域に関連する事項にしぼりつつ、次項で概観してみたい。

第3項 電子政府・電子自治体による公共領域のマネジメント

まず、国レベルについてみる253。わが国では、21 世紀の社会経済の基盤となる

IT化への取り組みについて、国家戦略として強力に推進するために、2001 年 1 月

にIT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)を施行し、IT戦略本部を 設 置 し た。同 時 に 、IT国 家 戦 略とし て 「e-Japan戦 略 」 を 策 定 し、IT化 に 取 り組 ん で き た 。IT化 の テ ー マ と し て は 、 ① 超 高 速 ネ ッ ト ワ ー ク イ ン フ ラ 整 備 や 競 争 政 策 、

②電子商取引ルール等の整備、③電子政府の実現、および、④人材育成をあげ、目 標などを示した。

その後、2003 年7月に「e-JapanⅡ戦略」、2005年 2月には「e-Japan戦 略Ⅱ加 速化パッケージ」を策定し、戦略のレベルアップを図っている。ここでコミュニケ ーションのマネジメントの側面についてみると、加速化パッケージにおいて、「コン テンツ政策の推進」や「電子政府・電子自治体の推進」という項目について議論が おこなわれ、推進する政策として盛り込まれている。

251 第 7章のPFIの 公共領域で は、応募する 民間企業グ ループは一 般に複数で はあるが 、 比較 的数は限ら れている 。それでも 、審査手続き 段階では 、外縁は不分 明である 。この ため 、可能な限 り、行政組 織と、企業 グループの コミュニケ ーション( 例えば、行 政へ の質 問→行政か らの回答な ど)は、行政のホーム ページを通 じて開示さ れている 。公共 領域 の深化の過 程は、アク ター間のコ ミュニケー ションの深 化の過程で もある。

252 な お、いうま でもないが 「直接接触 で双方向で ある対面関 係」( 山倉, 1993, p.83)

の重 要性は、ITや電子政府 にとってか わられるわ けではない 。また、公 共領域での コミ ュニ ケーション にはこのほ か、半ば自 然発生的に 形成される インフォー マルなコミ ュニ ケー ションもあ る(山倉, 1993, p.74)。ただ、公共 領域では、多様なアク ターがかか わ るこ とから、基本的 には透 明性が重要 となり、公式な コミュ ニケーショ ンが中心に なる と思 われる。

以 下の国レベ ルの政策の 整理は、一 柳(2007)を参 考にし た。

253

(13)

もっとも、内容的には、さまざまな行政手続へオンライン手続を導入することに よる利便性の追求と行政コストの削減に代表されるように、行政事務の効率性や政 策コストの削減に重点をおいた政策が中心となっているように思われる。

次に、自治体レベルでの取り組みについてはどのように議論されているだろうか。

たとえば須藤は、対外的な電子申請システムや電子調達システムを構築し、基幹 システムと連携することで行政事務の効率化とサービスの向上を目指す、といった IT の利便性に注目した議論を行っている。すなわち、「電子自治体の構想は、まず は情報システムを適切に導入することによって行政プロセスをより効率化し、透明 性を拡大させること、すなわち業務と情報システムの全体最適化を含意」するとし ている(須藤, 2007, p.76)。

諸橋は、電子自治体実現の必要条件として、インターネットなど通信インフラ、

電子認証など技術インフラ、他団体とのネットワークシステム、事務効率のための 庁内情報共有環境、および、行政サービス向上のための窓口サービスのIT化をあげ る(諸橋, 2007, p.32)254

これらの議論は、基本的に電子自治体を行政事務の効率向上や利便性の向上の視 点でとらえており、国レベルと大差ない。そのこと自体に異論はない。ただ、本節 で論じてきたコミュニケーション、および、コミュニケーションのマネジメントの 側面については等閑視されているといわざるをえないであろう。

一方で、先進的な取り組みを行う自治体もある。市川市では、IT活用の実態を評 価するために、23 種類の評価項目を設定し、市民ニーズの観点から協働の状況をチ ェックする仕組みを作っている。具体的な評価項目としては、「市政や地域などへの 市民参加が促進された」「 情報 の公 開 や透 明性 、公 平性が 向 上し た」およ び「健 康 ・ 安全・教育・環境・市民自治など社会的課題の解決に向けて貢献した」といった評 価項目に、公共領域ないし協働に関する評価を盛り込んでいる(井堀, 2007, p.109)。

(やや主観的であるが)「質的能力」を評価しようとしている姿勢がうかがわれる。

以上をふまえ、コミュニケーションの見地からとらえた電子政府あるいは電子自 治体の意義と、マネジメントについて議論してみたい。

ITを活用した公共領域である電子政府あるいは電子自治体では、ホームページに おける情報掲載、掲示板あるいはe-mailなどを通じて、大量な情報を瞬時あるいは 段階的に交換することが可能である。このため情報伝達能力は格段に増す。データ ベースの構築も比較的容易であることから、情報の貯蔵も進む。電子政府あるいは 電子自治体における、情報フローとストックの充実によって情報処理能力の向上が 期待できる。そこで、コミュニケーション媒体の「量的能力」については、情報セ

254 な お 、 諸 橋 は 、 情 報 共 有 の 側 面 も 注 目 し 、 事 務 効 率 化 か ら 共 有 の 意 義 に ふ れ つ つ 、 地域 住民との情 報共有にも 注目する。地域 住民と の情報共有 環境整備を 行って、住民自 治の 実現を 図 っ て い く こ と が 電 子 自 治 体 の 姿 で あ ろ う と し て い る ( 諸 橋, 2007, p.42)。

もっ とも、具体 的な住民自 治の実現に ついてはふ れていない 。

(14)

キュリティの確保を前提に、充足できる可能性は高い。

一方、媒体の「質的能力」の面はどうか。使い方次第では、行政組織と、そのほ かのアクターとの間の意味の形成や共有が促進される可能性がある。しかしながら、

意味の形成や共有が促進されるためには、いくつかの条件があるだろう。第1に体 制整備、第 2に政策分野毎のコンテンツ整備、そして、第 3に多様なアクターの参 加ルートの確保である。以下にそれぞれを敷衍する。

第 1に、地域のさまざまな政策的な情報を蓄積し適切なタイミングで更新する体 制をととのえることが必要である。このためには、政策にかかわる情報発信に対す る行政サイドの組織および組織文化の改革や255、制度的な担保が前提となるだろう。

第 2に、行政が住民等に対して個々の政策分野の情報をきめ細かく、かつ、わか りやすく周知することも必要であろう。公共領域は特定の政策課題解決を目的とし て協働される。このためには、政策分野ごとの政策過程の特徴をふまえ、情報フロ ーが充実されることが前提となる。

第 3に、パブリックコメント、電子掲示板や電子会議室などを併用して、住民等 の側から電子的に参加し、情報交換ができるような枠組みのあることが必要である。

公共領域の社会的交換過程が組み込まれ、意味の形成と共有に配慮しつつ政策過程 へ生かされるかたちで運用されることが、「質的能力」の向上に求められる。

以上の考察をもとに、電子自治体ないし IT の活用による、コミュニケーション 媒体の「量的能力」および「質的能力」の両面に配慮した、公共領域のマネジメン トのあり方を規範的かつ仮説的に提示することができる。

公共領域のコミュニケーションの特質をふまえた電子自治体の枠組みには、電子 的な政治参加システムと、行政情報データベースに裏付けられた行政事務処理シス テムの両者を具備する必要がある。

さらに、政策分野ごとに、そなえるべき情報の要素を明らかにし、その要素を各 自治体のホームページのコンテンツ構造へ適切に反映することが求められる。

以上の仮説的な議論については、第 9 章において、具体的な政策分野を提示し、

自治体ホームページのコンテンツ構造にかかる実証的な検討をおこなう。

それでは、第 1章および第 2 章で論じた、行政部門をとりまく環境変化と NPM などの理論や実務状況、ガバナンスの議論、ならびに、本章第 1節および第2節で 論じてきた組織間関係論における手法ないし考え方や IT を公共領域に導入する場 合に、どのようなアプローチで行政組織全体のマネジメントに臨めばいいのだろう か 。 第3節 で は 、 公 共 領 域 の 包 括 的 マ ネ ジ メ ン ト に つ い て 考 察 す る こ と と し た い 。

255 組 織改革の点 は、縦割り の弊害も関 係する。総 務省の作成 した「地方 公共団体に お けるITガバナン スの強化ガ イド」では 、「組 織体制 の確立」と して、CIOのほか、情 報 担当 部門と業務 担当部門の 協力体制の 整備をあげ ている(総 務省, 2007)。

(15)

第3節

ガバナンスと自治体マネジメントの改革

第1項 ガバナンスとNPM

現在、行政が政策的課題に対して、的確に政策立案し単独で課題解決を図ること は、能力的に困難になっている。要因としては、政府が「自らの行動をうまく律し 切れていない」という面と、住民が、行政部門の行動を適切に「誘導・監視」でき ていないという 2つの側面から「ガバナンス」の問題を指摘できる(井堀, 2002,

p.28)256。伝統的なガバナンスつまり、行政部門が主役となって、政策立案と実施

にあたるという「政府による統治」が制度疲労を起こしている。このため、1990 年代中葉以降いわゆるガバナンス論が隆盛をみているところである。

ガバナンス概念は、第 2章第3節でも論じたように多義的な概念である。本論文 では、ガバナンスを、組織や個人が相互に関係する、社会を統治する仕組み(すな わち「構造」)とプロセス(すなわち「過程」)であると理解している(宮川, 2002)。

政策的課題解決の主体として、国家や地方政府などの政府以外の企業、国民、住民 そして NPOも組み込み、行政を核としつつ「協働」あるいは「協働化」を求める。

一方、国や自治体レベルでは新しい公共管理すなわちNPM「的」な考え方を導 入する動きが本格化しつつある。NPMは、論者によってさまざまに特徴づけられ ている。

フッドは、①専門家による実践的経営、②業績と指標、③成果による統制、④公 共部門のユニット毎の分解、⑤競争の導入、⑥民間部門の経営手法導入、⑦資源の 効率的活用の7点を構成要素として掲げる(Hood, 1996)。近時の国内では、①公 的セクターと民間セクターとの融合(民間経営手法の導入と競争)、②公的機関の分 解、③成果による管理の 3要素(田 邊, 2003)、 あ るい は① 成 果志 向、 ② 顧客 志向 、

③市場原理、④分権化の 4要素(山本, 2000)をあげている見解がみられる。4要 素をあげる見解は、前2者は企業経営に近く経営学(マネジリアリズム)が基本に あり、後 2者は新制度派経済学や公共選択論を基調とするものとし、NPMが対立 した要素を内包するものと指摘する。

これらの見解からNPMの要素を抽出すると、①成果志向と戦略経営といった企業 的経営手法、②擬似市場などもとりこんだ市場原理や競争原理、ならびに、③分権 指向の組織マネジメント、を共通するファクターとして抽出することができるだろ

256 井 堀は、中央 政府を念頭 に議論して いる。日本 の自治体を 地方「政府 」と位置づ け るこ とができる かは、現行 の地方税制 では財源の 自立を図る ことは厳し いといった 議論 など 、難しい面 もある。しかし 、ここ では、ガバ ナンスの主 体性におい て自治体を 含め るこ とに問題は ないとして 論を進める 。

(16)

257

「行政経営」改革にとってNPM的な考え方は重要な位置づけを有していることは 間違いない258。しかしながら、公的部門の担う行政サービス全てにおいて、市場原 理の基盤整備を図り、また企業的経営手法により、効率的効果的に行政経営を進め ていくことはできない。 な ぜな ら、NPMが結 果 にお ける 平 等性 を考 慮 しな いた め 、 強者の論理となることや、「小さな政府」論あるいは市場メカニズムへの過信から生 じる不平等などの指摘(北川, 2003, p.194)は看過しえな い から であ る259。 ま た 、 行政が人的、物的、あるいは、財政的に関与できない分野に対して、住民(コミュ ニティあるいは地域のNPO)が主体的に関与することが適切な場合もある。

以上から、NPMの重要なファクターである企業経営的手法自身に、ガバナンス で捉えた「協働化」といった考え方をも反映していく必要がある。ここでの住民や NPOは、消極的関与、つまり行政サービスの顧客から一歩進んでステイクホルダー

(利害関係者)としての役割を果たす。

上記に加えて、2007年度末で国と地方合わせて 737兆円程度の見込みである、

国内の公的部門が抱える長期債務を勘案すると260、投資家あるいは金融機関(以下、

「投資家」と総称する)の存在も看過しえない。結論からいえば、投資家は消極的 参加者としてガバナンスに影響を与える存在である。統治概念には一見すると無関 係に思われる。しかし、投資家は、行政サービスを企画立案したり、供給する過程 で直接的関与はしないにせよ、公的部門の償還確実性いかんで投資態度を決定し、

投資態度が公的サービス供給に多大な影響を及ぼす。この意味で投資家は、不可欠 なステイクホルダーである261。投資家サイドからの行政経営の監視とチェック機能 は、格付会社による格付けが地方債市場に大きな影響を及ぼす点にみられるように、

重みを増している。ただし、投資家は国民や住民とは異なり、能動的にガバナンス のプロセスに参加するというよりも、資金拠出あるいは信用供与という限られた領 域で関係する。市場から資金供給を受ける国または自治体は、投資家に対して情報 開示、すなわち、いわゆるディスクロージャー義務を負う。

257 な お、NPMは、理論とい うよりは、 公共セクタ ーを運営す るにあたっ ての一つの

傾向 といったほ うが正しい かもしれな い。また、仮に 理論で あるとして も日本では 市場 原理 の導入など 環境整備が 不十分との 指摘も多い 。

258 本 稿において は、行政部 門、たとえ ば、国や自 治体のマネ ジメントあ るいは運営 の こと を「行政経 営」と称す る。

259 た だし 、結果に おける平等 を極端に強 調すること は、自由競 争に基づく 経済社会の 活力 をそぎかね ない危険性 がある点に は留意を要 する。

260 財 務省ホーム ページ「国 ・地方の長 期債務残高 」

(http://www.mof.go.jp/zaisei/con_03_g03.html). 2007.11.6取得.

261 企 業のガバナ ンスである コーポレー トガバナン スでは、企業と株主の 関係のあり 方 を基 本としつつ も、企業の 関係者であ る株主、経営者 、従業 員、および 債権者等の 利害 調整 をするため のメカニズ ムととらえ られること があり、債権者もガバ ナンスにお ける 主体 の一角を占 めている。

(17)

ではこのようにガバナンスやNPMを捉えた場合に、自治体のマネジメント改革 へはどのようにアプローチすればよいのだろうか。

第2項 ガバナンス型自治体マネジメント改革―ホリスティック・アプローチ

大住によれば、国内自治体のマネジメント改革のアプローチとしては、①トップ ダウン型アプローチ、②ボトムアップ型アプローチ、③意思決定プロセス変革型、

④行政評価・公会計情報アプローチがある(大住, 2003)。①と②が業績評価システ ムの構築方法に、③と④が組織の意思決定の合理化と、そのための基礎情報の構築 を意味するものと指摘しており、構造とプロセスの両面におけるガバナンス改革の 影響が色濃く出ている。なかでも日本の自治体では、業績測定(Performance

Measurement)が強く意識された改革が行われている様子が窺われる262。NIRA

(総合研究開発機構)が中心となって構築を進めているベンチマーク(「NIRA型ベ ンチマーク」)の活用についても、この文脈でとらえられると思われる263。これら の取組みの方向性は「一般化」あるいは「総合化」と解される。

一方、古川(2004)は、NPMの導入に関連して行政改革の事例をあげ264、①静 岡県(「業務棚卸表」)と福岡市(「DNA運動」)はTQM(Total Quality Management:

総合品質管理)をベースに戦略経営をミックスしたもの、②三重県は事務事業評価 から施策評価に発展しており、予算編成つまり経営資源配分との連携を図っている こと、③三鷹市は「日本経営品質賞」の考え方などの導入による行政経営の効率化 努力と従来型の市民参加から協働(ガバナンスのうちプロセスへの市民関与)への 流れが特徴であること、④横須賀市は、②③の発展型として成果重視による戦略的 枠組みによる行財政運営を目指し、政策・施策評価と事務事業評価の統合化(「行政 評価システム」として構築)を図っていることなどを指摘する。

ちなみに横須賀市では、行政評価に住民参画と協働の枠組みを取り入れつつ、IT により庁内と庁外とのコミュニケーション活性化と情報資源の共有化による業務効 率化を推進している265。情報や人材育成の観点は直接の有形資産形成ではなく、中

262 国 レベルでも 成果(アウ トカム)を強く意識し た政策評価 システムの 導入が進め ら れて いる(林, 2004)。

263 基 本指標、結果 指標、成果 指標、コス ト指標の 4指標から 構成される。これら指 標 を総 合して「自治体 総合行 政評価シス テム」への 展開を図る とした(山本和 枝, 2003)。

264 な お 、以下の記 述では、筆者が取材等 にもとづい て整理しな おしたり 、説明を加筆・

修正 したりした 箇所がある 。

265 評 価プロセス は内部評価 (1 次評価 :部内、2次評価:組 織横断的な プロジェク ト チー ム)と外部 評価の 2段構えとなっ ており、外 部評価(3 次評 価)は 市民参画に よる

「ま ちづくり評 価委員会(公募 市民、学識 経験者、市 民団体 代表の計 20 名)」が行 う。

3次評価を経て 確定し、評価結果が公 表される 。知的情報資 源について は、市役所 内に

「都 市政策研究 所(UPI)」を設置し、 外部からも 研究員を招 聘しつつ活 発に政策研 究 を行 うと共に、職員 啓発な らびに職員 と一体的に 政策情報の 発信を行う など、人的 資源

(18)

長期的観点からの無形資産の構築とみることができる。これら4事例の方向性は「個 別化」あるいは「差別化」である266

このほかの改革に向けた取り組みとしてあげられるのは、行為規範の制定がある。

これには、国と地方の役割分担を規定しなおした一連の分権改革と制度改正(例と して地方自治法)があることはもちろんであるが、自治体独自の動きとして自治基 本条例、あるいは、まちづくり条例のような自主的な規範策定の動きがある267。分 権後、ガバナンスに基づいた行政経営の構造と発現形態を定めるうえで重要な規範 である。規範を定立し、それにしたがって行政サービスを提供するという場合、旧 来の行政管理的発想と同様と捉えられそうだが全く異なる。なぜなら、一部自治体 で導入されつつある自治基本条例は、住民参加あるいは住民との協働プロセスを経 て制定されている規範だからである。いうまでもなく、この規範策定は「個別化」

あるいは「差別化」の要素が全面に出る。

これらの改革の流れや事例から得られる特徴を一般化し、ガバナンスに配慮した 自治体マネジメント改革の要素として一般化すると表8-1のように整理できよう。

若干説明を加えると、まず、「改革の観点」としては、これまでの分析から、①戦 略的枠組み、②行為規範の定立、③政策評価システムの構築、④無形資産の充実、

そして⑤経営基盤の確立といった 5つの観点を抽出できる268。5つの観点に対応し て、「改革の戦略」が導き出される。例えば、①については、企業的経営手法と、経 営の中身をチェックし改善する経営品質賞などを導くことができる。改革の「方向 性」は、それぞれの自治体の取組み方である。個別化は理念や仕組みを導入するの では不十分であり、個々の団体の身の丈にあった取組みが必要であることを示す。

「ガバナンスとの関連」は、5つの観点が、ガバナンスの意義でいうプロセスとの 関連が強いのか、構造問題との関連が強いかを示す。例えば①は、戦略が組織の構 造を規定し、どのように戦略目標が具体化されるかというプロセスが重要である。

②はそもそもの出発点を決め、組織体の仕組みと行動の両者を構造的に決する。最 後に、「ステイクホルダー」は複雑である。例えば①は、住民はもちろんのこと、住 の拡 充に向けた 動きが活発 である。後 の章でとり あげるUPIのBSCも政 策研究の成 果で ある 。

266 一 見すると、TQM、評価 の予算編成 との連携、 市民との協 働や評価シ ステムの一 元化 といった道 具は普遍的 なように思 われる。し かしながら 、企業でのTQMに象徴 さ れる ように、個別性が強い 。経営品質 賞でも、評価枠組みは 一般的でも 、実際のプ ロセ スは 個々の組織 の性格や実 態を反映す る。

267 た とえば 、筆者 の居住する 東京都杉並 区では、自 治の基本理 念や区政運 営の原則( 区 政へ の住民参画 と協働の枠 組みを持つ 。区では「憲法 」類似 のものとす る)につい て定 めた 、「杉 並区自 治基本条例 (平成 14年 12月 3日条例第 47号)」がある 。

268 ① 戦略的枠組 みは静岡県 や福岡市の 取り組みか ら、②行為 規範の定立 は自治基本 条 例な どの規範定 立の動きか ら、③政策 評価システ ムは業績評 価にかかる 一連の動き から、

④無 形資産の充 実について は横須賀市 の取り組み から、⑤経 営基盤の確 立について は地 方債 市場の動向 (第 1項で 論じた)か ら導出した 。

(19)

民意思を汲んで行為する議会が利害を有しよう。また行政トップの首長はまさに枠 組みを決める当事者である。さらに、戦略が償還確実性を担保するという意味で、

投資家もステイクホルダーの一角を占める。②については全ての者が利害関係者足 りうることは自明であろう。③はもっぱら行政内部の道具であるが、議会に対し説 明可能な評価制度でなければならず、ひいては行政サービスの名宛人である住民も 最終的には射程に含まれよう。

表 8-1 ガバナンス型自治体マネジメント改革の要素

改革の観点 改革の戦略・戦術

(代表例) 方向性 ガバナンス との関連

主要なステイク ホルダー269

① 戦 略 的 枠 組み

企業的経営手法

TQM、経営品質賞 個別化 構造

+プロセス

住民+企業+議会

270 + 首 長 + 投 資 家

②行為規範 住民参加と協働

自治基本条例 個別化 構造

住 民 + 企 業 + 首 長・職員+議会+

投資家

③ 政 策 評 価 システム

業績測定

ベンチマーク 一般化 プロセス 首長・職員+議会

+住民

④ 無 形 資 産 の充実

人的資源再構築 情 報 資 源 の 蓄 積 と ITによる共有

個別化

+一般化

構造

+プロセス

首 長 ・ 職 員 + 住 民

+企業

⑤ 経 営 基 盤 の確立

財 源 ( 税 収 ・手 数 料 等)確保、効率的資 金調達(地方債)

個別化

+一般化

構造

+プロセス

住民+首長+投資 家

(出所)稲生, 2004, p.15を 一部修正

ガバナンスは、組織や個人が相互に関係する、社会を統治する仕組みとプロセス である以上、表から理解されるように、ステイクホルダーがネットワーク的かつ複 雑に関係し合うことを示している。このため、行政のマネジメントを進めるうえで 最 適解 を見い だす ことは 困難 である271。同 時に 、NPMが 効率 的で効 果的 な組織 マ

269 ガ バナンスの 議論では 、行政部門に おけるステ イクホルダ ーは政府と 理解されて い るが 、具体的プ レーヤーは 首長(厳密 には経営陣 。自治体で は部局長以 上となろう か)

と職 員とに二分 できる。本稿 で取り上げ るBSCでは 職員の位置 づけも重要 であること か ら、 あえて首長 と職員とに 二分して位 置づけた。

270 議 会は 、会期に もとづいた 会議体とい う性格から 行動に制約 がある。機能的には住 民の 代表として 戦略目標の 設定に関与 する。設定 後は、評価 システムを 通じて首長 を頂 点と する行政機 構の監視役 に任ずるこ ととなる。

271 特 に、行政は 、種々の権 力を有する 存在である ことから、単純にガバ ナンスを強 調 して も、実態が 伴わない可 能性が高い 。そこで 、以下の議論 を現実のマ ネジメント に具 現化 する場合に は、民主主義 との関係を 慎重に配慮 していくこ とが求めら れる。そこで 、

①行 政以外のス テイクホル ダーに対す る情報公開 ないし情報 開示、②行 政への監視 シス

(20)

ネジメントを求める以上、業績目標を定め、業績を測定し、評価する枠組みも備え る必要がある。そこで、多様な利害者集団ないしは利害関係者(ステイクホルダー)

への配慮を適切におこないつつ、一定の仮説にもとづいた戦略的経営をめざすアプ ローチ(以下、このような経営手法を「ホリスティック・アプローチ」という)が 重要となっている。ガバナンスでは、構造から見た場合にステイクホルダーの参加 と協働が重要であるが,プロセス面でも,行政のみが,顧客としての住民に対して 行政サービスを提供するという単方向でマネジメントをすることは適切とはいえな い。多様なステイクホルダーが関与する過程が,時に双方向となりつつ,所掌分野 に対する免責の前提としてのアカウンテビリティのもとで,合理的にマネジメント されることが必要である。

それでは、多様なステイクホルダーに配慮するホリスティック・アプローチとし てのマネジメント手法にはどのようなものがあるだろうか。

第3項 ホリスティック・アプローチにもとづくマネジメント手法

ホリスティック・アプローチについてはいくつかの手法が考案されている。組織 間関係論からは、山倉が、①労使関係論、②マーケティング・チャネル論、③利害 関係者アプローチ(stakeholder approach)の3つをとりあげている(山倉, 1993, p.225-236)。 こ の ほ か に 、 よ り 戦 略 性 を 強 め た も の と し て 、 ④ パ フ ォ ー マ ン ス ・ プ リ ズ ム 、⑤Balanced Scorecard(BSC)、 な ど が あ る。 以 下 、 各ア プ ロ ー チの 概 略について素描する。

①の労使関係論は、労使関係、とくに団体交渉の行動論的・組織論的研究を行う。

組織間関係論との関わりのある労使関係論としては、コーチャン(Kochan, 1980)

およびカッツ=コーチャン(Katz and Kochan, 1999)等がある。コーチャンは、

折衝過程、交渉結果、環境要因のほか、組織間構造としての交渉構造、経営組織の 特性、および、労働組合の特性を組み入れている。特に、後 3者の要素を十分に考 慮することで、ステイクホルダーの要因の分析が精緻になり、組織内および組織間 のパワー関係やコンフリクトについての組織論の成果を取り入れることが可能であ るとされる(山倉, 1993, p.226)。

②のマーケティング・チャネル論は、チャネルつまり製品の流れを、製造業者、

流通業者および消費者からなる組織間システムととらえる(Stern and El-Ansary, 1977)。 各 組 織 な い し 行 為 者 は 、 目 標 を 持 っ て チ ャ ネ ル 全 体 の 目 標 を 追 求 す る 。 追 テム、③ 第三者 にアウトソ ーシング等 を行う場合 のモニタリ ング、など の仕組みが 重要 であ る。

(21)

求がすすむと内部の役割分化が生じ、各組織ないし行為者が相互に依存する。一方、

コンフリクトが生じる。そこでコンフリクト解決が問題となる。また、組織や行為 者間のパワー行使関係も問題となる。マーケティング・チャネル論は、このような チャネル内部のステイクホルダーの存在と機能を考慮しつつ、コンフリクト解決と パワー行使状況を分析し、マネジメントに生かそうとする(山倉, 1993, p.228-229)。

③の利害関係者アプローチでは(山倉, 1993, p.230-236)、「経営戦略は変動 す る環境のなかで策定され実行される」ということを前提に、多様なニーズを有する 利 害 関 係 者 と の 関 係 を ど の よ う に マ ネ ジ メ ン ト す る か に つ い て 考 察 を 行 う

(Freeman, 1984)。 手 続的 には、(a)利 害 関係 者の 分析( 経済 的、政 治的 な影響 力 の 行 使 や 、利 害 関 係 の範 囲 を 識 別す る )、(b)組 織 を と りま く 社 会 状況 も ふ ま え た 組 織の役割の決定、(c)個々の利害関係者への対応を含んだ全社的な戦略プログラム策 定、と大きくは 3段階を経る。

(a)の利害関係者の分析では、個々の利害関係者の目的、利害および行動について 把握されるとともに、他の利害関係者との関係についても解析される。(c)の戦略プ ログラムの策定では、個々の利害関係者の行動把握等をふまえて、自分の組織との 関係が協調関係にあるのか、競争関係にあるかなどを分析し、戦略の方向性が決定 される(方向性には、攻撃型、防御型、ルール変更型、現状維持型の 4つのタイプ がある)。以上をふまえて、どのように組織が行動していくのかについての、全社的 プログラムおよび特定の利害関係者向けのプログラムが作られる。

④のパフォーマンス・プリズムは、ニーリーらが開発したもので(Neely, Adams and Kennerley, 2002; 清水, 2004)、利害関係者に対する配慮を因果の流れから再 構成し、戦略性をさらに強めたマネジメント・システムと位置づけることができる。

基本的な考え方として、戦略的マネジメントには、個々のステイクホルダーごと に 、 戦 略 、 プ ロ セ ス お よ び こ れ を 遂 行 す る た め の 能 力 (capability) を 保 有 す る こ とが必要であるとする。

具体的には、個々のステイクホルダーを満足させることで彼らから貢献を引き出 すために、戦略を策定し、戦略策定のためのプロセスを提案し、そのプロセスを実 行するための能力を模索する。これらは因果連鎖で結ばれている。この因果の連鎖 は、ステイクホルダーごとにひとまとまりと理解され、「プリズム」と称される。ス テイクホルダー毎に構築されたプリズムは、模式図として描かれる(「可視化」とい う)。ステイクホルダーは、(a)投 資家、(b)顧 客と中間業者、(c)従業員、(d)規制当局 とコミュニティ、(e)サプライヤー、であり、それぞれについてプリズムが策定され るため、合計5つのプリズムとして可視化されることとなる。

図  8-4  シャーロット市 BSC(2008&2009FY)
図 8 - 5   シャーロット市の BSC (再) ―Focus Area Plan の戦略目標     正
表  9- 1  集計環境情報マトリクス 通 番 2005年 2006年 都道府県 政令市 政策形成 協働 評 価 項 目 最高点 64団体平均 団体類型別平均(20 先進市Ⅰ.環境(1) ①対等性 消極的環境情報開示 1 情報公開の概況に関する報告書公開の有無 1 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 0.25 積極的環境情報開示 5 積極的情報開示に関する条例の有無 1 0.11 0.14 0.13 0.15 0.25 6 環境行政一般に関する広報(パンフや資料)の有無 1 1.0
表  10-1  エネルギー省の戦略目標 戦略目標(Objectives) 視  点 顧  客 ・顧客満足  ートナーシップ・有効なサービス/パ ・卓越した調達 業務プロセス ・簡素化されたプロセス ・老朽化した機器削減  ・契約手法の最も効果的な活用  ・時間どおりの供給  ・供給者の満足 学習と成長  ・被雇用者の満足  ・継続的改善に向けて構築された組織  ・質の高い職員 ・戦略情報へのアクセス 財  務 ・調達業務における最適なコスト効率性         (資料 ) DOE, 2004 よ り作成
+2

参照

関連したドキュメント

都市計画高度地区を次のように変更する。 面積 建築物の高さの最高限度又は最低限度 種類 備考 建築物の各部分の高さ地盤面からの高さによる。以下同じ。は、

BPSD 評価尺度は、 BPSD を客観的に得点化す る。多くは重症度で得点化するが、一部の BPSD 評価尺度では症状の出現頻度で得点化する。負担

第 4 章では、語用論の観点から、I mean

1 Focus ring 2 Lens hood 3 Distance scale 4 Distance index line 5 Focus limit switch 6 Focus mode switch 7 Tripod collar alignment index 8 Aperture index/Mounting index 9

重回帰分析,相関分析の結果を参考に,初期モデル

金沢大学は学部,大学院ともに,人間社会学分野,理工学分野,医薬保健学分野の三領域体制を

節点領域辺連結度 (node-to-area edge-connectivity), 領域間辺連結度 (area-to-area edge-connectivity) の問題. ・優モジュラ関数

今年度第3期最終年である合志市地域福祉計画・活動計画の方針に基づき、地域共生社会の実現、及び