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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

香気成分組成の類似度に基づいた香辛料の簡易判別 手法に関する研究

松下, 孝也

https://doi.org/10.15017/1931970

出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

香気成分組成の類似度に基づいた 香辛料の簡易判別手法に関する研究

松下 孝也

2018

(3)

目次

第一章 緒論 ... 1

第二章 香辛料のフィンガープリントの取得 ... 12

第一節 緒言 ... 12

第二節 実験方法 ... 13

第一項 試料... 13

第二項 試薬およびSPMEファイバー ... 16

第三項 HS-SPME法による香気成分の抽出 ... 16

第四項 GC-MS分析条件 ... 17

第三節 実験結果 ... 18

第一項 HS-SPME法における抽出条件の選択 ... 18

第二項 GC-MSによる香気成分の同定 ... 25

第四節 小括 ... 40

第三章 香辛料のフィンガープリントに対する類似性分析 ... 42

第一節 緒言 ... 42

第二節 パターン類似度の算出 ... 43

第三節 結果および考察 ... 44

第四節 小括 ... 50

第四章 香辛料のフィンガープリントに対する多変量解析 ... 51

第一節 緒言 ... 51

第二節 多変量解析 ... 52

(4)

第三節 結果および考察 ... 53

第一項 フィンガープリント行列に対するHCA ... 53

第二項 フィンガープリント行列に対するPCA ... 59

第四節 小括 ... 63

第五章 総括 ... 64

引用文献 ... 67

謝辞 ... 76

(5)

1

第一章 緒論

香辛料は主に熱帯、亜熱帯、温帯地方を原産とする植物の種子、果実、果皮、

葉、樹皮、花蕾、根茎など有効成分が多く含まれる部位から得られる食材である。

人類が香辛料を初めて使用したのは旧石器時代と考えられており、獣肉類や魚 介類を貯蔵および保存する目的で、風味の劣化や腐敗を抑制する効果のある植 物が経験的に選抜され、利用されてきた 1)。その後、古代エジプト、ギリシャ、

ローマ、インド、中国では特定の香辛料に薬効を見出し、薬として使用していた 記録が残っている2)。今日では香辛料は主に食品に特有の香り、味、彩りを付与 して食嗜好性を高める調味料として用いられている。また、食品の三次機能であ る生体調節機能(抗酸化作用、抗炎症作用、発がん抑制作用など)を併せ持った ものが多いため、世界的に注目され研究されている3), 4)。香辛料の種類は分類の 方法によって異なるが100種以上が知られており、国、地域、気候、民族、宗教 に固有のもので、広く世界の市場に流通していないものも含めるとその数倍に なる。さらに、植物学的に同じ種であっても色、形、味が異なる多くの栽培品種 をもつものも存在する5)

香辛料は種類が豊富で、多くの機能特性をもつことから大きな市場規模を有 する。主要な生産国は中国、インド、マダガスカル、インドネシア、ベトナムな どであり6)、植物ごとに成長に適した気候および風土で栽培され、世界中に流通 している。生産された香辛料は自国で消費するとともに世界各国へ輸出されて

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2

おり、主要な市場はアメリカ、EU諸国、日本、シンガポール、サウジアラビア などである6)。直近5年間の世界の香辛料輸入統計金額をFigure 1-1に示す。

Figure 1-1 世界の香辛料輸入統計金額7)

香辛料全体の輸入金額は2012年では約70億US$であったが、2016年には100

億 US$超へと拡大している。香辛料の品目(統計品目コード 8))ごとに着目し

ても増加傾向にある。

香辛料がもつ機能特性は固有の香気成分、呈味成分(辛味・苦味・酸味)、色 素、ポリフェノールなどに起因する。近年、これらの非栄養成分の機能が科学的 に解明されつつある。その結果、香辛料は単なる食材としてだけではなく、医薬 用、美容用、染色用など多目的に利用されるようになったことから9)、今後も世 界の市場規模は拡大するものと思われる。

日本では食生活の多様化が進み、新たな加工食品が増えたことにより、使用さ

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れる香辛料の種類と量が増加している 10)。また、エスニック料理の人気および 減塩志向の高まりからも、香辛料への関心が増している。しかしながら、日本で 使用される香辛料は熱帯性の植物が多く、生育に高温多雨な環境が必要である ため、季節ごとの寒暖差が大きく降水量も多くない日本での栽培は困難なもの が多い。そのため、日本の香辛料市場は大部分を輸入に頼っている。過去10年 における日本の香辛料輸入統計金額および数量をFigure 1-2および1-3に示す。

Figure 1-2 日本の香辛料輸入統計金額11)

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4

Figure 1-3 日本の香辛料輸入統計数量11)

香辛料全体の過去10 年の輸入数量は平均約10 万トンで横ばい傾向にあるもの の、輸入金額は2007年の約260億円から2016年の約360億円へと増加し、世 界市場と同様に増加傾向にある。品目ごとでは生姜、胡椒、唐辛子を多く輸入し ている。このような状況のなか、香辛料を含む植物性食品の貿易において形態の 似た別種植物の混入事例が報告されている 12)。今後も世界中で香辛料市場の拡 大が予想されるため、取引される香辛料について真正性の確認検査に有用な簡 便かつ適切な種の判別および確認方法が必要と考えられる。

主要な香辛料を植物学的に分類してTable 1にまとめた。植物学的分類では、

種を特徴付ける基本的な形態や性質を確認することで区別している。しかしな がら、同一科内で形態が類似していても香気成分、呈味成分、色素などの機能性 成分については異なるものが多い。さらに、香辛料の取引形態はホール(原型の まま乾燥させたもの)だけでなく、粗く砕いて乾燥させた断片や粉末の状態で流

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5

通することも多い。また、複数の香辛料を混ぜ合わせた製品も市販されている。

これらの場合、顕微鏡による微視的な形態学的検査では植物種の識別は困難な 場合が多い。

Table 1 主要な香辛料の植物学的分類13)

Class Family Common name

Apiaceae Anise, Caraway, Chervil, Coriander, Cumin, Dill, Fennel, Parsley

Asteraceae Chamomile, Chicory, Tarragon Brassicaceae Horseradish, Mustard

Fabaceae Fenugreek, Liquorice, Tamarind

Lamiaceae Basil, Lavender, Marjoram, Mint, Oregano, Rosemary, Sage, Savory, Thyme

Lauraceae Cassia, Cinnamon, Laurel Myristicaceae Mace, Nutmeg

Myrtaceae Allspice, Clove Pedaliaceae Sesame

Piperaceae Long pepper, Pepper

Rutaceae Chinese pepper, Japanese pepper Schisandraceae Star anise

Solanaceae Capsicum, Paprica Alliaceae Garlic, Leek, Onion Iridaceae Saffron

Orchidaceae Vanilla

Poaceae Lemongrass

Zingiberaceae Cardamon, Ginger, Turmeric Magnoliopsida

Liliopsida

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6

官能評価は試料や製品がもつ固有の特性を人の五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、

触覚)に頼って調べることであり、食品に関しては主に食感、香り、味が評価さ れている。香辛料はそれぞれ特有の風味をもっているため、標準となる対照試料 を用意し、その風味を判定基準として試料と比較することにより判別すること ができる。しかしながら、人の感覚には個人差があり、外的条件(照明、におい など)および内的条件(健康状態、意欲など)によっても変化する 14)。同じ条 件で実験を繰り返せば高確率で再現性のある結果が得られるものの、信頼性の ある結果を得るためには訓練されたパネリストによる試験が必要となる。また、

評価する感覚ごとに数値化された基準も存在していない。

植物の種を判別する方法として遺伝子解析も行われている。遺伝子型判別の ため、ハイブリダイゼーション、PCR(polymerase chain reaction)、DNAシ ークエンスが行われ15)、DNAバーコードの解析によって、栽培品種レベルまで 種を識別する方法が用いられている 16)。遺伝子解析の利点として、植物の物理 的状態、環境要因、栽培地、収穫時期、貯蔵方法などの外的要因に影響されない ことが挙げられる 17)。一方、欠点として、温度や pH など加工処理の影響によ っては DNA が断片化し、PCR による目的遺伝子の検出が困難となる可能性が ある。さらに、手順が煩雑で熟練した技術が必要であり、比較的高額な試薬が必 要とされる。そのため、遺伝子解析は種の判別において非常に有効な手法である が、普遍的な植物構成要素(一次および二次代謝物)の組成に基づいた安価で簡

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7

易的な判別法も需要があると考えられる。

このような背景から、本研究では植物に含まれる化学成分組成に基づいた種 の判別法を検討するにあたり、ケモメトリクス(計量化学)の手法を用いた。ケ モメトリクスは、化学データの規則性や特徴量の抽出、測定データのモデル化を 主な役割としており、得られた多変量データに数学的・統計的手法を適用して得 られた情報を最大化する手法である 18)。なお、ケモメトリクスを用いた代謝物 分析はメタボロミクスと呼ばれており、医療分野では診断マーカー探索や病因 解析、製薬分野では薬効や毒性を示すバイオマーカー探索、食品分野では品種判 別など応用範囲が広く、観測感度や解像度にこだわらなければ安価に実施可能 なコストパフォーマンスの高いツールである 19)。この技術は代謝物の分析結果 に対してパターン認識を行うことで、食品や生薬原料のプロファイリングによ る品質予測にも用いられている。香辛料は食品であるとともに、生薬として薬局 方に収載されているものもあることから、メタボロミクスを利用した香辛料の 種判別を試みることとした。

メタボロミクスに用いられる分析技術として、GC(gas chromatography)、 LC(liquid chromatography)、CE(capillary electrophoresis)が挙げられる

20)。その中でも GC-MS(GC-mass spectrometry)は高感度で分離能に優れて おり、化合物ごとに特徴的なマススペクトルが得られる。その網羅性と再現性の 高さからメタボロミクスに適した技術である。さらに、GC-MSデータは保持時

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8

間と質量分析データの両方からなっており、豊富なデータベースと優れたピー ク検出ソフトが普及しているため、成分の同定が比較的容易である。そのため、

本研究では GC-MS を用いて香辛料に特有の二次代謝物である香気成分(揮発 性成分)を分析し、そのクロマトグラムのパターン(フィンガープリント)を調 べた。

フィンガープリントは試料に含まれる複雑な成分組成を表現した特徴的なピ ークパターンである 21)。分光分析やクロマトグラフィーによって特定のピーク を分析し、それらのピーク群の面積を積分することによってピークリストを作 成すればフィンガープリントとなる。そして、複数のフィンガープリントについ て化合物名を説明変数、対応するピーク面積を目的変数としたデータ行列を作 成することにより、多変量解析が可能となりフィンガープリントのパターンを 比較することができる。フィンガープリント分析は、単に特定のマーカー化合物 を確認するだけでなく、フィンガープリント全体のパターンの同等性を評価す るケモメトリクスを応用した手法である。これは薬用植物の品質管理手法とし て、1991 年に世界保健機関(WHO)で公式に採用された 22)。その後、中華人 民共和国国家食品薬品監督管理局(SFDA)23)では生薬、米国食品医薬品局(FDA)

24)および欧州医薬品庁(EMA)25)ではハーブおよびその調製品の品質評価法と して採用された。また、トウガラシ26)や甘草27)の品種識別、サフラン28)やター メリック 29)の原産地判別に利用した報告もある。以上のことから、フィンガー

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9

プリント分析は香辛料の種判別手法としても有用であることが期待できる。

香辛料の香りを構成する揮発性成分は低沸点から高沸点にわたり、その数は 数百以上にも及ぶ。しかしながら、その濃度は極めて微量であるため、分析には まず香気成分の分離および濃縮操作が必要となる。香気成分捕集法には、減圧水 蒸気蒸留法、減圧連続蒸留抽出法、溶媒抽出法、固相抽出法、ヘッドスペースガ ス分析法などが用いられる。なかでも、ヘッドスペースガス分析法は、密閉容器 に入っている試料上部空間のガスを分析するため、試料から気化した揮発性成 分の総体として、鼻で嗅いだ際の匂いに近い組成で分析可能である。この方法は 試料調製が容易であり、試料の必要量が少ないという利点がある。

固相マイクロ抽出(SPME: solid-phase microextraction)法は、Pawliszynら により開発された抽出・濃縮・サンプリングの機能を一つの器具に集約した精度 の高い手法である 30)。溶媒が不要で、試料中の分析対象物質を抽出ファイバー によって直接抽出することができる。長さ 1–2 cm のシリカ製ファイバー表面 に、抽出相として成分が吸着する高分子化合物の膜(厚さ100 µm以下)がコー ティングされたSPMEファイバーを用いる。このファイバーは抽出用セプタム 貫通針に格納されており、使用時は貫通針からファイバーを押し出すことで、試 料のヘッドスペースまたは溶液中にファイバーを露出して目的成分を収着させ る。この方法は試料の形態(固体・液体・気体)を選ばず、分析結果に影響を及 ぼす煩雑な前処理が不要であるため、簡便かつ迅速な成分の抽出および濃縮が

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可能である。さらに、従来の香気成分分析で必要とした有機溶媒や抽出設備費を 節約することができる。目的成分が収着したファイバーは、GC装置の試料気化 室に挿入して目的成分を脱着させる。分析装置はGC だけでなく HPLC(high performance liquid chromatography)やCEなどにも応用可能である31)

本研究ではメタボロミクスの技術を用いて、香辛料の香気成分組成に基づい た簡便な種判別法の確立を目的とした。そこで本論文では、第二章において市販 の香辛料のヘッドスペース(HS)中からSPME法により香気成分を抽出し(HS-

SPME)、GC-MS 分析を行うことで、各香辛料のフィンガープリントを取得し

た。なお、HS-SPME法は、気相−液相間の分配係数に基づいた抽出法であるた め、抽出相のコーティング剤の種類、試料の温度・pH・攪拌状況、サンプリン グ時間・温度、共存物質などの影響を受ける。したがって、まず抽出条件の検討 を行った。

次いで、第三章では本研究で用いた香辛料のフィンガープリント間の類似性 を調べることで、フィンガープリントの特徴を把握した。類似性の指標としてパ ターン類似度 21)を用いた。類似性分析の結果、別種であるもののフィンガープ リントが類似したサンプルについては、判別対象成分を確認した。

最後に、第四章では GC-MS 分析で得たフィンガープリントから作成したデ ータ行列に対して、階層的クラスター分析(HCA: hierarchical cluster analysis)

を行い、類似するフィンガープリントをクラスター化した。さらに、主成分分析

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(PCA: principal component analysis)を行い、各クラスターの形成に寄与す る特徴的な成分を明らかにした。

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12

第二章 香辛料のフィンガープリントの取得 第一節 緒言

植物はメバロン酸経路や非メバロン酸経路によって、テルペン化合物に代表 される様々な揮発性成分を合成している。特に、香辛料は多くの香気成分を合成 しており、それらの含有量や他成分との組成比によって香りの特徴が異なる。し たがって、香辛料を判別するためには単に特定の主成分を探索し定量するだけ ではなく、それぞれの香気成分組成のパターンを確認する必要がある。一般的に 香辛料の主要な香気成分の種類および含有量は、同一種であればほぼ共通して いるものの、原産地、栽培条件、収穫時期、収穫後の加工工程などに影響される ことが知られている。しかしながら、本研究では上記条件が全て明確な標準試料 を入手することはできなかった。そこで本章では、原産地や販売元の異なる市販 の香辛料を収集することで、可能な限り多様なフィンガープリントの取得を試 みた。サンプルとする香辛料に対しては粉末加工のみを行い、他の前処理は行わ なかった。香気成分の抽出は HS-SPME法により行い、抽出効率に影響を与え るSPMEファイバーのコーティング剤、サンプリング時間およびサンプリング 温度についても検討を行った。

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13

第二節 実験方法 第一項 試料

香辛料のサンプルは日本の複数のメーカーが販売している36 種77 製品およ び中国にて購入した4種4製品を用いた(Table 2-1)。これらのサンプルは開封 後直ちに小型粉砕機で粉砕し、35 mesh(公称目開き425 µm)のふるいに通し て粉末状態にしたものを使用した。

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14

Table 2-1 本研究で使用した香辛料サンプル

Common name Scientific name Part Code Country of origin Distributor

Allspice Pimenta dioicalis L. Fruit AL1 Jamaica S&B Foods Inc.

AL2 Jamaica House Foods Corp.

AL3 Malaysia GAVAN Co., Ltd.

Anise Pimpinella anisum L. Seed AN1 Egypt S&B Foods Inc.

AN2 Spain House Foods Corp.

Basil Ocimum basilicum L. Leaf BA1 United States ㈱富澤商店

(Sweet basil) BA2 United States House Foods Corp.

BA3 Egypt S&B Foods Inc.

BA4 Unknown GAVAN Co., Ltd.

Black pepper Piper nigrum L. Fruit BP1 Malaysia S&B Foods Inc.

BP2 Malaysia GAVAN Co., Ltd.

BP3 Unknown S&B Foods Inc.

BP4 Unknown AEON CO., LTD.

Caraway Carum carvi L. Seed CW1 Unknown GAVAN Co., Ltd.

CW2 Egypt S&B Foods Inc.

Cardamon Elettaria cardamomum (L.) Maton Seed CD1 India S&B Foods Inc.

CD2 Unknown GAVAN Co., Ltd.

Chamomile Matricaria chamomilla L. Flower CM1 Croatia ㈱富澤商店

CM2 Unknown ㈱南阿蘇農園

Chervil Anthriscus cerefolium (L.) Hoffm. Leaf CV France S&B Foods Inc.

Chinese pepper Zanthoxylum bungeanum Maxim. Fruit peel CP1 China S&B Foods Inc.

CP2 China House Foods Corp.

CP3 China 沈阳馨味源食品有限公司

Cinnamon Cinnamomum verum Presl Bark CN1 Malaysia GAVAN Co., Ltd.

CN2 China S&B Foods Inc.

CN3 Unknown House Foods Corp.

Clove Syzygium aromaticum (L.) Merrill et Perry Bud CL1 Malaysia S&B Foods Inc.

CL2 Unknown GAVAN Co., Ltd.

Coriander Coriandrum sativum L. Seed CO1 Malaysia GAVAN Co., Ltd.

CO2 Morocco S&B Foods Inc.

Cumin Cuminum cyminum L. Seed CU1 India 朝岡スパイス㈱

CU2 Turkey S&B Foods Inc.

CU3 Unknown House Foods Corp.

CU4 Malaysia GAVAN Co., Ltd.

CU5 China 沈阳馨味源食品有限公司

Dill Anethum graveolens L. Seed DL1 India House Foods Corp.

DL2 India S&B Foods Inc.

Fennel Foeniculum vulgare Mill. Seed FL1 India S&B Foods Inc.

FL2 Unknown GAVAN Co., Ltd.

Fenugreek Trigonella foenum graecum L. Seed FG1 India S&B Foods Inc.

FG2 Unknown House Foods Corp.

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Table 2-1(続き)

Common name Scientific name Part Code Country of origin Distributor Ginger Zingiber officinale Rosc. Rhizome GN1 China S&B Foods Inc.

GN2 Unknown House Foods Corp.

GN3 China 沈阳馨味源食品有限公司

Japanese pepper Zanthoxylum piperitum DC. Fruit peel JP1 Unknown House Foods Corp.

JP2 Unknown GAVAN Co., Ltd.

Juniper Juniperus communis L. Berry JU Macedonia S&B Foods Inc.

Laurel Laurus nobilis L. Leaf LR1 Turkey S&B Foods Inc.

LR2 Turkey AEON CO., LTD.

Lavender Lavandula angustifolia Mill. Spike LV France ㈱富澤商店

Lemongrass Cymbopogon citratus (DC.) Stapf Leaf LE1 Unknown ㈱南阿蘇農園 LE2 Egypt S&B Foods Inc.

Marjoram Origanum majorana L. Leaf MA1 Egypt S&B Foods Inc.

MA2 Egypt House Foods Corp.

Nutmeg Myristica fragrans Houtt. Seed NU1 Indonesia S&B Foods Inc.

NU2 Unknown House Foods Corp.

Oregano Origanum vulgare L. Leaf OR1 Unknown GAVAN Co., Ltd.

OR2 Turkey S&B Foods Inc.

OR3 Chile House Foods Corp.

Parsley Petroselinum crispum (Mill.) Nym. Leaf PA1 United States S&B Foods Inc.

PA2 United States House Foods Corp.

Peppermint Mentha piperita L. Leaf PE Egypt S&B Foods Inc.

Rosemary Rosmarinus officinalis L. Leaf RO1 Morocco ㈱富澤商店

RO2 Unknown GAVAN Co., Ltd.

RO3 Albania S&B Foods Inc.

Sage Salvia officinalis L. Leaf SG1 Unknown GAVAN Co., Ltd.

SG2 Turkey S&B Foods Inc.

Savory Satureja hortensis L. Leaf SV France S&B Foods Inc.

Spearmint Mentha spicata L. Leaf SP1 Egypt S&B Foods Inc.

SP2 Egypt House Foods Corp.

Star anise Illicium verum Hook. f. Fruit ST1 China S&B Foods Inc.

ST2 Vietnam ㈱富澤商店

Tarragon Artemisia dracunculus L. Leaf TA France S&B Foods Inc.

Thyme Thymus vulgaris L. Leaf TH1 Unknown GAVAN Co., Ltd.

TH2 Morocco S&B Foods Inc.

Turmeric Curcuma longa Koen. non L. Rhizome TU1 India S&B Foods Inc.

TU2 Unknown House Foods Corp.

TU3 Malaysia GAVAN Co., Ltd.

White pepper Piper nigrum L. Fruit WP1 Indonesia S&B Foods Inc.

WP2 Malaysia GAVAN Co., Ltd.

WP3 China 沈阳馨味源食品有限公司

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16

第二項 試薬およびSPMEファイバー

本研究で使用した一連のn-アルカン(C8からC26の19種)について、octane、

tetradecaneおよび pentadecaneはナカライテスク株式会社(Kyoto, Japan)、 残りのアルカンは東京化成株式会社(Tokyo, Japan)から購入した。これらのア

ルカンをhexaneに混合し、n-アルカン標準混合溶液を調製した。

本研究で使用したSPMEファイバーはSupelco(Bellefonte, PA, USA)から 購 入 し た 。 抽 出 相 は polydimethylsiloxane ( PDMS, 100 µm )、

CarboxenTM/polydimethylsiloxane(CAR/PDMS, 65 µm)、

divinylbenzene/CarboxenTM/polydimethylsiloxane(DVB/CAR/PDMS, 50/30 µm)およびpolyacrylate(PA, 85 µm)がコーティングされた4種類を用いた。

これらのファイバーは使用前に230°Cで20分間コンディショニングを行った。

第三項 HS-SPME法による香気成分の抽出

粉末にした香辛料サンプル0.5 gを5 mL容ホウケイ酸ガラスバイアルに秤り 取り、テフロン製セプタムキャップで密閉した。このバイアルを恒温槽中で 30 分間加熱し、そのヘッドスペースへSPMEファイバーを露出させることで、揮 発性成分を抽出および濃縮(サンプリング)した。サンプリング後、ファイバー

は直ちに230°Cに設定したGC インジェクション部へ挿入し、気化室内で揮発

性成分を脱着させGC-MS分析を行った。なお、各サンプルの抽出操作はそれぞ

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17

れ3回ずつ行い、分析結果はその平均値(±SD)で示した。

第四項 GC-MS分析条件

SPME法でサンプリングした揮発性成分は、分離カラムとしてDB-WAXキャ ピラリーカラム(Length 30 m, Internal diameter 0.25 mm, Stationary phase film 0.50 µm; Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)を接続したGCMS- QP2010 Plus spectrometer(Shimadzu Corp., Kyoto, Japan)を用いて測定し た。キャリアーガスはヘリウムガスを線速度47.9 cm/sで用いた。インジェクシ ョン部の温度は230°C、スプリット比は 1:10に設定した。GC のオーブン温度 は40°Cで5分間保持した後、5°C/minで230°C まで昇温し15分間保持した。

イオン源およびインターフェースの温度はそれぞれ200および230°Cに設定し た。分離された成分は70 eVのEI(Electron Ionization)モードでイオン化し、

スキャンレンジはm/z 40–350に設定してマススペクトルを採取した。ピークの 同定は、1) GC-MS用ワークステーションであるGCMSsolution(version 4.3,

Shimadzu)を用いて、得られたマススペクトルと NIST 08 ライブラリー中の

マススペクトルを比較、2) n-アルカン標準混合溶液を用いて、それぞれの化合 物の保持指標(RI: retention index)を算出し、におい成分の文献データベース ソフトウェアである AromaOffice(version 5, Nishikawa Keisoku Co., Ltd., Tokyo, Japan)中の文献値と比較することにより暫定的に行った。

(22)

18

第三節 実験結果

第一項 HS-SPME法における抽出条件の選択

HS-SPME法における抽出効率は、種々の分析パラメータに影響される。本研

究では、加熱した粉末サンプルのヘッドスペースへSPMEファイバーを露出さ せたため、SPME ファイバーのコーティング剤、サンプリング時間およびサン プリング温度について条件を検討した。

SPMEファイバーのコーティング剤

コーティング剤の異なる4種類のSPMEファイバーを用いた香気成分分析の

結果をFigure 2-1に示した。36種類のサンプルの中から、シナモン・クローブ・

ナツメグの香味を兼ね備えた幅広い香気成分をもつ Allspice32)と貿易量が多い Black pepperおよびCorianderの計3種を選び測定した。SPMEファイバーは 非極性あるいは極性高分子のフィルムがコーティングされており、目的成分の 極性に合わせて選択する必要がある。香気成分は様々な極性をもった化合物と して多数検出されるが、本研究では特定の成分ではなくクロマトグラム全体に 着目するため、検出された全ピークの総ピーク面積を算出してそれぞれ比較し、

最大ピーク面積を得たファイバーを選択した。PDMS は非極性のためモノテル ペンやセスキテルペンのような非極性香気成分の抽出効率が高い。一方、PAは 極性をもつためアルコールやフェノールなど極性化合物の抽出効率が高い。ま

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19

た、CARはカーボン系担体、DVBは樹脂系担体であり、これらがコーティング

されたCAR/PDMSファイバーおよびDVB/CAR/PDMSファイバーは表面に細

孔が多数存在するため、揮発性成分全般の吸着能が高いとされる 33)。今回検討 したサンプルのうち、Allspice の主要香気成分は α-および β-caryophyllene、

eugenolであり、Black pepperの主要香気成分はδ-3-carene、β-caryophyllene、

ᴅ-limoneneであった。このうちeugenolを除く成分はモノテルペンまたはセス キテルペンであったため、本研究で用いたAllspiceとBlack pepperは非極性の PDMS ファイバーを用いたとき最大総ピーク面積が得られたと考えられる。な お、吸着能が高いとされるCAR/PDMSおよびDVB/CAR/PDMSについては、

PDMSほどの吸着量は得られなかった。一方、Corianderの香気成分は約50%

が極性化合物である linaloolであったため、PDMS によって得られた総ピーク 面積は小さく、CAR/PDMSを用いたとき最大値を得た。一般的に香気成分は極 性が低く脂溶性化合物が多いことから、本研究ではPDMSファイバーを使用す ることとした。

(24)

20

Figure 2-1 香気成分抽出量に及ぼすコーティング剤の影響

(サンプルは60°Cで30分間加熱した後、50分間サンプリングした)

(25)

21

サンプリング時間

サンプリング時間が香気成分の抽出量に及ぼす影響を検討した。サンプルを 60°Cで30分間加熱し、そのヘッドスペースへPDMSファイバーを露出する際 の露出時間を10、20、30、40、50、90分間に設定してサンプリングした結果、

検出された全ピークの総ピーク面積を比較した。サンプルは Allspice および

Corianderを選び測定した。その結果、いずれのサンプルも 40 または50 分間

以上のサンプリング時間により総ピーク面積が最大となった(Figure 2-2)。一 般的に香辛料を特徴付ける官能的に重要な成分は、比較的沸点の高いセスキテ ルペンやフェニルプロパノイドが多い。また、SPME 法では、抽出相への香気 成分の分配はおおよそ沸点に依存するため、高沸点成分の抽出率が高く、抽出時 間を長くすることでその抽出量を増やすことができる34)。しかしながら、90分 間サンプリングしても総ピーク面積はほとんど増加しなかったことから、本研 究ではサンプリング時間を50分間に設定した。

(26)

22

Figure 2-2 香気成分抽出量に及ぼすサンプリング時間の影響

(サンプルは60°Cで30分間加熱した後、PDMSファイバーを用いてサンプリ ングした)

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サンプリング温度

サンプリング温度が香気成分の抽出量に及ぼす影響を検討した。サンプルの 加熱温度およびヘッドスペースへPDMSファイバーを露出する際の温度を30、

40、50、60、70℃に設定して50分間サンプリングした結果、検出された全ピー クの総ピーク面積を比較した。サンプルはAllspiceおよびCorianderを選び測 定した。その結果、いずれのサンプルも総ピーク面積は60℃まで増加し、それ 以上の温度ではほとんど変化が見られなかった(Figure 2-3)。よって、本研究 ではサンプリング温度を60℃に設定した。

(28)

24

Figure 2-3 香気成分抽出量に及ぼすサンプリング温度の影響

(サンプルは30分間加熱した後、PDMSファイバーを用いて50分間サンプリ ングした)

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第二項 GC-MSによる香気成分の同定

第一項で HS-SPME法による香気成分の抽出条件を検討した結果、本研究で

は粉末サンプル0.5 gを秤量したガラスバイアルを 60°Cで30 分間加熱し、そ のヘッドスペースへ SPME ファイバー(PDMS)を 50 分間露出することで香 気成分をサンプリングした。抽出した香気成分をGC-MS分析に供した結果、各 サンプルから得られたトータルイオンクロマトグラム(TIC)において、検出さ れたピークごとに保持時間とピーク面積を出力した。続いて、保持時間はRIに 換算し、ピーク面積は検出された全ピークの総ピーク面積に対する割合(相対ピ ーク面積)に換算した。全ピークのRIに対し相対ピーク面積(%)をプロット して得られたグラフをサンプルのフィンガープリントとし、Figure 2-4 に示し た。

(30)

26

Figure 2-4 香辛料サンプルのフィンガープリント

(各フィンガープリントを示す略号は、Table 2-1のCodeに対応する)

Allspice Anise

Black pepper Basil

Caraway Cardamon

Chervil

Cinnamon Chamomile

Chinese pepper

(31)

27

Figure 2-4(続き1)

Coriander Clove

Cumin Dill

Fennel Fenugreek

Japanese pepper

Laurel Ginger

Juniper

(32)

28

Figure 2-4(続き2)

Lemongrass

Nutmeg

Parsley

Rosemary

Savory Sage

Peppermint Oregano Marjoram Lavender

(33)

29

Figure 2-4(続き3)

Star anise

Thyme

White pepper Turmeric

Tarragon Spearmint

(34)

30

得られたフィンガープリントにおいて、同一種で販売元の異なる香辛料間の差 を確認したところ、23 種類のサンプルは小さいピークに差はあるものの、全体 の形状としては類似していた。一方、Cardamon、Chinese pepper、Coriander、

Fenugreek、Japanese pepper、Oregano、Sageはそれぞれ販売元の異なるサン プル間で共通するピークは存在していたものの、フィンガープリント全体とし て類似していなかった。このことは原産地や加工工程などの違いによる影響と 考えられた。

フィンガープリント分析では特定の標識を決めずに代謝物を網羅的に解析す るが、ピークリストの作成は煩雑なピーク同定作業が必要であり、全てのピーク を正確に同定することも困難である。そこで本研究では簡易的な方法として、各 香辛料サンプルのTICから主要香気成分(ピーク面積の上位10成分)を同定し た。その結果をTable 2-2および2-3に示した。計81サンプルに対して、モノ テルペン炭化水素18 化合物、含酸素モノテルペン44 化合物、セスキテルペン 炭化水素33 化合物、含酸素セスキテルペン12 化合物、フェニルプロパノイド 12 化合物、その他 2 成分を暫定的に同定した。また、同定できなかった 17 成 分も不明化合物としてプライベートライブラリに登録し、以降のデータ解析で 用いることとした。

以下に各フィンガープリントの特徴を述べる。モノテルペノイド(モノテルペ ン炭化水素および含酸素モノテルペン)の抽出量が多いサンプルとそれらの相

(35)

31

対ピーク面積(%)は、Caraway(CW1: 85.1%, CW2: 95.9%)、Cardamon(CD1:

82.0%, CD2: 80.9%)、Chinese pepper(CP1: 65.0%, CP2: 76.8%, CP3: 51.9%)、 Coriander(CO1: 80.3%, CO2: 95.5%)、Cumin(CU1: 87.0%, CU2: 83.7%, CU3:

87.4%, CU4: 87.4%, CU5: 87.8%)、Dill(DL1: 82.0%, DL2: 82.9%)、Japanese pepper(JP1: 77.3%, JP2: 52.1%)、Juniper(JU: 58.3%)、Laurel(LR1: 61.5%, LR2: 72.8%)、Lavender(LV: 68.1%)、Lemongrass(LE1: 84.7%, LE2: 74.4%)、 Marjoram(MA1: 44.6%, MA2: 55.7%)、Nutmeg(NU1: 72.6%, NU2: 76.7%)、 Oregano(OR1: 49.7%, OR2: 51.1%, OR3: 80.2%)、Peppermint(PE: 71.2%)、 Rosemary(RO1: 86.6%, RO2: 67.2%, RO3: 76.7%)、Sage(SG1: 44.1%, SG2:

50.2%)、Spearmint(SP1: 47.3%, SP2: 66.1%)、Thyme(TH1: 47.3%, TH2:

60.7%)であった。CarawayとDillは共通する主要成分としてcarvoneおよび

ᴅ-limonene が検出され、これらは両者を特徴付ける成分であることが報告され

ている 35),36)。なお、Spearmint にも約 40%の carvone が検出されたが、

Spearmintは ʟ体、Carawayと Dillは ᴅ 体であることが報告されている37)。 本研究の手法では光学異性体は分離できず、両者を区別することはできなかっ た。CardamonとLaurelはeucalyptolおよびα-terpinyl acetateが主要成分で あったが、Cardamonは原産地により精油成分が異なり、linalyl acetateおよび sabineneが多いものも報告されている38)。Chinese pepperとJapanese pepper は日本名でそれぞれ花椒および山椒であり、いずれも共通してᴅ-limoneneが検

(36)

32

出されたが、両者の違いとして花椒には β-myrcene、β-phellandrene および sabinene、山椒にはeucalyptolおよびgeranyl acetateが検出された。Coriander の主要香気成分はスズラン様の穏やかなフローラル香気を感じる linalool39)で あったが、linaloolも含めp-cymene、α-pineneおよびγ-terpineneの組成は原 産地や栽培年によって異なることが報告されている40)。本研究で用いた 2 つの サンプルもこれらの成分に大きな差が見られた。Cuminはcuminaldehyde、p- 1,3-menthadien-7-al、p-1,4-menthadien-7-al、β-pineneおよびγ-terpineneが 主要成分であり、前半の 3 成分はカレーを想起するスパイシーな香気に寄与し ている41)。Juniperはβ-myrcene、α-pinene、sabineneなど、Nutmegはα-お

よびβ-pinene、sabineneなど、いずれもモノテルペン炭化水素が主要成分であ

った。Lavender は主要成分として linalool および linalyl acetate が検出され た。Lemongrassは大別してC. flexuosusとC. citratusの2種類が存在するが、

主要香気成分はいずれも geranial、β-myrcene および neral であることが報告 されている 42)。本研究で用いた 2 つのサンプルも同様の結果が得られた。

Marjoram は品種が多く、同じシソ科の Oregano や Thymeと形態が類似して

おり、香気成分も共通するものが多い。主要成分はcis-sabinene hydrate、α-お よび γ-terpinene などであった。Oregano と Thyme には特徴成分として carvacrol および thymol が検出された。Peppermint は特徴成分としてフレッ シュで冷涼な香気であるmenthone43)、menthyl acetate44)およびmenthol45)

(37)

33

検出された。Rosemaryは主要成分としてcamphor、eucalyptolおよびα-pinene が検出され、同じシソ科の Sage と camphor、eucalyptol などの共通する成分 が多く検出された。

次に、セスキテルペノイド(セスキテルペン炭化水素および含酸素セスキテル ペン)の抽出量が多いサンプルとそれらの相対ピーク面積(%)は、Allspice(AL1:

34.8%, AL2: 30.0%, AL3: 51.1%)、Black pepper(BP1: 34.6%, BP2: 33.8%, BP3: 40.5%, BP4: 49.0%)、Chamomile(CM1: 80.7%, CM2: 73.6%)、Cinnamon

(CN1: 49.1%, CN2: 69.2%, CN3: 65.9%)、Clove(CL1: 71.3%, CL2: 68.4%)、 Ginger(GN1: 58.7%, GN2: 70.5%, GN3: 74.6%)、Turmeric(TU1: 64.0%, TU2:

75.9%, TU3: 68.9%)、White pepper(WP1: 72.4%, WP2: 87.5%, WP3: 75.5%)

で あ っ た 。Allspice、Black pepper、Clove お よ び White pepper は β- caryophylleneが最も多く検出され、AllspiceとCloveに関してはスパイシーな 香 気 を 感 じ る eugenol46) も 検出 さ れ た。Cinnamon は 主 要 成分 と し て β- cadinene、α-copaeneおよび α-muuroleneが検出され、甘く温かみのある芳香 を感じるcinnamaldehyde46) も検出された。GingerとTurmericは共通してβ- bisabolene、curcumene、α-zingibereneなどが検出されたが、Turmericは特徴 成分としてturmeroneが検出された。Chamomileは主要成分としてbisabolol oxide AおよびB、β-farneseneが検出された。

フェニルプロパノイドはシキミ酸経路によって合成され、多くの精油に含ま

(38)

34

れる芳香族化合物である。フェニルプロパノイドの抽出量が多いサンプルとそ れらの相対ピーク面積(%)は、Anise(AN1: 61.3%, AN2: 68.6%)、Fennel(FL1:

51.2%, FL2: 73.7%)、Star anise(ST1: 59.2%, ST2: 42.1%)、Tarragon(TA:

55.9%)であった。Anise、Fennelおよび Star anise に共通する強い甘さと多 少スパイシー感のある香りは、豊富に含まれる trans-anethol に由来する 47)。 Tarragonはmethyl chavicolが最も多く検出された。

一般的にシソ科の植物は栽培しやすいため変種が多い。Basilもブッシュバジ ル、レモンバジルなどの種類が知られているが、香辛料として用いられるのは Sweet basilである48)。Basilは主要成分としてα-bergamotene、linaloolおよ びmethyl chavicol が検出された。Parsley は β-phellandrene が主要成分であ り、特徴成分として p-mentha-1,3,8-triene および myristicin が検出された。

Savoryの香りの特徴は carvacrol の含有量によって左右することが知られてお

49)、本研究で用いたサンプルの主要成分はcarvacrolおよびp-cymeneであっ た。

(39)

35

Table 2-2 HS-SPME法によって抽出された香辛料サンプルの香気成分

No. Identified compound Experimental Publishedb ID No. Identified compound Experimental Publishedb ID

48 borneol 1706 1705 1

1 α-pinene 1022 1020 1 49 α-terpinyl acetate 1708 1700 1

2 α-thujene 1024 1025 1 50 piperitone 1735 1732 1

3 camphene 1060 1065 1 51 geranial 1738 1737 1

4 β-pinene 1103 1105 1 52 carvone 1746 1744 1

5 sabinene 1122 1120 1 53 geranyl acetate 1762 1756 1

6 δ-3-carene 1148 1142 1 54 cuminaldehyde 1790 1789 1

7 β-myrcene 1164 1160 1 55 p -1,3-menthadien-7-al 1802 2

8 α-phellandrene 1164 1162 1 56 p -1,4-menthadien-7-al 1809 2

9 α-terpinene 1176 1174 1 57 dihydrocarveol 1813 1760 1

10 ᴅ-limonene 1200 1197 1 58 geraniol 1849 1850 1

11 β-phellandrene 1205 1204 1 59 cumic alcohol 2107 2108 1

12 cosmene 1215 2 60 thymol 2186 2187 1

13 cis-β-ocimene 1236 1237 1 61 carvacrol 2217 2216 1

14 γ-terpinene 1246 1244 1 62 geranic acid 2341 2339 1

15 trans-β-ocimene 1252 1254 1

16 p -cymene 1269 1264 1 63 α-cubebene 1459 1463 1

17 α-terpinolene 1283 1283 1 64 δ-elemene 1472 1479 1

18 p -mentha-1,3,8-triene 1393 1397 1 65 cyclosativene 1486 1490 1

66 α-copaene 1498 1493 1

19 eucalyptol 1214 1206 1 67 β-bourbonene 1522 1515 1

20 artemisia ketone 1346 1346 1 68 α-santalene 1574 1597 1

21 fenchone 1397 1392 1 69 α-bergamotene 1589 1588 1

22 β-thujone 1422 1421 1 70 β-elemene 1594 1585 1

23 cis -linalool oxide 1443 1447 1 71 β-caryophyllene 1611 1594 1

24 cis -limonene oxide 1446 1458 1 72 aromadendrene 1615 1610 1

25 trans -sabinene hydrate 1468 1469 1 73 α-himachalene 1651 1649 1

26 menthone 1471 1473 1 74 β-farnesene 1665 1660 1

27 trans -linalool oxide 1472 1471 1 75 α-caryophyllene 1679 1676 1

28 citronellal 1478 1488 1 76 epi-bicyclosesquiphellandrene 1681 1706 1

29 isomenthone 1496 1499 1 77 γ-muurolene 1695 1690 1

30 camphor 1520 1528 1 78 γ-himachalene 1705 1692 1

31 linalool 1546 1545 1 79 germacrene D 1718 1718 1

32 cis -sabinene hydrate 1553 1553 1 80 β-himachalene 1718 1713 1

33 linalyl acetate 1557 1559 1 81 δ-cadinene 1720 1724 1

34 menthyl acetate 1568 1563 1 82 α-zingiberene 1731 1724 1

35 bornyl acetate 1584 1587 1 83 β-selinene 1733 1729 1

36 ᴅ-neomenthol 1600 1586 1 84 α-selinene 1733 1732 1

37 terpinene-4-ol 1605 1603 1 85 α-muurolene 1733 1729 1

38 lavandulyl acetate 1606 1606 1 86 β-bisabolene 1737 1730 1

39 trans -dihydrocarvone 1613 1607 1 87 elixene 1742 1740 1

40 cis -dihydrocarvone 1634 1621 1 88 α-farnesene 1752 1747 1

41 ʟ-menthol 1648 1651 1 89 β-cadinene 1767 1769 1

42 pulegone 1654 1651 1 90 γ-cadinene 1770 1773 1

43 citronellyl acetate 1662 1662 1 91 β-sesquiphellandrene 1775 1767 1

44 neral 1685 1686 1 92 curcumene 1778 1804 1

45 α-terpineol 1700 1700 1 93 cadina-1,4-diene 1793 1793 1

46 piperitol 1701 1691 1 94 calamenene 1841 1841 1

47 geranyl formate 1704 1703 1 95 germacrene B 1843 1836 1

RIa Monoterpene hydrocarbons

Oxygenated monoterpenes

Sesquiterpene hydrocarbons RIa

(40)

36

Table 2-2(続き)

a DB-WAXカラムによる測定値、b AromaOffice内の文献値、ID, 化合物の同定 方法:1, 得られたマススペクトルはNIST 08 ライブラリーと照合し、RI 値は AromaOffice内の文献値と照合した;2, 得られたマススペクトルをNIST 08ラ イブラリーと照合した

No. Identified compound Experimental Publishedb ID No. Identified compound Experimental Publishedb ID

118 myristicin 2273 2267 1

96 caryophyllene oxide 2000 2001 1 119 dillapiole 2372 2

97 trans-nerolidol 2042 2040 1

98 cubenol 2075 2074 1 120 (3E,5E)-3,5-octadien-2-one 1518 1517 1

99 globulol 2099 2095 1 121 3,7,11,15-tetramethyl-2-hexadecen-1-ol 1922 2

100 spathulenol 2136 2136 1

101 epi-bisabolol oxide B 2151 2161 1 122 Unknown compound (marjoram) 1532

102 τ-cadinol 2183 2180 1 123 Unknown compound (lemongrass; 1) 1571

103 α-turmerone 2194 - 2 124 Unknown compound (cumin) 1572

104 α-bisabolol 2223 2224 1 125 Unknown compound (lemongrass; 2) 1602

105 β-turmerone 2258 2 126 Unknown compound (savory) 1604

106 ar-turmerone 2270 2 127 Unknown compound (chervil; 1) 1605

107 bisabolol oxide A 2432 2 128 Unknown compound (laurel) 1653

Phenylpropanoids 129 Unknown compound (ginger) 1768

108 methyl chavicol 1676 1670 1 130 Unknown compound (dill) 1786

109 trans-anethol 1838 1834 1 131 Unknown compound (chervil; 2) 1999

110 methyl eugenol 2016 2013 1 132 Unknown compound (turmeric; 1) 2005

111 p-anisaldehyde 2034 2030 1 133 Unknown compound (sage) 2057

112 trans-cinnamaldehyde 2049 2052 1 134 Unknown compound (fenugreek) 2109

113 methyl cinnamate 2086 2103 1 135 Unknown compound (oregano, thyme) 2147

114 p-acetonylanisole 2162 2169 1 136 Unknown compound (chamomile) 2192

115 eugenol 2177 2174 1 137 Unknown compound (white pepper) 2266

116 eugenyl acetate 2269 2249 1 138 Unknown compound (turmeric; 2) 2343

117 foeniculin 2271 2

RIa RIa

Oxygenated sesquiterpenes

Other compounds

Unidentified compounds

Table 1  主要な香辛料の植物学的分類 13)
Table 2-1  本研究で使用した香辛料サンプル
Table 2-1(続き)
Figure 2-1  香気成分抽出量に及ぼすコーティング剤の影響
+7

参照

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