( 立 命 館 大 学 大 学 院 文 学 研 究 科 )
たしていると考えられる。本研究では,児童が学級のメが8歳前後に著しく増加し,人に関する構成概念が増加す 発 達 心 理 学 研 究
2003,第14巻,第1号、1−13 原 著
こ つ い て 自 由
童 が 学 級 の メ ン バ ー の 差 異 を 捉 え る 視 点
せた結果,
日しIノ
分自身I 記述さ 重 要 な 機 能 を 果
い く 脂 で 人 行 動 を 決 定 し て 対
個人的構成概念の分析から 美 穂
川 端
年や性別によって異なることを示唆するものであろう。ったと報告している。Livesley&Bromley(1973)では
学級のメンバーの差異を捉える視点は,学級内で対人関7歳から16歳の子どもを対象に好きな人・嫌いな人・自 Statement(叙述)数!友 だ ち に な る 理 由 に つ い て , 低 学 年 で は 席 や
して選ぶという報告(Droege&Stipek,1993)は,勉強即した反応を引き出しやすいという利点がある。また
ができるかどうか,社会的コンピテンスが高いかどうか.i
・
親しし1,かどうかといった複数の視点で,学級のメンバー
係を築き,
の差異を捉 で仲の良い
え て い る こ と を 示 唆 し て い る 。 ま た , 学 級 内 いる可能性がある(北村,1998)。得られた記述・口述内 容は,以下に述べるように具体一抽象,外面一内面,周
家など学校内外の近接性に関するものが主であるが、学辺‑中心1自己中心一非自己中心といった観点から分析
年増加とともに相手との類似性や相手の性格に関するもされている。Scarlett,Press,&Crockett(1971)は,
のが増加してくることや,近接性を重視する傾向は男子1年生34生・5年生の児童に,好きな男子・女子,嫌い
の方が高く 相 手 の 性 格 , 身 体 的 魅 力 , 好 意 的 働 き か け な 男 子 ・ 女 子 に つ い て 自 由 に 口 述 さ せ た 結 果 , 1 年 生 に 比 を 重 視 す る 傾 向 で は 女 子 の 方 が 高 い こ と が 報 告 さ れ て い べ 3 年 生 で は 自 分 自 身 に 直 接 関 係 の な い 非 自 己 中 心 的 な 言 る(明田,1995)。これらは,仲の良い友だちとそれ以外及の割合が高くなり,さらに5年生になると具体的な行動 の メ ン バ ー と の 差 異 を 捉 え る 上 で 比 重 を お く 視 点 が , 学 特 徴 よ り も 抽 象 的 な 内 面 の 特 徴 に 言 及 す る 割 合 が 高 く な
2 発 達 心 理 学 研 究 第 1 4 巻 第 1 号
ることを見出している。また,その内容においても,7歳 では対象人物の表面的な特徴や性別などの周辺的記述が
多いのに対して,8歳以降では特性,価値観,態度などの
中心的記述が多くなったとしている。このような年長児 に見られた変化は,操作的思考能力の発達によって,直 接的・具体的刺激に左右されずに抽象的概念処理が可能 になりつつあることを示唆するものと考察されている。ただし,8歳以降の各年齢群については,外見・性別・居 住地域など表面的・具体的・周辺的記述が8歳・ 0歳より
12歳で多く見られたり,内面的・抽象的・中心的な特性
語の使用でも8歳・12歳より10歳で多く見られるなど,抽象的認知方略への段階的な移行を示すような結果は得
られていない。Livesley&Bromley(1973)の研究を,
小学1年生から中学2年生までを対象に追試した村山(1977)
は,同様に,Statement数,中心的記述,特性語が8歳
に相当する2年生で著しく増加することを見出しているが,その後も6年生まで学年の上昇に伴う増加傾向を確認して いる。さらに村山(1979)は,3年生と5年生を対象に,
児童期の対人認知発達は自己中心的見方から一般性・公 共性のある見方へ移行するという発達仮説の検証を試み ている。分析の結果,両学年において,自分自身につい ての情報や自分と対象人物との具体的関係に言及する自 己中心的記述が優勢であるものの,5年生では対象人物の
一般的行動や他者からの評価など公共的尺度の使用を示
唆する記述の増加が見られ,仮説が支持されたとしている。他方,Barenboim(1981)は,6歳・8歳・ 0歳の子 どもに,よく知っている3名について,どのような人物な のかを話すように求め,得られた言語反応のうち他者間 比較を示す叙述について調べている。1年後に再調査し,
6歳〜11歳の分析を行ったところ,具体的な行動に基づ く他者問比較は8歳から9歳に最も多く見られ,この頃,
他者の具体的な行動に着目しやすいことが示された。ま
た,全言語反応中の特性に関する叙述の割合は7歳以降年 齢とともに増加するが,特性に基づく他者間比較は11歳
にのみ見出され,10歳まではほとんど見られなかった。このことは,内面的・抽象的な特性に関する語葉が増加 しても,それは即,他者問比較に用いられるわけではな
い こ と を 示 し て い る 。
このように,自由記述法による対人認知発達研究の結 果は,幼児期から前青年期ごろまでの長い範囲でみると,
具体的・表面的・周辺的・自己中心的把握から抽象的・
内面的・中心的・非自己中心的把握へという変化の方向 性においておおむね一致している。ただし,その変化の 著しい時期については研究間で結果が異なっており,例 えば特性語の使用に関して,2年生頃に著しく増加し,そ
1)対象人物について直接間接に言及しているひとつの要素や観念の数 であり,単位は単語や句ではないLivesley&Bromley,1973,p、79)。
の後あまり変化しなかったという報告(Livesley&Brom‐
ley,1973)や,その後も少なくとも調査した5年生まで (Barenboim,1981)あるいは6年生まで(村山,1977)
増加傾向が見出されたとする報告がある一方で,3年生で もほとんど現れなかったとする報告(Peevers&Secord,
1973)もある。これらの結果の相違に関連して,対人認 知発達研究において自由記述の分析を行う場合は,対人 認知能力に発達的変化の生じる正確な年齢を同定するこ とよりも,変化のパタンを見極めることが重要である
(Barenboim,1981)との指摘がある。この背景には,語 章の獲得や言語的流暢さといった言語能力の発達と対人
認知発達との混同を避けることは難しく,子どもが思考し得ていることを全て記述していないかもしれない,あ
るいは実際に思考できることのみを記述するとは限らな いという懸念がある(Bemdt&Heller,1985;Heller&Bemdt,1981;Rotenberg,1982)。そのような懸念は,研 究者の先入観が入りにくく,自然のままの反応を得よう とする場合に適しているという自由記述法の利点と表裏
を成すものであろうが,分析にあたっては十分留保して 行うことが求められる。他者の特性把握がいつ頃から可能になるかといった,
発達的変化の生じる正確な年齢に関しては,できるだけ 言語能力に頼らない方法として,行動予測における特 性 帰属を通して行った研究がある。そこでは言語反応中の 特性語の頻度に基づいて特性把握を検討する代わりに,
架空の人物について過去の行動情報を与えた後に,類似 の状況あるいは時間経過後の状況での,その人物の行動
を予測させる。過去の行動情報に一致した方向でその人 物が行動すると被験者が予測すれば,安定した特性への 気づきがあると仮定する。結果として,就学前児でも先 行して与えられた過去の行動情報と一致する方向での行 動予測が可能であったとする研究(Gnepp&Chilamkur‐ti,1988;Heller&Bemdt,1981),就学前児では難しい
がその後年齢の上昇とともに特性帰属が増加したとする研究(Rotenberg,1982),9〜10歳以上で可能になった とする研究(Rholes&Ruble,1984)がある。研究間で 取り上げた特 性の種類や,初期行動情報場面と予測場面
の類似性の程度が一定でないために,得られた結果の比較は難しいが,自由記述法において特性語が著しく増加
したとされる時期以前でも,他者の特性把握が可能であ ったとする報告は多い。ただし,上記の方法にもいくつかの問題点がある。特 性帰属の実験では,行動予測を求める架空の人物につい
て被験者に与えられる行動情報は簡単明瞭で一貫してい るが,現実場面で矛盾や暖昧さを含まない完全な行動情
報を入手するのは容易でない(Gnepp&Chilamkurti,1988)。そのため,年少児が実験場面で特性に基づく行動 予測ができたとしても,現実の対人場面で同様のことが
合 に は 特 性 へ の 関 心 が 高 ま る こ と が 見 出 さ れ て い る
ミ ー の 差 異 を 捉 え る 視 点 3
児童が学級のメンノ
と, それとは反対の意味をもつ,3番目の人物の他の2 人とは異なる重要な特徴 (例えば 不親切だ,')を個人 的構成概念の両極として抽出する。この個人的構成概念 に,被調査者が他者や自己を見るときの視点が現れると 考えるのである。そして③の分析により,被調査者の対 人認知枠組みの構造や特徴などを明らかにすることが試
みられる。Gridtechniqueは,調査研究にも使用可能な
構造化された方法でありながら,検査者によって用意さ れた次元を使用するように強制されるのではなく,被調 査者自身が個人的な方法で感じ.考え・経験しているこ とを,その仕方に比較的忠実に捉えられるという利点が ある(若林,1992)。加えて,従来の自由記述法では少数 の刺激人物に対して各々属性を記述するように被調査者 に求めることから,記述される概念は比較的具体的性格 のものになりやすい(藤原,1974b)が,GIidtechnique では3人組の人物を比較させ,2人に共通する類似性と3 番目の人物の対比性を抽出させるという一種の抽象作業 を経ているために,学級のメンバーの差異を捉える視点 に焦点をあてようとする本研究の目的に適う。GIidtechniqueの利用によって,子どもの対人認知構
造の発達を検討した研究は海外でわずかに見られる。Brier‐ley(1966)は,7歳・10歳・13歳の子どもを対象に調査
を実施した結果,7歳では外見や社会的役割に関する個人 的椛成概念が,10歳では行動に関する個人的構成概念が,13歳では特性に関する個人的構成概念が多く抽出された と報告している。さらに,特性に関する個人的構成概念 の抽出数については,年齢の上昇に伴う増加傾向と男子 より女子の頻度が高いことも示されており,このことは Little(1968)が10歳から18歳までを対象に行った調査 でも同様に見出されている。なお,Brierley(1966)及び Little(1968)では具体的な実施手続きが明示されていな いが,Donahue(1994)では標準的な3人組の提示によ
る手続き(Kelly,1955)によって11歳児を対象に実施さ
れている。それによると,能力や技術,趣味や遊びの習 '慣に関する個人的構成概念を抽出した被調査者は,全被 調査者のうち20%程度であったが,対人関係,行動傾向,志向や好みに関してはおよそ60%であった。事実的情報 については70%,さらに特性に関する個人的構成概念は 80%以上の被調査者が抽出したと報告している。これら Gridtechniqueによる対人認知研究の結果を見ると,外 見や社会的役割から人物間の差異を捉える視点は低学年 で多く用いられること,行動に関する視点は中学年頃に 目立つこと,特性に関する視点は低学年に比べ高学年に おいて,男子に比べ女子においてより多く用いられるこ となどが示唆される。しかし,それら以外の対人関係や 事実的情報などに関する視点が優勢になる時期について は明確でない。
以上を踏まえ,本研究ではGridtechniqueを用いて,
可 能 か ど う か は わ か ら な い 。 他 方 , 架 空 の 人 物 に つ い て 与えられる行動情報は1〜3個程度と限られていることや.
正確な予測が被験者個人にとって必ずしも価値を持つも
のではないために,特性帰属を行う動機づけが低く,か
えやて他者の特性を把握し難いのではないかという指摘
もある(Stipek&Daniels,1990)。個人的意味合いが対
認炎ロ に 及 ぼ す 影 響 は , ビ デ オ テ ー プ の 登 場 人 物 に つ い
人て会0歳思たた
訓
語 反 応 を 求 め る 際 に , ビ デ オ 視 聴 後 に 一 緒 に 遊 ぶ 機
舌
が ああると思わせるか否かを操作したFeldman&Ruble 8)の研究に端的に示されている。対・象とした5〜6 98
び 9 〜 1 0 歳 児 に お い て . 一 緒 に 遊 ぶ 機 会 が あ る と 児及
ら れ た 群 の 方 が 登 場 人 物 の 特 性 に よ り 多 く 言 及 し 諭 せ
と か ら , 自 分 自 身 の 対 人 的 相 互 作 用 の 相 手 と し て 見
、一凸
守 場
ら は , 子 ど も が 実 際 に 対 人 関 係 を 持 っ て い る 人 物 に れ
る 認 知 を 検 討 す る こ と の 重 要 性 を 示 す も の で あ ろ う 。 対
い る │ と 思 わ れ る 。 た だ し , 得
上 述 べ て き た よ う に , 自 由 記 述 法 と 行 動 予 測 に お け 以
特'性帰属の利用にはそれぞれ長所と短所があり,いわ
○は
傭 範 囲 が 異 な る 。 そ れ で は , 学 級 生 活 の 中 で 児 童 が
子1の
学級のメンバーの差異を捉えるときに重要な視点をでき るだけ実態に即して理解するには,どのような方法を採 るべきだろうか。まずは,児童にとって意味のある具体
湾鰯灘篤雛鰯鰯:
られた叙述の内容や数から,
KellV(1955)によって考案されたGridtechnique望)である。
需 驚 鴬 裟 裟 鯖 鰐 薦 誌
確になるように,言語反応を産出させる質問の設定を注 意深'く行う必要がある。
ような条件に適う方法として本研究が着目したのは,
つ3番目の人物とは異なる重要な特徴,,(例えば 親切だ")
Kellyの基本的仮説によれば,人間はさまざまな事象を経
験し,事象間の類似性や差異を認知し,現象についての 個人的な概念あるいは構成概念を形成し,これらの個人的構成概念(PersonalConstructs)にもとづいて事象
を予測しようと志向する存在である。この個人的構成概 念を明らかにするために用いられるのがGridtechnique であり,基本的な手続きは,①エレメント(個人的構成
概念によって抽象される事象,対象人物)の抽出と,②
エ レ 味 ン 卜 の 相 互 比 較 に よ る 個 人 的 構 成 概 念 の 抽 出 , ③ 個人的構成概念の分析の3段階から成る。②では,3人 組 の エ レ メ ン ト を 比 較 し , 3 人 の う ち 2 人 に 共 通 し , か2)Gridtechnique及びその技法が依拠するKellyの個人的構成概念理 論については,藤原哲(1973,1974a,1974b,1976),伊藤(1999),
Neimeyer&Neimeyer(1990‑1997),若林(1992),山口・久野
(1994)に詳しい。
4 発 達 心 理 学 研 究 第 1 4 巻 第 1 号
児童が学級のメンバーの差異を捉える視点を明らかにし,
そのような視点が学年や性別によって異なるのかどうか について検討する。Gridtechniqueによる先行研究の知 見が限られているので,上述した対人認知発達に関する 諸研究でおおむね一致して得られている結果を併せて,
学級のメンバーの差異を捉える個人的構成概念の学年差 及び性差について,下記のような予想を立てた。1.個人 的構成概念の抽出数は,比較的高学年で多くなるだろう。
2.外見・性別・居住地域など表面的・周辺的な個人的構 成概念を抽出する児童は,比較的低学年に多いだろう。
3.行動傾向・特定の対人行動・能力や技術・趣味や遊び の習 慣など具体的・中心的な個人的構成概念を抽出する 児童は,比較的中学年に多いだろう。4.特性・志向や好 み・他者の対人態度など,抽象的・中心的な個人的構成 概念を抽出する児童は,比較的高学年に多いだろう。5.
特'性に関する個人的構成概念を抽出する児童は,男子よ りも女子に多いだろう。6.被調査者に直接関係のある自 己中心的な個人的構成概念を抽出する児童は,比較的低 学年に多いだろう。7.公共的尺度に関する個人的構成概 念を抽出する児童は,比較的高学年に多いだろう。
方 法
学級のメンバーの差異を捉える視点(個人的構成概念)
の抽出
Gridtechnique調査は,Phaselエレメント(対象人 物)の指名とPhase2エレメントの相互比較による個人 的構成概念の抽出から成る。
Phaselエレメントの指名回答用紙を配布し,個 人 的 構 成 概 念 を 抽 出 す る た め の ヒ ン ト を 与 え て く れ る 重 要な人物として,学級のメンバーの中から重複のないよ うに以下の9名の指名を求めた:①気が合う同性,②気 が合わない同性,③気が合う異性,④気が合わない異性,
⑤最も心配な同性,⑥最も心配な異性,⑦最も尊敬す る同性,⑧最も尊敬する異性,⑨被調査者自身。指名に あたって,その人物をはっきりとイメージできるのであ れば実名を記入する必要はなく,ニックネームやイニシ ャノレなどを用いても構わないこととした。なお,エレメ ントの数や内容については,エレメントは抽象的すぎず,
良・悪の双方を含み,8〜15個が適切(Pope&Keen,
1981)といわれていることや,児童の作文等で学級のメ ンバーに対して多用される表現を考慮して決定した。
Phasel終了後,被調査者ごとに,指名された9名のエ レメントをもとにしてTriad(3人組)を9組作成した。
このとき9組のTriadは,各エレメントが3組のTriad に含まれるように,かつ,同一の2名が複数のTriadに 含まれないように構成した。各Triadのエレメントの組 み合わせは,被験者間で同一であった。
Phase2個人的構成概念の抽出例題(エレメント
Iまリンゴ,オレンジ,バナナ)を提示し,個人的構成概 念の抽出方法を理解させるとともに回答の練習をさせた 後, 今から皆さんに9つの3人組が書かれた用紙を配り ます。それぞれの組の3人を,思い浮かべて,皆さんが重要 だと思う分け方で,似ている2人と,その2人とは似てい ない1人に分けて下さい。まず,似ている2人に共通する 特徴を挙げて,ペアになっている括弧の片方に記入して 下さい。次にそれとは反対の意味の特徴を残りの括弧に 記 入 し て 下 さ い 。 非 常 に 重 要 だ と 思 う 特 徴 に つ い て は 繰 り返し使っても構いません。',と教示して,9組のTriad が記載された回答用紙を配布した。被調査者は,各Triad の中から似ている2人を選び,その2人に共通する特徴と,
次にそれとは反対の意味をもつ特徴とを各々のTriadの
下に記入した。この両極対がKellyのいう1個の個人的構
成概念であり,個人が人を認知し解釈する枠組みである。被調査者は延べ数にして9個の個人的構成概念を記入した が,2回以上抽出された個人的構成概念については1個で これを代表させることとした。したがって,被調査者の 個人的構成概念の抽出数は1個以上9個以下の範囲をとる ことになり,抽出数が多いほど学級のメンバーの差異を 捉える視点が多様であることを意味する。
個人的構成概念の内容分析
Livesley&Bromley(1973)の33の細分類項目をも
とに,Donahue(1994)が11歳児の個人的構成概念を分 析するために構成したカテゴリ・システムに準拠して,内 容分析を行った。本研究が用いたカテゴリ項目は,(1)事 実的情報,(Ⅱ)行動傾向,(Ⅲ)能力や技術,(Ⅳ)趣味 や遊びの習慣,(V)志向や好み,(Ⅵ)特性,(Ⅶ)対人 関係であり,今回の分類例とともにTablelに示した。(1)事実的情報には,i,外見,i、性別,iii,社会的役割,iv、居 住地域,v、その他,の5つのサブカテゴリを設定し,(Ⅶ)
対人関係には,i,対象人物に対する被調査者の態度,ii、
被調査者と対象人物とのインタラクション,iii,被調査者 及び第三者に対する対象人物の行動,iv、被調査者及び第 三者に対する対象人物の態度,v、対象人物に対する第三 者の態度,vi,評判,vii・友人関係の持ち方,の7つのサブ カテゴリを設定した。
なお,Donahue(1994)の研究ではエレメントに家族 や教師が含まれていたため,(1)事実的情報の中に 血 縁関係 や 年齢 といったサブカテゴリが設定されて いたが,全てのエレメントが学級のメンバーから構成さ れる本研究では除外した。一方,本研究の予備調査にお いてヅ"好きだく=>嫌いだ といった被調査者自身の対人態 度に関する個人的構成概念の抽出が見られたことから,(Ⅶ)
対人関係のサブカテゴリに 対象人物に対する被調査者 の態度',を加えた。
カテゴリ.コーディング手続き3人の大学院生3)が独
立して判定者となり,個人的構成概念の両極を別々に力児童が学級のメンバーの差異を捉える視点
Table1週人的構成概念を分類するカテゴリ・システムと分類例 分類カテゴリ
事実的 情報 i,」外見 ii,性別 iii,社会的役割 iv・居住地域 v,その他
Ⅱ 行 動 傾 向 様式化された行動 典 型 的 な 反 応
Ⅲ 能 力 や 技 術
能 力 , 才 能 , 得 手 不 得 手
Ⅳ 趣 味 や 遊 び の 習 慣
観察可能な,活動・慣例・遊び
V 志 向 や 好 み
物や活動に関する,好き嫌い・
望み.楽しみ・価値観
Ⅵ 特 性 性 格 特 徴
Ⅶ 対 人 関 係
i・対象人物に対する被調査者の態度 ii・被調査者と対象人物との
イ ン タ ラ ク シ ョ ン
iii・被調査者及び第三者に対する 対象人物の行動
iv・被調査者及び第三者に対する 対象人物の態度
v・対象人物に対する第三者の態度 vi,評判
vii・友人関係の持ち方
分 類 例
背が高い‐背が低い,かわいい〈=>かわいくない 男 子 一 女 子
代表委員の経験あり−代表委員の経験なし A 町 に 住 む − B 町 に 住 む
外国人〈=〉日本人,親戚一親戚ではない
人 前 で 堂 々 と し て い る 一 人 前 で は も じ も じ す る 乱暴‐おしとやか,授業中うるさい〈=>授業中静か,
よ く 発 表 を す る ‐ あ ま り 発 表 し な い
頭が良い〈=>頭が悪い,運動神経が良いく=>悪い,
本読みが上手いく=>本読みが下手,
鉄棒が得意㈲鉄棒が下手,100点をとる−とらない,
字がきれい〈=>字がきたない
マンガを描いている〈=>マンガを描かない,
ピアノを弾く〈二>ピアノを弾かない,野球部〈=>サッカー部,
外 遊 び を し て い る − 中 遊 び を し て い る
ゲームが好きく二>アニメが好き,
スホーツ好きく=>勉強好き
恥ずかしがりやく=>恥ずかしがりやではない,
気が長い〈=>気が短い,やさしい−いじわる
(被調査者自身が)好きく=>嫌い
一緒に遊ぶ〈=>遊ばない,話が合う〈=>話が合わない,
一緒に帰っている〈=>一緒に帰らない
○○にいじわるをする〈=>いじわるをしない,
先生の話をよく聞いている〈=>先生の話を聞いていない
○○のことが好きく二>嫌い,
○ ○ の こ と を 尊 敬 し て い る ‐ 尊 敬 し て い な い 先生に褒められている〈=>先生によく注意されている
クラスで人気があるく=>クラスで嫌われている いつも同じ子と遊ぶ−いろんな子と遊ぶ,
友だちが多いく二>友だちが少ない
被 調 査 者 と 手 続 き
5
テ ゴ リ ・ コ ー デ ィ ン グ し た 。 両 極 に 割 り 当 て ら れ た カ テ ゴリが一致しなかった場合には,当該の個人的構成概念 全体を最もよく表すものとして,(a)より抽象的なカテ ゴリ,(b)全ての刺激人物に関連するカテゴリ,そして (c)それ自体で個人的構成概念の意味が明確に伝わるよ うなカテゴリが優先して選ばれるようにした。
3 ) 3 名 と も 心 理 学 専 攻 で , 本 研 究 に 対 し て は 特 別 の ' 情 報 を 与 え ら れ ていなかった。
被 調 査 者 と 調 査 時 期 京 都 市 及 び 長 浜 市 の 公 立 小 学 校 2年生37名(男児17名,女児20名),4年生38名(男 児19名,女児19名),6年生38名(男児19名,女児19 名),計113名。4年生及び6年生はl学級ずつを調査対 象としたが,2年生は児童館を通じて個人単位で調査の承 諾を得たため,学校では異なる3学級に在籍していた。
2年生は1999年12月中旬より2000年1月中旬の間の 2日間に,4.6年生は2000年2月10日・ 7日に調査を
抽 出 数 抽 出 率 ( % ) a ) 6
全部一緒にまとめてから分析しますので,回答したか,
しなかったかを含めて,誰がどのような答え方をしたの かわからなくなります。気が進まない場合は空欄あるい は白紙のまま出して構いません。調査に協力してもらえ る場合には,調査者以外の人が皆さんの答えを直接見る ことは絶対にありませんので,皆さんの秘密は守られま す。' さらに調査趣旨については,学級のメンバーの差異 を捉える視点が学年や性別によってどのように異なるの かを明らかにするという研究目的に加えて,被調査者に とっても回答作業を通じて,日常あまり意識することの ない,いわば自分自身の学級のメンバーをみるモノサシ を見つめ直す機会となることが期待されると説明した。
個々の被調査者が抽出した個人的構成概念のリストは,
Phase2の1週間後に個人別の封筒に入れてフィードバ ックした。その際,他地域の児童を対象に実施した予備 調査の結果を紹介し,様々なモノサシの可能′性について 被調査者が考えられる機会を設けた。
結 果
分析対象者数
Phase2で9組のTriadについて個人的構成概念を延 べ9個抽出できなかった被調査者は,全参加者113名のう ち,6年生女子1名であった。事後インタビューの結果,
回答方法が理解できていなかったため途中で回答を中断 したことがわかった。その1名を除き,112名分のデータ を分析対象とした。
カテゴリ・コーディングの信頼性
3人の判定者間の一致度については,各カテゴリに対し て各個人的構成概念が 0,もしくは 1,のスコアを受 けるようにコーディングし,カテゴリ別にα係数を求め
た6)。Table3に示すように各カテゴリのα係数は,、88
から.99の範囲で高く,カテゴリ・コーディングの信頼性 が認められた。2人以上の判定者間でカテゴリ・コーディ ングが一致した個人的構成概念(1008個中987個,98%)にはその一致したカテゴリを割り当て,残りの個人的構 実施した。
調 査 手 続 き 以 上 の 調 査 は , 2 年 生 は 放 課 後 に 児 童 館 の
個室で個別に'),4.6年生は授業時間内に集団記述式に
よって実施したが,個別と集団の別を除き,手続き及び 教示は基本的に同じであった。全学年ともPhaselの約 1週間後にPhase2が行われ,各Phaseで要した時間は どの学年でも教示を含め約25分であった。回答の自由と プライバシー保護のために,回答用紙は封筒に入れて配 布・回収した。調査実施にあたっては,調査の趣旨や手続き5)について,
事前に学校長,児童館長及び担任教師と十分に協議し,
その重要性を理解してもらい,許可を受けた。児童への 導入時には,調査への協力や回答の扱いについて児童が 心理的圧迫を受けることのないように,回答の義務はな いこと,子どもの回答は秘密厳守されること,調査結果 は統計的に処理されることを次のように明示した。 調査 者である私は担任の先生から皆さんに調査への協力をお 願いする許可を得ましたが,実際に調査に参加するか,
しないかは皆さんの意思に任されています。回答用紙は 封筒に入れて配り,封筒に入れて集め,皆さんの回答は
学 年 4)2年生のみ個別形式をとったのは,個々の被調査者の予定を合わ
せるのが困難であったためで,集団実施形式が不可能であったため ではない。
5)個人的構成概念を抽出する手掛かりを与えてくれる重要な人物とし て,指名を求めるエレメントの内容については,事前に学校長及び 担任の教師と話し合い,当時のクラスの状態を考慮した上で,児童 に調査趣旨を十分に説明することによって,回答がきっかけとなっ て人間関係が悪化する可能性は低いと判断された。
児童がエレメントの指名を行ったPhasel終了後に仲の良い友 だち同士で誰を書いたか言い合って人気のない子を確認し,そのこ とで人間関係の障害が発生したりすることのないように,自分自身 の回稗内容は,自分自身を見つめ直す材料にしてほしいということ と,真筆に受けとめて他の人に軽々しく喋ったりすることのないよ うに注意を与えた。
また,否定的な指名に伴う罪悪感や自分が否定的指名を受けてい るのではないかという心理的負荷が生じる可能性に配慮して,次の 要点で調査者の意見を述べた:i)物事に対して好みや得手・不得 手が存在するのは自然なことであろうが,いかに好みや得手・不得 手と向かい合い,互いに折り合える接点を見出すことが,児童期以 降の対人関係のトレーニングという意味で非常に重要な意味を持つ のではないか,ii)自分が好ましく思う人・思わない人,自分のこ とを好ましく思う人・思わない人,尊敬する人・心配な人,それぞ れの存在を互いに認め合い,多様な関わり合いを持つことで,自分 自身や他者の特徴が明確になり,多角的に自他を見つめることにつ ながるのではないか。
ただし,個人的な対人認知枠組みを探索するという一連の手続き と,児童に対して行った調査者の説明の効果については,慎重な態 度で臨むべきであり,この点については各担任の教師にフォローを お願いした。後日,担任の教師によって本調査に対する感想が聴取 されたが,否定的な感想や対人関係の悪化を示唆するようなものは なかった。なお,特に6年生の担任の教師からは,「クラスの雰囲 気が改善された。子どもたちなりに自分自身の人をみる目について 考えてくれたように思う。ただ,3学期ではなく,もっと早い時 期に実施されていれば,人をみる視点がどのように変化するかにつ いて,より深く取り組めたかもしれない。」という報告を受けた。
Table2学年別遁1人的構成概念の抽辻/率 発 達 心 理 学 研 究 第 1 4 巻 第 1 号
注.副 抽出率=抽出数/(最大抽出可能数9*ノノ)
578651147724523522 211211211
2年(〃=37)
男子(〃=17)
女子(〃=20)
4年(〃=38)
男子(〃=19)
女子(〃=19)
6年(〃=37)
男子(〃=19)
女子(〃=18)
82.6 83.0 82.2 74.9 73.1 76.6 75.4 72.5 78.4
17(89.5) 8(42.1) 12(63.2) 2(10.5) 5(26.3) 1(5.3) 10(52.6) 10(52.6) 0(0.0)
3(15.8) 15(78.9) 13(68.4) 6(31.6) 11(57.9) 1(5.3) 1(5.3) 2(10.5) 1(5.3) 0(0.0)
7
Table3判走者間の一致度カテゴリ別抽出児童数と出現率
10(50.0) 9(45.0) 1(5.0) 0(0.0) 1(5.0) 0(0.0) 15(75.0) 10(50.0) 1(5.0) 4(20.0) 10(50.0) 14(70.0) 2(10.0) 10(50.0) 4(20.0) 0(0.0) 6(30.0) 1(5.0) 1(5.0)
抽出児童数馴)(出現率%)h)
2 年 4 年 女 子 男 子 女 子
α 係 数 ( ' 罫 ) ( " 雲 2 0 ) ( " = 1 9 ) ( " 雲 1 9 )
6年 男 子 女 子 (〃=19)(〃=18)
カテゴリ
9999998999999989999●●●●●●①●●●●︒●●●e●●● 7895979ワー51132386375
11(57.9)8(42.1) 4(21.1) 0(0.0)
4(21.1) 1(5.3) 15(78.9) 7(36.8) 3(15.8) 3(15.8) 17(89.5) 12(63.2) 2(10.5) 11(57.9) 1(5.3) 1(5.3) 1(5.3) 1(5.3) 3(15.8)
10(55.6) 6(33.3)
2(11.1) 0(0.0)
1(5.6)
2(11.1) 10(55.6) 8(44.4)
0(0.0)
3(16.7) 18(100.0) 15(83.3) 8(44.4)
10(55.6) 2(11.1) 2(11.1) 1(5.6)
10(55.6) 8(44.4)
16(84.2) 6(31.6) 11(57.9) 3(15.8) 8(42.1) 0(0.0) 15(78.9) 13(68.4) 1(5.3) 0(0.0) 14(73.7) 13(68.4) 8(42.1) 8(42.1) 1(5.3) 0(0.0) 1(5.3) 1(5.3) 0(0.0) 児童が学級のメンバーの差異を捉える視点
注.認)抽出児童数=各カテゴリに該当する個人的構成概念を1回以上抽出した児童数 M出現率=抽出児童数/〃
12(70.6) 11(64.7) 1(5.9) 0(0.0) 2(11.8) 1(5.9) 14(82.4) 15(88.2) 0(0.0) 4(23.5) 14(82.4) 13(76.5) 7(41.2) 6(35.3) 4(23.5) 6(35.3) 1(5.9) 0(0.0) 0(0.0) I 事 実 的 情 報
i、外見 ii、性別 iii・社会的役割 iv,居住地域 v・その他
Ⅱ 行 動 傾 向
Ⅲ 能 力 や 技 術
Ⅳ趣味や遊びの習』慣 V 志 向 や 好 み
Ⅵ 特 性
Ⅷ 対 人 関 係
i・対象人物に対する被調査者の態度 ii・被調査者と対象人物とのインタラクション iii・被調査者及び第三者に対する対象人物の行動 iv・被調査者及び第三者に対する対象人物の態度 v・対象人物に対する第三者の態度
vi・評判
vii,友人関係の持ち方
成概念については3人の判定者が話し合って割り当てを決 定した。
個人的構成概念の抽出数
個々の被調査者の抽出数を学年及び'性別に集計し,延 べ数9個に各群の被調査者数を掛けたものを分母として,
個人的構成概念の抽出率を求めたところ,Table2に示 すように,最も抽出率が高かったのは2年生男子の83.0%
で,最も低かったのは6年性男子の72.5%であった。個 人的構成概念の抽出率が学年や性によって異なるかどう かをみるために,抽出率の逆正弦変換値を平均値とみな
して,fの分散分析7)(2要因:学年×性)を行った。そ
の結果,学年の主効果,′性の主効果及び交互作用は,い ずれも有意ではなかった。つまり個人的構成概念の量的 な側面から,学級のメンバーの差異を捉える視点の多様性をみると,学年問,男子と女子の間に差は見られず,
予想lは支持されなかった。
個人的構成概念の内容分析一カテゴリ別頻度
7つのカテゴリと各サブカテゴリに該当する個人的構成 概念を1個以上抽出した児童数を学年及び性別に求め,各 群の被調査者数を分母として,カテゴリ別の出現率を算 出したものをTable3に示した。一見して学年差や性差 の傾向が明らかでないカテゴリについては,各群の出現 率の差を調べるために,出現率の逆正弦変換値を各群の
平均値とみなして,x2の分散分析(2要因:学年×性)
を行った。学年の主効果並びに単純主効果が有意となっ た場合の多重比較には,ライアン法を用いた。以下,各 カテゴリの出現率を予想に照らしながら見ていく。
I事実的情報学年の主効果が有意となり(X2(2,JV
=112)=10.86,p<、05),多重比較の結果,他学年に比べて 4年生の出現率が高かった(4‑2:f(1)=7.14;4−6:f(1)=
9.04,p<、05)。対象人物の外見,′性別,居住地域など表面
的・周辺的な個人的構成概念は比較的低学年に多く見ら れるだろうという予想2に合致しない結果であった。事実的I情報のサブカテゴリ別頻度事実的情報全体に おいて見られた4年生の優勢がサブカテゴリのそれぞれに おいても確認されるのか,それともサブカテゴリによっ て異なる傾向が見出されるのかどうかについて検討した。
計,洲
7)本研究で実施したxzの分散分析については,岡(1990)を参考に
8 発 達 心 理 学 研 究 第 1 4 巻 第 1 号
出現率を見渡してみると,iii、社会的役割(学級委員な ど)に関する個人的構成概念を抽出した児童は4年生にの み見られた。また,ii・性別及びiv・居住地域でも,他学年 より4年生の出現率が高く,4年生では社会的役割,性別,
居住地域といった具体的事実から学級のメンバーの差異 を捉える傾向が強いことが示された。
しかしながら,i、外見については,学年の主効果,性の 主効果及び交互作用はいずれも有意でなく,学年や性に 関わらず,どの群でも出現率が高かった。ただし,外見 に分類された個人的構成概念を個別に見てみると,2年生.
4年生では 背が高いくこ>背が低い',といった客観的・事 実的な身体的特徴への言及が中心であったのに対して,
6年生では かっこいい‐かっこわるい,,といった評価 的な言及が中心になり,その内容には変化が見られた。
Ⅱ 行 動 傾 向 全 体 的 に 出 現 率 が 高 く , 具 体 的 ・ 中 心 的な個人的構成概念は中学年に多く見られるだろうとい う予想3については確認されなかった。一方,性の主効果
が有意であり(x2(1,jV=112)=4.85,p〈.05),日常繰り返
し観察される行動傾向に関する個人的構成概念を抽出し た児童は,女子よりも男子に多く見られた。
Ⅲ能力や技術学年の主効果が有意となり(x2(2,Ⅳ
=112)=7.46,p〈、05),多重比較の結果,勉強や運動の能力
や技術の得手不得手に言及する児童は,6年生より2年生で多く見られた(x2(1)=7.25,p〈、05)。予想3はここでも
支持されなかった。
Ⅳ 趣 味 や 遊 び の 習 慣 ・ V 志 向 や 好 み こ れ ら の カ テゴリではどの群でも出現率が低く,学級のメンバーの差 異を捉えるときにはあまり重要でないことが示された。比 較的観察が容易で具体的な趣味や遊びの習 慣については 中学年に,推論を要する抽象的な志向や好みは高学年に多 いだろうと予想したが(予想3,4),いずれも確認できなか った。
Ⅵ特性交互作用(x3(2,Ⅳ=112)=8.80,p〈.05)が有
意となり,各水準ごとに単純主効果を分析した結果,学年 の要因は,男子ではどの学年でも出現率が高く有意でなか ったが,女子では有意となった。女子について多重比較を
行った結果,2年生女子(x二(1)=22.96,,〈.05)・4年生女 子(x2(1)=8.45,p<、05)よりも,6年生女子の出現率が有意
に高かった。また,性の要因は2年生と6年生で有意となり,
2年生では女子より男子で出現率が高かったが,逆に6年 生では男子より女子の出現率が高かった。したがって,抽 象的・中心的な個人的構成概念は比較的高学年に多く見 られるだろうという予想4の特'性については女子において のみ,特 性に関する個人的構成概念は男子より女子で多く 見られるだろうという予想5は6年生においてのみ支持さ れた。
Ⅷ 対 人 関 係 学 年 の 主 効 果 , 性 の 主 効 果 及 び 交 互 作 用のいずれも有意でなく,対象人物の対人関係に関する
個人的構成概念は,どの群でも多くの児童が抽出した。
対 人 関 係 の サ ブ カ テ ゴ リ 別 頻 度 サ ブ カ テ ゴ リ 別 に 出 現率を見てみると,学年や性別によって出現率に差が見 出されたもの,そうでないものがあり,各々異なる傾向 がみられた。
i・対象人物に対する被調査者の態度では,交互作用
が有意となり(x2(2,JV=112)=11.52,p〈、05),各水準ご
とに単純主効果を分析した結果,学年の要因は男子と女 子の両方で有意であった。多重比較の結果,男子では6年 生男子よりも2年生・4年生男子の出現率が高く(6−2:
x2(1)=9.99;6−4:x2(1)=10.51,〈、05),対照的に女子
では2年生女子より4年生・6年生女子の出現率が高かっ
た ( 2 ‑ 4 : x 2 ( 1 ) = 5 . 6 3 ; 2 ‑ 6 : x 2 ( 1 ) = 1 2 . 3 9 , p < 、 0 5 ) 。 ま た , ′ 性
の要因は2年生と6年生で有意となり,2年生では女子よ り男子の方が,6年生では男子より女子の出現率が高かっ た。つまり,対象人物に対する好悪感情など,自分自身 に直接関係のある自己中心的な個人的構成概念が比較的 低学年で抽出されやすいだろうという予想6は,女子にお いて支持されなかった。
ii・被調査者と対象人物とのインタラクションでは,学 年の主効果,性の主効果及び交互作用のいずれも有意で なかった。女子ではどの学年でも50%以上の児童がこの カテゴリを抽出し,男子で最も出現率が低かった2年生で も35.3%の児童が抽出した。 一緒に遊ぶ〈二>一緒に遊ば ない といった被調査者自身とのインタラクションは,
学級のメンバーの差異を捉える際に,学年や'性に関わり なく,多くの児童に用いられる視点であることが示され た。このサブカテゴリも被調査者自身に直接関係のある 自己中心的なものといえるが,ここでも予想6を支持しな い結果となった。
iii、被調査者及び第三者に対する対象人物の行動,iv、被 調査者及び第三者に対する対象人物の態度,v、対象人物 に対する第三者の態度,では全体的に出現率が小さく,
学級のメンバーの差異を捉える視点としては用いられ難 いことが示された。ただし,ijjでは他学年に比べて2年 生の出現率が,ivでは他の群に比べて2年生男子の出現 率が,vでは2年生女子の出現率が,やや高い傾向が見ら れた。iiiは, 頼み事をすると聞いてくれる−頼み事を しても聞いてくれない や 先生に文句を言う〈=>先生に 文句を言わない,,など,対象人物の具体的な対人行動に 関するものである。他学年に比べて2年生の出現率がやや 高くなったことから,中学年に抽出されやすいだろうと いう予想4を支持しない結果であった。他方,iv及びvは 他者の対人態度に関するものであり,抽象的なものであ るが,他学年より2年生の出現率が高く,高学年ほど抽出 しやすいだろうという予想2に反する結果であった。
vi,評判とvii・友人関係の持ち方では,特定の学年や群 の 出 現 率 が 目 立 っ た 。 評 判 で は , 6 年 生 女 子 の 出 現 率
児童が学級のメンベーの差異を捉える視点 9
(55.6%)の高さが目立ち, 人気があるく=>人気がない',
といった学級内の評判に着目して学級のメンバーの差異 を捉える児童は,6年生女子に特徴的に見出された。また,
友人関係の持ち方でも,抽出した児童のほとんどが6年生 であり, いつも同じ子と遊ぶ〈二>いろんな子と遊ぶ とい った日常の友人関係の持ち方に関心が高いことが見出さ れた。これらの結果は,公共的尺度に関する個人的構成 概念が比較的高学年で抽出されやすいだろうという予想
7を支持するものであった。
考 察
本研究では,児童が学級のメンバーの差異を捉えると き,彼らにとって重要な視点とはどのようなものなのか,
そのような視点には学年や性別によって異なる特徴が見 出されるのかについて,Gridtechniqueを用し、て検討し た。上述のように得られた結果は,従来の対人認知構造 の研究から導かれる発達的変化の方向性に必ずしも一致 しないものであった。
学級のメンバーの差異を捉える視点の多様性個人的 構成概念の抽出率は,学級のメンバーの差異を捉える視 点が高学年ほど多様になるという傾向を示さず,この点 では構成概念が8歳前後に著しく増加し,それ以降あまり
変化しなかったというLivesley&Bromley(1973)の知
見に沿う結果であった。無論,このことは本研究が用い た実施法の条件の中で得られたものであり,個人的構成 概念の抽出数は提示するTriadの数やエレメントに何を用 いるかによっても異なることが予想され,検討の余地を 残している。ただし,提示するTriadの数については,予備調査では12組,15組,21組のTriadの提示を行う 手続きによっても実施したが,Triad提示数を増加させ ても高学年ほど個人的構成概念が多様になるという傾向 は見られず,むしろ抽出に疲労して同じ個人的構成概念 を使用する頻度が高まるという結果であった。また,本 研究で設定したエレメントの内容とその組合せが影響し て,性別や好悪感情など特定の構成概念がおざなりに抽 出された危険性についても,各Triadで抽出された 同 性一異性,,, 好一悪'', 尊敬一心配',を意味する個人 的構成概念数を調べることによって検討した。その結果,
例えば 気が合う同'性・気が合わない同'性・気が合う異 性' から構成されるTriadにおいて, 性別や好悪感情に 関する個人的構成概念が他のTriadに比べ全体として多 く抽出されたという傾向は認められなかった。さらに尊 敬に関する個人的構成概念の抽出数も全反応''1わずか1個 であり,今回のエレメントの内容が個人的構成概念の抽 出率を歪めたとは考え難い。これらのことから,視点の 多様性に関して〆個人的構成概念の抽出率に基づく結果 はある程度信頼に値すると考えられるが,次なる課題と しては抽出された個人的構成概念がどの程度分化したも
のであるのかについても考慮することが重要であろう。
それには,個々の被調査者が抽出した個人的構成概念に 沿って,学級のメンバーを評定させて得られる評定値行 列に多変量解析を施し,個人的構成概念相互の関連性や 分化度といった構造的側面の分析を進めることが有効で あろうと,思われる。これについては検討を始めている。
表面的・周辺的な視点,具体的・中心的視点,抽象的・
中心的視点まず,表面的q周辺的な個人的構成概念に ついて,比較的低学年で多く使用される傾向は確認され なかった。具体的には,外見を重視する児童はどの学年 でも多いことが明らかとなった。ただし,2年生・4年生 では 背が高いくこ>背が低い,,といった客観的・事実的な 身体的特徴への言及が中心であったのに対して,6年生で は かっこいい〈=>かっこわるい',といった評価的な言及 が中心になり,質的変化が認められた。これらは,予想 に沿わないものであったが,小中学生の侭越・劣等意識 の要因に関する検討(井上,1987)の中で,優越・劣等 意識における身体要因への言及数が小学2年生から3年生 にかけて増加し,その後も調査した中学3年生まで減少し なかったことや,その言及内容についても,5年生までは 身長や体重に関するものであるが,6年生以降 スタイル が悪い ファッションセンスがない',など主観的容姿に 関する反応が現れてくることと符合する。その他,社会 的役割・性別・居住地域といった事実的情報では,他学 年に比べ4年生の関心の高さが目立ち,学級委員や集│寸│登 校のグループなど社会的背景に着目しやすいことが示さ れた。
次に,具体的・中心的な個人的構成概念については,
lll学年の4年生で多くなるだろうと予想したが,結果はそ うならなかった。行動傾向は全ての学年で多く言及され,
特定の対人行動に言及した児童も2年生により多く見られ た。能力や技術についても6年生に比べ2年生で多く言及 され,教科学習内容が高次なものになり,学業成績の個 人差が現れてくる節目とされる中学年以前でも, 頭が良 し、〈=>頭が悪い'', 計算が速いくこ>計算が遅い',といった,
評価的視点を発達させていることが示された。なお 趣 味や遊びの習慣への関心は,どの群でも低く,特に4年生 で増加する傾向は見られなかった。4年生は仲間との活動 が活発になり,仲間関係が固定化してくるといわれる時 期であるが,学級のメンバーとの関わりでは,行動傾向 や特定の対人行動よりも,あるいは趣味や遊びの習'慣よ りも,′性別や居住地域などの事実的な事柄が重要視され ているようである。このことは,学級においてメンバー 同士を繋ぐ接点が,行動傾向の類似性や物事への興味の 共有以上に,同じ委員,同じ集団登校のグループ,とい った学校システムによって与えられたものであることを 示唆しているのではないだろうか。
抽象的・中心的な個人的構成概念についても,比較的
10 発 達 心 理 学 研 究 第 1 4 巻 第 1 号
高学年で多く使用されるという傾向は見られなかった。
志向や好みの出現率は全体的に低く,他者の内面的事実 や価値観への洞察を示唆するような言及は,高学年にお いても見出し難かった。特性に関しては,女子では2年生.
4年生と6年生との間に一応の増加傾向が確認されたが,
男子ではどの学年でも7割以上の児童に抽出された。Bare、‐
boim(1981)は,10歳以下では特性に基づく他者間比較 に関する叙述が見られなかったとしているが,本研究で は特性に関する個人的構成概念は2年生にも多く見られた。
また,被調査者及び第三者に対する対象人物の対人態度 や,対象人物に対する第三者の態度への関心が示された のも,高学年ではなく2年生であった。
特性や他者の対人態度は,現実の対人場面で他者の行 動や情動を効率よく予測しようとする際に重要な情報で あり,一般に抽象的思考能力が必要とされる。その能力 が未発達とされる低学年においても,今回は比較的多く 言及されたことをどのように理解すべきだろうか。一つ
には,Gridtechniqueの手続きに起因するところがある
と考えられる。これまでGridtechniqueに対しては,自 由記述法に比べて教示を理解させるのが難しく(Livesley&Bromley,1973,p、70),日常的な自然さに欠け,認知的能
力の低い被験者には実施困難な面がある(伊藤,1999)といった指摘もあるが,本研究の結果は一概にそうとも 言い切れないことを示している。身近な人物を比較対照
させるGridtechniqueは年少児にとっても回答しやすい
側面があり,従来の自由記述法に比べて言語的記述能力 の影響を受け難く,彼らのもつ心理的構成概念を引き出 しやすかったとも考えられる。また,2名の類似性と3番 目の人物の対比性を抽出させるという一種の抽象作業が,エレメントの抽象的な特徴に着目させやすかったという 可能性も考えられる。二つには,学級のメンバーに対す る対人認知を取り上げたことによるところがあると思わ れる。個々のメンバーは,同年齢の類似性の高い学級と いう集団の中で,どのような行動や態度が教師や他の子 どもから社会的賞賛や承認を得られるのか,あるいは拒 否されるのかを示してくれるモデルとして互いに機能し ている。時には成績や人気を競う競争相手であり,グル ープ活動などでは協力すべき相手でもある。すなわち,
学級内の仲間との対人的相互作用では,個々のメンバー が互いに観察,比較,推測を繰り返しながら,個々の児 童の特徴を彼らなりに把握し,対人行動を決定すること が求められる。そのような学級という対人認知事態が,
年少児においても他者の内面へ関心を向かわせているの ではないだろうか。これら2点の可能性を明確にするには,
前者に関しては認知対象(エレメント)を同一にしてGrid
techniqueを用いた場合と自由記述法を用いた場合の比較,
後者に関しては認知対象を学級のメンバーから構成する 場合とその他の人物から構成する場合との比較が必要で
あり,急ぎ検討を進めたい。
他方で,年少児が特'性語を用いることがあっても,そ れは行動に直結した単純なもの(例えば 親切だ,,)であ り,年長児になるとより抽象的なもの(例えば 正直だ'')
を用いるようになるというLivesley&Bromley(1973)
の指摘は,特'性語の使用について量的検討のみならず,
質的検討を併せて行う必要があることを示唆している。
しかしながら,実際に 親切だ' と 正直だ',という2つ の特 性語について概念化のレベルを判定することは容易 でない。それぞれの特性語が個人の文脈でどのように意 味づけられ,用いられているのかを明らかにする必要が あるからである。この問題については,被調査者の言語 反応の意味するところをできるだけ暖昧さなく解釈する ことができるように,考えていることを話しながら回答 することを求め,プロトコル分析によって,個人的構成 概念が抽出されるときの思考過程を明らかにしていくこ
とが有効であろう。
自己中心的視点,一般的・公共的視点被調査者の好 悪感情に関する個人的構成概念が学年とともに減少する という傾向は,男子においてのみ見出され,女子におい ては逆に増加した。また,被調査者と対象人物とのイン タラクションについても,全ての学年で多く見出された。
これら自己中心的な視点は,低学年でのみ優勢なわけで はなく,中学年以降も用いられやすいことが示された。
他方, 友だちが多いく=>友だちが少ない といった友人関 係の持ち方に関する個人的構成概念は6年生に特徴的に見 られ, みんなに好かれている〈=>みんなに嫌われている といった学級内の評判や人気の有無に関する個人的構成 概念も6年生女子に特に多く見られた。つまり,6年生で は具体的な二者関係に留まらず,集団の中での他者と関 わり方の状況を,第三者として観察し,あるいは推測し,
注意深く捉えていることが示唆された。このことは,自 己中心的視点を一歩離れて,一般性,公共'性のある視点 がとれるようになる(村山,1979)ことを裏付けている。
ただし,特に6年生女子に見られた,学級内の友人関係や 評判に気を配る傾向は, 生徒は自分の属しているグルー プからはみ出ないように並々ならぬ努力をしている',と いう保坂(1993)の指摘を思い起こさせる。これは,女 子中学生・高校生の友人関係の閉鎖′性・排他性について なされたものであるが,児童期後期の女子においても該 当するのではないだろうか。また,Asch‑typeの線分判 断刺激を用いて同調性の発達的変化を検討した藤原正光 (1976)によれば,仲間集団への同調と年齢との関係は9 歳から12歳を頂点とする2次曲線的な関係にあったとい
う。この知見を踏まえると,判断の手がかりを仲間集団 に求める傾向が強い中で,6年生に見出された公共的視点 がどのように機能するのかについては慎重に見守る必要 があると思われる。
児童が学級のメンバーの差異を捉える視点 11
学 級 の メ ン バ ー の 差 異 を 捉 え る 視 点 と 性 の 要 因 に つ い て 性 の 要 因 の 影 響 が 明 瞭 に 見 出 さ れ た の は , 具 体 的 ・ 中心的な個人的構成概念である行動傾向においてであり,
男子は女子よりも行動傾向に着目しやすいことが示され た。他方,抽象的・中心的な個人的構成概念である特性 は男子よりも女子に多く用いられるだろうという予想が 認められたのは,6年生においてのみであり,2年生では 逆に女子より男子に多くなった。特 性を重視する児童を 性別に追ってみると,男子ではどの学年でも多いことが 確認されたが,女子では2年生・4年生に比べ6年生でよ り多くなるという増加傾向が見られた。つまり,男子で はどの学年でも具体的・抽象的両方の中心的な特徴に着 目して学級のメンバーの差異を捉える児童が多いのに対 して,女子では行動傾向に着目する児童は比較的少なく,
抽象的・中心的な特性に関する視点が高学年ほど優勢に なることが示された。このような性差の理由については,
今回の結果からだけでは明らかでないが,男子の遊びは 多くの個人を巻き込むことが多く,友人関係も比較的広 範囲なものになりやすいのに対して,女子の遊びは二者 で行われるものが多く,友人関係も排他的な二者関係を 形成しやすい(Hartup,1992)といった友人関係の特徴 と関連があるのかも知れない。これについても検討の必 要があるだろう。
本 研 究 の 意 義 と 残 さ れ た 課 題 児 童 期 の 対 人 認 知 発 達 研究そのものが多くはない中で,本研究では,これまで 直接取り上げられて来なかった学級のメンバーの差異を 捉 え る 視 点 と い う 問 題 に 焦 点 を あ て て 検 討 を 行 っ た 。 繰 り返しになるが,学級のメンバーの差異を捉える視点は,
学級内で対人関係を築き,対人行動を決定する上で,非 常に重要な機能を果たしていると考えられる。さらに,
学級内での他者との比較は優越感あるいは劣等感の形成 (井上,1987)や自己認知の内容や客観'性(藤崎,1993)
につながることが指摘されており,学級のメンバーの差 異を捉える視点は児童の自己意識や自尊心の内容に密接 に関わっていると考えられる。その意味で,本研究のデ ータの価値は高いと思われる。また,学級のメンバーの 差異を捉える視点の検討にあたって,本研究が用いたGrid
techniqueでは,被調査者の学級生活において重要な人物
から構成された3人組の人物を比較させて,2人に共通す る類似性とそれらとは異なる3番目の人物の対比'性を,彼 ら自身の言語で抽出させた。この点で方法論的・生態学 的 妥 当 性 を 高 め , 日 々 の 学 級 生 活 の 中 で 個 々 の 児 童 が 重 要と考える視点に関して豊富な情報を得ることができた。しかしながら,今回の被調査者によって提供された情 報 を 全 て 本 論 文 で 分 析 し 尽 く せ た わ け で は な く , 残 さ れ た 課 題 と し て は 上 述 の 他 に も 次 の こ と が 挙 げ ら れ る 。 第 1に,本研究のカテゴリ別頻度では,各カテゴリに1個以 上の個人的構成概念を抽出した人数によって,学年差や
'性差を検討したが,被調査者によっては,同じカテゴリ に分類される個人的構成概念を複数抽出することや,同 一の個人的構成概念を繰り返し抽出することも見られた。
そのことを考慮に入れた分析を行うことで,各学年で重 要視されている視点がより明確になると思われる。第2に,
本研究の被調査者数は各学年とも 学級程度と多くはなく,
特に4年生・6年生については学級で集団実施したことも あり,学級の特色を越えた一般的な知見であるかどうか は,さらに被調査者数を増やして検討した上で判断すべ きものである。今後,以上に整理した諸点をめぐって,
学級のメンバーの差異を捉える視点という児童にとって 非常に身近な問題について,多角的なアプローチを重ね ていく必要がある。
文 献
明田芳久.(1995).児童の仲間関係形成について:仲間 選択の理由,仲間関係の分化度,および共感'性との関 係.上智大学心。理学年報第19巻,上智大学,東京,2少 42.
Barenboim,C・(1981).Thedevelopmentofperson perceptioninchildhoodandadolescence:Frombe‐
havioralcomparisonstopsychologicalconstructs t()psychologicalcomparisons.Cノノノ〃DeMoP"池"/,
52,129−144.
Berndt,T,』.,&Heller,KA.(1985).Measuring children'spersonalityattributions:Responsesto open‑endedquestionsversustraitratingsand predictionsoffuturebehaviorJnS.R・Yussen,(Ed.),
Tルf'9 z伽Q/超"唖加ノノjノノ(・〃"伽〃(pp、37‑60).Lon‐
don:AcademicPress・
Brierley,,.W、(1966).Children'suseofpersonali‐
tyconstructs.B"/伽〃q/Bγ加sノノ伽PSyc〃0/QgjMI SO(7fty,19,72‑73.
Donahue,EM.(1994).DochildrenusetheBigFive,
too?:Contentandstructuralforminpersonality description,ノリ"γノzα/〃〃γs()"α肋,62,45‑66.
Droege,K,L,&Stipek、DJ.(1993).Children,suse ofdispositionstopredictclassmates behavior.
D(w/()IeノzlIa/Psy(、A(ノノQgy,29,646‑654.
Feldman,N,S、,&Ruble,,.N・(1988).Theeffectof personalrelevanceonpsychologicalinference:A developmentalanalysis.Cノノ〃DaノP/ "7c"/,59,
1339‑1352.
藤崎填知代.(1993).公的社会集団の始まり.高橋道子・
藤崎員知代・仲真紀子・野田幸江,子どもの努達心理 学(pp,99‑129).東京:新曜社.
藤原正光.(1976).同調'性の発達的変化に関する実験的 研究:同調'性におよぼす仲間・教師・母親からの集団 圧力の効果.心』理学研究,47,193‑201.