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統合失調症の共変量としての増悪因子に関する解析

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

統合失調症の共変量としての増悪因子に関する解析

江口, 里加

http://hdl.handle.net/2324/2236169

出版情報:九州大学, 2018, 博士(臨床薬学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

(様式5) 氏 名 :江口 里加

論文題名 :統合失調症の共変量としての増悪因子に関する解析 区 分 :甲

論 文 内 容 の 要 旨

統合失調症は、社会的、情動的、洞察、および認知領域にわたり機能の低下を引き起こす神経 発達症候群である。その主な特徴は、陽性症状(妄想、幻覚)、陰性症状(意欲の欠如、思考の貧 困、引きこもり)、認知力の障害であり、病因は多因子的である。発症の危険因子に関する研究は 膨大で、多くの知見が得られている。慢性的疾患で生活の全ての面に影響を及ぼすことから、い かに寛解状態を維持し Quality of life を確保するかが治療の目的となる。そのため急性期症状か ら回復した後は、ストレスを軽減し再発の可能性を最小限にとどめるサポート、社会生活への順 応強化、症状悪化を避けるための薬物療法が中心となり、再燃・急性増悪を招かないことに重き が置かれる。再燃・急性増悪の主な原因として、服薬アドヒアランスの欠如、薬物乱用、および ストレスの大きなライフイベントが挙げられるが、自然経過の中で再燃・急性増悪を来すことも 珍しくない。

本研究では「統合失調症の共変量としての増悪因子の解析」と題し、日常生活と入院治療中とい う異なる治療状況下における、統合失調症の症状の増悪に関連する特定の要因について検討を試み た。第 1 章では大気中の微小粒子状物質(particulate matter less than 2.5µm in diameter, PM2.5)の濃 度と入院時の重症度との関連性を検討し、第 2 章では入院中に行われた隔離・拘束が退院時の重症 度に及ぼす影響ついて、多面的な検討を行った。

第 1 章

粒子状物質(particulate matter, PM)は統合失調症による救急受診のリスク増加と関連があること が示されている。しかしながらこれまで、PM2.5と統合失調症の重症度との関連性を検討した研究 はみられない。そこで、 PM2.5 の濃度と統合失調症の重症度との関連性を検討することとした。

2013年2月1日 から 2016年4月30日 の期間に大阪府堺市の総合精神病院に入院した患者のデ ータと、大気汚染および気象データを入手した。PM2.5 濃度と入院医の統合失調症患者の簡易精 神症状評価尺度(Brief Psychiatric Rating Scale, BPRS)スコアとの関連を多変量ロジスティッ ク回帰分析を用いて解析した。PM2.5 の遅延効果を捉えるため、0~7 日のラグ期間を考慮した。

対象は、1193 名の統合失調症の患者であった。PM2.5 濃度の効果はラグ 2 日目に有意差がみら れた。性差はみられなかったが、 65 歳以上の群では、有意差が見られた。 PM2.5 濃度の影響は 65 歳以上の群のラグ 6 日目において有意差がみられた。0~7 日の累積PM2.5 濃度と精神症状の

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重症度との間にも関連が見られた。

第2章

精神科救急医療において、医療スタッフは興奮・攻撃性を示す者への対応が日常的に求められ、

隔離・拘束(seclusion and/or restraint, S/R)を行うことがある。S/Rに関連する研究は多岐に わたり、強制治療は正と負との両面性を持つようである。しかしながら、統合失調症の患者のみ を対象として S/R の影響を客観的指標を用いて評価した研究はこれまでには見られない。そこ で今回我々は、統合失調症の患者に限定し、 S/R による精神症状の変化を客観的評価指標を用 いて検討することとした。強制治療の種類は、「隔離のみ」、「隔離および拘束」、「強制治療なし」

に分類した。2013 年 2 月 1 日から 2014 年 8 月 31 日の期間に、総合精神病院の救急病棟 および急性期治療病棟に入退院した 18 歳から 65 歳までの 1997 名の日本人患者のデータを 抽出した。入棟時の BPRS の 18 項目を用いて因子分析を行い下位尺度を作成し、その後ロジ スティック回帰分析を用いて、BPRS の合計スコアおよび3つの下位尺度(「敵意・猜疑症状」、

「陽性症状」、「抑うつ・陰性症状」)のスコアについて、それぞれ精神症状の変化を検討した。全 体群で検討を行った後、入院時の全体的機能の高い群と低い群に層別化し、同様の解析を行った。

全体群と機能の低い群では、「隔離のみ」は下位尺度の「敵意・猜疑症状」の改善に関連していた。

「隔離および拘束」により、下位尺度の「陽性症状」が改善していた。対照的に、全体的機能が 高い群では、「隔離のみ」、「隔離および拘束」のどちらも精神症状の改善とは関連していなかった。

S/R の正の効果は機能の低下を呈している患者のみに限られるようである。

本研究は、日常生活と入院治療中という異なる状況下で、それぞれ特定の要因について増悪と の関連性を検討した。患者は社会生活を送る上で、あるいは治療を継続する中で、様々な増悪因 子に暴露されることが類推され、どのような因子がどの程度の症状悪化を招くのかを仔細に検証 することは、臨床現場にとって利用価値の高い情報を提供することにつながると考える。

参照

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