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対人ストレスコーピングの効果における個人差

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Academic year: 2021

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(1)

「研究論文」

対人ストレスコーピングの効果における個人差

1) 

一小・中・高校生を対象にして一

谷口弘一(教育学部人開発達講座) Abstraet 

This study exa inedindividual differences in the effects of interpersonal  stress  coping  on mental health a ong elementary

, 

junior high

, 

and high  school  students.  The respondents  were  105  sixth'year  ele entary school  students

, 

157 second 'year junior high school students

, 

and 133 first'year high  school students. They answered the Interpersonal Stress'Coping Inventory  (consisting  of positive  relationship'oriented  coping, negative  relationship'  oriented coping

, 

and postponed 'solution coping)

, 

a measure of depression for  mental health, and a measurement of emotional  empathy for  individual  difference.  Positive  relationship'oriented  coping  was  significantly  and  negatively related to  depression among elementary and junior high school  students with high levels of emotional epathy.Results also indicated that  postponed 'solution coping was significantly and negatively correlated with  depression among elementary school students with low levels of emotional  empathy. 

Key words: interpersonal stre coping,emotional empathy, elementary  school students, junior high school students, high school students. 

問 題 と 目 的

対人関係に起因するストレスフルな出来事のことを対人ストレッサーといい,

ま た , こ う し た 対 人 ス ト レ ッ サ ー に 対 す る コ ー ピ ン グ の こ と を 対 人 ス ト レ ス コ ー ピングという(加藤, 2000, 2003)。 対 人 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ は , ポ ジ テ ィ プ 関 係 コ ー ピ ン グ , ネ ガ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ , 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ の 3つに分類さ れる。ポジティブ関係コーピングは,ストレッサーを引き起す対人関係に対して,

積極的にその関係を改善し,より良い関係を築こうと努力するコーピングである。

1)  本論文は,著者の指導のもとで堺智樹氏が実施した卒業研究のデータを再分析 し,執筆したものである。

‑97

(2)

ネ ガ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ は , 対 人 ス ト レ ッ サ ー が 生 じ て い る 関 係 に 対 し て , そ うした関係を放棄・崩壊するようなコーピングである。解決先送りコーピングは,

ス ト レ ス フ ル な 対 人 関 係 を 問 題 と せ ず , 時 聞 が 解 決 す る の を 待 つ よ う な コ ー ピ ン グである。

対人ストレスコーピングが精神的健康に与える影響は, 3つ の コ ー ピ ン グ そ れ ぞ れ で 異 な る 。 ポ ジ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ は 抑 う っ と 無 相 関 , ネ ガ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ は 抑 う っ と 正 の 相 関 , 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ は 抑 う っ と 負 の 相 闘 が あ る ことが明らかとなっている(加藤, 2007a)。 こ う し た 影 響 の 相 異 を 説 明 す る モ デ ルが , 加藤 (2007a)に よ っ て 提 唱 さ れ て い る 「 対 人 ス ト レ ス 過 程 に お け る 社 会 的 相 互 作 用 モ デ ル 」 で あ る 。 こ の モ デ ル で は , 対 人 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ が 精 神 的 健 康 に 与 え る 影 響 を 2つ の 過 程 に 峻 別 し て い る (Figure1)。 第 一 過 程 は , あ る 対 人 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ を 使 用 す る こ と に よ っ て , そ の コ ー ピ ン グ が , 実 行 者 自 身 の

精神的健康に「直接的」に影響を与える過程である(パス 1)。一方,第二過程は,

あ る 対 人 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ を 使 用 す る こ と に よ っ て , そ の コ ー ピ ン グ が , コ ー ピ ン グ の 「 受 け 手 」 の 感 情 ・ 行 動 ・ 関 係 に 影 響 を 与 え , そ れ ら を 仲 介 す る こ と に よ っ て , 最 終 的 に は , 実 行 者 自 身 の 精 神 的 健 康 に 「 間 接 的 」 に 影 響 を 与 え る 過 程 である(パス II)。 加 藤 (2007a)の 社 会 的 相 互 作 用 モ デ ル に よ る と , ポ ジ テ ィ プ 関 係 コ ー ピ ン グ は , 抑 う つ を 第 一 過 程 で は 増 大 , 第 二 過 程 で は 減 少 さ せ る 。 ネ ガ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ は , 第 一 過 程 と 第 二 過 程 と も に 抑 う つ を 増 大 さ せ る 。 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ は , 第 一 過 程 と 第 二 過 程 と も に 抑 う つ を 減 少 さ せ る 。 い ず れ の

コーピングにおいても,影響力は第一過程の方が大きい。

パス

E

実行者と受領者の関係

(受領者の感情・行動も含む}

パス

I E

二〉

d ク

Figure 1対人ストレス過程における社会的相互作用モデル(加藤, 2

7a)

こ う し た 知 見 と は 別 に , 第 一 過 程 と 第 二 過 程 の 影 響 力 の 差 は 個 人 差 に よ る も の である可能性も指摘されている(谷口,2007)。 例 え ば , ポ ジ テ ィ プ 関 係 コ ー ピ ン グ と 精 神 的 健 康 と の 関 連 に つ い て 見 て み る と , 先 行 研 究 の 結 果 は 概 ね 無 相 関 で あ ることから(加藤, 2007a), 第 一 過 程 と 第 二 過 程 の 影 響 力 は , ほ ぼ 同 じ で あ る と 考えられる。そう仮定した場合, 2つ の 過 程 の 影 響 力 に 差 が 生 じ る と す れ ば , そ れ は 個 人 差 に よ る も の で あ る 可 能 性 が 高 い 。 谷 口 ( 印 刷 中 ) は , 他 人 の 感 情 や 行

(3)

動 に 対 す る 個 人 の 興 味 ・ 関 心 の 程 度 を 表 す 個 人 差 変 数 と し て , 対 人 志 向 性 と 共 感 性という 2つ の 変 数 を 取 り あ げ , 対 人 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ と 精 神 的 健 康 と の 関 連 に対するそれら 2変 数 の 調 整 効 呆 を 検 討 し た 。 そ の 結 果 , ポ ジ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ と 抑 う っ と の 負 の 相 聞 は , 対 人 志 向 性 , 共 感 性 が 高 い 群 に お い て の み 認 め ら れ た 。 す な わ ち , 対 人 志 向 性 , 共 感 性 が 高 い 人 で は 第 二 過 程 の 影 響 力 が 相 対 的 に 強 く な り , 対 人 志 向 性 , 共 感 性 が 低 い 人 で は 第 一 過 程 と 第 二 過 程 の 影 響 力 が ほ ぼ 等 し く な る こ と が 示 唆 さ れ た 。 一 方 , 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ と 抑 う っ と の 負 の 相 関 は , 対 人 志 向 性 , 共 感 性 が 低 い 群 に お い て の み 認 め ら れ た 。 加 藤 (2007a)の研 究 結 果 に よ る と , 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ は , 第 一 過 程 お よ び 第 二 過 程 と も に , 抑 う つ を 低 減 さ せ , 第 一 過 程 の 方 が 第 二 過 程 よ り も 影 響 力 が 強 い こ と が 確 認 さ れ て い る 。 し か し な が ら , 谷 口 ( 印 刷 中 ) の 結 果 は , そ う し た 先 行 研 究 の 結 果 と は 異 なり,第一過程が抑うつに対して低減効呆,第二過程が増大効呆を持つ可能性,

さ ら に は , 対 人 志 向 性 , 共 感 性 が 高 い 人 で は 第 一 過 程 と 第 二 過 程 の 影 響 力 が ほ ぼ 等 し く , 対 人 志 向 性 , 共 感 性 が 低 い 人 で は 第 一 過 程 の 影 響 力 が 強 く な る 可 能 性 を 示 唆 し て い る 。 実 際 , 谷 口 ・ 加 藤 (2007)や谷口 (2012)で は , 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ の 抑 う つ 低 減 効 果 が 確 認 さ れ て い な い た め , 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ と 抑 う つの関連では,第一過程と第三過程の効果が異なる可能性が非常に高い。

本 研 究 で は , 小 ・ 中 ・ 高 校 生 を 対 象 に し て , 対 人 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ と 精 神 的 健康との関連に対する共感性の調整効果を検討した。

方 法

間 査 対 象 者 と 聞 査 手 続 き

小 学 6年 生 105名 ( 男 子 53名 , 女 子 52名 , 平 均 年 齢 11.7歳),中学2年 生 157名 ( 男 子 94名 , 女 子 63名 , 平 均 年 齢 13.8歳),高校 1年 生 133名 ( 男 子 97名,女子 36名 , 平 均 年 齢 15.8歳 ) が 調 査 に 参 加 し た 。 各 学 級 担 任 の 先 生 が 調 査を実施した。

調 査 内 容

小学生用の調査用紙には,年齢,性別などを質問するフェイスシートに加えて,

下記の尺度が含まれていた。

対 人 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ 福 田 ・ 加 藤 ・ 鈴 木 (2006)の児童・生徒用対人スト レ ス コ ー ピ ン グ 尺 度 を 使 用 し た 。 本 尺 度 は 加 藤 (2000,2003)の対人ストレスコ ー ピ ン グ 尺 度 を , 小 学 生 に も 理 解 が 容 易 と な る よ う に 平 易 な 文 章 に 変 更 し , 全 体

‑99

(4)

項目数を 15項 目 に 短 縮 し た も の で あ る 。 加 藤 (2000,2003)の 対 人 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ 尺 度 と 同 様 に , 本 尺 度 に は , ポ ジ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ , ネ ガ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ , 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ の 3つ の 下 位 尺 度 が あ り , そ れ ぞ れ 5項 目 ず

つから構成されている。回答は,あてはまらない(l)~よくあてはまる (4) の

4件 法 で あ っ た 。 分 析 に は 各 下 位 尺 度 の 合 計 点 を 用 い た 。 得 点 が 高 い ほ ど , 各 対 人ストレスコーピングの使用頻度が高いことを示す。 a係 数 は , ポ ジ テ ィ ブ 関 係 コーピングが.74,ネガティプ関係コーピングが.93,解決先送りコーピングが.75 であった。

抑うつ 村 田 ・ 清 水 ・ 森 ・ 大 島 ( 1996)が 作 成 し た 子 ど も 用 抑 う つ 自 己 評 価 尺 度 DepressionSelf‑Rating Scale for Chi1dren (DSRS)の日本語版を用いた。ただし,

本 研 究 で は , 佐 藤 ・ 新 井 (2002) と同様に,実施上の問題を考慮して,本来の日 本 語 版 18項目から 2項 目 を 削 除 し た 16項目のみを用いた。本尺度は,活動性・

楽 し み の 減 退 (9項目),抑うつ気分 (7項目)の 2つの下位尺度をもっ。回答は,

そ ん な こ と は な い (0)~いつもそうだ (2) の 3 件法であった。分析には全項目

の合計点を用いた。得点が高いほど,抑うつ傾向が高いことを示す。 α係 数 は.88 であった。

共 感 性 桜井(1986)が作成した 9項 目 か ら な る 児 童 用 共 感 測 定 尺 度(E pathy Scale for Children: ESC) を用いた。回答は,いいえ(l)~はい (5) の 5 件法

で あ っ た 。 分 析 に は 全 項 目 の 合 計 点 を 用 い た 。 得 点 が 高 い ほ ど , 他 者 の 気 持 ち に 共感する程度が高いことを示す。 α係 数 は.77であった。

中 ・ 高 校 生 用 の 調 査 用 紙 に は , 年 齢 , 性 別 な ど を 質 問 す る フ ェ イ ス シ ー ト に 加 えて,下記の尺度が含まれていた。

対 人 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ 加 藤 (2000,2003)が作成した 34項 目 か ら な る 対 人 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ 尺 度 を 用 い た 。 本 尺 度 は , ポ ジ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ ( 16 項目), ネ ガ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ (10項目), 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ (8項目) の 3つの下位尺度をもっ。回答は,あてはまらない(1) ~よくあてはまる(4) の4件 法 で あ っ た 。 分 析 に は 各 下 位 尺 度 の 合 計 点 を 用 い た 。 得 点 が 高 い ほ ど , 各 対人ストレスコーピングの使用頻度が高いことを示す。 α係 数 は , ポ ジ テ ィ プ 関 係 コ ー ピ ン グ が 中 学 生.86, 高 校 生.86, ネ ガ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ が 中 学 生 83, 高 校 生.81, 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ が 中 学 生 83,高校生.83であった。

抑うつ Center for Epidemiologic Studies Depression Scale  (Radloff, 1977)  の邦訳版(島・鹿野・北村・浅井, 1985)を用いた。本尺度は 20項 目 で 構 成 さ れ ている。回答は,あてはまらない(1)~よくあてはまる(4)の 4件法であった。

分 析 に は 全 項 目 の 合 計 点 を 用 い た 。 得 点 が 高 い ほ ど , 抑 う つ 傾 向 が 高 い こ と を 示 す。 α係 数 は 中 学 生.86,高校生.88であった。

共 感 性 加 藤 ・ 高 木 (1980)が 作 成 し た 25項 目 か ら な る 情 動 的 共 感 性 尺 度

(5)

(EotionalEpathyScale: EES) を 用 い た 。 本 尺 度 は , 感 情 的 暖 か さ ( 10項 目), 感 情 的 冷 淡 さ ( 10項目,逆転因子), 感 情 的 被 影 響 性 (5項目)の 3つの下 位尺度をもっ。回答は,全くちがうと思う(1)~全くそうだと思う (7) の 7 件

法 で あ っ た 。 分 析 に は 全 項 目 の 合 計 点 を 用 い た 。 得 点 が 高 い ほ ど , 他 者 の 気 持 ち に共感する程度が高いことを示す。 a係 数 は 中 学 生.84,高校生.85であった。

結 果

対 人 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ , 抑 う つ , 共 感 性 の 学 年 差

測 定 変 数 の 平 均 値 と 標 準 偏 差 を Table 1に 示 す 。 同 一 尺 度 を 使 用 し た 中 ・ 高 校 生聞で各得点を比較した結果,ポジティプ関係コーピング(1(284)=‑3.141, p<.OJ) 

と抑うつ(1(284)=‑2.463, p<.05)に お い て 有 意 差 が 認 め ら れ た 。 い ず れ も 高 校 生 の得点が中学生よりも高いことが示された。

Table 1測定変教の平均値と標準偏差

小学生 中学生 高校生

ポジティフ関係コーピング 10.14  30.44  33. 79  (3.08)  (9.27)  (8.67)  ネガティブ関係コーピング 8. 68  19.15  18.54  (4.09)  (6.27)  (5.08)  解決先送りコーピング 12. 11  19.01  19.70  (3.79)  (5.84)  (5.33)  抑うつ 10.35  34.81  37.77  (6.76)  (9.46)  (10.39)  共 感 性 30.48  112.40  116.09  (7.66)  (20.47)  (18.87)  Note  101‑105(小学生l.144‑155 (中学生).127132(高校生)

p(.05. 

* *  

p(.OI 

全 体 サ ン プ ル に お け る 対 人 ス ト レ ッ サ ー と 抑 う つ , 孤 独 感 の 関 連

全 体 サ ン プ ル に お け る 相 関 分 析 の 結 果 を Table2に 示 す 。 抑 う つ に 対 し て , 小 学 生 で は , ポ ジ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ が 有 意 な 負 の 相 関 (r=

.24,p<.05) ,ネ ガ テ ィ プ 関 係 コ ー ピ ン グ が 有 意 な 正 の 相 関 (r=.52,p<.o1) ,解決先送りコーピング が 有 意 な 負 の 相 関 を 示 し た (r=

.24,p<.05)。 す な わ ち , ポ ジ テ ィ プ 関 係 コ ー ピ ン グ と 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ の 使 用 は 抑 う つ を 低 下 さ せ , ネ ガ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ の 使 用 は 抑 う つ を 増 加 さ せ て い た , 中 ・ 高 校 生 で は , ネ ガ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ の み が 有 意 な 正 の 相 闘 を 示 し て い た ( 中 学 生 :r =.46, p<.Ol;高 校 生 :r=.57,  p<.Ol)

‑101

(6)

共 感 性 の 聞 整 効 果

調 査 参 加 者 を 共 感 性 の 平 均 点 で 高 低 の 2群 に 分 類 し , 各 群 に お い て 相 関 分 析 を 行 っ た (Table3)。 小 学 生 に お い て , 共 感 性 の 低 い 群 で は , ポ ジ テ ィ プ 関 係 コ ー ピ ン グ は 抑 う っ と 無 相 関 で あ り , ポ ジ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ の 使 用 が 抑 う つ を 低 下 さ せ る 機 能 を も っ て い な か っ た 。 ネ ガ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ は 抑 う っ と 有 意 な 正の相闘があり (r=.58,p<.Ol),解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ は 抑 う っ と 有 意 な 負 の 相 関があった (r=

.29,p<.05)。 一 方 , 共 感 性 の 高 い 群 で は , 抑 う つ に 対 し て , ポ ジティプ関係コーピングは有意な負の相関があり (r=

.33,p<.05) ,ネ ガ テ ィ プ 関係コーピングは有意な正の相関があり (r=.39,p<.o1)。 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ は 無 相 関 で あ っ た 。 共 感 性 の 高 い 人 で は , 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ の 使 用 が 抑 う つ を低下させる機能を持っていなかった。

中 学 生 に お い て , 共 感 性 の 低 い 群 で は , ポ ジ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ は 抑 う っ と 有意な正の相闘があり (r=.28,p<.05),ポジティブ関係コーピングの使用が抑う つ を 増 加 さ せ て い た 。 ネ ガ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ は 抑 う っ と 有 意 な 正 の 相 闘 が あ

り (r=.39,p<.o1) , 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ は 抑 う っ と 無 相 関 で あ っ た 。 一 方 , 共 感 性 の 高 い 群 で は , 小 学 生 の 結 果 と 同 様 に , 抑 う つ に 対 し て , ポ ジ テ ィ ブ 関 係 コ ーピングは有意な負の相闘があり (r=‑.26, p<.05)。 ネ ガ テ ィ プ 関 係 コ ー ピ ン グ は有意なEの相闘があり (r=.50,p<.Ol)。解決先送りコーピングは無相関であっ た 。 共 感 性 の 高 い 人 で は , 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ の 使 用 が 抑 う つ を 低 下 さ せ る 機 能を持っていないことが再確認された。

高 校 生 に お い て , 共 感 性 の 低 い 群 で は , ポ ジ テ ィ プ 関 係 コ ー ピ ン グ は 抑 う っ と 無 相 関 で あ り , ポ ジ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ の 使 用 が 抑 う つ を 低 下 さ せ る 機 能 を も

っていなかった。ネガティブ関係コーピングは抑うっと有意な正の相闘があり

( r

=.62, p<.O 1) , 解 決 先 送 り コ ー ピングは抑うっと無相関であっ た。一方,共感性の高い群では,

抑 う つ に 対 し て , ポ ジ テ ィ ブ 関 係コーピングは無相関であり,

ネ ガ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ は 有 意 な 正 の 相 関 が あ り (r=.46,  p<.o1)。 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ

は 無 相 関 で あ っ た 。 共 感 性 の 高 い 人 で は , ポ ジ テ ィ プ 関 係 コ ー ピ ン グ , 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ の 使 用 が 抑 う つ を 低 下 さ せ る 機 能をもっていなかった。

Table 2全サンプルの相関分析の結果 抑うつ 小学生

ポジティフ関係コーピング ネガティフ関係コーピング 解決先送りコーピング 中学生

ポジティフ関係コーピング ネガティフ関係コーピング 解決先送りコーピング

‑.24*  52

‑.24* 

4. n

uwn"

υa

u 高校生

ポジティフ関係コーピング ー 目09 ネガティフ関係コーピング 57

解決先送りコーピング 07 

Note目 俳103‑104(小学生l.143(中学生l.122‑

126(高校生).

pく.05. p(.Ol

(7)

Table 3共感性の調整効果

抑うつ

低群 高群

小学生

ポジティブ関係コーピング ‑.09  ‑.33

ネガティブ関係コーピング 58**  39**  解決先送りコーピング ‑.29 ‑.25  中学生

ポジティブ関係コーピング 28*  ‑.26

ネガティブ関係コーピング 39**  50** 

解決先送りコーピング 12 

。 。

高校生

ポジティフ関係コーピング 18 .05 

ネガティブ関係コーピング 62 紛 糾

解決先送りコーピング 08  ‑.02  Note. 51(小学生低群).49 (小学生高群), 66‑68 (中学生低群),

64‑65 (中学生高群), 56‑58 (高校生低群).63‑65 (高校生高群)

p(.05.* pピ01.

考 察

小 ・ 中 学 生 に お い て , ポ ジ テ ィ プ 関 係 コ ー ピ ン グ と 抑 う っ と の 負 の 相 関 は , 共 感 性 が 高 い 群 に お い て の み 認 め ら れ た 。 こ れ ら の 結 果 は , 大 学 生 を 対 象 に し た ( 谷 口 , 印 刷 中 ) の 研 究 結 果 と ほ ぼ 一 致 し て お り , 共 感 性 が 高 い 人 で は 第 三 過 程 の 影 響 力 が 相 対 的 に 強 く な り , 共 感 性 が 低 い 人 で は 第 一 過 程 と 第 二 過 程 の 影 響 力 が ほ ぼ 等 し く な る か あ る い は 第 一 過 程 の 影 響 力 が 相 対 的 に 強 く な る こ と を 示 唆 し て い る 。 対 人 志 向 性 や 共 感 性 が 高 い 人 は , 自 分 の 感 情 や 欲 求 を 抑 え る こ と よ り も , 相 手 の 感 情 や 欲 求 を 受 け 入 れ る こ と の 方 が 精 神 的 負 担 は よ り 少 な い と 感 じ る た め に , ポ ジ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ が 抑 う つ を 低 下 さ せ る と 考 え ら れ る 。 一 方 , 高 校 生 で は , 共 感 性 の 高 い 人 も 低 い 人 も , ポ ジ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ と 抑 う つ が 無 相 闘 で あ っ た 。 高 校 生 に お い て 共 感 性 の 調 整 効 果 が 見 ら れ な か っ た 理 由 と し て は , 共 感 性 の 高 い 高 校 生 が , 小 ・ 中 学 生 さ ら に は 共 感 性 の 低 い 高 校 生 と 比 較 し て , よ り 親 密 性 の 高 い 友 人 関 係 を 築 い て い た 可 能 性 が 挙 げ ら れ る 。 加 藤 (2007b)によると,

関 係 が 進 展 し た 最 も 親 し い 友 人 関 係 で は , ポ ジ テ ィ ブ 関 係 コ ー ピ ン グ と ス ト レ ス 反 応 が 正 の 相 闘 を 示 す 。 こ の こ と は , 第 一 過 程 の 方 が 第 二 過 程 よ り 強 い 影 響 力 を 持 つ こ と を 意 味 す る 。 共 感 性 の 高 い 人 が , 非 常 に 親 密 な 相 手 に 対 し て , ポ ジ テ ィ プ関係コーピングを行う場合は,第一過程と第二過程の影響力がほぼ等しくなり,

抑 う っ と の 関 連 が 無 相 関 に な る と 考 え ら れ る 。

小 学 生 に お い て , 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ と 抑 う っ と の 負 の 相 聞 は , 共 感 性 が 低 い 群 に お い て の み 認 め ら れ た 。 こ う し た 結 果 は , 大 学 生 を 対 象 と し た 谷 口 ( 印 刷 中 ) の 結 果 と 一 致 す る も の で あ る 。 解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ で は , 第 一 過 程 が 抑 う

‑103

(8)

つ に 対 し て 低 減 効 果 , 第 二 過 程 が 増 大 効 果 を 持 ち , 共 感 性 が 高 い 人 で は 第 一 過 程 と 第 二 過 程 の 影 響 力 が ほ ぼ 等 し く , 共 感 性 が 低 い 人 で は 第 一 過 程 の 影 響 力 が 強 く なる可能性が示唆された。一方,中・高校生では,共感性の低い人も高い人も,

解 決 先 送 り コ ー ピ ン グ と 抑 う つ が 無 相 関 で あ っ た 。 中 ・ 高 校 生 に お い て 共 感 性 の 調 整 効 果 が 認 め ら れ な か っ た 理 由 と し て は , 発 達 と と も に , 友 人 関 係 の つ き あ い 方 が 数 人 の グ ル ー プ で の 気 軽 な 友 だ ち づ き あ い か ら 一 人 の 友 だ ち と の 深 い つ き あ いへと変化すること(園枝・古橋, 2006;落合・佐藤, 1996;菅原, 1985)が 挙 げ ら れ る 。 一 人 の 友 人 と 深 く つ き あ う こ と が 多 く な る 中 ・ 高 校 生 で は , た と え 共 感 性 が 低 い 場 合 で も , そ の 友 だ ち と の 関 係 を 非 常 に 重 要 視 す る た め に , 第 二 過 程 の 影響力がさほど低下しないのであろう。

調 整 変 数 と し て 取 り 上 げ た 共 感 性 に は 従 来 か ら 性 差 が 認 め ら れ て お り ( 加 藤 ・ 高木, 1980; Mehrabian & Epstein, 1972), 本 研 究 に お い て も , 小 学 生 (t(99)= 

‑5.80, p<.o1) ,中学生(t(142)=‑2.10, p<.05),高校生(t(128)=‑3.51, p<.O 1)  の い ず れ に お い て も , 女 性 の 方 が 男 性 よ り も 共 感 性 が 高 い こ と が 示 さ れ た 。 対 人 ストレスコーピングに関しては,先行研究(加藤, 2000, 2003;谷口・加藤, 2007) で は 性 差 が 確 認 さ れ て い る が , 本 研 究 で は 男 女 間 で 有 意 差 は 見 ら れ な か っ た 。 ま た,抑うつに関しでも,中・高校生では有意な性差はなかった。以上のことから,

本 研 究 で は , 対 人 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ と 抑 う っ と の 関 連 を 検 討 す る 場 合 に , 性 差 を 統 制 し て 偏 相 関 係 数 を 求 め る こ と は 行 わ な か っ た 。 先 に 示 し た と お り , 本 研 究 で は 共 感 性 に 性 差 が 認 め ら れ る こ と か ら , 共 感 性 の 調 整 効 果 と 性 の 調 整 効 果 が 交 絡 し て い る 可 能 性 も 考 え ら れ る 。 し か し , 共 感 性 の 高 低 2群で性差に大きな偏り が 見 ら れ な い こ と , 性 別 を 調 整 変 数 と し て 対 人 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ と 抑 う っ と の 関 連 を 検 討 し た 結 果 が 本 研 究 の 結 呆 と 同 ー に な ら な い こ と な ど か ら , 交 絡 の 可 能 性は低いと考えられる。

今後の研究では,大学生を対象とした谷口(印刷中)の研究と同様に,小・中・

高校生においても,共感性だけでなく対人志向性など別の個人差変数を取り上げ,

その調整効果を検討する必要があろう。

引用文献

福 田 美 紀 ・ 加 藤 司 ・ 鈴 木 直 人 (2006).小 学 生 用 対 人 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ 尺 度 作 成 の 試 み 日 本 心 理 学 会 第 70回大会発表論文集, 1302 

加藤隆勝・高木秀明(1980).青 年 期 に お け る 情 緒 的 共 感 性 の 特 質 筑 波 大 学 心 理 学研究, 2, 33.42 

加 藤 司 (2000) 大 学 生 用 対 人 ス ト レ ス コ ー ピ ン グ 尺 度 の 作 成 教育心理学研究,

48, 225.234. 

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