[研究報告]
* 平成 27,28 年度 産総研地域連携戦略予算プロジェクト
** 素形材技術部
*** デザイン部
**** 電子情報技術部
樹脂 3D プリンタ造形器物の経年変化
*和合 健**、長嶋 宏之***、箱崎 義英****、菊池 貴****、黒須 信吾**
樹脂 3Dプリンタで製造した器物の経年変化をレーザプローブ式座標測定機 で測定した。その結果、レーザプローブ式座標測定機で得られた球位置の経年 変化の平均値は、FDM法で 68.4μm、光造形法で 117.2μmであり、両者を比較 すると光造形法によるものの経年変化が大きいことが明らかになった。
キーワード:樹脂 3D プリンタ、レーザプローブ式座標測定機、経年変化
Secular changes in the moldings of a resin 3D printer
Takeshi Wago, Hiroyuki Nagashima, Yoshihide Hakozaki, Takashi Kikuchi and Shingo Kurosu
The secular changes that are produced in the moldings of a resin 3D printer are measured using a laser-probe assisted coordinate measuring machine. The measured mean values of the secular changes are observed to be 68.4 and 117.2 μm for the moldings that are produced using fused deposition modeling (FDM) and laser beam lithography (LBL), respectively. Therefore, it can be confirmed that the secular changes that are produced in the moldings using LBL is larger than that produced using FDM.
Keywords: resin 3D printer, coordinate measuring machine equipped non-contact laser probe, secular change
1 緒 言
クローズドループエンジニアリングは、3Dスキャ ナと 3D プリンタが相互連携することで製造物の形 状誤差を収束低減化させる製造手段である。これに より製品製造の高精度かつ高能率化が達成できる。
クローズドループエンジニアリングを実現するため には、個々の工程の技術蓄積が必要であり、ここで は樹脂 3D プリンタで造形した器物の経年変化を調 べた。
2 樹脂 3D プリンタによる造形器物の製作
樹脂3Dプリンタ(以下プリンタと呼ぶ)には、図 1に示す光造形法(以下、Laser beam lithography:LBL)
と熱溶解積層法(以下、Fused deposition modeling: FDM)がある。前者にはシーメット㈱製NRM-6000 を、後者にはStratasys Ltd 製FORTUS 360mc S を使用 した。造形条件は表1の通りである。プリンタ内の配置 を、LBLとFDMのそれぞれについてレイアウト1、レ イアウト2として、図2に示す計4個の造形物を製 作した。ここで、レイアウト1はプリンタのX、Y、
図 1 光造形装置(上図)、FDM 装置(下図)
表 1 造形条件
レイアウト L1 L2 L1 L2
積層ピッチ
造形時間 10時間22分 36秒
23時間52分
49秒 49時間4分 70時間34分 L1:レイアウト1,L2:レイアウト2
0.1 mm 0.127 mm
LBL FDM
岩手県工業技術センター研究報告 第 20 号(2017)
図 2 LBL(左),FDM(右)
(各造形法の左:L1,右:L2)
Z軸に平行に器物を設置した場合、レイアウト2は器 物をX、Y、Z軸からそれぞれ45°傾けた場合である。
3 レーザプローブ CMM による経年変化の測定 3-1 実験装置
経年変化に使用した測定機はレーザプローブ式座 標測定機(以下、レーザプローブ CMM)、評価ソフ トウェアはFocus Inspection Ver8.3(Nikon Metology製、
以下FI8.3)である。経年変化測定の前後で同一の測
定機及びソフトウェアを用いた。
3-2 実験方法
経年変化として 1 年間の形状変化を見た。測定番 号は表 2 に示した測定テーブルに従い、因子の組み 合わせを 8 水準とした。ここで切り欠けの位置とは、
器物の向きを決めるために器物の辺に位置する正立 方体に切り欠けを付けたもので、その正立方体は前 面の下部に位置している。測定手順及び機器操作方 法は経年変化前後で同一になるように注意を払った が、1年後には測定者の技能が必然的に向上してい る。特に、図 3.1 に示したプローブが下向きの場合 と同様に、図 3.2 の横向きの場合においても、操作 技能が向上したことにより、面に対してほぼ 1 回の スキャニングで測定が行え、重ねてスキャニングす ることが避けられた。
表 2 測定テーブル
レーザ強度はFDM及び光造形法ともにモニター画 面で確認し、操作者が適正と判断する範囲で適宜調 整した。レーザプローブCMMの測定定盤上の温度は 平均値20.4℃、変動範囲0.7℃であった。
図 3.1 レーザプローブ CMM による測定
(プローブ姿勢 A 軸 0deg、C 軸 0deg)
図 3.2 レーザプローブ CMM による測定
(プローブ姿勢 A 軸 90deg、C 軸-90deg)
3-3 結果及び考察
設計値と測定値の位置合わせは最小二乗法による ベストフィットコマンドを利用した。また実験番号 の 名 称 は 以 下 の 法 則 に 従 っ て 与 え た 。 例 え ば
FDM_L1_Xは、製造方法がFDM、製造時の配置がレ
イアウト1、レーザプローブCMMによる測定時の切
り欠け位置がX軸上であることを意味している。ま
たLBL_L2_Yは、製造方法がLBLで、製造時の配置
がレイアウト 2、切り欠け位置が Y軸上であること を意味する。測定で得られた経年変化前後の値を利 用し、設計値照合によるそれらの差を算出した。設 計値照合時の設計値は経年変化前の測定値とした。
図 3.3、3.4 に経年変化の結果を示す。この図は角
部に位置する 8 球の球中心座標を設計値からの差を 算出し、誤差倍率 40 倍で誇張表示したものである。
また、各図右下の黒枠で囲まれた数値は経年変化後 の測定値から変化前の測定値を引いた数値である。
その計算式は1球あたりX、Y、Z軸の3個の情報を 持ち8球では24個で、基準合わせ3-2-1で基準とし た球では0の座標値が6個あるため、24-6=18個の 平均を取った数値であり、各実験番号の経年変化の 大きさを示している。
試験No. 1 2 3 4 5 6 7 8
製造方法 製造での
置き方 L1 L2 L1 L2 L1 L2 L1 L2 切り欠け
の位置 X軸 X軸 Y軸 Y軸 X軸 X軸 Y軸 Y軸
※ L1:レイアウト1,L2:レイアウト2
FDM LBL
樹脂 3D プリンタ造形器物の経年変化
図 3.3 FDM の場合の経年変化
図 3.4 LBL の場合の経年変化
経年変化の大きさと方向の傾向は、FDMとLBLの 同じレイアウト番号と切り欠け位置の軸で傾向が類 似している。しかし予想通り、レイアウトの違いで は、経年変化の大きさと傾向が大きく異なっている。
これは積層方向の違いによって残留応力の開放され る大きさと方向が異なるためと推測される。
一方で予想に反した結果として、切り欠け位置をX 軸とY軸としたCMM上での測定で、配置姿勢の差 によって測定値の差が大きく、XとYの差はFDM_L1 で16.9μm、FDM_L2で14.9μm、LBL_L1で56.7μm、
LBL_L2で3.8μmとなった。これはCMMの測定誤差 と考えられる。CMMプローブの走査方向はX軸上を X 軸の正方向に稼働するようにプログラミングし、
その点間ピッチは0.6mmとした。
一方、切り欠け位置を90°回転することで造形物表 面にある筋模様の方向が変わり、筋模様とラインレ ーザの交差方向が平行または垂直に切り替わること で測定誤差が発生することも測定誤差の原因の一つ になっていると推測された。言い換えれば、走査方 式の測定機を利用する場合は反転法を適用すること で測定誤差が容易に抽出できたため、反転法は必須 であると思われる。最終的な経年変化の結果は、各 造形法での平均値として FDM で 68.4μm、LBL で 117.2μmとなり、LBLがFDMより48.8μm大きくな った。
4 結 言
樹脂3D プリンタによる造形物の経年変化を、レ ーザプローブ式座標測定機で、測定開始時とその1 年後の変動値を球中心座標により測定し、以下の結 果を得た。
(1) 熱溶解積層法(Fused deposition modeling:FDM)で は経年変化の平均値が 68.4μm、光造形法(Laser beam lithography:LBL)では経年変化の平均値が 117.2μmとなった。
(2) 測定誤差を表す切り欠け位置のX軸とY軸の違 いが、Lbl_L1で56.7μmと大きくなった。これは、
造形物表面にある筋模様の方向がラインレーザプ ローブの走査方向に影響を及ぼしたためと考えら れ、ラインレーザプローブによる測定時には反転 法を利用した測定誤差の確認が必須である。
謝 辞
この研究は,産総研地域連携戦略予算プロジェクト
「3D計測エボリューション」(3D3プロジェクト)で実 施した。本共同研究に携わったすべての共同研究者の 方々に感謝します。
CAD (Nominal) 2015 (Measured) 2016 (Measured)