条件付き権利と確認の利益
著者 徳田 和幸
雑誌名 同志社法學
巻 62
号 6
ページ 1639‑1658
発行年 2011‑03‑31
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000013560
条件付き権利と確認の利益
一同志社法学 六二巻六号
条件付き権利と確認の利益
徳 田 和 幸
︵一六三九︶ 一 はじめに
二 停止条件付権利の場合
三 解除条件付権利の場合
四 むすびにかえて
一 はじめに
従来の通説によれば︑確認の訴えの対象となる権利関係は︑条件付きまたは期限付きでもよいが︑将来発生する権利 または法律関係の確認の訴えは認められない︑と解されている ︵
︒確認の訴えの対象適格の一般論としては︑そのような 1︶
解釈が妥当であろうと思われるが︑そこで問題とされている条件付き権利としてどのようなものがありうるのか︑また︑
条件付き権利と確認の利益
二同志社法学 六二巻六号
条件付き権利と将来発生する権利・法律関係とは確認の対象としてどのような点に違いがあるのか︑というような点に
ついては︑なお必ずしも明らかではないところが残されているように思われる︒そこで︑本稿では︑従来の裁判例を素
材として︑条件付き権利と確認の利益の関連について若干の検討をしてみることとしたい︒
ところで︑条件付き権利とはいっても︑停止条件付きの場合は︑条件が成就すれば︑具体的な権利が発生するのに対
し︑解除条件付きの場合には︑条件が成就すれば︑その具体的な権利は消滅することになるのであり︵民法一二七条参
照︶︑確認の利益を考えるに際しても︑両者を一律に考えることはできない︒そこで︑以下では︑両者の場合を区別し
てみていくこととする︒
二 停止条件付権利の場合
1
停止条件の付いた権利は︑条件としての将来の不確定な事実が発生すれば︑具体的な権利として効力を生じる ︵︒従 2︶
来の裁判例において︑停止条件付き権利またはそれに準じた権利が確認の訴えの対象とされているとみられるものに
は︑つぎのようなものがある︒
2
︹1
︺ 仙台地判昭和六一年四月一五日労働判例四七三号一一頁 事案は︑要約すれば︑会社Yの従業員たる原告Xらが︑Yが職員退職手当支給規程における退職金支給率を切り下げたことに対して︑Yを被告として︑旧規定の定める支給率による退職金請求権を有する労働契約上の地位にある旨の確
認を求めたというものである︒仙台地裁は︑次のように判示して︑この訴えには︑確認対象の適格性も確認の必要性︵即 ︵一六四〇︶
条件付き権利と確認の利益
三同志社法学 六二巻六号 時確定の利益︶も認められないとして︑訴えを却下した︒
﹁
1
原告らが本件各訴えにおいてそれぞれ確認を求めている権利関係は︑結局のところ︑旧規定がなお有効であるとすれば︑これによる原告らの将来の各退職時に被告から原告らに支給されるはずの退職金についての権利関係
であるところ︑原告らの被告に対する退職金債権はその履行期が将来の原告らの各退職時であるのみならず︑その
額及び支給方法等具体的債権の内容は︑原告ら各人の退職時における就業規則及び退職手当支給規定の定めるとこ
ろにより退職時に具体的に確定するものであって︑現在の段階においては︑未だ確定していないのであるから確認
判決の対象とすべき法的紛争としては未成熟といわねばならない︒
2
のみならず︑仮に本訴において本案判決がなされたとしても︑将来原告らの各退職時までに更に被告により退職金支給規定等が変更される可能性もあり︑そうした場合に︑再び本訴のような紛争が生じる可能性を否定できず︑
従って︑本件各訴えは︑決して原告らの主張するような原告らの被告に対する退職金債権に関する法的紛争を有効
かつ抜本的に解決し得るというものでもない︒
3
更に︑原告らは︑退職後に新規定の効力を争うのは困難であると主張するが︑本訴における新規定の効力についての原告らの主張内容からは必ずしもそのようには認められない︒﹂
この判決は︑確認の対象を停止条件付き権利として把握しているわけではなく︑退職金債権の履行期が退職時であり︑
その額および支給方法等の退職時に具体的に確定するものであって︑現在においては未だ確定していない点︑すなわち︑
将来の権利・法律関係に関するものである点を重視しているとみられるものである︒ただし︑退職金を賃金の後払い的
︵一六四一︶
条件付き権利と確認の利益
四同志社法学 六二巻六号
性格を強調して考えると︑現在従業員である者は︑退職を停止条件とする退職金請求権を有するとみる余地もあること
からすると︑本判決は︑本事案における退職金請求権は停止条件付き権利として具体化されていないとみているともい
えるように思われる ︵
︒ 3︶
︹
2
︺ 神戸地判平成五年二月二三日判例タイムズ八三三号一九〇頁 損害保険業であるY社は︑昭和四〇年に訴外A社の保険業務を引き継いだが︑その際に︑A社で勤務していた労働者をそれまでどおりの労働条件で雇用することとなった︒その後︑Y社はその従業員で組織する労働組合との間で︑旧A
社の従業員とそれ以外の従業員の労働条件を統一するための交渉を行ってきたが︑定年の統一については交渉が難航し
た︒しかし︑労働組合は︑Yの経営難を背景として︑定年を五七歳で統一し︑さらに退職金の計算方法も変更する労働
協約を締結した︒旧A社の従業員であったXは︑協約締結当時五三歳の組合員であったが︑新たな労働協約によって定
年が六三歳から五七歳に引き下げられ︑かつ︑退職金の支給基準が引き下げられるのに不満をもち︑労働協約・就業規
則の改訂は無効であるとし︑Y社に対して︑自己の定年は旧A社労働協約により六三歳であると主張して︑XがY社に
対し労働契約上の権利を有する地位にあることの確認︑および︑﹁XがY社に対し平成五年七月三一日︹Xの主張する
定年年齢に達する日︺に金二三七九万五六五〇円の退職金の支払を受ける権利を有することの確認﹂を求める訴えを提
起した︒ 神戸地裁は︑労働契約上の地位にあることの確認を求める部分については請求を棄却し︑Xの求めた退職金請求権の 確認については︑つぎのように判示して︑訴えを却下した ︵
︒ 4︶ ︵一六四二︶
条件付き権利と確認の利益
五同志社法学 六二巻六号 ﹁労働協約ないし就業規則等に基づく退職金は︑使用者に支払義務があり︑賃金の後払い的性格を有するものであ
るが︑他方︑報償的性格をも有しており︑かつその支払額は退職事由︑勤務年数などの諸要件に照らして退職時に
おいてはじめて確定するものであるから︑退職時までは具体的な債権として成立しているとはいえないものであ
る︒﹂
﹁⁝⁝・退職金の支払を受ける権利を有することの確認を求める部分は前述のとおり退職金債権は退職時において
具体化されるものであり︑現在確定したものとはいえないから法律上その確認を求めることができないのでこれを
却下﹂する︒
この判決も︑在職中の退職金請求権は未だ確定したものとはいえないとして確認訴訟の対象性を否定しているのであ
り︑条件付き権利を問題としているものではない︒ただし︑退職金を賃金の後払的性格を有するとしてとらえれば︑未
だ従業員たる地位を失わない者も︑退職を停止条件とする退職金支払請求権を現に有するとして︑退職前であっても︑
退職金請求権は現在の権利関係であり︑確認対象として問題はないとする余地がありうるとしたうえで︑退職金の性格
は︑それぞれの企業によって異なり得るものであり︑本判決が述べるように︑報償的性格をもあわせ有する場合もあろ
うから︑それまでの退職金の支払状況等から︑当該企業の退職金が︑単に退職を条件として支払われるものなのか︑そ
れとも退職時にそれまでの功労等を考慮して初めて発生するものなのかを判断して︑確認対象適格および即時確定の利
益を考慮する必要があろう︑との指摘もなされている ︵
︒ 5︶
︵一六四三︶
条件付き権利と確認の利益
六同志社法学 六二巻六号
︹
3
︺ 最判平成一一年一月二一日民集五三巻一号一頁 ︵6︶
事案は︑建物の賃借人であるXが︑前の賃貸人・建物所有者であった訴外Aとの間で賃貸借契約を締結した際に︑保
証金の名称で敷金の性質を有する金四〇〇万円をAに差し入れ︑賃貸借契約終了時にAはXにその二割を償却した三二
〇万円を返還することを合意したと主張して︑Aから本件建物を譲り受け︑賃貸人の地位を承継したYに対し︑賃貸借
契約の継続中に︑金三二〇万円の敷金︵保証金︶返還請求権の存在確認を求める訴えを提起したというものである︒第
一審は︑﹁現在も本件賃貸借契約が継続中で︑原告と被告との間で賃料増額に関する調停が係属していることは原告も
自認しているところであって︑原告が確認を求めている保証金返還請求権なるものは未だその具体的な内容が確定して
いない抽象的な権利にすぎず︑このような権利の存在を確認してみたところで保証金の返還を巡る紛争の終局的解決と
ならないことは明らかであ﹂り︑本件訴えは︑﹁法的紛争としては未熟なものを確認訴訟の対象とするものであり︑即
時確定の利益を欠く不適法な訴え﹂であるとして︑Xの訴えを却下したが︑Xが控訴を提起した︒控訴審は︑Xの訴え
の趣旨について︑保証金返還義務の承継を争うYとの間︑承継により生じた基本的法律関係である保証金返還義務があ
ること︵その具体的金額はともかく︶の確認を求めようとするにあることは︑釈明により明らかであるとしたうえで︑
﹁Xには︑本件建物の賃貸借契約について︑Yが賃貸人の地位を承継したことに伴い︑保証金の返還義務をも承継し︑
賃貸借契約終了のときには︑当該契約に基づいて︑そのときにYが賃借人であるXに対して有する賃貸借契約上の一切
の債権と相殺した残額︵Xの主張によればこれとは別に償却の約定に従い保証金の二割を減ずる︒︶の限度で保証金を
返還すべき義務︵本件建物の賃貸借契約から生ずる基本的法律関係である保証金返還義務︶があることの確認を求める
利益があるものと判断する︒﹂として︑第一審判決を取り消し︑事件を第一審に差し戻す旨の判決をした︒これに対し︑
Yは︑未だ争訟が現実化していない法律関係︑将来の争訟の前提となる基本的な法律関係については原則として確認の ︵一六四四︶
条件付き権利と確認の利益
七同志社法学 六二巻六号 利益は否定される等と主張して︑上告︒ 最高裁は︑つぎのように判示して︑本件訴えには確認の利益があるとして︑Yの上告を棄却した︒
﹁建物賃貸借における敷金返還請求権は︑賃貸借終了後︑建物明渡しがされた時において︑それまでに生じた敷金
の被担保債権一切を控除しなお残額があることを条件として︑その残額につき発生するものであって︵最高裁昭和
四六年︵ォ︶第三五七号同四八年二月二日第二小法廷判決・民集二七巻一号八〇頁︶︑賃貸借契約終了前においても︑
このような条件付きの権利として存在するものということができるところ︑本件の確認の対象は︑このような条件
付きの権利であると解されるから︑現在の権利又は法律関係であるということができ︑確認の対象としての適格に
欠けるところはないというべきである︒また︑本件では︑上告人︵Y︶は︑被上告人︵X︶の主張する敷金交付の
事実を争って︑敷金の返還義務を負わないと主張しているのであるから︑被上告人・上告人間で右のような条件付
きの権利の存否を確定すれば︑ 被上告人の法律上の地位に現に生じている不安ないし危険は除去されるといえる
のであって︑本件訴えには即時確定の利益があるということができる︒従って︑本件訴えは︑確認の利益があって︑
適法であり︑これと同旨の原審の判断は是認することができる︒﹂
本判決は︑建物賃貸借契約継続中に賃借人が賃貸人に対して有する敷金返還請求権は︑賃貸借契約終了後建物の明渡
しがされた時において︑それまでに生じた敷金の被担保債権を控除しなお残額があることを条件とする権利であり︑賃
貸借契約終了前においても︑そのような条件付きの権利として存在するものであり︑現在の権利または法律関係である
ということができ︑確認の対象としての適格に欠けるところはない︑としたのである︒ただし︑これに対しては︑本件
︵一六四五︶
条件付き権利と確認の利益
八同志社法学 六二巻六号
判旨がいう現在の権利関係とは︑条件付権利たる敷金返還請求権にほかならず︑将来の条件成就によりはじめて現実化
し︑金額や履行期なども具体的に決まるのであるから︑その判旨をもって将来の権利関係の確認を容認したものと位置
づけることもできるのではないか︑との指摘もされており ︵
︑また︑本件判旨は︑実質的には将来のものである権利ない 7︶
し法律関係を確認の対象と認めているとし︑むしろ︑これを契機とし︑今後︑判例が正面から将来の権利または法律関
係が確認の対象となりうることを認める方向に動くことを期待したい︑との評価もされている ︵
︒ 8︶
︹
4
︺ 東京地判平成二〇年二月二七日判例時報二〇一一号一二四頁︑判例タイムズ一二八〇号二二八頁 事案は︑被告Yから本件建物を賃借して︑訴外Aに対し本件建物を転貸しているXが︑Y所有の本件建物を占有してきたことの賃料︑占有の対価ないし損害金の支払いやYとの間で本件預託金契約を締結して預託金として三二億円を交
付したことに関して︑Yに対し︑①本件建物の賃料債務の残債務不存在確認および将来賃料額の確認︑②賃貸借契約の
成立が認められない場合における占有対価支払債務の残債務不存在確認および将来占有対価支払額の確認︑③原告Xの
占有が違法である場合の支払済み賃料相当損害金債務の残債務不存在確認︑④預託金契約に基づく預託金返還請求権の
確認請求をした︑というものである︒本判決は︑①については︑賃料額の具体的な合意がなく︑賃貸借契約が成立して
いないとして︑棄却︑②については︑前件訴訟︵YがXに対し︑賃料額確認を求めたもの︶と期間の重複する部分につ
き既判力に抵触し︑重複しない部分につき︑法律上の争訟に当たらず︑﹁その他法律において特に定める権限を有する﹂
︵裁判所法三条一項︶場合にもあたらないから︑不適法であるとして却下 ︵
︑賃貸借契約の成立は認めら︑③については 9︶
れないものの︑占有合意の存在が認められるから原告の占有が不法行為に当たらないとして棄却した︒しかし︑④の預
託金返還請求権の確認請求については︑確認の利益があることを認め︑また︑預託金契約につき︑﹁原告と被告との間 ︵一六四六︶
条件付き権利と確認の利益
九同志社法学 六二巻六号 で本件建物について賃料の具体的合意に至らないまま本件占有合意をした際に︑これに付随して﹃保証金︑敷金﹄として本件預託金契約を締結し︑本件預託金を交付したのであるから︑本件預託金三二億円は︑被告が負担する本件ビルの工事費負担金額に対する建設協力金の性質とともに︑本件占有合意に基づく占有により原告が被告に対して負う債務の担保としての性質を有するものと認められる︒﹂としたうえで︑次のように述べて︑占有合意が終了して本件建物を明
け渡す時に︑預託金とYのXに対する占有合意上の一切の債権とを相殺した残額を返還することを停止条件とする条件
付き権利があることを確認する判決をした︒
﹁本件預託金契約は︑将来において本件占有合意における賃貸条件を確定する合意が成立しない場合には︑本件占
有合意が終了して原告が被告に対し本件建物を明け渡す時に︑被告が原告に対し本件預託金三二億円を返還する債
務を負うが︑その債務は︑本件占有合意上︑原告が被告に対して負う本件建物に関する一切の債務と相殺して︑そ
の残額を返還する趣旨を含むものであり︑原告と被告は︑本件合意書第五項に係る本件預託金契約を締結した際に︑
そのことをも合意したものと解するのが相当である︒
以上によれば︑原告は被告に対し︑本件預託金契約に基づき本件預託金返還請求権を有するところ︑上記権利は︑
本件占有合意が終了して本件建物を明け渡す時に︑本件預託金三二億円と被告の原告に対する本件占有合意上の一
切の債権とを相殺した残額を返還することを停止条件とする条件付き権利であるというべきである︒
⁝⁝⁝⁝
したがって︑予備的請求
1
C︵預託金確認請求︶は︑原告が被告に対し︑本件預託金返還請求権につき︑本件建物明渡し時において︑被告の原告に対する本件占有合意上の一切の債権と相殺した残額の限度で存在することの確
︵一六四七︶
条件付き権利と確認の利益
一〇同志社法学 六二巻六号
認を求める限度で理由があり︑その余は失当である︒﹂
この判決においては︑賃料額の合意が認められず︑占有合意の存在しか認められない場合に︑新規賃料額の確認を求 める訴えは法律上の争訟に当たらない ︵
等とされているが︑預託金返還請求権については︑本件占有合意が終了して本件 10︶
建物を明け渡す時に︑本件預託金三二億円と被告の原告に対する本件占有合意上の一切の債権とを相殺した残額を返還
することを停止条件とする条件付き権利として確認の対象となり︑また︑そのような限度で存在することが確認されて
いるのである︒そこでは︑預託金返還請求権は︑前掲︹
3
︺最高裁判例における建物賃貸借契約継続中の敷金返還請求権と同趣旨のものと捉えられているといえるであろう︒
三 解除条件付権利の場合
1
以上の停止条件付権利の場合に対し︑従来の裁判例において︑解除条件付権利が確認の訴えの対象として問題とされているものはみられなかったが︑近時︑解除条件付権利が確認の対象となっているとする興味ある最高裁判例が現れ
た︒その内容は︑次のようである︒
2
︹5
︺ 最判平成二一年一二月一八日民集六三巻一〇号二九〇〇頁 ︵11︶
被相続人Aの相続人は︑その子であるX︑Y
1
︑Y2
であったが︑Aは︑平成一〇年一二月七日付で︑その遺産につき︑遺産分割の方法を指定する公正証書遺言をしており︑Xがその遺言に基づきAの遺産の一部を相続により取得した︒
Yらは︑平成一七年一二月二日ころ︑Xに対し︑遺留分減殺請求の意思表示をし︑Xは︑Yらに対し︑本件遺言による ︵一六四八︶
条件付き権利と確認の利益
一一同志社法学 六二巻六号 遺産分割の方法の指定がYらの遺留分を侵害するものである場合は民法一〇四一条所定の価額を弁償する旨の意思表示
をした︒その後︑Yらは︑Xに対し︑遺留分減殺に基づく目的物の返還請求も価額弁償請求も行っていないが︑Xは︑
⑴Y
1
に対しては︑Aの相続についてY1
がXに対する遺留分減殺請求権を有しないことの確認を求める旨︑⑵Y2
に対しては︑A相続についてY
2
がXに対して有する遺留分減殺請求権が二七七〇万三五八二円︵後に鑑定の結果に基づき三九三五万二〇六五円に変更︶を超えて存在しないことの確認を求める旨の訴えを提起した︒
第一審は︑⑴被告Y
1
がXに対する遺留分減殺請求権を有しないことを確認し︑⑵被告Y2
がXに対して有する遺留分減殺請求権は三九三五万二〇六五円を超えて存在しないことを確認する︑旨の判決をした︒控訴審は︑第一回口頭弁
論期日において︑Xが価額弁償すべき額を確定したいため︑本件各確認の訴えを提起したものである旨を述べたことを
踏まえて︑⑴のY
1
に対する確認請求は︑XがY1
の遺留分について価額弁償すべき額がないことの確認を求めるものであり︑⑵のY
2
に対する確認請求は︑XがY2
の遺留分について価額弁償すべき額が二七七〇万三五八二円を超えないことの確認を求めるものであると解したうえで︑本件各確認の訴えは確認の利益を欠き不適法であると判断し︑第一
審判決中︑本件各確認の訴えが適法であることを前提とする本件確認請求に係る部分を取り消して︑本件各確認の訴え
を却下した︒その理由は︑﹁Yらは︑Xに対して遺留分減殺請求をしたが︑いまだ価額弁償請求権を行使していない︒
したがって︑Yらの価額弁償請求権は確定的に発生しておらず︑本件各確認の訴えは︑将来の権利の確定を求めるもの
であり︑現在の権利関係の確定を求める訴えということはできない︒﹂﹁仮に︑Xによる価額弁償の意思表示があったこ
とにより︑潜在的にYらがXに対して価額弁償請求権を行使することが可能な状態になったことを根拠として︑本件各
確認の訴えをもって現在の権利関係の確定を求める訴えであると解する余地があるとしても︑﹂﹁受遺者又は受贈者が価
額弁償して遺贈又は贈与の目的物の返還義務を免れるためには︑現実の履行又は履行の提供を要するのであって︑潜在
︵一六四九︶
条件付き権利と確認の利益
一二同志社法学 六二巻六号
的な価額弁償請求権の存否又はその金額を判決によって確定しても︑それが現実に履行されることが確実であると一般
的にはいえない︒﹂﹁そして︑その金額は︑事実審の口頭弁論終結時を基準として確定されるものであって︑口頭弁論終
結時と上記金額を確認する判決の確定時に隔たりが生ずる余地があることも考慮すると︑本件各確認の訴えは︑現在の
権利義務を確定し︑紛争を解決する手段として適切とはいい難い︒﹂というものであった︒Xが上告受理申立て︒
最高裁は︑⑴のY
1
に対する確認の訴えについては︑これを合理的に解釈すれば︑本件遺言による遺産分割の方法の指定はY
1
の遺留分を侵害するものではなく︑遺留分減殺請求がされても︑Xが取得した財産につきY1
が持分権を取得することはないとして︑当該財産につきY
1
が持分権を有していないことの確認を求める趣旨に出るものであることが可能であり︑そのような趣旨の訴えであれば︑確認の利益が認められることが明らかであるのに︑原審は︑その点に
ついて釈明権を行使することなく︑Y
1
に対する確認の訴えを確認の利益を欠くものとして却下した点において︑釈明権の行使を怠った違法があると判断し︑⑵のY
2
に対する確認の訴えについては︑つぎのように︑特段の事情がない限り︑確認の利益があるというべきであるとして︑原判決を破棄し︑本件を原審に差し戻した︒
﹁ア 一般に︑遺贈につき遺留分権利者が遺留分減殺請求権を行使すると︑遺贈は遺留分を侵害する限度で失効し︑
受遺者が取得した権利は上記の限度で当然に減殺請求をした遺留分権利者に帰属するが︑この場合︑受遺者は︑遺
留分権利者に対し同人に帰属した遺贈の目的物を返還すべき義務を負うものの︑民法一〇四一条の規定により減殺
を受けるべき限度において遺贈の目的物の価額を弁償し︑又はその履行の提供をすることにより︑目的物の返還義
務を免れることができると解される︵最高裁昭和五三年︵ォ︶第九〇七号同五四年七月一〇日第三小法廷判決・民
集三三巻五号五六二頁参照︶︒これは︑特定の遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言による遺産分割の方法の ︵一六五〇︶
条件付き権利と確認の利益
一三同志社法学 六二巻六号 指定が遺留分減殺の対象となる本件のような場合においても異ならない︵以下︑受遺者と上記の特定の相続人を併せて﹃受遺者等﹄という︒︶︒
そうすると︑遺留分権利者が受遺者等に対して遺留分減殺請求権を行使したが︑いまだ価額弁償請求権を確定的
に取得していない段階においては︑受遺者等は︑遺留分権利者に帰属した目的物の価額を弁償し︑又はその履行の
提供することを解除条件として︑上記目的物の返還義務を負うものということができ︑このような解除条件付きの
義務の内容は︑条件の内容を含めて現在の法律関係というに妨げなく︑確認の対象としての適格に欠けるところは
ないというべきである︒
イ 遺留分減殺請求を受けた受遺者等が民法一〇四一条所定の価額を弁償し︑又はその履行の提供をして目的物の
返還義務を免れたいと考えたとしても︑弁償すべき額につき関係当事者間に争いがあるときには︑遺留分算定の基
礎となる遺産の範囲︑遺留分権利者に帰属した持分割合及びその価額を確定するためには︑裁判等の手続において
厳密な検討を加えなくてはならないのが通常であり︑弁償すべき額についての裁判所の判断なくしては︑受遺者等
が自ら上記価額を弁償し︑又はその履行の提供をして遺留分減殺に基づく目的物の返還義務を免れることが事実上
不可能となりかねないことは容易に想定されるところである︒弁償すべき額が裁判所の判断により確定されること
は︑上記のような受遺者等の法律上の地位に現に生じている不安定な状況を除去するために有効︑適切であり︑受
遺者等において遺留分減殺に係る目的物を返還することと選択的に価額弁償をすることを認めた民法一〇四一条の
規定の趣旨にも沿うものである︒
そして︑受遺者等が弁償すべき額が判決によって確定されたときはこれを速やかに支払う意思がある旨を表明し
て︑上記の額の確定を求める訴えを提起した場合には︑受遺者等がおよそ価額を弁償する能力を有しないなどの特
︵一六五一︶
条件付き権利と確認の利益
一四同志社法学 六二巻六号
段の事情がない限り︑通常は上記判決確定後速やかに価額弁償がされることが期待できるし︑他方︑遺留分権利者
においては︑速やかに目的物の現物返還請求権又は価額弁償請求権を自ら行使することにより︑上記訴えに係る訴
訟の口頭弁論終結の時と現実に価額の弁償がされる時との間に隔たりが生じるのを防ぐことができるのであるか
ら︑価額弁償における価額算定の基準時は現実に弁償がされる時であること︵最高裁昭和五〇年︵ォ︶第九二〇号
同五一年八月三〇日第二小法廷判決・民集三〇巻七号七六八頁参照︶を考慮しても︑上記訴えに係る訴訟において︑
この時に最も接着した時点である事実審の口頭弁論終結の時を基準として︑その額を確定する利益が否定されるも
のではない︒
ウ 以上によれば︑遺留分権利者から遺留分減殺請求を受けた受遺者等が︑民法一〇四一条所定の価額を弁償する
旨の意思表示をしたが︑遺留分権利者から目的物の現物返還請求も価額弁償請求もされていない場合において︑弁
償すべき額につき当事者間に争いがあり︑受遺者等が判決によってこれが確定されたときは速やかに支払う意思が
ある旨を表明して︑弁償すべき額の確定を求める訴えを提起したときは︑受遺者等においておよそ価額を弁償する
能力を有しないなどの特段の事情がない限り︑上記訴えには確認の利益があるというべきである︒﹂
3
本件事案における⑵のXのY2
に対する遺留分減殺請求権が二七七〇万円余を超えて存在しないことの確認を求める旨の訴えについては︑原審は︑価額弁償すべき額が二七七〇万円余を超えて存在しないことの確認を求めるものであ
ると解したうえで︑Yらが価額弁償請求権を行使していない段階では︑Yらの価額弁償請求権は確定的に発生しておら
ず︑本件確認の訴えは︑将来の権利関係の確定を求めるものであり︑現在の権利関係の確定を求める訴えということは
できないなどとして︑確認の利益を欠き不適法であると判断している︒これに対して︑本件判決は︑﹁遺留分権利者が ︵一六五二︶
条件付き権利と確認の利益
一五同志社法学 六二巻六号 受遺者等に対して遺留分減殺請求権を行使したが︑いまだ価額弁償請求権を確定的に取得していない段階においては ︵
︑ 12︶
受遺者等は︑遺留分権利者に帰属した目的物の価額を弁償し︑又はその履行の提供をすることを解除条件として︑上記
の目的物の返還義務を負うものということができ︑このような解除条件付きの義務の内容は︑条件の内容を含めて現在
の法律関係というに妨げなく︑確認の対象としての適格に欠けるところはないというべきである﹂とし︑さらに︑本件
確認の訴えは︑Xが民法一〇四一条の規定に基づき目的物の返還義務を免れるために支払うべき額が二七七〇万円余で
あることの確認を求める趣旨をいうものであると解されるとして︑確認の訴えの対象適格を欠くものではない︑として
いる︒遺留分権利者の遺留分減殺請求により︑贈与または遺贈は︑遺留分を侵害する限度において失効し︑受贈者また
は受遺者が取得した権利はその限度で当然に減殺請求をした遺留分権利者に帰属するとする判例・通説︵形成権=物権
的効果説︶の立場からすれば ︵
︑遺留分権利者は目的物返還請求権を有し︑その反面︑受遺者は目的物の返還義務を負う 13︶
ことになるから︑それに解除条件がついていたとしても︑受遺者の目的物返還義務が現在の法律関係であることには疑
問の余地はない︒
問題となるのは︑本判決が解除条件付きの義務の内容は︑条件の内容を含めて現在の法律関係というに妨げないとし
ていることがどのように理解されるべきかである︒この場合の解除条件は︑遺留分権利者に帰属した目的物の価額を弁
償し︑またはその履行の提供をすることであるが︑その条件の内容としての未だ履行されていない価額弁償またはその
履行の提供や︑その前提としての弁償すべき額の確定を含めて︑現在の法律関係とみて差し支えないと解されているの
であろうか︒目的物返還義務に目的物の価額弁償またはその履行の提供という解除条件が付いていることは︑現在の法
律関係であるが︑その解除条件の内容である価額弁償またはその履行の提供そのものは︑将来の不確定の事実なのでは
ないであろうか︒また︑弁償すべき額の確定も︑現在弁償すべき額を確定するというのではなく︑将来弁償すべき額を
︵一六五三︶
条件付き権利と確認の利益
一六同志社法学 六二巻六号
現時点で確定するという意味であろうと思われる︒要するに︑本判決が︑条件付きの権利・義務も現在の法律関係であ
り︑確認の訴えの対象とすることができると解している点は︑妥当であろうと思われるが︑未だ成就していない条件な
いしその内容を現在の法律関係と解することには無理があるのではないかと思われる︒かりに︑将来の法律関係の確認
を求める訴えであっても︑一律に対象適格を欠くわけではなく︑即時確定の利益があれば確認の利益が認められるとす
る余地もあると考えられるのであり ︵
︑無理して現在の法律関係と解する必要はないのではないかと思われるのである︒ 14︶
ともあれ︑確認の訴えにつき対象適格が否定されないとしても︑即時確定の利益がなければ︑確認の利益は認められ
ない︒この点に関しては︑本件判決は︑詳細な検討をし︑弁償すべき額が裁判所の判断により確定されることは︑受遺
者等の法律上の地位に現に生じている不安定な状況を除去するために有効︑適切であり︑民法一〇四一条の規定の趣旨
にも沿うし︑また︑弁償すべき額につき当事者間に争いがあり︑受遺者等が判決によってこれが確定されたときは速や
かに支払う意思がある旨を表明して︑弁償すべき額の確定を求める訴えを提起したときは︑受遺者等においておよそ価
額を弁償する能力を有しないなどの特段の事情がない限り︑上記訴えには確認の利益︵即時確定の利益︶があるという
べきである︑とする︒弁償すべき額を確定する確認判決がされても︑原審の指摘するように︑受遺者の支払いの意思が
実現されることは担保されているわけではないが︑弁償すべき額が決まらないことに起因する受遺者の法的地位の不安
は解消されることになることからすれば︑即時確定の利益が認められるとする本件判決の判断は支持されるべきであろ
うと思われる︒ただ︑受遺者が価額弁償またはその履行の提供をしない場合には︑現物返還を免れないことになること
からすると︑受遺者側の弁済能力の有無はさほど考慮する必要はないのではないかと思われる ︵
︒ 15︶
なお︑本件のような額の確定を求める訴えの請求の趣旨としては︑﹁遺留分減殺請求に係る目的物につき︑原告が民
法一〇四一条の規定によりその返還義務を免れるために支払うべき額が***円︵原告主張の額︶であることの確認﹂ ︵一六五四︶
条件付き権利と確認の利益
一七同志社法学 六二巻六号 を求めることが考えられるとの指摘がされている ︵
︒本件判決は︑Y 16︶
2
に対する確認の訴えはそのような趣旨のものであると解していると思われるが︑この点に関しては︑本件判決は︑﹁価額弁償の額の確定の訴え﹂という新しい確認の訴
えの類型を創出しており︑しかも︑この訴えは︑法定地上権の地代確定訴訟︵民法三八八条後段︶に類似する形式的形
成訴訟であると考えられる︑との見方も示されている ︵
︒その見方の当否はともかく︑本件第一審において原告が鑑定結 17︶
果に基づいてその主張額を変更していることなどからすると︑原告に主張額を特定させることの意味︑とくに裁判所は
原告主張額に拘束されるか︵弁償額を査定することを求める訴えと解することはできないか︶についても︑検討の余地
が残されているようである︒
四 むすびにかえて
以上︑従来の裁判例を中心に︑条件付き権利が確認の訴えの対象とされた場合にどのような取扱いがされているのか
を概観してみた︒若干の裁判例をみて一定の傾向を探るというようなことはできないが︑停止条件付き権利については︑
将来の権利・法律関係との区別が困難な場合があるにしても︑現在の権利関係と構成することができる限り︑確認の訴
えの対象適格は認められ︑また︑解除条件付き権利についても︑その権利自体は現在の権利関係として確認の訴えの対
象適格は認められる︑といえるであろう︒ただ︑解除条件付き権利について︑条件の内容も含めて現在の法律関係と解
することには︑若干の疑問があり︑条件の内容は将来成就されるべきものであって︑そのような将来の法律関係として
確認の訴えの対象適格を有すると解すべきではないかと思われる ︵
︒もっとも︑確認の訴えの対象適格が否定されないと 18︶
しても︑即時確定の利益がなければ確認の利益は認められないから︑条件付き権利の確認の利益の判断の重心は︑対象
︵一六五五︶
条件付き権利と確認の利益
一八同志社法学 六二巻六号
適格の問題よりも︑即時確定の利益におかれるべきである︑ということになろう︒
*
覚書の程度のものであり心残りではあるが︑本稿をもって上北武男先生の古稀をお祝い申し上げることとしたい︒︵
1
︶ 兼子一﹃条解民事訴訟法︵上︶﹄︵一九五五︶六〇八頁︑新堂幸司=福永有利編﹃注釈民事訴訟法︵5
︶﹄︵一九九八︶九頁︹中野貞一郎︺︑中野貞一郎=松浦馨=鈴木正裕編﹃新民事訴訟法講義︹第二版補訂二版︺﹄︵二〇〇八︶一四二頁︹福永有利︺など︒
︵
2
︶ 四宮和夫=能見善久﹃民法総則︹第七版︺﹄︵二〇〇五︶三一七頁︑山本敬三﹃民法講義Ⅰ総則︹第二版︺﹄︵二〇〇五︶二九三頁︑佐久間毅﹃民法の基礎
1
総則︹第三版︺﹄︵二〇〇八︶三一〇頁︑河上正二﹃民法総則講義﹄︵二〇〇七︶五〇六頁など参照︒︵
3
︶ なお︑内山真理子﹁確認訴訟︱その現状と課題︱﹂判例タイムズ一二〇五号︵二〇〇六︶六三頁は︑本件では条件付き債権が問題とされているとされる︒他方︑野村秀敏﹁判例研究﹂成城法学六〇号︵一九九九︶一五二頁注︵
13
︶︵﹃民事訴訟法判例研究﹄︵二〇〇二︶二七五頁︶では︑これを条件付き権利と構成しうるとの趣旨は︑旧就業規則が有効であることを前提として︑将来一定の要件が満たされれば取得する
ことになるはずの退職金請求権の確認を求めるものと理解することも可能であるとの意味であろうが︑この請求権に関しても︑現在欠けて
いるのはその発生要件の一部であるから︑将来の権利と見うることはあっても︑厳密な意味での条件付き権利と見ることはできないのでは
なかろうか︑とされる︒
︵
4
︶ この判決に対してはXが控訴を提起したが︑控訴審︵大阪高判平成七年二月一四日判例タイムズ八八九号二八一頁︶においては︑Xが退職金請求権の確認請求を退職金請求へ交換的に変更したことから︑退職金請求権の確認請求については訴えの取下げにより当然失効したと
されている︒また︑その上告審︵最判平成九年三月二七日判例タイムズ九四四号一〇〇頁︶では︑一部の組合員の定年および退職金支給基
準を不利益に変更する労働協約の規範的効力が認められるかが問題とされている︒
︵
5
︶ 内山真理子﹁前掲論文﹂六四頁︒︵
6
︶ 本判決の評釈等として︑畑瑞穂・法学教室二二九号一一八頁︑川嶋四郎・判例タイムズ一〇〇九号三九頁︑内藤裕之・民事研修五一四号二四頁︑坂田宏・私法判例リマークス二〇号一二八頁︑北村賢哲・法学協会雑誌一一八巻七号一一六四頁︑山本和彦・民事訴訟法判例百選︹第
三版︺七〇頁︑大坪丘・最高裁判所判例解説民事篇平成一一年度一頁︑滝澤孝臣・平成一一年度主要民事判例解説︵判例タイムズ一〇三六号︶
二五〇頁︑野村秀敏・成城法学六〇号一三九頁︵﹃民事訴訟法判例研究﹄二六一頁所収︶︑佐藤鉄男・民事訴訟法判例百選︹第四版︺六〇頁 ︵一六五六︶
条件付き権利と確認の利益
一九同志社法学 六二巻六号 など︒
︵
7
︶ 中野貞一郎﹁将来の権利関係の確認﹂﹃民事訴訟法の論点Ⅱ﹄︵二〇〇一︶七六頁︒︵
8
︶ 野村秀敏﹁本件研究﹂成城法学六〇号一五〇頁︵同﹃前掲書﹄二七二頁︶︒︵
9
︶ 本件の前件訴訟は︑一審︵東京地判平成一三・三・六判例タイムズ一〇七七号二一八頁︶が︑鑑定を経て具体的な賃料額を確認する判決をしたのに対し︑原審︵東京高判平成一三・一〇・二九判例時報一七六五号四九頁︶は︑賃貸借契約における賃料額の確認を求める訴えが︑
賃貸借を行うことの基本的合意は成立しているものの︑具体的な賃料額について合意に達せず︑﹁公正な額で決定する﹂といった抽象的な合
意がされるにとどまったなど原告主張の事実関係の下においては︑﹁法律上の争訟﹂に当たらないとして︑原告の賃料額確認請求に係る訴え
を却下した︒原審判決の評釈等として︑猪股孝史・判例時報一七八五号一九七頁︑宮川聡・私法判例リマークス二六号一一八頁︑川嶋四郎・
法学セミナー五八二号一一八頁など︒
︵
10
︶ 本判決のこの点に関する解説として︑上田竹志・法学セミナー六四九号一二六頁︒︵
11
︶ 本判決の評釈等として︑常岡史子・速報判例解説・民法︵家族法︶No.
36
・一頁︑安達栄司・法の支配一五八号七七頁︑拙稿・民商法雑誌一四二巻二号二〇三頁︒
︵
12
︶ なお︑最判平成二〇年一月二四日民集六二巻一号六三頁は︑遺留分減殺請求を受けた受遺者が価額弁償の意思表示をし︑これを受けた遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をした場合には︑その時点において︑当該遺留分権利者は︑遺
留分減殺によって取得した目的物の所有権および所有権に基づく現物返還請求権をさかのぼって失い︑これに代わる価額弁償請求権を確定
的に取得する︑とする︒本判決の評釈等として︑副田隆重・平成二〇年度重要判例解説︵ジュリスト一三七六号︶九七頁︑潮見佳男・私法
判例リマークス三八号七四頁︑川淳一・民商法雑誌一四〇号六号六八八頁など︒
︵
13
︶ 最判昭和五一年八月三〇日民集三〇巻七号七六八頁など︒︵
14
︶ 中野貞一郎・前掲論文五二頁以下︑中野=松浦=鈴木編・前掲書一四二頁︹福永有利︺など参照︒なお︑野村秀敏﹃予防的権利保護の研究﹄︵一九九五︶三六四頁以下も参照︒
︵
15
︶ 安達﹁本件研究﹂法の支配一五八号八四頁も結論同旨︒ただし︑常岡﹁本件解説﹂速報判例解説・民法︵家族法︶No.
36
・三頁は︑本件判決の意義は︑確認訴訟を是認することで受遺者等による価額弁償のための敷居を下げつつ︑特段の事情として受遺者側の具体的な支払能力
の有無を挙げた点にあるといえよう︑とされている︒
︵一六五七︶
条件付き権利と確認の利益
二〇同志社法学 六二巻六号
︵
16
︶ 判例時報二〇六九号二九頁︑判例タイムズ一三一七号一二五頁の本件コメント参照︒︵
17
︶ 安達﹁本件研究﹂法の支配一五八号八一頁以下︒なお︑法定地上権の地代確定訴訟の形式的形成訴訟としての特色については︑奈良次郎﹁﹃形式的形成訴訟﹄の特色についての考察﹂判例タイムズ九〇八号︵一九九六︶一六頁以下参照︒
︵
18
︶ なお︑東京地判平成一九年三月二六日判例タイムズ一二三八号一三〇頁は︑損害保険会社であるYが︑損害保険の契約募集等に従事する外勤の正規従業員である﹁契約係社員﹂︵﹁RA﹂・﹁リスクアドバイザー﹂︶の地位にあるXらに対し︑RA制度を廃止し︑現職者について退
職募集または職種変更の上で継続雇用するという方針を提案・通知したことから︑XらがYに対し︑RA制度の廃止は労働契約違反である
として︑RA制度廃止予定時期以降もRAの地位にあることの確認を求める訴えを提起した事案につき︑﹁権利又は法律的地位の侵害が発生
する前であっても︑侵害の発生する危険が確実視できる程度に現実化しており︑かつ︑侵害の具体的発生を待っていたのでは回復困難な不
利益をもたらすような場合には︑将来の権利又は法律関係も︑現在の権利又は法律関係の延長線上にあるものということができ︑かつ︑当
該権利又は法律的地位の確認を求めることが︑原告の権利又は法律的地位に対する現実の不安・危険を除去し︑現に存する紛争を直接かつ
抜本的に解決するため必要かつ最も適切であると考えることができる︒そのような場合には︑確認訴訟が有する紛争の予防的救済機能を有
効かつ適切に果たすことができるといえるので︑将来の権利又は法律関係であっても︑確認の対象として許容する余地があるというべきで
ある︒﹂等として︑本件訴えは︑確認対象の選択の点で不適切であるといえず︑即時確定の利益についても欠けるところはない︑としている︒
本件解説として︑野村秀敏・民事訴訟法判例百選︹第四版︺六二頁など︒ ︵一六五八︶