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巻頭感 文化としての参考書目・情報システムとし てのリファレンス

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巻頭感 文化としての参考書目・情報システムとし てのリファレンス

著者 北川 勝彦

雑誌名 関西大学図書館フォーラム = Kansai University Library forum

巻 16

発行年 2011‑06‑30

URL http://hdl.handle.net/10112/00021953

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巻頭感  文化としての参考書目・情報システムとしてのリファレンス

図書館長 北 川 勝 彦 

 近代以降、洪水のように知識の集大成が出版されてきた。その中には、百科事典、辞書、年鑑 および人名録など、多種多様な参考書目があった。百科事典や辞書は、「文化の役馬」(workhorses of culture)と言われるが、多くの人は時に応じて事典や辞書を参照するのに、それを大真面目 に研究することは少ない。この知識の集大成は、わずか 2 ~ 3 年その役目を果たすと、後は本棚 に忘れられたままになる。

 もちろん例外はある。ディドロ(Denis Diderot, 1713-1784)とダランベール(Jean le Rond

d’Ambert, 1717-1783)が、すべての知識の普遍的な集大成となるように計画し、人々の啓発を

めざして編集した『百科全書』はその一つである。この百科事典は、驚くほど高価であったにも かかわらず、多数の人々に迎えられる成功を収め、18世紀のベストセラーになった。ところが、

この続編は決して成功を収めたとは言いがたい。これに対してブリタニカとブロックハウスの二 つの百科事典は、地味な参考書目であったにもかかわらず、二世紀を経た現在でも発行され、多 くの版が重ねられている。

 なぜこのような違いが生じるのであろうか。教養のある人々は、一方では深い学識や高度な知 識の集成を賞賛しながら、他方では効率的な検索ができるように編集された最新の情報へのアク セスを求める。『百科全書』は、啓蒙思想を象徴し、一つの文化的記念碑として何世紀にもわた って賞賛されてきたが、参考書目としての百科事典はすぐに時代遅れになってしまう。このよう に文化は時代をこえて持続するが、多くの情報は短命に終わる。

 百科事典や辞書などを情報システムとして判定するには、情報の貯蔵(storage)、検索

(retrieve)、拡散(dissemination)という 3 つの基準がある。 ⑴ 情報貯蔵システムとしては、適

切な記述と、トピックの選択や網羅性が問われる。 ⑵ 情報検索手段としては、整備された収録 項目、索引およびクロス・リファレンスがその価値を決める。 ⑶ 情報の拡散は、予約申し込み数、

販売セット数、重版回数などで判断される。

 コンピュータの発達で情報へのアクセスと検索が容易になった現在では、デジタル化された参 考書目が急増している。百科事典はオンラインで販売され、電子化された索引は参照項目を瞬時 に見つけ出してくれる。辞書も、スペルチェックやシソーラスとしてソフトウエアの中に収めら れている。データベースや大学をはじめとする研究機関の学術情報リポジトリにも、オープン・

アクセスが可能になった。参考書目はデジタル化されると、グローバルに無差別に提示され、簡 単にアクセスできる。サーチエンジンやキーワードやハイパーリンクを利用すれば、世界中にあ ふれる情報があらゆる利用者の手で編集されるようになり、利用者自らが「百科全書家」になる 時代が来たのである。

(きたがわ かつひこ 経済学部教授)

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