• 検索結果がありません。

特集 社会運動としてのコモンズ : 特集にあたって

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "特集 社会運動としてのコモンズ : 特集にあたって"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

特集 社会運動としてのコモンズ : 特集にあたって

著者 竹田 茂夫

出版者 法政大学大原社会問題研究所

雑誌名 大原社会問題研究所雑誌

巻 655

ページ 1‑2

発行年 2013‑05‑25

URL http://doi.org/10.15002/00009281

(2)

1 雑誌『サイエンス』に載ったハーディンの論文「共有地の悲劇」(1968年)は,一時期,コモン ズの非効率性に関する根拠のない憶説を広めた。村人のだれもが利用できる共有牧草地は,管理や 保全がされずにやがて枯れ果てるはずだというハーディンのこの推論は,その後,世界中のコモン ズの実態調査や理論的反論によって完全に払拭された。コモンズは非効率的な資源配分を招くどこ ろか,比較的小規模の生産共同体から,温暖化ガス対策,生物多様性の維持,汚染物質の制御など の国際公共財のガバナンスにまで,その適用可能な領域を広げている(1)

コモンズは今や,政府(公的領域)や市場(私的領域)には還元できない「共」,つまり協同の 原理を体現するものとして広く理解されるようになった。中央の立法・行政組織は,政党政治や中 央集権や官僚制の負の側面に支配されて,ローカルな具体的状況に適切に介入できない。他方,グ ローバル化で大企業がますます力を振るう市場では,自然や人々の生活が貨幣価値に還元されてし まい,生態系維持や社会の持続可能性は顧みられない。それに対して,コモンズは地域の人々の参 加と協同によって,具体的状況に即した資源配分と資源保全の課題をクリアできるというわけだ。

上からの制度設計と貨幣という匿名の権力に対する,顔の見える者どうしが横に連携する新しい社 会運動としてのコモンズ。

しかし,このようなコモンズの理解はもう一度,転回を迫られているように見える。問題は二つ に大別できる。ひとつは,閉鎖的な伝統的コモンズをどのように開くことができるかという問題で ある。比較的に小さな自足する生産・生活共同体として,部外者を排除できた時代は過ぎた。現代 のコモンズは共同体のメンバーだけでは維持できない。どのように,多様なステークホルダーの利 害関心を集約するかが問われている(2)

もうひとつの問題は,政府と市場に対するコモンズの位置と意味である。「共」の原理を社会運 動で実現しようとする際に,「公」や「私」の原理に侵食される可能性はないのだろうか。どのよ うに共感と連携を社会の周縁にある人々にまで広げることができるか。さらに,民営化や規制緩和 で公的領域がますます利潤原理に置き換えられていく時代背景のもとで,「共」の原理をどの分野 に見出すべきか。

この特集の三論文は,このようなコモンズの現代的課題にそれぞれ答えようとしたものである。

高橋佳孝「多様な主体が協働・連携する阿蘇草原再生の取り組み」は,長い歴史をもつ伝統的コモ ンズであった阿蘇の入会が,現在どのような課題に直面しているか,その課題をどのように(都市 住民と地域の人々の)横の連携と行政・学界・経済界などからなる多層のガバナンスで解決すべき

(1) Elinor Ostrom et al., Introduction: The Drama of the Commons, in E. Ostrom et al.(eds.),The Drama of the Commons, National Academy Press,2002.

(2) Fikret Berkes, Cross-Scale Institutional Linkages: Perspectives from the Bottom Up, op. cit.

【特集】社会運動としてのコモンズ

特集にあたって

(3)

かを,まさに具体的状況に即して論じている。特に強調されているのが,阿蘇の「反自然的草原」

のもつ生態学的価値と野焼き作業における都市住民のボランティアである。生物多様性,水源涵養,

美しい景観などの価値をもつ草原は今や危機に瀕しているという。そのためには野焼きボランティ ア,赤牛オーナー制度,エコツーリズムなどの民間の工夫だけでなく,環境維持のための「直接支 払制度」などの公的支援の必要性も訴えている。

菅豊「現代的コモンズに内在する排除性の問題」は,河川敷の利用をめぐる二つの事例からホー ムレス排除の問題を取り上げている。伝統的コモンズは既存のコミュニティにおける社会的紐帯に 依存するのに対して,現代的コモンズは「多様なアクターを水平的,分散的,協働的に巻き込むも の」であるという。しかし,この理念は河川敷の実際の事例ではホームレスの排除に結びついてし まう。ホームレスとは政府と市場が掬い上げることができなかった社会の周縁の人々であるが,コ モンズもまたかれらの包摂に失敗することになるのか。

竹田茂夫「危機のコモンズの可能性」は,政府の失敗と市場の失敗が重なり合う大規模産業災害

(水俣病,ボパール工場災害,原発事故等)を「負財」badsと見立て,それが被害者の集団に救 援・生活支援・生活再建などの目的をもつ社会運動を強いることに注目する。このような社会運動 は,被害者たちの共感と連帯をもとに生まれるものであり,「危機のコモンズ」として組織と運動 の論理を追求すべきだという議論を展開する。

(竹田 茂夫)

2 大原社会問題研究所雑誌 №655/2013.5

参照

関連したドキュメント

324 人 工 知 能  34 巻 3 号(2019 年 5

今月号の特集は「 DEA 徒然草」となっております が,これは刀根先生の巻頭論文の題名を借用させてい ただいたものです.この 4 月に EJOR 創刊以来 40 年

市場環境においては,ビジネスプロセスの垂直方向へ の統合,すなわち垂直方向のパートナリングは,事業

高松塚古墳の 28 星宿(星座) ここでは、網干[6]や有坂[3]による論考を中 心に、高松塚古墳に描かれた28星宿の起源や

本多氏による 「防衛庁における OR/SA 活動J はわ れわれの待望久しかった論文である.防衛問題はそもそ

最適化理論の現場への応用に関していえばその適用手

また辻氏は, LPG 配送問題において,単に配送業務 を効率化すると

sis)