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JABTS 乳房超音波診断フローチャートの有用性に関する多施設共同研究 (JABTS BC-01) 研究実施計画書 目次 0 研究の概要 本研究について

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JABTS BC-01

日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS) 用語診断基準委員会

JABTS 乳房超音波診断フローチャートの有用性に

関する多施設共同研究(JABTS BC-01)

研究実施計画書

研究代表者・研究事務局 : 渡辺 隆紀 (JABTS 用語診断基準委員会委員長) 独立行政法人国立病院機構仙台医療センター乳腺外科 983-8520 宮城県仙台市宮城野区宮城野2丁目8-8 PHONE:022-293-1111 FAX:022-291-8114 E-mail:tak@snh.go.jp データセンター : 山口 拓洋 東北大学未来医工学治療開発センター 検証・情報管理部門 980-8574 宮城県仙台市青葉区星陵町 1-1(東北大学病院内) PHONE:022-717-7137 FAX : 022-717-7580 E-mail:dc005@trc.med.tohoku.ac.jp Ver1.0 作成:2009.5.12 Ver1.1 作成:2009.5.13 Ver1.2 作成:2009.5.14 Ver1.3 作成:2009.5.15 Ver1.4 作成:2009.7.3 Ver1.5 作成:2009.7.28 Ver1.6 作成:2009.8.24

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JABTS 乳房超音波診断フローチャートの有用性に関する多施設共同研究

(JABTS BC-01)研究実施計画書

目次

0 研究の概要---

3

1 本研究について--- 5

2 研究組織について---

5

3 研究の経緯・背景とその意義---

6

4 研究の目的---

8

5 JABTS 乳房超音波診断フローチャートとその解説--- 8

6 評価指標(endpoint)とその意義--- 9

7 研究の対象---

10

8 目標症例数及び症例登録期間など---

10

9 参加施設と施設登録---

10

10 参加施設における研究の方法---

11

11 観察・報告項目とスケジュール---

13

12 画像中央判定--- 16

13 データ解析---

17

14 モニタリング---

18

15 プロトコルの内容変更--- 18

16 研究の終了--- 18

17 記録の保存--- 18

18 研究参加施設と研究責任者---

19

19 倫理的事項---

19

20 研究結果の帰属と発表---

20

附録

Appendix A: 「研究協力のお願い」用紙--- 21

Appendix B: 症例登録票--- 22

Appendix C: 画像中央判定委員会所見判定用紙--- 23

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0 研究の概要

0.1 本研究について 本研究の名称は、「JABTS 乳房超音波診断フローチャートの有用性に関する多施設共同研究 (JABTS BC-01)」であり、超音波検査および病理検査結果などの診療情報を収集し乳癌診断におけ る超音波診断基準の有用性を検討する観察研究である。 本研究は、日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)用語診断基準委員会が行う研究であり、多施 設共同研究で実施される。 0.2 研究計画 *:典型的嚢胞は除外(詳細は 7 対象参照) 0.3 目的 JABTS 乳房超音波診断フローチャート(腫瘤像形成性病変用)の乳癌診断における有用性につい て検討する 0.4 評価指標(endpoint)

1) 主要評価指標(primary endpoint):JABTS 乳房超音波診断フローチャートの各 BOX における病 変の分布と乳癌の割合

2) 副次的評価指標(secondary endpoint):各所見の重要度、悪性病変検出割合 ・ 病理の良悪性判定に影響を及ぼす要因(所見)

・ 超音波画像で良性と判定された病変、または細胞・病理検査で悪性と判定されなかった病 変の経過観察期間による悪性病変検出割合の算出

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0.5 JABTS 乳房超音波診断フローチャート(腫瘤像形成性病変用) 0.6 研究の対象 研究参加施設の外来で診断(精査)目的に乳房超音波検査を行った症例で腫瘤像形成性病変が認 められたもの。ただし、嚢胞などの病変は除外する(7 研究の対象参照)。 0.7 研究の方法 研究参加施設での超音波検査で発見された腫瘤形成性病変の超音波画像と病理結果を収集する。 収集した超音波画像は画像中央判定委員会で精密に所見判定を行った後、病理情報と照らし合わせ て解析する。 0.8 予定症例登録数と研究期間 予定症例登録数:800 例以上 登録期間:4 ヶ月間(2009.9-12) 研究期間:2年半程度 0.9 倫理的事項の概略 研究実施に際しては、事前の情報公開を行うとともに、登録拒否の連絡があった症例については 研究対象としないことによって対象者の拒否権を保証する。研究に利用する診療情報は、各施設で 匿名化した上でデータセンターに送付する。その際対応表は各施設の個人情報管理者が施設内で厳 重に管理する。

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1 本研究について

本研究の名称は、「JABTS 乳房超音波診断フローチャートの有用性に関する多施設共同研究 (JABTS BC-01)」であり、超音波検査および病理検査結果などの診療情報を収集し乳癌診断におけ る超音波診断基準の有用性を検討する観察研究である。 本研究は、日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)用語診断基準委員会が行う研究であり、多施 設共同研究で実施される。

2 研究組織について

2.1 研究代表者・研究事務局 独立行政法人国立病院機構仙台医療センター乳腺外科 渡辺隆紀(JABTS 用語診断基準委員会委員長) 住所 :983-8520 宮城県仙台市宮城野区宮城野2丁目8-8 PHONE :022-293-1111 FAX :022-291-8114 E-mail:tak@snh.go.jp 2.2 研究参加施設(18 研究参加施設と施設研究責任者、研究分担者参照) 本研究に参加する施設においては施設研究責任者(医師)と個人情報管理者(19.2.2 各施設の個 人情報管理者参照)をデータセンターに登録する。必要があれば、研究分担者(研究責任者以外の医 師または技師)もデータセンターに登録する。 2.3 画像中央判定委員会 日本乳腺甲状腺超音波診断会議用語診断基準委員が兼任する。 2.4 研究統計家 東北大学未来医工学治療開発センター 検証・情報管理部門 客員教授 山口 拓洋 住所 :〒980-8574 宮城県仙台市青葉区星陵町 1-1 TEL :022-717-7137 FAX :022-717-7580 E-mail:yamaguchi@trc.med.tohoku.ac.jp 2.5 データセンター 東北大学未来医工学治療開発センター 検証・情報管理部門 データマネジャー 佐藤 弘康 住所 :〒980-8574 宮城県仙台市青葉区星陵町 1-1 TEL :022-717-7137 FAX :022-717-7580 E-mail:dc005@trc.med.tohoku.ac.jp 2.6 倫理的事項に関するアドバイザー 東京大学大学院医学系研究科グローバルCOEプログラム「次世代型生命・医療倫理の教育研究拠 点創成」特任助教 田代志門

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3 研究の経緯・背景とその意義

3.1 乳癌について 近年本邦における乳癌患者の増加は著しく、罹患数で見ると 1985 年で2万人、2000 年で3.6 万人、さらに 2015 年には 4.8 万人に増加すると推計されている1)。2005 年に報告された女性のが んの部位別総患者数でも乳癌は 15.6 万人と二位の大腸癌の 9.8 万人を大きく引き離している2) また、乳癌患者の年齢は他の多くの癌と違い、そのピークが 40 代など比較的低年齢にあることや、 乳癌は比較的予後が良い癌であり早期の発見によって多くの患者が治癒することなどから、社会的 な関心も高く、ピンクリボン運動など乳癌検診を啓発する活動も行われるようになっている。 3.2 乳癌の診断 乳房にはさまざまな病変(正確には病変とはいえないものも含めてであるが)が存在する。嚢胞や 線維腺腫などは多くの女性に見られる代表的な良性病変であるし、臨床的に病変が認められない場 合でも生理前の乳房痛や腫脹などで乳癌を心配して乳腺外来に訪れる女性は少なくない。また、近 年のマンモグラフィ(MMG)検診の普及により、MMG 上の異常で乳腺外来を受診する女性も増加して いるが、その多くは乳癌ではない。従って乳腺外来など精査施設における乳癌の診断は、数多くの 正常もしくは良性病変の中に紛れている乳癌を効率的に拾い上げ、診断を確定するということであ る。 乳癌の診断に用いられる検査としてはマンモグラフィ(MMG)、超音波検査(US)等の画像検査およ び視触診が代表的である。さらに画像検査等で悪性を否定できない場合や悪性と考えられる病変に 対しては診断を確定するために細胞診や組織診が行われる。乳癌の発見契機としては乳房のしこり (腫瘤)が最も多く、次いで MMG での微細石灰化、さらに頻度は少ないが血性乳頭分泌などがある。 しかし、これらの症状を呈する良性の病変も存在するため、実際の乳癌診断は非常に複雑である。 乳癌にも様々なものがあり、大きさも違えば腫瘤像を形成するもの形成しないものなどいろいろ ある。さらに超音波画像上で良性病変様に見える乳癌もあれば、逆に悪性病変様に見える良性病変 もある。良性病変を乳癌と誤診して手術を行った場合は訴訟問題に発展する可能性も高いし、逆に 乳癌であるのに良性と誤診しても同様の可能性があるため細心の注意のもとに診断を行う必要が ある。 乳癌の診断では、基本的に病変が存在するかどうかの存在診断とその病変が悪性かどうかという 質的診断に分かれる。以下にそれぞれについて述べる。 3.3 病変の存在診断 上述したように、乳腺外来など精査施設を訪れる女性には様々な場合があるが、実際には臨床的 に病変が存在しない場合も多い。そこで、実際に乳房内に病変が存在するかどうかを調べるために 病変の存在診断を最初に行うことになる。乳癌検査の基本となるのは MMG であるが、決して万能の 検査ではない。MMG は特に石灰化像に関しては、年齢にあまり影響されずに検出できる優れた検査 である。しかし腫瘤に関しては患者の年齢や腫瘤の大きさなどによって検出力が異なる。女性の乳 房は年齢により変化する。乳腺が最も発達しているのは 20-30 代前半でありその後は加齢とともに 萎縮する。MMG は放射線を用いて乳房を透視する検査であるが、発達した乳腺では乳房内の病変が 見えにくく、加齢により乳腺が十分に萎縮すると乳房内がよく観察できるという特性がある。また 一般的に腫瘤が大きければ病変を検出しやすく、逆に小さければ検出しにくい。本邦の乳癌の年齢 のピークである 40 代では乳腺が十分萎縮していないため、MMG 上乳癌腫瘤は明らかな腫瘤として 描出されづらい。そこで左右の乳房の MMG を比較して不対称な部分を腫瘤疑いと判定することなど が行われているが、左右差のある部分が本当に腫瘤なのかどうかは MMG だけではなかなか判定が難 しい。なお、欧米の乳癌の年齢のピークは 70 歳前後であり、この年代で MMG は非常に有効である のでこの点はあまり問題視されていないようである。 US は腫瘤に関しては年齢もしくはその大きさによらず検出力が高い検査法である。従って MMG や触診などで腫瘤の存在が疑われる部位に対し US 検査を行うと腫瘤の有無を簡単に確定できる。 しかし、US は石灰化病変の検出は不得意である(ただし、最近の技術の進歩で以前より検出力は格

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段に向上している)ので、MMG と US は相補的な関係にあるといえる。この点を考慮しつつ病変の存 在診断が行われている。 3.4 病変の質的診断と問題点 乳房に腫瘤などの病変が存在しても良性病変であれば大部分は経過観察のみで十分であり、手術 は不要である。しかし、悪性であればすみやかに診断して手術や薬物療法などの治療を行わなけれ ばならない。以前は乳房に腫瘤があれば良悪性に関わらず摘出して病理診断を行っていた時代があ ったが、現在ではそれは許されず、患者に対して最小限の侵襲で正しい診断を行わなければならな い時代になった。 乳癌の術前診断としては画像検査だけでは不十分であり、細胞診や針生検などの病理検査が必須 である。しかし、存在診断で発見された病変全てにこれらの検査を行うことは現実的に不可能であ るので、画像検査で悪性の可能性を推定し、必要と考えられる病変に対して病理検査が行われてい る。悪性の可能性を表現する際には5段階のカテゴリー分類が用いられる。しかし、同じ乳癌でも 画像上さまざまな画像所見を呈するため、例えば糖尿病の診断における血糖値のような単純な判定 基準を設定することができないことが大きな問題である。 MMG においてはマンモグラフィガイドライン 3)が 1999 年に出版され、診断フローチャートが提 示されて現在広く普及している。US に関しては日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)が 2004 年 に乳房超音波診断ガイドライン 4)を出版し、診断フローチャート(正確には「超音波検診用要精査 基準」との名称があるが、本研究計画書では「JABTS 乳房超音波診断フローチャート」と呼ぶこと にする)が提示された。本フローチャートは、本来乳癌超音波検診用にデザインされたものである が、現在多くの精査施設で乳癌の診断に使用されるようになった。しかし、このフローチャートは 専門家の経験に基づいてデザインされたものであり、その有用性については十分な検討がなされて おらず、明確なエビデンスがないのが現状である。 3.5 研究の意義 現在、乳房超音波診断に関しては十分なエビデンスを有する診断基準が存在しないため、専門家 の経験に基づいた診断フローチャートが用いられている。本研究により、その有用性を検討するこ とは医学的に大きな意義があると思われる。さらに、本研究は必要に応じて診断フローチャートを より有用なものに改良するための基礎的な情報収集および解析を行うようにデザインされており、 今後の乳癌の超音波診断に大きく寄与すると考えられる。 1) 大野ゆう子ほか:日本のがん罹患の将来推計— ベイズ型ポワソン・コウホートモデルによる解 析に基づく 2020 までの予測— . がん・統計白書— 罹患/死亡・予後-2004, p219-234、篠原出版 者,2004. 2) 平成 19 年我が国の保健統計, 厚労省ホームページ (http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/130-1.html) 3) (社)日本医学放射線学会/(社)日本放射線技術学会/マンモグラフィガイドライン委員会/乳房 撮影委員会 編集:マンモグタフィガイドライン 第二版. 東京:医学書院: 2004 4) 日本乳腺甲状腺超音波会議 編. 乳房超音波診断ガイドライン 第 2 版. 東京:南光堂:2008

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4 研究の目的

JABTS 乳房超音波診断フローチャート(腫瘤像形成性病変用)の乳癌診断おける有用性について 検討する

5 JABTS 乳房超音波診断フローチャート(腫瘤像形成性病変用)とその解説

本フローチャートは腫瘤像形成性病変が存在した場合、まず嚢胞、嚢胞内腫瘍、充実性腫瘤のど れに当てはまるのか判定し、充実性の腫瘤であれば所見の有無でさらに先に進んでいくものである。 いずれにせよ、本フローチャートでは腫瘤が認められた場合、最終的に 12 の BOX のいずれかにた どり着く構造になっている。また各 BOX にはカテゴリーが示されている。カテゴリーは良悪性の可 能性を示すものであり、カテゴリー5 は悪性、4 は悪性疑い、3 は良性疑い、2 は良性である。 腫瘤像を呈する乳癌の大部分は充実性腫瘤であるので、充実性の腫瘤を例に解説する。典型的な 乳癌の所見を呈する病変であれば BOX3 に、典型的な良性(線維腺腫)の所見を呈すれば BOX4 または 5 に入ることになる。また BOX6 の所見も乳癌の可能性が高いと考えられる所見である。従って良 悪性病変のうち典型的なものは BOX6 までに拾い上げることができると考えられる。 さて、同じ乳癌でもさまざまであり、必ずしも典型的な所見を呈するとは限らないのが画像検査 全てに共通する問題である。従って良悪性の典型的所見を有しない病変に対して用意されたものが フローチャートの下部の表であり、ここでは腫瘤の大きさと縦横比(D/W)をもとに BOX7-12 のいず れかに入ることになる。一般に縦横比(D/W)が大きいものは悪性の可能性が高く、小さいものは良 性の可能性が高い。しかし、縦横比の良悪性判定力は腫瘤の大きさによって変化するため、大きさ ごとに分けてある。

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6 評価指標(endpoint)とその意義

6.1 主要評価指標(primary endpoint):フローチャートの各 BOX における病変の分布1)と乳癌の割 合2) 1)フローチャートにおける BOX 該当病変の分布の意義 乳房の病変には様々なものがあるが、いずれの病変もフローチャートのいずれかの BOX に該当す ると想定される。しかし、精査対象となる病変がフローチャートの各 BOX にどのように分布するの かは明らかになっていない。つまり、乳癌であればどの程度が典型的な所見(BOX3 や 6)を呈し、ど の程度が典型的な所見を呈さずにフローチャート下部の表に入るのか、さらに表のどの部分に集中 するのかそれとも比較的均等に分布するのか、などを明らかにすることは重要である。これは良性 病変でも同じである。ただし、BOX1 に入る典型的な嚢胞に関してはそもそも精査の対象にしない ので、研究の対象から除外する。 2)フローチャート各 BOX における乳癌の割合の意義 もしも本フローチャートが完璧であれば、全ての乳癌は BOX3 または 6 に入り、良性病変は BOX1 か 4 もしくは 5 に入るはずである。しかし、もちろん現実はそうはならならず、典型的な乳癌の所 見を呈する良性病変も存在するため、本来乳癌だけが入るべく設定した BOX3 や 6 にも良性病変が 入ることになる。逆に本来良性病変だけが入るはずの BOX4,5 にも乳癌が入ることもある。実際に どのくらいの頻度でこのようなことが起きるのかを明らかにすることは、本フローチャートの良悪 性判定力を示す大きな指標となる。 また、フローチャート下部の表の 6 つの BOX での良悪性の割合を明らかにすることは非常に興味 深いことである。なぜなら、現在の乳癌診断における最大の目標は小さな乳癌、特に 1cm 以下の乳 癌を発見することだからである。一般的に大きな乳癌であれば典型的な乳癌の所見を呈しやすく、 小さなものでは典型的な所見を呈しにくいと考えられるため、我々の最大のターゲットである 1cm 以下の乳癌の多くはこの表の部分に流れてくると予想される。乳房には 1cm 以下の良性病変も多く 存在するため、腫瘤の大きさと縦横比をもとに作られたこの表がどのくらい良悪性判定力を持つの か是非明らかにしたいと考える。 6.2 副次的評価指標(secondary endpoint):各所見の重要度、悪性病変検出割合 1)病理の良悪性判定に影響を及ぼす要因(所見) フローチャートで使用している病変画像所見は、数多く存在する画像所見の一部にすぎない。し かし判定者は実際にはさまざまな画像所見を総合的に解釈して病変の判定を行っていると考えら れる。また通常、臨床医は超音波検査を行う前に MMG 検査や視触診を行うので、超音波検査の判定 には MMG や視触診検査のバイアスがかかる可能性がある。超音波画像中央判定を行うことにより、 純粋に超音波画像だけのさまざまな所見を得ることができるが、得られた様々な所見を独立変数、 各病変の病理判定結果を従属変数として多変量解析することにより、様々な所見の中での個々の所 見の良悪性判定上の重み付けを解析することが可能になる。この解析によって、今後より精度の高 い診断用フローチャートがデザインできる可能性がある。 2)超音波画像で良性と判定された病変、または細胞・病理検査で悪性と判定されなかった病変の経 過観察期間による悪性病変検出割合の算出 乳癌の診断において必ず問題となる事項として、画像判定上良性と判定された病変、または画像 判定上良悪性の判定が困難で細胞診や組織診がなされ悪性の診断がつかなかった病変が本当に悪 性でないのかという問題がある。実際初回の画像検査や細胞病理検査で悪性と判定されなかった病 変が、経過観察中に悪性と診断される場合がまれに存在する。そのため、論文等で発表する場合、 画像上や生検などで良性と判定された病変は慣例的に 2 年の経過観察期間をもって良性と診断確 定することになっている。しかし、このような縛りがあるため画像研究には非常に長い時間が必要 になり、研究を行う際の大きな障壁になっている。 経過観察期間が長いほどより正確な研究結果が見込まれるが、実際には 2 年後に乳癌と判明する

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症例は非常に少ないと考えられる。もしも、統計解析上影響を与えないほど少ない頻度であれば、 画像研究のデザインを 2 年間の観察ではなく 1 年間の観察としても問題ないと考えられる。 そこで本研究では 1 年間の観察、2 年間の観察でどの程度の病変が悪性と診断されるのか明らか にすることとした。どのような結果が出るかはわからないが、この検討は今後の US 画像検査の研 究のデザインを考えるうえで有益な情報となりうると考えられる。

7 研究の対象

研究参加施設の外来で診断(精査)目的に乳房超音波検査を行った症例で腫瘤像形成性病変が認 められたもの。ただし、以下の腫瘤像形成性病変は除外する。 ・ 典型的な嚢胞(明らかにカテゴリー2と判定されるもの) ・ 以前から経過観察されている病変 ・ 他院で Vacuum-assisted biopsy を施行された病変 ・ 5cm 以上の腫瘤像形成性病変

8 目標症例数及び症例登録期間など

8.1 目標症例数 目標症例数は 800 例以上とする。 本研究の主目的はフローチャートの各 BOX における病変の分布と乳癌の割合の推定であり、また、 本邦で初めて多施設にて大規模にデータを集めることから、標準治療の確立のための第Ⅲ相試験の ように明確な仮説を設定してパラメーターを見積もりサンプルサイズの設計を行うことは困難で あるため、実際に集めることが可能な最大限の参加者数にもとづき算出した。 参加施設により登録症例数は異なるが、一月あたりの平均的な乳癌登録数を 20 症例とし、参加 施設と登録期間から予想される症例数を考慮すると 800 例程度と考えられる。このうちの約半数が 乳癌と予想され、フローチャート有用性の評価が可能と考えられる。 8.2 症例登録期間 症例登録期間は 2009 年 9 月~2009 年 12 月とする。なお、症例登録の状況により登録期間は 1 月程度短縮または延長する場合がある。また、当該施設の倫理委員会の都合により承認が遅れた施 設については承認され次第データセンターへ施設登録を行い、症例登録を開始する。 8.3 観察期間 症例登録後 2 年間(2010 年 1 月〜2012 年 3 月まで)を観察期間とする

9 参加施設と施設登録

9.1 参加施設基準 研究に参加可能な施設は以下の基準を満たす施設とする。 1)原則として JABTS(日本乳腺甲状腺超音波診断会議)の幹事が所属する施設で、研究に参加を希望 する施設 2)フルデジタル装置で 10MHz 以上の体表用プローブを用いて乳房超音波検査が可能な施設 3)超音波画像をデジタルファイル形式で、CD-ROM にて提供することが可能な施設 4)本研究における研究方法は一般的な乳癌精査施設で行われている通常診療の範囲内でデザイン されているが、本研究の方法が参加希望施設での通常診療範囲内であること 9.2 施設の研究参加申請

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研究に参加を希望する施設は研究代表者(仙台医療センター 渡辺隆紀、メールアドレス: tak@snh.go.jp)にメールで参加の意向を伝える。なお、参加希望施設が多い場合は、データセンタ ーの対応能力を考慮し研究代表者が調整する場合もある。 9.3 倫理委員会の申請 参加を希望する施設は、速やかに当該施設の倫理委員会に研究の申請を行う。 9.4 施設登録 参加施設の研究責任者は、当該施設の倫理審査委員会での承認が得られた後、「施設登録依頼書」 に必要事項を記入の上、当該施設倫理審査委員会による「倫理審査委員会承認通知書」のコピーと 併せ、データセンターに FAX で送付する。 データセンターは施設登録を行い、「施設登録完了連絡書」を施設研究責任者に FAX で送付する とともに、症例登録票を送付する。

10 参加施設における研究の方法

10.1「研究協力のお願い」用紙の掲示・配布 研究参加施設においては、「研究協力のお願い」用紙(Appendix A 参照)を掲示または個々の症例 に配布し、登録を拒否する旨の連絡を受けた場合には症例登録は行わないこととする。なお、症例 登録票をデータセンターに送付した後に協力拒否の連絡があった場合には、その旨データセンター に連絡しデータを抹消する。 10.2 症例登録 超音波検査時に症例登録票(Appendix B 参照)に必要項目を記載し、後日データセンターに送付 する。登録期間中は一月分の症例登録票をまとめて翌月はじめにデータセンターへ送付する。 なお、データセンターは毎月の症例(病変)登録状況を施設研究責任者にメールで報告する。 10.2.1 症例登録時の注意点(特に同一症例で複数の病変が認められた場合) 個人情報の匿名化の方法としてはいろいろ考えられるが、本研究では Appendix B に示すように 予め同一匿名化登録番号が 2 カ所に記載された症例登録票を用いることとした。登録の際は各施設 での患者識別(ID)番号を用紙上部に記載し、その部分より下を切り取ってデータセンターに送付す ることになる。なお、登録は患者ごとではなく病変ごとに行うようにした。この方式の問題として は、データセンターで総病変数は把握できるが症例数の把握が困難なことである。これは複数の病 変が存在する症例では複数の登録用紙を用いることに起因する。そこでこの問題を解決するために 以下のような対策をとることにしたがやや複雑であるので注意して頂きたい。 1)複数の病変が存在する症例では複数の症例登録票を用いる。この際、症例登録票は必ず予め記載 された匿名化登録番号順複数病変分連番で使用する。 2)同一患者であることをデータセンターに示すため、匿名化登録番号の横のアルファベットを順番 にチェックする(例:01-001A、01-002B など。次重複患者は 01-006A、01-007B等、症例の最初の 病変では必ず A をチェックする)。 3)二枚目以降の症例登録票には年齢や検査日は記載不要である。 4)必要に応じて、登録期間終了後に各施設より重複患者一覧表を作成しデータセンターで再度確認 する場合もある。 10.3 超音波検査(病変の撮影方法など) 通常の超音波検査を行う。病変の撮影法としては、できるかぎり以下の基準に従う。なお、病変 に特徴的な画像や中央判定時に必要と考えられる画像を適宜含めることが望ましい。また、画像中 央判定を考慮し、病変がなるべく大きく撮影されるように視野深度 3-4cm 程度の画像条件で撮影す

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ることが望ましい。 ・計測が入らない 2 方向画像 ・最大径計測画像 ・縦横比計測画面 ・カラードプラ画像 症例登録票の記載項目として参考所見としてのバスキュラリティ(部位)の項目があるので、その 情報も記載すること。 10.4 病理検査(細胞診または組織診など) 通常の診療に従い、細胞診や組織診を必要に応じて施行する。 10.5 経過観察 画像上良性と判断され病理検査が不要と考えられる場合や、細胞診等で良性と判定された病変は、 施設における通常の診療(一般的に 6 ヶ月ごと 2 年間以上)に準じて経過観察する。経過観察中の病 変の超音波検査撮影法は、登録時検査の撮影法に準ずることとする。また、病変に変化が認められ た場合は通常通り細胞診や組織診を行う。 10.6 病変の診断確定 乳癌の病理判定に関しては基本的に手術標本の病理判定をもって最終的な診断確定とするが、術 前薬物療法施行例では生検標本の病理判定を用いても良い。 良性病変に関しても、原則として針生検等の組織生検の病理判定をもって最終的な診断確定とす る。例外的に、濃縮嚢胞など非典型的な嚢胞の場合は細胞診で液体貯留が確認されれば診断確定と する(組織検査は施行不可能なので)。なお、初回超音波検査から 2 年間(患者の都合等で早期に受 診することを想定して 22 ヶ月以上経過した場合は 2 年間として扱う)経過観察して変化が見られな い(または縮小した)病変も良性病変と診断確定される。 10.7 データセンターへの提出 データセンターに提出するものとしては症例報告書と超音波画像がある。 10.7.1 症例報告書 以下の 4 種類がある(詳細は 11 観察・報告項目とスケジュール参照)。 ・ 症例登録票 ・ 症例登録時病理検査報告書 ・ 登録 1 年後観察症例報告書 ・ 登録 2 年後観察症例報告書 10.7.2 超音波画像データ 超音波画像は個人情報を削除した上で、jpg ファイルなどのデジタルファイルの形で収集する。 データセンターに提出する超音波画像は以下とする。 1) 症例登録時超音波検査画像 2) 経過観察中に組織診で悪性もしくは良性と診断された病変の診断時の超音波画像 3) 2 年間経過観察され良性病変と確定された病変の 2 年後の画像 収集法はデータセンターから送られてくる CD-ROM メディアに記録してデータセンターに送付する こととする。 10.7.2.1 個人情報の削除 超音波画像における個人情報には超音波画像上の個人情報とファイル名に使用されている個人

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情報がある。 1)画像上の個人情報(名前と ID 番号):その部分を削除する。なお、できるかぎり検査日は削除し ないこととする。 2)ファイル名:病変ごとに決められた匿名化登録番号を用いる。 10.7.2.2 超音波画像の収集時期 1)登録時画像:登録後 6 ヶ月以内に収集する。この際、個人情報の削除作業があるため、登録用紙 と同時に送付する必要はない。 2)経過観察中に診断確定した病変画像(診断時):登録 1 年後および 2 年後観察時に収集する。

11 観察・報告項目とスケジュール

11.1 観察・報告項目 11.1.1 症例登録時 患者背景情報 : 生年月日、登録時年齢、性別 超音波所見 : 検査日、病変部位(L/R、12 時間時計表記部位、C/M/P、中心からの距離)、 フローチャート BOX 分布、バスキュラリティ(部位)、カテゴリー判定 方針 : 経過観察または病理検査 病理検査が実施された症例については、以下項目についても観察し、別途報告すること 診断確定状況 :診断非確定、診断確定 注)細胞診判定結果のみでは「診断非確定」とする(例外的に濃縮嚢胞は細胞診のみで診断確定となる)。また、病 理検査で診断がつかず経過観察とした場合や患者が来院しない場合なども「診断非確定」とする。 診断確定の場合には、以下項目についても報告すること 病理検査 :病理検査方法(穿刺吸引細胞診、針生検、吸引式組織生検、摘出生検)、 病理検査診断日、病理検査結果(良悪性、組織型、ER +/-、PgR +/-、HER2 陽性/陰性、リンパ節転移個数) 11.1.2 登録 1 年後観察 登録時に経過観察となった症例または登録時病理検査で「診断非確定」となった症例について、 以下の項目の登録 1 年後(登録後 18 ヶ月後まで許容する)経過情報を収集する。なお、経過観察 中に病理検査が行われた場合でも観察時に結果が判明していない場合は「診断非確定」とする(登 録 2 年後の観察で情報収集可能である)。 診断確定状況 :診断非確定、診断確定 注)細胞診判定結果のみでは「診断非確定」とする(例外的に濃縮嚢胞は細胞診のみで診断確定となる)。また、病 理検査で診断がつかず経過観察とした場合や患者が来院しない場合、さらに病理結果判定待ちの状態(この場合は 2 年後観察で記入)なども「診断非確定」とする。 診断確定の場合、以下についても報告すること 病理検査 :病理検査方法(穿刺吸引細胞診、針生検、吸引式組織生検、摘出生検)、 病理検査診断日、病理検査結果(良悪性、組織型、ER +/-、PgR +/-、HER2 陽性/陰性、リンパ節転移個数) 最終超音波検査日:病理検査直前の超音波検査日 11.1.3 登録 2 年後観察 本観察の主目的は、超音波検査上変化がなければ登録時より 2 年間の観察期間(登録から 27 ヶ

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月後までは許容する)をもって良性と確定するので、そのような条件を満たす症例(病変)を拾い上 げることにある。 また、登録時または 1 年後観察で「良性確定」となった症例の経過情報の収集を目的とする。これ は摘出生検を除く組織検査で良性と判定された病変でもその後悪性と診断される場合が稀にある ことを前提としている。なお、登録時または登録 1 年後観察で「良性確定」となった症例で、本観 察時までに悪性であることが判明した場合は「悪性確定」と変更するが、そのような情報がない場 合はその後の超音波検査がなされていない場合でも「良性確定」として扱うこととする。 11.1.3.1 登録 1 年後観察で「診断非確定」症例 診断確定状況 :診断非確定、病理検査による診断確定、22 カ月以上の観察による診断確 定 注)細胞診判定結果のみでは「診断非確定」とする(例外的に濃縮嚢胞は細胞診のみで診断確定となる)。 病理検査による診断確定の場合、以下についても観察し、報告すること 病理検査 :病理検査方法(穿刺吸引細胞診、針生検、吸引式組織生検、摘出生検)、 病理検査診断日、病理検査結果(良悪性、組織型、ER +/-、PgR +/-、HER2 陽性/陰性、リンパ節転移個数) 診断確定の場合、以下についても観察し、報告すること。 最終超音波検査日:病理検査直前の超音波検査日 11.1.3.2 登録時または登録 1 年後観察で「良性確定」となった症例(摘出生検での診断を除く) 診断確定状況 :良性確定後、悪性であることが判明したか 悪性が判明した場合、以下についても観察し、報告すること 病理検査 :病理検査方法(穿刺吸引細胞診、針生検、吸引式組織生検、摘出生検)、 病理検査診断日、病理検査結果(良悪性、組織型、ER +/-、PgR +/-、HER2 陽性/陰性、リンパ節転移個数) 最終超音波検査日:病理検査直前の超音波検査日

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11.2 観察スケジュール 観察対象 全例 ・登録時経過観察症例 ・登録時診断非確定症例 ・登録一年後診断非確定症例 ・良性確定症例 観察項目 (データの採用期間) 症例登録時 登録一年後観察 (登録後 1 年+6 ヶ月) 登録二年後観察 (登録後 2 年+3 ヶ月) 患者背景情報 ○ 超音波所見 ○* 方針 (経過観察または 病理検査) ○ 診断確定状況 (診断確定または 診断非確定) ○ (別途報告) ○* ○*、**** 病理検査 ○**、*** (別途報告) ○**、*** ○**、*** 最終超音波検査日 ○** ○** 登録時超音波所見:検査日、病変部位(L/R、12 時間時計表記部位、C/M/P、中心からの距離)、フ ローチャート BOX 分布、硬さ、血流、カテゴリー判定 病理検査 :病理検査方法(穿刺吸引細胞診、針生検、吸引式組織生検、摘出生検)、病理 検査診断日、病理検査結果(良悪性、組織型、ER +/-、PgR +/-、HER2 陽性/ 陰性、リンパ節転移個数) 最終超音波検査日:病理検査直前の超音波検査日 * :超音波画像提出(登録時、診断確定時) ** :病理検査、超音波履歴については、診断確定例のみ観察・記入すること。 *** :いずれかの時点の病理結果で悪性と確定された場合、観察終了とする。 ****:以前に良性が確定した症例については、その後悪性が判明したかを観察・報告する。 11.3 データ収集 11.3.1 症例報告書様式と提出期限 症例報告書は、4 種類よりなり、それぞれの提出期限は以下の通りである。 症例報告書タイトル 提出期限 症例登録票 症例登録後 1 ヶ月以内 症例登録時病理検査報告書* 症例登録後 6 ヶ月以内 登録 1 年後観察症例報告書* 症例登録後 1 年+6 ヶ月以内 登録 2 年後観察症例報告書* 症例登録後 2 年+3 ヶ月以内

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*:当該症例報告書は症例に応じてデータセンターより順次送付される。 11.3.2 記入方法 記入の際には以下の事項を遵守すること。 記入および訂正は施設研究責任者または研究分担者が行う。ただし、医学的判断を伴わない箇 所については、施設研究責任者の監督のもと、その他の者が記入・訂正してもよい。 ・ 訂正箇所は二重線で消す。 ・ 黒または青色のボールペンまたはペンで記入する。 記入方法に関して質問がある場合は、データセンターに問い合わせること。 11.3.3 送付方法 施設研究責任者または研究分担者は、記入が完了した症例報告書を提出期限内にデータセンター へ宅急便にて送付する。 症例報告書の送付先 東北大学未来医工学治療開発センター 検証・情報管理部門 〒980-8574 宮城県仙台市青葉区星陵町 1-1 東北大学病院内 TEL :022-717-7137 11.3.4 症例報告内容の確認と問い合わせ データマネジメント担当者は、データセンターに送付された記入済みの症例報告書を受領し、以 下の項目を確認する。 ・記入の不備 ・プロトコルとの整合性 ・症例報告書記入内容間の整合性 データマネジメント担当者は、照会すべき点をデータ照会票にまとめ、施設研究責任者または研 究分担者に送付する。 施設研究責任者または研究分担者は、データ照会票に回答を記入し、データセンターに送付する。 施設研究責任者は、送付したデータ照会票を研究代表者から研究終了の連絡があるまで保管する。

12 画像中央判定

12.1 目的 臨床医は超音波検査を行う前に MMG 検査や視触診を行うので、超音波検査の判定には MMG や視触 診検査のバイアスがかかる可能性がある。超音波画像中央判定を行うことにより、純粋に超音波画 像だけのさまざまな所見を得ることができる。 また、現在全国の乳腺外来は非常に込み合っており、症例登録の際に、画像の詳細な所見を記入 する時間は現実的にとれないことも画像中央判定を行う目的である。 12.2 画像中央判定委員会 JABTS 用語診断委員会の委員が兼任することとする。JABTS 用語診断委員会委員を以下に示す。 位藤 俊一(りんくう総合医療センター市立泉佐野病院) 植野 映(筑波メディカルセンター病院) 遠藤 登喜子(国立病院機構名古屋医療センター) 尾羽根 範員(住友病院) 加奥 節子(京都ブレストセンター沢井診療所) 貴田岡 正史(公立昭和病院) 桑島 章(PL 東京健康管理センター) 佐久間 浩(株式会社ソノグラファーズ)

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椎名 毅(京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻) 白井 秀明(札幌ことに乳腺クリニック) 関口 隆三(栃木がんセンター) 高田 悦雄(獨協医科大学) 田中 久美子(静岡がんセンター 乳腺外科) 角田 博子(聖路加国際病院放射線科) 鶴岡 雅彦(守谷記念病院) 東野 英利子(筑波大学) 中島 一毅(川崎医科大学 乳腺甲状腺外科) 中谷 守一(南大阪病院) 藤本 泰久(尼崎厚生会立花病院) 宮川 めぐみ(虎の門病院内分泌代謝科) 宮本 幸夫(東京慈恵会医科大学放射線医学講座 附属病院超音波診断センター) 森久保 寛(栃木県保健衛生事業団) 森島 勇(筑波メディカルセンター病院) 安田 秀光(国立国際医療センター) 渡辺 隆紀(仙台医療センター) 渡邉 良二(博愛会病院) 12.3 画像の判定(読影)の方法 データセンターに収集された超音波画像は画像中央判定委員会で診断名等の情報をマスクして 1 枚の画像に対して複数の委員が判定する。判定項目は Appendix C 参照。ただし、バスキュラリ ティに関しては、静止画像のみで判定することは困難であり、超音波検査者の判定を用いることに する。 基本的に委員 2 人で一つのチームを作って画像判定を行う予定であるが、精度の高い画像判定に は委員全員が共通の基準で判断することが求められる。そこで、正式な画像判定の前に画像中央判 定委員会を行い、画像判定基準の確認作業を行ってから正式な画像判定を行う予定である。 なお、判定が難しい画像は特別に委員会を開催してなるべく多くの委員が参加して判定を行うこ とにする。 画像中央判定委員会で判定された各超音波画像の所見をデータセンターに提供し、その後の解析 に使用する。 12.4 画像判定の時期 本研究において超音波画像が収集される時期は3回ある。このうち、数が最も多いのは症例登録 時の超音波画像であり、次いで多いと考えられるのは登録 2 年後の 2 年間の観察終了時の良性超音 波画像と考えられる。研究計画書作成時点では病変の登録数の予測は困難であるが、現時点では年 に 2-3 回画像中央判定委員会を行う予定である。なお、画像中央判定委員会は必要に応じて研究代 表者が招集することとする。

13 データ解析

データ解析はデータセンターにて研究統計家が行う。必要に応じて別途解析計画書を作成する。 13.1 主要評価指標(primary endpoint) フローチャートの BOX 該当病変の分布を示し、フローチャート各 BOX における乳癌の割合とその 95%信頼区間を算出する。 13.2 副次的評価指標(secondary endpoint) 様々な所見を独立変数、各病変の病理判定結果を従属変数とした回帰分析(リスク比回帰分析な ど)を行う。初回検査、1 年目検査、2 年目検査での悪性病変検出割合とその 95%信頼区間を算出

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する。

13.3 中間データ解析

現在予定している中間解析としては以下のものがある。なお、本中間解析は、研究の途中段階で その後の研究の継続や中止を考慮するための情報を得るために実施するものではない。

1) 症例登録票に記された病変のフローチャートの BOX ごとの分布

主要評価指標(primary endpoint)は「フローチャートの各 BOX における病変の分布と乳癌の割合」 であるが、前半の「フローチャートの各 BOX における病変の分布」に関しては症例登録終了後に解 析可能である。なお、この検討時点では病変の良悪性はわからないので、主要評価指標後半の「フ ローチャートの各 BOX における乳癌の割合」は解析できない。 2)初回超音波検査時に経過観察とされた症例で、1 年以内に乳癌であることが判明した症例数 本検討は登録 1 年後観察のデータ収集後に解析可能である。

14 モニタリング

本研究のモニタリングは中央モニタリングとする。 データセンターに収集される症例登録票、症例報告書などの記録に基づいてプロトコル遵守を確認 することとする。

15 プロトコルの内容変更

研究代表者は研究開始後にプロトコルの改訂が必要になった場合には、倫理的事項に関するアド バイザーおよびJABTS用語診断基準委員会の承認を得て、プロトコルの改訂を行う。改訂の内容が 重大と判断される場合は、改訂の前に研究参加施設の倫理委員会で審査・承認を受けなくてはなら ない。改訂後、研究代表者は改訂後のプロトコルまたは改訂内容を施設研究責任者および研究分担 者、データセンターに送付する。 重大なプロトコルの改定とは以下のいずれかの項目が変更されることである。 ・研究デザイン ・研究対象(適格基準) ・観察計画 ・エンドポイント

16 研究の終了

観察期間の終了および全ての患者報告書の確定をもって研究の終了とする。データセンターから 全患者報告書の確定の連絡を受けた研究代表者は、研究が終了したことを施設研究責任医師に報告 する。報告を受けた施設研究責任医師は、医療機関の長および関連部門にその旨を報告する。

17 記録の保存

研究代表者、施設研究責任者、分担研究者及びデータセンターは、当該臨床研究の実施に係る 記録(文書および電子記録)を研究終了後 10 年間保存する。保存すべき記録は、次の通りである。

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記録の種類 研究代表者 施設研究責任者/ 研究分担者 データセンター 研究実施計画書 ○ ○(写) ○(写) 倫理審査委員会承認通知書 施設登録依頼書 ○ ○(FAX 受領) 施設登録完了連絡書 ○(FAX 受領) ○ 原資料 ○ 各症例報告書 ○(写) ○ データ照会票 ○(写) ○ 画像中央判定委員会に関する記録 ○(写) ○ データベース固定の連絡書 ○ ○(写) 研究終了連絡書 ○(写) ○ ○ 最終報告書(論文) ○ ○(写) ○(写)

18 研究参加施設と施設研究責任者

(研究計画書 Ver.1 作成時点) 国立病院機構 仙台医療センター(渡辺隆紀) 川崎医科大学乳腺甲状腺外科(中島一毅) 医療法人慶友会 守谷慶友病院(今村明)、(研究分担者 鶴岡雅彦) ピンクリボン ブレストケアクリニック表参道(島田菜穂子) 尼崎厚生会立花病院(藤本泰久) 亀田メディカルセンター乳腺センター(戸崎光宏) 国立国際医療センター外科(安田秀光) 南大阪病院外科・乳腺外科(中谷守一) 筑波大学放射線科(東野英利子) 栃木県立がんセンター(関口隆三) 聖路加国際病院放射線科(角田博子) 静岡県立がんセンター乳腺外科(田中久美子) りんくう総合医療センター市立泉佐野病院外科(位藤俊一) 財団法人 東京都予防医学協会(坂 佳奈子) 筑波メディカルセンター病院乳腺科(森島勇、植野映) 兵庫県立がんセンター乳腺外科(廣利浩一) 星総合病院外科(野水整) 東邦大学医療センター大森病院乳腺内分泌外科(金澤真作) 八尾市立病院乳腺外科(野村孝) 自治医科大学附属さいたま医療センター総合医学第一講座(尾本きよか) 博愛会病院(渡邉良二) 獨協医大(高田悦雄) 西神戸医療センター外科(奥野敏隆)

19 倫理的事項

19.1 研究参加者の利益、不利益 本研究は、日常診療における画像検査および病理検査結果を集積し、分析するものであり、研究 参加に伴う治療上の利益・不利益は存在しない。 19.2 個人情報の保護 19.2.1 個人情報の取り扱い 本研究において利用する診療情報は、各施設において匿名化した上でデータセンターに送付する。

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対応表は、各施設の個人情報管理者が施設内で厳重に管理し、研究参加者に危険や不利益が及ばな いようにする。 19.2.2 各施設の個人情報管理者 各施設の個人情報管理者は原則として研究に参加しない者が担当する。ただし、それが不可能な 場合は各施設の研究責任者が個人情報管理を担当することとする。 19.2.3 個人情報に関する相談窓口 研究参加者の個人情報の開示等の請求、苦情および問い合わせ先は、参加施設の研究責任者の他 各医療機関の定めた相談窓口とする。 19.3 資料の保存および使用方法 収集されたデータはデータセンターで保存される。データセンターでは本研究で収集されたデー タを 10 年間は保存し、本研究の解析の後に必要があれば利用する場合がある。10 年後、保存デー タを継続して保存する必要がなければ消去または廃棄する。画像データの廃棄はデータ消去であり、 症例報告書に関してはシュレッダーで廃棄する。 19.4 研究参加者の同意 本研究は、日常診療で生じる情報のみを利用した観察研究であり、個人情報の移転も伴わないた め、研究参加に伴う特別なリスクや負担は存在しない。また、診断確定前の患者を対象としている ため、極めて多数の対象者が含まれており、各施設において個々の対象者から事前の同意を受ける ことは現実的ではない。 以上のことから、本研究においては、研究の目的や意義等について事前の情報公開を行い、登録 拒否の連絡があった症例については研究対象としないことによって、個々の対象者から同意を受け ることに代えることとする(「疫学研究に関する倫理指針」の第 3.1(2)②の規定に準拠)。 情報公開については、別紙(Appendix A)を各施設において掲示、または配布するなどして、研究 の目的・意義等を周知徹底させるとともに、研究についてのより詳細な情報を学会のホームページ に掲載する。なお、研究対象者から個別に説明を求められた場合には各施設の研究責任者が責任を 持って対応し、拒否権の有無を含め十分な説明を行うこととする。

20 研究結果の帰属と発表

本研究は日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)に帰属する。本研究は乳癌診療に置ける超音波 検査の診断基準に関するものであり、公共の利益または不利益があると考えられる研究結果が得ら れた場合はすみやかに学会または JABTS のホームページ等で情報を公開する。

(21)

付録

Appendix A:

「研究協力のお願い」用紙 H21 年 9 月 1 日

乳房超音波検査を受けられる方へ

診断基準の有用性に関する研究協力のお願い

〈研究の概要〉 近年、日本において乳がんは増加傾向にありますが、乳がんは早期に発見できれば治る可能性が 高い病気です。超音波検査は、乳がんを早期に発見するためには重要な検査の一つですが、検査結 果の評価の仕方については、専門家の間でも意見が分かれています。 そこで今回、私たちは全国 23 か所の病院で行われている超音波検査の結果を集計し、その他の 検査結果と突き合わせることによって、現在の超音波検査の評価の仕方が適切なものかどうかを検 討することにしました。 この研究によって、少しでも多くの乳がんの早期発見が可能になり、有効な治療につながること が、私たち共通の願いです。 〈研究の対象と内容〉 今回、研究の対象となるのは、当院において平成 21 年 9 月から 12 月のあいだに、乳房の超音波 検査を受けられた方で、その結果、何らかの腫瘤(しこり)が認められた方です。具体的には、超 音波検査の結果(画像)と病理検査の結果(病理検査を行った場合のみ)を提供して頂くことにな ります。 なお今回の研究は、当院で通常行われている検査の結果を集計するもので、研究に協力すること によって、皆様に特別な危険や負担がかかることはいっさいありません。また、検査結果は当院で 責任を持って個人が特定できないような形に加工したうえで、東北大学のデータセンターに送付し、 そこで厳重に管理されます(当院における個人情報管理者:●● ●●)。 〈研究協力への同意〉 今回の研究では、皆様からとくに連絡がない場合には、検査結果を研究のために利用させて頂き たいと考えています。もし検査結果を提供したくない方がいらっしゃいましたら、どうぞご遠慮な く担当医師までご連絡ください(連絡は、なるべく超音波検査後、1ヶ月以内にお願いいたします)。 なお、今回の研究に協力しないことによって、当院での診断・治療において不利益を被ることは いっさいありません。 研究責任者 ●● ●●(当院●●科) より詳しい情報が必要な方へ ●本研究の正式な名称は、「JABTS 乳房超音波診断フローチャートの有用性に関する多施設共同研究 (JABTS BC‐01)」(研究代表者:仙台医療センター 渡辺隆紀)であり、日本乳腺甲状腺超音波診断会議 (JABTS)の用語診断基準委員会が行うものです。 ●本研究は、国の倫理指針(文部科学省・厚生労働省「疫学研究に関する倫理指針」)に沿う形で計画されてお り、当院の倫理委員会で審査のうえ、科学的・倫理的に適切なものと認められています。 ●研究計画の詳細については、JABTS ホームページをご覧ください(http://www.jabts.net/)。また、当院の担 当医師にご相談いただければ、個別に対応いたします。

(22)

Appendix B: 症例登録票

JABTS BC-01 症例登録票(診療録用)

匿名化登録番号:施設番号 — 登録番号(連番で予め記載) 施設 ID 番号: データセンターに送付する際は下の切り取り線以下の部分のみ送付してください。

JABTS BC-01 症例登録票(データセンター用)

「同一症例で複数病変あり」の場合は複数の用紙に記載してください。その際データセンターでわかるように登録番号 の次のアルファベットを順にチェックしてください。なお、年齢、検査日の記載は最初の用紙のみで結構です。 匿名化登録番号:(施設番号) — (施設内通し番号) ― □A □B □C □D □E 生年月日 年 月 日 登録時年齢 歳 性別 女性 □男性 検査日 2009 年 月 日 <病変部位> □R □L : □C □M □P 経過観察上必要な場合 NTD cm 例 R11:30M(NTD3.5cm) <診断フローチャート BOX> halo と断裂:判定に迷う場合は(-)として下さい。 バスキュラリティ:□無 有(□+ □++ □+++)、 部位:□腫瘤内(分岐あり、分岐なし) □境界部に沿う □貫入する カテゴリー判定:□2 □3 □4 □5 方針:□経過観察 □穿刺吸引細胞診 □針生検 □吸引式組織生検 □摘出生検

(23)

Appendix C: 画像中央判定委員会所見判定用紙

JABTS BC-01 画像中央判定委員会 所見判定用紙

匿名化登録番号: 印刷(施設番号 — 登録番号— ) 年齢 印刷(症例登録票から)歳 性別 印刷(症例登録票から) 病変部位 印刷(症例登録票から) 画像枚数 印刷 所見

形状(Shape) □楕円形(Oval) □円形(Round)

□分葉形(Irregular) □多角形(Irregular) □不整形(Irregular)

D/W(Orientation) □小(Parallel) □大(Not parallel)

境界部(Margin) □明瞭平滑(Circumscribed)

□明瞭そぞう(□Irregular □Angular □Microlobulated □Spiculated) □不明瞭(Indistinct)

ハロー(Lesion Boundary) □なし(Abrupt interface) 迷う場合はなしと判定する □あり(Echogenic halo) □判定不能

内部エコーレベル(Echo pattern)

□無(Anechoic) □極低(Hypoechoic) □低(Hypoechoic) □等(Isoechoic) □高(Hyperechoic)

□混合性パターン(Complex)

後方エコー強度(Posterior Acoustic Features)

□欠損(Shadowing) □消失(Shadowing) □減弱(Shadowing) □不変(No posterior acoustic features) □増強(Enhancement) □減弱&増強(Combined pattern)

随伴所見(Surrounding Tissue)(あれば) □管状構造(Duct changes)

□クーパー靭帯の変化(Cooper’s ligament changes) □浮腫(Edema) □構築の乱れ(Architectual distortion) □皮膚肥厚(Skin thickening) □皮膚牽引(Skin retraction/irregularity) 内部エコー均質性(BIRADS 該当なし) □均質 □不均質 □判定不能 乳腺前方境界線断裂(BIRADS 該当なし) 迷う場合はなしと判定する □なし □あり □判定不能 石灰化を示唆する高エコー(あれば)□粗大(Macrocalcifications 0.5mm≦) □点状(Macrocalcifications 0.5mm≦)

□腫瘤内微細点状(Microcalcifications out of mass) □腫瘤外微細点状(Microcalcifications in mass) □判定不能

(24)

カテゴリー判定 □2 □3(□BIRADS-3 相当 □BIRADS-4 相当) □4 □5

推定病理組織 1. 2.

判定者 、 判定日 年 月 日

参照

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代表研究者 小川 莞生 共同研究者 岡本 将駒、深津 雪葉、村上

代表研究者 川原 優真 共同研究者 松宮

【 大学共 同研究 】 【個人特 別研究 】 【受託 研究】 【学 外共同 研究】 【寄 付研究 】.

共同研究者 関口 東冶