要旨 療養環境を改善するためのホスピタブルアートの活動につい て検討することを目的として,画像鑑賞と描画作業の体験によ る気分の変化を気分プロフィール検査(3URILOHRI0RRG6WDWHV 3206)短縮版によって評価し,刺激前後における気分の差を比 較する。本研究では,描画作業をハンズオンと定義する。「落 ち着く,安心な,リラックスした,おだやかな,快い,好きな」 「おもしろい,興味のある,個性的な,刺激のある」「にぎや かな,陽気な」の評価が大きい画像を鑑賞することで,3206 尺度の「緊張-不安」「抑うつ-落ち込み」「怒り-敵意」「活 気」「疲労」「混乱」が有意に低下した。画像鑑賞後に,好みの 画像を基に自由に描画するハンズオンを体験することで,「緊張 -不安」「抑うつ-落ち込み」「怒り-敵意」「疲労」「混乱」は低下した 状態を保ち,「活気」は有意に上昇した。療養環境改善のためのホスピ タブルアートとして,アート鑑賞やアートワークショップ活動の有効性 が示唆された。
Summary
This paper examines the evaluation of mood in the
experience of appreciation of photographic images and
drawing work (Hands-on), and investigates the ability of
hospitable art to improve the medical environment. I
analysed ratings of the subjects’ mood by using a
shortened version of POMS. The POMS measure of mood
after appreciation of photographic images stimulation
revealed reduction of "tension - anxiety", "depression -
dejection", "anger - hostility", "vigor", "fatigue", and
"confusion". On the other hand, Hands-on stimulation
increased "vigor". Subjects’ mood after Hands-on
stimulation, compared with that before appreciation of
photographic images stimulation, exhibited continued
reduction of "tension - anxiety", "depression - dejection",
"anger - hostility", "fatigue", and "confusion". The results
suggest that activities of art appreciation and art
workshops as hospitable art can improve the medical care
environment.
1.はじめに 病院におけるアート活動としては,アート作品の展示やアー トワークショップによる制作への参加の取り組みがみられる。 いずれも,患者や医療スタッフに関わる心理的効果によって療 養環境の改善を試みるものである。しかしながら,病院におけ るアート活動の効果については,患者や医療スタッフの心理的 効果に関する定量的な分析・評価に裏付けられた既往研究が少 ない。病院に展示する絵画については,絵画の視覚的造形要素 と印象評価の関係について研究し,患者のよい印象に関係する 絵画の造形要素の特性を導き出すことを試みている[注1-7]。 よい印象の絵画を鑑賞することは,患者にとって療養環境を改 善する心理的な効果に繋がると考えられる。このようなアート 作品の鑑賞による効果に加え,手作業を用いたアートワークシ ョップによる制作への参加が,心理的効果やリハビリを補助す る役割を担うためには,その有効性を証明するに足る定量的・ 定性的評価が必要である。手や指を使う作業は,リハビリに位 置づけられる機能改善の役割だけではなく身体全般にもよい効 果をもたらすと言われており,多方面から評価する必要がある。 筑波大学では,病院でのアート展やアートワークショップを実 施しており,手作業を用いたアートワークショップでの参加者 の特性について行動観察を行っている[注8]。本研究は,病 院の療養環境改善に繋がるアート展やアートワークショップ, すなわち,ホスピタブルアートの有効性を評価するための基礎 研究として位置づけられる。 本研究では,描画というアート制作への参加をハンズオンと 定義し、画像鑑賞という視覚的なアート参加やハンズオン体験 の特性が人の心に与える効果を調査する。気分プロフィール検 査(3URILOHRI0RRG6WDWHV3206)は,一時的な気分・感情 の状態が測定でき,信頼性の実証が十分に行われている心理的 評価の1手法である[注9,]。3206 は,園芸療法の効果, 表現技法における気分変容,ストレス調査の研究などにも広く 用いられる評価手法であり[注 -]本研究のような特定 の刺激に対する気分の変化を測定するのに適している。画像鑑賞と描画作業の体験における気分の評価
-療養環境改善のためのホスピタブルアートの検討Evaluation of Mood in Appreciation of Photographic Images and Drawing Work
- Examination of hospitable art for medical environment improvement ●吉岡聖美 ●蓮見 孝
筑波大学 札幌市立大学
Yoshioka Kiyomi Hasumi Takashi University of Tsukuba Sapporo City
University
● Key words: Hands-on, Mood, Hospitable art
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SPECIAL ISSUE OF JSSD Vol.12 No.5 2005 デザイン学研究特集号 注および参考文献 鈴鹿市産業振興部産業政策課伊勢形紙 ( 財 ) 伝 統 的 工 芸 品 産 業 振 興 協 会 日 本 の 伝 統 工 芸 士KWWSZZZNRXJHLVKLMS 川又勝子仙台型染めの研究常盤紺型、仙台浴衣、仙台手 拭い文部省科学研究費補助金若手研究%研究成果報 告書 佐藤雄介北岡武小紋文様シミュレーションと型紙の機械 彫 刻 着 想 を 中 心 に 愛 知 教 育 大 学 研 究 報 告 川又勝子佐々木栄一仙台地方の型染め:仙台浴衣と仙台 手拭いの保存と制作(論文編)東北生活文化大学東北生 活文化大学短期大学部紀要 名古屋造形芸術大学・名古屋造形芸術短期大学:造形芸術 研究センター所蔵・石井コレクション KWWSZZZQ]XDFMSaQ]UFLVKLLKWPO 立命館大学アートリサーチセンター:立命館大学グロー バル &2( 日本文化デジタル・ヒューマニティーズ拠点メタ バースプロジェクトKWWSZZZGKMDFQHWPHWDYHUVHN DWDJDPLKWPO 佐藤弘喜デザイン評価における視覚認知構想概念の導入 に関する研究筑波大学大学院学位論文 沖田実嘉子竹末俊昭染色型紙制作におけるレーザー加工 手 法 の 応 用 可 能 性 日 本 感 性 工 学 会 論 文 誌 0LNDNR2NLWD7RVKLDNL7DNHVXH,QWURGXFWLRQRIDQHZ PHWKRGIRUSURGXFLQJFXWSDSHUVWHQFLOVIRHG\H–$V DQDSSOLHGFDVHRIODVHUFXWWHU,$6'5WKHWK ZRUOGFRQIHUHQFHRQ'HVLJQ5HVHDUFK 0LNDNR 2NLWD 7RVKLDNL 7DNHVXH *XLGHOLQHV RIPDWHULDOV DQG SDWWHUQV IRU SURGXFLQJ WKH -DSDQHVH WUDGLWLRQDO G\HLQJ SDSHU VWHQFLOV ZLWK D ODVHU FXWWHU,QWHUQDWLRQDO&RQIHUHQFHRQ.DQVHL(QJLQHHULQJ DQG(PRWLRQ5HVHDUFK
0LNDNR2NLWD7RVKLDNL7DNHVXH$GDSWDELOLW\RIWKH PDWHULDOV RI WKH -DSDQHVH WUDGLWLRQDO G\HLQJ SDSHU VWHQFLOV IRU SURGXFLQJ ZLWK D ODVHU FXWWHU 'HVLJQ 5HVHDUFK6RFLHW\
-RKQ *LOORZ %U\DQ 6HQWHQFH 世 界 織 物 文 化 図 鑑 :RUOG 7H[WLOHV$9LVXDO*XLGHWR7UDGLWLRQDOWHFKQLTXHV株式会社 東洋書林 -RKQ*LOORZ%U\DQ6HQWHQFH世界織物文化図鑑:RUOG7H[WLOHV 9LVXDO *XLGH WR 7UDGLWLRQDO WHFKQLTXHV 株式会社東洋書 林 勝野玲子短大服飾教材としての「伊勢型紙」の研究小紋を中 心として一宮女子短期大学紀要 吉岡幸雄日本の色紀行伊勢型紙の歩み月刊染織α 水上嘉代子染色用型地紙の品質に関する研究江戸小紋、長板 中形について女子美術大学研究紀要 田中清香・土肥悦子図解染織技術事典理工学社 岡村吉右衛門ほか:新技術シリーズ 染めもの株式会社美術出 版 山崎青樹:新技術シリーズ 草木染め・型染めの基本株式会社美 術出版 福島清剛:日本の文様図案すぐ使える型染め文様美術出 版株式会社芸艸堂 田昌道:柿染めクラフトを楽しむ型染めと筒描き染め 木魂社 宮川泰夫:比較社会文化第 巻伊勢型紙工芸産地の変容 中間財工芸の変質と風土文化の革新 紀尾井アートギャラリー江戸の伊勢型紙美術館:伊勢型紙 極小の美の世界 年 月 日 川上繁樹:織と染めの歴史日本編昭和堂発行 伊勢型紙のふるさと三重県鈴鹿市白子、寺家(特集1型紙 千 の 彩 ) ( 型 紙 を 訪 ね て ) 月 刊 タ イ ム ス 大橋正芳:伊勢型紙の里≪白子・寺家の今≫美しい渋紙 と型染めのために季刊銀花() 日本工芸会近畿支部編:工芸の博物誌手わざを支える人 ともの株式会社淡交社 丸山伸彦産地別すぐわかる染め・織りの見分け方株式会 社東京美術 富士栄登美子吉田ハルエ小林佳子島袋麻美沖縄と本 土の型染に関する文化と美意識についての比較研究紅型 伊勢型会津型琉球大学教育学部紀要 土 田 真 紀 伊 勢 型 紙 に つ い て 三 重 県 立 美 術 館 +385/KWWSZZZEXQNDSUHIPLHOJMSDUWPXVHXPF DWDORJXHLVHNDWDJDPLWVXFKLGDKWP 年 月 日 澤井聖一木材デザイン究極ガイド株式会社エクスナレ ッジ 佐藤雄介北岡武小紋文様シミュレーションと型紙の機械 彫 刻 そ の – 総 罫 愛 知 教 育 大 学 研 究 報 告 岡本信司:伝統工芸産業からの産学連携による地域イノベ ーション創出に関する課題と提言京都地域及び石川地域 における事例研究研究技術計画 デザイン学研究 95 Summary 要旨
Received March 21, 2012; Accepted April 24, 2013
画像鑑賞と描画作業の体験における気分の評価
-療養環境改善のためのホスピタブルアートの検討Evaluation of Mood in Appreciation of Photographic Images and Drawing Work
-Examination of Hospitable Art for Medical Environment Improvement
● 吉岡聖美 ● 蓮見孝
筑波大学 札幌市立大学
Yoshioka Kiyomi Hasumi Takashi University of Tsukuba Sapporo City University ●Key words : Hands-on, Mood, Hospitable art
Copyright © 2012 日本デザイン学会 All Rights Reserved. Copyright © 2012 日本デザイン学会 All Rights Reserved.
図2因子得点散布図(因子1,因子2) 結果 形容詞対 項目について5段階評定で回答を求め,安心な・ 個性的な・刺激のある・陽気な・リラックスした・おだやかな・ にぎやかな・落ち着く・快い・好きな・おもしろい・興味のあ る,を5点に評価し,それらと対になる,不安な・平凡な・退 屈な・陰気な・緊張した・激しい・寂しい・イライラする・不 快な・嫌いな・つまらない・無関心な,を1点に評価した。そ れぞれ,「どちらでもない」を中心として,「やや」「かなり」 という5段階による評定である。 国内および海外の風景,植物,生物,食物などの写真の画像 を鑑賞した場合における印象評価の全体に関する因子を抽出す るために,因子分析(主因子解,バリマックス回転)を行った。 バリマックス法による回転後の因子負荷量および寄与率を求め た結果から,印象評価に関する因子は,因子1(落ち着く,安 心な,リラックスした,おだやかな,快い,好きな),因子2 (おもしろい,興味のある,個性的な,刺激のある),因子3 (にぎやかな,陽気な)の3因子構造であることを確認した(表 1)。 印象評価の全体を比較検証するために,各因子の因子得点に ついて散布図で比較検証を行った(図2-4)。因子1につい て因子得点が負方向に大きいほど,落ち着く・安心な・リラ ックスした・おだやかな・快い・好きなという印象評価となり, 因子得点が大きいほど,イライラする・不安な・緊張した・不 快な・嫌いなという印象評価となった。因子2について,因子 得点が大きいほど,おもしろい・興味のある・個性的な・刺激 のあるという印象評価となり,因子得点が負方向に大きいほど, つまらない・無関心な・平凡な・退屈なという印象評価となっ た。因子3について,因子得点が負方向に大きいほど,にぎや かな・陽気なという印象評価となり,因子得点が大きいほど, 寂しい・陰気なという印象評価となった。画像鑑賞に関する評 価因子について,因子1を快適性因子,因子2を好奇性因子, 因子3を高揚性因子とそれぞれ名付けることができた。 図3因子得点散布図(因子1,因子3) 図4因子得点散布図(因子2,因子3) 因子1について,落ち着く・安心な・リラックスした・おだ やかな・快い・好きなという印象評価が大きい画像は,海,空, 川,植物など自然の要素が画面の多くを占める風景であった。 因子2について,おもしろい・興味のある・個性的な・刺激の あるという印象評価が大きい画像は,海外の風景,生物であっ た。因子3について,にぎやかな・陽気なという印象評価が大 きい画像は,ボートが走行する川,街の雑踏,食物であった。 画像を鑑賞することによって鑑賞者の気分が改善することを 目的として,因子分析の結果に基づき,落ち着く,安心な,リ ラックスした,おだやかな,快い,好きな,おもしろい,興味 のある,個性的な,刺激のある,にぎやかな,陽気な,という 印象が大きい画像を抽出する。3因子のうち2因子以上の因子 得点が好感側に大きい画像2,3,5,9,,,,, , の画像 点を鑑賞画像刺激として選定した。 1 2 3 4 5 67 8 9 図1実験画像 2.研究の目的 本研究は,画像鑑賞と描画作業の体験による気分の変化を評 価することによって,療養環境を改善するための病院における アート活動について検討することを目的とする。よい印象の画 像を鑑賞することによる気分の変化や,描画作業による気分の 変化についての特性を調査する。気分の評価は 3206 短縮版を 使用し,刺激前後における気分の差を比較する。本研究では, 描画作業をハンズオンと定義する。 3.鑑賞画像の抽出 実施年月日 年9月 , 日の2日間。 実施場所 筑波大学芸術学系棟 % 研究室(約 ㎡)。部屋の壁面は 白色であり,実験用ノートパソコン,机,椅子のみが設置され た静穏な空間であった。 調査方法 質問紙調査による個別回答とし,写真 点の画像を呈示し た実験用ノートパソコンのモニター画面( 型)を鑑賞しなが ら,実験画像ごとに印象評価に関する回答を求めた。実験画像 は,順序効果を考慮したランダムな組み合わせによって設定し, 各呈示画像の間に視覚刺激をリセットする画像(グレー画面の センターを注視することによって刺激をリセットする)を 秒間設定した。実験協力者は,モニター画面に対して正面 FP に目が位置するように椅子に座して画像を鑑賞した。1人あた りの実験所要時間は,~ 分であった。 実験協力者 筑波大学の学生 名(男性6名,女性6名, 歳~ 歳)。 呈示刺激 国内の風景,海外の風景,植物,生物,食物などの写真 点(SL[HOLQFK)を実験画像として使用し,実験用ノート パソコンのモニター画面に呈示した(図1)。 質問紙の構成と内容 画像鑑賞における心理的な評価に関わる 対の形容詞を選 定し,形容詞対について尺度の左右をランダムとした5段階評 定による質問を記載し回答を求めた[注1-4,-]。画 像に関わる印象評価全般を限られた評価項目で探るために,潜 在性因子として「安心な-不安な」「個性的な-平凡な」「刺激 のある-退屈な」「陽気な-陰気な」,活動性因子として「リラ ックスした-緊張した」「おだやかな-激しい」「にぎやかな- 寂しい」,評価性因子として「落ち着く-イライラする」「快い -不快な」「好きな-嫌いな」「おもしろい-つまらない」「興 味のある-無関心な」の形容詞対を選定した。 表1因子分析結果 因子 因子 因子 共通性 落ち着く 安心な リラックスした おだやかな 快い 好きな おもしろい 興味のある 個性的な 刺激のある にぎやかな 陽気な 負荷量の二乗和 寄与率(%) 累積寄与率(%) デザイン学研究 96
図2因子得点散布図(因子1,因子2) 結果 形容詞対 項目について5段階評定で回答を求め,安心な・ 個性的な・刺激のある・陽気な・リラックスした・おだやかな・ にぎやかな・落ち着く・快い・好きな・おもしろい・興味のあ る,を5点に評価し,それらと対になる,不安な・平凡な・退 屈な・陰気な・緊張した・激しい・寂しい・イライラする・不 快な・嫌いな・つまらない・無関心な,を1点に評価した。そ れぞれ,「どちらでもない」を中心として,「やや」「かなり」 という5段階による評定である。 国内および海外の風景,植物,生物,食物などの写真の画像 を鑑賞した場合における印象評価の全体に関する因子を抽出す るために,因子分析(主因子解,バリマックス回転)を行った。 バリマックス法による回転後の因子負荷量および寄与率を求め た結果から,印象評価に関する因子は,因子1(落ち着く,安 心な,リラックスした,おだやかな,快い,好きな),因子2 (おもしろい,興味のある,個性的な,刺激のある),因子3 (にぎやかな,陽気な)の3因子構造であることを確認した(表 1)。 印象評価の全体を比較検証するために,各因子の因子得点に ついて散布図で比較検証を行った(図2-4)。因子1につい て因子得点が負方向に大きいほど,落ち着く・安心な・リラ ックスした・おだやかな・快い・好きなという印象評価となり, 因子得点が大きいほど,イライラする・不安な・緊張した・不 快な・嫌いなという印象評価となった。因子2について,因子 得点が大きいほど,おもしろい・興味のある・個性的な・刺激 のあるという印象評価となり,因子得点が負方向に大きいほど, つまらない・無関心な・平凡な・退屈なという印象評価となっ た。因子3について,因子得点が負方向に大きいほど,にぎや かな・陽気なという印象評価となり,因子得点が大きいほど, 寂しい・陰気なという印象評価となった。画像鑑賞に関する評 価因子について,因子1を快適性因子,因子2を好奇性因子, 因子3を高揚性因子とそれぞれ名付けることができた。 図3因子得点散布図(因子1,因子3) 図4因子得点散布図(因子2,因子3) 因子1について,落ち着く・安心な・リラックスした・おだ やかな・快い・好きなという印象評価が大きい画像は,海,空, 川,植物など自然の要素が画面の多くを占める風景であった。 因子2について,おもしろい・興味のある・個性的な・刺激の あるという印象評価が大きい画像は,海外の風景,生物であっ た。因子3について,にぎやかな・陽気なという印象評価が大 きい画像は,ボートが走行する川,街の雑踏,食物であった。 画像を鑑賞することによって鑑賞者の気分が改善することを 目的として,因子分析の結果に基づき,落ち着く,安心な,リ ラックスした,おだやかな,快い,好きな,おもしろい,興味 のある,個性的な,刺激のある,にぎやかな,陽気な,という 印象が大きい画像を抽出する。3因子のうち2因子以上の因子 得点が好感側に大きい画像2,3,5,9,,,,, , の画像 点を鑑賞画像刺激として選定した。 1 2 3 4 5 67 8 9 図1実験画像 2.研究の目的 本研究は,画像鑑賞と描画作業の体験による気分の変化を評 価することによって,療養環境を改善するための病院における アート活動について検討することを目的とする。よい印象の画 像を鑑賞することによる気分の変化や,描画作業による気分の 変化についての特性を調査する。気分の評価は 3206 短縮版を 使用し,刺激前後における気分の差を比較する。本研究では, 描画作業をハンズオンと定義する。 3.鑑賞画像の抽出 実施年月日 年9月 , 日の2日間。 実施場所 筑波大学芸術学系棟 % 研究室(約 ㎡)。部屋の壁面は 白色であり,実験用ノートパソコン,机,椅子のみが設置され た静穏な空間であった。 調査方法 質問紙調査による個別回答とし,写真 点の画像を呈示し た実験用ノートパソコンのモニター画面( 型)を鑑賞しなが ら,実験画像ごとに印象評価に関する回答を求めた。実験画像 は,順序効果を考慮したランダムな組み合わせによって設定し, 各呈示画像の間に視覚刺激をリセットする画像(グレー画面の センターを注視することによって刺激をリセットする)を 秒間設定した。実験協力者は,モニター画面に対して正面 FP に目が位置するように椅子に座して画像を鑑賞した。1人あた りの実験所要時間は,~ 分であった。 実験協力者 筑波大学の学生 名(男性6名,女性6名, 歳~ 歳)。 呈示刺激 国内の風景,海外の風景,植物,生物,食物などの写真 点(SL[HOLQFK)を実験画像として使用し,実験用ノート パソコンのモニター画面に呈示した(図1)。 質問紙の構成と内容 画像鑑賞における心理的な評価に関わる 対の形容詞を選 定し,形容詞対について尺度の左右をランダムとした5段階評 定による質問を記載し回答を求めた[注1-4,-]。画 像に関わる印象評価全般を限られた評価項目で探るために,潜 在性因子として「安心な-不安な」「個性的な-平凡な」「刺激 のある-退屈な」「陽気な-陰気な」,活動性因子として「リラ ックスした-緊張した」「おだやかな-激しい」「にぎやかな- 寂しい」,評価性因子として「落ち着く-イライラする」「快い -不快な」「好きな-嫌いな」「おもしろい-つまらない」「興 味のある-無関心な」の形容詞対を選定した。 表1因子分析結果 因子 因子 因子 共通性 落ち着く 安心な リラックスした おだやかな 快い 好きな おもしろい 興味のある 個性的な 刺激のある にぎやかな 陽気な 負荷量の二乗和 寄与率(%) 累積寄与率(%) デザイン学研究 97
S S S S S 緊張-不安(7-$) 抑うつ-落ち込み(') 怒り-敵意($-+) S S S S S 活気(9) 疲労()) 混乱(&) 図63206 尺度における7 得点の推移 「緊張-不安」「抑うつ-落ち込み」「怒り-敵意」「疲労」「混 乱」における 7 得点は,刺激呈示前に比べて有意に低下した状 態を保った。一方,ハンズオン体験後の「活気」における 7 得 点は,画像鑑賞後に比べて有意に上昇した。 考察 鑑賞する画像の抽出,および画像鑑賞とハンズオン体験にお ける 3206 を用いた気分の評価の結果から,次の内容を考察し た。 因子分析によって抽出された快適性因子,好奇性心因子,高 揚性因子の3因子のうち,2因子以上の因子得点が好感側に大 きい画像、すなわち「落ち着く,安心な,リラックスした,お だやかな,快い,好きな,おもしろい,興味のある,個性的な, 刺激のある,にぎやかな,陽気な」という評価が大きい画像を 鑑賞することによって,3206 尺度の「緊張-不安」「抑うつ- 落ち込み」「怒り-敵意」「活気」「疲労」「混乱」における 7 得 点が有意に低下した。これにより,画像鑑賞によって「緊張- 不安」「抑うつ-落ち込み」「怒り-敵意」「疲労」「混乱」が低 下し,気分が改善することが示された。「活気」が低下したこ とについては,画像鑑賞の呈示刺激において快適性因子である 「落ち着く,安心な,リラックスした,おだやかな,快い,好 きな」の評価が大きい画像が多く含まれていたことが要因のひ とつとして考えられる。 画像鑑賞後に,「選択した好みの画像から想像したもの,思 いついたもの,描き加えたいもの,そのまま描画する,一部を 描画する,変えて描く,など自由に描画する」というハンズオ ン体験によって,3206 尺度の「緊張-不安」「抑うつ-落ち込 み」「怒り-敵意」「疲労」「混乱」における 7 得点が,画像鑑 賞前に比べて有意に低下した。すなわち,ハンズオン体験は, 画像鑑賞後の「緊張-不安」「抑うつ-落ち込み」「怒り-敵意」 「疲労」「混乱」が低下して気分が改善した状態を保つと考え ることができる。 一方,「活気」については,ハンズオン体験後の 7得点が, 画鑑賞後に比べて有意に上昇した。これにより,画像鑑賞によ って低下した「活気」は,好みの画像を基に自由に描画するハ ンズオン体験によって上昇することが示された。 3206 尺度における「活気」の因子の評価項目は,「生き生き する、積極的な気分だ、精力がみなぎる、元気いっぱいだ、活 気がわいてくる」である(表2)。ハンズオン体験によって,「生 き生きする,積極的な気分だ,精力がみなぎる,元気いっぱい だ,活気がわいてくる」という気分が大きくなることが示され た。 5.おわりに 本研究の結果から,画像鑑賞とハンズオン体験における気分 の評価を確認した。画像鑑賞に関わる因子分析によって抽出さ れた快適性因子,好奇性心因子,高揚性因子の3因子のうち, 2因子以上の因子得点が好感側に大きい画像、すなわち「落ち 着く,安心な,リラックスした,おだやかな,快い,好きな, おもしろい,興味のある,個性的な,刺激のある,にぎやかな, 陽気な」という評価が大きい画像を鑑賞することで,3206 尺度 の「緊張-不安」「抑うつ-落ち込み」「怒り-敵意」「疲労」「混 乱」が低下し,気分が改善することが示された。また,画像鑑 画像鑑賞 描画作業(ハンズオン) 図5実験風景 4.画像鑑賞とハンズオン体験における気分の評価 実施年月日 年 月 日~ 年1月 日の期間における実日数 5日間。 実施場所 筑波大学芸術学系棟 % 研究室(約 ㎡)。部屋の壁面は 白色であり,実験用スクリーン(縦 FP 横 FP),机,椅子 のみが設置された静穏な空間であった。室温は,~℃に維 持した。 調査方法 刺激呈示前,画像鑑賞後,ハンズオン体験後に,3206 短縮版 を用いて気分を調査した。3206 短縮版における 評価項目に ついて,「緊張-不安(7-$)」「抑うつ-落ち込み(')」「怒り -敵意($-+)」「活気(9)」「疲労())」「混乱(&)」の6尺度 における粗得点から性年齢階級別に 7 得点を求めた(表2)。 実験協力者 筑波大学の学生 名(男性 名,女性 名, 歳~ 歳)。 負荷刺激 画像鑑賞は,3章によって選定した画像 点をスクリーン に各 分間連続して呈示した。呈示画像は,順序効果を考慮し たランダムな組み合わせによって設定した。画像は床から上に FP のスクリーン位置に投影した。スクリーン上の画像の大き さは縦 FP 横 FP とした。実験協力者は,画像を投影する スクリーンに対して正面4P の位置に設置した床からの高さ FP の椅子に座して画像を鑑賞した。目の高さは,FP~FP であった(図5)。実験協力者は,画像鑑賞後に 3206 短縮版の 質問紙を記入した。その後,実験協力者に呈示画像の中から好 みの画像を1枚選択してもらった。 ハンズオン体験は,「選択した好みの画像から,想像したも の,思いついたもの,描き加えたいもの,そのまま描画する, 一部を描画する,変えて描く,など自由に描画する。」という 課題による描画作業を行った(図5)。描画には,画用紙(%), 色鉛筆()DEHU&DVWHOO 色)を使用した。描画時間は 分間とし, 分経過以前に描画が完成した実験協力者は完成時 点で終了とした。実験協力者は,描画作業後に 3206 短縮版の 質問紙を記入した。1人あたりの実験所要時間は,~ 分で あった。 表23206 短縮版質問項目一覧 「まったくない」(0点)から「非常にある」(4点)までの5 段階(0~4点)のいずれか1つを選択する 緊張-不安(7HQVLRQ‐$Q[LHW\) 活気(9LJRU) 気がはりつめる 落ち着かない 不安だ 緊張する あれこれ心配だ 生き生きする 積極的な気分だ 精力がみなぎる 元気いっぱいだ 活気がわいてくる 抑うつ-落ち込み ('HSUHVVLRQ‐'HMHFWLRQ) 疲労()DWLJXH) 悲しい 自分はほめられるに値しないと感じる がっかりしてやる気をなくす 孤独でさびしい 気持ちが沈んで暗い ぐったりする 疲れた へとへとだ だるい うんざりだ 怒り-敵意($QJHU‐+RVWLOLW\) 混乱(&RQIXVLRQ) 怒る ふきげんだ めいわくをかけられて困る はげしい怒りを感じる すぐかっとなる 頭が混乱する 考えがまとまらない とほうに暮れる 物事がてきぱきとできる気がする どうも忘れっぽい 結果 刺激呈示前,画像鑑賞後,ハンズオン体験後の 3206 短縮版 による6尺度における 7 得点の推移を図に示す(図6)。 6尺度における 7 得点について、1要因3水準分散分析によ り検証した。「緊張-不安」() 3)「抑う つ - 落 ち 込 み 」( ) 3 ),「 怒 り - 敵 意 」 () 3),「活気」() 3),「疲 労」() 3),「混乱」() 3), の6尺度すべてについて 7 得点に有意な差がみられた。 主効果における多重比較では,画像鑑賞後の「緊張-不安」 「抑うつ-落ち込み」「怒り-敵意」「活気」「疲労」「混乱」に おける 7 得点は,刺激呈示前に比べて有意に低下した。ハンズ オン体験後の「緊張-不安」「抑うつ-落ち込み」「怒り-敵意」 「疲労」「混乱」における 7 得点は,刺激呈示前に比べて有意 に低下した。すなわち,画像鑑賞後にハンズオンを体験しても デザイン学研究 98
S S S S S 緊張-不安(7-$) 抑うつ-落ち込み(') 怒り-敵意($-+) S S S S S 活気(9) 疲労()) 混乱(&) 図63206 尺度における7 得点の推移 「緊張-不安」「抑うつ-落ち込み」「怒り-敵意」「疲労」「混 乱」における 7 得点は,刺激呈示前に比べて有意に低下した状 態を保った。一方,ハンズオン体験後の「活気」における 7 得 点は,画像鑑賞後に比べて有意に上昇した。 考察 鑑賞する画像の抽出,および画像鑑賞とハンズオン体験にお ける 3206 を用いた気分の評価の結果から,次の内容を考察し た。 因子分析によって抽出された快適性因子,好奇性心因子,高 揚性因子の3因子のうち,2因子以上の因子得点が好感側に大 きい画像、すなわち「落ち着く,安心な,リラックスした,お だやかな,快い,好きな,おもしろい,興味のある,個性的な, 刺激のある,にぎやかな,陽気な」という評価が大きい画像を 鑑賞することによって,3206 尺度の「緊張-不安」「抑うつ- 落ち込み」「怒り-敵意」「活気」「疲労」「混乱」における 7 得 点が有意に低下した。これにより,画像鑑賞によって「緊張- 不安」「抑うつ-落ち込み」「怒り-敵意」「疲労」「混乱」が低 下し,気分が改善することが示された。「活気」が低下したこ とについては,画像鑑賞の呈示刺激において快適性因子である 「落ち着く,安心な,リラックスした,おだやかな,快い,好 きな」の評価が大きい画像が多く含まれていたことが要因のひ とつとして考えられる。 画像鑑賞後に,「選択した好みの画像から想像したもの,思 いついたもの,描き加えたいもの,そのまま描画する,一部を 描画する,変えて描く,など自由に描画する」というハンズオ ン体験によって,3206 尺度の「緊張-不安」「抑うつ-落ち込 み」「怒り-敵意」「疲労」「混乱」における 7 得点が,画像鑑 賞前に比べて有意に低下した。すなわち,ハンズオン体験は, 画像鑑賞後の「緊張-不安」「抑うつ-落ち込み」「怒り-敵意」 「疲労」「混乱」が低下して気分が改善した状態を保つと考え ることができる。 一方,「活気」については,ハンズオン体験後の 7得点が, 画鑑賞後に比べて有意に上昇した。これにより,画像鑑賞によ って低下した「活気」は,好みの画像を基に自由に描画するハ ンズオン体験によって上昇することが示された。 3206 尺度における「活気」の因子の評価項目は,「生き生き する、積極的な気分だ、精力がみなぎる、元気いっぱいだ、活 気がわいてくる」である(表2)。ハンズオン体験によって,「生 き生きする,積極的な気分だ,精力がみなぎる,元気いっぱい だ,活気がわいてくる」という気分が大きくなることが示され た。 5.おわりに 本研究の結果から,画像鑑賞とハンズオン体験における気分 の評価を確認した。画像鑑賞に関わる因子分析によって抽出さ れた快適性因子,好奇性心因子,高揚性因子の3因子のうち, 2因子以上の因子得点が好感側に大きい画像、すなわち「落ち 着く,安心な,リラックスした,おだやかな,快い,好きな, おもしろい,興味のある,個性的な,刺激のある,にぎやかな, 陽気な」という評価が大きい画像を鑑賞することで,3206 尺度 の「緊張-不安」「抑うつ-落ち込み」「怒り-敵意」「疲労」「混 乱」が低下し,気分が改善することが示された。また,画像鑑 画像鑑賞 描画作業(ハンズオン) 図5実験風景 4.画像鑑賞とハンズオン体験における気分の評価 実施年月日 年 月 日~ 年1月 日の期間における実日数 5日間。 実施場所 筑波大学芸術学系棟 % 研究室(約 ㎡)。部屋の壁面は 白色であり,実験用スクリーン(縦 FP 横 FP),机,椅子 のみが設置された静穏な空間であった。室温は,~℃に維 持した。 調査方法 刺激呈示前,画像鑑賞後,ハンズオン体験後に,3206 短縮版 を用いて気分を調査した。3206 短縮版における 評価項目に ついて,「緊張-不安(7-$)」「抑うつ-落ち込み(')」「怒り -敵意($-+)」「活気(9)」「疲労())」「混乱(&)」の6尺度 における粗得点から性年齢階級別に 7 得点を求めた(表2)。 実験協力者 筑波大学の学生 名(男性 名,女性 名, 歳~ 歳)。 負荷刺激 画像鑑賞は,3章によって選定した画像 点をスクリーン に各 分間連続して呈示した。呈示画像は,順序効果を考慮し たランダムな組み合わせによって設定した。画像は床から上に FP のスクリーン位置に投影した。スクリーン上の画像の大き さは縦 FP 横 FP とした。実験協力者は,画像を投影する スクリーンに対して正面4P の位置に設置した床からの高さ FP の椅子に座して画像を鑑賞した。目の高さは,FP~FP であった(図5)。実験協力者は,画像鑑賞後に 3206 短縮版の 質問紙を記入した。その後,実験協力者に呈示画像の中から好 みの画像を1枚選択してもらった。 ハンズオン体験は,「選択した好みの画像から,想像したも の,思いついたもの,描き加えたいもの,そのまま描画する, 一部を描画する,変えて描く,など自由に描画する。」という 課題による描画作業を行った(図5)。描画には,画用紙(%), 色鉛筆()DEHU&DVWHOO 色)を使用した。描画時間は 分間とし, 分経過以前に描画が完成した実験協力者は完成時 点で終了とした。実験協力者は,描画作業後に 3206 短縮版の 質問紙を記入した。1人あたりの実験所要時間は,~ 分で あった。 表23206 短縮版質問項目一覧 「まったくない」(0点)から「非常にある」(4点)までの5 段階(0~4点)のいずれか1つを選択する 緊張-不安(7HQVLRQ‐$Q[LHW\) 活気(9LJRU) 気がはりつめる 落ち着かない 不安だ 緊張する あれこれ心配だ 生き生きする 積極的な気分だ 精力がみなぎる 元気いっぱいだ 活気がわいてくる 抑うつ-落ち込み ('HSUHVVLRQ‐'HMHFWLRQ) 疲労()DWLJXH) 悲しい 自分はほめられるに値しないと感じる がっかりしてやる気をなくす 孤独でさびしい 気持ちが沈んで暗い ぐったりする 疲れた へとへとだ だるい うんざりだ 怒り-敵意($QJHU‐+RVWLOLW\) 混乱(&RQIXVLRQ) 怒る ふきげんだ めいわくをかけられて困る はげしい怒りを感じる すぐかっとなる 頭が混乱する 考えがまとまらない とほうに暮れる 物事がてきぱきとできる気がする どうも忘れっぽい 結果 刺激呈示前,画像鑑賞後,ハンズオン体験後の 3206 短縮版 による6尺度における 7 得点の推移を図に示す(図6)。 6尺度における 7 得点について、1要因3水準分散分析によ り検証した。「緊張-不安」() 3)「抑う つ - 落 ち 込 み 」( ) 3 ),「 怒 り - 敵 意 」 () 3),「活気」() 3),「疲 労」() 3),「混乱」() 3), の6尺度すべてについて 7 得点に有意な差がみられた。 主効果における多重比較では,画像鑑賞後の「緊張-不安」 「抑うつ-落ち込み」「怒り-敵意」「活気」「疲労」「混乱」に おける 7 得点は,刺激呈示前に比べて有意に低下した。ハンズ オン体験後の「緊張-不安」「抑うつ-落ち込み」「怒り-敵意」 「疲労」「混乱」における 7 得点は,刺激呈示前に比べて有意 に低下した。すなわち,画像鑑賞後にハンズオンを体験しても デザイン学研究 99
賞後に好みの画像を基に自由に描画するハンズオン体験によっ て「活気」が上昇し,「生き生きする,積極的な気分だ,精力 がみなぎる,元気いっぱいだ,活気がわいてくる」という気分 が大きくなることが示された。 このような気分の変化に関係する,画像鑑賞とハンズオン体 験を用いたアート展やアートワークショップを実施することは, 病院の療養環境を改善することに繋がると考えられる。画像鑑 賞は「緊張,不安,抑うつ,落ち込み,怒り,敵意,疲労,混 乱」といった状態にある人の気分を改善することに役立つ。ま た,ハンズオン体験は「活気」が低下している状態にある人に, 生き生きする,積極的な気分,精力的,元気いっぱい,活気が わく,という気分を大きくすることに役立つ。 今回の調査では,画像鑑賞後にハンズオン体験を実施してい るため,ハンズオン体験に対する気分の評価には画像鑑賞が影 響していると考えられる。そのため,描画作業というハンズオ ン体験についてのみ気分を評価する追実験を実施する予定であ る。これにより,画像鑑賞の効果,描画作業というハンズオン の効果,画像鑑賞とハンズオンを組み合わせる効果が明らかと なり,病院における療養環境の多様性を担保するアート活動に ついて検討することが可能になると考える。また,ハンズオン 体験については,描画以外の制作動作や,アート作品を触った り動かしたりする能動的な鑑賞動作などにおける気分の変化を 調査することによって,さまざまなハンズオン体験を伴うアー ト活動が療養環境の 42/ 向上に果たす役割を明確にしたいと考 える。 本研究は -636 科研費 , の助成を受けたもの です。 注および参考文献 吉岡聖美:病院における抽象絵画の印象と空間評価,基礎 造形,,, )吉岡聖美:抽象絵画の構成要素と印象評価の関連性-病 院空間における比較検証を中心に,芸術学研究,,, )吉岡聖美:抽象絵画における直線表現要素と印象評価の関 係-病院空間に展示された場合の比較検証,デザイン学 研究,,,, )<RVKLRND.:,PSUHVVLRQ(YDOXDWLRQDQG(\H0RYHPHQW 5HODWHGWRWKH&KDUDFWHULVWLF([SUHVVLRQDV(OHPHQWV LQ$EVWUDFW3DLQWLQJV021'5,$10$/(:,76&+DQG527+.2 .DQVHL(QJLQHHULQJ,QWHUQDWLRQDO-RXUQDO )吉岡聖美:ホスピタルアートとしての絵画の印象評価に関 する研究-視覚的造形要素の分析を中心に-,筑波大学 博士学位論文, )吉岡聖美:ホスピタルアートとして求められる絵画の造形 要素の考察,基礎造形,,, )吉岡聖美:ホスピタルアートに対する患者の鑑賞行動と印 象の評価-外来待合と連絡通路における調査,デザイン 学研究,,,, 吉岡聖美,蓮見 孝:病院ワークショップによる行動観察, 日本デザイン学会第 回研究発表大会概要集,, )横山和仁,荒記俊一:日本版 3206 手引,金子書房, )横山和仁:3206 短縮版手引と事例解説,金子書房, )曽増功次:医療従事者に対する職場のストレス対策-ス トレス調査と短時間面接の有用性について-,心理医学, ,,, )嵐田絵美,塚越覚,野田勝二,他:心理的ならびに生理 的指標による主としてハーブを用いた園芸作業の療法的効 果の検証,園芸学研究,,,, )加藤大樹:ブロックを用いた表現技法における気分変容 に関する研究-性別と経験の観点からの検討-,名古屋 大学大学院教育発達科学研究科紀要,心理発達科学 , , )鈴木美穂,行場次朗:絵画印象と言語印象の因子構造と 感覚関連性の分析,心理学研究,,,,D 鈴木美穂,行場次朗:線画・色彩・言語刺激の印象構造 と組み合わせ効果の検討,電子情報通信学会技術研究報告, +,3,ヒューマン情報処理,,,,E )吉田 香,加藤俊一:絵画検索システムにおける印象語 に関する考察,電子情報通信学会技術研究報告,7/,思考 と言語,,,, デザイン学研究 100